海外の大学の日本語科・日本研究研究室へのメール(03年1月13日)

突然のメールをお許し下さい.
はじめまして.私は日本の国立大学(佐賀大学)で物理学を教えている者で,豊島耕一と申します.大学の教員で,日本語・日本研究を専門とされている方を,検索エンジンで探してあなたのアドレスを見つけました.

日本の国立大学の「独立行政法人化」については耳にされたことがあると思います.たいへん重大な問題であり,大学の国際性や「学問の自由」の普遍性から,世界の同僚の理解と協力を求めたいと思って筆を執りました.学問分野によらない一般的な問題ですが,日本研究の皆様にはより関心を持っていただけるのではないかという期待から,また日本語の文章が可能かと思い,メールを差し上げています.

欧米メディアも含めて,一般に報道は「独立行政法人化」について,「大学の独立性が増し,その代わり責任も求められる」といった伝え方をしていますが,これは全くの虚構です.実は文部科学省の権限が異常に強まるのです.今まで大学が自由に決められたことについて,6年ごとの「中期目標」と称する大学への文部科学省の命令制度が創設され,これで縛られるのです.「中期目標」の内容にほとんど限定がありませんので,中央政府は大学を意のままに操ることができます.これに従わなければ文部科学大臣による「廃校」措置が待っています.

これは,イギリスやNZの改革とも全く異なるものです.そして「学問の自由」を保障した憲法23条に,また,教育への官僚支配を禁止した教育基本法10条に違反しています.明治憲法に戻る,とも言えません.なぜなら戦前でさえこのような政府から大学への命令制度は存在しないからです.そこで私たちは,大学教員やジャーナリスト,政治家,一般市民による反対運動組織「国立大学独法化阻止全国ネットワーク」を作り,一昨年から活動を続けています.

一つの国で大学の自由が大きく損なわれることは,世界の大学コミュニティーとアカデミズムにとっても大きな打撃ではないでしょうか.私たちはユネスコにも提訴しています.また「世界科学者連盟」にもアピールを送りましたが,会長は私たちの提訴を支持してくれました.

政府は間もなく「独立行政法人化」のための法律を国会に提出しようとしており,夏までには成立させるつもりのようです.事態は切迫しています.外国の同僚の皆さんからの発言は私たちの反対運動を大変勇気づけます.何らかのメッセージをいただければ幸いです.もし私どもの「独法化阻止全国ネットワーク」の賛同者になっていただければ,たいへん有り難く存じます.

私たちのホームページは次のとおりです.ユネスコへの提訴文も含めて,たくさんの文書を置いています.
日本語 http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html
英語  http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znete.html

公平な判断をしていただくためには,これを推進している側の主張も必要ですが,あまり多くはありません.英語による政府の公式説明は次の場所にあります.
http://www.kantei.go.jp/foreign/central_government/03_more.html
他の英語の文書は次にあります.
http://ac-net.org/dgh/e-index.html

北海道大学の同僚はこの問題の最も網羅的な情報サイトを作っています.
http://ac-net.org/dgh/index.html

なお,まもなく私たちの市民向けのチラシが出来上がります.郵送のご希望をいただければ大変うれしく思います.敬具

              豊島耕一(佐賀大学教授)
              TOYOSHIMA Kouichi
              e-mail : toyo@cc.saga-u.ac.jp
              国立大学独法化阻止全国ネットワーク事務局長
              (代表 山住 正己,東京都立大学名誉教授)
              http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp
              佐賀大学理工学部物理科学科
              840-8507 佐賀市本庄町1
              phone/fax: +81 952-28-8845