集会決議
10.5 政治家・市民・学生・大学教職員による討論集会
衆議院第一議員会館会議室にて
(国立大学独法化阻止 全国ネットワーク主催)
私たちは2001年10月5日に衆議院議員会館に集い,国立大学を「独立行政法
人」化することの意味,それが大学と社会に何をもたらすかについて3時間にわたっ
て詳細に検討しました.国会議員,大学の教職員,大学院生,学生がそれぞれ意見を
述べ,あるいは議論に参加しました.その結果,国立大学の「独立行政法人」化は,
「独立」という名称とは逆に,大学の独立性を高めるものではなく,むしろ大学を文
部科学省に従属させるものであり,大学の自治,教育と研究の自由を奪うものである
という認識に達しました.
まず,独立行政法人制度の重要な問題点を要約すると次のとおりです.
1.大学の「目標」を行政機関が指示し,「計画」を同じく行政機関の許認可事項と
する制度である.これは諸外国にも例がない.
2.「第三者評価」と称して実は行政による評価がなされる制度である.
3.現在のような国会による法律改正でなく,大臣の判断で個々の大学の存廃が左右
される制度である.
4.「効率性」の観点を優先させる制度である.
このような制度は,1997年10月に当時の文部大臣が記者会見で発表したとお
り,「大学の自主的な教育研究活動を阻害し,教育研究水準の大幅な低下を招き,大
学の活性化とは結びつくものではない」と判断されます.それにとどまらず,この政
策がもし実行されれば,大学の自治を損ない,教育・研究の官僚支配をもたらす恐れ
が極めて大きいでしょう.したがって憲法23条,教育基本法10条に違反するとい
う重大な懸念があります.
さらに,大学の自由が奪われることは社会全体の自由が奪われていくことにつなが
り,それは日本社会が危険な方向に向かうことにもつながるのではないか,との懸念
が参加者の中から出されました.
先月27日に出された文部科学省の調査検討会議「中間報告」を概観すると,そこ
では学生の勉学条件や諸権利についてはほとんど議論されておらず,また,ユネスコ
の「高等教育世界宣言」(1998年)が求めている,大学の運営における学生参加
については全く考慮の外であることが判明しました.
以上のことから,集会は,文部科学省は国立大学の「独立行政法人化」の方針を撤
回するべきであると考えます.
集会では文部科学省のいわゆる「遠山プラン」についても議論されました.そして,
これは独立行政法人化の先行実施とも言うべきもので,大学へのあからさまで直接
的な官僚支配であるとの意見が出されました.
集会は,国民の皆さん,すべての会派の国会議員の皆さん,メディアの皆さんに訴
えます.国会に出すべき法律案さえ存在しない今日,国立大学の独立行政法人化がほ
ぼ決まったことであるかのように見なしたり,報道したりすることをやめ,この制度
の中味をきちんと検討され,憲法や教育基本法というわが国の法制度の基本に照らし,
また教育行政と大学の実態に照らしてこの問題について判断されるようにお願いしま
す.
また,国立大学協会や国立大学の教職員の皆さんに訴えます.文部科学省に追随す
るのではなく,そして役所への「アカウンタビリティー」ではなく,「国民全体に対
し直接に責任を負う」という教育基本法の理念にふさわしい,本来のアカウンタビリ
ティーについて真剣に考えていただくようお願いします.
2001年10月5日