(03/7/8 参議院文教科学委員会)

国立大学法人法案、狼立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行攻法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に閲する法律案に対する附帯決議

 

政府及び関係者は、国立大学等の法人化が、我が国の高等教育の在り方に与える影響の大きさにかんがみ、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 

一、国立大学の法人化に当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、その活性化が図られるよう、自主的・自律的な運営を確保すること。

二、国立大学法人の運営に当たっては、学長、役員会、経営協議会、教育研究評議会等がそれぞれの役割・機能を十分に果たすとともに、全学的な検討事項については、各組織での議論を踏まえた合意形成に努めること。また、教授会の役割の重要性に十分配慮すること。

三、役員等については、大学の教育研究や運営に高い識見を有し、当該大学の発展に貢献し得る者を選任するとともに、選任理由等を公表すること。また、政府や他法人からの役員の選任については、その必要性を十分に勘案し、大学の自主性・自律性を阻害すると批判されることのないよう、節度を持って対応すること。監事の任命に当たっては、大学の意向を反映すること。

四、学長選考会議の構成については、公正性・透明性を確保し、特に現学長が委員になることについては、制度の趣旨に照らし、厳格に運用すること。

五、中期目標の実際上の作成主体が法人であることにかんがみ、文部科学大臣が中期目標・中期計画の原案を変更した場合の理由及び国立大学法人評価委員会の意見の公表等を通じて、決定過程の透明性の確保を図るとともに、原案の変更は、財政上の理由など真にやむを得ない場合に限ること。

六、法人に求める中期目標・中期計画に係る参考資料等については、極力、簡素化を図ること。また、評価に係る業務が教職員の過度の負担とならないよう、特段の措置を講ずること。

七、国立大学の評価に当たっては、基礎的な学問分野の継承発展や国立大学が地域の教育、文化、産業等の基盤を支えている役割にも十分配慮すること。また、評価結果が確定する前の大学からの意見申立ての機会の付与について法令上明記し、評価の信頼性の向上に努めること。

八、国立大学法人法による評価制度及び評価結果と資源配分の関係については、同法第三条の趣旨を踏まえ慎重な運用に努めるとともに、継続的に見直しを行うこと。

九、国立大学法人評価委員会の委員は大学の教育研究や運営について高い識見を有する者から選任すること。評価委員会の委員の氏名や経歴の外、会議の議事録を公表するとともに、会議を公開するなどにより正性・透明性を確保すること。

十、独立行政法人通則法を準用するに当たっては、総務省、財務省、文部科学省及び国立大学法人の関係において、大学の教育研究機関としての本質が損なわれることのないよう、国立大学法人と独立行政法人の違いに十分留意すること。

十一、独立行政法人通則法第三十五条の準用による政策評価・独立行敦法人評価委員会からの国立大学法人等の主要な事務・事業の改廃勧告については、国立大学法人法第三条の趣旨を十分に踏まえ、各大学の大学本体や学部等の具体的な組織の改廃、個々の教育研究活動については言及しないこと。また、必要な資料の提出等の依頼は、直接大学に対して行わず、文部科学大臣に対して行うこと。

十二、運営費交付金等の算定に当たっては、算定基準及び算定根拠を明確にした上で公表し、公正性、透明性を確保するとともに、各法人の規模等その特性を考慮した適切な算定方法となるよう工夫すること。また、法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。

十三、学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、将来にわたって適正な金額、水準を維持するとともに、授業料等減免制度の充実、独自の奨学金の創設等、法人による学生支援の取組についても積極的に推奨、支援すること。

十四、国立大学附置研究所を含む研究組織については、大学の基本的組織の一つであり、学術研究の中核的拠点としての役割を果たしていることにかんがみ、短期的な評価を厳に戒めるとともに、財政支出の充実に努めること。また、各研究組織の設置・改廃や全国共同利用化を検討するに当たっては、各分野の特性や研究手法の違いを十分尊重し、慎重に対応すること。

十五、法人化に伴う労働関係法規等への対応については、法人の成立時に支障の生ずることのないよう、財政面その他必要な措置を講ずること。また、法人への移行後、新たにに必要とされる雇用保険等の経費については、運営費交付金等により確実に措置すること。

十六、国立大学法人への円滑な移行が行われるようにするため、文部科学省は、進捗状況、課題などを明らかにし、当委員会に報告を行うこと。

十七、学校教育法に規定する認証評価制度の発展を通じ、国立大学等が多様な評価機関の評価を受けられる環境を整備し、ひいては我が国における大学評価全体の信頼性の向上を図るため、認証評価が円滑に行われるよう必要な資金の確保、その他必要な援助に努めること。

十八、国立高等専門学校については、各学校の自主性・自律性を尊重し、教育研究の個性化、活性化、高度化が一層進むよう配慮すること。

十九、国は、高等教育の果たす役割の重要性にかんがみ、国公私立全体を通じた高等教育に対する財政支出の充実に努めること。また、高等教育及び学術研究の水準の向上と自立的な発展を図る立場から、地方の大学の整傭・充実に努めること。

二十、職員の身分が非公務員とされることによる勤務条件等の整備については、教育研究の特性に配意し、適切に行われるよう努めること。また、大学の教員等の任期に関する法律の運用に当たっては、選択的限定的任期制という法の趣旨を踏まえ、教育研究の進展に資するよう配慮するとともに、教員等の身分の保障に十分留意すること。

二十一、法人への移行に際しては、「良好な労働関係」という観点から、関係職員団体と十分協議が行われるよう配慮すること。

二十二、公立の義務教育諸学校の教職員の処遇については、学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法を今後とも堅持し、国家公務員に準拠する規定が外されることにより同法の趣旨が損なわれることがないよう、十分配慮すること。

二十三、高等教育のグランドデザインの検討に当たっては、生涯学習社会の形成の観点から、專門学校を含む高等教育全体について、関係府省、地方公共団体等とも連携しつつ、広範な国民的論議を踏まえ行うこと。

右決議する。