「学問の自由」と高等教育における機会均等を守り拡大するために、
      日韓両国の大学人、市民が立ち上がることを訴える

 今日、大学の教育と研究において、国際的な協力と連帯はますます不可欠の要素となっている。しかし、その教育と研究のための十分な人的・物的資源の確保、そしてその活動に於ける自由の確保、すなわち「学問の自由」の擁護においても、国際的な協力の必要性が見落とされてはならない。われわれは今日、特にこの面において、日本と韓国の大学人の協力と連帯の必要を強く感じている。それは今、両国に於いて、これらの基盤が大きな脅威にさらされているからであるからでる。それらは「学問の自由」に対する脅威と、公的な財政的支持の後退によって起こる高等教育への平等なアクセス権への脅威である。

 韓国においては次のような問題が生じている。(1)「国立大学運営に関する特別法」が準備されており、これは国立大学の財政を独立させて、大学内に「予算委員会」を置くことにより、長期的に国立大学の民営化を意味する。(2)国立大学の責任経営制が進められているが、これは授業料の引き上げなどを通じて、学生たちの負担を顕著に増大させるだけでなく、企業の経営手法の大々的な導入によって、大学を企業化させる結果を招来する。(3)総長選挙における直接選挙を廃止しようとする企てが進行しており、これは学内の民主主義と自治を破壊する。(4)既に施行されている教授契約制は、教授の身分を不安定にし、有能な教育、研究の人材確保を困難にし、また学問の自由を阻害するものである。

 日本では、国会において国立大学と高等専門学校を「独立行政法人化」する法案が審議され、採決も間近と言われている。この法案においては、大学の「独立性を高める」という名目とは正反対に、文部科学省からの各大学に対する命令制度、すなわち「中期目標」を文部科学大臣が決定するという制度が創設される。これは大学の教育・研究全体を中央政府の直接的な支配の下に置くもので、大学を行政機関に変えるに等しい。中学、高校の社会科教科書で悪名高い「教科書検定」が、大学の教科書に対して行われても何ら不思議はない。また法案では、学長の権限が独裁的となること、「非公務員化」により教員の身分が不安定になることなど、大学における民主主義と学問の自由を危うくする要素が数多く含まれている。
 このように政府の支配が強まるのとは逆に、政府は財政的な責任を負わなくなる。世界的にも高いレベルにある日本の国立大学の授業料はさらに高騰するであろう。

 ユネスコの諸宣言は高等教育の使命として「平和への貢献」を強調している。アクセスの不平等による高等教育の機会均等の破壊と、政府の権力的支配によって大学が政府の道具になり下がることは、重要な平和の基礎をも堀崩すものと言わなければならない。我々は、大学の自由と高等教育へのアクセスの機会均等を守り発展させるため、そしてひいては東アジアの平和を増進するため、両国の大学関係者、市民が立ち上がることを訴える。

2003年6月10日

           韓国側 韓国教授団体連合*
           日本側 国立大学独法化阻止全国ネットワーク
               佐賀大学教職員組合
               全国大学高専教職員組合九州地区協議会



*韓国教授団体連合は次の次の7団体
民主化のための全国教授協議会、全国教授労働組合、全国国公立大学教授(協議)会、
全国私立大学教授協議会連合会、 全国専門大学教授協議会、 学術団体協議会、
韓国非正規職教授労働組合