東京造形大学教授で,アフガニスタン国際戦犯民衆法廷やイラク国際戦犯民衆法廷などの運動をしておられる前田朗さんの提案を紹介します。

オリジナルは次にありますが,少し読みやすくしました.
自衛隊イラク派兵準備は私戦予備罪(刑法93条)にあたる
http://www1.jca.apc.org/aml/200312/37195.html
小泉刑事告発運動について(自衛隊派兵準備は私戦予備罪)
http://www1.jca.apc.org/aml/200312/37230.html

(以下転送)

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Subject: [aml 37195] イラク派兵準備は私戦予備罪にあたる
Date: Sat, 27 Dec 2003 13:10:48 +0900

前田 朗です。

12月27日

重複投稿失礼
転送歓迎

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自衛隊イラク派兵準備は私戦予備罪(刑法93条)にあたる

―小泉純一郎首相の犯罪を告発するアピール

小泉内閣は、圧倒的な国民世論の反対にもかかわらず、武装した自衛隊のイラク派兵を強行しようとしている。自衛隊イラク派兵は、平和主義と戦争放棄を定めた日本国憲法に反するだけではなく、派兵準備自体が私戦予備罪(刑法93条)にあたる犯罪である。

 刑法93条は、「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備または陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する」としている。

「外国」とは、国際法上の未承認国を含む国家・政府を意味する。米英軍によるイラク攻撃は、武力行使の正当化要件をおよそ満たさない違法な攻撃である。

「大量破壊兵器」を口実とした開戦論が破綻するや、「イラク民主化」を唱えたが、これはたんなる内政干渉のための武力行使であり、国連憲章に違反する侵略である。国連安保理事会決議を得ることに失敗した米英軍による独断的な違法行為である。米英は、違法な武力行使によってイラク政権を転覆し、その後も違法な占領を続けている。

「戦闘」とは、たんなる暴力の行使ではなく、武力による組織的攻撃や防御をさす。国家の合法的意思によらない「戦闘」は、国家機関によるものであっても「私戦」にあたる。組織としての自衛隊が私的に戦闘を行えば、私戦にあたる。

 内閣総理大臣や防衛庁長官がその職務に反して自衛隊に違法な戦闘を行う命令」を下せば、それは私戦の命令である。私戦の目的で自衛隊に出動命令を出すための予備または陰謀を行えば、私戦予備罪が成立する。

 そもそも日本国憲法第9条第1項は、戦争のみならず、「武力による威嚇又は武力の行使」を永久に放棄しているうえ、日本国憲法第9条第2項は「交戦権」を否認しているから、自衛隊を戦闘地域であるイラクに派遣することが許されないことは言うまでもない。

 しかも、イラクは米英軍による違法な占領が継続している。自衛隊をイラクに派兵することは違法な占領への加担であり、日本国憲法の平和主義と平和的生存権に照らして許されない。

 日本国憲法に違反して自衛隊を派兵し、国連憲章に違反する占領に加担することは、現代立憲主義国家にとっていかなる意味でも許容できない事態である。

 自衛隊イラク派兵は、日本国憲法に照らしても、国連憲章に照らしても、およそ正当化理由のない行為であり、それは「私戦」と呼ぶ以外にない。憲法も自衛隊法も無視した「イラク特措法」による私戦の遂行は許されない。

従って、小泉首相は、憲法によって授権された職務権限の範囲を超えて、自衛隊イラク派兵により違法な占領に加担する準備および陰謀を行い、私戦予備罪を犯したものである。

反戦平和運動は自衛隊イラク派兵に反対するだけではなく、小泉首相の憲法破壊と犯罪を厳しく告発するべきである。

              2003年12月27日

  前田 朗

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Subject: [aml 37230] 小泉刑事告発運動について(自衛隊派兵準備は私戦予備罪)
Date: Mon, 29 Dec 2003 18:40:03 +0900
From: "MAEDA,Akira"

前田 朗です。

12月29日

重複投稿失礼
転送歓迎

先に「自衛隊イラク派兵準備は私戦予備罪にあたる――小泉純一郎首相の犯罪を告発するアピール」を公表しました。このアピールに賛同して頂ける方がいらしたら、小泉首相告発運動を起こしたいと思います。ご意見をお寄せいただけると幸いです。

1.趣旨

 自衛隊イラク派兵はイラク特措法にもとづいて閣議決定により進められていますが、その間、驚くべきことに憲法論議がまったくといってよいほど行われていません。日本国憲法は戦力不保持・戦争放棄・交戦権否認を規定しているにもかかわらず、政府は憲法無視の違憲行為を積み重ねてきました。そのうえで、いまや武装した自衛隊を派遣して、違法なイラク占領に加担する勢いです。これほどの憲法破壊が行われているのに、政治やマスコミにおいては、憲法論は無視されたままです。それどころか、小泉首相は、憲法前文の趣旨をねじまげた引用を行う有り様です。

 反戦平和運動は、イラク特措法に反対し、イラク派兵に反対して頑張ってきましたが、残念ながら議論を巻き起こすことに成功していません。政治もマスコミも、真の問題点には目を塞ぎ、自衛隊派兵を既定事実としています。こうした状況を変えるために、私たちは、できることは何でもやる必要があります。かつての「湾岸戦争」に際しての戦費90億ドル調達や掃海艇派遣に対しては裁判所に違憲訴訟を提起しました。最近の「アフガン戦争」でのインド洋自衛艦派遣に対しても違憲訴訟が闘われました。しかし、裁判所における違憲訴訟はことごとく却下されています。違憲訴訟を舞台とした反戦平和運動の意義はいまもなお失われていないと思いますが、「イラク戦争」に関しても裁判では同じ結果しかえられないことも考えざるをえません。

 いずれにせよ、絶対平和主義と平和的生存権を国際公約としてきた日本社会の構成員である私たちの反戦平和運動は、いま自衛隊を止めるために、やれることは何でもやらなくてはなりません。デモもパレードも、新聞への投書も政治家への要請行動も、自衛隊員への働きかけも、違憲訴訟も、各地の仲間が闘っています。そうした運動に連なる一つとして、小泉首相告発運動を考えました。反戦平和運動の確信につなげ、憲法論議を深めるために、議論の場をつくる必要があります。

 イギリスではLAAW(戦争反対法律アクション)が、「ブレア首相を国際刑事裁判所で裁こう」と声をあげて、まずイギリス国内の検察に対して「ブレア告発運動」を展開しています。イギリスには国際刑事裁判所法があり、まず国内裁判所で裁くことが要件とされ、それができなかったときに始めて国際刑事裁判所に持ち込む可能性が生まれるからです。アメリカと日本は国際刑事裁判所規程を批准していませんので、同じ手段を採用することができません。

 そこで、日本に関しては、小泉首相への「私戦予備罪」の適用を考えたものです。

2.告発運動――第1段階

1)「小泉首相が犯罪を犯した」と考える人は、刑事訴訟法239条に基づいて告発することができます。

* 刑事訴訟法239条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。

*刑事訴訟法241条 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察職員にこれをしなければならない。検察官又は司法警察職員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

2)「小泉首相が犯罪を犯した」と考える人は、いつでも、どこの地検や警察署でも告発できますが、「告発運動」として展開するには、一定の日時に各地で一斉告発を行うことが望ましいと思います。各地の地検に一斉に告発しませんか。

−−1月上旬に、時期を相談のうえ、一斉行動したいと思います。

3)告発は口頭又は書面によって行うことができますから、口頭でも構いませんが、やはり書面による告発がいいかと思います。それも、憲法論をきちんと展開した文書にする必要があります。先のアピール「自衛隊イラク派兵準備は私戦予備罪にあたる」をさらにブラッシュアップして、憲法論を展開した告発状にできるといいのですが。

4)現実には検察官は「不起訴処分」とするでしょう。行政職にある日本の検察官は、庶民の犯罪については条文を拡大解釈して無理矢理に罪をきせようとしますが、権力者の犯罪を追及するのは稀です。まして、最大の政治問題について、日本の検察官が法律家として独立した判断を行うことはほとんど期待できません。(検察官は、不起訴処分どころか、告発状を受理しないなどと無法なことを言い出すかもしれません。)

* 刑事訴訟法260条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。

* 刑事訴訟法261条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。

3 検察審査会請求――第2段階

1) 検察官が公訴提起をしない処分を行った場合に、不服のある告発人は、察審査会法2条に基づいて検察審査会に申立てを行うことができます。検察審査会は、裁判官や検察官のような公務員ではなく、一般市民の中から6ヵ月の任期で選出されています。検察審査員は11人です。

2) 申立ては検察審査会法30条に規定されています。

* 検察審査会法30条 第2条第2項に掲げる者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官の属する検察庁の所在地を管轄する検察審査会にその処分の当否の審査の申立てをすることができる。

* 検察審査会法31条 審査の申立ては、書面により、且つ申立ての理由を明示しなければならない。

 告発運動の一番の仕事は、この申立て書面をつくることです。日本国憲法の理念と精神をしっかり踏まえ、戦後史総体を俯瞰し、政府の憲法無視を徹底的に追及する書面づくりです。

3) 政府もマスコミも、裁判官も検察官も、自衛隊イラク派兵について、まともな対応をしませんから、一般市民から選出されている検察審査会に判断を求める運動です。もっとも、検察審査会がどのような結論を出すかはわかりません。

 検察審査会の事務は検察庁が担当しますし、検察官が検察審査会に協力しますから、そう多くを期待できるというわけではありません。検察官の不起訴処分に対して「起訴相当」という議決をするには、11人のうち8人以上の多数による必要があります(検察審査会法27条)。しかし、検察審査会への申立て文書をしっかりした内容あるものにすることで、反戦平和運動の明確な意思をきちんと示し、同じ市民に判断を求めることは重要です。また、申立て人は検察審査会の審議を見ることはできませんが、検察審査会法37条には、検察審査会が申立て人を呼び出し、尋問することができるとありますから、この条文の適用を求めていくこともできます。

4) 検察審査会が「起訴相当」と判断すればビッグ・ニュースです。とはいえ、検察審査会が「起訴相当」と判断しても、検察官が再度「不起訴」としてしまえば、それで終わりです。その意味では、この運動は「小泉起訴」を獲得することはほとんど困難です。この運動の趣旨は、小泉首相を犯罪者と名指すことで、反戦平和運動の確信につなげるとともに、憲法論議を迫っていくことにあります。

5) 検察審査会が「不起訴相当」と判断すれば、日本社会の平和意識がその程度のものだったということになります。しかし、裁判所に提訴してもまともな結論は期待できないのですから、同じことです。失敗を恐れる必要はありません。行政府へのアクセス、裁判所への提訴とともに、検察審査会へのアクセスを一つの手がかりとして、憲法論議を起こし、憲法9条の理念と精神をしっかり確認していく運動を実現できれば成果があったといえます。