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問題提起,二題

(これは6月20日,佐賀市で開かれた佐賀大学教職員組合と科学者会議佐賀支部共催のシンポジウム,「21世紀の佐賀大学像を探る」で配布した文書です)

佐賀大学理工学部(教授) 豊島耕一

イ)大学も「3割自治」

 地方自治体が中央官庁に支配されている状況を表すのに「3割自治」という言葉が使われますが,大学自治についても類似の状況があります.

 新規の予算を付ける,付けないでおどされて,その結果何でも文部省の言いなりになる,ということは容易に想像されるでしょうが,幹部事務職員の人事についてはあまり知られていないのではないでしょうか.事務職員のトップに立つのは「事務局長」という職ですが,その人事は文部省が握っており,大学も学長もこれに何の口出しも出来ないのです.しかも2年ぐらいで次々に入れ替わるため,大学や地域を十分に知る時間もなく,文部省からの出向役人というイメージです.

 学長はたしかに学内の選挙で選ばれますが,その手足となるべき事務組織の長は中央官庁のお仕着せというわけです.大学運営の現場における事務組織の役割の重大さを考えると,その管理運営の実際のほとんどを文部省に握られているようなものです.それだけでなく学長の「側近」として,学長の政策にも決定的な影響力を持ちます.最近「一元化」と称する事務組織の再編が実施されましたが,事務組織に教授会は口出しするな,という調子で事が進められ,学部の人員削減のため,教員側から見ると,事務の仕事がどんどん教員にしわ寄せされるようになっています.

 ところで「大学の自治」に関しては,国立大学の設置者は国であり,職員は公務員なので,「公務員の自治」という矛盾が生じないか,という疑問があるかも知れません.しかし,「自治」といっても大学のすべてのこと,という意味ではありませんし,学問の自由の尊重という考えから,歴史的にも「大学の自治」という考えが広く受け入れられていると思います.

ロ)大学の機能の重要な柱,「文明社会の良心」

 教育と研究という重要な大学の機能については,当然ながら盛んに議論されますが,この,社会に対する批判者といういわば第三の機能について語られることが少なすぎるように思います.それはこの点について文部省や大学審議会が取り上げないためかも知れませんが,しかしそれはもともと期待できないのです.一つの社会的権威である大学が,中央政府のやることをいろいろと批判するのを政府が嫌うのは当然でしょう.そして実際,大学はほとんど何の社会的発言もしていません.しかし民主社会というものは,社会の中のいろんなセクターが互いチェック・アンド・バランスの作用をし合うことでその健全さが保たれるのです.大学ももちろんその重要なセクターの一つです(注3).ですからこのような議論は大学自身から,あるいは市民レベルから引き起こされる必要があります.イギリスの大学改革の提言書「デアリング・リポート」(注1) やユネスコの「高等教育世界宣言」(パリ,1998年10月,注2)はこの大学の機能に触れ,あるいはそれを強調しています.

(注1) http://www.leeds.ac.uk/educol/ncihe/nr_007.htm

(注2) 日本語訳 ../UniversityIssues/AGENDA21.htm
オリジナル http://www.unesco.org/education/educprog/wche/index.html

(注3) もちろん大学自身も他からの批判の対象です.