多分野連携シンポジウム「大学界の真の改革を求めて」へのメッセージ

全国大学高専教職員組合

多分野連携シンポジウムに参加された皆さんの大学・高等教育の自治・自律的機能の充実・発展をめざす取り組みに敬意を表しますとともに、連帯の意を表明します。

1. 私たちが、最重点課題としてとりくんだ「国立大学法人法案」、「独立行政法人国立高等専門学校機構法案」等関係6法案(以下、「法案」と略す)に反対する運動において、全大教・単組は国会内外、学内で総力をあげてとりくみました。また、皆さんを含め、学内外の多様な草の根的な運動が展開されました。

その結果、「法案」を「満身創痍」に追い込みましたが、残念ながら、7月9日、「法案」は成立しました。しかし同時に、いくつかの前進的な特徴と経験を生み出し、会期内に「法案」を成立させない状況をつくりだす等、当初の政府・文部科学省の思惑を打ち破る展開を見せました。

第1に、衆参両院における審議を通じて、政府・文部科学省のいう大学の自主性・自律性の拡大とは逆に国の統制・関与が強まり、大学自治の範囲を狭める危険性が大きい等「法案」の問題点がますます明確になり、私たちの主張した法人制度のゆがみと問題点が浮き彫りになったことです。

第2に、政府・与党が当初考えていた短期間の審議・可決との目論みを打ち破り、野党が結束して「重要法案」として位置づけ、徹底慎重審議を追求した結果、前述したように、会期内成立を阻むこととなり、「法案」の採決に当たっては全野党が政府案に反対する状況をつくりだしたことです。

  第3に、私たちのとりくみも反映し、国会審議を通じて今後に活かすべき答弁・論点も引き出しました。また、「法案」採決に当たって、衆議院では10項目、参議院では23項目もの附帯決議が採択されたことです。これらは全大教中央執行委員会声明(2003年2月28日)や「国立大学法人法案に対する第2次対案」などにおける私たちの主張を一定程度反映したもので、今後の運動において権限濫用等の歯止めとして活用しうる重要な論点となりうるものです。

2. 「国立大学法人法案等関係6法案」に反対する大きな運動をつくりだした主な要因は次の通りと考えます。

  その第1は、「法案反対闘争」において、国会、職場、地域における運動が総合的にとりくまれ、それが相互に関連、結びつき大きな力を発揮したことです。

私たちは、国会に対するとりくみとして系統的に各政党との会見等を行い「法人化」の問題点を訴えてきました。法案提出前にも数次にわたる全国規模の国会請願行動を行うとともに、政党、国会議員との会見を行い、「法案」が国会に上程されて以降は、大規模国会要請・請願デモを含め、10数次にわたる国会議員要請・傍聴行動を展開し、各議員に対する働きかけを一段と強めました。また、単組でも地元選出国会議員に対する働きかけが行われ、著名人を含め、学内外の広範な個人からも議員に対する要請が行われました。

単組においては、各種学習会の開催をはじめ、地域における他団体との共同シンポジウム、意見広告等のとりくみが行われました。また、学内における法案反対の声を拡げることに尽力し、そのなかで少なくない教授会が法案反対・批判の見解・声明を公表したことも国会審議に大きな影響を与えました。さらに、国会の審議にあわせて、本会議、委員会のすべてに傍聴行動を全国的に展開し、傍聴者の多さが国会内で話題にされるなど国会審議に影響を与えました。

第2に、私たちの「要求・政策」活動も重要な役割を果たしました。

私たちは、「対案」等を基に、教育・研究機関である大学等にあって、憲法で保障している学問の自由と大学の自治がその生命であることから、「法案」の中期目標・計画、評価、運営組織等に即して、その問題点を具体的に指摘してきました。これらを反映し、国会論議のなかで教育研究機関の「特性」、すなわち、憲法第23条に基づく学問の自由と大学自治のしくみが大学等の運営にとって不可欠であることが基本問題として議論され、確認されました。

第3に、「法人化」反対を中心としたとりくみを通じて、かってなかったような組合員の拡大の経験が生まれつつあることです。「法人化」問題についての全教職員対象のアンケートにとりくむ中で、60名もの教職員が一斉に組合加入する等の特徴的な経験が次々と生まれています。その結果、全大教全体でも、1年間で1000名を超える新たな組合員を迎え、4月以降のとりくみに引き継がれています。

このように、「法人化」反対の運動と結合して、全大教・単組における組織強化、組合員拡大が意識的にとりくまれたことも特徴の一つです。

第4に、他団体との連携・共同行動の重要性です。全大教は、運動方針に基づき「ナショナルセンターの所属の違いをこえた幅広い共闘を追求」し「当面、中立であることの実効ある運動」を最大限行い、それが運動の前進に大きな役割を果たしました。

「法案」の国会上程にあたって、各種団体・労働組合に懇談をよびかけ、「3・27大規模国会行動」に協賛団体となった多くの団体を中心に12団体で「国立大学、国立高専の法人化反対、大学・高等教育の充実をめざす連絡会」を結成し、国会傍聴・集会・デモ等諸行動を展開しました。また、日教組とも一致できる共同のとりくみをすすめてきました。

また、学内外の「教員有志」著名人等による「草の根的」運動の拡がりも大きな力を発揮し、貴重な役割を果たしました。このような共闘の輪の広まりが運動の前進に大きな力を発揮しました。

3.私たちは、法人法案が成立した事態をふまえ、大学・高等教育の自治の内実を自らが築き上げ、未来を拓く大学・高等教育の再構築に向けた新たな課題に挑戦するものです。

そのためには、この間のとりくみの経験から、日本の大学・高等教育の新たな構築と全大教・単組の政策・運動、組織強化を図るうえで、深めるべき課題と方向性を明らかにすることが重要です。

  国立大学法人法、独立行政法人国立高等専門学校機構法は、行政改革と国際競争力強化の論理に基づく歪んだ法人の制度設計とされていることや、「非公務員型」とされていることなど、私たちの行く手には様々な困難・障害が待ち受けています。同時に、最近の組合加入をはじめとした多様な経験が示すように、組合への期待と関心は大きく広がりつつあります。

こうした期待に応え、国立大学、公立大学、高専、大学共同利用機構(以下大学・高等教育と略す)の労働組合として、労働関係の変化により、自らの労働条件決定に自らが参加するとともに、教育研究経営事項についても、労使協議制や労使協定に基づき参加・関与しうる枠組みを積極的に活用するとりくみをすすめます。

そして、大学・高等教育の自治の内実を自らが築き上げ、未来を拓く大学・高等教育の再構築に向けた新たな課題に挑戦するものです。

そのため、全大教は、今日から2日日程で単組代表者会議を開催し、今後の大学・高等教育の新たな発展と教職員の身分保障、待遇改善・地位確立に向けた取り組みの議論と交流を集中的に行います。また、11月下旬には、「国立大学法人の課題_新たな『知の共同体』の構築をめざしてー」をテーマに第15回教職員研究集会を開催します。

  貴シンポジウムが、人類と地域社会に貢献する大学・高等教育の自治・自律的機能の新たな構築に向け、貴重な成果をあげられることを期待して連帯のメッセージといたします。