マクロスコープ
MACROSCOPE

(別名ゴジラスコープ, Godzillascope)

02年11月23日の佐賀大学オープンキャンパスにて展示(写真はココ

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豊島耕一 / TOYOSHIMA Kouichi

左:札幌市青少年科学館での展示(1999年夏)パンフレット

右:福岡市、「空中科学公園」(2000年夏)

福岡県青少年科学館(久留米市東櫛原町1713,中央公園内)所蔵

 佐賀市または久留米市の近くの方には現物をお貸しできます.メールを下さい.
07年月2月19日現在,某TV局に科し出し中.そちらから転送してもらうことで,片道分の送料でお貸しできます.

fig.1 concept / 図1(概念図)
fig.2 construction / 図2(試作機の線画)
fig.3 definitions of parameters / 図3(ミラー位置などの定義)
photograph / 実物写真(福岡メビウスの卵展での展示

試作器の組立法(pdf) / 子供向け説明(pdf)

1.コンセプト
 「ゴジラのような巨大な生き物になって風景を眺めてみたい」とは,多く の人が想像することだろう.そのような大きな生き物にとってはおそらく風 景はジオラマのようにミニチュア化されて感じられることだろうし,遠方の 物体も立体的に見えるに違いない.なぜなら,われわれのように顔の正面に 2つの目を持つ生き物が物体を立体的に認識するメカニズムは,主に左右の 両眼での視差によっているが,大きな生き物ではこの間隔も大きいので,遠 方の物体に対してもはっきりした視差が得られるからである.
 もちろんこのような視覚体験は,大きく離した2台のカメラで撮った立体 写真をステレオスコープで眺めることによっても得ることができる.しかし それはあくまで写真であって「直接の目視」ではない.もし,実際の風景の 裸眼による観察でありながら,大きな視差を得ることのできるような装置が あれば,まさに巨大な存在になっての眺望を体験できることになろう.
 実はこのような装置は4枚の平面鏡によって簡単に実現できるのである. 図1のように2枚の広い平面鏡(対物鏡)と2枚の小さな平面鏡(接眼鏡) とを配置し,小さな平面鏡から覗く.ちょうど潜望鏡を横に倒して2台並べ たようなものである.左右2組の平面鏡による観察者の両眼の虚像すなわち 光学的な位置は図のように互いに大きく離されるため,両眼の間で大きな視 差が得られて遠方まで立体的に見えるのである.筆者は2枚の対物鏡の端と 端の間が1.6mの間隔を持ったこのような光学装置を製作し,実際に大変魅 力的な視覚体験が得られることを確認した.立体感が得られる距離範囲は 2kmにも及ぶ.
 この図を見て多くの人は,大型の双眼鏡を連想するかもしれない.実際, 対物レンズ間の距離の大きい双眼鏡からレンズをはずしてしまったようなも のである.たしかに双眼鏡でも遠近感は強調されるが,同時に対象が拡大さ れるため,裸眼での視感とはかけ離れている.これに対して平面鏡だけをも ちいたこの装置では,倍率は全くないため,片方の目で見る限り風景は裸眼 と全く変わらない.両眼で見て初めてこの特殊な効果が得られるため,観察 者は大変新鮮な印象を受けるのである.
 また他の人はこの図から,大きな立体写真用の立体鏡を思い浮かべるだろ う.写真を置く台のあるなしの違いはあるものの,また「対物鏡」の間が 1.6mもの大きさはないとはいえ,筆者の装置はこれと全く同じものと言っ てもいいだろう.しかし一組の写真ではなく現実の風景そのものが,この種 の立体鏡の対象物になりうるということに誰か気付いていただろうか?
 図1で,観察者の両眼の光学的な間隔が実際の間隔(約6.5cm)のk倍に 拡大されたとすると,相似性から,裸眼のときのk倍の距離にある物体に対 して同じ視差が得られる.このため観察者は,風景が1/kに縮小したよう に感じる.倍率はあくまで1なのだから,小さく見えるということではなく, 「縮小」は視線の方向にだけ起きるのである.つまり,全体が小さくなると 同時に観察者の方向に接近してくる,つまり風景の「ジオラマ化」あるいは ミニチュア化が起きるのである.これは言い換えれば,観察者がk倍に巨大 化するのと同じことと言えよう.したがってこの装置には「マクロスコープ」 と言う名前がふさわしいだろう.愛称としては,日本が生んだ世界のヒーロー であるゴジラにちなんで「ゴジラスコープ」としたい.
 この装置は,両眼の空間的な引き離しによる視差拡大を利用したものであ るが,われわれは「時間的な視差拡大」による同様の効果もしばしば経験す る.新幹線のような高速の乗り物に乗ったとき,遠方の風景が「回転す る」,つまり時間的に次々と大きな視差を経験することによって,やはり風 景がミニチュア化したような印象を受けるのである.

第2章. 試作機

第3章. 設計公式

4.おわりに
 脚立を利用した程度の大きさの装置でも十分新鮮な感覚を楽しめるが, 10km以上にもわたるような規模の地形を立体視するためには,少なくと も基線長が5m程度は必要だろう.そうすると視野の広さを確保するために は対物鏡もかなり大きくなり,可搬型は困難で,建物などに据え付けるタイ プになろう.展望台などにこのような大きなものを設置すれば,風景観望の 楽しみも倍加することだろう.
 倍率1のレンズ系を使えば対物鏡に大きな鏡は使わなくてすむが,あたか も裸眼で直接見ているという感じは失われるのではないだろうか.
 ところで,星空を立体視するためにはどれくらい大きな基線長と鏡が必要 だろうか?