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Date: Fri, 7 Apr 2000 17:27:03 +0900
To: he-forum@ml.asahi-net.or.jp
From: toyo@cc.saga-u.ac.jp (TOYOSHIMA Kouichi)
Subject: [he-forum 790] 日本物理学会での有馬朗人氏の講演について

佐賀大学の豊島です.
関西大学で開催された日本物理学会春の分科会において「物理学者の社会的責任」シンポジウムが,次の日程,表題で開かれました.

  “国立大学の独立行政人化とは何か

     ――存亡の危機に立つか,国立大学の教育・研究――”

       3月25日(土) 13:30より18:00

その中で,有馬朗人の講演と質疑応答について私の記憶の範囲でお知らせします.表題は「独立行政法人化の目指すもの:学術行政から(仮題)」というものでした.従来通り詳しい報告が「科学・社会・人間」に掲載されるはずです.なお私は最後のスピーカー藤本光一郎氏の話の途中(17時頃)で退席しました.また,テープを取っているわけではないので細部まで正確というわけではありません.

イ)有馬氏は,なぜ自分が「行政法人化」に反対していたかの理由を説明しましたが,これは従来の国大協見解などに重なるものです.次にその自分がなぜ賛成に変わったか,という理由を数点にわたって説明をしたのですが,要するに特例法ないし特例措置で大学の自治・自主性はなんとか保てる,というものでした.それと,今回の「法人化」が「民営化」につながるものではないということが明らかになったから,という,自分の心証のようなものを挙げていました.しかし後者については,後藤邦夫氏(と思われる.講演者の一人)の,「私は民営化論だが...」という質問の切り出しに対して,「それは大いに賛成」という趣旨の相づちを打っていました.

「行政法人化」問題とは別に,いくつか注目すべき発言がありました.

ロ)外国人教員にだけ任期を付けるという国籍差別が行われていることを非難しました.

ハ)「教養部解体は誤り」と断言しました.「教養部解体などだれも言っていない.教養教育は重要だと言っていた.しかし皆さん教養部を全部解体してしまった.どうしてこんなバカなことをしてしまったのか.」およそこのような趣旨の発言をしました.

いくつも質問が出されましたが,私自身の質問とそれに対する回答を紹介します.

豊島:国家公務員25%削減の閣議決定に,自分の信念に反してなぜコミットしてしまわれたのか.この数字は「行政法人化」の脅しとしてさかんに使われてもいる.なぜそのとき閣僚をお辞めにならなかったのか.どうせ何ヶ月かの違いではないか.

有馬:たしかにこの決定は悔やまれる.

豊島:でも辞表を出すほどではない?

有馬:そういうことですね.

いくつかコメントします.

イ)「『民営化』につながるものではないから賛成した」と言っておきながら「私は民営化論だが...」という質問の切り出しに「大いに賛成(結構?)」という返答は支離滅裂と言うほかはありません.

ロ)この国籍差別批判は全くその通りですが,もし有馬氏自身も長年このことにコミットしてきたとすれば,自己批判の言葉も聞かれて当然と思われます.しかし一方的な非難の言葉でした.

ハ)これについても当時のこの問題への本人のコミットメントに言及する必要があるはずです.有馬氏は89年4月から93年3月まで東大総長を勤めています.それと国大協会長はかなり重なっているはずなので,そのような「誤り」がまさに進行していた最中に,責任ある当事者としてどのような発言をしていたのかが問われることになるでしょう.もし重大な問題であったとすればそれへの沈黙は許されないからです.すなわち,東大総長としてだけなら「教養学部を守った」ですまされるかも知れませんが,国大協会長ではそうはいきません.

TOYOSHIMA Kouichi
Dept. Phys., Univ. of Saga
豊島耕一,佐賀大学理工学部物理科学科

シンポジウムの詳細は「科学・社会・人間」74号(2000年9月15日)に収録されています.