平成十五年四月三日(木曜日)
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議事日程 第十三号
平成十五年四月三日
午後一時開議
第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 本州四国連絡橋公団の債務の負担の軽減を図るために平成十五年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案(内閣提出)
第四 高速自動車国道法及び沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第六 酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案(第百五十四回国会、谷津義男君外七名提出)
第七 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第八 発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
原子力安全委員会委員任命につき同意を求めるの件
国地方係争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件
宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件
日程第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 本州四国連絡橋公団の債務の負担の軽減を図るために平成十五年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案(内閣提出)
日程第四 高速自動車国道法及び沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第六 酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案(第百五十四回国会、谷津義男君外七名提出)
日程第七 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第八 発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
国立大学法人法案(内閣提出)、独立行政法人国立高等専門学校機構法案(内閣提出)、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案(内閣提出)、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案(内閣提出)、独立行政法人メディア教育開発センター法案(内閣提出)及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時三分開議
○議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
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原子力安全委員会委員任命につき同意を求めるの件
国地方係争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件
宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件
○議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。
内閣から、
原子力安全委員会委員
国地方係争処理委員会委員
及び
宇宙開発委員会委員に
次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
内閣からの申し出中、
まず、
原子力安全委員会委員に松浦祥次郎君、東邦夫君及び松原純子君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
国地方係争処理委員会委員に青山正明君、磯部力君、小田原満知子君及び角紀代恵君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
国地方係争処理委員会委員に草刈隆郎君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
宇宙開発委員会委員に松尾弘毅君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
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日程第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(綿貫民輔君) 日程第一、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生労働委員長中山成彬君。
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駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔中山成彬君登壇〕
○中山成彬君 ただいま議題となりました駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、駐留軍関係離職者及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者の発生が今後においても引き続き予想される状況にかんがみ、本年五月十六日限りで失効する駐留軍関係離職者等臨時措置法及び本年六月三十日限りで失効する国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の有効期限を、それぞれ五年延長しようとするものであります。
本案は、去る三月二十日に本委員会に付託され、同二十六日に坂口厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、四月一日に質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(綿貫民輔君) 日程第二、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。安全保障委員長田並胤明君。
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防衛庁設置法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔田並胤明君登壇〕
○田並胤明君 ただいま議題となりました防衛庁設置法等の一部を改正する法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
本案は、自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。
第一に、自衛官の定数の変更及び書記官が充てられる職の範囲の拡大のための防衛庁設置法の改正を行うこと、
第二に、即応予備自衛官の員数の変更及び第五師団の旅団化のための自衛隊法の改正を行うこと、
第三に、特殊作戦隊員手当の新設のための防衛庁の職員の給与等に関する法律の改正を行うこと
であります。
本案は、去る三月十八日本委員会に付託され、二十七日石破防衛庁長官から提案理由の説明を聴取いたしました。去る四月一日質疑に入り、質疑終了後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 本州四国連絡橋公団の債務の負担の軽減を図るために平成十五年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案(内閣提出)
日程第四 高速自動車国道法及び沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(綿貫民輔君) 日程第三、本州四国連絡橋公団の債務の負担の軽減を図るために平成十五年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案、日程第四、高速自動車国道法及び沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。国土交通委員長河合正智君。
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本州四国連絡橋公団の債務の負担の軽減を図るために平成十五年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案及び同報告書
高速自動車国道法及び沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔河合正智君登壇〕
○河合正智君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、本州四国連絡橋公団の債務の負担の軽減を図るために平成十五年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案について申し上げます。
本案は、本州四国連絡橋公団の危機的な財務状況にかんがみ、同公団の債務の負担の軽減を図るため平成十五年度において緊急に講ずべき措置として、当該債務の一部を一般会計において承継する等の措置を講じようとするものであります。
次に、高速自動車国道法及び沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、適切な地方負担のもとに国が高速自動車国道の整備を行うことができることとするため、その管理に要する費用について、国がその四分の三以上で政令で定める割合を負担し、都道府県がその余の割合を負担するものとする等の措置を講じようとするものであります。
両案は、去る三月十八日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、同日の委員会において扇国土交通大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、翌十九日に質疑に入り、二十五日参考人からの意見聴取を行い、四月二日質疑を終了いたしました。
質疑の中では、本州四国連絡橋公団の債務切り離し後の償還の見通し、今後の高速自動車国道の整備見通し、新直轄方式で整備される高速自動車国道の選定基準等について議論が行われました。
質疑終了後、両案について討論を行い、採決をいたしました結果、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本州四国連絡橋公団の債務の負担の軽減を図るために平成十五年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。
両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第五 酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第六 酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案(第百五十四回国会、谷津義男君外七名提出)
○議長(綿貫民輔君) 日程第五、酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案、日程第六、酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。財務金融委員長小坂憲次君。
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酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔小坂憲次君登壇〕
○小坂憲次君 ただいま議題となりました両案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
初めに、内閣提出、酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、酒類小売業免許に係る規制緩和の進展等に伴う酒類業をめぐる環境の変化を踏まえ、所要の措置を講ずることとするものであり、その概要を申し上げますと、
まず、酒類販売業等の免許の拒否事由として、申請者が未成年者飲酒禁止法等により罰金刑に処せられた者である場合を加えることとする、
また、財務大臣は、酒類の取引の円滑な運行等に資するために定められた表示の適正化に係る基準のうち、特に重要と定めるものを遵守していない業者に対し、その遵守を命令することができることとする、
さらに、酒類小売業者は、販売場ごとに、酒類販売管理者を選任しなければならないこととする
等としているものであります。
次に、谷津義男君外七名提出、酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案について申し上げます。
本案は、酒類小売業免許に係る規制緩和の進展に伴い、多数の酒類小売業者の経営の維持が困難となる等の変化が生じている現状にかんがみ、緊急の措置をとることにより、規制緩和の円滑な推進に資することを目的とするものであり、その概要を申し上げますと、
まず、税務署長は、一定の要件に該当する地域を、緊急調整地域として指定することができることとする、
また、税務署長は、当該地域においては、酒類小売業免許の新たな付与等を行ってはならないこととする、
さらに、政府は、この法律の施行の状況等を勘案し、酒類販売業免許の制度のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとする
等としているものであります。
以上の両案のうち、酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案は、三月二十七日当委員会に付託され、昨日塩川財務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。
また、酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案は、第百五十四回国会に提出され、今国会まで継続審査に付されていたものでありまして、さきの第百五十五回国会の昨年十二月十一日、提出者谷津義男君から提案理由の説明を聴取いたしましたが、昨日、同法案に対し、七条明君外二名から、不公正な取引方法に該当する取引に関し、国税局長等の公正取引委員会への措置請求に係る規定を設けること等を内容とする修正案が提出されました。
同日、両法案及び修正案に対する質疑を行い、質疑を終局した後、討論を行い、順次採決いたしましたところ、酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと、また、酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案は全会一致をもって修正議決すべきものと決しました。
なお、酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。
日程第五の委員長の報告は可決、日程第六の委員長の報告は修正であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり議決いたしました。
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日程第七 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第八 発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(綿貫民輔君) 日程第七、エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案、日程第八、発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。経済産業委員長村田吉隆君。
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エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案及び同報告書
発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔村田吉隆君登壇〕
○村田吉隆君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案につきましては、海外の工場等における二酸化炭素の排出の抑制に係る事業活動等について支援策等を講ずるものであります。
次に、発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律案につきましては、原子力発電施設等の周辺地域において、住民生活の利便性向上等に寄与する事業を促進する措置等を講ずるものであります。
両案は、去る三月十八日に本委員会に付託され、翌十九日平沼経済産業大臣からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、昨日質疑を終局し、討論の後、それぞれ採決を行った結果、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、両案に対しそれぞれ附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 両案を一括して採決いたします。
両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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国立大学法人法案(内閣提出)、独立行政法人国立高等専門学校機構法案(内閣提出)、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案(内閣提出)、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案(内閣提出)、独立行政法人メディア教育開発センター法案(内閣提出)及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部科学大臣遠山敦子君。
〔国務大臣遠山敦子君登壇〕
○国務大臣(遠山敦子君) このたび、政府から提出いたしました国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
知の時代とも言われる二十一世紀にあっては、知の拠点としての大学が学問や文化の継承と創造を通じ社会に貢献していくことが大きく期待されております。
今回提出いたしました国立大学法人法案等の六法案は、このような状況を踏まえ、現在、国の機関として位置づけられている国立大学や国立高等専門学校等を法人化し、自律的な環境のもとで国立大学をより活性化し、すぐれた教育や特色ある研究に積極的に取り組む、より個性豊かな魅力ある国立大学を実現することをねらいとするものであります。
次に、法律案の内容の概要について順次御説明申し上げます。
初めに、国立大学法人法案についてであります。
この法律案は、国立大学法人及び大学共同利用機関法人の組織及び運営について、次のような事項を定めるものであります。
第一に、国立大学法人及び大学共同利用機関法人は、それぞれ国立大学法人法案の定めるところにより設立される法人とし、その名称及び各国立大学法人が設置する国立大学について定めております。
第二に、国立大学法人等の業務に関して評価するための国立大学法人評価委員会の設置について定めております。
第三に、国立大学法人に役員として学長、理事及び監事を置き、予算など重要事項については学長及び理事で構成される役員会の議を経て学長が決定することとしております。また、審議機関として経営協議会及び教育研究評議会を設置するとともに、役員や経営協議会の委員に学外有識者を迎えることにより、民間的な発想を取り入れつつ学長を中心とした国立大学法人の経営体制の確立を図ることとしております。
第四に、文部科学大臣による国立大学法人の学長の任免や中期目標の策定等については、大学の自主性に配慮した仕組みを定めております。
第五に、国立大学法人の業務の範囲について定めるとともに、財務及び会計に関する規定を置き、あわせて、独立行政法人通則法の規定を必要に応じ準用することとしております。
第六に、大学共同利用機関法人についても、国立大学法人と同様に、組織、業務及びその自主性に配慮した仕組み等を定めております。
第七に、国立大学から国立大学法人への事業の承継に伴う権利義務の承継その他所要の経過措置等に関する事項を定めるとともに、この法律の施行期日を平成十五年十月一日とし、また、国立大学法人等の設立の期日は平成十六年四月一日としております。
次に、独立行政法人国立高等専門学校機構法案においては、五年制の高等教育機関である国立高等専門学校を設置する独立行政法人国立高等専門学校機構について、その名称、目的、業務の範囲等に関する事項や役員について定めるとともに、各国立高等専門学校の名称及び位置を規定しております。
また、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案及び独立行政法人メディア教育開発センター法案は、学位授与、財務・経営、メディア教育のそれぞれの観点から大学等を支援する業務を行う三機関を独立行政法人化するため、その名称、目的、業務の範囲等に関する事項や役員について定めるものであります。
これらの機構及びセンターにつきましては、国立大学法人等と同様に、その設立の期日は平成十六年四月一日としております。
なお、国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、国立大学法人法等の施行に伴い、国立学校設置法及び国立学校特別会計法の廃止を行うとともに、学校教育法外五十二本の関係法律について所要の改正を行うものであります。
以上が、国立大学法人法案等の六法案の趣旨でございます。よろしくお願いいたします。(拍手)
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国立大学法人法案(内閣提出)、独立行政法人国立高等専門学校機構法案(内閣提出)、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案(内閣提出)、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案(内閣提出)、独立行政法人メディア教育開発センター法案(内閣提出)及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山口壯君。
〔山口壯君登壇〕
○山口壯君 山口壯です。
国立大学法人法など関係六法案について、民主党・無所属クラブを代表して、質問します。(拍手)
国立大学の法人化という問題は、一見地味な問題ですが、今回の法案は、大学について百年に一度あるかないかの制度変更であり、これにより果たして大学における教育研究活動が本当に活性化されるかどうか、見きわめなければいけません。
九〇年代には、あらゆる分野で民営化が望ましいとされて、国立大学を民営化することにより研究が活性化するという命題が勢いを得たわけですけれども、その延長線上に、このたびの国立大学法人法が位置づけられます。
独立行政法人とは呼ばずに、単に法人化と言っていますけれども、あえて独立行政法人と言っていないことによって、何か予算措置上の特別の意味があるのか、お伺いします。
今回の法案は、大学における教育研究活動の活性化に対する解答になり得ていない点が本当の問題点ですけれども、個々の内容的にも幾つかの大きな問題点があります。
第一に、中期目標について。
文部科学大臣が国立大学に対して中期目標を示して、国立大学が中期計画を立てる、そして、六年後にそれを評価して予算配分にも直結させることがうたわれています。これは独立行政法人通則法の基本的枠組みと同じですけれども、このような、戦前の日本にも存在しなかった、文部科学省が大学をコントロールし得る仕組みというのは、憲法二十三条の学問の自由及び大学の自治を侵しかねません。
また、独立行政法人通則法と同じように、業務の実績が悪化することによって、大臣によって学長の解任が可能になるという仕組みもありますけれども、しかし、そもそも大学は行政機関ではありません。中期目標とか中期計画とか評価とか、その結果を予算配分に反映させるとか、独立行政法人通則法と同じ考え方を大学に当てはめることは極めて不適切です。
中期目標を定めるとしても、文部科学大臣ではなく国立大学が定めるように、また、中期計画についても、文部科学省による認可となっていますが、これを届け出に改めるように、法案を修正すべきと考えますけれども、文部科学大臣の所見を伺います。(拍手)
法案上、財務省が中期目標にも口を出せることになっていますけれども、これまで、財務省は国立大学の研究・教育内容について口を出していなかったのではないかと思います。今回の法律で、明文上、その権限が認められるとすれば、それは、憲法二十三条の学問の自由及び大学の自治を侵しかねないものとして、極めて不適切だと思います。塩川財務大臣の所見を伺います。(拍手)
基本的考え方は独立行政法人通則法にのっとりながら、名前から「独立」という語を取り去り、しかし、実態は独立させずに、国立大学に対する文部科学省のグリップを以前にも増して確立しようとしていることが、今回の法案から読み取れます。独立行政法人化の流れにもかかわらず、結果としては文部科学省の権限を強化している。これでは、火事場の焼け太りではないですか。
第二は、評価について。
法人化に伴って、文部科学省に国立大学法人評価委員会が設けられます。法案によると、各大学への予算の配分も評価委員会による評価に基づいて行われますから、その役割は極めて大きいものです。
評価委員をどう選ぶか、これは政令で定めることになっていますけれども、法律レベルでの透明性を高めるために、評価委員会の構成、委員の選出方法などは、政令ではなくて、法律レベルで定めるよう修正すべきと思います。文部科学大臣の所見を伺います。(拍手)
また、ほかの独立行政法人とは違って、国立大学の評価ですから、幾つかの問題点もあろうと思います。
そもそも大学には、数値で評価できない、いろいろな重要な任務があるはずです。しかし、産学連携とか数値で評価できる研究だけに努力が向けられると、数値で評価しにくい古典研究などは、勢い、おろそかになってしまいかねません。
また、そもそも研究とは、個人ないしはグループによってなされるものですから、大学といった組織によってなされるものではないのに、それをあえて、法案では、大学を評価することになっております。しかし、ここには無理があるのではないでしょうか。
学会誌ないしは専門誌への掲載論文の量と質が個々の学者の評価のすべてであるとも言え、文部科学省に置かれる評価委員会や、そこから要請される大学評価・学位授与機構が評価したりするものではないと思いますけれども、文部科学大臣の所見を伺います。
さらに、ある特定の学術研究の評価は、実際には極めて難しいものです。幾ら大学評価・学位授与機構に専門家をそろえても、実際、学問の細分化というものが極めて進んでいますから、ある論文の価値を判断できるのは、専門をともにする一握りの研究者でしかありません。物理学の論文の評価は、物理学者ならだれでもできるわけではないわけです。
第三に、我々は、産学連携のわなともいうべきことにも注意が必要です。
今回の法案では、産学連携を重視していることが強く感じられますし、文部科学省もそのことをはっきりうたっていますけれども、その傾向は、すぐに役立つ研究や、外部資金を獲得しやすい重点課題研究が重視される反面、例えば京都大学のインド哲学科などは、存亡の危機に瀕することになりかねません。実際、サッチャー元首相によるイギリスの国立大学改革の結果、伝統ある古典研究は断絶されたと聞きます。また、数学の中でも、純粋数学はわきに追いやられて、コンピューターサイエンスに近い数学が優遇されることになるおそれもあります。
今回の法案は、産業政策としての大学改革、そうなってしまっていないか、文部科学大臣の所見を伺います。(拍手)
今すぐもうかるような研究に集中していくのではなくて、大学の研究のすそ野を広くしておくことが極めて大事です。高い山ほどすそ野は広い、すそ野が広くなければ山は高くならないわけです。産学連携政策を過信して大学の多様な機能を犠牲にすることは、日本の学問のすそ野を狭くしてしまい、将来の我が国の基礎力を浅くて薄いものにしかねません。
また、産学連携を不況の打開策として過度の期待をかけるべきでもないと思います。
ちなみに、アメリカが一九八〇年代の停滞を脱したのは、産学連携政策によってではありません。ドル安・円高によって構造改革をなし遂げたのであって、そこを見抜かなければいけません。
また、特許ライセンス収入による国費節約を意識されていると思いますけれども、これも幻想です。製品化に成功している特許は一%以下と言われ、特許はもうかるものではないからです。アメリカの大学でも、特許ライセンス収入は大学の研究費の五%程度です。
そして第四に、天下り役員の数が相当ふえることにも注意を払わざるを得ません。
理事が八十九大学で五百三人、それに各大学二人ずつの監事が加わりますから、六百八十一人の役員が置かれることになります。これは現在の指定職の数の何倍もふえることになりますから、行政改革の観点からは見過ごせないと思います。文部科学大臣の所見を伺います。
さて、こういう改革によって、大学における教育研究活動が本当に活性化するのでしょうか。このたびの法案はピントが外れているのじゃないかと思います。
我が国の国立大学における学術研究に物足らないところがあったとしたら、それはその経営形態に問題があったからじゃないのだと思うのです。もし仮に、経営形態に問題があったとするならば、私立大学において活発な研究活動が行われていたはずですけれども、残念ながら、ほとんどの分野において、私立大学における研究は、国立大学におけるそれに一歩譲っているように見受けられます。
実際、イギリスのサッチャーさんの大学改革は失敗したという評価が下されているわけですけれども、多くの基礎科学の研究者がアメリカの大学に移籍してしまいました。何十年かの後に、イギリスはこの高いツケを払うことになると思います。
我々は、教育及び研究の問題を考えるときに、どうしても予算の問題を避けて通れません。それは、時の政権が教育にどれだけ優先度を与えているかの端的な目安だからです。
GDPに対する教育費の比率を見ますと、我が国が三・五五%、一番低いのです。ドイツが四・三五%、イギリスが四・六五%、アメリカに至っては四・八二%、そしてフランスが五・八八%、日本の三・五五%に比べて一%も二%も高い。我々のGDPが五百兆円であることを考えれば、今から五兆円、十兆円余計に使ってやっと先進国並み、こういうことになるわけです。ちなみに、隣の韓国は、我々よりも高い四・〇七%を教育に割いています。
しかも、日本の三・五五%というのは、一九九〇年に三・六二だったものが、九五年に三・六〇に、そして今、三・五五に落ちてきているのです。
今年度の文教及び科学振興費を見ますと、約六兆三千億円、前年度比、約二千五百億円の減です。しかも、予算全体の構成比でも、前年度八・二%から七・九%に落ちています。これは、小泉内閣の教育研究に対する熱意の低さのあらわれじゃありませんか。これでは、米百俵どころではない、うそ八百と言われても仕方がありません。塩川財務大臣、いかがでしょうか。(拍手)
また、今後、大学への寄附控除の問題も含めて、日本の高等教育システムを活性化していく上では大変重要だと思うのですけれども、財務省としてどのようにお考えか、塩川財務大臣の所見を伺います。
我が国の国立大学の教員は限られた予算の中でも実は頑張っていることを、忘れるべきではありません。
過去二十年間に、自然科学分野における世界の大学別の論文数を見てみますと、ナンバーワンこそハーバード大学ですけれども、何と東京大学が第二位、四位が京都大学、十二位に大阪大学が入っています。ケンブリッジ、MIT、ジョンズ・ホプキンス、エール、オックスフォード、全部ずっと下の方にいるわけです。そして、三十二位に九州大学、三十七位に名古屋大学、四十三位に北海道大学、四十九位に東京工業大学と続きます。日本の国立大学は、この意味ではよく健闘している。
ちなみに、日本の私立大学である慶応義塾大学あるいは早稲田大学は、残念ながら、まだ少ないようです。
年ごとの大学別論文数を見ますと、来年にも東京大学は、ついにハーバード大学を追い越して世界一になりつつあります。
また、引用される論文数においても、東北大学が物質科学で世界一、物理学では東京大学が二位、化学で京都大学が二位、東京大学が三位に入っています。バイオでも、東京大学が四位に入っています。
さらに、日本の今までのノーベル賞の受賞者を全部見てみますと、湯川秀樹さん京都帝国大学、朝永振一郎さん京都帝国大学、川端康成さん東京帝国大学、江崎玲於奈さん東京大学、佐藤栄作さん東京帝国大学、福井謙一さん京都帝国大学、利根川進さん京都大学、大江健三郎さん東京大学、白川英樹さん東京工業大学、野依良治さん京都大学、昨年の小柴昌俊さんが東京大学で、そして田中耕一さんが東北大学、全員が国立大学出身者です。残念ながら、まだ我が国の私立大学出身者の方がノーベル賞をとるには至っていません。
このように考えるときに、内閣から提出された国立大学法人法案は、今の原案のままでは問題が多くて、国家百年の計を誤りかねない悪法であると断ぜざるを得ません。(拍手)
まさに、文部科学省が改革をやるたびに教育がだめになっている。ゆとり教育しかり、円周率が三・一四でなくても三でもよいという新学習指導要領しかり、そして総合学習しかり、現場の混乱は極めて甚だしい。(拍手)
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったのは、ドイツの宰相ビスマルクです。愚か者は、やってみて初めてわかるけれども、賢者は、歴史を学ぶことによって間違いを犯さなくて済むという意味です。やってみなきゃわかんないじゃないかと言うのは愚か者だと、宰相ビスマルクは言い残しています。
ここにおられる四百八十名の賢者の皆様、サッチャーの大学改革は大きな誤りであったという歴史にも思いをはせて、国家百年の計に誤りがないよう、この国立大学法人法の本質を見抜いていただきますようにお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣遠山敦子君登壇〕
○国務大臣(遠山敦子君) 山口議員の御質問にお答えさせていただきます。
議員からは、六点について御質問がございました。
まず、独立行政法人ではなく国立大学法人としたことと予算措置との関係についてのお尋ねでございます。
国立大学の法人化につきましては、独立行政法人制度を活用しつつ、国立大学は行政機関ではなく教育研究を自律的に推進する知の拠点であるという特性を踏まえ、それにふさわしい国立大学法人とし、国立大学の一層の活性化を図ることを目的としております。
他方、国立大学の教育研究の資質の向上について国の責任を十分に果たす観点から、今後とも、国立大学法人に対する必要な財源措置を行うこととしております。
次に、中期目標は文部科学大臣ではなく国立大学法人が定め、中期計画についても文部科学大臣への届け出とするよう修正すべきとの御意見であります。
国立大学が創意工夫を重ねながら教育研究の高度化や個性豊かな大学づくりに取り組む上で、その自主性、自律性を尊重し、国立大学の活性化を図ることは、極めて重要であります。
我が国の国立大学は、現行制度上、行政組織の一部として位置づけられておりますために、予算、組織、人事などの面で国が関与せざるを得ず、さまざまな制約がございました。法人化により、その関与を限定するとともに、国立大学法人の意見に十分配慮することとしております。
もとより、国が責任を持って予算措置を行うため、中期目標の策定など必要最小限の関与は必要でありますが、中期目標の作成においては国立大学法人の意見に配慮するなど、大学の自主性、自律性を十分尊重することが必要であり、そのような仕組みといたしております。
また、評価委員会の構成、委員の選出方法等を法律で定めるよう修正すべきとの御指摘です。
国立大学法人の評価については、その規模や業務の特性を踏まえ、通常の独立行政法人の評価委員会とは別に、国立大学法人評価委員会を設けることとしておりますが、その組織等については、通常の独立行政法人評価委員会の仕組みに倣って、政令で定めることとしたものであります。
なお、この評価委員会は、国立大学法人制度において重要な役割を担うものと認識しており、関係政令を定める際には広く社会に意見を求めるなど、御指摘の透明性の確保について十分留意してまいります。
さらに、研究面を含む大学の業務実績に関して評価することには無理があるのではないかとのお尋ねです。
国立大学法人については、教育研究の質の向上や業務運営の改善、効率化などに関し、組織体としての大学の中期目標を定め、中期目標期間終了時にその達成状況を調査分析し、中期目標期間における業績を評価することとしているものであります。
御指摘のように、研究活動はさまざまな形態で進められるものでありますが、研究評価は、中期目標に照らして研究体制や支援体制に関する取り組みがどうであるのか、組織を構成する教員の個別業績をもとにそれらを総合した研究水準はどのくらいなのかなどを組織全体として評価することになると考えております。
なお、研究面の専門的評価につきましては、その特性に配慮し、大学評価・学位授与機構に実施を要請して、その結果を尊重することといたしております。
次に、法人化後、基礎的学問分野がおろそかになるのではないかとの御指摘でございます。
これはまことに重要なことでございまして、国立大学は、基礎学問分野を初めとする我が国の学術研究の推進や研究者等の人材養成などに大きな役割を担ってまいっておりまして、その役割は今後ともますます重要になっていくものと考えております。
法人化は、このような国立大学に期待される役割を十分発揮できるよう、国としての一定の財政措置を前提としつつ、各大学の自律的な運営を確かなものとするためのものであり、法人化の結果、基礎的な学問分野の教育研究がおろそかになるようなことはあってはならないものと認識しております。
この点については、まず、各大学がしっかりとした見識を持ち、こうした学問分野の発展に努力することが前提となるものでありますが、国としても、国立大学法人評価委員会の有識者の方々のさまざまな意見を参考としつつ、中期目標の策定や評価等の仕組みを通じて十分な目配りをするとともに、必要な財政措置に努めてまいりたいと考えます。
最後に、役員数に関する御指摘でございます。
国立大学法人の役員数については、組織の合理化の観点からは、各法人の運営上必要な範囲内でできるだけ抑制すべきであることは御指摘のとおりと思います。
他方、法人化後の国立大学におきましては、学内コンセンサスに留意しつつも、学長を初めとする役員が中心となって、みずから経営戦略を確立し、責任ある大学運営を実現することが強く求められるところでございます。
今回、お示ししております国立大学法人の役員数につきましては、以上のような観点も踏まえ、各法人の規模等をベースに適切に定めたものと考えております。
なお、文部科学省におきましては、法人化とともに、国立大学の再編統合の取り組みも進めているところでございまして、結果として役員数の総数抑制も図られるものと理解いたしております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣塩川正十郎君登壇〕
○国務大臣(塩川正十郎君) 私に対する質問は三点ございました。
一つは、財務省が中期目標に積極的にくちばしを出すのじゃないか、こういう御心配でございます。
従来からこういうことをやっておったのかというお問い合わせでございますけれども、従来から、国立学校特別会計の予算編成の際に、文部大臣、財務大臣は協議をして予算編成に従事しております。
今回の国立大学法人化に伴いまして、法第三十六条によりまして、中期目標には、業務運営の改善及び効率化に関する事項、財務内容の改善に関する事項等につきまして、文部科学大臣と財務大臣は協議することになっておりまして、直接、財務大臣が国立大学法人にくちばしを入れるということにはなっておりませんで、御安心いただきたいと存じます。
それから、二番目の問題でございますけれども、文教予算が大幅に削られているじゃないかというお話でございます。
平成十五年度予算におきましては、表面上は確かに二千三百四十四億円の減となっておりますが、これは、御承知のように、義務教育国庫負担金の中の共済費の長期給付金を一般財源化いたしまして、これが二千六百八十六億円減となっておりますので、その分を見ましたら若干減っておることとなっておりますけれども、一方におきましては、文教及び科学振興費の中ではこれを増額しておりまして、科学技術振興費におきましては三・九%増額し、文教施設費におきましては三・六%、さらに、育英事業費におきましては二・四%の増となっておりまして、今後とも、教育財政につきましては積極的に取り組んでいきたいと思っております。
それから、大学への寄附の件でございます。
平成十五年度税制改正では、私立大学への一般の現物寄附につきまして、一定の要件のもとで、つまり、これをすぐに基本財産に繰り入れてくれるということの前提にあるとするならば、これは譲渡益非課税の承認要件を満たすものとして課税しないことにいたしておりまして、今後とも、高等教育に対する寄附行為等につきましては、積極的に、善意に対策していきたいと思っております。
以上であります。(拍手)
―――――――――――――
〔議長退席、副議長着席〕
○副議長(渡部恒三君) 佐藤公治君。
〔佐藤公治君登壇〕
○佐藤公治君 自由党、佐藤公治でございます。
私は、自由党を代表して、ただいま提案のありました国立大学法人法案等関連六法案に対する質問を行います。(拍手)
質問に先立ち、一言申し上げます。
現在、日本は内政・外政ともに非常に厳しい状況に置かれており、政治のかじ取りが極めて重要な時期に差しかかっていますが、小泉政権は、相変わらずの口先だけのパフォーマンスで問題の先送りをして、国民の目を欺いています。
先日、北朝鮮のミサイル発射の真偽をめぐり、国土交通大臣、官房長官、防衛庁の発表が二転三転するという失態を演じ、危機管理体制がずさんであることがまたもや露呈しました。また、株価がたびたび七千円台に突入し、国民生活が不況と大増税に苦しむ中、長期化が予想されるイラク戦争の戦後復興費用の二割を日本が負担することになるのではないかといううわさが流れており、これが現実となれば、日本経済に大きな影響を与えることとなります。
しかし、このように未曾有の危機や問題が山積しているにもかかわらず、小泉政権は何ら具体的な対応を打ち出すこともなく、そればかりか、総理自身や閣僚、与党議員の政治とお金に関する疑惑で、国会審議もままならない状況となっています。
ことしに入ってからも、さまざまな金権疑惑が噴出し、元自民党の坂井衆議院議員が政治資金規正法違反で逮捕、大島元農林水産大臣が元秘書の政治献金流用疑惑など一連の事件の責任をとって辞職することとなりました。
これら頻発する政治とお金に関する事件は、議員個人の問題であることも当然ですが、根底は、自民党の金権腐敗体質にあることは明白であります。(拍手)その結果、政治家全体が疑惑の目で見られることは、極めて残念です。
このように、政治とお金に関する国民の不信感が頂点に達し、政治家に対する信頼が失われているときに、国会で、高等教育の根幹にかかわる問題である国立大学の学校法人化などの法律案を審議したところで、国民が納得できるでしょうか。
教育の現場では、生徒たちが政治家はうそつきだとやゆし、教師が答えに窮する場面もあると聞いています。
政治家がみずから襟を正し、教育現場で政治家の信頼が得られるようになるためにも、自由党を初めとする野党が提案している、公共事業受注者等からの政治献金を禁止することを柱とする政治資金規正法等改正案を成立させ、お金の流れを透明にするべきと考えますが、官房長官の御意見を伺います。(拍手)
さて、本題に入ります。
まず、六法案そもそもの必要性について伺います。
国立大学法人法案の柱をかいつまんで言えば、大学ごとに法人化することにより自律的な運営を確保し、各大学の切磋琢磨により国際競争力の育成を図る。教職員の身分を非公務員型とすることにより、各教職員の実績に応じた処遇や産学官連携等の活性化を図る。学外者を役員等に参画させるとともに、役員によるトップマネジメントの導入により、透明で機動的、戦略的な運営を図る。第三者評価の導入による事後チェック方式に移行することにより、各大学の努力や実績が適切に評価され、個性的な発展が図られるということでありますが、言いかえれば、国立大学を何が何でも法人化したいがために、きれいごとを並べて理屈づけをしたにすぎません。
国立大学の法人化が、専ら国家財政上ないし行政改革の観点から、教育・学術研究コストを外部化して下げるために行われはしなかったのか、ずばり言えば、国家予算が足りなくなった、国債でもまだ足りない、国民から賛成されそうな国家公務員給与をばっさりやろうという観点から行われたのではないかとの疑念もありますが、文部科学大臣の説明を伺います。
また、そもそも、独立行政法人という構想は、問題点が噴出してきた特殊法人の延命を図るため、名称を変更して、古い器を新しい器にかえて国民の批判をそらすことにありました。
今回の国立大学の法人化については、独立行政法人通則法に基づかないものの、通則法は一部準用されるという、変形した法人となっています。なぜ、わざわざ、独立行政法人の変形版である国立大学法人という特殊な形態をとる必要があったのか、また、これに関連して、独立行政法人の大学評価・学位授与機構、国立大学財務・経営センター、メディア教育開発センターを設置する必要があったのか。独立行政法人は極力廃止するべきであると考えますが、官房長官の見解を伺います。
また、現行の国立大学の仕組みの中で、現在、大学が抱えている問題点を改正できなかった理由について、文部科学大臣にお伺いいたします。
以下、順次、法案の柱について伺います。
まず、学校運営についてですが、国立大学が法人化されると、個々の大学が国から独立した存在として法人格を持ち、法人の運営は、学長を中心とした役員会、経営協議会、教育研究評議会が責任を持って行うこととなります。
これにより、確かに、従来の国立大学が国の行政機関の一部とされてきたことに伴うさまざまな制約がなくなり、自主性、独自性が強まりますが、これに加え、経営もみずから行うことになると、今後、国立大学と私立大学の垣根がなくなるのではないかとも思われます。そもそも、国立大学は国が責任を持って教育・基礎研究分野を行う趣旨で設立されたはずですが、この点について、文部科学大臣の見解を伺います。
また、これに伴い、国立大学は、研究・教育にだけ専念する体制はとることはできず、今後、新たに、経営の責任が加わることとなります。すなわち、国から支給される運営費交付金の学内における配分、教職員の確保、学生の確保などに加え、大学独自の運営費獲得策を講じなければならないなど、経営手腕も問われることとなり、学長や理事の業務も多忙なものとなります。
国立大学は、何よりもまず高等教育機関であり、教育と学術研究を行うことが第一の目的であるはずです。しかし、大学が経営に時間と手間をとられ、教育・学術研究がおろそかになるような事態が生じるとすれば、本末転倒であり、結果として、国が高等教育や基礎研究分野の役割を放棄することになると考えます。
なお、経営安定のために授業料が値上げされるのではないかとの懸念も多く出ていますが、授業料の値上げを防ぐため何らかの措置はとるのか。これらの点について、文部科学大臣の見解を伺います。
次に、教職員の身分について伺います。
国立大学法人とすることにより、全国の国立大学は、それぞれが給与水準などを定めることになります。そして、職員を非公務員型にすることにより、弾力的な人事システムや産学官連携の推進、外国人を学長等に登用できるとしているため、人事面での機動的な運用は可能になると思われます。
しかし、その反面、各大学によって給与水準もポストもばらばらとなる可能性が強いため、人事交流の面においては、都市部や待遇のよいところに希望者が多く、地方で待遇の悪いところには希望者が少なくなり、一筋縄ではいかなくなる可能性があります。この点について、文部科学大臣の見解を伺います。
次に、学外者導入やトップマネジメント導入について伺います。
本法案では、教育研究のほか、人事を含む経営全般について、重要事項については役員会で諮られるものの、最終的には学長が決定権を持つことになっています。この権限のもと、経営に関する学外有識者を含めた経営協議会で経営面を審議、実行しますが、使途を限定した長期借入金や独自の大学債の発行、民間企業の研究委託を受けたりすることが可能となります。しかし、当然にリスクも伴うことになります。
経営が失敗して大学単独では返済不可能な負債を抱えた場合、附属病院等における医療裁判等の被告になり巨額の賠償金を支払うようになった場合などについて、だれが責任をどのような範囲でとることになるのか、文部科学大臣の見解を伺います。
次に、第三者評価の導入による事後チェック方式について伺います。
本法案では、各界の学識経験者で組織する第三者評価機関である国立大学法人評価委員会において、各大学の業績を総合評価することとしています。
しかし、経営面、研究実績、教育面がどのような割合で評価されるのかなど、総合評価の基準は明確になっていません。しかも、この総合評価により運営費交付金が各大学に傾斜配分されることととなっており、この第三者機関は極めて強い力を持つことになります。
総合評価のあり方の基準を作成し公表する等の措置をとるのか、また、第三者機関のメンバーは国立大学のOBは除外するなど公平な評価をするためにどのような基準で人選をするのか、文部科学大臣の見解を伺います。
最後に、教育改革は国の根幹にかかわる問題ですが、もはや、政治とお金に関する疑惑にまみれ、公約を平気で破り、国民の信頼を失っている小泉内閣が教育改革を語る資格はありません。(拍手)
我々自由党は、今後、国が行う教育の基本方針として、学校、家庭、地域社会を通じて、平和で豊かな日本を発展させ、かつ、一人一人が自分の人生を全うできるように、日本の歴史と伝統を踏まえ、人間としての尊厳をたっとび、真理と正義を重んじる国民を育てることを明確にしています。このことを実現するために、現在の教育基本法にかえて、学校教育の制度と方針、家庭と地域社会の役割、教育行政のあり方等を定めた新しい基本法を国民の前に提示することを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣福田康夫君登壇〕
○国務大臣(福田康夫君) 佐藤議員から、国立大学法人と独立行政法人通則法との関係などについてお尋ねがございました。
国立大学につきましては、独立行政法人制度を活用しつつ、大学の教育研究の特性を踏まえた仕組みとするため、国立大学法人としております。
また、大学評価・学位授与機構等の三機関は、大学評価やメディア教育の支援などの国の事務事業を担うものであり、その効率的な実施を図るため、独立行政法人とするものであります。
なお、政治資金のあり方についてもお尋ねがございましたけれども、この問題は、民主主義のコストをどのように国民に負担していただくかという観点から各党各会派において御議論いただくべき問題だと考えております。(拍手)
〔国務大臣遠山敦子君登壇〕
○国務大臣(遠山敦子君) 佐藤議員の御質問にお答えさせていただきます。
議員からは、八点について御質問がございました。
まず、国立大学の法人化が行政改革や財政削減の観点から行われたのではないかとの御指摘でございます。
国立大学の法人化については、平成十一年の閣議決定において、「大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討」することが特に確認されておりまして、その点は、今日に至るまで一貫した政府の方針であります。
その方針のもとに、長年にわたり検討を重ねてまいりました結果、あくまでも大学改革に資するとの判断から今回の法案を国会に提出させていただいたものであります。
次に、現行の国立大学の仕組みの中では改革ができなかった理由についてのお尋ねであります。
我が国の国立大学は、現行制度上、行政組織の一部として位置づけられておりますために、予算、組織、人事などのさまざまな面で規制がございまして、教育研究の柔軟な展開に制約がございました。
そのような中で、近年、大学改革への努力も行われてまいりましたが、このたび、このような国の組織であることに伴う諸規制を緩和し、国立大学がより大きな自主性、自律性と自己責任のもとで、これまで以上に創意工夫を重ねながら、教育研究の高度化や個性豊かな大学づくりに取り組むことを可能とするために、国立大学を法人化する必要があったものでございます。
なお、欧米諸国では、国により大学の設置形態はさまざまでありますものの、国立、州立を含め、大学には法人格が付与されているのが一般的であります。
また、国立大学法人と私立大学との違いについてのお尋ねでございます。
我が国の大学制度は、長い歴史の中で、国公私立の大学が、それぞれの設置形態のもとで役割を分担しつつ、教育研究水準の向上と、全体としての多様かつ特色ある発展を遂げてきたところに大きな特色がございます。
そのうち、国立大学は、今日まで、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うとともに、全国的に均衡のとれた配置により、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するなど、重要な役割を果たしております。
国立大学の法人化は、このような国立大学の使命を前提としながら、各大学がみずからの理念を明確にして多様な教育研究を可能とするものであり、建学の精神に基づく個性豊かな人材の養成等の役割を担う私立大学とともに、我が国の大学が魅力ある、国際的な競争力を持つ大学として発展するための契機となるものと考えております。
さらに、法人化後、大学が経営に手間をとられ、教育・学術研究がおろそかになるのではないかとの御指摘でございます。
法人化に伴い、各国立大学においては、教育研究活動の遂行とともに、みずから経営戦略を確立して大学運営に当たるなど、経営面の責任が加わることは御指摘のとおりでございます。
この点については、国立大学が運営上の裁量を拡大し、教育研究の活性化を図る上で大変意義のあるものと考えております。
また、拡大する経営責任に対応して、必要な理事の配置や役員会制度の導入、経営協議会の設置など、大学内部における経営責任の明確化と経営体制の強化には十分に意を用いたところでございますが、これを機会に、各大学におきましても、教育、研究、管理運営などの職務内容の適切な役割分担を工夫することも大切であると考えております。
また、法人化による経営安定のための学費値上げへの懸念についてのお尋ねでございます。
我が国の国立大学は、全国的に均衡のとれた配置により、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供する上で重要な役割を果たしております。
こうした国立大学の役割は、法人化それ自体によって変わるものではなく、国としても、今後とも、必要な財源措置など国の事業としての責任を持って対応してまいります。
法人化後の授業料の共通的な指標となる標準額は文部科学省令で定める予定ですが、その国が示す範囲の具体的あり方については現在検討を進めておりまして、各大学はその範囲内で授業料を設定することといたしております。
次に、法人化後の人事交流についてのお尋ねでございます。
法人化後は、職員の任命権は各大学の学長に属し、各国立大学法人がみずからの人事戦略に基づいた、より弾力的な人事システムの設計及び運用が可能となります。これにより、それぞれの教育研究の特色、地域性その他の特性を踏まえ、必要な人材の確保に努めていただきたいと考えております。
他方、法人化後においても、組織の活性化を図る観点から大学の枠を超えた幅広い人事交流を行うことの重要性も指摘されておりまして、各大学における人事の主体性を前提としながら、こうした幅広い交流を可能にする仕組みを整えることの必要性について、現在、国立大学関係者において検討が進められていると承知いたしております。
また、返済不可能な負債や巨額の賠償金についてのお尋ねであります。
そもそも、国立大学法人は、独立採算性を前提とするものではなく、その業務の実施に当たっては、国が運営費交付金等の財源を確実に措置することが基本であります。
また、御指摘のようなケースを考えてみますと、長期借入金に関しては、その対象を附属病院の施設整備など確実な収入が見込まれるものに限定いたしますとともに、文部科学大臣の認可を要することといたしております。また、医療事故等に関しては、損害賠償責任保険への加入などが考えられております。
なお、各法人の業務運営の状況については、事後に国立大学法人評価委員会において適切な評価がなされるものと考えております。
最後に、評価基準の公表及び国立大学法人評価委員会の人選基準についてのお尋ねでございます。
国立大学法人評価委員会による評価は国立大学法人制度の基幹をなす重要なものであると考えております。その具体的な評価基準については、新たに設立される国立大学法人評価委員会において御検討いただくこととしておりまして、決定され次第、広く社会に公表したいと考えております。
また、この評価委員会に関し必要な事項は政令で定めることとしておりますが、その委員は、社会、経済、文化等の幅広い分野の有識者を含め、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する方々によって構成することを考えておりまして、人選に当たっては、公平な評価の実施に十分意を用いてまいります。
以上でございます。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(渡部恒三君) 石井郁子君。
〔石井郁子君登壇〕
○石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法案など六法案について質問いたします。(拍手)
この瞬間にも、米英軍によるイラクへの戦闘行為、爆撃などが行われています。既に、多数の子供や女性、民間人が犠牲になっています。国際法に反する侵略行為であるこの戦争は直ちに中止し、米英軍は撤退すべきです。小泉内閣は戦争支持表明を撤回すべきです。このことを強く求めて、質問に入ります。(拍手)
国民の共有財産としての国立大学は、戦後、一県一国立大学の文部省の方針のもと、全県に設置され、我が国の教育と研究の発展に貢献するとともに、国と地方に多くの人材を輩出してきました。長期にわたる基礎的研究の結果、世界的研究につながった例や、偶然から新しい大発見を導いたと言われるように、大学の自由な研究活動の保障が数々の成果を上げてきたことは枚挙にいとまがありません。
今なすべきは、憲法と教育基本法のもと、こうした学問の自由と大学の自治を柱とした高等教育制度を充実発展させることです。現在の急務は、高等教育に対する支出がGDP比で先進諸国の二分の一以下という我が国の貧困な大学政策を改めることではありませんか。そのことが学術研究を発展させる最も確かな道です。(拍手)
ところが、政府のやろうとしているのは、そうした大学関係者の願いを顧みることなく、小泉構造改革の名によって、安上がりに、しかも効率よく、大学への統制を強めようとしていることです。今回提出された国立大学法人法案初め六法案は、そのことを明瞭にしています。
第一に、大学の中期目標を文部科学大臣が決める問題です。
法案によれば、「文部科学大臣は、六年間において国立大学法人等が達成すべき業務運営に関する目標を中期目標として定め、これを公表しなければならない。」とし、その中期目標は、「教育研究の質に関する事項」「業務運営の改善及び効率化に関する事項」「財務内容の改善に関する事項」などとなっています。
これらは、本来、大学みずからが定める事項であって、大学が自主的、自律的に行う内容であります。それらを文部科学大臣が定めるとなれば、教育研究の質にまで指示を与えることになり、憲法二十三条の学問の自由の保障に反することは明らかです。明快な答弁を求めます。(拍手)
また、「文部科学大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、国立大学法人等の意見を聴き、当該意見に配慮する」としています。文部科学大臣が学問研究の内容を含めて大学の意見に配慮する、ここにも大学法人化の意図が露呈しています。
日本の大学で、これまで、政府・文部省が大学の学問研究の内容、計画を上から決めたことがありましたか。答弁いただきたい。(拍手)
第二に、国による直接評価による教育研究に対する統制という問題です。
こうした中期目標や中期計画がどれだけ達成されたかを見るために国立大学評価委員会が文部科学省内に設置され、国立大学法人の業務実績についての評価を行うとしています。
これは国による直接の評価であり、これまた評価を通じての教育と研究に対する国家統制ではないのですか。明快な答弁をいただきたい。(拍手)
しかも、重大なことは、この国立大学法人は、独立行政法人通則法が準用されるために、総務省の所管している政策評価・独立行政法人評価委員会の評価も受けることです。この評価委員会は、国立大学法人の改廃に関する審査を行い、文部大臣に対する勧告権を持っています。
もともと、この評価委員会は、独立行政法人の業務実績の評価を行うものです。なぜ、総務省が教育と研究について評価できるのでしょうか。これでは、国立大学法人の改廃のかぎを総務省が握ることになるではありませんか。この勧告権とはどんな権限なのか、総務大臣の答弁を求めます。(拍手)
文部科学大臣などは、大学法人化で大学の自主性、自律性が拡大すると言ってきました。法案の第三条で、「教育研究の特性に配慮しなければならない。」としています。
ところが、この法案で、大学が政府の言いなりになる仕組みを二重三重につくるのでは、自主的・創造的教育研究を困難とするのではありませんか。答弁ください。
憲法制定当時、学問の自由について、金森徳次郎国務大臣は、「学問の自由とは、国家より干渉を受け、研究者のなさんと欲し、定めんと欲するところを妨げられることがない」と説明していました。まさに、これに反することを行おうとしているのではありませんか。
このように大学の目標を文部科学大臣など政府の閣僚が定めるような大学制度は、他の国にはありません。イギリス、アメリカなどは、法人という制度はあっても、教育研究を国が統制することはあり得ないのです。既に国立大学から法人に移行したニュージーランドでは、基礎研究の排除を余儀なくする、長期の展望に基づく戦略的研究は軽視され、短期的に利益が見込める研究が生産活動として優先されるようになる、こういう報告書が出されているのです。
数値化された評価や効率性などが大学を支配するようになれば、産業に直接役に立つ研究や、国が重点投資する分野のみが偏重され、時間のかかる、すぐには成果が明らかにならない長期的・基礎的研究分野は敬遠されるようになるのは必至であります。国立大学法人の教育研究の行き先は見えていると言わなければなりません。答弁を求めます。(拍手)
第三には、学長の専決体制という異常さを指摘しなければなりません。
この法案では、学長が法人の長として、学長と学長任命の少数の理事で役員会を構成し、また、経営協議会、教育研究評議会を主宰することになります。経営協議会に至っては、学長が任命する学外有識者が二分の一以上でなければならないとされています。
強大な権限を与えられた学長と教育研究に直接タッチしない多数の学外者で大学運営が決められることになるのではありませんか。教授会など大学の構成員の意見を反映する仕組みはどのようになるのですか。はっきり答えてください。(拍手)
第四に、教職員の身分保障の問題です。
この法案で、教職員の身分は非公務員とされました。これによって、教育公務員特例法の適用除外になります。教育公務員特例法は、憲法と教育基本法の趣旨及び教育公務員の特殊性を踏まえて、教員の身分法として制定されたものです。憲法が保障する学問の自由、それを与えるのは大学の自治です。大学の自治にとって、大学教員の身分保障が不可欠です。
教育公務員特例法第四条、「教員の採用及び昇任のための選考は、教授会の議に基づき学長が行う。」これはどうなるのですか。全国の大学で行われている教員等による学長選挙は保障されるのですか。明快な答弁を求めます。(拍手)
国立高等専門学校の問題も重大であります。
全国五十五校の国立高等専門学校は、一つの独立行政法人国立高等専門学校機構にされます。高等専門学校については、大学と異なる特性があり、その特性を生かすために独立行政法人通則法を適用するといいますが、高等専門学校には教育の自主性も自律性も存在しなくていいというのでしょうか。確かに、これまで、高等専門学校の校長は文部科学大臣が任命し、教授会もありませんでした。そのことで自治がないというのであるなら、自治機能を持つ高等専門学校へと制度設計すべきではなかったのではないでしょうか。答弁を求めます。(拍手)
第五に、学費など国民生活への影響です。
国の財政責任を法人に転嫁したため心配されるのが、学費への影響であります。これまで、学費は一律でしたが、今後は、国の示す範囲で各大学ごとに学費を決めることになります。文部科学省が昨年示した「法人化後の学生納付金の標準額及び幅の設定方法」では、現行の三五%の値上げに当たる七十万六千八百円を上限としました。私立の文科系を超える額です。
これでは、お金のない人はますます大学に行けなくなるではありませんか。先日も、高い学費にあえいでいるとの投書が寄せられました。今、世界一高いと言われる学費を引き下げることが求められているのです。文部科学省のやり方は国民の願いに逆行するものと言わなくてはなりません。答弁を求めます。(拍手)
最後に、この重大な法案提出に当たって大学の了解、合意は得られたのかどうか、伺っておかなければなりません。
法案が出されるや、私学関係者を含め全国の大学教職員に、不安と危惧、法案反対の声が急速に広がっています。本年一月、文部科学省の概要段階の説明には、二十四大学から、教授会を国立大学法人法に規定すべきなどの根本的意見が出されています。国立大学協会が了承したとされる調査検討会議の最終報告「新しい「国立大学法人」像について」と本法案には、大学の設置形態など、決定的な相違点があります。
法案に対しての国立大学協会の見解は出されていません。国立大学協会の総会はこの法案提出に同意したのでしょうか。お答えいただきたい。
一九九七年に採択された、ユネスコの高等教育の教育職員の地位に関する勧告は、教育及び教育研究への権利は高等教育機関での学問の自由と自治の雰囲気の中でのみ十分享受することができるとし、学問の自由を崩しかねない、たちの悪い政治的圧力によって学術の社会が傷つきやすいことを指摘しています。まさに、国立大学法人法を初め関連六法案は、たちの悪い政治的圧力の典型と言わなければなりません。(拍手)
大学の法人化は、我が国の知的基盤である大学を掘り崩し、我が国の発展にとって取り返しのつかない事態を招くでしょう。法案は廃案とすべきです。このことを強く要求し、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣遠山敦子君登壇〕
○国務大臣(遠山敦子君) 石井議員の御質問にお答えさせていただきます。
石井議員からは、十一点にわたる御質問がございましたので、順次お答えいたします。
第一に、中期目標を文部科学大臣が定めることは学問の自由に反するのではないかとの御指摘でございます。
国立大学が創意工夫を重ねながら教育研究の高度化や個性豊かな大学づくりに取り組む上で、その自主性、自律性は極めて重要であります。
我が国の国立大学は、現行制度上、行政組織の一部として位置づけられておりますために、さまざまな制約があるわけでございます。予算上も人事上も、あるいは組織上もそういうことでございますが、法人化により、その関与を限定するものでございます。
同時に、国立大学法人に対しては国が責任を持って予算措置を行うものでございますから、中期目標の策定など国としての一定の関与は必要でありますが、中期目標の作成においては国立大学の意見に配慮するなど、学問の自由を十分尊重することが必要であり、そのような仕組みといたしております。
第二に、大学の学問研究の内容や計画を政府が上から決めたことがあるのかというお尋ねでございます。
これまで、国立大学の学問研究の内容や計画を政府が一方的に定めたことはありません。
国立大学法人についても、大学の自主性、自律性を尊重する観点から、これまでの国の関与をできるだけ制限するものでありまして、文部科学大臣は、中期目標を策定するに当たって、あらかじめ、国立大学法人の意見を聞き、その意見に配慮することとしており、決して、一方的に定めるものではございません。
第三に、国が直接評価を行うことは教育研究の国家統制につながるのではないかとの御指摘であります。
国立大学の評価は、文部科学大臣が直接行うのではなく、社会、経済、文化等の幅広い分野の有識者を含め、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する者によって構成される国立大学法人評価委員会が客観的かつ専門的見地から行うこととしておりますほか、教育研究の状況については、学問の自由を踏まえ、ピアレビューによる専門的評価機関である大学評価・学位授与機構に評価の実施を要請し、その結果を尊重することとしているなど、教育研究の特性に十分配慮した仕組みとしております。
第四に、本法案では大学が政府の言いなりになり、まともな教育研究ができなくなるのではないかとのお尋ねであります。
本法案における大学の特性を踏まえた種々の仕組みを前提とすれば、各国立大学は、より大きな自律性のもとで、みずからの目指すべき理念や目標を明確にしつつ、教育研究の高度化や個性豊かな大学づくりに取り組むことが可能になるものと考えております。
第五に、法人化に伴い、長期的・基礎的研究分野が敬遠されるのではないかとの御指摘でございます。
国立大学の法人化は、長期的・基礎的学問分野の研究の推進など、従来から国立大学が果たしてきた役割を十分発揮できるよう、各大学の自律的な運営を確かなものとするためのものであり、法人化の結果、基礎的な学問分野の教育研究がおろそかになるようなことはないものと認識いたしております。
第六に、この法案は学長の専決体制ではないかとのお尋ねであります。
法人化後の国立大学においては、学長は、自主性、自律性、自己責任の拡大に伴い、経営面と教育研究面の双方の責任者として、学内及び学外の意見を適切に勘案しつつ、強いリーダーシップと経営手腕を発揮していただくことが肝要と考えております。
そのような観点から、今回の法案では、重要事項に関しては、学長の決定に先立ち、役員会の議を経ることとするとともに、審議機関として教育研究評議会、経営協議会を設置するなど、慎重な制度設計を行っているものでございます。
第七に、法人化後の教職員の身分保障についてのお尋ねです。
憲法上保障されている学問の自由に由来する大学の自治の基本は、教員の人事を大学自身が自主的、自律的に行うことにあると考えます。
教員人事に関する事項については、教育研究に関する重要事項を審議する教育研究評議会の審議を経ることとされているところであり、各大学においては、教員の人事に関する方針、基準、手続についての同評議会の審議を踏まえ、これに基づいた適切な教員人事が行われるものと考えております。
第八に、現行の教員等による学長選挙は保障されるのかとのお尋ねでございます。
本法律案では、法人化後の学長選考については、国民に対する説明責任の重視や経営面での学長の重い責任等にかんがみ、学内者と学外者で構成される学長選考会議が選考を行うこととしておりまして、したがいまして、具体的な選考手続についても、各国立大学法人の学長選考会議において定めることとなります。
第九に、国立高等専門学校の独立行政法人化についてのお尋ねでございます。
学術の中心として深く真理を探究することを本質とし、制度的にその自治が保障されている大学とは異なり、高等専門学校は、実践的技術者の養成を目的とした教育機関であるため、大学の場合のような特例を設けることなく、独立行政法人通則法に基づいて法人化をすることといたしております。
独立行政法人化により予算面、運用面での自律性が高まり、国立高等専門学校機構に設置される各学校においては、校長のリーダーシップのもと、一層自主的、自律的に教育活動が展開されることになると考えております。
第十に、法人化後の学費についてのお尋ねでございます。
我が国の国立大学は、全国的に均衡のとれた配置により、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供する上で重要な役割を果たしておりまして、こうした役割は、法人化後も変わるものではございません。
法人化後の授業料の共通的な指標となる標準額は文部科学省令で定める予定ですが、その国が示す範囲の具体的あり方については現在検討を進めているところでございまして、各大学はその範囲内で授業料を設定することといたしております。
最後に、本法案について国立大学協会は合意しているのかとのお尋ねでございます。
国立大学の法人化は、我が国の大学制度の転換点となるべき大改革であります。当然ながら、文部科学省では、長年にわたり、国立大学協会を初め国立大学関係者と意見を交わし、議論を重ねてまいりました。
もちろん、法案そのものは政府の責任において作成し、国会に提出させていただいたものでございますが、法案提出に至る過程で、国立大学等の関係者に対する十分な説明を行い、理解を得ているものと考えております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣片山虎之助君登壇〕
○国務大臣(片山虎之助君) 石井議員にお答えいたします。
私どもの方の政策評価・独立行政法人評価委員会の勧告についてどうか、こういうことでございますが、御承知のように、国立大学法人につきましては、中期目標期間が終わりますと文部科学大臣が全体を見直す、組織や業務を見直す、こういうことになっておりますが、その場合に、国立大学法人評価委員会の意見を必ず聞く、こうなっているのです。それだけで終わるのじゃなくて、私どもの方の政策評価・独立行政法人評価委員会が、主要なものについては勧告できる。
何でそういうことにしているかといいますと、その主要なものについては、いろいろな並びやその他ありますので、他の独立行政法人と同じように二次チェックをする、国立大学評価委員会の意見の中立性や客観性を担保する、こういうことでございまして、他の独立行政法人と同じ扱いをさせていただいているわけであります。御理解を賜りたいと思います。(拍手)
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時四十一分散会