朴巨用(パク・コヨン、祥明大 英語教育科 教授、教授労組副委員長)
1.軍事政権から民間政府へ:イデオロギー的国家機関 → 奇形的な新自由主義的経済論理の全面化
□ 教育人的資源部より財政経済部、産業資源部、建設交通部などの主張が教育政策を主導(教育市場開放、教育特区新設案、産業教育振興法、 Pangyo 新都市学園区域設置案など)。
□ 大学構造調整、教授契約任用制、年俸制:専任教授40%くらい。
□ いわゆる「私立大学清算法案」、大学のM&A許容方案。
□ 総長(学長)直接選出制廃止案、責任経営制導入案など。
2.「国立大学運営に関する特別法」(国特法)の導入過程
□ 1987 教育改革審議会:教育改革の総合構成、教育改革の長短期推進計画、大学の自律性の伸長のため特殊法人化を推進。
□ 1992 ソウル大学校: 長短期発展計画、特殊法人化を長短期発展計画として完成。
□ 1994 教育部教育改革委員会:大学改革討論会主題発表、ソウル大と放送大の特殊法人化を推進。
□ 1994 行政革新委員会:大統領報告事項、 98 年から国立大学の特殊法人化試行予定。
□ 1995 教育改革委員会:5.31教育改革案、希望する国立大学の場合、特殊法人化を推進。
□ 1996 教育部韓国教育開発院:新経済長期構想の中、教育部門の課題、国立大学の競争力を高めるために 2000 年以降に地方自治団体が運営する公立大に転換するか、民営化または特殊法人化の方案を検討。
□ 97. 9 教育部:国立大学特別会計法案を立法予告。
□ 97. 10 教育部;国立大学特別会計法案導入を留保。党政協議の結果。
□ 98. 4_5 教育部:主要政策課題を採択、大学構造調整のための実務推進チームで国立大の経営革新の一環として制度導入を再推進。
□ 98. 6_99. 4 教育部:国立大学特別会計法案を関係省庁間協議。
□ 99. 3 教育部:教育発展 5 ヶ年計画、国立大学の特別会計制度の導入方針を発表。
□ 00. 7 教育部の国立大学発展計画策定総合委員会:「国立大学発展計画(案)」を発表。
□ 00. 12 教育部:「国立大発展計画」を確定、発表。国立大特別会計制度 2002 年から導入予定発表。
□ 02. 2 教育部の大統領業務報告:「国立大運営に関する特別法」(仮称)制定、 03 年から導入予定を報告。
□ 02. 11 ハンナラ党などの議員 20 名:「国立大運営に関する特別法案」を発議。
□ 03. 4 教育部の大統領業務報告:「国立大の運営に関する特別法」を引続き推進することを報告。
□ 教育人的資源部 → 国立大特別会計法案を推進。
野党(ハンナラ党)国会議員 → 国特法を推進。
; 来年の総選挙を意識、また与党の分党のため、国特法は現大統領の任期中には通過される可能性が薄いと判断される。
3 . ハンナラ党議員などの国特法提案の理由
現在、国立大学は国家機関の一つとして政府全体の共通的な法規や指針の適用のため、1)大学ごとの特性のある教育・研究を自分の責任と権限のもとで遂行することに限界があり、2)大学財政が国家の一般会計、期成会費、研究費会計などに分断され透明かつ効率的な運営ができない状況。
だから、国立大運営に関する特別法を制定し、1)国立大が組織・人事をより自律的に管理できるようにしながら、2)一定の国庫支援の保障および収益事業の認定などによって財政を安定的に確保するようにし、3)国家の一般会計と自分の期成会費などを統合運営するなど責任経営制を構築するようにし、大学の発展を図る。
4 . 国特法の主な内容
□ 国立大運営の自律性と効率性を高めるため、大学の意思決定と組織、定員、人事、予算および会計管理などに関する特例を規定する(案の第一条)
□ この法は国家が設立・経営する高等教育法第二条第一項ないし第五項の規定による学校に対して適用する。(案の第二条)
□ 大学の長は中長期大学発展計画および財政運営計画を策定し、 これを誠実に実践すべく、教育人的資源部長官は大学の努力に評価を実施し、行政および財政支援政策にこれを反映しなければならない。(案の第五条)
□ 大学財政運営に関する主要事項を議決するために 9 人以上 15 人以内の委員として構成される大学財政委員会を設置する。(案の第六条)
□ 大学の長が要請する場合、教育部長官は当該大学の課長級( 4 級公務員)定員の20%範囲内で教育部またはその公務員を対象にする職位公募の方式による職位を与えられる。(案の第九条)
□ 大学の長は教育運営上必要な時には大学会計の自体収入で経費を賄う国家公務員以外の教員および職員を任用できる。(案の第十条)
□ 国立大学の財政を安定的に確報し、それの運営の自律性と効率性を高めるために、各大学に国家支援金と自体収入金を統合運営する大学会計を設置する。(案の第十一条)
□ 大学の会計年度は毎年 3 月 1 日に始め、来年2月末に終了する。(案の第十二条)
□ 国家は会計年度毎に国家公務員の人件費、非常勤講師の講師料、施設費と内国税総額の 0. 3%に該当する運営費などを支援する。(案の第十五条)
□ 大学会計の毎年度の予算編成指針は教育部長官が大学の長の意見と関係中央行政機関の長の意見を聞き作成し、会計年度開始 120 日前に大学に通報する。(案の第十七条)
□ 大学の長は会計年度毎に大学会計の歳入歳出予算案を編成し、会計年度開始 30 日前まで大学財政委員会に提出し、会計年度 10 日前までこれを審議・議決する。(案の第十八条)
□ 学生の負担金(登録金)は大学が提供する教育プログラムの水準と物価など経済全般に及ぼす影響を考え大学の長が算定し大学財政委員会で審議・議決する。(案の第二十八条)
□ 教育部の長官は 第六条第五項(財政委員会)の議決事項が法令に違反するか、大学の教育を明らかに害する可能性があると判断されればその議決事項を取消すのができ、 この法を違反する場合には大学の長などにそれの是正または変更を命ずることができ、(案の第三十一条)命令に従わない者は 1 年以下の懲役または 500 万ウオン以下の罰金を言渡す。 (案の第三十二条)
5 . 国特法の問題点(ソウル大教授協議会、全国国・公立大学教授協議会の検討意見、立場の要約)
□ 大学の民主主義と自治を無視、学問の自由を侵害:官僚統制の強化、財政・行政規制の強化、教育部の統制強化。
□ 支援の最小化、自体収益金の最大化:大学の企業化、登録金の引上げ、大学序列化の固着、国立大の民営化の効果。
□ 私立大学( 84 %)、営利企業化の加速化、教育環境の悪化: 高等教育の公共性の低下。
4 . 結論
□ 具体的な代案を備えない反対闘争だけでは世論に対する説得力がない。
□ 国立大学の非効率的、官僚統制的な運営構造の改編、その先決条件は民主主義的なコミュニケーションの確立・民主的な意思決定の実現。
□ 大学教育の公共性の強化、国家の義務性の強化。
□ 大学の自律権の拡大(教授協議会の公式機構化など)と教育環境の国際水準化。
□ 学校運営に教授・職員・学生の参与程度の向上。
□ 民主化なしに学問的発展・成果なし。
□ 大学はお金を儲けるところではなく、生産的にお金を消費するところであるとの雰囲気の造成。
□ 国際連帯、連携の必要性