独行法反対首都圏ネットワーク |
http://www.l.chiba-u.ac.jp/jp/dokuhouka.html 国立大学法人法案についての文学部の意見 2003年5月8日 千葉大学文学部教授会 千葉大学文学部教授会は、これまでも、現在進められている国立大学の独立行政法人 化は、教育と研究の健全な発展をゆがめかねないとの危惧の表明とその問題点の指摘 を行い、最近では2月25日に『「国立大学法人法案の概要」への文学部の意見』を 発表した。2月28日に国会に提出された「国立大学法人法案」をみると、残念なが ら、私たちが抱いた疑念と懸念を払拭するものとはいえない。日本の高等教育の重要 な部分を担ってきた国立大学のあり方に根本的な変更をもたらす可能性をもつ問題の 重要性に鑑み、「国立大学法人法案」の基本的な問題点について、あらためて文学部 としての意見を表明する。 1)「法案」は、国立大学の設置者を、国ではなく国立大学法人とし、設置者問題で いわゆる間接方式をとっている。この方式では、国立大学の経費負担に国は直接には 義務を負わない可能性が生じる。その結果、設置者である法人は、大学の経営的な管 理を優先せざるをえなくなる恐れがきわめて高い。 2)2002年3月に出された国立大学法人化問題についての文部科学省調査検討会 議『最終報告』では、教学と経営を一体的に取り扱う立場から、大学の組織とは別に 「法人」としての固有の組織は設けないとされていた。ところが「法案」は、法人の 組織として、役員会、そして学外委員が半数以上をしめる経営協議会を置き、それら に予算や人事や組織問題などにおいて圧倒的な権限を与えている。経営の優位の下で 経営と教学の分離が進行するような制度設計がなされていると考えざるをえない。 3)国立大学法人の組織として、教育研究評議会が置かれることになっているが、こ の組織は教学の事項のみを扱うこととされ、「教育研究組織」についての審議権さえ 権限事項にあげられていない。教育・研究の現場からの意見をもっとも反映する教育 研究評議会の活動を、狭い教学の範囲にとじこめ、重要な権限を役員会に集中する仕 組みでは、教育と研究を基盤とすべき大学のありようを大きくゆがめかねないという 問題をはらんでいる。 4)「法案」では、経営と教学の双方にわたり学長の権限がきわめて大きく、学長個 人の資質に大学が著しく左右されることになる。また、「学長選考会議」が学長の選 考を行うとしているが、その構成は、時の学長と学外者で過半数を占めうるように なっており、教育研究の現場の意見は少数意見となる可能性がきわめて高い。さら に、『最終報告』で挙げられていた、学長選考における「学内の意見聴取」の手続に ついても触れられておらず、専ら経営優先の観点から選考がなされる道を開いてい る。 5)「法案」では、大学の教育と研究についての中期目標を文部科学大臣が決定し、 中期計画を認可するとしており、大学の「意見」は「配慮」されるに過ぎないと規定 されている。教育と研究についての目標・計画の策定から、すでに大学の自主性・自 律性は保障されていない。また「法人の業務の実績」は、文部科学省に設置される国 立大学評価委員会が評価し、「総合的な評定」を行う権限をもつとされているから、 教育研究の内容にわたって評価が可能な仕組みとされている。 このように、「法案」によれば、国立大学法人の制度設計は、経営を優先せざるをえ ない仕組みになり、他方、教育と研究の内容については、政府・文部科学省の関与・ 統制が強化されるような構造になっている。国立大学がこうした制度のもとに置かれ るなら、短期的な経営の観点や、政府の当面の政策によって大学の活動が大きく規定 されることは避け難い。私たちは、ほんらい長期的視野に立って科学と文化の発展に 貢献すべき任務をもつ大学が、その役割を果たしえなくなるという懸念を表明し、広 く社会的な検討が行われることを訴えるものである。 とりわけ第一に、国会において今後の高等教育をいかにすべきかという長期的視野に 立って、「法案」につき慎重かつ徹底した審議が実施されるよう訴えたい。 第二に、この「法案」は高等教育の将来を左右しかねない重要問題であり、大学人の みならず広く国民的な議論・検討が進められるべきものであることを訴えたい。 第三に、当事者である大学人が、この「法案」に対する意見・態度を表明することは 社会的責務であると訴えたい。とくに国立大学協会がその総会を開き、国立大学の総 意を表明するよう求めるものである。 以上 |