Date: Tue, 23 Sep 2003 13:19:48 +0900
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Subject: [abolition-japan 2313] 左派・民主派の言論の重大な盲点佐賀大学の豊島です.
阿部晋三氏の人気に代表されるように,拉致問題を含む朝鮮(北朝鮮のこと)に関することがらは世論右傾化,排外主義増大の最も重要なテコになっています.これに冷水を浴びせることは世論の右傾化,排外主義化を防ぐための今日の重要な---おそらく最重要な---課題です.ところが,民主派ないし左翼勢力はむしろ結果的にこれを助長するような態度に始終しているとしか思えません.つまりこういうことです.左派の論客やメディアは,朝鮮の独裁体制や人権状況の批判をほとんどしていません.たとえば「週刊金曜日」にこの種の記事が載ることはほとんど皆無です.また,拉致被害者や家族を日本に連れ戻す運動も,あるのかも知れませんが全く目立ちません.このことは,右派によるこの分野での言論と運動にわざわざ「専売権」と希少価値とを与えており,その値段を不当につり上げています.このような左派の態度は右派の利益に貢献する以外の何ものでもないと思います.つまり,左派は朝鮮の独裁体制や人権抑圧にはあまり関心がないと思われてしまっています.そのため,朝鮮の状況や拉致事件を「ひどい」と思った国民は---もちろん左派も含めてほとんどの人がそうでしょうが---「救う会」などの言説に関心を持ち,その結果それに取り込まれてしまうのです.
したがって民主派・左派の緊急の課題は,朝鮮の人権状況批判と,拉致被害者の人権擁護において,言論を多量に供給して,その種の言説の「価格を大幅に下げる」ことです.
このような分野での左派の言論自重の背景には,「金正日批判イクオール排外主義」という,意識下の「思い込み」があるのではないでしょうか.理屈ではだれもそんなことは否定するでしょうが,いわば「心情」部分にそれがあるのではないか,ということです.これはさっぱりと否定しなければなりません.人権は普遍的なものです.抑圧者がだれであっても同じです.ブッシュ批判をしたからと言ってもだれも排外主義とは思いません.
このような朝鮮の権力と人権状況の批判に対して,またはその必要性の主張に対して,「植民地支配をした国の人間にそんなことを言う資格があるのか」という反論をされたという話を聞きました.しかしこれは全く逆です.そのような過去の責任を感じればこそ,現在の朝鮮の人権状況についてより関心を持ち,発言や行動をすることが求められるのです.
拉致被害者や家族を連れ戻す運動についても言及しましたが,たしかに運動となると片手間では出来ません.そこまで手が回らないということはあります.私自身もそうです.見せかけだけの「運動」なら,やらない方がましです.でも,朝鮮の人権状況を批判することは,これは言論活動ですからだれでも十分やれるのです.
豊島耕一
(佐賀大学教授,国立大学独法化阻止全国ネットワーク事務局長,
ゴイル湖の平和運動家を支援する会世話人)
http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html
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