佐賀大学 豊島耕一
「最終報告の法人像は、全体として、・・・大学業務の特性を尊重した中期目標・中期計画、外部意見を入れた学長選考制度、・・・等において、基本的に国の経費で教育研究等を行う開かれた自主・自律の責任組織となっており、国立大学におおむね適合的な法人像になっている。」
国大協の「設置形態検討特別委員会」が4月1日に出した,最終報告についてのコメント*の一部である.「外国に例がない」と文部科学省系の調査機関「国立学校財務センター」の報告書でさえ断定した「中期目標」を当然のことと認め,「国立大学におおむね適合的」と最終報告を肯定したのである.これは不思議ではなく,表をご覧になれば分かるとおり**, 設置形態検討特別委員会のメンバーのほとんど,約8割は最終報告を出した側の「調査検討会議」のメンバーでもあるからだ.こういうことを「自己点検・評価」と言うのだろうか? あるいは,もっとはっきり「八百長」と言うべきだろうか?
両委員会が設置された時から,この二つの委員会が「クローン」であることは名簿から明かだったが,それが出す結論も当然のことながらクローン答申となったのである.このような見え透いた茶番を,こともあろうに国立大学の指導的立場の人たちが演ずるのであるから,少なくともその限りでは我が国の国立大学は世界で最低レベルにあると言わざるを得ない.演技者たちには恥ずかしいという気持ちは起こらないのだろうか.
国大協の委員会には,新しく加わった人など調査検討会議のメンバーでない人も数人いるが,これらの人たちは何の異議も唱えなかったのだろうか.このコメントへの異論もあったはずだと期待したいが,是非とも反対意見・少数意見も同時に公表してもらいたい.そうすれば少しは国大協にも救いはあるだろう.
国大協は「最低レベル」に落ち込みつつあるが,19日の臨時総会をなんとか立ち直るきっかけにしていただきたい.そうなるためには多くの人がこれに注目することが必要だと思う.国大協は今回こそは総会傍聴を認めるべきだ.いや,むしろインターネット中継などで積極的に公開をするべきではないだろうか.
調査検討会議の名簿でもう一つ注目すべきことは,相変わらずメディアの幹部クラスの人間がこれに加わっていることだ.NHK,読売新聞,毎日新聞,産経新聞の論説委員の名前がある.これらのメディアは「最終報告」に対して完全に自由な批判は出来ないだろう.つまりこれらもまた「調査検討会議」の腹話術人形に過ぎないと言うことだ.そのことを「折り込んで」これらの報道を受け取る必要がある.
総会もメディアも,教育基本法10条が何を意味するかを考えて欲しい.憲法9条などと異なり,学校でほとんど教えられないので,「自習」が重要である.(自習教材1,自習教材2)