カナダ議会外務貿易常設委員会は、2年前に続き、ダグラス・ローチ上院議員と、トマス・グレアム氏ら、中堅国家イニシアチブ(MPI)に、核問題に関してふたたび助言を受けた。
MPIは、カナダ政府と議会に「NATOとNMD−13のアクション・ステップ」と題した資料を提出し、
1.2000年のNPT再検討会議で、核保有国を含めた187カ国の加盟国が核廃絶に向けて、核分裂性物質の生産禁止交渉の再開、STARTプロセスの即時開始、包括的核実験禁止条約発効の追求、さらにABM条約の有効性の維持など、13の実践的ステップに合意した。それを実践に移さなければならない。
2.カナダ政府は、NATOの政策をNPTの核兵器の全面的廃絶に向けた明確な約束と矛盾しないものにするよう早急に働きかけるべきである、と述べた。
さらに、アメリカの本土ミサイル防衛構想(NMD)について、MPIは次のような助言を行った。
* 核兵器の拡散は、国際安全保障に対する、唯一最重要の脅威であり、国際間の協力なしには効果的に対処することができない。しかし、アメリカのNMDは、ならずもの国家のミサイル脅威に対して、一国主義的に対応しようとしており、NPT再検討会議で合意された核軍縮へ向けた13のステップに反している。
* アメリカのいう、ならずもの国家によるミサイルの脅威はなく、北アメリカへのミサイル発射で、もっとも可能性が高いのは、ロシアのミサイルによるものである。なぜなら、イラン、イラク、および北朝鮮は大陸間弾道ミサイルを保有していないからである。
* 仮にならずもの国家の脅威があるとしても、それに対して、一国主義的対応をするのではなく、集団的に協調して、それを防ぐ努力をすべきである。
* 北朝鮮、イラン、またはイラクによる核開発の危険性を縮小するためには、ロシア、中国、その他の国々と不断に協力し、それらの国々を説得することが必要だが、NMDは中国、ロシアとの関係を悪化させ、そのリスクを拡大する。アメリカがABM条約から脱退し、ミサイル脅威に独自で対応しようとすれば、そのすべての努力が重大な危機に瀕する。
* NMDは技術的に不可能性である。費用は天文学的数字にのぼる。
* NMD実現のためには、他国領土にレーダー基地を建設することになるが、これらの国々の国民は、それを許さないだろう。
* NMD構想は、事実上、宇宙の軍拡の第1歩である。それは攻撃と防衛の両面をもったシステムであり、国際間の緊張を激化させ、新たな軍拡競争を招くことになる。ABM条約を破棄したいというアメリカの願望は国際法と、すべての国際条約に対する侵害であり、第二次世界大戦終結後、世界を比較的安全に保ってきた軍縮体制全体を脅かす。
* すでに決まっている核軍縮のアジェンダを遂行の努力を怠ってはならない。カナダ政府をはじめ、NATO内部のすべての国々がNATO内部から、NATOの政策を、NPT再検討会議の合意や、国際法と矛盾しないものにする努力をすべきだ。
* 国際法を遵守しなければならない。国際司法裁判所(ICJ)はその勧告的意見で、私たちはすべて、「核兵器の使用、またはそれによる威嚇はすべて、国際法の原則に合致しなければならない」というICJの判断に従わねばならず、また、核兵器廃絶に向けた条約の締結に向けた交渉の義務があると述べている。
* NMDには失敗の確率がある。400個のミサイルのうち一つがニューヨーク市に命中したら、300万人が即死し、その後数ヶ月にわたって、数百万人以上が放射能障害に苦しみ、地球上で数百万人が苦しむことになる。このような方法を、安全保障のために選択することに正統性はない。
* 世界の将来は、カナダのような国が、友邦、あるいは同盟国として、アメリカを説得する力があるかどうかに、大きく依存している。