6月20日,畑山と豊島が佐賀県庁にて記者会見で発表しました.賛同者数は世話人を含めて109名です.賛同者名を添えて同日中に衆参両院議長,各政党に発送しました.(主要各紙の佐賀地方版で翌日報道されました.)
佐賀大学教職員有志声明
政府は、今国会での有事関連3法案の成立を強行しようとしています。民主党や自由党をはじめとした野党各党による質問で閣僚間での答弁の食い違いが表面化し、法案の稚拙さが浮き彫りになっています。そもそも、冷戦体制が崩壊したこの時期に、日本が戦場になることを想定した有事法制をかくも拙速に制定する必要があるのでしょうか。国土が戦場になった場合、軍隊は決して国民の生命や財産を守らず、守るのは軍隊そのものであることは、先の大戦で戦場となった沖縄の歴史が教えていることです。私たちは、有事法制下に日本が戦場になり、逃げまどう国民を尻目に、軍隊がひたすら戦闘行為を遂行している事態を想像してしまいます。
有事法制の必要性についての一般論を離れても、現在、政府によって国会に提出されている有事関連3法案については疑問だらけです。
第1には、日米安保条約や,米国と協力して日本の周辺事態に備えるという周辺事態法と関連づけた場合、アメリカが勝手に始めた戦争に巻き込まれる危険性が大です。実際、「テロとの戦い」と称するアフガニスタンへの戦争行為に今まさに自衛隊が「参戦」しているのです。
第2に、法案では、戦争のために国民の権利が制限され、従わなかった場合は罰則が課せられます。「有事」、つまり戦時には、国民の土地・家屋、財産が収用され、機密保持を理由に言論や報道の自由が大幅に制限される危険性があります。国民の財産権や自由が大幅に制限される事態は、戦前の国家総動員法を彷彿させます。
また、政府の命令や自衛隊の行為に対して反対する国民が弾圧される危険性もあります。しかし、「有事」の時にこそ、政府に対する自由な批判が抑圧されてはならないことは 、先の大戦で戦争を批判する人たちが弾圧され、政府の暴走のもとに悲惨な破局へと至った歴史が教えていることです。
第3に、地方自治体が、首相の指示により自衛隊への協力を強制されます。首相は、地方自治体などの公共機関に対して、自衛隊への協力などを命じることができます。すなわち、物資の輸送や補給、負傷兵の治療などの兵站支援に、自治体管理の港湾や空港などが強制使用され、地域の医師、看護士、輸送・通信従事者、土木建築従事者などが強制動員されます。これは,自治体をも戦争に巻き込み、自らの判断で住民の生命と安全、そして権利を守るという自治体本来の機能をも奪うものです。さらに,先日の官房長官の答弁では,私たち国立大学もこの強制の対象であることが明かとなりました。「学徒動員」の悪夢が胸をよぎります。
政府は「備えあれば憂いなし」と言っていますが、軍事的な備えにこれで十分という安心はあり得ない以上、ますます「備え」がエスカレ−トしていくことを、私たちは危惧します。軍事的「備え」が、本当に平和と安心をもたらすのでしょうか。「矛盾」という言葉が示すように、それは相手方にとっては「矛」、つまり世界にも有数の我が国の軍備と一体のものと受け取られるでしょう。
そうではなく、憲法の戦争放棄の原則に立脚して、諸国民との友好関係を築くことこそが、本当の平和のための「備え」であるはずです。私たちは、政府による平和外交や、市民やNGOによる国際協力活動などによる平時における諸国民との友好関係の構築と強化に力を注ぐことを提案し、疑問だらけの有事3法案を廃案にすることを要望します。
佐賀大学有志声明世話人
理工学部:上原 健・ 豊島耕一
農学部 :近藤榮造・藤條純夫
経済学部:飯盛信男・畑山敏夫
文教:園田貴章・田村榮子