中教審答申と「国民会議」報告,語句の使用頻度

文通団「高等教育フォーラム」,「大学改革情報」への2000年12月26日の投稿
2001年1月,中教審「審議のまとめ」(f) を追加
2001年12月,答申案を追加

佐賀大学 豊島耕一

 キーワード

1次答申
1996年7月

2次答申
1997年6月

国民会議
00年12月

中教審審議のまとめ
00年12月
答申素案
01年12月
 子どもの権利 or 子供の権利 or 児童の権利 0 0 0 0 0
 権利 0 0 0 0 0
 人権

8(a)

0 0 0 0
 学習権 or 教育権 0 0 0 0 0
 自治 or 生徒会 0 0 0 0 0
 自律 1 1 1 3 1
 自主的 7 3 2 1 4
 自由

4(b)

7(c)

3 1 0
 民主 0 0 0 0 1
 批判 0 0 1 1 1
 体罰 or 校則 0 0 0 0 0
 労働条件 or 勤務条件 or 待遇 0 0 1 1 0
 勤務時間 or 労働時間 2 0 0 0 0
 ユネスコ or 国連 0 0 0 0 0
 憲法 0 0 0 0 0
 教育基本法 0 0 14 0 0
 戦争,紛争 0 0 0 0 0
 平和 1 0 2 0 0
 日本人

11(d)

0 11 2 2
 市民 0 0 1 0 0
 長さ(字数) 87,800 78,000 16,900 11,500 23,000

(a)「人権擁護」,「人権を尊重する心」の二つの決まり文句として
(b)「自由な発想」3,「自由に楽しく遊ぶ」1
(c) 多くが「選択の自由」
(d) 「日本人学校」を除く.「日本人として」3
(e) 日本人の(を)育成 6, 日本人としてのアイデンティティー 1,日本人としての自覚 1
(f) 中央教育審議会 審議のまとめ「新しい時代における教養教育の在り方について」

「教育基本法」という言葉は,中教審の他の答申でもほとんど出てこない.
98年9月答申「今後の地方教育行政の在り方について」  1 回 
98年6月答申「幼児期からの心の教育の在り方について」 0 回


コメント

1)中教審答申と全く変わらず「権利」の二文字が全く使われず,したがって「子供の権利条約」への言及もない.「民主」の二文字もまた一度も,なんと一度も見つからない.つまり「民主主義」とか「民主的」という言葉が「国民会議」のメンバーや中教審のメンバーの辞書に全くないのであろう.さもなければ,この言葉を使う必要がないほどにこの社会には民主主義が行き渡り,また子どもの,そして教師や父母の権利が守られているということになる.やはり「権利」や「民主」の文字を辞書に持たないことで共通する儒教イデオロギーをその背後に想定せざるをえないのである.

2)中教審答申と比べて「日本人」ということばが頻出,多用されている.

3)「国民会議報告」は教育基本法の見直しを打ち出したが,中教審答申には98年9月答申を除きこの語は皆無である.

関連文書:
大学審2000年答申のキーワード出現頻度による偏向度分析
ユネスコ高等教育宣言と大学審答申
中教審の辞書に「権利」はない
中教審中間報告のキーワード分析