国立大学独法化阻止 全国ネットワーク

文部科学省交渉記録

初版 2001.11.13,改訂11.14,11.29

2001.10.5

出席者(敬称略)

文部科学省: 杉野 剛 (大学改革推進室長)

       小谷 直和 (大学改革推進室専門職)

紹介議員:  山内恵子 衆議院議員(社民党)

全国ネット側:豊島耕一(全国ネット事務局,佐賀大学)
       近藤義臣(群馬大学)
       白井浩子(岡山大学)
       田端博邦(東京大学)
       野田隆三郎(岡山大学)
       橋本修輔(宮崎大学)


残念ながら多忙などの理由で杉野氏の校閲は得られていません。内容については全国ネット側の責任で公表いたします。

注:以下の記録では全国ネット側の出席者の発言はすべて「ネット」と表示しました。見出しを付けました。

 質問事項

 別紙参考資料 1997年10月 町村文部大臣所信


文部省が反対から賛成に転じた理由

ネット:この質問書を渡していたと思うんですが、時間が限られていますので、できるだけ簡潔にお答えいただいて、できるだけやり取りをしたいと思います。項目が多いのですが、重点的にはA−1の「態度が変わった理由」とか、「欧米との比較の問題」、時間が限られているのであればAのところを重点的にということでよろしいんです。

文科省:それでは、私のほうからお話をしていってもよろしいでしょうか。止めて頂く必要があれば止めていただくということで。まず最初に、「文部省がなぜ独立行政法人化を宣言してから撤回して逆に推進したのか」というお話ですが、私は昔病院指導室というところで付属病院の担当をやったりして、もともと国立大学の独法化は、病院関係が発端なんです。それで、病院だけ切り離すという議論になったりして、私も当時は「反対だ」と言って全国の大学病院を回って、話をして回ったりしたんですけど。正直言って、行革がらみでこの制度が出てきたということもありまして、効率性を追求するような、そういう制度にすることは大学のシステムとしてははなじまないだろうというふうに思っていました。
 当時行政改革会議が動いていて、制度の中身が良く分からないということもあったりして、しかし経緯として行革がらみで、それはおのずと効率化を求めるというようになるであろうし、ひいては財政的な削減ということにも結びつきかねない。行革が財政改革というところまでセットになるというような不安感を持っていましたので、それはなじまないということで、反対をしてたんですけども、その後制度の具体的な姿が分かってきて、有馬大臣も言っていましたが、国としての財政的な負担、ということが明確化している、言葉を変えると、国が責任を負うべき制度だ、国の仕事の範囲内だということが明確になってきたということがありまして、それが一つの大きな方針変更の背景にあったと思っています。

ネット:97年に文部大臣が記者会見で反対声明を出したときに、その理由には3ないし5年の目標を指示するとか、そういうことが大学になじまないという点が非常に大きな反対の理由になっていますが、それは変わってないわけです。

文科省:そこは変わってませんし、最終的に閣議決定でも確認されたように、国立大学を独立行政法人化するかしないかといったときに、それはまず大学改革に資するのかどうか、そういう観点でやるんだということでは確認できてますので、そういう観点からアプローチができるという政府の方針のもとならば、いろいろ実際には独立行政法人通則法そのままではなくて、あれこれとリフォームすることが可能じゃないかということで、具体的な制度設計の方に入ってきたということです。

ネット:だから態度変更の理由としては、今おっしゃったことをまとめると、国が責任を持つということがはっきりしたということと、大学改革のためということを言っている。その2点ですか。

文科省:そうです。

ネット:しかし、それは言葉だけですよね。はっきり言って。

文科省:ただ、言葉だけですけども、やはりそういう基本的な原理というところが、押さえられるのかどうかということが重要じゃあないんですか。内閣として、これは大学改革の一環として検討するんだと、しかも大学の自主性を尊重するんだということが確認されているということは、私たちにとって非常に大きなよりどころになっている。

ネット:その場合、大学改革という中身ですね、問題は。どういう中身で大学改革というのを考えられているのか。われわれは、現在出されているような改革の中身に反対しているんです。

文科省:本当ですか。全面的に反対ですか。そんなことはないでしょう。

ネット:それは、人によって違うと思いますよ。大学改革に資すればいいという場合の大学改革の中身です。そこをどう考えるのか。ここが一番肝心な点です。

大学の法人格について

文科省:沿革的にいえば、日本の国立大学だけがなぜ法人格を持っていないのか。それがないことによって、いろんな意味で大学の運営の裁量がないわけです。それはずっと長らく議論されてきていて、実現しなかった話しです。だけどずっと懸案となってきた話しです。

ネット:そこも問題です。どういう点で具体的に裁量がないかということも含めていうと、法人格という問題について、形式的になくても実質的には法人と変わらない。

文科省:そんなこと大学の先生がおっしゃってましたか。そんなこと言わないでしょう。文部省の一支部局になっていて国の規制がいるんだと言っていて。

ネット:行政的な制度はそうなっています。運営の実態です。

文科省:運営の実態はいろいろ変えてきましたよ。教特法も作ったし、国立学校特別会計法も作ったし、運用面でもいろいろ工夫してきて通常の国の機関とは違う扱いにしました。だけど、そうはいったって結局は国の行政組織の一部だということからくるいろんな規制がずい分あったわけです。これまでもいろいろ規制緩和といって特に臨教審以降規制緩和路線をやったけれども、どうしても乗り越えられない予算単年度主義とかもろもろあるわけです。それは大学の先生は、現場でそれは非常に不自由だということをずい分おっしゃっておられたじゃないですか。それを改革する絶好のチャンスだというのがまったくの法人化だと思うんです。それが独法がいいのかどうかというのは議論があると思うんですよ。あると思うけど、そのことがずっと長らく議論になってきた。

ネット:質問項目の2と先ほどのお話しは関連すると思うんですけれど、欧米の大学の場合は、国立大学、州立大学のままで法人格を持っているわけです。ですから日本の場合も、そういうことがなぜできないのか。理由は何と考えておられますか。

文科省:今度の案がまさにこれなんです。国が設置者のままで法人格を与えるという中間報告になっていますから。まさに、欧米流のものをめざしているんです。

ネット:欧米流といえば、例えば質問項目の2番目、「政府による目標の指示、実行計画の認可」という形態をとっている例がありますでしょうか。他の外国に。

文科省:全面的にこういうシステムをとっているところはないかもしれません。

ネット:例えば、国立学校財務センターの報告がありますけれど、ないと言っていますよね。なぜ、欧米の例にないような、異常と思いますけれども、こういう非常に強く政府が指示するような制度をとられるのか、ということなんです。

文科省:法人格を持つか持たないかというレベルの議論と、具体の国の関与の手法の議論とでは相当レベルが違うと思います。法人格を持つということは、それはおよそ大学の自立的な運営ということを考えると、やはり日本の国立大学についてもいつかは結論を出さなければならない課題だと思います。
 ただ法人化したあとに、国とのかかわり、国立大学ですからね、私学じゃないですから、国民の税金を投じるわけですから、国との関わりをどういう形で組み立てるかというのは、それは各国ともいろいろ悩んで、今工夫をしている真っ最中じゃないですか。私たちは、そういう認識でいます。この中期目標、中期計画という仕組みが、未来永劫これが不動のものであって、ベストのものであって、100年や200年もこれでいいんだというものかどうかはわかりませんけれども。その法人化するときに、一つの手法として国との関わりを考えるときに、いろんな自主性を尊重する仕掛けを用意しながらではありますけれども中期目標、中期計画そして評価と自己評価という仕組みを入れるというのは、一つの選択肢だと思っています。そこまで欧米の仕組みをまねようにも、欧米だってみんないろいろ苦労して、まちまちの仕組みを持っているわけですから、そこまで欧米に見られない仕組みだからだめなんだ。そこまで、……。

ネット:行政が統制を加えるということが問題だと思います。

ネット:欧米のまねという意味じゃなくて、やはり、政府からの独立ということですね。

文科省:これはだから、統制と認めるかどうかというのは。

ネット:まさに統制です。

ネット:法人化というのは大学人の中にも、いいことだという人があるんですよ。ところが、ここで言われている法人化は言葉は違っても独立行政法人化じゃないかと。独立行政法人化はなじまないと言っているから、中身はほとんどいっしょだけども、そう言うわけにいかないから、国立大学法人化という言葉を少し変えることによって、そして大学改革の一環にも寄与するというふうにいわれてるけれども、中身は独立行政法人化そのものだと。今の中期目標とかの話しでも、結局政府が最後は決定しますよと言われると、はじめに言われた自主性、自立性とかいうのはどういうことなの、現場の教育研究の実態を実際にご存知できない立場ですから、本当に学問を特に高等教育の教育現場とか研究現場とちょっとやはりずれが生じてる、行政の方々がそこは分からないはずなのに、なぜ。

文科省:時代だからです。

ネット:それは大学人にしかわからない。

文科省:大学人にしか分からないという理由で、国民の税金を投入できますか。

文部省の下で第3者機関なのか

ネット:だから大学人の全体で、どこかにあったと思いますが、政府の文部省の中に評価委員会作るんじゃなくて、ここで第3者という意味が、本来の意味での第3者というか、学識経験者というか、そういうところで全国の大学の高等教育の評価機関を作るというようなものがないと……。

文科省:それは違うと思います。それをやるんだったら、文部科学省にきちっと位置付けて国の機関にちゃんと位置付けて、そして実質的に大学人とか、あるいはその他の国民の声を代表できるような人にきちっと入ってもらって、役人が案を書くんじゃなくて、そういう人たちにきちっと集まってもらって、どういうメンバーかということも国民にさらして、その人たちに評価してもらうというのが一番国民に対するアカウンタビリティーが高いと思います。

ネット:それは国の機関ですよね。そうすると国の機関ということになると第3者といえるんでしょうか。

文科省:それは国の機関じゃないとまずいと思います。

ネット:そしたら、それは第3者と呼ぶべきじゃないでしょうね。

文科省:呼ぶかどうかは別ですよ。

ネット:国の機関を第3者というんだ。

ネット:だからその辺の言葉がずるさを感じるのよ。

文科省:ずるさって、そんなことはないです。

ネット:独立行政法人制度に則ってるのに、国立大学法人という言葉を使ってみたり、文部省の中の評価機関なのに第3者評価機関と言われると。

文科省:いや、それはずるいと言ってもらうと困ります。巧みだと言って頂かないと。

ネット:逆に狡智いうか……。

市場原理と文部省と大学の上下関係

ネット:税金を納めている国民の一人として発言させていただきます。大学というものは、行政機関と並列に存在しないといけないのです。そうしないと、上下関係を作ってしまったならば、戦前のように大学で、戦争するんだったらば大学は協力しろと、そういう下部組織になってしまう。大学というのは、それと並列に動いてないかぎりは、世界中の大学はそうですけども、そういう存在ではないかぎりは、国を危うくするんです。現在の独立行政法人化というのは、上下関係を作ってしまって、かつ経済原理と競争原理と実績原理で、国が改廃をしてしまう。するとこれはもう、独りで歩く存在ではなくなっちゃうんです。もっと、国民が望むと言いながら、国民が一番嫌う行き先だと思います。

文科省:先生の意見には、まったく賛成なんだけど、そのことがこの中間報告に書かれていることにあてはまると思っていないんです。経済原理とどこにも書いていない。競争原理とは書いてるけれども、市場原理にはなじまないというのが中間報告の前提になっていますから、これは市場原理じゃないんだと、だけども国民に対するアカウンタビリティーということを考えると、国民の税金を私学と違って毎年、1兆6000億投入するんだったら、しかるべきアカウンタビリティーを確保する必要があるということで評価システムを入れようと。その評価システムについては、第3者機関じゃないというご指摘があるかもしれないけれども可能な限り、ピアレビューの要素を入れて、そして信頼性の高いシステムを作ろうとしているのが、この発想だと思います。

 それから、上下関係とは今が上下関係であって、今が形式的には国立大学は文部科学省という役所の一地方支部局という位置付けです。

ネット:そうではないんではないですか。国立学校設置法という法律で存在しています。国立学校は。文部科学省は、文部科学省設置法という法律で存在しています。

文科省:でも国立大学設置法は国家行政組織法の下には置かれている法律じゃないですか。それは国家行政組織であることには間違いないんです。ネット:それはそうなんですけれども、文部科学省が上で国立学校が下だという関係にはありません。どういう法律でそういう上下関係が今あるとおっしゃるんですか。

文科省:でも実際問題として。先生のおっしゃる問題意識と同じで、そこは通常の国家行政組織と違って、教育公務員特例法も作っている、国立学校設置法も作っている。国立学校特別会計法も作っている。いろんな仕組みを入れて、リフォームをして、できるだけ国立大学の自主性、自立性を高めるような仕組みにしてます。だけど、それで貫徹できてないですよ。できてないですよね。

ネット:それは、実態として法律どおりにやってないからであって。

文科省:そんなことないですよ。法律どおりにやっているけども、例えば事務局長の人事を誰がやっているかというと、文部科学大臣がやっているわけです。それは間違いなく、国家行政組織の一部だから文部科学大臣が任命権を持っているわけです。

ネット:だから、それにもかかわらず、教員、教授の任命権とかいうのは委任されているわけですよね。

文科省:そうです。

ネット:そういうかたちで、大学の自主性を尊重するのであれば、委任するという形が可能なわけですから、事務局長だって学長に委任すればいいわけですよね。そういうことは、どうしてできないんでしょうか。本当に独立を考えるんであれば、そういうように事務局長の人事も委任すればいいんじゃないですか。

文科省:それは、そんな細かな議論に入っていくのはどうかと思うけど、教官の人事は大学の自主性、自立性の議論かもしれないけれど、事務官の人事というのはこれは国家行政組織の論理の方が貫徹されてしまうんだと思います。基本的に。

ネット:それはちょっとおかしいですね。

文科省:おかしいことはないですよ。法律はそうなってるんですよ。国会はおかしいと言っているのと同じですよ。

ネット:大学という一つの自立した組織であるということを認められるんであれば、事務官であろうと教員であろうと。

文科省:だから、先生のおっしゃていることと、僕の考えていることは同じだと思いますよ。それは、国家行政組織であっても、できるだけ大学の自立的な運営ができるような仕掛けをこれまでも国会の審議を通じて法律を作ってやってきたけれども、でも乗り越えられないものがあるじゃないですか。それは法人化すべきじゃないですか。

欧米に国が評価し予算配分に直結させる制度はあるか

ネット:例えば、事務局長の人事権なんてのは委任するだけで簡単に独立化ができるわけです。そういうように、言っておきたいと思います。それから、項目、先ほど第3者機関の話しがありましたが4−Aの項目です。問題は、国が、第3者ではない国が評価し、さらにそれが予算配分に直結するということになっていると思うんですけれども、そういう制度をとっている国がありましょうか。欧米に。

文科省:それは、いくらでもあるでしょう。

ネット:ありますか。例えばどこで、どういう制度ですか。

文科省:アメリカの州立大学なんていうのは、これは議会がやっていますよ。国じゃないですか、まったくもって。

ネット:アメリカの場合はそうなってますか。ヨーロッパの場合はどうでしょうか。

文科省:ヨーロッパのばあいはどうですかね。フランスの国立大学というのは、それこそ政府が直接予算措置をやっているじゃないですか。

ネット:あれは、契約を結んでいる。

文科省:一部です。ごくごく一部の契約の概念が入っているけれども、事実上それは今の文科省の予算制度とまったく同じで、政府がそのまま握ってますよね。むしろその仕組みを透明化しようとしているんですよ。

ネット:国立学校財務センターの報告によりますと、そういう評価をしている国はないとはっきり書いてあるんですけど。評価を直結させるような制度をとっている国はないというようにレポートが出ているんですけど。財務センターのレポートです。

文科省:必ずしもそういうことはないと思います。

ネット:それは違いますか。

文科省:財務センターはうちの所轄機関でございますので、私もメンバーに入った研究会に入っていましたけども。

ネット:その辺は見解が違うと。財務センターとは。

文科省:いえ、そんなことはないです。あそこの報告書類もよく読んでいただければわかりますけれども、そのご質問の趣旨がわかりませんけれど、評価を予算配分に直結させる制度を持っている国はありますよね。ありますよね。

ネット:そうですか。

文科省:それが暗黙の評価なのか、オープンの評価なのかわかりませんけれど、基本的にはどの国だって大学の業績を評価して予算措置をしているわけです。今の文科省もそうですよね。各国立大学の業績をある意味では暗黙裡に評価して予算をつけているわけです。それが問題だから、できるだけ透明性の高い評価システムに変えましょうというのが今度の改革ですよね。

ネット:そうしたときに、おたくは市場原理とは違うんだと、しかし、一方では競争原理ということで、予算の配分をさせると言っているけど、本来、日本の高等教育を全体を底上げするためには、悪い評価をされたところに対してはなぜそういう悪い評価になるのか、その条件は地方大学とかは特にそうなると思うんですけれども、そういうときに少ない評価のところを次はたくさんしましょうというような評価にはならなくて、おそらくこのやり方だったなら。

文科省:それはわからないですよ。地方大学だってね、いい研究やってたら、いい評価しますよ。

ネット:評価を次の予算に反映させるというときに、優れた評価にはさらに予算を多くしましょうという意味合いで書かれていると思うんです。そのことが問題じゃないですか。

文科省:どうしてです。どうすればいいんです。

ネット:だってスタートが違う。ネット:レベルが……。ネット:もっと多くすれば。

文科省:みんな平等な条件に、移し返すんですか。

ネット:そうです。その方向で行くべきです。

文科省:それは、日本の学術研究の自殺行為ですよ。はっきりいって。

ネット:どうして。

文科省:それは、しょうがないでしょう。

ネット:裾野を広げることが。

文部省:それは悪平等です。共産主義みたいなもんです。そんなのは。本当そうじゃないですか。

中期目標、中期計画の中味

ネット:3−Aにもどりますが、中期目標、中期計画の中身が非常に重大だと思うんです。そういうことを設定できるということも問題なんですけども、そこに何が含まれるかということなんですが、非常にあいまいで中間報告に出ていることも、どういうことがやっちゃいけないことだというようなことが書いてありませんので、どんなことでもできる状態にあるんですね。教育研究の内容についても、踏み込めるのか。中期計画、中期目標で。

文科省:そこは、この冊子に調査検討会議の先生が、報告書本体じゃないんだけれども、サンプルというか、99ページ以降です。99ページ以降、一応こういう柱立てで、しかも点数の中の話しは、あくまでも委員の先生方がこんなのがあるんじゃないかというのを出したのを、網羅的に書いたのでこんな詳細に書くものじゃないと思いますけども、一応こういうイメージが考えられるんじゃないだろうかといって作ったものでありますから、これをまたご覧頂いて、これは変じゃないかと、なんぼなんでもやりすぎだろうとか、これくらいだったらいいんじゃないかとか、そういったまたご意見があれば。

ネット:杉野さん自身考えとしては、どうでしょう。教育研究の内容に関わるようなことは除外されると思われますか。

文科省:内容に関わるというのはどういう意味ですか。

ネット:どういう授業科目は、そんな授業科目はまずいんじゃないかとか。

文科省:それは変でしょう。そんなのを目標にするのは変じゃないですか。大学の目標としては、最低のことじゃないですか。

ネット:だから、授業科目が偏っているとか。

文科省:そういう指摘をしちゃいかんとか、こういう研究をしろとか、こういう教育をしろとかというのは、ちょっとそこまで言えるかなという気がしますけど。ただこういうのがあります。先生の挙げられている例の中では、101ページの「教育に関する目標大学全体の目標」というのがあって記載事項例の中で「○教養教育の充実を図ると共に外国語によるコミュニケーション能力や情報リテラシーを重視する」という表現があって、これは、この中を見渡してみてもこの部分は少し・・・聴取不能・・・が付いていますよね。これは委員の先生方から、これは今の大学教育の現状からすると国立大学だけじゃないんだけれど、こういったことぐらいはきちっと政府としての意思表示をすべきじゃないのかという。

ネット:まさに、カリキュラムに関与してくるわけですね。

文科省:こういう意味で、この程度でです。

ネット:これは、教育内容に広い意味で関与してくると思いますよね。

文科省:まあこれでも、関与していると国民が思うかどうかですね。

ネット:政府が目標を指示するわけですから、政府が指示するという形で可能性があるというふうに今の答弁は受け取らざるをえないですね。カリキュラムに関与すると。

文科省:若干、針小棒大じゃないですか、それは。それをもってして、関与だというのは。

ネット:例えばその文部省がお好きな、「日の丸・君が代」ですね。

文科省:好きだけど、ここに書くわけにはいかんです。やっぱり。

ネット:そういうことを中期目標にしたいと。

文科省:それはないです。

数値目標

ネット:中期目標とかそういうものを掲げて運用するのは企業の論理なんです。教育に関してそういう企業の論理を持ち込んでしまったら、教育そのものの独立性がなくなっちゃうんです。企業がだいたいこういう目標を持って、支部に命令しますよね。

文科省:それは数値目標でしょう。それは。数値目標ですよ。売上を倍にしろとかね。企業はね、抽象的な目標を掲げている企業はつぶれますからね。数値目標ですよ。僕らは、国立大学の場合は、数値目標はなじまないと考えてますから。先生も考えていますから。数値目標はまったく出てきません。独立行政法人はできるだけ数値目標を出せとなっているけど、それはだめだというのがこの報告書の先生等の意見ですから、そこはずい分考えたつもりなんです。

ネット:ただ、評価は数値的になっていますよね。今の大学評価機関が、サンプルとして示している評価の書式ですか、あれは数値的になっていますよね。優・良・可・不可、優・良・可・不可という、そういう言葉は使っていないんだけれども、長々とした文章があるんだけれど、4段階評価かそういう評価になっているでしょう。あれは数値評価ですよね。あれは数値化できます。簡単に。文科省:数値による評価もそれなりに必要かなという気がするんです。

ネット:数値評価は必要だとおっしゃっているわけですね。

文科省:それなりに必要だと。

ネット:そうすると、数値評価が必要ということになると数値目標も必要だということになるわけですね。論理的に。だって、数値をあげなきゃいけないわけだから。

ネット:それは、数値目標と書いてありますよ。

文科省:数値評価というか、評価のところに書いてあるかな。ネット:評価のところに中期計画にはと書いてあって、23ページです。中期目標・中期計画の内容ですね。この23ページの、第2パラグラフね、可能な限り中期目標を実現するための数値目標や、……。

文科省:それは中期計画の話しですね。大学の作る計画の中では、それは国民に対するアカウンタビリティーという観点から、できるだけ具体的な目標の数字や目標の時期というものを明示すべきだというのが大勢の意見でした。

ネット:数値目標じゃないと。

文科省:目標じゃないですよ、計画ですよ。これは、文部省が示すわけじゃないです。各大学が作るんです。

ネット:でも認可するんですよね。ネット:認可しますよね。

文科省:認可するから、効力があるわけじゃないですか。

文部科学省官僚の大学への天下り

ネット:ちょっとこの認可という問題で引っかかって、6番目の質問項目なんですけどね。そういう許認可の関係になるわけですね。中期計画については、文部省が認可すると。そうすると、確かその天下り規制で認可する団体と官庁との間で人事になにか制限があったような気がするんですよ。そうすると、例えば文部省から文部省のOBが独立行政法人の例えば監事であるとかそういうところに天下るということはできないということになるんでしょうか。

文科省:そういう簡単な話しじゃないと思いますね。おそらく。

ネット:どういう複雑な話しですか。

文科省:ようするに、これからは、本当に大学の経営が問われるわけですから、経営能力のない人は、その場合誰であれ呼ばれないんじゃないですか。大学自身の自殺行為ですよね。

ネット:経営っていう概念は、企業の概念じゃないですか。

文科省:違いますかね。マネージメントという概念ですから、マネージメントというのは学校経営という言葉ありますよね。小中学校含めて、学校経営という概念は教育学でありますよね。マネージメントです。それは、利潤追求という意味ではまったくないんです。マネージメントというのはいかなる組織体でも必要なんです。それを日本語に訳すと経営となってしまうんですよ。企業経営ということをいうと、利潤追求でありますけど。

ネット:経営という言葉の訳し方が悪いんです。

文科省:いや、経営という言葉のイメージでしょうね。企業経営とすぐ思っていしまうからです。だけど、経営という言葉は学校経営という言葉は堂々とした教育学の用語ですから。間違いないですよ。

ネット:でも遠山プランで民間経営手法というのがありますから、明らかにそういう意味では、民間企業の経営。

文科省:民間企業とは言っていない。民間企業とは言っていないですよ。

ネット:あれは、民間というのは民間企業でしょう。

文科省:いやいや、あれはねこういう発想ですよ。端的にいうと、国立大学というのは、・・・聴取不能・・・と思うんだけども、あまりにもボトムアップの意思決定で……。

ネット:私立大学も同じ意思決定じゃないの。企業じゃなくて民間的経営手法とは何ですか。

文科省:国立大学だけを批判しているわけじゃないですよ。

ネット:民間的経営手法の中身を。

文科省:それを説明しているんです。だから、大学というとおよそボトムアップですべてを意思決定しがちですよね。大学っていうのは。それが悪いとは言いません。ボトムアップを悪いとは言わない。大学というのはやはり一人一人の研究者が大切だから、ボトムアップという要素は大切だけども、でもマネージメントということを考えると、どこかトップダウンの要素がいると思うんですよ。先生方もそう思っていました。トップダウンの要素がいると。そのトップダウンというところがまさに民間的経営手法の一つの要素であると。これがすべてだとは言いませんよ。一つの要素だと。
 それから、もう一つそれにもかかってきますけれど、国立大学の場合にはあまりにも、ボトムアップすぎる。どうしても資源配分という時に、ここがいいからここに重点的に資源配分しようとか、ここはもう社会のニーズが減っているから少し縮小してもいいじゃないかというような、先生方は嫌がるかもしれませんが、資源の再配分、見直しということがなかなかできにくい。それを、普通なら常識的には、やるのが通常の組織体ですよ。それもできるようにしましょうとか、いろんな、あるいは収入についてもう少しお上から金が来て、稼ごうが稼ぐまいが関係ないという世界じゃなくて、少しでも自己収入を増やせばそれが国庫に入るんじゃなくて、各大学に教育研究に還元できるというインセンティブが働くようにできるようにしましょうとか、もろもろの意味をこめて民間的発想というように言ったんです。利潤追求ということでは全然ないんですよ。

ネット:利潤ていう、物を売って原価よりも定価でその差額でという意味では企業だけども、そういうのが企業の意味の利潤だけども、大学は違うから当然利潤追求ではないんだけど、その言葉の代わりに効率効率というけれども本当に大学、今の私たちの大学がそんなにぬるま湯につかって、悠悠自適の生活をしていると思わせているのが間違いであって、みんな必死に必死にやっているんです。そういう中で、国民への説明責任のためにはこの数値目標を達成するかどうか、達成した……。

文科省:数値目標じゃないって。

大学の予算について

ネット:先進国の中で日本の大学に対する予算規模は何番目くらいですか。

文科省:予算規模からすると3番目か2番目じゃないですか。GDP費でやると少ないけれども、総額からするとそれは相当な額なんですよ。アメリカはダントツだけどね。

 あのですね、僕らは今、先生がそう言われているから、こう言っているけどね、僕らもそこに書いてある分じゃ少ないとPRしている。金額的には、結構でっかいんですよ。しかもよその国は、ほぼ全部、国立か州立でしょ。アメリカだって7割は州立でしょ。日本は、7割は私学があって、実はその少ないといわれている国費は国立に重点的に落ちているんですよ。だから、国立大学の先生方の立場からいうと、本当に諸外国の一つ一つの大学に比べて、予算が少ないと言えるかどうかというのは、よくよく考えてみないとわからないんです。日本は、私学があれだけ大きいから実はその分、安上がりにできているんです。その分国立に、諸外国と比べてGDP比で少ないといわれているけれども、その額は国立にドカンと落ちているんです。

ネット:ドカンという気がしませんが。ネット:全然違いますよ。ネット:国家予算の何%、教育経費に出しているかというのは、ずっと低いはずですよ、前に新聞か何かで見ましたけれど。

文科省:そんなことないです。それでね、僕らはそんなこと外に向かって言いませんよ。それは、まだまだお金を増やしたって上には上がいますから。アメリカなんて巨大な額を、かなり軍事費が入っていると思うんですけど。巨大な研究費が、大学に投じられているから、今、アメリカ独り勝ちの状態ですよね。大学の教育・研究というのは。2位グループが、ガーンと離されていますよね。日本は、いい線いっていますよ、2位グループの中では。教育・研究の成果は。それは立派だと思っています。特に、それは国立大学が引っ張っているのは間違いないです。だと思うけれども、やはり離された2位グループじゃなくて、もっと教育・研究の中身を充実できるようにしていきたい。だから、今先生方に申し上げたようなことじゃなくて、外に向かってはもっともっと大学に対する投資を増やすべきじゃないかということを言っています。言っているけれども、本当のことを言うと金額的には結構デカイし、それから私学ということを考えると、日本の特殊な大学のシステムのことを考えると、実は国立大学には多額のお金が落ちているんですよということも、先生方には分かってほしい。外に向かっては、言いませんけど。

ネット:具体的にいいますと、去年から今年にかけて、私は群馬大学の工学部ですけど、研究室で使える予算が3分の1に減りました。これは、今までの学生に対して3分の1の予算で、教育・研究を指導しなければならない。それを正常だと思いますか。

文科省:3分の1といわれましたが、どうして3分の1になったんですか。

ネット:そちらは関係ないと。

文科省:うちの決算では3分の1になってないですから。

ネット:積算校費を変更したでしょう。

文科省:総額は変わってないでしょう。だから大学の中での配分の話しでしょ。

ネット:大学間の中の配分の話し。

文科省:大学の中ですよ。群馬大学に行っている額が去年から今年で、3分の1になっているわけないです。

ネット:それは学長に重要な権限を与えて、それで学長経費で奪い取るようにした結果なんですよ。

文科省:だけどそれは、いろんなご不満があるかもしれないけれども、これからの大学の運営というのは、やっぱりある程度、本当にどうやって大学全体としてどこに力を入れていくのかということを考えて、ある程度メリハリをつけた予算を投資していく。先生、ご不自由だと思いますよ。本当は総額を上げればいいと思う。僕らもそうやっていく努力はしたいとは思うけれども、そういうことをやりながら大学の一つの運営のスタイルとしては、基礎的な予算は研究者にお配りしながらより重点的なメリハリのきいた投資ということをやらないと、先生はみんながんばっていると言っているけど、僕も大多数の先生はがんばっていると思うけれども、全部が全部そうかというと、そうじゃない実態があるじゃないですか。

ネット:そんなねえ、スペシャルな例を出して。

文科省:スペシャルとはいえないでしょう。

ネット:99.99%。

文科省:それはウソですよ。99.99%なんてことないですよ。

ネット:すくなくとも僕のまわりでは。

文科省:国民はそう思っていない。

ネット:おたくよく国民というけれどね。

文科省:僕も国民ですよ。

ネット:だから実態を知って文部科学省は、大学の先生は、少ない条件、悪い条件の中で精一杯がんばっている人が圧倒的なんだという認識で、国民に訴えないと。

文科省:いや先生、そうじゃないです。僕は言うことはちゃんと言っていますよ。だけど国民の直感というのは、ばかにしちゃいけないということですよ。国民の直感は、おそらくこう思っていると思う。国立大学の先生は、必ずしも持てる能力を100%発揮していないんじゃないかと。僕はそう思っていると思いますよ。国民は。僕はそれに対してどう答えているかというと、この前群馬大学にもおじゃましたけれども、こう言いました。僕が言ったのは、一つは国民は日本の国立大学の実体について、必ずしも十分に理解していない。誤解がある。実は日本の国立大学の教育・研究のレベルというのは、特に研究のレベルは、結構いい線いっている。アメリカに比べるとダントツに離されているけれども、世界全体見渡せば日本の国立大学の研究水準というのは結構いい線いっていると。そのことが、必ずしも国民に十分に知らされていない。そこはしっかりとPRする必要がある。そこはやりましょうよ。文部省もやるけれども、大学もやってもらわなければならない。
 だけれども、もう一つ言えば必ずしも誤解だけじゃないことがあるはずだ。それは、必ずしも国立大学の先生方が、100%潜在能力を発揮されていない。それは、いろんな条件があるといえます。不利な状況もあるかもしれない、地理的な条件もあるかもしれない、予算の条件もあるかもしれないけれども、必ずしも教育・研究を一生懸命やってくれてないんじゃないか。特に教育、私立大学に比べて、国立大学に5倍も何倍も多い税金を投入するようなことを教育がやってくれてるとは国民は思ってないはずです。

天下りの結論

ネット:それで、そういう国民の意見を吸い上げて自分たちが全部代わって国民の意見を代表してやるんだというふうに責任感で、おやりだと思うんですけども、それをすべて政府のルートで、というやり方をするのがいけない、というのが教育基本法の精神なんだと思うんです。

 その点でこれ以上時間がありませんので、たくさん質問項目が残っていますので一問一答的に一生懸命考えたものですから、質問項目を考えるのも大変ですから聞きたいと思うんですが。

 6番目の項目については、文部省からの天下りもあると、天下りという言葉はいけないかもしれないけど、文部省からくることもあり得るということですね。

文科省:文部省に限らず、有用な人材は大学の判断で採用していただけるようにしようと。

ネット:今、大学の判断とおっしゃったんですが。

文科省:そうですよ。

ネット:大学がだめだと言ったらだめなんですか。

文科省:もちろんですよ。すべての人事権は、大学に移るんですから。書いてます、事務局職員も含めて全部大学に移りますから。

監事の権限について

ネット:次の7、監事の権限、中間報告なんですけど監事の権限にふれたところで、教育・研究の個々の内容は直接の対象としない。監査は。というところがあるんですけども、この文章は個々の内容でなければ、つまり全般的な傾向については監査の対象にするというふうにも読めるような気がするんですけど。

文科省:読めます。

ネット:読めますね。わかりました。
 次に8番目、有識者という言葉が何回も出てくるんですけども、この定義は何でしょうか。これに限らず、他のいろんな政府系の文書に出てきますけども国民に有識者と無識者と2種類いるわけでしょうか。

文科省:法律の用語で、何々に関して高い見識を有するもの。という表現がいくらでも使われているわけですよ。国会を通っている法律にいくらでも書いてますよ、そんなことは。そういうことだと私は思っています。大学の運営に高い見識を有する人に大学の運営に参画してもらうということじゃないでしょうか。

ネット:それは、誰が判断するんでしょうか。

文科省:それは大学ですよ。

ネット:個々の大学が判断すると。

文科省:もちろんです。それこそ、大学人の見識が問われると思います。

評価機関の人事権は文部省にある

ネット:中間報告を文部省の中の設置形態特別委員会でつくるときに、文部省の方が委員の名前を協力者という言い方したのは、おたくたちが名指ししてこの人たちを有識者と見なしたわけでしょ。

文科省:それは文部省の委員会ですからしょうがないじゃないですか。誰が選ぶんですか。

ネット:だから、人事権の問題ですよね。

文科省:ご不満があるんだったら言って下さい。この人はいらないとか。この人は不適格であるとか。

ネット:そういうチャンスはなかったです。ネット:人選の権限は、おたくが持っているわけでしょ。このメンバー誰にするのかという。

文科省:今度の大学の、役員にしろスタッフにしろ全部大学側に人事権があるわけですから、大学が選ぶんですよ。

ネット:評価機関ですよ。まさに評価機関は文部省が人事権を握るわけですね。

文科省:そうです。

ネット:そうですね。これはとても第3者とは言えないわけですね。

文科省:しょうがないですね。文部省が握るのが一番いいと私は思っています。

工藤局長の6月「脅し」発言について

ネット:次、9は飛ばしまして、10番。6月の国立大学学長会議で工藤局長が非常に重大発言をされていますが、「構造改革をやるんだと。脅しをさせていただく。言う通りにしないと見捨てます」と言ったわけですけども、これは事実上の命令ですね。

文科省:違います。

ネット:命令じゃない。

文科省:違います。

ネット:釈明されたのかな。工藤さんは。言いすぎでしたと。

文科省:あれはね。はっきり言って、僕はいいんだけども、脅しますとは言ってませんよ。あの場では、みんな笑ってましたけど。脅させていただきますと言ったんです。それは、ジョークですよ。ジョーク。みんな笑ってましたよ。新聞記事が脅すって言ったとかいって書くからね、面白おかしく書くからああなったけども、誰が人を脅すときに、脅させて頂きますなんて言いますか。

ネット:その辺がズルさだ。

文科省:そんなことないですよ。

ネット:そこがズルさだ。第3者とか。

文科省:そんなことないです。

ネット:有識者とか、いろんな。あるいは国民とかいう言葉を使って、なんかうまくカモフラージュして、さすがは知恵者だなと。

文科省:知恵はあると思っていますけども。知恵はないか。知恵はないかもしれないけど、誠意は持ってますよ。誠意は。

ネット:誠意じゃなくて、ズルさを持ってる。

文科省:国立大学を脅すなんて気持ちはありません。

ユネスコ21世紀の高等教育に向けての世界宣言について

ネット:次の11番目の項目なんですけども、ユネスコの21世紀の高等教育に向けての世界宣言ということで、これの訳を発表されるつもりはありませんか。文部省としての翻訳を。ユネスコの1988年の世界宣言。これの文部省として訳を公表して皆さんに提供するという考えはありませんか。項目なかったんですけど。

文科省:何か意味があるんでしょうか。文部省にやらせるということに。ネット:だってたくさん出張されてるでしょう。参加して賛成してこられたでしょ。この決議に。この宣言に。

ネット:こういうことは、大学にとってとてもいいことじゃないですか。ネット:ちょうど大学審答申と同じ時期なんですよ。月まで同じですよ。ご存知なかったですか。その中に、社会に対する批判的機能を、書いてあるんですけども、お読みになったかどうかわかりませんけども、大学は社会に対する批判機能を持たなきゃいけないと。政府からある程度独立してですね。だからあなた独立するなとおっしゃるんですけども、じゃあ大学に対する規制が、関与があると。ないわけにはいかないですよね。国民の税金を使ってますからね。それはどの程度の関与があったら、そういう批判的機能が損なわれるというふうにお考えですか。そういう問題意識で考えられたことはありますか。

文科省:常に僕はそう考えていますけど。今でも十分批判的機能をお持ちじゃないですか。

ネット:世界宣言に参加してらっしゃるわけですから、考えは一致していると思うんですよ。そしたら、その考えを広く人々に知らしめたらよろしいと思うのに、なかなかそれをなさらないのはどうして。

文科省:知りません。

ネット:だから、どういった類の関与を、どういった類の規制、どの程度まで規制が行われると、……。

文科省:こんなことはかえって当たり前のことじゃないですか。こんなもの。これはね、むしろね、後進国の大学政策に向かって言っているじゃないですか。日本の120年の歴史の中で、今やね日本の大学っていうのはね、十分に世界に対する批判的機能はね、そなわっているし、政府との関係でも相当成熟してきていると僕は思いますよ。それは、……。

ネット:いやいや、おたずねしているのは、政府の関与がどの程度だったらそれを妨害することになるのかと。

文科省:どう言えばいいんですか。

ネット:そういう問題意識で考えられたことはないんですね。

文科省:それは、先生ねー、質問がねー、ズルい。

ネット:誘導尋問ですよ。もちろん。もちろん誘導尋問ですけども、それは答えられないということですね。

中間報告には大学運営への学生参加が一言もない

ネット:12番目なんですけども、これは学生についても同じく言っているんですけども、学生に大学運営に学生が関与すべきだとやっぱり言っています。だから、その点この中間報告にも一切書いてありません。学生の権利、学生が大学運営に関与することについて一言も書いてありません。

ネット:ディマンドサイトの項、その中に学生は入っています。ただその具体的な施策にには全然入っていない。学外者の関与というかたちで、産業界などもありますけども、もう一つ重要なディマンドサイトの学生の項は、学生の教育を重視しなさいという話しだけです。管理運営に学生がかかわることではない。

ネット:ええ、学生が主体的に大学運営に関わるという点が抜けていると思うんです。これは大学審答申でもそうです。この点について、だからその点は欠陥だと思います。その点を今後変えていかれる気持ちがあるのかどうか。

文科省:調査検討会議ではそういうご議論はありませんでした。

ネット:ありませんね。だからこの辺、今後、今日言われてすぐというわけにはいかないかもしれないけども、学生の関与ということを非常に重視してますので。

文科省:学生のことは、先生のおっしゃるようにきちんと書いているんですよ。

ネット:いや、だから客体としてしか書かれてない。ネット:だから、今おっしゃったように、調査検討会議で学生の問題なんか全然出てこない。そういうふうな委員を文部科学省が選んでやっているということですよ。そこに問題があるんですよ。

文科省:いい委員が入っていると私は思っていますけどね。

ネット:だって今、学生のことが全然出てこないこと自体がおかしいですよ。

文科省:学生のことは出てきています。

ネット:いやいや、大学の運営に関して。

文科省:それはまあ。

ネット:人選が偏っているということです。

文科省:考え方の違いです。それは。

ネット:それはだけど、国民という言葉をおっしゃるんだったら、それはやはりそういう意見を言う人がちゃんと入るべきですよ。

国民の独法化への意見について

ネット:さっき国民の感覚のことをおっしゃいましたけど、おおかたの予算が来て国立大学以外の私学の方、一般市民の方たちが今の政府案はどうも自分の文化的な将来にとっと危険というか、問題があるんじゃないかというふうに大変、署名をお寄せになるんですよね、私学の方たちですらも。

文科省:むしろ私学の人たちは、甘いと思っていますよ。国立大学に対して甘いこれは案だと。

ネット:そうでない人たちも大勢いるんですよね。

文科省:それはね、いらっしゃるかもしれないけれど。

ネット:無視するんですか。

文科省:むしろ、国立大学に対してもっと批判的な私学の人がいっぱいいますよ。

ネット:経営者の話しですか。

文科省:いやいやそうじゃないですよ。国立大学で教官やってた人が私学に行って、国立大学は生ぬるい、だめだと言っている人がいっぱいいますよ。

ネット:いっぱいいます。しかし、それでも今のやり方ではもっと危惧があるという人もまたいるんですよね。それはどういうふうに考えるんですか。

文科省:それはまあ、いろんなご意見があるということでしょう。これの意見を入れたら、私の意見を切り捨てるということになりますよ。

ネット:いえ、そうじゃない。

文科省:だから、いろんな意見があるということですね。いろんな意見を聞きながらやっていきましょうということですね。

ネット:そうです。

文科省:いろんな意見は、お伺いしながら参考にしながらやっていこうということです。そうとしか、いいようがないでしょ。

学生の大学運営への参加は今後進められるか

議 員:これに出ているかどうか、初めてだからわからないけど、大学の運営、管理に学生が参加したほうがいいということは、今後進められるの?

文科省:それは、先生やはり調査検討会議でご議論いただいていますから、そこでのご議論をお待ちするしかない。私たちが、こうしたいああしたいじゃなくて、ここに先生方が集まってご議論されているわけですから。

議 員:そこから何も出てこなかったということですね。

文科省:出てきておりません。

議 員:じゃあ今、現場のところからこういう声がきたということについては、どのように考えるんですか。

文科省:それは、パブリックコメンツやってますからどうぞお寄せいただければ、それはこの委員会でご紹介します。そのためのパブリックコメンツですから。

議 員:最終期限はいつになるんです。

文科省:今年度いっぱいです。今年度いっぱいで最終報告がでますので。

ネット:意見提出は今月の29日までとか。

文科省:ひと月間。

ネット:ちょっと少なすぎる。

文科省:それは通常のルールじゃないでしょうか。

ネット:そんなもんなの。

文科省:通常のルールじゃないですか。これを出して、国民の方々から今日のようなご意見もありますし、いろんなご意見あると思うんですよね、それはお寄せいただいて、この会議でご紹介するということになります。それをその先生方に、見ていただいて、じゃこれが足りないな、これはやりすぎだ、そこのご判断があるとおもいますけど、いずれにしても事務局ができることはご紹介するまでです。

有識者の意見を押し付けるのは間違っている

ネット:いろんな会議に出ている有識者で、前に記者会見で話しを聞いたこともあるんですが、これからの大学教育は付加価値の高い教育をしなければならない。付加価値というのは、物に対してあるんですよね。人間じゃないんですよ。製品を作る。それは、本来はそれぞれの学生、人間が持っている才能を引き出すことが教育なんです。ところが付加価値をくっつけて、おんなじ製品にして売り出すというのが企業の論理です。ですから、ノーベル賞級の人は、事情があって話していたんですけど、この人は専門家であるけれども教育者じゃない、というのは痛感しました。ですから有識者っていっても、それはすべてのことを知っている人ではないんです。そこらへんのことを十分気をつけて、有識者だから尊重して、それを大学に押し付ける、それは構造的に誤っている。それから、国民がこう言っているというのは科学的にどういう調査資料があるんですか。

文科省:今日私が申し上げたのは、個人的な感触、体験、経験にもとづいてお話をしています。

ネット:いつも国民は国民はというのがそこら中に出てくるんですけど。

文科省:でも、私ははっきり言いますよ。直感だとか感覚だとか、それでだめだと言われたらそれは甘んじて受けますけども。

ネット:調査資料にもとづいて。ネット:国民の声は先ほどここで議論されていたように、対話なんですよ。

文科省:まあ、そうでしょうね。

ネット:国民がこう言っていると一概には言えない場合が多いと思いますよ。

文科省:だけど、国立大学に対する批判の声というのは大きいですよ。

ネット:やっぱり、中央集権的に国民との対話というのを、中央集権的に全部文部省に集まって、そこから報告するんじゃなくて、やっぱり地方分権的にそれぞれはそれぞれでやるというようにはなっていないですね。

文科省:そういう思想でやったつもりですけど。

ネット:残念ですけど私たちも次の準備がありまして。

反対から賛成に変わったことについてどう考えるか

ネット:最後いいですか。やはり、根幹的に大事なことは文部科学省が、最初の話に戻るけれども、この独立行政法人化に反対していた。ここ(文部大臣所見)にたくさん理由を書いていらっしゃる。これは本当にこの通りで、本当にすばらしい理由付けがしてあると思う。これを変えられたということを、さっき説明があったんだけども、到底納得できるような説明ではないと思うんですよ。こういうすばらしい理由をあげておきながら、今、ここ(文部大臣所見)に書いてあることはどうなるんですか。

文科省:それに書いてあることと中間報告の中身は矛盾しないと思っている。よくご覧頂いてから……。

ネット:とんでもない、一つだけ言うけれども、世界に例がないんでしょ。中期目標で文部科学省が認可するというようなやり方は。それを、何年も、200年も300年も続くわけじゃないからという理由でやられようとしていますよね。

文科省:続くわけじゃないからというよりは、続くかどうかわかりませんけれどもと。これが正しいかどうかわかりませんけどと。

ネット:他のどこにもないようなことを、ここで入れられようとする、それは大学の自主的な教育研究活動を阻害し、教育研究水準の大幅な低下を招くと、だから反対だときっちりそうおっしゃってたことを、一方でやろうとされているわけでしょ。

文科省:問題部分は解決するような中身になっていると思います。

ネット:それは見解の相違というか、なっていませんよ。

文科省:見解の相違はあるかもしれません。しょうがないです。

ネット:それで、こういうことをちゃんとおっしゃっておきながら、ころっと態度が180度変わるというようなことは、教育行政にあってはならんことです。文科省:180度変えているつもりはありません。一貫していると思っています。

ネット:それは一番肝心の中期目標、そういう制度を変えていないということは、ころっと変えていると言われてもしかたがないです。これを最初は反対していたわけです。これに賛同するということになっているんだから、これはどう見たって180度変わってるでしょう。

ネット:私があなたの立場だったら、私たちの力不足で乗り切られてごめんなさいと。そして、皆さん大学の先生たちの意見を聞いて新しいものを作りましょうというようなスタートラインに立てれば違ったけれども、ある意味ではこちらを言っていて、今度違ったことをするために、なんかうまく言葉を塗り替えていろんなところで、というような印象を強く思うんです。

文科省:印象を与えたことについては、もし印象を与えているとすればそれは私たちの力不足だと思います。だけど僕らは本当に国立大学をこれを機会によくしたいと思ってやっているんですよ。あれを反対したときも、国立大学をよくしたいと思ったから反対した。これを今作っているのも、国立大学をよくしたいと思っているからやっているんです。

ネット:詭弁ですよ。

文科省:詭弁じゃないですよ。

ネット:これを守っていただくことがよくすることですよ。だってそうおっしゃってたじゃないですか。

文科省:何でも反対すれば守れると思っていたら大間違いですよ。国立大学を。

ネット:国立大学だけじゃなくて、私たちは日本の高等教育全体を高めるというためには。

文科省:私もそうです。

ネット:そうでしょ。

文科省:私は私学の担当もしたことあります。全体で考える必要があります。

ネット:だから私学が500もあって、そのくらい個人的には全部国立でもいいんですよというような姿勢を文部科学省が言ってくれるほうを期待したいんです。

文科省:私よく言いますよ。今日もある委員会で言いましたけども、日本の場合は国立・公立・私立というのが、それぞれ数があるのが一つの特徴なんですよ。これは私はいいシステムだと思っています。それなりにね。他の先進国では見られない、いいシステムだと思っている、だけど問題があるとすれば国立だけじゃなくて公・私立の中でもこれはという大学には国としてもっと財政支援ができるような仕組みに、ぜひもっていきたいいう話を昨日話しました。それは、私学を国立にするという意味じゃないんですよね。国・公・私のそれは3つのタイプがあっていいと私は思うんです。先生と同じ気持ちです。

ネット:それはそうだ。比率があまりにも私立におんぶされている、特に文系のところが多いでしょう。500もあれば予算が全体が少ないから、個々の私立は国立に比べて少ない予算……というのはおかしいよ。国全体の高等教育を支えている私立への補助を堂々と言っていくことが、それこそ国民の賛同を得ると。

ネット:すいません、時間がなくなりました。

ネット:文部省の方針転換にこれだけ多くの人が反対しているということだけを言っておきたいと思います。


発行:国立大学独法化阻止 全国ネットワーク
   事務局  佐賀市本庄町1 佐賀大学理工学部  豊島耕一