Date : Fri, 14 May 2004 22:31:14 +0900
From : "田中煕巳"
To : "HAP" <hap@list.jca.apc.org>,"abolition-japan" <abolition-japan@list.jca.apc.org>
Subject : [abolition-japan 2825] 石破防衛庁長官発言に抗議する声明

日本被団協の田中です。
石破防衛庁長官の<武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会>での答弁は恐るべきものです。商業紙でもほとんど報道されていません。
日本原水爆被害者団体協議会の声明を紹介します。添付ファイルも利用ください。転送歓迎します。


声 明

石破防衛庁長官のミサイル防衛発言にきびしく抗議する

防衛庁長官石破茂氏は、去る4月22日、衆議院<武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会>において、大出彰委員の質問に対する答弁で、まず、第一に米国の核抑止力によって日本が守られるという趣旨の発言につづけて、つぎのように述べた。

 石破長官答弁(議事録=衆院ホームページ=から抜粋)

 「例えば広島で原子爆弾が落ちた、長崎で原子爆弾が落ちた、その後、米軍がやってまいりまして、詳細な調査をしております。私も、全文すべて読んだわけではございませんが、あの広島においても、あの長崎においても、爆心地の近くでありながら落命をされずに生き残った方というのがたくさんおられる。では、どういう状況であれば核攻撃を万々が一受けても被害が局限できるかということは、私ども、同時に考えていかねばならないことでしょう。」

 「したがって、今全世界が努力をしている。わが国としてもBMDを持つ、そして核抑止力というものがきちんとワークするようにする。万々が一、それでも来た場合にはどうやって局限をするかということも考えなければならない。それによって、本当に多くの人命というものを救うことができるし、・・・国民保護法制とは、まさしくそれを眼目とするものだとおもっています。」

広島・長崎の原爆地獄を生身で体験し、59年たったいまも「こころ」と「からだ」に深い傷を負って苦しんでいるわれわれ被爆者は、防衛庁長官のこの一連の発言をけっして見逃すことはできない。

「原爆が落ち」ても、「爆心地の近くでありながら・・・生き残った方がたくさん」・・・ここには、あの劫火の中で助け出されるすべもなく生きながら焼かれた無数の死者たちへの思いはまったく見られない。爆心地付近にいた人の中に幸いに生き残った人もいたにはちがいない。しかし、この人たちも「こころ」と「からだ」に深い傷を負っている。しかも、圧倒的な人々が焼き殺されたのだ。われわれは死者たちに代わってこの暴言を糾弾する。原爆は、アメリカが落としたのであり、「落ち」たのではない。人々は人間の尊厳を奪われ、この上ない無残な姿で殺された。このことにまったくふれず、生き残った人々がたくさんいたとすることは、悪魔の道具、絶滅兵器としての核兵器の本質を覆い隠し、核兵器が「使える」兵器であるかのような幻想を与えるきわめて危険な思想であって、「ふたたび被爆者をつくるな」と、ひたすら核兵器の緊急廃絶を訴えつづけてきたわれわれ被爆者にとって2重、3重の意味で許すことのできない暴論である。

石破長官はまた、ミサイル防衛システムを整備することで、「多くの人命」を救うことができるとし、これが「国民保護法制」の「眼目」であるとのべているが、これまた、われわれの絶対に容認できない思想である。ミサイル防衛システムとは、つきつめれば宇宙核戦争体制に他ならない。これが、被爆国日本の政府の一員の言葉であるとは、わが耳を疑いたくなる。このような人物が防衛庁長官の地位にあることそれ自体、由々しい問題であり、任命権者小泉首相の責任はきわめて重大である。

核戦争に生き残りなどあるはずもなく、核兵器によって国民を保護するということは妄想にすぎない。核戦争の危険から国民を守る道はただ一つ、核兵器のない世界をつくることである。われわれは、石破長官のこの発言にきびしく抗議するとともに、日本政府が「核による防衛」という危険な発想を放棄し、いまや世界を覆いつくそうとする核兵器廃絶の世界世論の先頭に立つことを要求する。

2004年5月13日

日本原水爆被害者団体協議会