(2002年4月23日改訂,文責 豊島)
場所:ソウル市内
日時:3月2日午後1時から2時間20分ほど.(昼食も含めると3時間超)
韓国側からは,「韓国教授組合」*の事務局長,政策委員,「民主的社会のための全国教授協議会」(仮訳) の渉外委員長,韓国大学職員組合の代表,学生運動代表など全部で8名が出席,日本側は私と佐大教職組委員長の西田民雄氏が参加しました.
まず豊島が,独法化が学問の自由という普遍的な価値に対する挑戦であることを中心に,独立行政法人制度の内容,従来の制度との比較,反対運動の情況などを,数枚のプリントを配布して説明しました.組合による阻止運動が十分活発とは言えない情況にあること,独法化問題が単に大学内部の問題にとどまらない性質のものであるとの認識から,市民も含む「全国ネット」を立ち上げたことを述べました.
大学側として責任を持つべき国大協の態度の問題点,つまり自らの手で独法化を提案してしまうという最悪の情況についても説明しました.そして具体的には,国大協や文部科学省に懸念を伝え質問を出してほしいと要請しました.
西田氏は,佐賀大学教職員組合のこと,日本の大学教組の情況などについて説明しました.
次いで韓国教授組合側から,結成してまだ100日と間もなく,組合員数も約1000人という組合の様子などが説明されました.現行法では教授の労働組合は認められていないので,これを公認させる(legalize)ことが重要な課題であるとのこと.運動の課題として当面しているのは「契約制」(日本の任期制のようなもの)問題である.99年5月6日の教育公務員法の改正で「契約可能」の制度に返られ,昨年大晦日に施行令が出されて全面的契約制となった.タテマエは国立への適用だが,実質は私大への効果を狙っている.大学を「責任経営機関」(日本の独法化に相当か?)に変えるという考えが出されているが,まだ差し迫った問題となっている訳ではない.
韓国の4年生大学の教授(教員?)の人数の身分による内訳は,正規の教授42,000名,非常勤講師など52,000〜53,000名,非正規の教授(名誉教授など)10,600名となっており,60%超が非正規の教授となっている.
教授の団体は7つあり,それぞれ立場は異なるが,雇用の不安定化に反対という点では一致している.反対運動の中心は韓国教授労働組合である.
国立大学の設置は大統領令によっており,法律によるものではない.運営はほぼ総長一任とされる.総長は学内の選挙で2人を選び,その中から大統領が任名する.しかし得票の上位が選ばれることになっており,今まで逆転して下位の人が任命されたことはない.
国立大学の本部は政府直轄となっている.事務局長は政府が任命する.事務局長が実質的に大学を支配している(この情況は日本とよく似た状況のようである).
私立大学は政府から独立しているが,財団に実質的に隷属している状態.
大学関係の法律としては,高等教育法が国立大学を律しており,私立大学には私学法があるが,後者は実質的に前者に含まれる.すなわち準用規定で実質的に高等教育法が適用される.
4年制大学は188あるが,そのうち国立が40,およそ140が私立である.国立のうち約10校が総長の直接選挙制度を最近廃止した.
韓国においても憲法**で学問の自由が保障されている(22条).そしてこれには「大学の自治」が含まれるというのが学者の見解である.また,憲法31条は「大学の自律性」を保障している.
K 国家主義の危険性からの批判を主にされているようだが,「新自由主義」と結びついた動きとは見ていないのか?
J もちろんその側面もある.われわれ以外の批判勢力の多くはその立場からの分析がほとんどなので,われわれはその欠けた部分を強調しているという面もある.しかしこの問題では,前者つまり国家主義につながるという側面が主要なものと思っている.
K 日本のある大学の人が,全大教の独法化阻止の姿勢に疑問を呈していたが,どうか.
J 残念ながら不十分だと思う.そのような反対勢力の状況を変えるという事も意図して,全国ネットを立ち上げた.
(この他,日本の労働運動のナショナルセンターや日教組などの情況について質問があった.)
K 保守的な新聞,朝鮮日報が,101の国立大学のうち24が統合に動いていると報じている.実情は?
J 日本のメディアの状況も同じだ.反対運動は報道されない.また,大学も反対より「生き残り」に必死のようだ.
結論としては,韓国側としては,全国ネットの要請に応えて国大協などに質問を出すこと,またメールなどでの意見交換で今後両者で可能な一致点を探り,可能であれば共同文書を発表しようということになりました.
ホームページの英語バージョン(できれば日本語も)を要請しました.
折から電力労組が分割民営化に反対してストに入っており,明洞の協会に籠城していました.機動隊がこれを取り囲むというものものしさ.韓国教授組合の事務局長はそこの集会に出席するため中座しました.
** 韓国の憲法の日本語訳
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9133/