解任に値する暴言

ある新聞の速報記事(下記)には唖然とさせられる.

まず,このような恐るべき違法な脅迫発言を,何の批判的コメントもなしに垂れ流すという新聞の態度である.おそらく違法性に気付いていないのであろう.この新聞の大学関係の記事をネットで見る限り,ほぼ発表ジャーナリズム,つまり大本営発表の伝達機関に過ぎないように思える.二つ目には,目の前でこのようなとんでもない発言を許してしまうという国立大学の学長たちの烏合の衆ぶりである.だれ一人として怒らなかったのだろうか.あるいは「お家のため」を考えて「自粛」したのだろうか.小泉首相の言うところの「骨太さ」を少しぐらい勉強したらどうか.

このような発言が,少なくとも新聞に批判的扱いもされずにそのまま出てしまうという背景には,やはり文部科学省と国立大学との法的な関係についての根本的な誤解がある.今もあるのかどうか知らないが,少なくとも10年ほど前は「文部省職員録」というのがあって,冒頭に文部省の職員名が,それに続いて国立大学の教職員の名前が続いている.あたかも国立大学は文部省の下部機関のようであり,これを文字どおり受け取る考えを私は「職員録イデオロギー」を名付けている.しかし両者ともそれぞれの設置法に根拠を持っており,「国会の前に平等」というのが実際の法制度なのだが,なぜかこれが忘れられている.

この工藤発言は,国会は自分たちの思うとおりに動くという,恐るべき思い上がりに基づくもので,その意味でも重大な違法性がある.これだけで十分解任に値する暴言であろう.

この発言を聞いて「それでは自分の大学は頑張らなくては」などと思った情けない学長も,ひょっとして数人はいるかも知れない.「これに抗議でもすれば,役人ににらまれてわりを食う」と.しかし保守にせよ革新にせよ,役所への従順さで大学の存廃を判断するような国会議員が多数であるはずはない.個々の国立大学の存廃は,国民の総意によって国会で決められる.みずからの信じるところにしたがって大学運営を行ったにもかかわらず,もし国民が廃止を選択すればそれを受け容れるというのがこの国の法制度である.

このような文部科学省官僚の思い上がった発言には,次のように忠告するのがいいだろう.「あまり法をわきまえない態度をとり続けると,場合によっては見限らざるを得ない.文部科学省廃止の法律を議員に提言する局面もあるかも知れない」と.

文部科学省は,世間の圧力から自分たちが守ってやる,悪いようにはしないから言うことを聞きなさい,こう言ったまでだ,と開き直るかもしれないが,これが空約束なのはもう何度も繰り返し証明されている.

ニューズウィークの最新号の,大阪の小学校での凶行を扱った記事に,怒りの抑圧が犯罪につながると書いてあった.我々も必要なときには正直に怒りを表明しなければならない.それがカタストロフィーを防ぐ良い方法である.

なお文部省と国立大学の関係については,拙稿「文部省の違法行為・従順な大学」をご覧いただきたい.
../UniversityIssues/obedient-universities.htm



Date: Thu, 14 Jun 2001 20:37:10 +0900
To: he-forum <he-forum@ml.asahi-net.or.jp>
Subject: [he-forum 2127] 東京新聞06/14

『??新聞』ニュース速報2001年6月14日付

国立大の削減方針を強調
文科相、学長会議で

 遠山敦子文部科学相は14日、東京都内で開かれた国立大学長会議で「大学の運営基盤を強化するためには大胆かつ柔軟な発想で再編、統合を進めることは不可欠だ」と述べ、積極的に国立大の再編を進め、大幅な削減を目指す方針を強調した。

 遠山文部科学相は「再編・統合の大胆な計画をお聞かせいただき、最終的にはわが省の責任で具体的計画を策定したい」として、同省の主導で大幅な再編を進める意向を示した。

 会議では工藤智規高等局長が「努力が見られないと取り残さざるを得ない。場合によっては見捨てていかざるを得ない局面があるかもしれない」と述べ、各大学に早期の計画策定を促した。