市民による核廃絶

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アンジー・ゼルター、1999年5月

訳 大庭里美(Ver.1.0)

 現在、スコットランド田園地帯の小さな町、ヘレンズバーグと、イングランドのさまざまな刑事裁判所で注目すべき裁判が行われている。それらの裁判所はすべてイギリスの核兵器施設に近接している。それらの裁判では、世界市民が国際法の下に行った核廃絶行動に対し、それを犯罪であると主張する警察、裁判所、および政府と争っている。被告たちの多くは、「違法であると知っていて、かつ、それを何らかの方法で防止する機会があるものは誰であれ、犯罪が行われるのを防止する行動をとらなければ、国際法のもとでは潜在的犯罪となる」という東京裁判の資料を使っている。被告たちはまた、下田裁判を引用している。なぜなら、それが広島と長崎の犠牲者の側に立って、原爆投下が国際法違反であり、事実上の戦争犯罪であるとした唯一の判例だからである。

 すでにおよそ50件の弁論が終了しているが、まだそれ以上が残っている。被告たちの中には十代後半から二十代初めの学生から、退職した70歳−80歳の男性、女性などあらゆる職業経歴の人々がいる。かれら、および彼女たちは核基地の入り口を封鎖したり、フェンスを切って基地に侵入して軍事設備を壊した。そのとき使ったものはハンマーやボルト・カッターや、接着剤やペンキのような簡単な家庭用の道具であった。かれら、彼女たちの経歴職業はさまざまだが、今こそ世界市民が自力で自分たちにふさわしい、公正で愛に満ちた世界を創造する時だという信念で結ばれている。かれら、彼女たちは政府が核廃絶に動くのを待っているより、自分たち自身で邪悪な大量殺戮兵器を廃絶し、武器を創造的で生活に役立つ資源につくりかえなければならないと考えている。 裁判は「核兵器は一般的に国際法に違反する」とした1996年の国際司法裁判所勧告的意見をどう捉えるかという重要な点にさしかかっている。スコットランドの裁判所は最初から「スコットランドの裁判所では国際法は適用されない」という姿勢をとっていたが、今では彼らの対応は私たちの主張をもっと考慮したものとなってきている。今までのところすべての被告が有罪とされているが、多数が控訴しており、それらは必要となればヨーロッパ人権法廷にもちこまれることになるだろう。イングランドのある裁判は(一人の治安判事でなく裁判長と12人の陪審員によって行われた)不一致陪審に終わり、再審に持ち込まれることになるだろう。イギリスでは陪審員による判断となれば、裁判官や治安判事による裁判よりも、無罪となる可能性が高いと思われる。普通のまともな人間であれば、一人に対する殺人が法律に違反しているならば、大量殺人もまた違法であると考えるのはあきらかである。また、もし政府がみずから大量殺戮兵器を廃絶しようとしないのなら、市民による核廃絶の実行の必要性があるということを、陪審員たちの方がより理解すると思われる。

 トライデント・プラウシェア2000(TP2000)は、イギリスを中心とした、世界市民によるイギリスの核兵器廃絶の運動である。TP2000は、50数年前の広島と長崎への最初の核兵器使用以来、積極的に核軍縮活動を担い、今も継続している国際平和運動の流れの一つであると自らを位置付けている。わたしたちはみずからの役割として、新たな千年紀を核のない世界とするために、イギリスのトライデント核兵器システムを平和的に、公然と、そして責任を持って廃絶するための努力をしている。わたしたちの核廃絶行動は、広く知られている国際法の原則にもとづいて、今も続いている核による犯罪を止めることを目的としている。

 3人から15人の小さな独立したグループからなる129人の多国籍の活動家たちは、核の犯罪を阻止する誓約、および非暴力と安全の誓約にすでに署名している。かれら、彼女たちの出身国は、オーストラリア、ベルギー、デンマーク、エール(アイルランド)、イングランド、フィンランド、オランダ、スコットランド、スウェーデン、アメリカ、そしてウェールズである。常に新しいメンバーが加わっている。大半はイギリス人だが、約30%は外国人で、わたしたちは「世界市民」として行動している。なぜなら、イギリスの核兵器は世界のすべての地域にとっての脅威であり、それゆえにそれを廃絶することは世界的な責任であると考えるからである。TP2000の誓約書に署名した者として、わたしたちはイギリスのトライデント核兵器システムを平和的に廃絶する努力をするということを公約した。現在、イギリスの全核兵器は4隻のトライデント原子力潜水艦に搭載されている。

 わたしたちはまず、1998年3月にイギリス政府に対して公開書簡を出し、その中でイギリスの核兵器廃絶に向けて直ちに取り組むこと、そして「イギリスに適用される国際的義務と法的および人道的基準に則った」非核防衛政策に向けて政策を転換するよう求めた。わたしたちは、核兵器はイギリス政府が謳った「倫理外交」に合致せず、核「抑止論」は有効性も信頼性もないということを指摘した。また、なぜわたしたちは国際司法裁判所が実質的に核抑止論の合法性を否定したとみるのか、そして国際司法裁判所の勧告的意見に対するイギリス政府の解釈と、政府が核兵器に依存し続けることに対してなぜわたしたちが最も懸念しているかということについての概要を述べた。わたしたちは、冷戦後のトライデントの「準戦略的」配備は「あやまりで、国際的な人道法とまったく相容れない」と考える。わたしたちは、核兵器の保有はまた「世界共通の倫理に反し」「トライデント配備はわたしたちが新たな千年紀において直面する真の安全保障を阻むもの、例えば構造的貧困、環境破壊の拡大、核拡散と国際的テロリズム、その他などの解決にあてられるべき資源の誤用である」とはっきりと述べた。わたしたちは、公開書簡の中で政府がなすべき核廃絶への実際的プロセスとして、実行可能でかつ有効と思われる9項目の要求の概略を伝えた。(この論文の末尾をごらんいただきたい。)わたしたちはこれらの要求項目が満たされない場合、公然とした責任ある核廃絶のためのプラウシェア・キャンペーンを開始することを明言した。

 トライデント・プラウシェア2000は、1998年5月2日、ロンドン、エジンバラ(スコットランド)、エーテボリ(スウェーデン)、ゲント(ベルギー)、そして広島で公然と開始された。さらに政府高官に書簡が送られ、NATO加盟16カ国の元首と外相との接触が続けられた。わたしたちは書簡を交換し続け、どのような対話や交渉にも道を開いている。わたしたちは「政府当局」が自身でトライデントを廃絶してくれることを望んでおり、政府が言い逃れに終始しているので、自分たちができることを試みているにすぎないということをはっきり述べている。ファスレーン潜水艦基地での3ヶ月ごとの公然とした核廃絶行動の前には、TP2000の公開性と責任を明らかにするために、必ず首相に対して、新たな誓約者のリストをもれなく提出している。わたしたちは最初の公開書簡以来、6通の書簡といくつかの真剣な質問と問題に対する回答を求める書簡1通を送った。これまでのところ、それらに対する実質的な回答はなく、また会談の提案もなされていない。

 最初の公開書簡の後、政府は「戦略防衛見なおし」を発表したが、そこには冷戦後の国際関係、規範、および切望は反映されておらず、逆に無益にもトライデント核ミサイルを「安全保障に必要不可欠なもの」としての役割を強化することになっている。包括的核実験禁止条約によって確立された核実験禁止の流れに敢えて挑戦し、インドとパキスタンは核実験を実施し、イギリスと肩を並べた。イギリスと、その他の公然たる核保有国は、ただちに核実験を非難し、両国に核兵器を配備しないよう、またミサイルなど運搬手段の実験をしないよう要求した。しかしながら、イギリスが安全保障のために必要と考えているこれらの兵器が、なぜインドとパキスタンには不要なのかという理由は語られていないし、また「インドとパキスタンにとって、核兵器に代わる安全保障があるのなら、なぜイギリスがそれを採用しないのか」という質問への答えもない。 
 1998年6月、南アジアでの核実験に対応するために、イギリスで主要8カ国(G‐8)の会合が開催された。G‐8共同声明では、NPT(核拡散防止条約)第6条に触れただけでなく、1995年にNPT無期限延長が決定したときの「核兵器の世界的削減のために系統的漸進的努力」を追求するとした共同声明にも言及して、核保有国の軍縮義務を強調した。

 しかし、イギリスは他の非核保有国政府が、核軍縮を前進させることができるような提案をしたとき、何度か機会があったにもかかわらず、国際的な場において建設的または積極的に行動することはなかった。イギリスは兵器に利用可能な核分裂物質の今後の生産禁止を支持したが、自国に貯蔵している核物質の削減は拒否している。また、イギリスは軍縮会議前をにした今、出されている多くの核軍縮の提案についてどれひとつ支持を表明していない。

 1998年12月、イギリスは国連総会での核軍縮に関するほとんどの決議案に反対票を投じた。その中には、非核8カ国外相による6月9日の声明に基づいた議案もあった。「核兵器のない世界に向けて:新しいアジェンダの必要性」という決議案の提案国の中には、EU加盟国が2カ国含まれていたが、イギリスは米仏と組んでNATO加盟のヨーロッパ諸国に圧力をかけてその決議に反対させた。その決議案が単にこれからの一国、二国間、および多国間の(核廃絶に向けた)行動を呼びかけ、核保有国とその同盟国に対して「戦略ドクトリンの再検討」を求めているだけなのにもかかわらず、このようなことがなされたのである。この決議案の内容はイギリスの果たすべき法的義務とまったく一致しているにもかかわらず、イギリスはその決議案がすでに戦略防衛レビューにおいて検討され、「現在、信頼できる最小限の抑止力維持と矛盾すると結論づけた」政策を代言していると言って反対票を正当化した。

 NPTに加盟した180カ国以上は、そのような「最小限の抑止力」に依存する可能性を放棄したが、その条約は永久化され、保障措置だけが強化されてしまった。イギリスが核不拡散、核の自制、および核軍縮において積極的な例を示すべき時に、わたしたちはなぜイギリスが軍縮を前進させる穏健な試みに対してさえ国際的な場で反対票を投じるのを正当化できるのかと質問した。TP2000は、圧倒的多数の国が核兵器を保有しない世界においてイギリス(であれ、他のどの国であれ)が核兵器を保有する権利があるということを認めないことをまったく明確にしてきた。わたしたちは最小限の抑止力という概念を拒否する。仮にそれに理屈があるとしても、戦略防衛見なおしが述べたように「たった」48個の核弾頭搭載の原潜を「最小限の抑止力」などとみなせるわけがない。

 トライデント・プラウシェア2000からイギリス政府への質問の要点は、以下のようなものであり、政府はまだそれに回答していない。

1) 100キロトンのトライデント核弾頭による威嚇が、軍事と民事の標的の区別を義務付け、兵士への不必要な苦痛と、環境への広範囲で長期にわたる過酷な被害を禁じ、中立国の不可侵性を定めた国際人道法にどうして矛盾しないと言えるのか。

a) もし、トライデントが違法でないとしたら、いつ、どこで、どのようにして100キロトンの核弾頭を合法的に使用されるのか、イギリス政府はたったひとつでも詳細な例をあげてくれるだろうか。

b) ひとつの可能性として、ノルウェー国境に近いロシア北部の町、ユリヤミーがある。その人口は2万8千人を上回り、原子力潜水艦を補修するいくつかのロシア海軍造船所に近接している。造船所上空で一発の核弾頭が爆発したら、直径870メートルの火の玉ができるだろう。そうすれば町は完全に壊滅するだろう。放射線、高熱、そして建物の崩壊によって、人口の約9割以上が死亡するだろう。そのうち、子どもの死者は七千人に上るだろう。爆発によって、学校、病院、そして教会が破壊される。わずかに生き残った者も重傷を負っているだろう。爆心から4.5キロメートル離れていても、屋外にいた人は3度の火傷を負うであろう。十キロメートル離れたセヴェロモルスクの町でさえ、爆風の被害が広がり、数百人の犠牲者が出るだろう。これらに加えてさらにノルウェー住民にも二次被曝が及ぶであろう。国際法をどのように解釈したとしても、これが合法的だというのは難しい。政府はユリヤミーや、それに類する場所が標的のリストにないと断言できるのか。

c) 確認は不可能だが100キロトンまでのさまざまな威力を持つトライデント核弾頭が使用される標的の合法性について、いつ政府は公式に再検討するつもりなのか。わたしたちの意見では、現在トライデントに配備されている核兵器を、明白に国際人道法を侵犯することなしに地上の標的に対して使用されることは不可能であろう。なぜなら、それらはあまりにも非人間的で、時空を超えて遺伝子や環境に制御不能な影響を与える恐ろしい兵器だからである。

2)その使用が国際法に合致しているような十分な威力と正確さを持った通常兵器があるのなら、なぜイギリス政府は核兵器が「英国の安全にとって究極の保障である」と考えるのか。

3)戦略防衛レビューは「イギリスは核不拡散条約のもとでのイギリスの義務に対して明確に責任を負う」とはっきり述べている。しかしながら、国際司法裁判所の解釈によると、その義務とは「核兵器の全面的廃絶に向けての最終的な交渉を実現する」ということである。これがどうして次のようなイギリス防衛政策と合致するであろうか。すなわち、「最小限の抑止力はイギリスの安全保障に必要な要素である」、「今後30年間、核兵器は効果的な抑止力であるということを確認する必要がある」、そして、トライデントを「イギリスの安全保障にとってそのように不可欠な重要性をもつ兵器」であるとするような防衛政策である。もし、イギリス政府が核兵器のない世界への責任を果たすつもりがあるのなら、「トライデントに続く兵器を設計生産する最小限の能力を放棄するのは時期尚早である」というのではなく、トライデントを更新しないという宣言をすべきであった。NPTは30年前に締結されたのである。イギリスが義務を果たすまであとどれだけ待てというのだろう。世界法廷は、この義務は単なる実施義務ではなく、正確にその結果 ― すなわち核兵器の全廃の達成を要求しているとはっきり述べているのである。

a) 戦略防衛レビューのなかで、政府は「冷戦の終結によって安全保障環境は変化した。世界戦争の影はもはやない。西側世界やイギリスにとってかつてのような直接の脅威はもはや存在しないし、海外の領土も重大な脅威に直面してはいない」と明言している。イギリスの存続は、現在脅かされてはいないのであるから、現在トライデントの配備によって代表されるイギリスの核兵器使用による威嚇は違法である。政府が将来再びイギリスの存続が直接脅かされる事態が生じるかもしれないということを理由に、これに反対するのなら、それは事実上、イギリスが核兵器の廃絶に決して合意しないこともありうるという議論であり、NPTの義務への明白な違反である。

4)人類の存続を損なうほどの力を有するがゆえに、核兵器は内政外交上の中枢課題である。その問題は人道法のまさに核心である。どのような理由であろうと、核兵器使用を合法化または許可し、またもし、イギリス社会、イギリスの指導者たちが女性、子ども、その他の民間人の大量殺戮を正当とするなら、どうしてより小さな悪に対して、論理的一貫性をもってとがめることができるだろうか。それゆえに、トライデントがイギリスの安全保障に倫理にかなった貢献をするものだと断定できるだろうか。

 1998年8月、最初の公然と宣伝された核廃絶行動が実行され、100名の世界市民がファスレーンとクールポートの基地の警備を何度も突破して逮捕された。その後、ファスレーンでさらに3回公然とした核廃絶行動が実行され、「秘密」だがやはり全面的に責任のある非暴力直接行動がさまざまな時と場所で始まろうとしており、また実行中である。1999年2月1日月曜日、誓約をした二人の活動家がバロー港に停泊中の潜水艦ベンジャンス(復讐の意―訳註)まで泳ぎつき、乗艦してペンキでスローガンを書き、司令塔の試験機器を破損して25,000ポンド以上の損害を与え、潜水艦に侵入した。今後数ヶ月にわたって、このような行動がさらに計画されている。

 今日までに12カ国からの世界市民201名が逮捕され、スコットランドとイングランドの裁判所でゆっくりと裁判が進行している。彼ら、彼女たちは、イギリスのトライデント核兵器システムに対する平和的で、安全な、責任のある実際的な核廃絶行動は国際法と核の犯罪を防止しようとする世界市民の責任に合致していると主張している。英国防省を代表してコマンダー・ジレスピーは「トライデント・プラウシェアは公然と、そして幾度となく犯罪行為を行うと明言している」と述べた。しかし、わたしたちは、何であろうとわたしたちが犯罪行為を行ったということについては全面的に反論する。わたしたちはただ、国際法を支持し、わたしたちが大規模な犯罪と信じる行為に政府が加担し続けることを阻止しようとしているだけである。

 通常の国際法は何世紀にもわたって、中立国、関係のない局外者、および環境を戦禍から保護すべく改善されてきた。これらの法は、ナチスのホロコーストの責任を問う法的前提であった。今、これらの法はルワンダや旧ユーゴスラビアの指導者や官僚たちが、残虐行為の責任を問われて告発されている、ハーグ戦争犯罪法廷において適用されている。イギリス政府はこれら人間の行動の基本的な義務と基準を逸脱するものを当然にも非難するが、それらの基準に照らせば自身が同じ過ちを犯しており、数百万人の殺戮と生態系全体を破壊する能力を持った兵器を配備することに対して同じ義務と基準が適用されるということを認めなければならない。このことは、政府がわたしたちにあてた書簡の中で「兵士が法的義務の遂行を拒否する」よう直接働きかけることは「まったく受容できない」と述べたことについても当てはまる。このことは、これら兵士は間違った命令を受けているのであり、イギリス政府がかれらに違法な命令を下し、その結果兵士たちは重大な、きわめて深刻な慣例国際法違反の共犯者となるのだという重要な点をやはり見落としているのだ。すべての兵士にニュルンベルグ原則を知らしめ、かれらが違法な命令に決して従ってはならないことを思い出させることはわたしたちの義務である。わたしたちはこれらの警告と核廃絶行動を継続するつもりである。

 NATOのセルビアに対する今回の戦闘において、核兵器の使用が戦争の迅速な終結をもたらしうると示唆したり、核兵器は使用しないのならば保有する意味がないなどと主張する論者がある。環境破壊と汚染のみならず、恐るべき人間の苦痛がそれによってもたらされるであろうが、それは明らかに国際法の侵犯であり、さらにそのような言説は核の脅威が常にいかに存在しているかということを示している。核兵器を完全に廃棄するまでは安全とはいえないのだ。政府がそれをするまで待つことはできない。わたしたちは自らの手で、責任ある、非暴力かつ安全な方法でその過程を開始しなければならない。

 わたしたちの弁論は正しいものであり、最終的には裁判は勝利するであろう。スコットランド法廷がこれらの裁判を下級裁判所にとどめているひとつの理由は、陪審裁判でわたしたちが無罪になるのを防ごうというものである。現在までにイングランドで行われたトライデント・プラウシェアの裁判の一つは不一致陪審だったが、これが再審に持ち込まれた場合、「無罪」と判断される見とおしはかなり高い。判決は、財産ヘの損害の理由が重大犯罪を防止するための手段として合法的かつ正当であるという抗弁が認められるかどうかに左右される。1996年イギリスの裁判制度を揺るがせた画期的な裁判があった。わたしを含む4人の女性が、インドネシアに輸出され、東チモールの虐殺を継続するのに使用される可能性のあったホーク・ジェット戦闘機に150万ポンドの損害を与えたことが、無罪になったのである。わたしたちは6ヶ月間拘留された後、1996年6月に釈放された。わたしたちは確かに戦闘機を破損しインドネシアに輸出するのを阻んだことを認めたが、それはその戦闘機が無辜の民間人を爆撃するのに使われるおそれがあり、そしてこのことは国際人道法に違反しているので、わたしたちの行為は合法的かつ倫理的なものだったと説明した。わたしたちはその裁判に勝った。同様にトライデントに対する裁判でも、わたしたちは法的論争に最終的には勝利するだろう。法は倫理と一般の道徳に基づいており、国際社会にとって、戦争に関するすべての法を公平に執行し、平和的かつ実践的な核廃絶へのあらゆる努力を支持する以外に道はないのであり、したがってわたしたちは最終的に勝利するだろう。

 トライデント・プラウシェア2000はより多くの世界市民が、イギリスに来て核廃絶行動に加わり、裁判闘争でかれら、および彼女らの行動の正当性を訴えて欲しいと、活発に呼びかけを行っている。日本からは多大な精神的支持を得てきた。今後日本人が何人かわたしたちの行動に参加し、法廷で力強い証言をすることになれば、どんなにすばらしいことだろう。

トライデント・プラウシェア2000に関する詳細は次の連絡先へ。

トライデント・プラウシェア2000:42-46 Bethel St. Norwich, Norfolk, NR2 1NR, UK
電子メール:tp2000@gn.apc.org.
ホームページ: http//www.gn.apc.org/tp2000

トライデント・プラウシェア2000を中止するための基準は次のとおりである。

 イギリス首相、外務大臣、防衛大臣が、書面、または下院での声明によって2000年1月までにすべての核兵器の撤去、および声明が非核兵器による安全保障政策の実施を開始することを明らかにした場合、この活動を中止する。

 わたしたちは、そのような作業は国内的には、他国政府や組織との協議なしで、政府が直ちに国防省に実施を求めることができること、対外的には供給国や同盟国との協議が必要な政策変更とがあることを認識している。

 わたしたちは、イギリス政府が核兵器撤去に向けての真の前進が見られると判断した場合、いつでも直接行動を中止する用意がある。しかし、その実施作業が逆行したり、また理由なく延期された場合はそれを再開する。イギリスの非核化の過程には、次のような明確かつ実効的な要素を政府が誠実に遂行することが不可欠である。

i) イギリスのトライデント潜水艦の24時間監視行動を直ちに中止すること。
ii) アメリカから、今後一切トライデント潜水艦を購入しないこと。
iii) 2000年までにイギリスの全核弾頭を発射装置から取り外し、別の場所に貯蔵すること。
iv) 今後一切、アメリカの核兵器をイギリスに配備しないこと。イギリスはNATOともに、ヨーロッパからのすべての戦術核の撤去に努め、いかなる状況にあっても、核先制攻撃をせず、また核兵器をもたない相手に対して核を使用しないという政策の確立に努めること。
v) トライデント・ミサイルはアメリカに返還し、核弾頭は、合意された日までに核兵器保管施設、オルダーマストン、バーグフィールド(Aldermaston、Burghfield)に返還されること。
vi) イギリスの核兵器の解体は、できるだけ速やかに、安全に、そして柔軟に行い、遅くとも2010年までの完了を目指すこと。
vii) ふたたびトライデントその他の核兵器を採用しないこと。
viii) イギリスの核兵器工場を、核兵器修理製造のための研究開発施設から、厳重かつ実効性のある国内外の基準、大量破壊兵器に関する国際条約の基準に合致した核物質の安全な処理と貯蔵に適した、核兵器解体施設に転換すること。
ix) 核兵器削減に向け、できるだけ速やかに核兵器に関する暫定条約の交渉を実現するため、イギリス政府が系統的かつ進歩的な努力を、積極的かつ創造的に行うこと。この努力がどれだけ誠実で建設的なものであるかは、国連総会決議、NPT再検討会議、軍縮会議、五大国会談、NATO、およびその他の関連した諸会議でイギリスが示す態度によって判断されるであろう。