自衛隊派遣反対の次のような意見表明を求める提案を,先日,所属の理工学部教授会に出しました.サポートする意見が一人から出されたものの,本格的な審議には入らずにペンディングとなりました.非常に短時間の説明の中では,同じ国家公務員である自衛隊員の生命の危険が非常に高いのに,知らない顔でいいのか,というようなことを言いました.
xx教授会
イラクへの自衛隊派遣は,隊員の生命の危険はもちろん,武器を携行する以上,イラク人の殺傷につながる恐れがある.さらに,このような形での日本の関与は,復興とは逆にイラクの情勢をさらに複雑にすることが懸念される.
憲法を擁護する立場から,また科学研究と教育に携わる者の平和に貢献する責任にもとづいて,政府に次のことを要請する.
1.自衛隊のイラク派遣を中止すること.
2.イラク復興支援は,十分な安全確保を前提に,文民により行うこと.
この文書の下の方の名簿をご覧になればお分かりのように,教授会メンバーには,助手数名を除く23名もの「有志声明」賛同者があるので,十分に下地はあったのですが,発言が一人だったのは残念でした.
イラク問題関連での教授会への提案は,昨年2月18日の投稿 [abolition-japan 1733] でお知らせした件の後,ほぼ一年ぶりになります.このような声明を採択してもらうことはなかなか難しいとは思いますが,シニシズムに陥ることなく,同僚を信頼し,気長く続けることが大事だと思います.この種の活動というものは,百回に一回,あるいは千回に一回で御の字という性質のものでしょう.言い換えると,このような提案が数百の教授会でなされれば,一つぐらいうまく行くチャンスもあろうというものです.そのあとは「非線形効果」が期待できます.否決でも出席者の心には何かが残るでしょう.要するに行動・アピールの“abundance”こそが大事だと思います.
大学教員の方にお願いしたいのですが,おっくうがらずに皆さんもそれぞれの教授会でやっていただけませんか.根拠としては,これも[abolition-japan 1733] で紹介しましたが,次の公的文書が役立つと思います.
根拠1
ユネスコ高等教育世界宣言(98年)第二条
「高等教育機関」は
(b)項
「ある種の学術的権威を行使することによって、倫理的、文化的および社会的問題について完全に独立に、そしてその責任を十分に自覚して発言する機会を与えられ」るべきである.
(d)項
「UNESCO憲章にうたわれているように、平和、正義、自由、平等および連帯を含む普遍的に受け入れられている価値を擁護し積極的に普及するために、知的能力およびその道徳的名声を行使」すべきである.
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/AGENDA21.htm
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/UniversityIssues/AGENDA21.htm
根拠2
日本学術会議「戦争のための科学に従わない声明」,1950年
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/scjd1950.html
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/UniversityIssues/scjd1950.html
追記1:提案した時の教授会の雰囲気から,出席者の受け止め方や感情について,次のようなことを感じたり,推測したりします. これまでの大学や教授会のほとんど唯一の行動指針は,「文部科学省に睨まれて不都合なことが起きるのではないか」という虞,恐怖心をベースにしたものでした.そしてそれは今なお根強い習い性となっているようです.ですから,そんな声明を決議できるわけがないだろう,というのが大方の受け止め方かも知れません.しかし国立大学の「独立行政法人化」という,文部科学省による大学支配の法制化,さらには毎年の「交付金」削減提案という事態を招いた原因の一つに,このような大学側の態度があるのではないでしょうか.いま,フランクリン・D・ルーズベルトの「恐れるべきは恐れそのもの」という言葉*について考える必要があると思います. * http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/UniversityIssues/d0121.html#Anchor561380 追記2:小泉純一郎首相を私戦予備罪(刑法93条)で告発しようという提案があります. |
|