7章 法廷及び刑務所に関する法的説明
7.1 前書き
トライデントの配備を違法であると当局が認めることはまずないが、 私達は、私達のとった行動 「核の大量破壊を威嚇する犯罪を阻止する」は、合法的であると考えている。 しかしながら、この行動に対しては、逮捕されたり、裁判にかけられたり、有罪と判決され長期にわたって刑務所に入れられる可能性があることも踏まえておかねばならない。 自分自身や他の活動家に対して責任ある行動をとれるように、更にこれらの事態に対応できるように十分に準備しておく必要がある。 この活動を開始してすぐに、「核による犯罪を阻止する誓約書」にサインしたすべての人は逮捕されるか、また誓約書の名前が世間に公表されれば共犯者として逮捕される可能性もあることを頭に入れておく必要がある。 この2年半の間に行われたキャンペーン活動の中ではまだこの様な事例は発生していないが、わずかでもその可能性がないとは言えない。「核の犯罪を阻止する誓約書」のコピーをいつでも持ち歩くことは、 必要に応じてそれを取り出して自分を説明するためにも賢明なことである。 自分の行動に対するより個人的な理由のために具体的な陳述書を準備したいと考える人がいるが、その中に「核の犯罪を阻止する誓約書」にもサインしていることを明記するように薦めたい。 しかし、活動家の中には人道的、道徳的範囲の中でこの活動に参加したいと考え、法律上の争いまではしたくない人達もいる。 すべての生命あるものに対する尊厳と愛を大切にして行動し、法律で争う行動は自分の生活信条に反すると考える人もいる。 それはそれで良く、全く法律闘争をする必要はない。 自分の正しいと考えるやり方で行動すべきである。
現在私たちは、スコットランドに拠点を置いたチームとイングランド及びウェールズをカバーするチームの二つの法的支援チームをもっており、これらのチームはこの活動に関する逮捕、 裁判、 判決上訴、 刑務所内での待遇などのすべてをチェックしている。 又、裁判手続きについての情報から弁護の準備なども手伝っている。 法律問題に関してあなたに起こったすべてのことはこのチームに知らせてもらいたい。
スコットランドでの連絡先
連絡人: ジェーン タレンツ (Jane Tallents)
電話番号: 01436-679194
電子メール: tp2000@gn.apc.org.
イングランド、ウェールズでの連絡先
連絡人: アンドリュウ グレイ (Andrew Gray)
電話番号: 0191-209-3140
電子メール: andrew@andrewgray.uklinux.net
7.2 逮捕とそれに伴う手続き
もしあなたが逮捕された場合には、 長い伝統の中で自分の信念に基いて行動し逮捕された人達とのすばらしい連帯ができることになる。 逮捕された経験は人それぞれ様々で、 感動的であったり、面白いと感じたり、 精神の高揚であったり、 極度の恐怖であったり、 力が高められたり、 孤独なものであったりする。 何が起こるかを知り、それに対して周到な準備をしておけば、あなたの経験は一層建設的なものとなる。
7.2.1 スコットランドでの逮捕とそれに伴う手続き
(注: スコットランドではイングランド、 ウェールズと異なる法律制度をとっている。)
警察があなたの行動を法に違反すると考えれば、 逮捕される可能性がある。 軍の施設近辺には民間警察と国防省警察が配置についている。
場合によって警察は逮捕する前に先ず警告を発する。 グループで活動している時は、 活動グループ全体に対して警告が出される。 警察は、 あなたが話したことはすべて記録として残され、 あなたにとって不利な供述証拠になることもある等の警告をする。 「後刻、法廷で主張しようと思っていることは、今言わないと後であなたに不利になる可能性があります」という警告も現在では告知のひとつに加えられている。 言い換えれば、 今後法廷での弁護にあたって重要だと思われるいかなる事実も、この時点で 述べておく方が一般的に良いといえる。 しかしこれは、 黙秘権を奪うものではない。 従って、 黙秘も可能である。 次にあなたは 警察官によって逮捕手続きをする場所へたぶん車かバンで連行される。
潜水艦トライデントの中とか基地の中の厳重に警備された場所で発見された場合には、 最初は海兵隊員かその関係者によって拘束され、 後に身柄は警察に引き渡される。
警察での逮捕手続きは、 いくつかの点においては、 あなたが持っていた印象程強い苦痛を与えるものではない。 様々の場所で又様々なやり方で取り調べは行われるが、 その中の幾つかの手続きは全く行われない時もあれば、 急速にすべてのことが処理されることもある。 すぐに釈放される時もあれば、 手続きに長時間かかる時もある。 逮捕令状が出されるとあなたは警察署へ移送される。 取り調べには冷静に対処し、自分の権利を十分に把握しておくこと。
・ あなたは所持品検査をされ、 所持品はすべて取り上げられる。 警察に見られたくないものや、 攻撃用の武器となり得るもの(例えば、マッチやナイフ等)は、 所持しないこと。 つまり、 所持理由を正当化できるものだけを所持していること。所持品検査の前に、 先端が鋭いものなどはすべて前もって引き渡すように言われる。 もしそれを怠って後刻発見された場合は、 追加の罪を受けることになる。
・ 名前、住所、生年月日を聴取される。 これらの質問に対しては、 法律上答える必要があるが、 この他に聞かれるたくさんの質問に関しては答える必要はない。 あなたが絶対菜食主義者であるとか、 病気治療用の薬を服用しているなど以外の必要のないことはなにも言わないほうがよい。 グループとしては自分達の主義、 主張、 活動理由などについて説明しようとあらかじめ決めているかもしれないが、 多くの場合、 後刻あなた達の不利の証拠となることもあるので、 それは避けるべきである。 裁判になってからこれらの事について証言、発言などする機会はいくらでもある。 警察は可能な限り質問できるし、 警察が取り調べで得た情報は脅迫、 脅し、 いじめなどの手段を使って取得したという証拠がない限り、 除外されることなく調書の中に採用される。
・ 病気や怪我の場合には医療を受ける権利を保有している。 必要ならばすぐに診察、 治療を要求すること。
・ 警察は、 必要があれば、 あなたの顔写真を撮影したり指紋を採取することができる。 しかし、 起訴されなかったり、 起訴されたが後になって無罪となった場合は顔写真や指紋の記録は破棄される。
・ あなたは取り調べ中で起きたすべてのことを、 記録にとどめることができる。 それは後になって非常に役立つものとなる。
・ あなたが容疑を受けている違反で収監される可能性がある場合、 最大限6時間、 あなたを留置することができる。 留置に際し、 留置理由、 即ち罪名及び被疑事実 (犯罪容疑) を知る権利がある。事務弁護士とその他の人 (多くの場合友人か親戚であるが) にあなたが留置されたことを知らせるように依頼できる。 そして連絡を受けたこれらの人達に、 法的支援チーム (ファスレーン(Faslane), クールポート(Coulport), オールダマストン(Aldermaston)での行動のためにそれぞれに設置されている法的支援チーム)か、 あなたが所属するアフィニティ・グループに連絡をとってもらうように頼むこと。アフィニティ・グループは法的支援チームに経過を報告することになっている。 法的支援チームの電話番号は、 各々の行動の前に発表される。 このチームは緊急時にすぐに協力してくれる弁護士を数人用意している。 厳密に言えば警察は、 6時間の留置時間中は事務弁護士と面接したり、 会話したりすることを禁止することができるが、 実際には、 事務弁護士が警察に出向いた場合、 十中八九、 面会は許可される。 如何なる裁判でも、 出廷前に、事務弁護士と 非公開の相談ができる権利があなたにはある。
・ あなたが容疑を受けている罪状に関して事情聴取されることがある。 ほとんどの場合、この事情聴取はすべて録音テープに収録される。 録音テープの収録については必ず事前に警告がある。 (但し軽犯罪については録音されることは少ない) あらかじめ、 供述書を用意しておき、事情聴取の初めに読み上げ、警察が質問することには何も答えないというやり方もある。
・ 取り調べが終わり、 起訴されると、 裁判のためにそのまま留置されるか、 警察があなたの住所・ 氏名を確認できれば、 釈放される。 住所は、 地元の警察をあなたの住居地に派遣して確認するか、 選挙人名簿によって確認することもできる。 住所が変わった直後とか、 単身で住んでいる場合は、 あなたの居住を確認できる方法か、 居住を証明できる人の電話番号を所持しておくとよい。 英国人でなければ、 パスポートであなたの身元を十分証明できる。 拘留されている人が多い場合、 この作業に時間がかかることもある。
・ 留置され、 翌日に裁判所に移送されることもある。 但し、 金曜日に逮捕された場合は、翌週の月曜日まで留置される。
・ どのような罪に問われるかについては7.2.3で扱う。 起訴が決定すれば、 それ以上質問されることはない。この時点で、 あなたの罪状に対する発言はすべて証拠として使われると告げられるが、 もう一度供述したければそれは可能である。 この時点での供述には再質問がない利点がある。
・ 釈放された場合、 おそらく数ヵ月後に召喚状が郵送されてくる。 召喚状には、罪状、 罪状認否申し立て審問の日時が記されている。 罪状認否の申し立ては、 わざわざ裁判所に出向しないで郵送することもできる。 又、 法廷で自分の主張を陳述したいと考えているなら、 この時に正当な陳述ができるように準備すること。 召喚状を受け取ったら、 トライデント・プラウシェア法的支援チームに連絡するように。 連絡によって、 チームは正確な記録を作成することができるし、 最新のアドバイスを与えることも、 又、 法廷での援助もできる。
・ 釈放される際、 あなたの所持品はすべて返還される。 あなたのアフィニティ・グループが、(大きなアクションの場合は、 トライデント・プラウシェア法律支援チームが ) 留置場の出口で、車の手配も含め出迎えてくれるはずである。 迎えが法律支援チームでない場合、 すぐに あなたの釈放を法律支援チームに知らせるのがよい。
警察内で起こるすべてのこと(手続きも含む )はとてもゆっくりである。 従って、 何も進んでいないように思えても、 心配する必要は全くない。 暇な時間を過ごす方法は沢山ある。 歌を歌ったり、 踊ったり、 他の留置室に居る人をサポートしたり、 瞑想したり、 寝たりもできる。 本の持ち込みも、 紙、 鉛筆、 食料、 水、 毛布等の差し入れも要求できる。うまくいけばこのうちのいくつかは許可されるかもしれない!
7.2.2 イングランドとウェールズでの逮捕とそれに伴う手続き
イングランドとウェールズ警察の規則はスコットランド警察の規則と多少異なるところがある。 先ず生年月日を聞かれるが、 (警察が独自のコンピュータで調べる場合、 非常に時間がかかるため) 釈放が遅れてもかまわなければ、 答える必要はない。 イングランドでは、 最初の逮捕で起訴されることはあまりない。 起訴される前に、 指紋を採取されることもない。 起訴されれば顔写真を撮影されるが、 警察は強制的にはできないので、もし顔写真の撮影がいやならば協力しなくてもよい。 容疑が重くない限り触手身体検査を受けるだけで済み、それは 同性の警察官によって行われる。
一番大事な知っておきたいことは、 警察で行われるすべての手続きは、 「 PACE (警察・犯罪・証拠条例:Police and Criminal Evidence Act)」に則って行われることである。 警察内にいる間であれば、 手続きに関係する規約のコピーを見ることができる。 不確かなことがあったり、 警察官が特にあなたに意地悪な態度をとったと思われる時は、 この規約を見ることを薦めたい。 この規約は事情聴取の際にも適用される。
無償で事務弁護士と会ったり、 話しあったり、 誰かに自分の留置を知らせてもらったりできる権利が、 あなたにはある。 留置されている警察を移動させられる場合には、 その都度、誰かに知らせてもらうことができる。 もし国選の「事務弁護士」に依頼する場合は、 有罪を認めたり、「 警告」((b)を参照のこと)を受け入れたりすることのないように、 十分注意しなければいけない。 自分のことについて誰かから問い合わせがあった時は、 問い合わせてきた相手に自分のことをすべて隠さず知らせてほしいと申し立てをしておくとよい。 即ち、 PACEの下では、 あなたの申し立てがある限り、 警察はすべての情報を公開しなければならない。
釈放される前に、 正式に起訴されることもある (正式に起訴されると、 警察はそれ以降あなたを留置することはできない)。 その場合は即座に公判日が決められる。 公判は近いうちにもたれ、 その公判では、「 罪状認否」の審問が行われる。 (「無罪」を主張するのであれば、 ほとんどの場合、 わざわざ裁判所に出向く必要なく、 手紙で済ませることができる。) 起訴された時には、 警察は保釈条件を課すことができる。 もし釈放されたければ、 その条件に従うというあなたのサインが必要である。 サインをすれば、 抗議キャンプに戻ったり、 国防省の管理区域に入ったりなどはできなくなる。
保釈出所中にもし保釈条件に違反するようなことがあれば、 最初に起訴された「容疑」より厳しい罪に問われることになる。
下記の四つの手段は、 警察が起訴手続きする以外によく採用する手段である。
a) 警察は起訴に相当すると判断すれば、検察局に書類を送付し、直接出頭させることがある。そうすると6ヶ月以内に検察局から出頭命令 ( スコットランドの「召喚状」の様なもの )が送られてくる。
b) 正式な警告を与える。 あなたが18歳未満の時は、「 叱責」又は「注意」となる。 警告は有罪判決ではなく、 「違反」を取り扱うのに最適な手段である。 しかし、 警告も警察記録に残るし、 将来もし裁判を受けるようなことがあれば、 参考として使用されることがある。 警告には、 あなたが一応「罪」を認めて警告を受けたという意味がある。
c) 詳細な調査が終わるまで保釈する。 即ち、 起訴されることになった場合は、 後日警察に再度出頭することになる。
d) 何もせずに釈放。 (この際、 非公式な口頭注意をする場合があるが、 この注意には
法律的な意義はない。)
私は最も重い罰を進んで受けるためにここにいる
法的には故意に犯した罪のために
そして市民として最も重要だと確信する義務を遂行したために
判事、あなたに開かれた唯一の道は、職を辞して罪悪との関係を絶つことです
あなたが裁くための法が邪悪であり、実際には私が無実だと思うならば
しかし、もし裁くための法と制度がこの国の国民にとって正しく
従って、私の行為が公共の安寧にとって有害だと信じるなら
最も厳しい罰を私に課しなさい
マハトマ ガンジー
7.2.3 スコットランドでくだされる可能性のある罪状
秩序違反 は最も良く知られた罪である。 封鎖活動をした場合に課せられる罪は次の様に表示される。 「 2001年2月12日(金) 英国海軍基地( HMNB)ファスレーン(Faslane)の北ゲイトであなたは治安を乱す行為をした。 道路に横たわり交通の流れを妨害し、 中止するように指示されてもそのまま続けて治安妨害を行った」 イングランドやウェールズの法律と違い、 スコットランドの法律では、 秩序違反は様々なものを包含した「包括的な」罪であり、 恐怖や混乱を招く行為、 又は招く可能性がある行為すべてを包括した罪状として広く定義されている。
この行為は普通法上の罪状なのでスコットランドにある三つのレベルのどの裁判所でも、 あなたを裁くことができる。 裁判所が言い渡すことのできる最も重い罪は、あなたが裁かれる裁判所がどのレベルの判決権を持っているかによって決まる。 どのレベルの判決を言い渡すかを正確に決定するためには、 犯した犯罪の程度、 深刻度、 与えた影響を調べ、 又個人的な事情も考慮にいれて審議され決められる。
故意の器物破壊 とは一般に、 他人の所有物に対し悪意かつ有意的に損害を与えることと定義される。 この行為も普通法上の罪状なので、 どのレベルの裁判所でも裁くことができる。 判決については当然その損害の程度や、 個人的情状酌量の余地の有無によって決められる。
1995年にスコットランドで追加された刑法52項、 公共物破壊 は、 故意の器物破壊(故意、 又は無謀に他人の所有物を破壊、 及び損害を与えること)と似たように定義されている。しかしこの方が罪は軽い。 地方裁判所での判決は、 最高の罰金が 1000ポンド (約18万円)、 又は最長拘置は60日、 州裁判所では、 罰金 5000ポンド (約90万円)か、3カ月の拘置とされている。 2回目の罪や、 連続して起こした違反に対しては、 州裁判所では6カ月の拘置を課すことが可能である。
共同謀議 はグループ内で犯罪活動を行うことに同意していれば成立する。 共同謀議はいろいろな形で存在するので、 共謀の相手と直接連絡を取り合っていなかったとしても共謀の罪に問われることがある。 例えば、 A氏とB氏が同意し、 B氏とC氏が同意した場合、 A氏、 B氏、 C氏の全員が共謀者として取り扱われる。 共謀罪を問われるとその罪に対し共謀していないこと、 即ち共謀の罪を撤回させることは非常に難しい。 共謀の罪を撤回させることが法的に可能かという問題には、 議論の余地がある。 裁判官が一度あなたを共謀者と認定し判決を下した場合、 裁判官にそれを撤回させるには、 かなりの努力が要求される。 トライデント・プラウシェア活動の誓約書にサインをすることは、 共謀に参加しているという決定的な証拠として十分なのである。 とは言っても、 多くの人がサインをすれば、 それだけサインをした人すべてが罪に問われる可能性が少なくなる。 しかし、 その可能性が全くないわけではない。 おそらく、 活動の中心的立場の人が狙い撃ちされることになるだろう。
扇動 とは言葉の通り、 共同謀議又は犯罪行為に引き入れようと、 ほかの誰かを誘うことである。 扇動の罪も、 コア・グループに対して適用される可能性が多い。 しかし、 誰かに書く手紙の内容、 電話で話す内容には注意すべきである。 なぜなら、 その内容によってはあなたにとって不利な証拠となりうるからである。
ファスレーン、 クールポート及びリュー・ナローズ(Rhu Narrows)条例 は、 基地の内部のみでなく国防省が管理する基地の土地や水域もカバーする。 この条例の中心となっているのは、 不法侵入罪である。 「 即ち、 正規の入り口以外からの立ち入り」、 例えばフェンスに穴をあけて侵入したり、 「許可書をもたずに保護区域に立ち入ることである」 この条例の合法性について、 過去に異議が申し立てられたことがある。このことについて詳細を知りたければ、 トライデント・プラウシェア法的支援チームに問い合わせること。
活動家が万一、 保釈中に再度逮捕されるような行動をとったりしたら、 保釈違反の罪に問われる可能性が大きい。 又この行為を何度も繰り返すと、 裁判が始まるまで再留置される可能性がある。
7.2.4 イングランドとウェールズでくだされる可能性のある罪状
ここではすべての罪状を網羅しているわけではないが、 可能性のある罪状や今までに下された例のある罪状は以下のとおりである。
秩序違反
この罪状はスコットランドで適用されているものとは全く異なる。 イングランドとウェールズの警察は、 秩序違反を防ぐため、 違反者の逮捕に対する強力な権限を有している。 更に、治安判事は (公判のような法廷審問のあとで) 「拘束」命令を出すこともできる。 この命令は犯行に対する有罪判決ではなく、 暴力や脅しがない限り適用されることはないだろう。
公道通行妨害
交通の往来に支障を起こす行為に対して非常によく下される罪状である。 公道という表現には道路側縁の草地と歩道は含まれるが、 個人の私有道路は含まれない。 罪は軽いが、 これもまた無罪を弁護するのはとても難しい。 (もしこの罪に問われた時は、 別冊トライデント・プラウシェアの資料参照のこと)。 核兵器保管施設のなかには、 法律上公道とされていない入り口もある。
警察公務の執行妨害
これは警察が特にあなたのことを快く思っていなかったり、 その場所から立ち退かせたりしたい場合によく適用される罪状で他の罪状に加えて適用されることもある。 他の人が逮捕されている時や、 警察がデモ隊を取り締まっている時にあなたが少しでも「介入」したりすると、 この罪に問われることが多い。
デモ行進、 示威運動、 治安妨害
デモ行進や示威運動に関しては様々な規制があり、 これは大規模な行動に加わったり「計画者」だとみなされた時に適用される。警察はデモ行進を禁止できるし(非常にまれではあるが)、あらかじめ裁判所の命令を入手しておけば、 不法侵入しての集会も禁止することができる。 警察は、 通常の示威運動を禁止することはできないが、 その内容に様々な制約をつけることはできる。 (その条件を破らせることによって罪を着せる事ができる) あなたが秩序を乱したり、 妨害したり、 脅したりしていると考えられる時は、 警察は私有地からの立ち退きを命令したり、 「加重不法侵入罪」で逮捕することができる。
様々な罪状の中から、 治安法(Public Order Act)のもとで起訴されることがある。 そのなかでもセクション5(治安を乱す行為)がもっとも適用されやすい。 この罪状は非常に軽い罪で、 スコットランドで使われている「秩序違反罪」に似ている。 セクション4とセクション1(暴動)などは、 セクション5よりもう少し重い罪状である。
もし基地に侵入したら、 「加重不法侵入罪」で逮捕される恐れがある。 この罪は、 「基地や基地に隣接した土地の戸外で合法的な仕事をしている者を脅したり、 作業を中断させたり、 妨害する意図を持って基地に不法侵入」した者に対して適用される。 このセクション68はあくまでも戸外でのものであって、 建物の中や屋上にいる場合は適用されない。 セクション68を適用するには、彼らの行っていることが合法的な仕事であるということを証明しなくてはならないので、この罪に問われることを私たちは歓迎するが、おそらくはセクション69の警告を与えられてしまうだろう。 現場にいる上級の警察官は、あなたが犯罪を犯した、 犯している、 又は犯しそうだと判断した場合、あなたに退去するよう警告することができる。 あなたがすぐに退去しなかったり、 3カ月以内に再び戻ってきたりした場合には法律上違反したことになる。 国防省警察は今までに、 セクション70(不法侵入しての集会)を適用したことはない。 しかし、 最高裁判所は穏やかに抗議活動をしていた20人以上の人達に対し規則違反をしたと判決を下したことがある。
条例
スコットランドと同様に、 国防省やその他の管轄地は特別条例によって保護されている。 これらの条例は場所によって異なり、 条例の通達はその場所のどこかに掲示されているはずである。 一般的に、 条例によって、 警察はその管理地域に入った人を立ち退かせたり、 不法侵入者として逮捕できるより強い権限が与えられている。 例えば、 AWEオルダーマストンやバーグフィールド(Burghfield)の核兵器保管施設は国防省の敷地内であり、 条例によって保護されている。 この条例のもとでは、 敷地内に入ったり(不法侵入)、 フェンスに何かをん結び付けたり、 敷地の上空に凧を揚げたりすることは法律上違反である。 現在は、損壊(次項を参照)を与えずに単に基地に侵入した場合、 国防省警察はまずあなたに立ち退きを要求し、 立ち退かない場合にはあなたをトラックに乗せて基地外に移動させる。 釈放されるまえにしばらく拘束されることもあるが、この条例のもとでの起訴は極めてまれなことである。 国防省はオルダーマストンの基地の隣に特別管轄区を所有しており、ここで オルダーマストン女性平和キャンプがかなり長い間キャンプを続けているが、特に大した問題も起きてはいない。 とはいえ、 国防省がこの条例を使わないという保証はない。
損壊罪
これはスコットランドでの「故意の器物破壊」に類似していて、 落書きやチョークの印をつけるような「一時的な」損傷もこの罪状に含まれる。 スコットランドとの大きな違いは、 他の所有物を「守る」ための行為であるという特別の(制限つきではあるが)弁護ができる場合がある。だが有罪になれば、 あなたの支払う賠償金は高くなる。 警察は、 あなたが実際に与えた損傷に対し証拠をもっていない場合や、 (損傷を与える以前に逮捕した場合には) 損壊をあたえる恐れがあるとして、 共同謀議の罪として起訴することもある。 そしてこの場合には(理不尽なことに)もう少し重い罪になる。
フェンスをよじ登って基地に侵入すれば、 その際フェンスや侵入感知装置を破損した可能性もあるので、損壊罪容疑として逮捕されることもある。 損傷がなにもなければ、 ほとんどの場合罪を問われることなく釈放される。
いやがらせ、 扇動、 共同謀議
トライデント・プラウシェアの活動家に対しては現在のところ使われていない一連の罪状であるが、将来これらが適用されることもあり得る(今使われているもので行動が規制できない場合には!)。 一般的にこれらの罪は今まで適用した罪に比べて重く、 普通は「主催者」のみに適用されている罪である。 従って示威運動や活動を組織している立場にあるかどうか聞かれた場合、 その回答には十分注意する必要がある!
7.2.5 結果_最終的に起こり得る種々の問題
刑務所に入れられることになるのか?
「核の犯罪を阻止する誓約書」にサインした人は、理論上では逮捕され、 共犯で起訴され、 最終的には刑務所送りになる可能性がある。 これらの可能性は (特に刑務所送りについては)、コア・グループのメンバーでない限り、 現在では極めて少ない。
あなたが重大な損害を与え、 その裁判で「有罪」の判決を受けた場合、 刑務所に送られる。 この対策については、 アフィニティ・グループとよく話し合って準備しておく必要がある。 拘置判決がくだされるのは、 たいていあなたの犯した罪が非常に重い場合だけである。 (例えば、 重要な物を盗んだとか、 損壊罪に匹敵する場合など)
すでに重大な犯罪歴があるとか、 以前に保釈中に保釈条件を破った(召喚に対して出頭しなかったなど)ことがあるとか、現在重大な違反で裁判中である場合には、 公判まで、もしくは少なくとも1_2週間は保釈されることなく刑務所に拘留される。
この他に拘置される可能性があるとすれば、 罰金を言い渡されたのに(それがどんなに軽い罪の罰金だとしても、) 支払いを拒否したときである。 罰金については地方裁判所の管轄となり、 最終手段として警察はあなたを刑務所に拘置できるが、それまでに は、 何度も警告が与えられ、(他の裁判所への出頭を要求されることもあるが) 罰金を払うチャンスは何度でもある。 イングランドにおいては、「 意図的」な罰金支払い拒否の場合(支払うお金があるにもかかわらず支払わない場合)以外は、 刑務所に送られるようなことはない。 スコットランドでは最近、治安判事が罰金支払い者に対し、 一定の期間内に支払うか、 それとも支払い最終日を決めるか、選択の余地を与えた事例が幾つかあった。 支払い期間が切れれば、 強制召喚状が発行され、 逮捕となりそのまま刑務所にいれられる。 別の例としては、 他の裁判のため裁判所に出頭してくるまで待って、 逮捕したこともある。 罰金の金額がさほど高額でなければ、拘置される期間は1-2週間 の短期間ですむし、 実際はその半分程度の日数の拘置ですむことが多い。 しかし、 イングランドではこれら以外のことも考えられる。 例えば、執行吏(執行吏との対応についての詳しいことは7.7.3参照)をあなたの自宅に行かせたり、 その日が終わるまで裁判所内に拘束し、 それから釈放したりすることもある。 刑務所では普通、 週末の釈放の処置をとらないのでそのことを知っておくこと。 従って、 釈放日が土曜日か日曜日にあたるときは、 たいてい金曜日の朝に釈放される。 出頭日を上手に調節すれば、 実際の拘置日数を最小限に短縮することができる。
社会保険の給付金を失うのか?
有罪の判決で罰金刑が課せられた場合、 地方裁判所はあなたの生活保護や失業給付金から、 罰金を差し引くことができる。(但し、 障害者手当ては除く) しかし、 これら給付金から差し引くことは、 ほとんどの裁判において実行されていない。
抗議キャンプや長距離の抗議行進に参加している場合には、 仕事を続けることは困難だと考えた方がよい。 失業手当を請求するのにも問題が生じる恐れもある。 だが、一回限り活動や示威運動に参加しただけで、 失業保険の給付停止を適用されることはない。 いずれにしても、地元の失業者・貧民者救援グループが手助けをしてくれるはずだ。 (手助けについては、 それぞれの地域によって異なる。)
障害者手当て(診断書によるが)に関しては、 より保全されている。 すでに出頭命令が出ていたり、 「証拠不十分」で調査が継続中の場合には、 この給付金の支給に支障をきたすかもしれないが、 示威運動や抗議行動に参加したことでこの給付金が受けられなくなったということは聞いたことがない。
職を失うのか? (それとも最初から仕事につけないのか?)
この問題は雇い主の考え方にかかっているが、 重大な罪を犯さない限り職を失うことはないはずである。 仕事を申請する場合には、 最近有罪判決を受けていればそれを明らかにしなければならない。 特定の仕事に限っては、 有罪判決を受けたことがずいぶん昔のことであっても、 すべて明らかにしなければならない場合がある。
判決を受けたことを明らかにしなければならないかどうかは、 あなたの犯した罪に対する判決の程度によって決まる。基本的には、 重罪以外はすべて特定の期間が過ぎれば犯歴が「消えて」、 それを申告する必要はなくなる。 期間は、 罰金は5年、 6カ月以内の拘置は7年、 6カ月以上の拘置は10年で、 犯歴の申告は必要がなくなる。 あなたが18歳未満の場合は上記で述べた期間は半分になる。 条件付き釈放、 拘束命令、 執行猶予命令に関しては、 具体的に明記されている猶予期間を終了した日から1年間である (すなわち、 裁判が終了してから2年程度である)。条件のつかない完全な釈放の場合は6カ月である。
しかし、 このような時限が適用されない特定の仕事があり、その場合は、 刑期が終了して何年経過していようとすべての有罪判決の申告が必要である。 申告を必要とする職種は、 教職、 行政職をのぞくすべての社会事業、 歯科を含む医療関係職、 司法関係職、 会計職、 警察及び軍隊である。
過去に犯罪歴があるからといって自動的に就業不可能ということではない。 だが、職業訓練を受ける必要があるソーシャル・ワーカーの場合は問題となる。 なぜなら、地域によっては、過去に犯罪歴があると福祉関係の経験を積む際に問題となるからである。
7.2.6 英国人以外のプラウシェア活動家に対する注意事項
ヨーロッパ連合またはヨーロッパ経済圏の国籍を有する場合
ヨーロッパ連合またはヨーロッパ経済圏の国籍者であるなら、「 核の犯罪を阻止するための誓約書」にサインしていても、 英国に入国の際にまず問題は生じない。 なぜなら、 ヨーロッパ連合の法律によって、 出入国管理当局が入国を拒否できる権限が制限されているからで、 ヨーロッパ連合の人達の入国を取り締まるのに、 他にあまり有効な制限もないのである。
起訴され、有罪を宣告された場合、 国外退去命令がだされる可能性があるが、 重罪でない限り国外退去命令がだされる可能性はあまりない。 ヨーロッパ連合・ヨーロッパ経済圏の国民が英国内で「公益を脅かす」と判断された場合、国外退去命令は彼らに対してのみ出されるべきである。 しかしながら最近、 オランダ人の誓約者が、秩序違反と保釈違反でしか起訴されていないのに、有罪判決が出れば、 裁判官が国外退去命令を出すこともありえるという通告を受けた。 もしこのオランダ人に国外退去命令が出されるようなことがあれば、 私達は事務弁護士と共に最後まで戦う決意である。 このオランダ人に対する警告は、 国側が、 海外からの活動家を締め出すためにとった圧力行動である可能性がある。 命令が刑事裁判で出されたものであろうと行政上のものであろうと、 国外退去処分がでた場合に上訴して戦う権利があなたにはある。 しかしながら、 上訴が結審するまで再留置される可能性がある。 英国政府が核の犯罪を阻止する活動家を国外退去させることに成功するようなことがあれば、 彼らの出身国での平和運動がさらに高まり、 トライデント・プラウシェアの活動への参加を一層促すことになるだろう。
別のオランダ人活動家の父親は、 国際警察だと名乗る人物から電話を受け、 息子がスコットランドで逮捕されたと知らされた。 このような通知をするのは通常の手続きだと告げられたが、これが通常のことでないことは明らかである。 国際警察に家族に対してこのような電話をかけたり、 迷惑がかかるようなことをされたくなければ、 英国警察に住所を教えるときにどの住所を教えるかよく考えること。
ヨーロッパ連合またはヨーロッパ経済圏どちらの国籍も有していない場合
入国審査の時に聞かれる滞在目的をどのように申告するか、 よく考える必要がある。 又携行荷物の検査がある場合もあり、 荷物の中味には十分気をつけるようにしたい。 ビザが必要な国の出身の場合、 要求されるビザを必ず取得しておくこと。 ビザをもっていても 又ビザの必要のない国から来ても入国審査で入国を断られることがある。 トライデント・プラウシェア活動家は次にあげる二つの根拠で、 入国を断られることがある。
1) あなたを入国拒否することが、 公益にとってよい結果をもたらすと考えられる場合 この場合、 内務大臣がその趣旨に従って命令を出すか、 入国管理局が入国審査の時、 入国を拒否することができる。 入国拒否は通常、 常習の麻薬の売人に対して適用されるが、 トライデント・プラウシェアの活動家に対しても、 もし入国管理局があなたの入国目的をあらかじめ知っているときは適用する場合もある。 英国に入国してから、 核の犯罪を阻止する誓約書に署名する方が望ましい。 又、 あなたが外国人誓約者であることもあまり公表しない方がよい (当局はわざわざ誓約者リストをチェックするようなことはしないだろう)。 又アイルランド共和国(エール)経由で入国したことについても調査することはまずない。
2) 英国の法律では12カ月又はそれ以上の拘置刑に匹敵する犯罪経歴がある場合
この条件があてはまる経験豊かな活動家はたくさんいる。 ビザを申請する時、 申請書の中に犯罪歴を記入しなければならない箇所がある。 ビザが必要でない場合、 犯罪歴を聞かれることはまずない。 即ち、 聞かれることがなければ、 当局があなたの犯罪歴を知ることはまずありえないということになる。 先程述べたが、 ビザ申請を断られた場合のもう一つの入国方法は、アイルランド共和国からの入国である。 入国してからも、 当局の注意を引くようなことがあれば、 あなたを国外退去させることが「公益にとって」よい結果をもたらすという理由から、 国外退去命令が出される可能性がある。 しかし、国外退去処分に対して控訴することができる権利があなたにはある。 そして控訴することにより、 市民の力で民衆が軍備縮小を進めることは公益にとってよい結果をもたらすのものであると主張する大きなチャンスが得られる。 起訴され、 刑事犯で有罪を宣告されれば、 裁判官は判決をくだす時に国外退去処分にするよう内務大臣に勧告することができる。 裁判官は7日前までに、 あなたの国外退去命令を国務大臣に勧告しようと考えていることを、 文書であなたに通告する義務がある。 あなたは、裁判官が内務大臣に出した勧告に対し、 刑事裁判制度に基づいて控訴することができる。 裁判官の勧告に従って国外退去命令にサインするのも、裁判官の勧告なしでも、 あなたを国外退去させることが「国益にとってよいこと」であるという理由で国外退去させるのも最終的に決めるのは内務大臣である。
国外退去命令が出されそうな場合、 自発的に英国から退去した方がよいと考える人もいるかもしれないが、 収監されていれば、それは無理な話だ! 国外退去命令が出された場合不利なことは、 英国を退去した後でも法律は有効であるから、 再び入国を希望するときには、 その罪状からの免除を申請しなければならないし、 取り消されるには少なくとも3年はかかることである。 又、 あなたが刑事犯で有罪判決を受けている場合には、 服役の期間か、 取り消されるのにかかる3年のうちどちらか長い方の期間が適用される。 即ち、 国外退去命令が出されると、3年又はそれ以上経過していないと合法的に英国に再入国できないのである。 軽い刑事犯で起訴されているだけなら、 国外退去が実行されることはまずないが、 軽い犯罪でも何度も犯行を繰りかえしていたり、重い罪を犯している場合には国外退去命令が出される可能性は大きくなる。 今のところ、 英国への再入国を拒否された誓約者はいない。
7.3 スコットランド及びイングランドの法制度と裁判手続き
スコットランドには3種類の裁判所があり、簡単にまとめると以下のようになる。裁判所が課す事のできる最高刑はあなたの罪状とその裁判所の科刑権限による。いわゆる慣習法違反と呼ばれる従来の法律と過去の判例(故意の器物損壊、秩序違反)に基づいた違反に対する最高刑は、あなたの裁判が行われている裁判所の最高刑と同じである。違反が法律によって決められたものである場合、制定法に基づいた最高刑がありうるが、これは一般的にその裁判所が課すことのできる最高刑より低いものである。どちらにしてもあなたに課せられる刑の種類と量や重すぎるの刑の場合、上告できることを示した実用的なガイドラインがある。
地方裁判所
これらは地方の刑事裁判所である。判事は治安判事で、法的な資格はないが法的資格を持つ書記官の補助を受ける。手順は常に「略式」つまり陪審員はなく、この裁判所では軽罪しか扱わない。地方裁判所で科す事ができる最高刑は60日間の禁固又は2,500ポンド (約450,000円) 以下の罰金である。
州裁判所
レイプと殺人以外の犯罪を扱う地方裁判所で、判事はシェリフ(sheriff)と呼ばれ、法的資格を持っている。裁判によって陪審員のいる場合もあるし、いない場合もある。慣習法違反については、陪審員が参与するかどうかは検察官が決める。最高刑は陪審員が参与する場合は3年間の禁固、陪審員が参与しない場合は3_6ヶ月の禁固あるいは2,500ポンド(約450,000円)以下の罰金である。
最高法院
最高法院は終身刑または上限のない罰金刑を科すことができる。(破壊行為などの)略式起訴犯罪はここでは扱われない。それ以外ならスコットランドのいかなる場所で行われた犯罪も最高法院で審理される。ここでは公判は常に陪審員参与のもとで行われ、判事はロード・コミッショナー・ジャスティシャリー(Lord Commissioner of Justiciary)と呼ばれる。結果的に重大な犯罪を犯さなければ、あなたがここで審理されることはない。
ヒアリング(審問)の種類
レベルによって様々な審問がある。
申し立て:召喚状は郵送されてくる。中に入っている罪状認否申し立ての書式に記入して、返送するか、または自分で持参する。持参した場合は、公判の日程が自分の都合に合わない時に調整を頼める利点がある。
中間審問:これは通常、公判の1_3週間前で、原告、被告の両方が裁判を行う準備ができていることを確認するものである。もし一方がいかなる理由であれ公判に入る準備ができていない場合、公判は取り消され、新しい日時が設定される。中間審問には厳密に言えば本人が出向かなければならないが、審問には出席しなくても、裁判をする意志があり、
裁判を進める準備を整えている、と述べた書面を提出することもできる(そうする人も多い)。申し立てでは中間審問を希望しない、あるいは欠席する人もいる。裁判所は、あなたに事務弁護士がついている場合はこれを歓迎するが、もしあなたが自分を弁護する場合は、論争する準備をしておかなくてはならない。
公判:これは日程通りに行われるべきであるが、警察の証言が得られない場合や、裁判が時間切れになった場合、また地方検察官の声が出ない!などという理由で延期されることがある。
Notional Trial(概念的裁判):これは、何らかの理由で公判が進行せず、進行させるために別の審問が必要になった場合に設定される。検察側の証人がないと、公判は当日行うことができないだろうし、例えば、法務総裁の事件付託が審問され、判決が出るまで私達が休廷を希望した場合にも設定される。
Diet of debate(討論のための開廷日):もしあなたが公判が開かれる前に争点付託やその他の法的決定を必要とする手続(条例の有効性を問う等)を要求したら、Diet of debateの日程が決められる。
争点付託の提起:1998年にスコットランド法が通過し、スコットランド議会で成立した時、スコットランドはヨーロッパ人権協約(ECHR)に署名した。それ以来誰もが「争点付託」を申請できるようになった。これは手続上のどの場面でもあなたの人権が侵害されたと思った場合、そのことを公判前に訴える事ができることを意味する。これに際しての手順は以下のサイトにある。
Act of Adjournal (www.legislation.hmso.gov.uk/si/si1999/19991346.htm)
上告:あなたが評決や判決に対して上告する場合、有罪の判決を受けて1週間以内に上告書式を提出しなければならない。裁判所の書記官はこれをTPの法的支援チームやサイトから手に入れるよう言うだろう!裁判所の書記官の手助けにより、治安判事はStated Case(合意事実記載書:判事の見解に基づく公判でのプロセスおよび判決の根拠)を準備する。修正を提出するまでに3週間ある。この修正を許可するかどうかを決める審問があり、あなたは出席して争点を争う事ができる。この審問の後最終の合意事実記載書があなたに送られる。あなたはそれをエジンバラにある最高法院に送り、そこで判事が上告を認めるか否か判断する。ここで却下されると、もう一度最高法院に送ることができ、今度は3人の判事によって判断される。これらは時間がかかることだが、この間あなたの罰金は一時棚上げされる。
7.3.2 イングランドの裁判所
以下に述べる英国の裁判制度の説明は必要最小限度にまとめてあり、完全なものではない。詳細はTPのサイトや「活動家のための裁判プロジェクト」(16bCherwell Street, Oxford,OX4 1BG、 Eメールactivistslegal@gn.apc.org 電話:01865‐243772) によってイングランドやウエールズの裁判手続の概要を知る事ができる。
イングランドとウエールズには2種類の刑事裁判所がある。
治安判事裁判所は軽罪を審問するが、大きな裁判もここから始められる。「判事」は3人のマジストレイツ(治安判事として知られている)から成る。治安判事は地域のしろうとである。つまり無給で、職業弁護士ではなく、伝統的に紳士階級の人がつとめることが多い。彼らは研修を受けた「書記官」という代理弁護士の支援を受け、裁判でのやりとりはほとんどこの弁護士が行う。この代わりとしてひとりの有給治安判事についてもらうこともできる。有給治安判事は研修を受けた、有給の裁判官でスコットランドの裁判官シェリフと似ている。
刑事裁判所は治安判事裁判所から上告された最も重い犯罪を審問する。刑事裁判所には刑事裁判(つまり上級刑事)判事と陪審員(ほとんどの裁判では)がいる。
特定の裁判(現在、すべての窃盗事件や5,000ポンド(90万円)以上の損害を与えた場合を含む)は治安判事裁判所、刑事裁判所のどちらででも審問を受けられる。これらは「either way(治安/刑事)」違反として知られ、どちらの裁判所で審問するかを被告が選択する事ができる。(これについては近い将来変更があるかもしれない)。
すべての裁判は治安判事裁判所で始められるので、この説明はこれらの裁判所で行われる審問のみカバーしている。ほとんどの町では治安判事裁判所があるが、行政上の目的で大きな場所に統合されていることもあるので、住所はあなたが裁判を受ける場所とは異なるかもしれない。最初の審問は罪状認否である。もしあなたが有罪を認めた場合はだいたいその場で刑が言い渡される。(重大な犯罪や裁判所が執行猶予報告を要求している場合を除く)もし無罪を主張した場合は犯罪の重さによって3つのオプションがある。
PTRは中間審問で、そこで公判のための調整がなされる。その時までにすべての証人と連絡をとっておく必要がある(そうすればどの日の裁判に出席できないかわかるであろう)。また(あなたの弁護に役立つよう法律や核兵器について話してもらうために)「専門家」の証人を呼ぶかどうかを決めなくてはならない。あなたが専門家証人を要請する時、裁判所はあなたに事前にsubmitting statement(証人申請書)を提出するよう要求するかもしれず、検察側は証人を呼ぶことに反対する事ができる。公判前手続再審問を行わない裁判所もあり、これらはあなたにとって迷惑ではあるが、弁護のために書類を手に入れたり、専門家証人を呼びたい時には(検察に反対される心配がないので)有用である。
理論上は罪状認否の審問や公判前手続再審問の際、特別な理由がない限り本人が出頭しなければならないが、もしあなたが「無罪」の抗弁を郵送したい場合は、特別な用紙がいくつかの裁判所にはある(裁判所は召喚状と一緒に送ってくる)。実際には、無罪を主張したいのであれば、いつでも裁判所に前もって書面で主張する事ができる。これは公判前手続再審問についても同様である。TPの法的支援チームがこの点について支援してくれるだろう。
裁判の審問はスコットランドのものと酷似している。少なくとも事務弁護士を頼まないなら、事前にTPの法的支援チームのブリーフィングやアドバイスを受けるべきである。有罪と認められた場合あなたはその場で刑を宣告されるだろう。(軽罪または初犯の場合、罰金が課せられるか、条件付の免責が課せられるであろう。)もっと重大な犯罪については刑の宣告が延期される事もある。
スコットランドと違って、裁判費用は有罪とされた場合あなたに課せられる。あなたが無罪となった場合は請求する事ができる。有罪の評決の場合、裁判費用は一般的に丸1日(午前10時に始まり、午後までかかる公判の場合)で200ポンド(36,000円)である。しかし警察や国防省の証人が多い場合はもっとかかる。被告が複数の時はこの費用は人数分で分担する。軽犯罪の場合はこの費用に一番お金がかかる。
上告の制度がイングランドとスコットランドでは異なる。基本的には2種類の上告がある。あなたは治安判事裁判所と刑事裁判検察局に上告の意思を通告することで、刑事裁判所に上告する権利を自動的に得る。刑事裁判所では判事があなたの審問を行う(陪審員はいない)。これは証人等のいる完全な再審理であるので、あなたが再度有罪となった場合は費用が高くなり、判事はより重い刑を課すことができる。(とはいえ審問は前回より有利に運ばれるかもしれないし、そうなれば釈放の可能性も高まる。)
もう一つの選択肢として、上告を「合意事実記載書(case stated)」によって申し込む事ができる。この上告のためには主に法的な論拠から成る一定の法的根拠が必要であり、証人等は認められない(あなたは治安判事裁判所から上告した後、刑事裁判所から「合意事実記載書」を用いて上告する事もできる)。これはスコットランドの合意事実記載書と同じであるが、治安判事裁判所からの合意事実記載書の草案(draft case )を受け取らずに初期の段階で却下されてしまうこともある。また、あなたの上告が失敗に終わった場合、検察側の費用を支払うことに同意する「保証書」を前もって提出しておかなくてはならない。
犯罪捜査部との楽しみのひと時 マリーコレット・ウィルキー( Maire-Colette Wilkie)
この世でこんなことが起こるなんて。ロージアン自治区と境界地方(イングランドとスコットランドの)の犯罪捜査部がトライデント・プラウシェアを真剣に取り上げてくれた! このキャンペーンの当初から、彼らはアドムナン・オブ・アイオナ(Adomnan of Iona)
アフィニティー グループのメンバーと定期的に会っていた。通常、彼らは質問をしにアランかマリー・コレット・ウィルキーの家を訪ねるのだが、他のアドムナングループのメンバーの家にも立ち寄ったし、ケイリ・クリエーチャーズ(Ceilidh Creatures:物語と歌と踊りの夕べに集う者) も訪ねた。 捜査員は大抵2人で、時に1人の時も3人の時もあった。最近では男性2人と女性1人の組み合わせで来ることがずっと続いている。毎回丁寧な申し出があり、前もって互いの都合を合わせている。礼儀正しく、友好的で優しい気持ちがあふれている!
彼らが興味を持ってくれれば平和教育にとって最高のきっかけになると思うので、協力体制を喜ぶ以上のものがあるのだ。当然ながら、私達が彼らに伝える情報はどれも既にTPのウェブサイトにのっているか、スピード・ザ・プラウ(Speed the Plough)といった刊行物に載った物ばかりである。彼らはTPの軍縮運動キャンプの数週間前に私達の所に来るのが普通なので、それよりも後でプランを立てることの多い我々が彼らに具体的な計画について話せることはそう多くはない。
最初に来た時から彼らはアドムナングループのメンバーの名前を知りたがっている。全員から承諾を得ているので、こういった情報を提供するのに大きな問題はなく、時に応じて更新もしている。彼らには始めからキャンペーンが非暴力で、完全に責任を持って行われていることを伝えているし、トライデント・プラウシェア ハンドブックや研修用ビデオ、「アドムナン法典」なども渡してある。これら基本的な資料は、増大するTP活動家の下級裁判所や高等裁判所での経験リポートで内容が増え、添えられている写真は活動現場での私達の姿である!
始めのうち、礼儀正しく、関心の示し方も少し遠慮がちに見えたが、次第に心から話し合えるようになった。近頃では訪ねてくる捜査官に福利面での心配をされるようになった。例えば、意外だったのが、私達の私邸を訪れることが私達の人権を侵害しているのではないかと懸念していたということだ!
私達が得ているものは何か? 先ず、彼らの訪問はアランにとってはチョコレートケーキとお茶の良い口実であるのだ!(我々はいつもちゃんとしたアフタヌーンティーを楽しんでいる!) 次に、現状を常に知らせて欲しいと彼らが要求してくれているお陰で、私達は逮捕された時もストラスクライド警察の独房から彼らにかける電話番号を持っていられる! そう言うととても困惑した様子だ。電話ができれば、逮捕された時に、その後の対処の仕方が少しはスムーズにできるのではないかと思う。 確かにそれからは「私達の3人組」はよく、そのことに触れるし、そういった場合の他の権威機関の対処の仕方などについて、やや悪口めいたことを言ったりもした。そしていつでも「遠慮せずに」電話をして構わないと言ってくれた!
そして、三番目に、そう、実質的なささやかな楽しみがあるのだ。最初の3,4回の訪問くらいから、彼らはティーパーティーにお土産を持ってきてくれるようになったのだ! (8月のキャンプの少し前にはヘンダーソン菜食レストランの夕食に招待してくれた!) 随分断ったのだが、お土産はだんだん増えるばかりだ。いつも気を遣って菜食主義者向きのケーキやビスケットを選んで買って来てくれるのがわかるので、彼らの気遣いには頭が下がる思いだ。(私達からそのような好みを伝えたわけではないのに!)
こうしたロージアン自治区と境界地方の犯罪捜査部の気前のよさのおかげでアドムナングループはとても満足のいく会合を楽しんできた。そして私達の地域の「正義と平和(Justice and Peace)グループ」は消費主義の精神にすっかり夢中になっている。ファスレーンでの「メイ・カーニバル2000アクション(May Carnival 2000 Action)」では多くのTP 活動家やストラスクライド警察、国防省警察までが一つの巨大なアイスケーキを切り分けて食べたのだ。次のクリスマスにはアランに何も買ってあげなくてもすみそうだ。なぜなら彼らが先回持って来てくれたフルーツケーキの賞味期限は2001年になっている!
犯罪捜査部が贈り物を提供してくれるのは人間にだけではない。彼らが来はじめた当初からドーキー・バード(Dorkey Bird: 旧約聖書詩篇の84:10をご覧下さい。話すと長くなる)が丁度良い具合にやって来て_日に何度か裏の戸をノックして、手から餌を欲しがる黒い鳥_今では3人の捜査官は明らかに彼女のノックを待ちわびている。「やって来たぞ」と彼らは叫び、マリーコレットが鳥とおしゃべりをしながら餌をやっている間、会話を中断する。「ドーキー」は彼女の子ども達にもちゃんと教育したらしく、2年後の今でも一羽は一日に3,4回やって来て、食べ残しのケーキのくずなどをついばんでいる。(もちろん、彼女は「伝書フクロウ」で秘密のメッセージをジェーン・タレンツに運んでいる。この事に犯罪捜査部はまだ気付いていないのだ!)
3人の捜査官の名前は彼らの希望通り伏せたいと思う。彼らの任務は神経を使うものだし、私達に敬意を持って接してくれているのだから。彼らが心地よい雰囲気の中で、気のおけないおしゃべりを楽しんでいると思いたいし、TPキャンペーンの精神をここで知った範囲で、理解してくれると思いたい。たとえ彼らの友情が私達の勘違いだったとしても、私達は信条に従って接したのであり、それが大切なのである。歓迎するのに負担はかからないし、アランは国際人道法の基礎を彼等に教えるのを楽しんでいる! 自分達がして欲しいように他の人にもする。それが結局私達のキャンペーンが目指しているものではないだろうか。もしもあなたの町の警察官が事情聴取にやって来たら、私達と同じくらいにそれを楽しんで欲しい。そして「フクロウ便」を遣わしてください!
この数字は、多くの人が私達の大規模なバリケードへの呼びかけに応えてくれたことを意味している。また核兵器犯罪に立ち向かおうとひるむことなく何度も参加した人も相当数いたということだ。
合計89人が裁判手続をしたか、あるいはこれからすることになっている。ほとんどの人は最初の数回の逮捕では、起訴されることはないが(起訴という名誉を与えられる前に4_5回逮捕された人も数人いた)、1回の逮捕で起訴された人も数人いる。一般的には逮捕される回数が多ければ多いほど、裁判にかけられる傾向がある。当局は高齢者(70歳以上)や障害者、つまりジュネーブ協定によって特に保護が必要であると認められた人を起訴したがらない!
活動家は過去1年にわたって、彼らが行った行動に対する公判に定期的に出席している。これはある部分、裁判所で、特にヘレンズバラにあるアーガイル・アンド・ビュート地方裁判所で私達がかけた圧力によるものである。ここでは2週間に1度しか開廷されなかったのだ。2000年の11月半ばにはヘレンズバラで3日間立て続けに行われる公判がある!ブライアン・クエールは1998年8月の最初のTPキャンプでの行動に対して下された有罪判決に対して上告した。最高裁判所は彼の上告を審問することに同意したが、2年たっても未だに行われていない。(法務総裁の事件付託の後休廷となっている)
2000年2月14日クライムバスターの封鎖で逮捕された185人のうち、22人は召喚状を送られ、残りの7人は25ポンド(4,500円)の罰金を課せられたが、支払わなかったので裁判所への出頭を命じられた。逮捕歴の多い人には200ポンド(36,000円)、スコットランドの国会議員には250ポンド(45,000円)が課せられたが、ほとんどの人には50ポンド(9,000円)から100ポンド(18,000円)の罰金が言い渡された。このうち裁判が行われたのはまだ半分以下である。2000年5月オルダーマーストンでの34人の逮捕者のうちニューベリーの治安判事裁判所に送られるのは8人だけである。
スコットランドにおける2,3の裁判は州裁判所に送られた。これは地方検察官がもっと重大な罪をでっちあげようとした時であったが、彼は誰も有罪にする事はできなかった。
また州裁判所には退去命令という脅しがついている裁判もある。最近障害のある活動家が、ヘレンズバラ地方裁判所には障害者のための設備がないというだけで、州裁判所の召喚状を受け取った!
トライデント3に対する悪名高きグリーンノック裁判は判事と陪審員の前で行われた。ギムブレット判事は陪審員に結論を出させず、法的根拠に基づいて無罪とした。しかし陪審員もほとんどの証言を聞いていたので、私達は、彼らが評決を下したとしても、エレン、アンジーそしてウラに無罪判決を下したであろうという見通しを持っていた。この4週間にわたる攻防戦の間になされた証言や論争の広がりは、地方裁判所レベルで行われる中身のない裁判からかけ離れた世界のものだった。
イングランドでは、治安判事裁判所や刑事裁判所で様々な裁判が行われており、また2001年に行われるものもある。これらの裁判では、トライデントの違法性の事実をのべるために、専門家証人の出廷を要請した。しかしこれらはだいたい治安判事や判事に無視された。
ミドルセックスの刑事裁判所のヘレンの公判では、陪審員は評決を出すにあたって国際法を考慮に入れても良いかと訊いた。判事は「ノー」と言ったが、陪審員はヘレンに有罪の評決を下した後で、「私たちは満場一致で、被告はその行動に対して正当な理由を持っていたという点に関して、同意している」と言った。
ロージーとレイチエルの公判は2001年4月マンチェスターで行われる予定で、これは3回目の公判である!最初の公判は刑事裁判所の見積った損害に誤りがあるとわかって取り下げられた。2回目は陪審員が1つの罪状については無罪とし、2つめの罪状には結論を出すことができなかった。
これらの公判はどれも私達に元気を与え、被告を支持するに値するものであり、力強い証言は直接傍聴に値するものであった。(これらの公判に関するコメントは7.6にあり)
以下は法廷弁護士のジョン・メイヤーがグリーンノックにおいてギムブレット判事に対して述べた論点である。これはあなたの事情に合わせて書き換えても良いし、治安判事に対する直接答弁としても利用できる。
もし陪審員がすべての証拠を公正に解釈して以下のことがわかったなら、
(1)1999年6月8日英国のトライデント原子力潜水艦艦隊(これ以降「トラインデント」と言う)は使用可能な状態で大量破壊兵器を搭載していた。
(2)1999年6月8日司令艇メイタイムはトライデントの支援システムの一部だった。
(3)1999年6月8日トライデントは実際、兵器使用の威嚇として使われた。
(4)このような威嚇は、国際法の、従ってスコットランド法のもとでは犯罪である。
(5)起訴された3人はすべての市民同様、国際法およびスコットランド法のもとでこのような犯罪を阻止する法的権利を有している。
(6)起訴された3人は、上述の犯罪を阻止するためその他のあらゆる法的な試みを尽くした後に、法的権利を行使し、告訴されているような行動をとった。
(7)トライデントが大量殺戮や重大な損傷を引き起こす危険が常に存在するため、起訴された3人は客観的に必要と認識される行動をとった。
(8)起訴された3人は、意図的に行ったが、悪意からではない。
被告は無罪であるという評決を出すであろう。
上記のような陳述を支援する文書が、国際司法裁判所の法廷意見からスコットランドCND(反核運動)のトラインデントレポートまでたくさんある。その他たくさんの文書の一覧がホームページにあり、利用する事ができる。過去に核による犯罪を防ぐために行った法的な事柄、あるいはTPの全ての人を代表して政府に宛てた手紙の見本を個人的な弁論として加える事もできる。(政府や軍との対話の要約は3.2にあり)
参照用に詳細かつ綿密に調査されたいくつかの法的弁護がある。これはホームページまたは法的支援チームから手に入れることができる。法的支援のために地域の推薦弁護士のリストや自分の弁護のために呼ぶ専門家証人のリストもある。
これらの情報は法的支援チームに問い合わせること。
あなたの町や裁判所のある場所が核弾頭に爆破された結果を示した地図は、法廷に提出するための説得力のある有用な文書になる。ジョン・アインズリーが皆さんのために喜んで用意する。連絡先:スコットランドCND 0141 423 1222または
7.6 国際法を採用したトライデント・プラウシェア裁判
2000年12月までにトライデント・プラウシェア アクションに関する94件の裁判が英国の裁判所で行われる。ほとんどの裁判では、アクションに対する活動家たちの熱意に加えてトライデントの反人道性が明らかにされているが、国際法におけるトライデントの違法性も多くの裁判で抗弁に使われている。
1998年の最初のTP裁判から、ヘレンズバラ地方裁判所で人々は違法性の問題を提起してきた。地方検察官は警察の証人に対する、ジュネーブ協定などに関する質問をすべて妨害し、専門家証人からの証言をすべて却下し、英国のトライデント配備は脅威にはいたらないし、もしそうであっても国際法の違反ではない、またたとえ違反であっても国際法はスコットランドには適用されない!という基本的見解をとった。
この地方裁判所での貴重な体験によって、論拠をより絞り込むことができ、これにより1999年9月グリーンノックでの州裁判官と陪審員による公判でトライデント3は釈放を勝ち取った。この公判は19日間かかり、ウラとエレンの答弁は弁護士が行い、アンジーは自分で弁護した。フランシス・ボイル教授が米国から来て、核兵器がいかに国際法に違反しているかという専門家としての証言を行った。ポール・ロジャース教授はトライデントの保有だけではなく、その使用がいかに政策として脅威になっているかを説明した。判事であるウルフ・パンザーは「ドイツに平和を(Peace in Germany)」で判事や検事がパーシング核ミサイル基地を封鎖した事を話した。レベッカ・ジョンソンは、独立防衛アナリストとして会ったどれだけ多くの外交官が、英国のトライデント配備により自国が脅威を感じているかを語った。仲裁付託の合意(弁護側の提出する意見)の最終段階で弁護士は州裁判官に対して陪審員の結論を採用せずに、女性たちを釈放するよう求めた。それは彼女達が国際法にもとづく正当な弁明の事由を示したのに対し、裁判所側はそれに反証をあげなかったからである。ギムブレット長官はこれに同意し、彼女達は釈放された。スコットランド法ではこの評決は刑事裁判所によって上告されることはない。しかしながら、この決定により大きな騒ぎが起きたため、法務総裁はこの裁判で生じた問題を最高法院へ付託した。
イングランドで最初に成り行きを見ることになったのは、ミッドランドのアフィニティーグループの4人がフェンスを切ってオルダーマストンへ侵入したことに対する裁判で、2000年2月ニューベリー治安判事裁判所で行われた。被告側が国際法に基づいた抗弁をすることを検察側は前もって知らされていたが、この抗弁に対抗することはなく、被告が管理者の許可なくして侵入し、フェンスを切ったという事実だけで争うことを選んだ。抗弁のためニック・グリーフ教授は核兵器がいつ、どんな場合に国際法に違反するかという専門家証言を行うために呼ばれた。ウイリアム・ペダンはトライデントの核弾頭や、その当時、AWE(核保有施設)ではいかにそれらが製造されていたかについて証言した。フランク・バーナビーは弾頭の技術的な情報や、それが一つでも使用されたらどんなことが起きるのかについて情報を提供した。弁護側の弁護士は「核兵器による事故や戦争が引き起こす重大な結果を避けるために、財産の保護をする緊急な必要性があるという彼女達の信念とその状況を考慮すると、彼女達の行為が理にかなっているということを根拠に釈放する事を求めます」と述べた。治安判事は彼女達を有罪とし、制定法に組み込まれていないのなら国際法については考慮しないと裁定した。
ロージー・ジェームスとレイチェル・ウエンハムの、英国軍艦ヴェンジェンスの実験装置破壊に対する訴訟手続きは「オルダーマストントライデント破壊女性 (Aldermaston Women Trash Trident)」アフィニティ_グループにとっては時間のかかる、いらだたしいものになっている。このアクションは1999年2月1日に行われたのだが、プレストンでの裁判を忌避する裁定申請を出し、最終的に公判は2000年1月24日にランカスターで始まった。プレストンは「ブレッド・ノット・ボム(Bread Not Bomb:爆弾ではなくパンを)グループ」の裁判で国際法の論争について全く聞く耳を持たなかったあの判事がいる裁判所である。そして公判は2000年1月24日にランカスターで始まった。検察側は間際になって損害の見積り額だけを提出した。もとの課徴金は2万5000ポンド(450万円)だったが、公判の2日目になって11万ポンド(1980万円)という数字を出した。その後判事は陪審員を解任する事に同意し、被告側にこの数字について専門家に相談する時間を与えるため再公判を命令した。再度バローでの裁判の変更を申請し、第2回目の公判がマンチェスターで2000年9月11日に始まった。損害額が31万8000ポンド(5億7240万円)から91万5000ポンド(16億2900万円)の間で上下する中、公判はポール・ロジャース教授、アンジー・ゼルター、レベッカ・ジョンソンへの審問後、終了した。陪審員は、潜水艦にペンキでメッセージを書くという第2の罪状については無罪としたが、ソナーの実験装置を損壊したという第1の罪状についての評決は過半数にさえ達しなかった。第3回の公判は2001年4月に予定されている。
ヘレンズバラ地方裁判所の書記官や地方検察官は私達の裁判の多さに圧倒されている事を公に認めた。多くの国際法に関する論争が彼らの前に立ちはだかり、有罪の評決が出ると上告されるのだ。
法務総裁の事件付託による裁決は、2001年の初めに出る予定であるが、たとえそれがどうであれ、今後の45件の公判を通して、トライデントの合法性や非武器化に介入する市民の権利の問題は法廷の内外で話し合われることを確信している。
あなたの公判でのふるまい方にはたくさんの選択肢がある。それはあなたの説明責任に対する考えや、裁判制度に対する認識による。またあなたやあなたと同行する人々が快適に感じるかどうかにもある。きちんとした服装をし、仲裁付託の合意の内容をよく考えて、丁寧にまとめるという伝統的な選択をするのとは別に、ここにいくつかのアイデアがある。
広報活動,プレスリリース、垂れ幕を持った支援者などは有効である。被告席から話をする予定があるなら、その内容をコピーしたものを用意して興味を持った人に渡せるようにする。支援者は公判に垂れ幕を持ち込む事はできないが、被告のために立ち上がる、歌う(簡潔に!)、拍手する、花を持ってくる、背中を向ける、退室するなどいろいろなことができる。
裁判は私達のための制度であることを覚えておくこと。大事なことは、公判中は自分がどの程度のところまでするのか決めておくことである。あなたが責任を取らなくてはならないようないきすぎたことを支援者はすべきではない。
治安判事が法廷にいる者の行動が不適切あるいは秩序を乱すと判断した場合、法廷侮辱罪に問われることがある。この段階で拘留され、後日法廷で法廷侮辱罪の説明あるいは嫌疑を晴らす機会が与えられる。
現在までの所、おおかたの人は、自分達の抗弁を法廷に真剣に取り上げてもらえるよう務めてきたが、ある意味で裁判所に協力するのを拒否した活動家もいた。国際法のもとでの抗弁について考慮する保証を治安判事から得られなかったアンジー・ゼルターは自分の所持品を集め、被告席を去ろうとして拘留された。午後になって公判が再開され、再出廷した彼女に法廷侮辱罪として75ポンド(13,500円)の罰金が追加された。
いずれ(近いうちに)トライデントの宣誓者は裁判所に対して全面的に非協力態勢をとる時がくるだろう。なぜなら法的手段が私達から奪われてしまったことと、裁判所が正義と倫理のために機能する機会が十分に与えられているにもかかわらず、いまだに現状を支持し、核兵器を使用するという英国の犯罪計画を司法判断によって支持しているからである。もしそうなったとしても、非協力的な姿勢をとるかどうかは個人の判断にゆだねられる。そしてそれがどんな決定であっても尊重され、法的支援チームによって全面的に支援されることは言うまでもない。中には、協力するのを拒否する前に少なくとも1回は裁判手順をふみたいと思う人もいるかもしれないし、また、今まで多くの人が法廷に国際法の基本的原則を支持する機会を誠実に、慎重に与えてきたのにもかかわらず、取り上げられることがなかったので、非協力態勢をとるのは適切だと考える人もいるだろう。
現在までの所、裁判所は罰金、賠償命令、そして(イングランドでは)裁判費用を課している。金額を設定する前に、あなたの支払い能力や支払い期限は考慮されることになっている。しかし実際は概して治安判事/州裁判官のTPに対する姿勢や特に公判の被告による所が大きい。裁判所は、全額支払に、例えば28日という期限を課すとか、週払いで例えば、5ポンド(900円)の分割払いを課す事ができる。たとえあなたがただちに刑務所に送られても支払う意志がないということを明らかにしても、裁判所は上記の手順を踏むのである。
2000年11月9日までに私達は合計で1万1576ポンド(208万3680円)の罰金を課せられており、このほんの一部しか支払われていない。払うか払わないかは各自にゆだねられている。抗議行動に参加し、逮捕され、裁判を受けることが既に献身的に関わっていることになるのであり、誰も刑務所に入るというプレッシャーを感じるべきではない。もし罰金を払うと決めたら、抗議の気持ちを明らかにできるような支払方法も考える価値がある。
以下は週払いという選択肢がある間に支払いを決意した場合に、抗議の意志を示す非常に効果的な方法である。1つ又はすべての方法を試してみる価値はある。
2)1971年の硬貨鋳造法に基づき拒否された場合、条例には以下の条項が含まれていることを知っておく必要がある。硬貨は合法の硬貨で10ポンド(1800円)までは拒否しては行けないことになっている。5と10ペンス硬貨は5ポンドまで、銅貨は20ペンスまで法的に有効である。
3)小切手はどんなものに書いても良い。舗装用の石に書いた小切手は核戦争が起きても残る。また、トライデント潜水艦の形に切り抜かれた6フィートの小切手は銀行の窓を通すのが困難であろう。ある農場主が牛に書いた小切手で問題の罰金を支払おうとしたことがある。(動物の権利を唱える友人はあなたの国ではそんな事はしないでと言った。)
裁判所は通常のもの以外の小切手を受け取ることを拒否するかもしれないが、それはあなたがどれだけ押し通すかによる。一度潜水艦の形をした小切手で支払おうとして拒否されたことがあったが、なんとその後書記官は潜水艦の形をした領収書を送ってきた!
たとえどれだけ多くの罰金が課せられようと、多くの人が支払いに加わることで活動に対する支持を示すことができる。
全額支払わないとあなたはミーンズ・コート(Means Court)に呼ばれる(裁判で刑務所に送られるという選択がすでになされていないかぎり)。スコットランドでは1995年の刑事訴訟法(Criminal Procedure Act)により罰金の不払いに対しては以下の禁固刑が最長で課せられる。
ポンドによる罰金 刑期
200(36,000円)以下 7日間
200‐500(90,000円まで) 14日間
500-1,000(180,000円まで) 28日間
1,000-2,500(450,000円まで) 45日間
2,500-5,000(90万円まで) 3ヶ月
5,000-10,000(180万円まで) 6ヶ月
10,000-20,000(360万円まで) 12ヶ月
20,000-50,000(900万円まで) 18ヶ月
50,000-100,000(1,800万円まで) 2年間
100,000-250,000(4,500万円まで) 3年間
250,000-100万(1億8000万円まで) 5年間
100万以上(1億8,000万円以上) 10年間
ほとんどの裁判所はあなたの地域の裁判所に罰金を転送する。これはあなたの家に近い地域裁判所のほうが罰金を徴収しやすいから、あるいは単に「責任転嫁」したいからである。
英国では罰金の不払いはそれほど大きな問題ではない。数人の活動家は罰金を支払う代わりに、終日ただ法廷の後ろの方に座っているように言われた。600ポンド(10万8000円)の罰金でさえも徴収に失敗した後、「免除」(排除)されてしまったことがある。代わりの支払い方法がいくつかあなたに提示された後、裁判所によっては執行吏に送ることがある。
7.7.3 執行吏との付き合い方
罰金、裁判費用、賠償金の支払いが不可能であったり、拒否した場合、治安判事が持っている選択肢の1つは「経済的困窮の証明書」を発行する事である。これにより裁判所の代理人、主に私企業の執行吏、時には警察官が任命され、上記費用と執行吏費用の支払いのために、あなたの財産をオークションで売却する目的で差し押さえる。
執行吏が来るという脅威は非常に不愉快なものであり、自分の家を包囲されているような気分になる。彼らがいつ来るかといつも待っているのは本当にストレスになる。しかし彼らの権限はあなたが思っているほど大きくないのであるから、パニックにならないように。注意深くすれば彼らを追い払う事もできる。もし失敗したら支払ってしまえば良いのである。従って、落ち着いて準備をし、これも活動の一貫だと考えるように。
もしあなたが準備万端であるなら、執行吏を阻止するために、不払い審問の前にできるいくつかの方法がある。
1.所有物を持たない。しかしこれは聖人、修道僧、修道女、そして本当の貧困者にしか実用的ではないであろう。執行吏はあなたのベッド、衣類、眼鏡、商売道具、あなたのものではない物、分割払いになっている物などは持っていくことができない。彼らが本当に望ましいと思っているのは支払いが容易にできるようないくつかの高価な物である。
2.高価な物は片づけて、どこかへ隠す。
3.あなたの所有物を友人やパートナーに譲渡するという手紙に署名する。これにはどんな物を譲渡するか明らかにし、事務弁護士が立ち会わなければならない。これは別の問題を生むことがある。もしこの方法を取るならコピーを執行吏に送り、また手元にも置いておくべきである。
4.自分の所有物をオークションにかける。これは上記より大胆に聞こえるがそうでもない。もし売買契約書に、あなたが都合の良い時に品物を届ければ良いとあり、そして購買者が都合の良い時など決してないことを承知しているなら、これは執行吏を避ける作戦となり、なんの問題も起こさずに基金集めのイベントになる。(私は今でもある有名な平和活動家の納屋とその中にある品物の誇り高き所有者である。)
あなたがこれらの方法をとらなくても、執行吏が来ることになったら、彼らが玄関口に来るのをただ待つのではなく、先手を打ったほうが良い。まず執行吏の名前と住所を調べること。仲間の間借り人に頼んで、執行吏が間違えて自分の財産を取り上げるのではないかと心配していることを、裁判所の書記官に電話で言ってもらう。(電話では誰でも同居の間借り人になれる)執行吏はたいてい最初に支払いを求める手紙をあなたに送るので、それで名前や住所を知ることができる。
執行吏が誰であるか分かったらすぐに手紙を書く。あなたの状況に合う以下の主張をできるだけたくさん盛り込む。
A)執行吏が家に入る権利はないし、立ち入りを承諾しない、彼らにお金は払わない、という法的なアドバイスを受けているので、やって来ても時間とお金の無駄である。
B)要求された金額に見合うだけの価値がある品物を持っていない。これは上記の方法のどれかを実行した場合(その場合はオークションや譲渡の証明書を送ること)あるいは多額の借金がある場合のみ有効である。あるいは彼らがリストの一番上に載せるような品物、たとえば家の外にある車などの高価な物や、家の中にあるすぐに売れるような大きな品物を持っていない事を指摘するだけにとどめる。
C)自分がさらに詳細な審問のために召喚され、応じようとしていること、また「経済的困窮の証明書」をすみやかに無効にするよう要求していること。
D)自分はなぜ支払いを拒否しているか常に説明し、トライデント・プラウシェアや自分がなぜこの活動に参加したかについて、この問題が依然として最高裁で審理されていることについて述べる。最高裁でトライデントが違法とされた場合、罰金、執行吏費用、不当逮捕に対する損害賠償金などを取り戻す法的行動を考えていること、もし彼らがあくまで差し押さえを執行しようとするのであれば、法的責任をとることになるだろう、と指摘する。
このような手紙を受け取れば彼らもあきらめるかもしれない。執行吏は容易に取りたてられるところから取る。したがって難しいケースを追跡するのは時間と労力の無駄だと思っているのだ。
この段階になったら、執行吏は事前の知らせもなく、いつでもやって来ることがある。もし表れた場合最も覚えておくべき重要な事は彼らを家に入れないことである!
彼らには建物の中に押し入る権限はない。しかし彼らは策略を使って、あるいは開いている窓から入って来るかもしれない。あるいは建物の内部のドアから無理に押し入ってくるかもしれない。これは共同住宅の場合は問題である。執行吏が来ると思われる場合は、
1)ドアには鍵をかけ、窓は閉める。
2)誰だかわかるまでドアを開けない。
3)家の者もこの事を承知していること。
4)外に高価な物を置かない。
できればだれかに、執行吏が来たらなるべく速く駆けつけてくれるように頼んでおくこと。そうすれば執行吏が権限を越えようとした場合の証人になり、またあなたがドア越しで言い争うよりも容易に1対1で論争することができる。
もし執行吏が入ってきたら、罰金を払ってしまってもよい(この費用には執行吏の費用も含まれ、高額になる)。もし払わないと財産を取り上げられるか、後日の取り立てのために張り紙が貼られる。これらの張り紙された財産を動かしたり、勝手にいじるのは違反である。しかし未だ支払いを済ませ、オークションまでに自分の財産を取り戻すという選択肢が残されている。
執行吏を追い返すことができ、この件が裁判所に戻された場合、金額は元に戻り、執行吏の費用は無効になる。
払えるが、払わない ‐ 裁判を経験した一人の活動家 ロジャー・フランクリン
(Roger Franklin)
私達4人は、ニューベリー(Newbury)で行われた3日間にわたる裁判の結果、国防省に対する賠償金と、法定費用の支払いを命じられた。1999年7月のある晩に、我々がオルダーマストンの核兵器保管施設を非武器化しようとしてから7ヶ月も経っていた。
2ヵ月後の2000年5月5日、費用の支払い命令がストラウド治安判事裁判所(Stroud Magistrates)に転送されたので、私は指定された日にそこに出かけていき、私がなぜ、570ポンド(約10万円)のお金を支払いたくないと思っているのかを簡潔に説明した。私は既に、前もって、そのことについて3ページにわたる説明文や関連資料を裁判所宛てに(報道機関にも)送っているのである。治安判事はそれは読んだと述べた。
簡単な話し合いの後、判事と書記官とが何か耳打ちして、私に告げた。つまり、私の財産を競売し、徴収する動産差し押さえ命令書を持った執行吏を私の家に遣わす、と。そして3ヶ月の間ティクモラン(Tickmorend)(非核地帯である)の私の家が差し押さえられた。3ヶ月が過ぎると、先ずロンドンの執行吏から、続いてやはりロンドンの引越し業者から赤の大文字で書かれた、脅すような警告書が届いた。どちらも、彼らが私の家に来るまでの一週間を支払い期間としていた。
私は築330年の我が家にできる限りの防御体制を施し、外に出る時は必ず、たとえ庭に出る時でさえ、ドアに鍵をかけることを忘れなかった。玄関のドアには執行吏に宛てた警告「爆弾の仕掛けがあるので注意のこと」(命にかかわるものではない)と、ガーディアン紙に載った、市民相談所の執行吏に対する批判文のコピーとを一緒に貼っておいた。
家族の訪問の時など、その防御を緩めもしたが、幸いその時に執行吏は来なかった。ある時、友人の一人が町で、コンサートで会った事のある執行吏に出くわし、ティクモランに取り立てに行ったとして、どんな価値のあるものが没収できるかと尋ねられた。友人は、車も無いし、電気製品などもろくに無い、どこか他の場所に行ったほうがいい、と答えた。
8月にクールポートのキャンプから戻ったが、留守中に執行吏は現れなかった。ところが翌日、8月16日の朝、いい気分で朝食をとっていると、近くの警察から警官が来て、私の逮捕令状を示した。私は裁判所と同じ建物内のストラウド警察に連行され、ベルトに至るまで全ての所持品を没収して丹念にリストを作るといった、一般的な逮捕者に対する手続きが行われた。しかし指紋を取ったり、写真を取ったりはしなかった。許可された一冊の本を持って独房に入れられ、約30分後、裁判所の被告席に連れて行かれた。そこには3人の治安判事と書記官が並んでいて、傍聴席にはもちろん、誰もいなかった。
執行吏による没収作業が不成功に終わったとその治安判事が告げるのを、私はズボンがずり落ちそうになるのを必死に押さえながら聞いていた。治安判事達はその代償として、投獄までは至らないような刑罰を話し合い、更に3ヶ月の支払い猶予期間を与える、とした。更にヘレンズバーグ裁判所からストラウド裁判所へ別の罪状と罰金の請求も送られてきていた。重要なメッセージを書くのに、国防省の独房のきれいな壁を使ったことに対する代償がこれだった。
いずれにしても3ヵ月後にはその判決は、「差し押さえ手続き」行使権(銀行口座などからお金を取り上げるなどの)を持つグロセスターの州立裁判所に送られた。この非公開の審問で私は多くの事実を証言すると片手を挙げて誓わされたのだが(もう一方の手はバギージーンズをしっかりと押さえていた)、これはどうやら私が銀行にお金を持っているという事を確認するためのものだったらしい。こんな場合にうそをつくのは賢い方法ではないだろうから。
その後すぐに、この非公開の審問(私が話したことを基に書いた記事を地方新聞が載せたので、 実際には非公開でもなんでもなくなったのだが)の日より3ヶ月と5日後にストラウド下級裁判所へ再出頭するよう言い渡されたので驚いてしまった。この事情聴取の4ヶ月前、ストラウド裁判所の上級書記官からは大変有用な内容の手紙をもらっていた。彼は「たった」750ポンド(約13万円)_その時点で_位の罰金のために差し押さえ手続きを行使するのは採算が合わないことを治安判事に忠告するつもりであるというのだ。そうすれば治安判事達は再度私を投獄することを検討するだろうし、私は法廷での弁護人が必要になるだろうというのである。
ついでに言えば、始めに執行吏から受け取った書類では、かかった経費として(郵便代か?) 90ポンド(約1万6000円)が加算されていた。しかしながら彼らの仕事が失敗に終わったせいか、その加算分は消去されていた。660ポンド(約12万円)の罰金徴収のために、競売にかけて安くたたき売れるものはないかと、家中すみからすみまで探されるのはご免なので、私は執行吏が首尾よく家に侵入し、その仕事の代価としての加算額を請求した場合にはすぐ払えるように、相当以上の金額を隠しておいたのだ。古来、執行吏が家に侵入できるのは開いている窓から、または床から、と決まっているので、我が家は夏の数ヶ月間、締め切って、風通しの悪い思いをしたのだ。
上級書記官からの親切な手紙に今私は返事を書いている。弁護人は雇わず自らを弁護するつもりであること、私を投獄すれば費用は国にとってかなりの支出になり(つまり税金を使うことになる)、しかも違法な核兵器の廃絶運動を続ける使命を止めさせることなどできない、という事を再度裁判所に確認する内容になるだろう。また、私を投獄する代わりに地域サービスに利用する考えはないか尋ね、私には無用なフェンスの金網を切断する熟練した技があることを伝えるつもりだ。この能力を使えるようなフェンスがこの地域のあちこちにあると思う。これがギルバート(喜歌劇の作者)流のふさわしい解決策というものだ。
生来、馬鹿正直であるので、もし「差し押さえ手続き」により、銀行から多額の追徴金を
徴収されるような差し迫った状況に追い詰められていたら、罰金を支払おうと思ってしまったかもしれないことも打ち明けておこう。そのような追徴金はもっと有効な目的のために使うものだ。とにかく、ストラウド裁判所は、違法である核兵器の廃絶運動を、合法的に、人道的に行っている人々に罰を課するという行為に加担したくない、という事を他の裁判所に明言することが取るべき正しい道であろうと提言するつもりである。
この話の続きは「トライデント ハンドブック」の第4版が出るまで待って欲しい。しかし、本当は第4版など、出さなくて済むようになって欲しいものだ。
追記:ストラウド下級裁判所に戻されたロジャーは一週間に15ポンド(約2600円)の支払いか、28日間の勾留かを言い渡された。そこで彼は「フランクリン核廃絶運動継続基金」を立ち上げた。支援者が裁判所に払うべき15ポンドを彼に払えば、彼は一回分の、彼の15ポンドをトライデント・プラウシェアに寄付し、自由の身で、核廃絶の運動を続けるというものである。
スコットランド
裁判所書記官(ヘレンズバラ)、Argyll and Bute Council, Kilmory, Lochgilphead, Argyll, PA31 8RT. 電話:01546-604340 ファックス:01546-604444
Eメール:mail@legalservicesabc.demon.co.uk
州裁判官事務所:The Sheriff’s Court House, Church St, Dumbarton.
電話:01389-763266
地方検察官事務所:2 St. Mary’s Way, Dumbarton, G82 1NL.
電話:01389-730972
最高法院:Lawnmarket, Edinburgh, EH1 2NS
電話:0131-2406907 ファックス:0131-2406915
法務総裁:Lord Advocate’s Chambers, 25 Chamber St, Edinburgh, EH1 1LA
電話:0131-2262626 ファックス:0131-226-6910
イングランド
ニューベリー治安裁判所:Reading and West Berkshire Magistrate Courts, Civic Centre, Reading RG1 7TQ, 電話:0118-955-2600 ファックス:0118-950-8173
オルダーマストンの住所:AWE Aldermaston, Reading, Berks, RG7 4PR
(オルダーマストンの国防省警察:電話:0118-982-6286
法務長官:9 Buckingham Gate, London, SW1E 6JP.
電話:0207-828-7155 ファックス:0207-931-7455
7.8 刑務所に関する説明とそこでの対処の仕方
7.8.1 準備
アフィニティ・グループ内で
恐怖心や刑務所についてのイメージを話し合うこと
このハンドブックに刑務所についての注意事項を書いた人に連絡を取り、以前投獄された経験を持つ人から話を聞くか、囚人組織(住所は下記に記す)から刑務所についての知識を得ること。
投獄された場合、どのような支援を望むか決めること。例えば、定期的に手紙を貰うこと、または刑務所を訪問する当番の組織作り、或いはアフィニティ・グループの支援者からのサポート等。アフィニティ・グループの一人が刑務所でのサポートを促進する責任者になる事が可能か?またはそれぞれの活動家が自分の刑務所支援者を決める方を望むのか?
長い留守に備えて子供、両親、友人やペットに対する自分の責任と、それに対して彼等からどのような援助が必要なのか話し合うこと。
あなた達が刑務所に入っている間にできる核廃絶活動_手紙や記事を書くこと等を話し合うこと。
刑務所に入所中に行える勉強やレクリエーションのためのプランを話し合い、その準備をすること。前から希望していたが、時間がなくてできなかった通信教育などコースはあるのか?刑務所内でこのような教育を受ける場合毎週教育費を負担してくれる人が見つけられのか?前向きに考えること。
あなたのアフィニティ・グループを支える支援団体の構成について話しあうこと。あなたの所属グループ全員が同時に逮捕・投獄される可能性がある場合は、外部でサポートしてくれる支援グループが必要である。行動を起こす前にあなたのアフィニティ・グループは全員、支援グループに会ったほうがよい。
個人として
刑務所に対する自分の恐怖心や懸念を認め、あなたのアフィニティ・グループの人たちと
それについて話し合おう。
可能な場合は、あなたがこれから行おうとしていることを友人や家族に伝えておこう。個人的に責任ある問題を片付けておき、入獄中にしてほしいことの段取りをきちんとつけておくこと。例えば、あなたがいない間、あなたの預金の署名代理人を決めて請求書などの代金を支払ってもらうことは可能であろうか?また、出所後に住む家はどうするのか?住居手当は、拘留された場合、1回の判決で13週間分のみ認められる。長期間留守にするのであるから、遣り残しの仕事を終わらせておこう。人に伝えるべきことは、すべて伝え、荷物(精神的にも、物理的にも)も軽くして、すっきり身軽になっておこう。通常の囚人と違って我々には十分準備時間があるのだから。
次に記すように、刑務所や法廷で必要となる荷物を用意しておくこと。弁護用の書類、衣類、筆記用具、切手類、写真(脱走に使用される恐れ?があるので、本人が写っている写真は不可)、本(通常、刑務所に持ち込めるのは6冊までであるが、勉強用に何冊か余分に持ち込む事は殆どの場合許可される)、バッテリー式のテープやラジオ等。所持品が多すぎるのは禁じられている。目安としては、ポリ袋に入れて自分で1回に運べるだけの量ということである。なるべく少量で足らせるように訓練しておくこと。また、刑務所の規則は何時変更があるか分らない。突然所持品が全く許可されなくなる可能性もある。
しかしあなたは決して一人ぼっちではない。外部からあなたを支援してくれる人達は大勢いる。また刑務所内部でも他の囚人を支援する人たちがいる。他の囚人たちに対して国際アムネスティ緊急行動を要請する手紙を書くよう呼びかけるのは、連帯意識を高めるのに役立つであろう。
あなたが刑務所に入ったときに必要になると思われる法律関係の本や資料を予め用意しておけば、友人や弁護士に持ってきてもらう場合も便利である。刑務所内の図書室は充実しているとは言えない。
スコットランドでは唯一の女囚刑務所 であるコーントン・ベールの近くに所在するコーントン・ベール プリズン サポートやスターリングCND、その他の支援団体は当女囚刑務所の全ての女性囚人を支援している。ヘレン(Tel:01259-452458)はこのような支援のコーディネーターであり、新聞や訪問などの手配をしたり、その他全女性囚人に対して気を配っている。
「スコットランド英国刑務所監査所」(H.M.Inspectorate of Prisons for Scotland)、クリフ・フェアウェザー警部(Chief Inspector Clive Fairweather)、Saughton House, Broomhouse Drive, Edinburgh, EH11 3XD. Tel:0131-244-8481. Fax: 0131-244-8446.
英国刑務所 ベッドフォード(HMP Bedford), St Loyes St, Bedford MK40 1HG.
英国刑務所 ブロックヒル・プリズン( Brockhill Prison), Redditch, Worcestershire, B98 6RD.
英国刑務所 グリーノック(HMP Greenock), Gateside, PA16 9AH, Tel: 01475-787801.
英国刑務所 ホロウェイ(HMP Holloway), Parkhurst Road, Holloway, London N7 0NU.
英国インスティチューション コートン・ベイル(HM Institution Corton Vale),
Cornton Road, Stirling, FK9 SNY. Tel:01786-832591. Fax: 01786-833597.
HMP プレストン(HMP Preston), 2 Ribbleton Lane, Preston, PR1 5AB.
HMP リスリー(HMP Risley), 617 Warrington Rd, Risley, Warrington, WA3 6BP.
「全国囚人支援活動」(National Prisoner’s Movement)、BM-PROP、London WC1N 3XX. Tel: 0181-5423744. 当団体は囚人から待遇に関する苦情があった場合、法律的、医学的なバックアップをおこなう。
「スコットランド刑務所オンブズマン、刑務所苦情委員会」(Prison Ombudsman for Scotland, Prison Complaints Commission)、Saughton House, Broomhouse Drive, Edinburgh, EH11 3XD.
「刑務所改善トラスト」(Prison Reform Trust)、15 Northburgh St, London, EC1V 0AH. Tel: 0171-2515070. 当団体は全国的規模の慈善団体であり、刑務所の待遇改善を求める運動を展開している。刑務所生活の様々な事柄に対する問い合わせや待遇についての個々の苦情などを対処している。
「菜食主義囚人支援グループ」(Vegan Prisoners Support Group)、PO Box 194, Enfield, Middlesex, EN1 3 HD. 当団体は入獄中の菜食主義者達に栄養に関する適切な情報を提供する。
「女性囚人」(Women in Prison)、Aberdeen Studios, 22 Highbury Grove, London N5 2EA. Tel: 0171-2265879.
当団体は元囚人達の組織であり、特に刑務所内での女性の問題を取り上げた運動をおこなっている。
7.8.3 刑務所生活のついての考察
ステーブン・ハンコックの手記
1990年3月21日、マイク・ハッチンソンと私は当時オックスフォードシアのUSAFアッパー・ヘイフォードにあった核搭載可能なF-111戦闘機を非武装化した。我々はこの計画に10ヶ月費やした。そして各人が2つの判決_6ヶ月と15ヶ月_を受け、同時並行的に服役するよう言い渡された。この判決は我々が覚悟していた刑よりも軽いものだったので、私たちは比較的満足した状態で入獄できた。実際の服役期間は古い複雑な計算によって決定され、マイクと私の刑務所生活はわずか6ヶ月で終了した。
刑務所に入る前にやるべき事を幾つか述べてみる。
・あなたとあなたのアフィニティ・グループとの間で取り決めた身辺の安全性を損なわない範囲内で、生活の中で最も大切な人達にあなたの計画を伝えなさい。あなたの大切な人達の意見や感情も考慮しなさい。あなたと家族と友人たちの間で対立や不和が絶対起こらないとは保証できないが、彼等も入獄期間を共有するのだという意識が確実に生まれるであろう。
刑務所内での過ごし方は各人各様であるが、私にとって役に立ったと思われる事柄を幾つか記してみる。
このような生活を実行したにも拘らず、それでもやはり刑務所の生活はきついものであった。しかし私の場合は刑期も短く、入所した2ヶ所の刑務所は比較的規律がゆるく、友好的な囚人達に恵まれたので、運が良かったほうである。刑務所を出た後で経験した困惑と混乱はある意味では入獄中の時よりも甚だしいものであった。支援も少なくなっていき、目標も無くし、私が何を苦しんでいるのか誰にも判ってもらえないような気持ちに陥る。これは皆が経験する事ではないだろうが、いわば「ポスト・プラウシェア」鬱病と呼べるほど、多くの人達に見受けられた。恐らく我々は刑務所に入る前の準備と同様に出所後の対応策も考えておく必要があるのかもしれない。次回には私も準備を整えておくつもりである。
ウラ・ローダーの手記による、スコットランド刑務所に入所したデンマーク人
実務的にもまた身体的、精神的にも刑務所に入る心構えが出来ているつもりでも、又たとえアフィニティ・グループの友人と刑務所内で会うことができるとしても、実際に刑務所に入ってみると今までと全く別の印象や感情を覚えるものである。刑務所の中での文化は一般社会の文化とはまるで別物である。その上、私の場合、デンマーク人としての文化的背景はスコットランドとは異質のものであることを悟った。
最初の1週間は錠前の掛かった扉や細かな日課に慣れる事から始まるが、看守が号令を掛けるときの大きな怒鳴り声を理解できないこともあって、これがなかなか難しいのであった。
看守達は一般的に善人だが、心理的な圧迫感を与える。私は部屋の点検や一部の女囚に対する扱い方に大変戸惑いを感じた。たいていの場合我々への待遇は問題なかったが、終始自由は認められなかった。何も予測する事は出来ないし、自分で時間配分をする必要もない。そしてそのことが大きなストレスとなる。
また、夜中に誰かが大きな叫び声を上げた時なども、自分の悲しみを押さえる努力が必要であった。それは難しいことであったが、自分の気持ちをしっかりさせるには必要なことであった。刑務所の中は悲しみに満ちていたが、まいってしまわないためには、そのような悲しみから距離を置く必要があった。この事は私にとって大変辛いことであり、後で、刑務所に入っている若い女性達(まだ十代の者もいたが)に何もして上げる事が出来なかったという無力感から立ち直るのに長い時間がかかった。
1週間が経つと、私もだんだん慣れてきて、何を誰に頼んだら良いかとか、どの人の返事が理解し易いかなどが判るようになった。刑務所では、どんな些細なことでも忍耐強く要求し続け、自分の要求が認められるまで何回でも苦情書を提出することが大切であることを学んだ。看守達と言い争そいをしないで苦情書を出す事が、時には大変難しかった。エネルギーを浪費させられることであった。
時には他の囚人と話すこともあった。入所中の若い女性の殆どはスコットランド語らしい言語を話していたので、よく理解できなかった。私は特に2人の南アフリカ人の女性と知り合い、よく話をするようになった。そのうちの1人とは約1ヶ月間同じ房になった。1人のスペイン人の女性は私にスペイン語を教え、私は彼女に英語を教えた。また耳の聞こえない少女とは部屋の外で会う機会があると筆談で話をした。時には私と同年代の2人の女性が部屋を訪ねてくれた。時々この2人とは2時間くらい同じ房にいることが許されたので、エレンやアンジーと一緒の房にいる事が許可されない私にとって、これは大きな慰めであった。エレンやアンジーとは房の外でしか話が出来なかったのである。
刑務所では多くの時間、裁判の準備をしたり、手紙や母国の新聞用に記事を書いたり、様々な本やデンマークから送ってもらった新聞を読んだり、黙想や思案したりして過ごした。
私はまたジムにも通ったが、良い気晴らしとなった。しかし普段よく運動をしていたので、突然1日1時間しか運動できなくなって欲求不満がたまった。しばらくして慣れたが、出所後調子を取り戻すためには、最初から運動をやり直さねばならなかった。美術のクラスはくつろげる時間であり、刑務所に入っていることをしばし忘れさせてくれた。
コートンベ_ル刑務所に服役した4ヶ月半の最終段階で、様々な文化を持つ人達と皆それぞれが抱えている様々な問題を討議した。例えばある人々にとって、店で売っている2ポンドのテレフォンカードを使って国際電話をかけたり、ヨーロッパへ出す航空書簡やスタンプを手に入れるのは簡単ではなかった。外国人の囚人で訪問者がない場合、取り決めによって誰かに訪ねてもらうことも出来たが、幸い私にはその必要なかった。私のところには本当に素晴らしい人達が毎日かわるがわる来てくれた。外部から普通の世間話や刺激がもたらされる事は気持ちを落ち着かせてくれるものである。また刑務所に物を持ってきてくれたり、私が医者の診察を拒否された時には刑務所に連絡を取ってくれたり、その他にも多くの支援をしてくれた。また気持ちが落ち込んでいる時には私の話を聞いてくれた。
今まで記した事柄は悪い印象ばかり与えるが、楽しい事もあった。ヘレン・ジョンと共に過ごした1週間は楽しく、勇気づけられるひとときであった。それは夏だったので、日の光を浴びながら外で何時間も話し込み、若い女性達にも楽しさを分かち与えた。そのほか毎日届けられる花や激励の手紙も私達には大きな慰めとなった。「広島の日」には花が届けられ、私達の獄舎は白い花で一杯になった。
週1回のクウェーカー教徒の集いは私達の気分を昂揚させてくれた。そして、私に心の平安を与え、私以上に悩んでいたかもしれない家族のことを思い起こさせた。家族とは絶えず連絡を取り合い、定期的に電話で話が出来たのは心の慰めとなった。
4ヶ月のコートン・ベール刑務所での生活の中で最も有意義で重要であったことは、エレンとアンジーから色々学べたことだった。二人の女性の経験やあらゆる面での生活の仕方および豊かな知識や愛情等は私のみならず、私達の獄舎にいる多くの女性達にとっても良い刺激となったと思う。
投獄されると、人間性の一部は抑圧を受けるものである。そこで刑務所にいるときは、何故自分が投獄されているのか、その目的を常に頭に入れて置く必要がある。自分を見失わないで、気分を高揚させておく必要があるのだ。気分が落ち込みそうになりそうな時には、いつも6月8日の「メイタイム」非武器化行動のことを思い浮かべた。私は今、「一般市民」の手による核廃絶を目指し、長い道のりの第1歩を踏み出したという意識を明確に抱いている。
ピーター・ランヨンが刑務所で考えたこと
短い睡眠を取ると思って刑務所に入ろう。非常に退屈であろうから、まずは鼾でもかいて慣れない時間を寝て過ごした方が良い。そして刑務所で睡眠も取れるし、刑務所に入っているからといって重要なことを逃すわけでもないことが判ってくると、思ったよりは悪くないなと考えるようになる。囚人は全て面倒を見てもらえ、子供のように世話をしてもらえる。グリーノックで1週間過ごした後では、看守達は本質的にうるさい学校教師のようなもので、もしも機嫌を損ねると厄介な存在になり得るが、基本的には我々囚人のために働いている人達だと思えるようになった。彼等の仕事は様々あるが、大事な事は囚人が自殺などしないように絶えず見張ることである。彼等が覗き戸をパタパタ開閉することにも直に慣れるであろう。
英国では刑務所に入ること自体が刑罰なのであって、何らかの罰を与える場所ではない。投獄されること以外に不快な思いをさせられることはない。もし刑務所の生活を少しでも快適に出来そうなことがあれば、何回でも繰り返し忍耐強く、要求を続けよう。望みはすぐ叶えられることはないであろうが、全く要求しなければ、何事も起こらないのである。何でも楽しめることが見つけられたら、楽しんでしまうべきである。私の場合は長時間暖かいシャワーを浴びる事が大きな気晴らしであった。
何にもまして私が密かに一番心配していた事は(アフィニティ・グループの人達にも言うことができないものであったが)、同室の囚人の目の前でトイレを使わねばならないことであった。房の戸がバタンと閉まった直後に、トイレを使いたくなった私は、「ああ!困ったな」と思ったが、終わってしまうと、心配していた程のものではなく、同房の人と打ち解けるきっかけを作ったように思われる(勿論それ以前も大して堅苦しい雰囲気ではなかったが)。
彼は高価なものを所持していた。彼は刑務所に入る時に、当局が大目に見てくれる程度のたばこを身体や衣服に隠して持ち込んでいたのだ。そのタバコの威力のおかげで、他の囚人達は(どう思っていたにせよ)我々に親切にしてくれた。
多くの刑務所では、入所して最初の1週間以内に色々の物を送ってもらう方が良いように思われる。その後は種々の規則があって、ってもらうのが難しくなるので、最初の週の利点を利用するのがよい。だが周到に用意したはずの物が入手できない場合も間々あることを理解しておくこと。元来そのような物が無くても生活できることになっているのだから。もしも緊急の裁判に関する書類などが入っている場合は、うるさく言いたてる必要があるので、必要に応じて主張すること。その他の物はどうせ後に手に入るのであるから、急を要する物以外は後のお楽しみにとって置こう。
1日か2日経つと、私は日々自分を管理する責任からほぼ解放されたように感じた。用心深くではあるが、私は気持ちをゆったりさせて、開放感を楽しんだ。通常かなり忙しく暮らしており、常に緊張感を持って過ごしていたし、今回刑務所に送還される事態となった核廃絶運動でも緊張した毎日を送っていたのである。監獄の中にいることはある意味では素晴らしい休暇のようであった(我々の支持者達は荷物を送りこんでくれる事で忙しく、休暇どころではなかったであろうが!)。このように刑務所に入ったりすることは今までにない経験で結構楽しむことが出来た。勿論最終的には、元の場所に戻って、方向と目標を調整する必要があるが、最初はこの貧しいが穏やかな環境は心地よいものであった。当局が私をここに投獄したのである。ならば汗水たらすのは彼等にさせよう。
私は8歳の頃から学校の寮生活を送ってきたので、長期の刑務所生活も難しい事ではないだろうと考えていた。寮生活で経験したような防御体制を取ることが出来る点では、予想が当たっていたが、大きな違いもまた存在した。寮生活では別離はやむを得ないものであり、私に課せられた事柄である反面、思う存分泣いたり、呪ったりすることが出来た。だが大人として自発的に監獄へ入ることは、私達のみならず、私達と刑務所の外で普通の生活を共に送りたいと当然願っている身内にも大きな重荷を与える。そしていくら注意深く前もって準備をしてもストレスと口論の種となる。このようなことを覚悟すべきである。これが一番厄介なことであり、心得ていた方が良い。
平和運動の結果として刑務所に入る場合は他の理由による場合と気持ちの上で大きな差があることを述べておきたい。今回は前に投獄された時のように、恥とか、不名誉とか、悪事を働いた惨めさなどを覚える必要がない事がうれしかった。また刑務所で物事が上手く捗らないときには、自分を元気付ける為のそれぞれのやり方_マントラを唱える、祈りを捧げる、冗談を言う、歌うなど_を考えておくと良いと思う。そのためにも、刑務所に入る前には慎重に準備を整え、色々な気晴らしの手段を準備すべきである。
戦争用の税金を拒否したために投獄されたヘンリー・デビッド・ソーローが獄中で友人のトーマス・ジェファーソンの訪問を受けたときの事を覚えているだろうか?エマーソンが「君はこんな所で何をしているのか?」と尋ねると、ソーローは、「君こそ牢獄の外で何をしているのだ?」と答えたというが、これは大変気のきいた答えだと思う。ソーローは田舎の自由と静けさをこよなく愛し、ニューイングランドの森にある湖の近くに自分で小屋を建て、1年ばかり独りで住んだこともある。そのソーローが刑務所の中に押し込められたことは、かなりの犠牲を払ったと言えないだろうか。我々にとっても投獄されるのは大きな犠牲であり、その苦痛に耐えるためにも互いに助け合わねばならない。
支援活動について一言云わせてもらうと、遅配が厄介な問題である。不慣れな刑務所の管理手続きや、刑務所支援者達を悩ませるような個々の複雑な要求をうまく処理しても、郵便制度自体に大きな欠陥があるのだ。刑務所と外界の連絡のほとんどは郵便に頼るしかないのに、である。その上、刑務所を出入りする郵便物に対し薬物検査が行われるために遅配する場合もあり、郵便物が紛失したり、大幅に遅れたりすることもある。支援者達は受刑者に対し、何時郵便物を出したのかを、別便で知らせたほうが良い。そうすれば、受刑者は品物が着いたかどうかチェックし、予定どおり到着しない場合は刑務所に問い合わせることが出来る。だが通常は予想以上に郵便は遅れがちである。そしてこのような遅配によって、外界から隔離された受刑者は怒りを覚え、働き過ぎの支援者達は後ろめたさを感じる様になる。このような状態は一触即発の危険性をはらんでいる。両者共この可能性に注意し、実際に郵便の遅配がおきた時には、感情を昂ぶらせることなくさらに互いを思いやろう。
入獄中に裁判での弁護に備える…アンジー・ゼルダー
私は今まで2度の入獄中にかなり細目にわたって弁護を準備した。1度目はブリティシュ・エアロスペース社のホーク・ジェット機の非武器化を達成した「希望の種子プラウシェア運動( Seeds of Hope Ploughshares’)」に参加したために、英国ライスリーに6ヶ月間投獄された時、2度目はゴイル湖でトライデント社関連の大型調査船「メイタイム号」の非武器化を行ったトライデント・プラウシェア運動に参加したためにコートン・ベールに5ヶ月間投獄された時である。
獄中で弁護の準備をする事は時にはフラストレーションのたまることもあったが、時間を建設的に使うという意味では総体的に楽しめるものであった。電話、ファックス、コピー、インターネット・アクセス等が比較的容易な外界に比べ、通常なら数時間または数日で手許に届く情報でも、獄中では他人に頼ったり、数週間遅れて到着することに慣れなくてはならなかった。もう1つの欲求不満の要因は監獄スタッフが監房の検査のために立ち入った結果、書類を全て乱雑に扱い、時には破損が生じる事である。万一刑務所内で書類を紛失された場合、外界の誰かがコピーをもっていてくれれば、最初から作り直す必要がないという理由から、自分の弁護用書類を頻繁に外界へ送った。その他自分が何を、何時、誰に頼んだかを詳しく記録し、その品が到着した日付も書きとめる習慣を身に付けた。この方法により「監視」側が郵便などを滞らせていないか確認できた。自分が様々な役所や裁判所に出したり受け取ったりする全ての手紙、及び自分が作成する苦情の写しは持っていたほうがよいであろう。看守がどんなに物を「失くして」しまうかには驚くばかりであり、そうすると自分が今までやってきた事がすっかり台無しになってしまう。刑務所の内も外同様、如何に官僚的であるかがお分かりであろう。コートン・ベールを出所する頃には法律関係の書類が2箱になり、それ以外にも自分の所持品があったので、それが気に入らない刑務所スタッフからはぶつぶつ文句を言われた。
両方の刑務所の場合も、全ての参照文献や引用された訴訟のコピーがあったおかげで、細目にわたる法的抗弁を準備し、コンピュータでプリントアウトする事ができた。ライスリーでは4ヶ月にも及ぶ刑務所内での猛烈なキャンペーンと外部からの援助の結果、やっと刑務所内にコンピュータとプリンターを持ち込む事ができた。それまでは、強く要求して個人ベースでコンピュータにアクセスできたのは男性だけで、古い慣習を打ち破るのは困難なことであった。何事によらず刑務所内では時間と忍耐が必要であり、あきらめずに苦情書を継続的に提出したことが最後には実を結んだのだ。この経験を生かし、また看守の協力もあってコートン・ベール刑務所では数週間で、日中ラップトップを使用する許可が下りた。このような前例が出来たので、英国内のどの刑務所にも同じ要求をするのはさほど難しくないはずだ。私の手書きの文が自分でも大変読みにくく、他人でも読める人が殆どいないので、抗弁の準備のためにコンピュータを使えることは大変有意義であった。このおかげで草案を他人に送り、アドバイスや支援を請う事が出来た上に、法廷で自分の意見を文書化したもののコピーを手渡せる事も出来た。またサポートチームやメディアチームの人々にもコピーを持っていてもらうなど役に立つ事が多かった。
いずれの場合も投獄された活動家のうち最低1人には弁護士が付いている(ホーク運動では4人のうち1人、ゴイル湖運動では3人のうち2人)、ことが大いに助けになった。法的手続きを順調に進行させ、将来の控訴に備えての基礎を作ることが出来る上に、弁護士が付かない被告達にも法律の専門知識と援助が与えられる。最初にコンセンサスを基本とするやり方に対しみんなの賛成が得られれば、自分で弁護する活動家と弁護士が付いている活動家が協力関係を結ぶことを私は勧める。弁護士の中にはこうしたチームを組んだやり方で仕事をするのを嫌がる人もいるが、私の場合は2回とも、その点で恵まれていた。弁護士は何度でも法的な訪問が認められるため、法律関連書類や参照文献や書類を刑務所に持ち込むには絶好のルートである。同じ刑務所内に投獄されている活動家が他に誰もいない状態で、法廷では自分で抗弁したいと思っている場合であっても、もし気が変わって弁護士を頼みたくなったら(裁判所に)出廷する直前までであれば、弁護士を頼む事が出来る。
行動を起こす前に_私は法廷で自分を弁護するために必要と思われる書類、参考書、手紙及び証拠の写し等、必要最小限のものを全て荷物の中に入れた。牢獄は狭くまた、当局は受刑者が頻繁に刑務所内で書類を作成する事を喜ばない風潮がある。前回初めて投獄された時の経験から多くのことを学んだので、コートン・ベール刑務所に入る時には事前によく準備を整えておいた。前回および今回の刑務所でも共に図書のサービスが良くなかった。法律関係の本は少数であるうえ、私がコートン・ベールに投獄されている間は1度も図書を利用させてもらえなかった。明らかに再拘留者は信用されておらず、本を貸してもらえないようだ。
そこで私は箱に弁護に必要なすべてのものを入れ、そのリストを作成して箱に貼り、リストのコピーを何部か作り、サポートグループに渡すことにした。そして投獄後最初にサポートグループから差し入れてもらうことになっている箱に本と衣類を入れ、その箱にもリストのコピーを1部入れた。サポートグループのメンバーの中から1人を特に選んで、責任を持ってこの箱を「法律関係の書類」として私の元に届けてくれる様に頼んだ。法律関係の書類を届けてもらう事は法的に認められており、自分の弁護のために必要な書類は無制限に受け取ることが出来る。私の場合も最初の荷物を入手する事は全く問題がなかった。サポーターは刑務所当局に電話をかけ、まず当局の立会いのもとで確認し、私が正式に刑務所にその引取りを要求した。1_2週間で荷は届き、仕事を始める事ができた。またその箱の中には前もってA4サイズの用紙(プリントアウト用)、未使用のノートブック、プラスティック製紙入れや、書類をファイルするための厚紙ファイルを入れておいた。狭い牢獄の中では、このように書類をファイルする道具を持つ事は大変役に立つ。
弁護士との合同相談_2つの核廃絶運動によって私と共に共同被告になったのは全員女性であり、同じ刑務所に投獄され、しかも多くが同じ獄舎であったので、合同で弁護相談を受けることは比較的容易であった。私達は全員が(弁護士を頼んでいる者もいない者も)、合同で弁護士に相談を受けるべきで、私達の利益にもなるし、裁判の時間も短縮できる(これによって私達の申し立ても重複がなくなるし、専門家の証言も共有できる)と主張した。リスリー刑務所では1日23時間独房に入れられていたので、この合同相談がなければ様々な角度から取り組んだ、効果的な抗弁を用意できなかったであろう。投獄された者にとっては出来る限り早い時期から行動を開始するのが望ましく、そうすれば私達の主張を微調整する時間もあるし、やむを得ない遅れにもゆとりをもって対処することができる。
外部の法的支援_コーントン・ベールにいる間、2,3人の人達に私の法律上の疑問点を調べたり、必要なコピーを取ってもらったりした。私は弁護士を頼んではいなかったが、弁護士以外の人から法律上の助言は受けたかったので、このような訪問を「法的な訪問」として認めてくれるように刑務所に申し込んだ。当局との間の妥協案として私は通常の訪問時間に、非公開の訪問を受けることが認められることになり、ノートを取ることも出来るようになった(ノートを取ることは通常の訪問の場合は認めらていないので、現在もこの不当な規則の撤廃を求めている)。そしてこの場合訪問者との間で取り交わしたい書類は全て安全か否かのチェック受けた後に比較的容易に手渡されることになった。つまり通常そのような書類は翌日には受け取る事ができた。外部へ電話を掛けるのは非常に難しかったので、このような訪問者の手を借りる事によって、証人の供述や専門家証人の出席などの調整をすることが出来た。一方刑務所内で手紙を書くことは問題なかった。
刑務所内で法的支援をしてくれた人達は、また4週間にわたる裁判の間にも私を助けてくれた。この時のサポーターがマッケンジー・フレンドの人達で、裁判中、ずっとノートをとってくれた。また専門家証人を選び、専門家証言を時間どおりに法廷に出せるよう手配したり、筆記道具など必要なものを用意したり、本当に素晴らしい働きをしてくれた。私は多くの人々の愛や支援やいたわり等の他、平和運動の強い団結力や威力をも感じた。恐らくこのような愛や力によって私達は2回とも無実を勝ち取れたのだと思う。
コートン・ベール刑務所での私の経験全般に関する詳細な批判的報告については、ウェブサイトを開くと、2種類の報告書及び私と刑務所長との間に交わされた手紙を見る事ができる。また長期間の刑を言い渡される可能性のある人とは、直接私の刑務所での体験を話したいと思うので、01263_512049に電話を頂きたい。
奴隷制度や戦争に反対する意見を持つ者は大勢いるが、彼等はそれを廃止するために何も行動を取らない。彼等はワシントンやフランクリンの子孫だと称しながら、両手をポケットの中に入れたまま座り込み、何をすればよいか解らないと言って何も実行しない。彼等は自由の問題を自由貿易の問題の次にまわし、メキシコからの最新情報と共に時価表を静かに読むばかりである。ところで今日の誠実な人間や愛国者の時価表はどうであろうか?彼等は躊躇し、後悔し、時には嘆願はするが真剣に効果的に実行しようとはしない。彼等は自分達が後悔しなくて済む様に自分以外の誰かがそれを取り除いてくれればいいと願いながらただ待っている_おお!まっとうな人間、手を通す事が出来ないほど堅固な背骨をもった人間がいないものであろうか?
人間を不正に牢獄に閉じ込めるような政府の下では正義の人がいるべき場所もまた牢獄である。自由で希望を失わない人達に対しマサチューセッツ州が与えることができる唯一ふさわしい場所は牢獄の中である。そして逃亡奴隷、宣誓釈放されたメキシコの囚人や己の民族への虐待を訴えるインディアンなどが、自由でくじけることのない人々と出会えるのもそのような牢獄の中_すなわち州政府に反対する者が入れられるこの隔離された、だが他よりはもっと自由で名誉ある場所、奴隷制度を持つ州では自由人が名誉を以ってとどまることが出来る唯一の場所_なのである。そのような監獄では自分達の影響力は失われ、その声はもはやマサチューセッツ州政府の耳を悩ます事もなくなってしまうのではないかと、もし考える者があれば、その者は如何に真実が誤謬より強いのかを知らず、或いは少しでも自由の身を経験したことがあれば一層雄弁にまた効果的に不正と戦う事が出来るものだということを理解していない。
「市民の不服従」、ヘンリー・ソロー、1849年より
法律用語集
スコットランド法に見られるラテン語の用語および格言
Actus non facit reum, nisi mens rea- 犯意または刑事過失がなければ、行為は罪とならない。同格言は現在では単にmens rea ともいわれる。
Actus reus- 犯罪における違法行為
An vindictam publicam- 公共の利益の維持・保護。法務総裁および検察官が特に関心を寄せる事柄である。
Amicus curiae-裁判所の友。弁護士を代理に立てていない被告の為または公共の利益の為に裁判所の要請或いは許可を得て、意見を述べる者。
Audi alteram partem-相手方当事者の意見を聞け。一方の意見のみならず相手方の意見を充分聞いた上で法廷が決定を下すべきであるとする自然法的正義の法則。
Bona fide- 善意で、誠実に。過失や錯誤は仕方がないが、詐欺的或いは不誠実な行いはいけない。
Bona fides- 善意。
Consuetudo pro lege servatur- 習慣は法としてみなされる。制定された法律以外のスコットランド法は最終的には慣習法である。
Corpus delicti- 犯罪を構成する事実。
De facto- 法的にはともかく実際に存在する。
De jure- 法に適った、適法な。
De nobo- 新たに、新規まき直しに。
De plano- 直ちに、略式で、形式ばらずに
De presenti- 現在、今。
De recenti- 最近
Ex post facto- 事後の、遡及的。
Ex proprio motu- 自発的に、自己の意思によって。当事者の要請に因るものではなく、裁判官自身の意志によって判決を下す事。
Flagrante delicto or flagrante crimine- 現行犯で。犯罪者は現行犯で、逮捕される。
Forum- 特定の目的のために司法権を施行するのにふさわしい裁判所、法廷。
Habile- 法的目的に適した、資格がある、或いは有能な。
In camera- 裁判官室で。元来は裁判官の私室で、非公開で審理するという意味。
In causa- 審理中
In limine- 最初に。法的論争や訴訟の最初に述べられる陳述。
Intra vires ― 権限内。行為をなす者の持つ権限内の行為のこと。Ultra vires 参照のこと。
Ipso facto ― 事実それ自体によって。
Ipso iure ― 法律の施行により。
Ius ― 法、権利、裁判。
Ius ad bellum ―戦争への正当な事由、戦争に訴えるための充分な事由。武力行使に関する法。
Ius in bello-戦争遂行中の正当行為、正義。 武力紛争中の法。
Ius cogens ―強行規範。 法的強制力を持つ結果を規定した法規或いは契約規約。無視することは許されない決定的規範。Ius depositivum 参照のこと。
Ius depositivum ― 当事者間の合意により規定の結果が修正される可能性のある法規或いは契約規約。
Ius gentium ― 諸民族の法、万民法。
Iusto tempore ― 時が来て、丁度良い時に。
Locus ― 場所。
Locus delicti ― 違法行為が行われた地。
Modus ― 方法。
Modus operandi ― 仕事のやり方。
Mutatis mutandis ― 細部に必要な変更を加えて。
Nemo praesumitur malus ― 何人も推定によって悪人とされることはない。この格言は無罪の推定の原則を表している。
Nobile officium - (裁判所の)正義を行う権限。厳格なコモン・ローの適用を修正する必要があったり、或いは制定法に欠陥ないし不備がある時に、(スコットランドの)刑事上級裁判所や民事上級裁判所がその厳格な制限の中で、その最大の正義の力を使って補正する権限を意味する。
Nomen iuris ― 法律用語。特定の専門的な意味を持つ単語または語句。
Non obstante ― にもかかわらず。
Ope et consillio ― 教唆・幇助、計画と実行によって。
Pro loco et tempore ― この時間と場所については。このように言って、検察官は刑事手続きをその時期にその場所で行う事を放棄し、時期を改めて再び起訴をする権利を確保することも出来る。
Qua ― その資格で。
Qui tacet consentire videtur ― 反対しない者は同意しているものとみなす。沈黙は承諾のしるし。
Quoad ― に関しては。
Reus ― 被告(人)。時には行為者、原告との比較でalterior とも呼ばれる。
Simul et semel ― 一度に同時に。
Sine die ― 無期限に。例えば延期された起訴手続きの再開時期を未定にする事。
Solo animo ― 単なる意図や計画。たとえ意志はあっても、何か明白な行動が伴わなければ、法は犯意を認める事はない。例えば盗みの場合も、単に盗みの意思だけで行為が伴わない場合は犯罪と認める事はできない。
Species facti ― なされた行為の特徴。検察側が主張する犯罪や民事上の権利侵害に伴う正確な状況。
Ultra vires ― 能力外、権限逸脱。Intra vires と反対の語。この言葉は特に委任立法の場合、或いは中央および地方政府、管財人、企業等の活動に関連して使用される。
Ut supra ― 上記の如く。
Versans in illicito ― 違法な職業に従事すること、或いは違法行為を行う事。
Vide infra ― 下記を参照のこと。
Vide supra ― 上記を参照のこと。
Videlicet ― すなわち。通常”viz”と省略される。
参考文献と謝辞
この章の作者は、ジェーン・タレンツ(Jane Tallents)、アンドリュ・グレイ(Andrew Gray)、 (アンジー・ゼルター)Angie Zelter、 イピイ(Ippy)の各氏であり、用語集の作者はブライアン・クウェール(Brian Quail)氏である。なお他の章の作者は各章で紹介されている。
挿絵はピーター・レニオン氏に依る。