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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学協会への53国立大学197名共同意見書
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以下を、国立大学協会に送付し、国会議員と 文部科学省記者室等報道関係者
にも送付しました。なお、連署されるかたがおられれば、来週に再度国立大学
協会に送付する予定ですので、お知らせください。

辻下 徹
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
tel/fax 011-706-3823(univ), tel: 080-5715-3963
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                          平成15年5月14日

国立大学協会会長
長尾 真 殿

 国立大学協会会則28条(*1)に従い、わたくしたち、53国立大学の教
員197名は、国立大学協会に対する以下の意見書を提出します。迅速な対応
をよろしくお願い申しあげます。

連絡先:辻下 徹
北海道大学大学院理学研究科
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
tel/fax 011-706-3823,080-5715-3963
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意 見 書


国立大学法人法案の国会審議が開始されて1月が経過したが、国立大学協会は、
総会を開催し日本社会に向けて法案について意見表明することを回避しつづけ
ている。国立大学全体を代表する役割を実質的に果たす存在としての責務を放
棄したまま、5月7日に石副会長は、国立大学法人法の運用において政府等に
求めるべき夥しい配慮事項のリストを全国立大学に送付し、その検討を要請し
た(*2)。

締め切りの5月15日までに全国立大学からこれを容認・支持する回答が集
れば、全国立大学が法案を容認していることが間接的に確認されたと解釈され、
5月16日の文部科学委員会における強行採決を後押しするものとなりかねな
い。しかし、問題はそれだけではない。その要望項目リストは、国立大学法人
法案の欠陥のリストであると同時に、この法案により来年4月に法人化された
場合に国立大学が強いられる違法行為(*3)のリストにもなっているのであ
る。

すなわち、中期目標・中期計画における大学の自主性・自律性の尊重に不安
があること、国立大学法人評価委員会の性格が法案では明確になっていないこ
と、評価を受けるために大学に過度な負担がかかること、運営費交付金の算定
基準が明確でないこと、高等教育への公財政支出の充実に関し何も保障がない
こと、労働関係法規・医療機関関係法規等の適用に伴う各種届出に必要な規約
整備等の準備が間に合わず法人化後しばらく違法状態が避けがたいこと、労働
衛生法適用で必要となる環境整備のために不可欠な財政措置が検討されていな
いこと、医療過誤や医療事故による賠償責任システムなどが未整備であること、
等々を、そのリストは明らかにしているのである。

このような数々の根源的問題が国立大学法人法案にあることを当事者として
認識していながら、国会と日本社会に警告する義務を国立大学協会が果すこと
を阻む一方で、法人化後の違法状態を看過するよう政府に要請する準備を行う
協会運営は、国立大学協会に、政府との癒着・国会軽視・法の無視等の由々し
い過ちを犯させるものであり、国立大学と国立大学教職員全体の社会的信用を
著しく傷付けるものである。

それだけでなく、国立大学協会の現運営者は、これまでも、法人化推進の強
引な運営により、国立大学社会を混乱させてきた。2001年6月の国立大学
協会総会後の記者会見では総会で合意されていない「法人化容認」を長尾会長
が記者に伝えたため、会長自身が文書で発言を訂正するまでの一ヶ月間、国立
大学全体で混乱が続いた。また、2002年4月の臨時総会では、調査検討会
議の最終報告について議論が行われている最中に強行採決をおこない法人化を
「容認」した。また、この2月中旬には、法案概要について種々の問題点が各
国立大学から指摘されているときに、石副会長が自民党のヒアリングにおいて
国立大学協会の意見が法案了承でまとまったと発言したことが自民党の機関誌
で報じられている。以上は、国立大学協会の現運営者が、個人的信念を協会の
意見としてしばしば表明してきたことを示すと言っても過言ではない。

以上のような協会運営は、国立大学協会が現実に担っている重い公的責務を
ないがしろにするものである。よって、わたくしたち、53国立大学の教員1
97名は、運営責任者である長尾会長、松尾副会長および石副会長に、職を辞
することを求めると同時に、国立大学協会に対し、次のことを求める。


1)臨時総会をただちに開催し、国立大学法人法案の持つ問題点を
明らかにすること。

2)来年4月からの国立大学法人への移行は違法行為なしには実現
できないことを明らかにすること。

3)法案とスケジュール撤回を文部科学省に直言すべきこと。

4)日本社会と国会に対し、当事者として証言すること。

以上

(名簿部分は省略)

 連絡先:辻下 徹
 北海道大学大学院理学研究科
 〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
 tel/fax 011-706-3823, 080-5715-3963
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添付資料
(*1)国立大学協会会則第28条:

国立大学の教員は、協会の事業に関して協会に意見を述べることができる。

2 前項の意見は、文書で提出するものとする。

3 意見が協会に提出されたときは、会長は、これを関係のある事項を担当す
る委員会に回付するものとする。

4 前項の規定により、意見の回付を受けた委員会は、必要があると認めたと
きは、口頭によってその教員の意見を聴取することができる。
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(*2)

平成15年5月7日

  各 会 員 校 代 表 者  殿



                   国立大学協会副会長

                   国立大学法人化特別委員会委員長

                          石   弘  光


国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について(依頼)

 既にご報告のとおり、本特別委員会としては今後、法人化後における制度運
用等に関する政府等への要請事項を盛り込んだ国立大学法人化に関する国大協
の総括的な見解案をとりまとめ、6月の総会へ提案する方向で作業を進めつつ
あります。

 その見解に盛り込む要請事項等については、各会員校のご意向を反映したも
のとなるよう、各会員校のご意見を伺うことになりました。

 つきましては、時間的な関係もあり、ご意見を検討いただく際のたたき台と
して、別添の(検討案)を用意しました。この検討案に加除修正する形でご意
見をお寄せいただきたく、よろしくお願いいたします。

 なお、理事会までの作業時間の関係もあり誠に恐縮ですが、ご意見について
は、5月15日(木)午後5時必着で,Eメールにより国大協事務局までご回
報ください。また、加除修正部分については(検討案)と明確に判別できるよ
う、文字色等についてご工夫をお願いいたします。


国立大学法人制度運用等に関する要請事項等(検討案)


I. 明確な内容の政省令等の制定実現

(1)政省令等の確定にあたっては、国立大学法人法と最終報告(調査検討会
議「新しい「国立大学法人」像について」)の趣旨に則り、国立大学における
教育研究の特性に配慮し、国立大学法人の自主性・自律性を十分に尊重した、
明確な規定とすること。

(2)国立大学法人法の施行に必要な政省令等の詳細制度設計については、早
めに国大協と意見交換をすること。

(3)とりわけ、国立大学法人評価委員会に関する規定については、上記(i)・
(ii)の点について十分に配慮すること。


II 法人への移行過程に関する事項

1.各種法令の適用に関する運用上の協力と配慮

 国の組織から国立大学法人へ移行することに伴い、労働関係法規、医療機関
に関する法規をはじめとする各般の法令が新たに適用されることとなるが、関
係行政庁への各種届出義務に関する規定及びこれに関連する罰則規定の適用を
はじめとする諸法令の適用に関しては、当面は、各大学が法人化へ移行する経
過的期間であることに鑑み、その準備が整うまでの一定期間、弾力的な運用が
図られるよう、例えば以下のような点で、関係行政庁の十分な協力と配慮が必
要であること。

 ・ 労働基準法に基づく関係行政庁への各種届出義務に関する運用上の配慮

 ・ 労働安全衛生法の適用に関する運用上の配慮

 ・ 法人化に伴う関係行政庁への附属病院の開設承認再申請に関する運用上
の配慮

2 事務系職員の適切な人事交流システム構築への協力

 ・ 法人の人事権のもとで、事務系職員の人事交流による人材活用と職場の
活性化をはかるための適切な人事交流システムの構築や国の機関との人事交流・
異動の円滑な実施への協力等

3 法人への移行に伴う新たな必要経費の確保

 ・ 労働安全衛生に対する計画的な対応への必要経費、財務会計システム等
の構築のための経費、などの確保

・ 出資財産(土地・建物等)の確定・整理・評価・登記に伴う諸経費の確保


III. 法人移行後の制度運用に関する事項


1 高等教育への公財政支出の充実

 ・ 中教審で検討中の高等教育のグランドデザインに基づく公財政支出の拡
大と充実

 ・基盤的研究・基礎科学的分野への基盤経費の確保

2 法人の財政的な自律性を高める観点からの適切な運用

 ・ 剰余金の処理における法人の経営努力の幅広い認定

 ・ 中期計画終了時の積立金の処分における法人の立場の最大限の尊重

 ・ 効率化係数等による運営費交付金の一律減額措置の排除

 ・ 運営費交付金の算定基準の明確化

 ・ 国立大学の存在意義を踏まえた適切な学生納付金の標準額の設定等 

 ・ 土地処分収入の一定額の当該法人への留保

 ・ 収益を伴う事業実施に関する法人の判断の尊重

 ・ 寄附金、受託研究経費等の運営費交付金の算定からの除外


3 法人の実状に応じた確実な財政措置

 ・ 労災保険、雇用保険、各種損害保険等の保険料、各種手数料、監査に要
する経費、事務系職員の採用試験実施経費など、法人化に伴う必要経費の確保
等 

 ・ 施設の維持・保全に要する経費の運営費交付金への反映

 ・ 附属病院の施設整備に充てる資金の国立大学財務・経営センターからの
円滑な借り入れの確保 

 ・ 寄附金税制を含む現行の税制面での取り扱いの継続


4 国による各種損害の補填システムの整備

 ・ 自然災害及び火災等による被災施設等の復旧補填システムの確立(施設
災害補助金等)

 ・ 医療過誤や医療事故による賠償責任システムの確立(賠償金等)

 ・ 教育研究中の事故等による賠償責任システムの確立(賠償金等)


5 文部科学省の国立大学法人行政体制の整備等

 ・ 法人化された国立大学に対する大学の自由度を尊重した文部科学省の新
しい行政体制等の整備

 ・ 中期目標・計画を前提とした事後評価を尊重する具体的な事務処理体制
の整備

 ・ 概算要求作業の簡素化等新しい関係における国立大学の事務負担の軽減


6 中期目標・中期計画における大学の自主性・自律性の尊重

 ・ 文部科学大臣が中期目標を定めるに当たって、大学の意見を最大限配慮
すること。

 ・ 文部科学大臣が中期計画を認可するに当たって、大学の自主性・自律性
を最大限尊重すること。なお、中期計画について、大学の教育研究の特性を踏
まえ数値目標など詳細な内容指定を排除すること。

 ・ 年度計画の取り扱いについて、大学の教育研究の特性に十分配慮すること。

 ・ 計画期間中における計画変更を容易にする運用


7 国立大学法人評価委員会等による評価とその評価結果の活用方法

 ・ 国立大学における教育研究を伸張する適切な評価の実施

 ・ 大学の教育研究の特性を踏まえ数値目標などによる評価を排除

 ・ 大学に過度な負担をかけない評価方法の実施

 ・ 評価結果に対する大学の意見申し立て等の制度化

 ・ 評価結果の資源配分活用への慎重な配慮

 ・ 年度ごとの評価結果を資源配分に活用することを排除



8 国立大学の特性を踏まえた国立大学行政の確立

 ・ 教育研究の特性に配慮した適切な法律等の運用

 ・ 新連合組織(新国大協)と文部科学省との定期的な意見交換システムの構築

 ・ 監事の選任における透明性の確保


9 その他の要望

 ・ 法人化後における会計検査院との関係の明確化(計算証明、実地検査等)
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(*3)

意 見 書
2003年5月13日

         東京都新宿区四谷1−2伊藤ビル
           東京法律事務所
          弁護士 井  上  幸  夫

 国立大学法人と労働基準法,労働安全衛生法の適用等に関する問題について,
独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局から意見を求められたので,次の
とおり意見を述べる。

1 2004年4月から国立大学を国立大学法人化する法案が,現在,国会で審議
されているが,独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局によれば,国立大
学協会は,政府への要請事項の一つとして,国立大学法人へ移行される2004年
4月以降,その準備が整うまでの一定期間,「労働基準法に基づく各種届出義
務に関する運用上の配慮」及び「労働安全衛生法の適用に関する運用上の配慮」
を政府に求めることを検討しているとのことである。

2 労働基準法及び労働安全衛生法は,日本国憲法27条2項(「賃金,就業
時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。」)に基
づき制定された法律であり,その違反には使用者に対する刑事罰をもって処す
る最低の労働条件の基準を定め,法違反の罪について労働基準監督官が司法警
察官の職務を行うこととされる法律である。

 このように,法違反には刑事罰をもって処する刑罰法規である法律について,
国立大学法人へ移行された時点以降の「運用上の配慮」を政府に求めるという
ことは,実質上,刑罰法規違反を黙認するよう政府に求めるものと解さざるを
得ない。

しかし,このような刑罰法規違反の黙認を政府に求めることは一般に考えら
れないことであり,政府としてもこのような刑罰法規違反の黙認を認めること
は考えられない。

3 したがって,現段階の国立大学における準備の都合上,国立大学法人化時
点では,例えば,就業規則の作成・届出,時間外労働をさせる場合の36協定
の締結・届出などの労働基準法に基づく各種届出や労働安全衛生法による要件
を充たした設備等の履行など,労働基準法及び労働安全衛生法を遵守できない
状況にあるというのであれば,国立大学法人化の実施時が再検討されるべきで
あると思料する。

なお,刑罰法規に関する「運用上の配慮」などという法律上考えられない取扱
ではなく,2004年4月から一定期間は労働基準法及び労働安全衛生法の一部の
適用除外という取扱をするのであれば,現在国会で審議されている法案の修正
が必要不可欠であるが,その一定期間は,人事院規則も適用されず,国立大学
法人の労働者にとっての最低労働条件の基準が空白になってしまうことにもな
るから,その点で重大な問題が生じることになる。
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