第156回国会 文教科学委員会 第20号
平成十五年六月二十六日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 六月十日
    辞任         補欠選任
     櫻井  充君     江本 孟紀君
     内藤 正光君     山根 隆治君
 六月二十五日
    辞任         補欠選任
     江本 孟紀君     櫻井  充君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         大野つや子君
    理 事
                仲道 俊哉君
                佐藤 泰介君
                山本 香苗君
                林  紀子君
    委 員
                有馬 朗人君
                有村 治子君
                大仁田 厚君
                北岡 秀二君
                後藤 博子君
                中曽根弘文君
                岩本  司君
                神本美恵子君
                櫻井  充君
                山根 隆治君
                草川 昭三君
                畑野 君枝君
                西岡 武夫君
                山本 正和君
   国務大臣
       文部科学大臣   遠山 敦子君
   副大臣
       文部科学副大臣  河村 建夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        巻端 俊兒君
   政府参考人
       総務省行政管理
       局長       松田 隆利君
       総務省行政評価
       局長       田村 政志君
       文部科学大臣官
       房総括審議官   玉井日出夫君
       文部科学省高等
       教育局長     遠藤純一郎君
       文部科学省研究
       振興局長     石川  明君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国立大学法人法案(内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人国立高等専門学校機構法案(内閣
 提出、衆議院送付)
○独立行政法人大学評価・学位授与機構法案(内
 閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人国立大学財務・経営センター法案
 (内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人メディア教育開発センター法案(
 内閣提出、衆議院送付)
○国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備
 等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

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○委員長(大野つや子君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十日、内藤正光君が委員を辞任され、その補欠として山根隆治君が選任されました。
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○委員長(大野つや子君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に総務省行政管理局長松田隆利君、総務省行政評価局長田村政志君、文部科学大臣官房総括審議官玉井日出夫君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君及び文部科学省研究振興局長石川明君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大野つや子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(大野つや子君) 国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の六案を一括して議題とし、質疑を行います。
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○委員長(大野つや子君) この際、遠山文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。
○国務大臣(遠山敦子君) 前回の委員会において櫻井委員から、昨年十二月に文部科学省が未定稿の資料を作成し、その中で、各大学に対し、中期目標(案)、中期計画(案)のほかに、個別の学部、研究科、附置研究所の単位での固有のより具体的な事項を記載した資料を文部科学省に提出するよう依頼しているとの御指摘がございましたが、その資料については、すべての大学に提出を依頼しており、その点、各大学の判断とした答弁は誤りがありますので、これを訂正し、おわびいたします。
 また、問題となりました御指摘の昨年十二月の資料そのものの作成経緯や性格等について御説明申し上げます。
 この資料は、昨年三月の調査検討会議の最終報告を踏まえ、同年四月以降、準備作業の検討を開始した国立大学協会から、各大学で検討を要すると考えられる事項のうち、各大学の自主的な準備作業の参考資料として中期目標、中期計画のイメージ的なものが必要であり、文部科学省として協力してほしいとの要請を受け、作成したものでございます。
 実際の作成のプロセスといたしましては、国立大学協会からの要請を受けました後に、昨年十一月に、国立大学協会の関係委員会に「検討素案(未定稿)」を提出し、国立大学協会側の意見を伺い、その意見を踏まえて更に修正、簡略化した資料を作成して、同年十二月に「案(未定稿)」として再度国立大学協会の関係委員会に提出したものでございます。
 その後、本資料は、同委員会における会議資料の一つとして国立大学協会から各大学に配付されましたことから、今日に至るまで各大学における自主的な準備作業の参考のための資料として活用されているものと承知いたしております。
 なお、資料では、中期目標、中期計画の記載内容について、一つは、原則として全学的な視点からのものに限る、二つには、各大学の特性を踏まえ一層の個性化を図る観点を考慮しつつ明確かつ簡潔に記載するとしており、この点はこれまでの国会審議における文部科学省の答弁と矛盾するものではないと理解しております。
 また、中期目標、中期計画のほかに、個別の学部等の単位での固有のより具体的な事項を記載したものについては、中期目標、中期計画に記載された内容の背景等を理解するための参考情報として提出を依頼したものでございます。
 この昨年十二月の資料については、資料の性格やスケジュールなどの点で配慮が必ずしも十分でなく、結果的に関係者に過度の負担を招いたとの指摘があることについては誠に遺憾でございます。この点については、速やかに資料の正確な趣旨を大学に対して徹底することといたします。
 また、各大学におきましては、法案が国会で成立した場合に備えて様々な準備が進められてきましたが、法案の国会提出以前の段階から文部科学省名義の資料が示されたことにより、文部科学省による指示があったと受け止められて法律に基づく中期目標、中期計画そのものの作成が進められてきたとの指摘や、その結果として、国会における審議の尊重という観点から問題だとの指摘を受けたことについては、誠に遺憾であり、深くおわびをいたします。
 今後、法案をお認めいただけた際には、中期目標、中期計画の原案はあくまで法人である各大学が主体的に検討すべきものでありますので、法案に関する国会審議の状況を踏まえ、大学に対して改めて必要な情報や資料を適切に提供することといたします。
 なお、平成十六年度概算要求作業は、新制度への過渡期のために、中期目標、中期計画の策定作業とは直接関連しないものとして進められているところでございます。
 以上でございます。
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○委員長(大野つや子君) 質疑のある方は順次御発言願います。
○櫻井充君 おはようございます。民主党・新緑風会の櫻井充です。
 遠山文部大臣から、今、謝罪の表明がございました。一定の評価はいたしますが、私としては不十分な点があると思っています。このこと、内容について今日は触れる予定がなかったんですが、今朝、こういうメールをいただいたので、是非、大臣、もう一度考えていただきたいことがあります。
 これは、山形大学の前理学部長が亡くなったそうなんですが、この方が、昨年の十一月の五日に急性の心不全で亡くなった。この方は、全学の中期目標、もうこの時点からやっていらっしゃったんですね、大臣。全学の中期目標、中期計画の取りまとめ役であった前理学部長が、土日返上の連日の夜遅くまでの作業の中亡くなったと、こういうメールでございます。
 これの真偽は今朝、今読んだ段階なのではっきりしたことは分かりませんが、私は、この間、大臣にちょっとお話ししましたとおり、大臣もだまされているんじゃないだろうかと。だまされているという言葉が悪ければ、きちんとした報告が上がってきていないんじゃないだろうかと。要するに、学長の方々が果たしてその現場の人たちの苦労を代表して言っているのかどうか、そこの点が私は大臣に十分伝わっていないんじゃないのかなと、そういう感じがいたしております。
 そこで、まず、一つお願いがあるんですが、現場の先生方がどれだけ苦労しているのかということをまず、大臣、きちんと直接お話をお伺いしたらどうですか。そういうホットラインを設けるとか、金融庁も例えば貸し渋り、貸しはがしのようなホットラインを設けました、そのことによって随分声が上がってきております。
 大学関係者の中からもちろん声が上がったとしても、どこどこ大学のだれだれという名前だとすると、これは本当に関係者の方々が言っているとおりですからそのまま申しますが、文部科学省の仕打ちが怖くて意見が言えないと、そうおっしゃっているんですよ。ですから、この国会の場で我々は代弁者として話をしていますが。
 もしこのような内容のお話をされるんであるとすれば、私の言っていることが間違いなのかどうか、自分たちの官僚に聞くのではなくて、直接その大学の関係者に話を聞いていただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
○国務大臣(遠山敦子君) 今のお話はお伺いしていて誠に心の痛むところでございます。謹んで御冥福をお祈りしたいと思います。
 私もできるだけ多くの方の御意見を聴いて行政を進めるというのは大変大事だと思っております。ただ、私の時間というのは大変限られておりまして、すべての方が直接お話ししていただくような時間を取ることはほとんど不可能でございます。しかし、何らかの、そういういろんなお考えなり意見なりを受け付ける、今メールとかいろんな方法ございますので、そういったことについては常に耳を傾けるという姿勢で参りたいと思いますし、直接私だけでなくても、我が省の者を通じて、そして最終的に整理した上で教えてもらうということもあろうかと思いますが、私は、広くそういういろんな意見というものに耳を傾けて仕事をしていくということは、もう当然私どもの責務だというふうに考えております。
○櫻井充君 お忙しいのは分かります。しかし、百年に一度の大改革だというお話です。だとすると、もっと広く多くの方々から意見を聴くのは私は当然だと思っています。
 委員長に提案ですが、是非、その現場の先生方の参考人を、参考人招致をして、そのような会を設けていただきたいと思いますが。
○委員長(大野つや子君) はい、これはまた理事会で諮りたいと思います。
○櫻井充君 よろしくお願いします。
 それでは、まず最初に今日は総務省にお伺いしたいんですが、前回の内藤委員の質問に対して、通則法で定められています独立行政法人評価委員会、この位置付けがはっきりいたしませんでした。改めてこの評価委員会の評価する内容について御説明願えますか。
○政府参考人(田村政志君) お答えいたします。
 国立大学法人の評価におきまして、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会、独法評価委員会と略称させていただきますけれども、この委員会は、個々の国立大学法人を直接評価するものではなくて、国立大学法人評価委員会が各国立大学法人について行った個々の一次評価の結果を対象といたしまして、把握すべき実績が適切に把握されているのか、評価基準の当てはめが妥当か、あるいは適切なデータに基づいているか、評価結果の根拠、理由は明確かつ妥当かといったような観点から二次評価、すなわち評価結果の評価を行うという役割でございます。
○櫻井充君 ここに資料がございます。独立行政法人の主要な事務及び事業の改廃に関する勧告の方針についてと。これは独立行政法人評価委員会が決定したものでございまして、その素案でございます。ここの中に基本的な考え方、勧告の位置付け及び性格というのがございまして、この中にこう書いてございます。「本勧告は、年度評価及び中期目標期間評価に対する当委員会の意見とは異なり、各府省の独立行政法人評価委員会による第一次的な判断を前提に当委員会が第二次的な判断を行うという性格のものではなく、年度評価の結果について評価を行う際に得られた情報、新たに収集した情報等をもとに、当委員会が、法人の主要な事務及び事業の改廃に関し、自ら直接判断を行うという性格のものである。」と。
 違うじゃないですか。国会をなめているんですか。済みません。この間もこんな調子の答弁なわけですよ。こんなだましありますか。済みませんが、質問できません。
 これ見てください。違う答弁されてはたまりません。
○委員長(大野つや子君) しっかりした答弁をしていただきたいと思います。
○櫻井充君 駄目だ、駄目だ。まずこれ確認してください。全然違うじゃないか。
○政府参考人(田村政志君) ただいまお引きの条文は、独立行政法人通則法の三十五条の規定でございます。
 三十五、準用されております、これはこの大学の、国立大学の独立法人法においても準用されている部分でございますけれども、この部分は、私どもは、中期計画、中期目標期間の終了後に、大学だけの問題ではなくて、各独立法人に対しまして中期目標期間終了後に各府省に置かれています評価委員会、そしてこの総務省にあります独法評価委員会がそれぞれ今まで専門家の立場から評価してきた経緯がございますので、携わった各委員から主務大臣に対してそれぞれ、この三十五条で申しますと、その結果、所要の措置を講ずるということで、評価委員会の意見を聴いて次の中期目標、次スタートするについてそれを、各府省に置かれている委員会の意見を聴きなさいということと、それから、総務省の独法評価委員会の方は、今までやってきたことを、知見がございますので、独立行政法人の主要な事務及び事業の改廃に対して主務大臣に勧告をすることができるということで、両方相まって次のステップに、各独立法人が中期目標を立てるときに今までの携わった評価を参考にしてもらうと、こういうことでございまして、通常に毎年度行うのは、先ほど申し上げましたとおり、各国立大学法人の評価委員会が行ったものについて二次評価を行うと、こういう法律の構成になっておるわけでございます。
○櫻井充君 ちょっとちょっと、ちょっとだけこれ見てくださいよ。それは答弁違う。(発言する者あり)速記止めてもらってください。委員長、委員長、速記止めてください。
○委員長(大野つや子君) ちょっとお待ちくださいませ。(発言する者あり)
○櫻井充君 速記止めてください。
○委員長(大野つや子君) ちょっと、それじゃ、速記止めておいてください。
   〔速記中止〕
○委員長(大野つや子君) 速記を起こしてください。
 ただいまの櫻井充君の質問でございますけれども、今の問題点、「二次的な判断を行うという性格のものではなく、」ということに対してのはっきりした、しっかりしたそのお答えがいただきたいということでございます。
○政府参考人(田村政志君) 国立大学法人……
○櫻井充君 時間がないので、ちょっと端的に言ってもらえますか。十二分しかないんだから。
○政府参考人(田村政志君) はい。二つ評価の問題がございまして、二次評価を行うというのは、国立大学の評価委員会から出たものに対して評価を行うということが一つでございます。それから、今、先生がおっしゃった中期目標期間が終了後にどういう行動を私どもの独法評価委員会がするかということになりますと、通則法の三十五条で言わば直接的に主務大臣に勧告をすることができると、こういう規定になっておりますので、二つありまして、通常の業務については二次評価ということで法律は構成されております。
○櫻井充君 そうすると、前回の内藤さん、内藤委員の質問に対しての答弁と違うじゃないですか。転々、ころころ変わっているじゃないですか。
 前回は、最初に二次的、最初は自分たちで情報を集めてきてそして改廃までできると言って、慌てて今度は答弁して、その二次的なものだとおっしゃって、今度になったら両方だって。さっき私が最初に聞いたとき、全然違うことを言っているんじゃないですか。こんなんで本当にきちんとした議論ができますか。
 あなたじゃ駄目だよ。これはきちんと大臣を呼んでいただいて、総務省と文部科学省と合同審査しなきゃ私は駄目だと思いますが。
○委員長(大野つや子君) もう一度しっかりした答弁をお願いしたいと思います。
○櫻井充君 じゃ、あなたの答弁は間違っていた、前回の内藤委員に対した答弁も不十分であった、まずその点を認めてくださいよ。
○政府参考人(田村政志君) 前回の答弁で、二次評価ということで大変誤解を招いた答弁をしたことについては申し訳なく思います。
 それで、今申し上げましたように、私どもの評価は個別の国立大学法人そのものに直接行うのではなくて、評価委員会が行ったものに対して、大学の評価委員会が行ったものに対して二次評価を行うと、これをひとつ整理をしていただければと思います。
 それから……
○櫻井充君 訂正、まずするかしないか言ってくださいよ。今の御答弁だっておかしいじゃないか。
○政府参考人(田村政志君) いや、それで、前回、今いろいろな議論のやり取りの中で誤解を招いたようなことがあるとすれば、私どもの方は反省をいたします。
○櫻井充君 そんな御答弁ないだろう。
○政府参考人(田村政志君) それで、今私が申し上げているのは、そういうことで、二つ、先生の質問の中に二つ要素がございまして、通常の言わば私どもの独法評価委員会が行う二次評価のことと、それから、中期目標期間終了後に行う権限と申しますか、勧告することができるという独法通則法の三十五条の規定がもう一つございますということでございまして、そこのところは、二次評価ではなくて、今までの中期目標期間あるいは中期計画を見てきた中で、次、どういうふうにやっていったらいいかということで、主務大臣に必要だったら勧告をすることができる、こういう規定があるということでございます。
 その辺で答弁が混乱していたとすれば、大変申し訳なく思います。
○櫻井充君 答弁、混乱していたと。自分たちの責任じゃないですか。しかも、今朝、最初に聞いたときに、その自ら判断しての部分は言わないじゃないですか。都合の悪いところを隠しているんでしょうが。これを今、各省庁に回しているんでしょう。各省庁の意見、聞いているんでしょう。十日の時点で、じゃ、この素案ができ上がっていなかったかというと、できているんですよ。もう九日の時点で回しているじゃないですか。これ、ありますよ、ちゃんと。十日の内藤さんが質問したときだって、あなた方はこのことをチェックしているはずだ。チェックしているにもかかわらず、いい加減な答弁繰り返しているんじゃないですか。
 時間がなくなりましたけれども……
○委員長(大野つや子君) 済みません、意見をまとめてください。
○櫻井充君 私は、あなたのちゃんと責任の所在をはっきりさせていただきたい。国会での答弁をきちんとしなかったということに関して、私は何らかの謝罪なり責任は取っていただかなきゃいけないと思っています。
○委員長(大野つや子君) よろしゅうございますか。
○櫻井充君 はい。
○草川昭三君 公明党の草川です。
 前回の質問に引き続きまして、国立大学附属病院の施設整備に係る借入金の債務は、平成十四年度末で約一兆二千六百億円あるという答弁がありました。法人化をした場合の償還は毎事業年度の償還計画を立てて行うということでございますけれども、長期資金の調達方法についてはどのように対処されるのか、お答えを願いたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) お答えを申し上げます。
 御指摘のとおり、平成十四年度末現在におきます附属病院整備に係る長期借入金及びこれに係る予定利子額との合計額は約一兆二千六百億円となっております。法人化後は独立行政法人国立大学財務・経営センターに債務を一括して承継させるとともに、関係の国立大学が同センターに対し一定の債務を負担することとしていますが、その償還は、国立大学法人が借入れ時の条件を踏まえ引き続き附属病院収入により確実に償還を行っていくこととなります。
 そこで、国立大学の法人化後の施設整備についてでございますが、基本的には施設整備費補助金で措置されるということを考えておりますが、引き続き附属病院の施設整備等を確実に実施していくためには、安定的に資金調達が可能な長期借入金の制度を併せて活用していくことがやはり必要不可欠であると考えております。これらの施設整備につきましては、当面、独立行政法人国立大学財務・経営センターを通じた財政融資資金からの長期借入金又は同センターの債券発行による資金の借入れを行い、その財源とすることを想定しているわけでございます。
○草川昭三君 二番目の質問ですが、現在、科学研究費の補助事業というのがあるわけですが、これは、我が国の学術を振興するため、独創的あるいは先駆的な研究を発展させることを目的としているわけでございますが、この交付を受けようとする者は前年に研究計画調書を提出をし、科学技術・学術審議会等の審査を経て交付をされてきておりますが、法人化した場合の取扱いはどういう形になるのか、お答え願いたいと思います。
○政府参考人(石川明君) 科学研究費補助金についてのお尋ねでございますけれども、科学研究費補助金は、研究者の自由な発想に基づく優れた独創的、先駆的な研究を格段に発展をさせるということを目的としておりまして、国公私立大学等に所属する研究者に対して研究助成を行うという制度でございます。
 それで、今、先生がおっしゃいましたように、研究計画調書の提出、これは大学ごとに取りまとめて行っておりますけれども、そして、審査、補助金という、補助金の交付といったような一連の手続が取られるわけでございますけれども、国立大学が法人化した場合におきましても、これらの基本的な手続の流れ等につきましてはこれまでと同様でございまして、特段の変更は今のところないものと私ども考えております。
○草川昭三君 同様でやるということですね。
 この科研費の交付を受けて研究を行った者は、研究の成果報告書の提出ということを、公開するということになっておりますが、法人化した場合も同様なことになるのか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(石川明君) この科学研究費補助金につきましては研究成果を社会に還元するということが大変重要な要素でございまして、ただいま先生からお話がありましたように、その成果の公開というようなことが求められておるところでございまして、現実には国立国会図書館等において保管、公開されたり、あるいは各大学の図書館に置かれて公開されているところでございます。
 この点につきましても、国立大学が法人化した場合におきましてもこれまでと同様の取扱いをすることと考えておりまして、特段の変更というようなものはないと思っております。
○草川昭三君 どうして私がそういう質問をしたかというと、これまでこの科研費の研究成果報告書というのは提出されていない、研究成果が公開されていないままになっているとして、改善措置が会計検査院の方から指摘を過去されているわけです。幾つかの指摘をされておりまして、かなりこれはしつこく会計検査院から何回か言われているんでしょう。何回か言われているけれども、実際は現場からは提出をされていない。
 今後、法人化した場合のその成果報告書の提出はどういうように指導されるのか、この際、念のためにお伺いしておきたいと思います。
○政府参考人(石川明君) ただいま御指摘のありました研究成果報告書の未提出の問題でございますけれども、先生御指摘のとおり、平成九年度の決算検査報告におきまして、一部、未提出になっているという状況を改善すべきであるというような御指摘を受けたところでございまして、この点については私どもも大変遺憾に思っているところでございます。
 この御指摘を踏まえまして、研究成果報告書につきましては、改めてその研究者の責任においてしっかり提出されるべきものであるということの周知徹底を図りますとともに、また、これが期限までに提出されない場合には、提出をこちらの方から督促をしておるということでございます。この結果、その指摘された当時に比べますと、未提出という状況は着実に改善されてきておるというふうに考えております。
 このような取扱いにつきましては、法人化、国立大学の法人化後におきましても特段のこういった手続とか基本的な在り方については変更を行うことは考えておりませんけれども、今御指摘のありましたような、こういった未提出の状態ということは好ましくないことでございますので、研究者やその所属機関に対しましては、一層の注意喚起ですとか働き掛けをこれからも積極的に行ってまいりたいと、このように考えております。
○草川昭三君 少し視点を変えますけれども、新しい法人化、新法人では教授会の位置付けというのがどのように規定されているのか。
 学校教育法の五十九条では、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」と規定されているのはもう御存じのとおりであります。新法には教授会についての規定がないのではないかと私は思うんですが、教授の先生方のお話を聞きますと、教授会の自治の精神が弱くなるのではないかという危惧が示されていますが、その点についての見解はどうでしょう。
○副大臣(河村建夫君) この国立大学法人制度においては、各国立大学法人の自主性、自律性の拡大を図っていくということが大きな視点でございます。そういう面から、内部組織については可能な限り法人の裁量にゆだねるということが原則になっておるわけでございます。こうしたことから、どのような教育研究組織の単位にどのような形で教授会を置くかということについては法人の定めにゆだねられることになるわけでございますけれども、今、委員御指摘の学校教育法第五十九条の規定に基づいて引き続き教育研究に関する重要事項を審議する機関としての教授会、これが置かれるということについては変わりがないわけであります。
 現在、その教授会の役割については、現時点では国立学校設置法において、学部又は研究科の教育課程の編成に関する事項、また第二点として、学生の入学、卒業又は課程の修了その他その在籍に関する事項及び学位の授与に関する事項、その他当該教授会を置く組織の教育又は研究に関する重要事項を審議するものと、このようになっておるわけでございます。
 法人化後も、先ほど申し上げましたように、学校教育法第五十九条の規定において教授会が置けるわけでございまして、教授会は大学運営においても引き続きこうした重要な役割を果たしていくということが求められておりますし、それができるわけでございますので、草川委員御指摘の御懸念の点はないものと、こういうふうに考えております。
○草川昭三君 ちょっとここで私、話がこの法案とは外れるんですが、実は国立大学におけるこの教授会の影響は変わりないというような答弁ですが、実は私立大学の側から見ますと、この法案を、いろいろな私立大学の方々も注目をしておみえになるわけです。
 それで、いずれこの私立大学にもこの法案の影響は広まっていくと思うのでございますけれども、特に私立大学の場合は理事会と教授会の対立が非常に今日までたくさんあったと思うんです。少しずれますけれども、このような私立大学における対立の原因はどこにあったんだろうかということを、この際ついでながら、ちょっと答弁ができるならお答えを願いたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 私立学校制度におきましては、設置者でございます学校法人が大学の管理運営全般について責任を負うものでございまして、通常、学校法人に置かれる理事会がその意思決定機関となっているわけでございます。他方、大学の組織としまして、教育に関する重要事項を扱ういわゆる教学組織としての教授会が設けられてございます。
 理事会と教授会との関係をどう位置付けるかということにつきましては、設置者としての各学校法人の判断にゆだねられておるわけでございますが、理事会の権限が強いもの、教授会の意見が理事会の意思決定に大きく影響するものなど、それぞれの大学の伝統や方針によって実態は様々であると、こう理解してございます。
 一般的には、大学運営を円滑に行っていくためには、学校法人の理事会と教授会の教学組織との役割分担を明確にしながら両者間の意思疎通を十分に図っていくことが重要でございますが、経営、教学、それぞれの機関の権限や手続が不明確な状態である場合など、例えば教員人事について教授会での結論と理事会での結論が異なった場合にどちらを優先するかということなどが問題になるなど、御指摘のような事態が生じるおそれがあるんではないかと、こう考えておる次第でございます。
 このため、それぞれ私立大学におきましては、経営と教学とのそれぞれの権限、役割をはっきりさせて、両者の基本的な関係を相互に理解した上で十分な連携と意思疎通を図るということが必要であると、こう考えておる次第でございます。
○草川昭三君 余り横道にそれてはあれですからまた戻しますが、この新法人は国から運営費の交付金と施設費補助金を受けることになるわけですね。この法人化後も会計検査院の検査対象に私はなると思うのでございますが、従来と比べてどのような変化が想定されるのか。また、独立行政法人は企業会計を原則として採用をすることになるはずですけれども、会計検査人の監査と、企業会計の会計検査人の監査と従来の会計検査院の検査との関係が、ちょっと私、問題が出てくるんではないかと思うんです。
 それで、これはもう既に国立大学等の独立行政法人化に関する財務会計制度委員会のいろんな審議というんですか、検討なんかをなされてみえるようでございますが、それと併せてお答えを願いたいと、このように思うわけでございます。
○副大臣(河村建夫君) 国立大学法人に対しましては、資本金の全額について国が出資するということが予定をされておるわけでございまして、会計検査院の検査の対象となってくるということでございます。
 具体的な検査方法については、文部科学省がこれを具体的にどうするということについて触れる立場にはないのでありますが、会計経理全般に関しては、会計検査院法によりまして、会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性の観点から検査がされると、こうなっておるわけでございます。
 また、すべての国立大学法人には、財務諸表、事業報告書また及び決算報告書、これにつきましては公認会計士又は監査法人の中から文部科学大臣が選任する会計監査人の監査を受けることになっておるわけでございます。つまり、法人の会計経理全般に対して行える会計検査院の検査に対して、会計監査人は財務諸表を中心にその内容が正しいかどうかということを監査すると、こういうことになるわけでございます。
 さらに、各法人には、会計監査人の具体的な職務内容については、各法人と会計監査人との間で締結される会計検査契約において定められると、こうなっておるところでございます。
 さらに、監事の行う監査がございます。これは財務内容等の監査を含む業務の能率的かつ効果的な運営を確保する目的で行われるものでありまして、具体的な監事の職務内容については各法人が内部規定で定めると、こうなっておりまして、このように監事は会計検査を含む法人の業務の全般的な監査を行うのに対して、監査法人は複雑かつ専門的な会計経理に関し専門的立場から監査を行うと、それぞれが補完をし合ってということでございまして、委員御指摘の会計検査院そして監査法人の監査、さらにその上に、その上にといいますか、内部のあります監事の監査、こういう形でこれからの法人の運営の遺漏なきを期していくと、こういうことになっていくわけでございます。
○草川昭三君 そこで、ちょっとこれ私、質問通告していないんですけれども、独立行政法人会計基準研究会というのが開かれておる中で、実は今答弁がございましたように、会計検査人の監査と検査院、会計検査院の関係については、理論上は同一の事項についての結論が異なる場合もあり得ないわけではないという説明があったというその議事録があるんですよ。
 それで、これは将来、そういう議論があったというのはこれは非常に重要だと思うんですよ。理論上は見解が異なる場合はあってしかるべきだと思うんです、国の立場から見に行くわけですから。あるいは、私どもも、国立大学のいろんな研究室の中のいろんな資材、材料、研究材料等についても、たしかあれ五年間は国がしっかりと検査をして見ていかなければいけないが、例えば教授が退社をすると、その教授がいたときに購入した書籍あるいは若干のいろんな備品等は、もう国から離れてしまうんだそうですね。持っていってもいいんだそうですね。だから、新しい教授はまた新しく買換えをしなきゃいけないというような問題点が現場には多いんだそうですよ。
 だから、そういう点の視点は国の会計検査院からは厳重な監査が要求される、あるいはメンテというんですか、保管の責任が追及される。ところが、企業会計の立場から言うならば、そこはもういいじゃないですかということになるのか逆になるのか、ちょっと私、分かりませんけれども、この研究会では、理論上は同一の事項について結論が異なる場合もあり得ないわけではないという説明があったということは、今日ここで答弁できなければ改めて、これ私、絶対出てくる話ですから、後日でいいですからきちっとそれに対する見解を賜りたいと思います。これは一つ要望です。これはもう事実そういうことが議論になっていますからね。
 それから、いろいろと各要請文なんかの中に、見ていますと、新法人化することによって会計事務が煩雑化するおそれが指摘をされているわけですね。そういうことに対して、なるべく簡便化をしたいというようなことを言っておみえになりますが、その簡便化についての見解を賜りたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学法人になりますと、企業会計原則が原則的に適用されることになります。
 そうなりますと、貸借対照表を始めとした財務諸表の作成が求められるわけでございまして、これまでのような特別会計という形でやってきた方式とは違うわけでございます。その意味で、新たな会計事務が生じるわけでございますが、一方で、法人化により会計事務が軽減される面があるわけでございます。
 例えば、国の会計法令の適用が基本的になくなるわけでございますので、例えば、毎月行うこととされております歳入の徴収や支出に関する報告書といった国の会計法令に基づく各種報告書の作成、提出が不要となります。それから、会計検査院に提出することとされております計算証明関係書類につきましても、他の独立行政法人の場合、大幅な簡素化が図られているところでございます。
 具体例でいいますと、かなりの計算証明書類が今要るわけでございますが、これは大きな総合大学でございますけれども、今、五十六万三千枚要るわけでございますが、これはもう要らなくなるということでございます。その他、これまで毎月取っていたような徴収済額報告書でありますとか支出済額報告書でありますとか、こういうものがなくなりますし、そのなくなるものの一覧も大変な膨大なものになるわけでございます。
 文部科学省としましては、むしろトータルでは軽減の方向であると考えております。ただ、新しい会計事務に移るということで、今の準備段階におきましては、新たなそれへの適応ということでいろんな仕事があるかもしれませんが、トータルとして見れば、これは事務が簡素化になるわけでございますし、また、そうでなくてはならないというふうに考えております。
○草川昭三君 今の答弁で分かりましたけれども、もう一度同じような質問になるかも分かりませんけれども、今、五十六万枚の膨大な書類は今回は簡素化されるというような答弁があったわけですが、やはり人事だとか会計事務のいろんな報告書等々が一番煩雑だとどうも言われておるようなんですね、現場の方々にお話を聞きますと。それはひとつ解決をしますよというお話でございましたが、今まででも、国立大学の事務の簡素化、合理化ということはずっと歴代指導してみえたと思うんです。
 今度の法案では、いわゆる新しい法人の長である学長の選考の手続規定などは通則法と比べて非常に新たな特色があると私は思うんです。その特色を、大学の自主性、自律性をどのように保ちながらそれを担保していくかというところが問題だと思うんでございますが、いわゆるこの新しい法人になって、自主性、自律性に基づく運用上の裁量の範囲というものをどこで線引きするのか。新しいマニュアルを作っていくのか、あるいは将来の問題として更に付加していくことになるのか、ちょっと回りくどい質問になって恐縮でございますが、お答えを願いたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 今、自主性、自律性と、それからいろんな事務的な手続の問題ということの御指摘がございましたけれども、大学が運営していく上での裁量を大幅に拡大をする、そしてその裁量をしっかりと活用できる責任ある運営体制の確立を図るということがこの法人の目的でもあるわけでございますけれども、御承知のように、そのためにはいろんな、どうしたらいいのかという問題も生じてくるわけでございます。
 そういう問題については、通常、独立行政法人の例を見ましても、そういった問題についてのマニュアル的な指針等を示すということはしてございません。したがいまして、国立大学法人についても、基本的には各大学の工夫に任せるということになると思いますけれども、ただ、ある程度統一的な事務処理方針というものがあった方が大学側が作業する上で効率的に処理できるのではないか、負担軽減に資する点もあるのではないかということもあるわけでございまして、今後、そういった意味で、大学側の意見も聴きながら、そういうものがあった方がいいのかどうかということについて、対応策について検討していきたいと、こう考えております。
○草川昭三君 いろいろな、私どもに今たくさんの陳情が各大学から寄せられておるわけですが、大体、非常に申し訳ないんですけれども、アバウトでございますが精査をしてみますと、やっぱり評価基準についての心配というんですか不満というんですか、これが一番多いようです。
 それで、評価される側から今申し上げたように非常に批判的な意見が出ておるわけですが、これは一つは、評価方法が十分に理解されていないというんですか、開発をされていないというとちょっとこれ言葉が正確じゃないかも分かりませんが、要するに適切な評価が期待できないと、こういうことを言ってみえるわけです。
 評価基準として、抽象的に、例えば良い教育研究とか社会貢献度というような基準を出されているわけですが、何を競争させ、どう評価するのかが明確じゃないじゃないかと、こういう提言というんですか要請があるんですが、この点についてどのように答えられますか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私も、確かに、評価というのは本当によく考えませんと、それのための事務にとらわれるというようなことになっては、全くこれは問題だと思っております。そのことについては十分注意をしたいと思っております。
 それで、国立大学の法人評価といいますものは、国立大学に対して国が責任を持って予算措置をするということを踏まえまして、その国費が有効適切に使用されたかどうかというものを国として検証する観点から実施するものでございます。
 その評価基準等については、今後、国立大学法人評価委員会、そこで検討されることになるのでありますが、今申しましたような評価の目的を踏まえて、抽象的な一定の基準をすべての大学に適用するというようなことは適当でないと考えておりまして、あくまでも、各大学の中期目標、中期計画に記載されたいろんな事項がございますね、例えば教育研究の質の向上、業務運営の改善、効率化、それから財務内容の改善、自己点検・評価及び情報提供等などでございますが、そういうものについて、その目標、計画に照らしてどの程度達成されたかということを評価するものであるというふうに考えております。
 具体的には、例えば教育研究の質の向上について申し上げますと、これ自体、目標の中にあるいは計画の中に、個別の中身ではなくて全学的な方針と実施体制というものを考えるわけでございますので、それについて評価をするということにつきましては、各大学の中期目標、中期計画の記載に即して、その大学として目指す人材育成がなされているかどうか、それから教育研究の実施体制はどのように整備されているか、それから教育研究の成果が地域の産業や文化にどの程度貢献しているか、あるいは研究の成果はその学問分野では国際的、全国的に見てどの程度の水準にあるかといった各大学ごとの中期目標、中期計画に照らしてその達成状況を評価することになるというふうに考えております。
 さらに、こうした国立大学法人評価における教育研究面の評価といいますものは、文部科学省自身がやるということではございませんで、大学評価・学位授与機構が担うということは、これは制度上明らかになっているわけでございます。
 この機構におきましては、これまで、第三者評価というものを実施して、評価手法の確立に努めてきたところでございますけれども、その評価の在り方については今後とも継続的に改善に努めていく必要があるというふうに考えているところでございます。
○草川昭三君 今の答弁でもう入っているのか分かりませんが、いわゆる評価の質の違いということをもう少しやったらどうだろうという声が一方ではあるんですよ、陳情とは違いまして、そういう評価があるんです。
 教育機能といっても、例えば教養教育と実務家の育成には大きな質的な違いがあるんじゃないですかと。あるいは、研究面においても、独創的な研究と、あるいはまた産学連携による応用研究、あるいは基礎研究の積み上げ、こういうようにそれぞれ質が違うのではないだろうかと。こういうような違いを考慮して評価方法の種別化を図るべきではないだろうかという専門家の提言があるんですが、それはどのようにお答えになられますか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、国立大学の法人評価でございますけれども、各大学の特色や個性を踏まえ、各大学ごとに設定されました中期目標、中期計画に照らしまして、それぞれの事項が組織全体としてどの程度達成されたかを判定するというものでございます。教育研究の成果や実施体制、研究水準など様々な要素を勘案し、記載項目ごとにその内容に応じて評価することになるものと考えてございます。
 したがって、御指摘のように、教養教育あるいは実務家教育、あるいは研究の面におきましても基礎研究、応用研究といった違いもあるわけでございますけれども、中期目標、中期計画に照らして、そういった教育研究活動における性格の違いを踏まえながら、大学全体として取り組んだそれぞれの実績について評価が行われるということになるというふうに考えておる次第でございます。
○草川昭三君 ちょっとこれ飛躍した質問になりますけれども、大学の経営が成り立っていかないという場合、それはもう従来そんなことは考えられないんですが、あり得る場合があると思うんですね、少子化等を含めて。そういう場合に、教育の公的役割を果たすことができないということになるわけですから、当然のことながら整理・統合の問題も私いずれは出てくることがあると思うんですね。いわゆる廃校の可能性です。
 具体的に、どのような場合に廃校というようなことがあるのか。また、実際、廃校をする場合にはどのような課題を経て議論をされるのか、あるいは決定に持っていくのか。その際、文部科学大臣はどのような形で意思決定になるのか。そんなことは考えていないから答弁はありませんというならそういう答弁でもいいんですが、一応私は念のためにお伺いをしておきたいと思うんです。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学法人法案で準用をいたします独立行政法人通則法の第三十五条におきましては、中期目標期間終了時に、文部科学大臣は、国立大学法人評価委員会の意見を踏まえて、各国立大学法人の業務を継続させる必要性、組織の在り方その他その組織及び業務の全般にわたる検討を行いまして、その結果に基づき所要の措置を講ずると、こういう規定になってございます。所要の措置といたしましては、一般的には当該法人の廃止も含まれると、こう解されてございます。
 しかし、学術研究や高等教育の中核を担い、地域の活性化や学生の進学機会の確保に貢献するという国立大学の役割にかんがみますと、大学の再編・統合ということはある、言える場合はあると思いますけれども、大学の廃止そのものが行われるということは考えにくいわけでございます。
 ただ、例えば、これも極端な例でございますけれども、学園紛争が何年も続いて正常な教育研究活動が全く行えないといったような状況がもし仮にあるとすれば、廃校という可能性も出てくるんではないかと、こう考えてございます。
 この国立大学の設置、廃止につきましては、法人化後も最終的には法律で定められるものでございますので、仮にそういった異例の廃止の措置ということを取る際でございますけれども、文部科学大臣は国立大学法人評価委員会の意見を踏まえまして、また各大学や地域関係者の意向等も十分勘案をしまして国立大学法人法の改正案を立案をするということになると思います。そして、最終的には国会での慎重な御審議をいただいて決定をされると、こういった運びに、手続的にはそうなるというふうに考えております。
○草川昭三君 時間がもうあれでございますから、将来的に国立大学と公立あるいは私立大学の再編ということも、これは私は経済的には出てくるんではないかと思うんですけれども、設置形態を超えた大学の再編・統合ということが将来あり得るのかどうか、これはイメージとしてあるのかないのか、こういう機会に少しお伺いをしておきたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) これは考え方いろいろあると思いますが、国立大学に私学を編入するというようなケース想定いたしますと、これはやっぱり国費を伴うという問題でありますから、いろんな問題点を考えなきゃいかぬことじゃないかなと思いますし、逆に、私学がその地域の国立大学をもう吸収して私学でやっていこうというケースも、これはあるかも分かりません。
 イメージとしてはそれは、これからそういうことは考えられるわけでありますが、現時点では各大学それぞれの、国公私立役割を持っておりまして、特に経費負担の在り方等々課題もあるわけでございまして、今すぐにそういう動きというのは今現時点ではないんでありますが、しかし、将来を見越して既に大学間において単位を互換やるとか、あるいは共同研究をやるとか、学生交流をやるとか、あるいは産学官一緒にやろうとか、こういうような連携協力も既に見られておるわけでございます。そういうことで、私は、将来的にはそういう動きが出てくる可能性は十分あり得ると、このように思っております。
○草川昭三君 私立大学の経営が非常に困難だというのは全国的にも出ておるので、余分なことでございますが、念のために質問をしたわけであります。
 時間がどんどん過ぎていきますので、授業料のことをちょっとお伺いしたいと思うんです。
 国立大学の法人化後の授業料は、基準額を文科省が定め、一定の幅の間で各法人が自由に設定すると、こういうことになっておると思うんですけれども、各法人における学生納付金の設定水準と運営費交付金の額はどのように連動するのか、あるいはまた連動しないのか、学部別授業料の導入ということも当然考えられてくると思うんでございますが、その点についてどのようなお答えになるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 法人化後の授業料につきましては、これは国民の御関心も高いところでございまして、私どもも十分これについては配慮が必要だというふうに考えております。
 文部科学省令におきまして具体的な標準額それから一定の範囲を定めて、各国立大学法人はこれを踏まえて自主的に定める方向で検討しているわけでございまして、この標準額と一定の範囲の具体的な在り方については、学生に経済状況に左右されない進学機会を提供するという、これまで大学、国立大学が担ってきた役割を十分踏まえる必要があるわけでございますし、また各大学の自主的判断で特別の教育サービス提供を行って大学教育の充実を図るということも可能にするという観点も必要であるわけでございまして、そういった観点から今検討しているところでございます。
 国が示す標準額といいますものは、学生納付金収入額を積算するための基準額となるものでございます。これにより算出される納付金収入に他の自己収入を合わせた収入見込額と大学の支出見込額との差額が運営交付金として措置される仕組みとなっております。
 今お尋ねの件の、その標準額について今そういうことで検討中であるわけでございますが、学部別の取扱いを導入することにつきましては、希望する専門分野にかかわらず個人の努力に応じて教育の機会均等を確保するという国立大学の従来からの役割を踏まえながら慎重に検討すべきものだというふうに考えております。
○草川昭三君 もう時間が二分しかありませんので、二問一緒にお尋ねします。
 国立学校特別会計はこれで廃止されることになりますが、今後はこの特別会計はどうなるのかということと、もう一つは、各国立大学の財産を各法人に引き継ぐことになりますが、法人が所有する財産を処分する際に、国はどのような形で関与をするのか、あるいはまた、大学の意向はどの程度尊重をされ、どのような場合に処分行為の制限等がなされるのか、これは国有財産の関係もございますので、この二問を質問をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) まず、国立学校特別会計の件でございますけれども、国立大学の法人化に伴いまして国立学校特別会計は廃止をされるわけでございまして、したがって法人化後の国立大学法人の予算措置というのは一般会計において各国立大学法人ごとに運営費交付金、それから施設整備補助金を措置することになるわけでございます。
 そのときに、国立学校特別会計制度におけるメリットといいますか、長所がございました。法人化後におきましてもそのようなメリットが引き続き維持できるように、国立大学法人法等において所要の措置を講じているところでございます。例えば、附属病院施設整備のための長期借入金を行い得ることになっておりますけれども、法人化後も国立大学財務・経営センターを通じた長期借入れを行うと。それから、現在、各大学が土地を処分した場合の処分収入は国立学校特別会計の歳入となって全体の施設整備に充てられていますけれども、法人化後は処分収入の一部が国立大学財務・経営センターに納付されて、同センターの施設費交付事業の財源とする、こういったことが考えられているわけでございます。
 それから、財産処分の件でございますけれども、国立大学法人が所有する財産を処分するに際しましては、文部科学省令で今度定めますけれども、重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとする場合について文部科学大臣の認可を受けるという仕組みになっております。
 文部科学大臣の認可に際しては、他の独立行政法人と同様に可能な限り国立大学法人の自主性を尊重したいと考えておりまして、また文部科学大臣がそういう認可をしようとするときに、あらかじめ国立大学法人評価委員会の意見を聴くこととしておりまして、透明性の確保も図るというふうにしております。
 なお、文部科学省令で定める重要な財産の範囲は今考えております。今後検討いたしますけれども、当該財産処分の国立大学法人の財産基盤への影響度等を勘案して定めることとなりますので、現時点においては土地、建物、船舶、美術品等が考えられるというふうに思っております。
○草川昭三君 以上です。
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 私は、質問をする前に委員長にお願いをしたいんですが、この状況を見ていただきたいんですね、座席の状況を。これだけ重大な国立大学の法人法案が熱心に審議をされていて、傍聴者の方も今日は今までにも増してたくさんいらっしゃる。こういう中で、この委員会が、今、もしかしたら定足数に達していないんじゃないでしょうか。
 こういうことではちょっと審議できませんし、もっと与党の皆さんいらっしゃるのをお待ちするのは、私、全くあれですから、待っておりますので、定足数達成するまで、それからまた、もっとちゃんといらっしゃるまで待っております。
○委員長(大野つや子君) 定足数は達しているそうでございますので、このまま続けていただきたいと思います。(発言する者あり)
○林紀子君 ちょっと止めてくださいね、私の質問時間にこれ入ったらあれですので。ちょっと止めて、ちょっとどうするかは……
○委員長(大野つや子君) 定足数、足りているということでございますので、質問を続行していただきたいと思います。(発言する者あり)
○林紀子君 ちょっと止めて論議してください。私の時間に食い込んだら困ります。
○委員長(大野つや子君) 一度、ですからちょっとお聞きいただいて、余りにも、どこへいらしたか、ちょっとそれはありますね。
○林紀子君 そう、余りにも、余りにもひどいですよ。ちょっと止めてください。
○委員長(大野つや子君) していただいて……(発言する者あり)
○林紀子君 ちょっと待ちましょう。──速記止めてください。私の時間がどんどんたってしまいます。(発言する者あり)
○委員長(大野つや子君) ごめんなさい。定足数に足りていれば委員会というものは続行できるということでございますので、大変申し訳ないと思いますけれども、今急いでというよりも、どのような状態なのか私にはちょっとこれ分かりませんので、林先生、お続けをいただきたいと、このように思います。
○林紀子君 ちょっと、委員長が分からないのは分かりますけれども、やっぱりこういう状況の中でこんなに重大な法案が審議をされること自身が大変な問題だと思うんですね。ですから、どういう状況か調べる間ちょっとお待ちをして、私はまたスタートからさせていただきたいと思います。
○委員長(大野つや子君) 何か今こちらに向かっているということでございますので、そんなことでお続け願いたいと思いますが。
○林紀子君 それでは、私のカウントは八分からということでよろしいですね。それでなければ私の大変短い質問時間ですので、このことで時間を取られるというのは困りますので、それでお願いをしたいと思います。
○委員長(大野つや子君) 分かりました。はい。
○林紀子君 それでは急いで駆け付けてくださるということを前提にいたしまして、質問をさせていただきます。
 今回、審議が止まった根本には、この法案が出てもいない時点から中期目標、中期計画の原案を各大学に作らせていたと、こういう問題があるわけですよね。この点について、この冒頭、文部科学大臣は、法案の国会提出以前の段階から文部科学省名義の資料が提示されたことにより、文部科学省による指示があったと受け止められて法律に基づく中期目標、中期計画そのものの作成が進められてきたとの指摘や、その結果として、国会における審議の尊重という観点から問題だとの指摘を受けたことについては、誠に遺憾であり、深くおわびをするという表明をなさいました。
 これをすらっと聞いて、何となく引っ掛かって、私のところに真意が伝わってこないのは、この指摘やそれから審議の、国会審議の尊重という観点から問題だと指摘を受けたことにおわびをするという形なんですけれども、それでは文部科学大臣の本当のお気持ちというのは、国会審議を軽視したそのことについて、そのものについて本当に反省をなさっているのか、おわびの気持ちがあるのか、もう一度きちんと確認をさせていただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 国会審議の尊重につきましてはそこに述べたとおりでございまして、今法案を審議していただいておりますこの委員会における審議を尊重するのは当然のことでございます。
 そういうことで、国会軽視の気持ちというのは全くございません。
○林紀子君 当然であり、国会軽視は全くないという強い意思の御表明がありました。
 しかし、大臣、この中期目標や中期計画だけではないんですね。この資料以外に同じような未定稿という判こを押しました文部科学省の資料なるものが昨年の十月と十一月に大学に配られているわけです。今、おわびをなさったそのことと全く同じパターンがほかにもあるわけですよね。国立大学法人運営交付金算定基準、人事制度についての参考事項、国立大学法人の施設整備、大学法人における会計関係諸規程のイメージ。もっとあるのかもしれませんですけれども、私の今手元にあるものはこういうものがあるわけですから、こういうものによって各大学は作業を進めなくてはならない。
 先ほど、山形大学の理学部長さん、本当に大変な状況の中で心不全で亡くなった。私のところにもこのファクスいただいておりますけれども、教官だけではなく事務職員も過度の負担に追い立てられているんじゃありませんか。今、大学の現場は大変な怒りが渦巻いているわけです。この過度の負担をなくす、それはどういうことをやって過度の負担をなくすということなのか、そのことについても御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 先ほどの冒頭の私からの話で申し上げましたように、現在進められているいろんな大学における準備作業というものがあるというのは確かでございます。
 それら一連の事柄といいますのは、昨年三月、調査検討会議の最終報告が出まして、それを踏まえて四月以降にこの準備作業の検討を開始した国立大学協会の方から、各大学で検討を要すると考えられる事項のうち、何をしていいか分からないと。それで、それぞれの大学でいろんな準備が重なり、重複するというようなことを考えると大変であるということで、各大学の自主的な準備作業の参考資料として中期目標あるいは中期計画のイメージ的なものが必要であるというふうなことで文部科学省に対して協力の依頼があった、要請があったわけでございます。
 それは恐らく、私も、独立行政法人、別の独立行政法人への転換のときの責任ある立場にいたことが経験としてございますけれども、新しい事態にどのような形できちっと円滑に移行していくかということは、非常に初めての作業でございますので大変な心配もあり、またいろんな準備が必要であるということは事実であるわけでございます。
 そうしたようないろんな準備というものが一方で必要という中で、国立大学協会の側から、ある程度どういったようなものが必要であるのかということについての、準備ないし作業の段階で必要な参考資料として何が必要なのかについて教えてほしいというふうなことがあっていろんな参考資料といいますものをお示ししているわけでございます。
 そうしたことでございますので、恐らく、私は、大学の学長なり大学当局者というものはその資料の性格というものは分かってもちろんいるわけです、そちらの方から依頼があったわけでございますから。ただ、それらが作業の段階でいろんなその組織、複雑な組織でございますから、そういうところに通じて渡される際に、どうしても受け取る側が、未定稿でありますとか、あるいは、これは本当に準備のためのものでありますと、正式になったらまた別途というふうなところを読みこなすというよりは、それらのものが決まったようなものとして理解されていろんな作業があったのではないかということはもちろん想定されるわけでございます。そうした趣旨というものが十分に伝わっていないという点もあったのかもしれません。
 ですから、そういう点については、私どもとしては、大きな制度の変化といいますか、あるいはそれへの移行というふうなことがあるにしても、十分留意してやった方がいいというふうに思っているわけでございます。そうした指摘を受けまして、これについては重く受け止めているところでございます。
 そういうことで、先ほど申しましたように、資料の正確な趣旨というものを大学に対して徹底するという予定にしているところでございます。
○林紀子君 今、大臣のお話を聞いておりましたら、それは今までと全く同じ。中期目標、中期計画についても今までさんざんそういう説明をした。だけれども、それは間違っていたんだと。国会審議というのを無視したものだということを、絶対そういうことはやりませんというふうに断固としておわびをしながら、私がこれ、正に今申し上げましたこの資料なるものは、中期目標、中期計画、この資料と一緒に出されたものでしょう。国立大学協会から言われたから出したんですという、そういう説明は今までさんざん受けましたけれども、それがそもそも間違っているんだということで最初におわびをなさったんじゃないですか。全然反省ないと思うんですよ。
 それに加えまして、まだあるわけです。皆さんに資料をお配りしていただきたいと思います。
   〔資料配付〕
○林紀子君 移行経費の問題です。
 これは六月五日の本委員会で、九十五億二百万円を計上して会計システムの構築の準備を始めていると、そういう御答弁を大臣はなさいましたよね。それが大問題になりました。先ほどのお答えの中でも、今までの会計事務と異なるやり方になるんだと。これは、国立大学法人は正に独立行政法人の制度設計をそのまま使って企業会計原則ということになるわけですね。ですから、今までの会計の方式と根本から違ってくる。法案は今審議中でも、審議中で成立もしていないのに、この新しい国立大学法人の財務会計システムの導入、早々と始めるというのはどういうことですか。
○副大臣(河村建夫君) 法人化移行経費の問題、今御指摘があったわけでございます。
 御指摘のとおり、国立大学等における法人化に向けた準備作業のうちで、多額の経費を要する特定の作業について、平成十五年度予算において国立学校運営改善経費として百三十六億計上いたしております。
 これは、新会計システムの構築及び導入については、既に各国立大学において貸借対照表の作成とか財政情報の開示の必要性等について、各方面から御指摘を踏まえて、従来から企業会計を参考にした財務書類の作成等について検討、研究を重ねてきたところでございます。これは行革審の方からも指摘を既に受けておることでございまして、これは企業会計を参考にした財務書類の、財務諸表といいますか、財務書類の作成等について、これを作っていくそのための経費が要るということでありまして、今回、法人化に向かうわけでございますから、これを更に推進する必要があるということで所要の予算配分を行ったものでございます。
 もちろん、その本経費が対象とする事業内容自体は、ほかの多くの作業と同様に、あくまでも法案が国会で成立した場合に備えた準備作業の一環である、このように考えておるところでございます。
○林紀子君 これは、必ずしも国立大学の法人化ということではなくてもこういうことはやるんだというようなお話だったと思うんですけれども、それは違いますよね。前回のこの委員会での答弁で、玉井総括審議官がお答えになっているのは、正にこれは移行経費なんだと、国立大学法人に移行するための経費として計上しているんだということをはっきりお答えになりましたし、また、昨年の九月に出されました国立大学法人財務会計システムに求められる基本的な機能要件、こういうところで法人化を前提とするということをはっきり書いているわけですから、これは国立大学の法人化移行のための措置だということは明らかだと思うんですね。
 その九十五億二百万円、もう配分を始めているわけですね。私の手元には大学それぞれ幾ら配分されるのかというのもいただいております。北海道大学一億三千七百七十万円、東北大学一億五千六百四十万円、東京大学が二億三千二百五十万円。これは大きい大学の億の単位のところを読み上げたわけですけれども、このずらっとした一覧表があって、しかもその大学に配分されている予算に基づいて財務会計システムのコンピューターソフトの入札を始めている。
 その入札を始めている大学の一覧というのを今皆様方のお手元にお配りをいたしました。これはもう官報に告示をされておりますので、これを全部調べ上げたんですね。で、一覧にしたものです。この間、この委員会が止まっておりました。その間にも、加えて四大学がこの入札の告示というのを始めて、入札の公告というのを始めているわけです。八十九大学中、何と七十三大学がもう既に法律もできていないうちからお金は配分され、しかも入札を行っている。
 大臣、どうですか。これは国会審議無視そのものじゃありませんか。私は、これは先ほどの言葉、照らし合わせても、どうしても納得できません。どうですか、お答えいただきたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 先ほども御答弁申し上げたとおり、この経費が国立大学の法人化への移行を想定しているということ、これを否定するものではございませんが、しかしやっぱり法人化移行に当たっての準備経費あるいは移行経費という言葉を先ほども使わさせていただいたと思いますけれども、この本経費が対象とする事業内容そのものは他の多くの事業と同じように、作業と同じように、あくまでも法人化に向けての準備作業の一環であるということで進めておるわけでございまして、これは先ほど、今、委員からも御指摘ありましたけれども、いずれにしてもこのシステム化ということは進めていかなきゃならぬものでございます。
 特に、これが法人化するということになりますと、それがもうきちっとしなきゃいかぬということになっていくでしょうから、これは前倒ししてでもこの際でありますから急いでやりましょうということもあってこういう形になっておるわけでございまして、決して法律が通らなければできないというものでは私はないというふうに思っておるわけでございます。
○林紀子君 前倒しとおっしゃいましたね。だから、それは法律ができてからスタートすべきことなのに、どうして法律も、今審議中、どうしてスタートするんですか。そこを問題にしているんです。全然、ですから、今の河村大臣の言葉では、国会無視はいたしません、審議無視はいたしません、そこのところから外れているじゃないですか。そこが問題なんです。
 私は、ですから、こんな審議無視が次々次々と起こっているということでは、もう本当に許すことできません。こんなやり方ではこれ以上続けることはできないと思うんですよね。是非、どうするかというのを今すぐ御検討いただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 河村副大臣からお答えいたしましたように、これらの作業といいますものは、あくまでも法案が国会で成立した場合に備えた準備作業の一環でございます。
○林紀子君 成立した暁と言いますけれども、してないということはお認めになるわけですね。じゃ、どうしてお金を既に各大学に配分して、その大学が入札を始めているんですか。そこが問題なんですよ。絶対おかしいと思います。
○副大臣(河村建夫君) あくまでも準備のためにこれを進めるということ、これはやらなきゃいけないことだというふうに思っておるわけでありまして、これは、システム化ということは進めなきゃいけないことでもあるわけでございますし、その準備をするということ、これは準備作業の一環としてやるということは、これは当然の責務だというふうに思っておるわけでございます。
 労働安全衛生法の問題にしてもそうでありますけれども、これ法律が変われば今度新しくなるという、これは法律にかかわることだからということでもございますが、同じように作業としては進めなきゃいかぬということ、これは準備ということであって、あくまでも準備作業の一環であるということで進めさせていただいているということであります。
○林紀子君 ですから、先ほど未定稿という判こを押して、中期目標というのも、それからいろいろな準備作業というのもやらせているということが、そもそもこの審議の途中にやっていて、準備作業、準備作業ということで、本当に過労死の人が出るような形でまでやられている、そのことがおかしいと言っている。今度のこの会計システムの問題でも同じじゃないですか。どうしてそこが分からないのか、私は非常に不思議ですし、そういうことで、これは、国会審議は尊重しているんだ、そういうことは絶対成り立たないと思います。
 ちょっとこれは、本当にこの法案を審議をしていく上での一番根本的な問題だと思うんです。ですから、是非ちょっとここのところでストップをして、理事会でどうするかというのをやっていただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 法案の成立前からその諸準備を行っているということについて、国会における審議の軽視ではないかということでございますが、私は国会の審議に対してこれを軽視するとかということは全くないわけでございまして、またやるべきでもないわけでございます。
 国立大学の法人化といいますものは、日本の高等教育、それから学術研究の発展を図るという上で極めて重要な改革であると認識しているわけでございまして、来年四月に、この法案が成立させていただければ、その法人化を念頭に、四月の法人化というものがあるわけでございまして、それを念頭に関係法案の御審議をいただくために鋭意諸準備を進めているところでございます。
 もとより、国立大学を法人化するか否かにつきましては国会において御判断いただくべきものであるわけでございますけれども、法案の御審議をお願いする立場から申し上げますと、国会での御審議の結果、法案が成立した場合には国立大学への移行に遺憾なきを期するということも大事であるわけでございます。その意味で、文部科学省としては可能な準備は進めておくという必要があると認識しているわけです。
 しかも、しかもこの問題につきましては、大学関係者が何年にもわたって議論をし、特にその成果が調査検討会議において明確にされて、そしてその準備をすると、その準備するについてはいろんなイメージというものを持たせてほしいというようなことがございまして、今回、私どもの方でいろいろなことを未定稿としてお示ししているわけでございます。その関係資料の示し方について配慮が不十分だという御指摘があったということは誠に遺憾だというふうに考えているわけでございます。
 いずれにしましても、これらの諸準備といいますものは、あくまでも法人化というものは最終的に国会で御判断いただくべきものであるということを前提とした上で、国会の御審議の結果、法案が成立した場合に備えての事実上のものでございまして、私としてはその点について十分御理解をいただきたいと思うところでございます。
○林紀子君 もうさっきから同じことを繰り返しているわけですけれども、法案が成立した暁にはということをおっしゃいますけれども、今、暁ではないんですよ。審議中なんですよ。それなのに、もう本当にこの法案が通ったような状況でこの法案に書いてあることそのものをやらせている、それが今の現実じゃないですか。
 盛んに大臣は、じゃ法案が通って、来年の四月一日に間に合わなかったらどうするというふうにおっしゃるわけですけれども、そこの考え方が私は間違っているんじゃないかというふうに思うんですね。だって、法案ができてから、さあ、それじゃどうしよう、それに向けてどういう準備をしていかなくちゃいけないか、そう考えるのが当たり前じゃないですか。だって、もしかしたらこの法案、通らないということだってあるわけですよ。(「準備は無駄だ」と呼ぶ者あり)そうです。そうしたら、今までやっていた準備、本当にあれほど過労死まで出るような形でどんどん準備させて全部無駄だったと、そういうことだってあるわけですから、本当に国会の審議を無視をしないということは、この法案が通った正に暁から準備を始める、仕事を始める、それが当然だというふうに思うわけですね。
 だから、この四月一日、これに向けて何が何でもやっていくんだっていうその態度そのものを改めない限りこの国会審議無視というのは続くんですよ。大臣が幾ら口で、無視はいたしません、謝りますって言ったって、それは続くんです。だから、こうした文部省のスケジュールが最優先でやるんだ、こんなことは正に百年に一度の汚点残すことになるじゃないですか。国会審議、本当に優先するって言うんなら、こういうことをきちんとやめるべきだ、改めるべきだ、その御返答がない限り、私は国会無視が続くと思いますから、この文部科学省の下で、大臣の下で論議することはできません。
○副大臣(河村建夫君) この法人化というものがこれからの大学改革に大きな一石を投じ、また日本の大学の改革につながるんだということで今日まで進めてきたところでございます。
 基本的に法人化そのものが駄目だと、こうおっしゃれば、これはもう見解の相違としか言いようがないんでありますけれども、このために各大学は大変真剣、深刻な議論をずっと今日まで続けてきておられるわけです。そういう形で、最終的に大学側が法人化の準備に入るんだということで準備をされたわけでございまして、これにおいて、法人化に向けて自主的な準備を進めたいんだということの中の一環として今御指摘の点もあったわけでございまして、この法人化において各大学は改革の大きなステップにしたいということでございまして、平成十六年四月というタイミング、これを目途にこれまでも議論を進め、準備を進めてきておられる、その中の一環というふうに考えておるわけでございまして、これまでの議論を振り返ってまいりましても、先ほどちょっと触れましたが、労働安全衛生法の問題等もあるわけです。これも具体的な御指摘もあったように、この法案が通ったときに法律違反状態をどうするんですかと、早くそれは当然事前にやっておかなきゃいけないんじゃないですかと、こういう御指摘もあったわけですよ。
 正にその準備の一環でありますし、特に先ほどのシステム化の問題は、システム化の問題は、これは当然やるべきこと、やらなきゃいけないことなんです。だから、これを今回の法人化によって促進しましょうということで、準備段階を進めてくださいよと。特に法人化になったらもう企業会計原則入ってくるわけでありますから、それまでに準備する必要がありますということは、これは大学側と我が省側といろいろ議論した中で、じゃこれはまずとにかく進めましょうということになって、準備段階としてやりましょうということになっておるわけであります。御理解をいただきたいというふうに思います。
○林紀子君 私たちは今、中身について本当に真剣に論議をしているからこそ国会審議を無視しちゃならぬと言っているわけですけれども、今、河村副大臣は何とおっしゃいましたでしょうか。そもそも見解が違えばしようがないというようなことをおっしゃったわけで、それはちょっと取り消していただかなかったら困ります。
○副大臣(河村建夫君) 議論の差し支えありますから、大変私、失礼なことを申し上げたと思いますから、そのことは取り消させていただきますし、議論の場でありますから、当然いろいろ意見があってしかるべきだと私も思います。
 そして、先ほど私も前倒してという言い方をしましたが、これはあくまでも、これも私も言葉も不十分な言葉だと思いますので、取り消させていただいて、あくまでも準備段階の作業として今進めておるんだということで御理解をいただきたいというふうに思います。
○林紀子君 謝っていただかなくちゃいけないことが次々出てきちゃうんですけれども、取り消すだけでは納得はできません。
○副大臣(河村建夫君) 先ほど来御答弁を申し上げておりますように、特に新会計システムという、これ特定の準備作業に入るわけでございます。これにはかなり高額な予算も要るわけで、準備経費も要するということもあって、ほかの独立行政法人の例も踏まえておるわけでございまして、これは平成十五年度予算について国立学校運営改善経費として計上いたしておるものでございますから、これはやっぱりその経費が、各国立大学の法人化を移行しているということは、これを促進するという立場に我々も立っておるわけでございますが、あくまでもこれは準備に必要な経費だということで大学側とも十分協議した上での予算計上であるということでありますから、御理解をいただきたいというふうに思います。
○林紀子君 今の御説明では私は理解をできませんけれども、もう一つ重要な問題がありますから、これはペンディングにしておきまして次に行きます。
 今、河村大臣は盛んに労働安全衛生法との対比でおっしゃっておりましたけれども、これは全然性格が違うものなんですよね。だって、労働安全衛生法、これが大学法人になったら確かに適用されて、刑罰も含めて処罰もあるという状況になりますけれども、それじゃ今まで国立大学、それはこういう安全衛生面をちゃんとやらなくてよかったのかといったら、そうじゃないですね、人事院規則があったわけですから。それできちんとやらなければいけなかった。それは今回の正に法律とは関係なく、ちゃんと国立大学としてもやらなければいけなかったことをサボってきたわけですよね。それで、それを一生懸命やりなさいって私たちが言ったら、この会計原則のシステムコンピューター含めるのと同じだなんて、そんな言い方は絶対間違っております。
 その労働安全衛生法について、私はこの前の質問、続きをさせていただきたいと思いますけれども、さきの質問で、文部科学省は、対策の問題点を具体的に指摘して、私が、文部科学省から出てきたものは机上の空論だということを京都大学や東京大学の例も示して申し上げました。それでは、きちんと信頼できるような数字を出してほしいということをそのとき申し上げましたが、その後、調査、見直し、行ったのでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 今、委員御指摘のように、大学におきます安全衛生管理の実施につきましては、現在でも人事院規則にのっとって各大学が責任を持って取り組むべき課題であるわけでございます。今もその規則に違反していてはいけないわけでございます。
 本年五月の調査結果といいますものは、各大学等が責任を持って報告してきた見積額を集計したものでございまして、文部科学省としてはこの数字を基に対策を講じるということが適切であると考えております。
 五月二十八日にその見積額を取りまとめて発表しまして、同時に、その改善対策について私どもの考えに基づいて各大学を指導し、必要な支援を行って、その改善状況についてはしっかりと把握していきたいというふうに考えておりまして、年度内に安全衛生の改善が図られるように万全を期していきたいと、こういうふうに考えているところでございます。
○林紀子君 前、前回出してくださったあの資料を基にというお話ですね。
 それでは、文部科学省が五月十六日付けで事務連絡というものをお出しになりましたね。その記入要領に、わざわざ下線を引いて、ここは注意しなさいということでお出しになっている部分があるわけですが、記入要領の(1)というのには何が書いてあるのか、ちょっと読み上げていただきたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 五月十六日の調査でございます。国会での御論議を踏まえて、昨年十月、安全衛生状況の調査を行った実験施設等について、その後の改善も踏まえて、本年五月時点における改善に必要な所要額を把握するために行ったものでございまして、記入要領のところでございますが、「室数の総合計は、」「平成十五年一月末日に報告した数と符合すること。」とあります。
 これは、前回の調査で室数の数え方について国立大学等から問い合わせが多数ございまして、今回の調査を短期間で実施するためには、室数は前回の調査と同様にという趣旨で指摘をしたものでございます。
   〔委員長退席、理事仲道俊哉君着席〕
 具体的に言いますと、例えばオープンな実験室を複数の実験グループが家具等で仕切って使用しているものや、可動間仕切りによって大部屋で使ったり小部屋で使ったりすることが可能な実験室等をどのようにカウントするか等によって実験室数の変動が予想されることから、円滑に調査を行うためにこのような指示をいたしたものでございまして、今回の調査で、安全衛生管理上問題のある実験施設等については、改善に必要な所要額をすべて報告をしていただいておる、適切な調査である、このように考えておるところであります。
○林紀子君 私も、でもこの記入要領というのはびっくりしたんですよね。平成十五年一月末日に報告した数と符合するように今回の調査を上げてこいと、こういうことを言っているわけですね。
 普通、調査というのは、前の調査と符合するようにその数を上げなさい、こんな調査があるんですか。今、現実にどうなっているかというのを調べるのが調査でしょう。前の数と符合しなければ駄目ですよなんというただし書をどうして付けているんですか。これは、もし現在の状況をそのまんま出してきたら、昨年十月の調査と懸け離れている、こういうことになってしまうから符合させなさいという言葉を、わざわざ線まで引っ張って付け加えたんでしょう。とんでもないことだと思うんですよね。
 その後、私のところには全国各地の大学から、あの金額、三百六億円という金額が示されたわけですけれども、あの金額は何だ、それぞれの学校の金額も全部分かっているわけですから、そういう声が続々と寄せられております。
 一端を紹介しますと、熊本大学では今年二月から三月にかけて綿密な調査をしているわけですね。この調査結果によりますと、調査対象となった面積、改善を要する部屋の数、改善に要する金額がすべて、文部科学省がまとめた、あの三百六億円のあのところと全く違っているんです。文部科学省のまとめでは百四十九教室、二億六千万円、これが熊本大学の数字です。しかし、大学の調査では、八百六教室を調査した結果、およそ三百教室で改善が必要、ハード面で八億円、ソフト面で一億円、およそ九億円がお金としては必要だと。実際調べた数は、お金は、文部科学省が提出したあの三倍強なんですよ。重大な食い違いじゃないですか。
 どうなんですか。こういうことを覆い隠すために符合しろ、こんなことを出したんじゃないですか。
○副大臣(河村建夫君) 今回の調査によって、これまで出た数字、多くなるのを止めるためにということは全くないのでありまして、多くの大学等において見積額を出していただく。各学部から要望がございます改善要望を取りまとめて、老朽化、狭隘化、こういう長期的視点から取り組むべきものがあるか、あるいは利用方法等の見直しによって改善できることはないか、あるいは施設整備の改善に要する経費がちゃんときちっとした見積りになっているか、妥当であるかどうか、こうした点から精査をやって、法令上必要不可欠な改善経費を文部科学省に見積額として報告をしていただいておるものでございまして、今の御指摘、それを隠すために数字をということではなくて、当然、その差をきちっと見るという観点から今回調査をしたわけでございますから、御指摘のような点はないというふうに思っております。
   〔理事仲道俊哉君退席、委員長着席〕
○林紀子君 その差をきちんと見るというんだったら、符合しろなんということを書く必要はないわけで、差なんて出てこないでしょう。
 実際どのくらい費用が掛かるか、まだ全く分かっていないわけですね。ほかの大学でも、例えば私の地元の広島大学でも、今コンサルタントを入れて調査をしている、関西B大学ではこれから調査を行う、D大学では六月二十三日をめどに調査をしている。ですから、この前も指摘をいたしましたけれども、文部科学省が発表した資料と実態は全く違っているわけですよ。
 東京大学の場合も、あのとき遠山大臣は、委員は大学側のどこにお聞きになったんでしょうか、学内の安全衛生の基準に合うようにということで見積りもし、将来計画も立てている部局と連携を取ってやったんです、文部科学省はというふうにお答えになったんですけれども、その後、東京大学でも更にお話を聞きましてびっくりいたしました。東京大学では、理学部、工学部の一部を調べて、そこから類推して全学の計算をしただけだと言うんですよ。正に机上の計算にほかならない。だから、現場はもう、せき立てられるから、無理な類推をせざるを得ない。大臣、これで本当に四月一日、大丈夫なんですか。到底そうは思えませんね。
 ですから、是非、改めて申し上げたいと思います。きちんと、もう今、各大学では、まじめにと言ったら申し訳ありませんけれども、本当にまじめに、この労働安全衛生法が適用されたらどういうふうになるのか、どこを改善しなくちゃいけないのか、名古屋大学の例を申し上げましたけれども、そういうような形で全部きちんとコンサルタントも入れて調査を始めているわけです。その調査を、符合しろなんて言わないで、ちゃんとこれこそ手のひらに乗せて文部科学省はやるべきじゃないですか。そして、抜本的な対策を是非練り直すべきだというふうに思うわけなんですね。
 調査をしますか。対策、四月一日までにどうするかというのを練り直しますか。さもなければ、本当に違法な状態で四月一日、国立大学法人スタートになるんです。そんなことは、私たちはこの委員会の責任として、もうそれは与野党を問わず、違法状態で国立大学法人がスタートをするなんということは絶対に許せません。認められません。どうですか。
○副大臣(河村建夫君) 林委員から先ほど東京大学のケースの御指摘があったわけでございます。文部科学省では、東京大学の施設整備の改善に責任のある部局から、東京大学の安全衛生管理の改善のために見積りとして二十七億円が必要という報告を受けました。
 それで、あの当時の衛生対策費は十七億円ということでありまして、これは東京大学によりますと、工学部の改善希望額として存在したというふうな御指摘があったわけでございます。東京大学の事務局では、このような学部間の希望額を、老朽化、狭隘化といった長期的な観点、あるいは利用方法等の見直しのみで改善できるんじゃないかとか、あるいは施設整備の改善に当たる費用というのは妥当であるかどうか、そういうものから、綿密な審査をやりながら法令上必要不可欠な改善経費を算出したというふうになっておりまして、東京大学の御報告というのは、見積額は適正なものであると、こう思っておるわけでございます。
 今、委員の方から、調査が非常にずさんで、もう一度やり直すべきだと、こういう御指摘もございましたが、今回の調査結果は、各大学等における安全衛生確保のための施設整備の改善に責任を持つ部局から所要経費の見積りを出していただいて集計したものであって、そのことそのものは私は問題がないというふうに思っておるわけでございます。
 現在、最も求められておることは、各大学の報告を踏まえながら、五月二十八日に公表いたしておりますが、改善対策というのを早急に実施しなければいけない、こう思っておるわけでございます。
○委員長(大野つや子君) 時間です。
○林紀子君 はい。もう時間になりましたから、また私はこの続きをこの次やらせていただかなくちゃいけないと思うわけですけれども。
 本当に、国立大学法人が違法状態でスタートするなどということは絶対に認められない。ですから、本当に対策をどうするのか、調査がそのスタートになるわけですから、きちんとやるということを、審議が、この国会審議をやっている間に是非出すべきだということを申し上げて、質問を終わります。
○山本正和君 私は、質問に今から入るわけですが、主として、初めは行政管理局の局長さんに本当は大臣の代わりにということで質問しますが、ちょっとその前に、今日の質疑の中で気付いて、これは整理しておかなきゃいけないという部分がありますから、それを指摘をしておいて、また文部省の方の見解も聞いておきたいと思うんですけれども。
 要するに、今日までの論議の中で最大の問題、審議が止まったりした最大の理由は、法人の成立以前に国立大学が準備作業を行うことについて、これについての問題が様々に出てきて、冒頭の大臣答弁がありまして、それからまた、さらに櫻井さん以下の質問があったということなんですね。
 私は、そこで、文部省側でまとめてもらった今の最後の大臣の答弁も聞いたんですけれども、どうもそこで誤解を招くんじゃないかという部分が私はあるので、気付いたことを指摘しておきますから、後ほどでいいですから、また見解があれば見解を出してほしいと思うんです。
 というのは、法律を政府が提案する、当然、政府の責任ですから、閣議決定を経て提案されるんですね。それに当たっての様々な準備行為が行われる、これは当然のことなんですね。したがって、場合によってはどれぐらい予算が掛かるかということも、当然、積算のための作業もしなきゃいけないでしょう。それはあると思うんですね。
 しかし、そのことと執行する行為とは全く違うんですね。法律に基づいて事柄が行われる場合は執行行為になる。これはもう法律が通らないのにやったとしたら、これは明らかに三権分立の精神に反するんですね。そこのところの問題を、今日の、午前中の今日の答弁の中で幾つか問題がありましたから、それは後ほど理事懇で是非ちょっと協議しておいていただいて、再度整理をしていただきたい。
 それからまた、文部省側も、私が今言った意味で、予算の執行、予算の執行というよりも、いわゆる実務行為ですね、実務行為との関係についてもう少し明確にしておきたい。というのは、恐らく役所側の答弁は、前の続大臣だとかもっと古い資料からいろいろありまして、有権解釈こうだ、云々だと、こう言われると思うんですね。それをよく読んでみても、その答弁を読んでみても、予算を組んで、こういう予算になりますということまでは答弁しているんですよね、確かに。しかし、それ以上の、少なくとも法律に基づいた行為を行う、この法律がなければ動けない、そういうことは絶対してはいけないことになっている。
 本当は準備行為そのものについても、まあ昭和、一九八〇年代までは大騒動になったですよ、自社五五年体制のときはね。国会は止まりおったですよ、盛んにね。このごろはもう非常に円満になったものだから、準備行為をしても余りもめないけれども、昔はそれでも大変だったですよ。しかし、やっと今これ、準備行為ぐらいまではよくなったんだけれども、しかし、法律に基づいて、法律ができて初めてやらなければいけない行為というものと、それから法律のために準備する行為というものはきちっと区別しなきゃいけない。そこのところの区別を今度の国立大学法人について文部省側はどういうふうに考えて、どこまでが準備行為であって、どこまでが執行なのかということについての見解をやっぱりはっきりとこの段階では示しておいて、それが混乱の最大の原因だと私は思うんです、質問していてね。それだけ最初に指摘しておきます。
 また、これは委員長、是非、理事懇で後ほど議論願いたい。よろしいですか。
○委員長(大野つや子君) はい、理事懇で話させていただきます。
○山本正和君 ということで、それじゃ、今日はひとつ中央省庁等改革基本法という問題からお聞きしていきたいと思うんですけれども、世間一般にも言われておりますし、それからこの国立大学法人の問題でも議論されている中で言っているのは、やっぱり根っこはこの中央省庁等改革基本法、この論議からこの問題が始まったというふうに私は聞いているんですけれども、主務官庁であるところの管理庁もそういうふうな見解ですか。そこをまず聞いておきたい。
○政府参考人(松田隆利君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、国立大学の法人化の問題につきましては、平成九年の行政改革会議、総理の諮問機関がございまして、正に省庁改革の御議論があったわけですが、その最終報告におきまして、大学改革方策の一つの選択肢として、独立行政法人化については、「大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図るという長期的な視野に立った検討を行うべきである。」という最終報告がなされたわけでございます。
 それを受けまして、中央省庁等改革の言わばプログラム法としまして中央省庁等改革基本法が制定されまして、国立大学につきましては、その組織及び運営体制の整備等必要な改革を推進する、そういう表現の規定がなされているところでございます。
 以後、こうした基本的な方針を踏まえまして、特に大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として、関係者による幅広い御議論がなされて、その結果として今般の法案が提出されたものと認識しておりまして、そのような流れの中で私どもも理解しているところでございます。
○山本正和君 ということは、中央省庁等改革基本法の流れから出てきた、その中の改革の一環であるというふうに、いわゆる政府としては、政府というか内閣としてというか、いわゆる各省庁を統合したものとしての政府として、そういう考え方の下にこれが生まれてきていると。これは、文部大臣、それでよろしいですね。
○国務大臣(遠山敦子君) 様々な経緯がございますけれども、今御説明のあったようなところがポイントであるというふうに考えます。
○山本正和君 そこで、この基本法からずっと生まれてきた中で、地方に任すもの、民間に任すもの、その他という形でこの独立法人ができたと、こう思うんですね。そうすると、今度のいわゆる国立大学法、法人化法ですね、これは要するに独立法人の流れの中に入っていったと。要するに、民間とか地方とかに任せるというんじゃなしに、独立法人の方に大学の改革は回っていったと、こういうふうに受け止めてよろしいか。政府の方の統一見解としてはそういうふうな立場に立っているかどうか。
○政府参考人(松田隆利君) 今、先生御指摘のように、中央省庁等改革基本法におきまして国の行政組織及び事務事業の減量化等に関する基本方針が掲げられておるわけでございます。
 その中で、国の事務事業のうち民間又は地方公共団体にゆだねることが可能なものはできる限りこれらにゆだねることといった方針が示されているわけでありますが、独立行政法人は、同じく中央省庁等改革基本法三十六条におきまして、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要はないが、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがある、又は一つの主体に独占して行わせることが必要であると、そういうものについて効率的かつ効果的に行わせるにふさわしい自律性、自発性及び透明性を備えた法人の制度を設けるものとするというのが中央省庁等改革基本法の三十六条でございまして、そういう民にはゆだねられない、地方にもゆだねられない、しかし国自ら直接実施する必要はないというものについてそういう独立行政法人制度を作ろうということにいたしたわけでございます。
 この大学法人の関係につきましては、私どもとしましては、この通則法で定められております独立行政法人制度、この基本的な枠組みは活用をいたしますが、学問の自由や大学の自治といった大学の特性に配慮していろいろな特例を設けられておりますが、そういうものとして理解しているわけでございまして、通則法に基づく独立行政法人とは異なるそういう制度設計になっているというふうに理解しておりますが。
○山本正和君 その異なる点を列挙してもらいたいんだけれども、挙げてほしいんだけれども、通則法で定められている重要なポイントは全部入っておるんですよね。例えば、予算は財務大臣と話をする、評価についても総務の評価を受けると、全体の、総括の評価を。この一番肝心なところは全部入っているんだから、肝心なところは全部入ったけれども、それ以外のところは自由なものの法人であると、こういうふうにあなたの方は思っているということですか。
○政府参考人(松田隆利君) 今申し上げましたように、学問の自由や大学の自治といった大学の特性に配慮いたしまして、列挙しますと大変たくさんになりますのでポイント的な話に限らせていただきます。
 例えば、学長の任免は国立大学法人の申出に基づき行われるということですとか、あるいは文部科学大臣が中期目標を定めたり変更する際には、あらかじめ国立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮をするとか、あるいは通常の独立行政法人評価委員会とは別の国立大学法人評価委員会による評価等々非常に多岐にわたりまして、言わばその特有の制度、規定が設けられております。
 国が設立する法人、かつ財源措置が国にとっても義務付けられている、そういう法人でございますので、独立行政法人通則法の枠組み、基本的な枠組みは活用するということになっているわけでございますが、その主要な内容につきまして今申し上げておりますような広範な特例が設けられているというふうに理解しております。
○山本正和君 その部分はまた後ほど文部省に聞きますけれども、要するに、総務庁が、各独立行政法人たくさんある、それを統括的な立場から場合によっては評価する、そういう役割を持っておるんですね。それからまた、財務省はお金についても抑えるという役割を持っているんですね。そういう中における位置付けは国立大学法人も他の独立行政法人も変わらないでしょうということを聞いているんだけれども、そこはそうでしょう。
○政府参考人(松田隆利君) お答え申し上げます。
 正に国が設立する法人であるということにおきまして、独立行政法人もそうですし、それから今整理合理化を進めておりますが、特殊法人もそうではありますが、そういう国が設立する法人であるという意味で同じでございます。
○山本正和君 実は、文部省の中にあったもので既に独立法人になっているものについてのいわゆる評価委員会の評価あるいは勧告もちょっと見てみたんですね。しかし、全く他のものとほとんど僕は変わらぬと思うんですよ、流れはね、部分的には違いはありますよ、もちろん。
 要するに、独立行政法人として位置付けをしたと、国がお金を出すんだから、国が当然いろいろなものを見ていかなきゃいけない、その責任があるからやるんだと、この流れは全然変わっていないわけですよね、私はそう思うんです、独立行政法人というのはね。
 しかし、そこで私が聞きたいのは、だけれども、他の独立行政法人で、いわゆる今の大学法人と同じように、何というか、通則法、通則法の枠組みがもしも他の独立行政法人で扱っている通則法の準用、今のいわゆる大学法人がやる準用、準用規定で他の独立法人と違うものがあるかと。準用規定、準用されているということについては、全く他の独立法人と一緒でしょうということをもう一遍念を押しておきたいんだけれども、どうですか、通則法における準用規定。
○政府参考人(松田隆利君) お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたが、大学法人、国立大学法人に関しましては、基本的に、独立行政法人通則法の基本的な枠組みは活用しつつ、非常に大学の自治等に配慮した特例的な制度ということになっておるわけでございます。
 そういう意味で、独立行政法人と同じかといえば同じではございません。しかし、先ほど申し上げましたように、国が設立する法人であるという点においては、独立行政法人、そして今いろいろなことで問題になっている特殊法人と同じようなものであるということでございます。
○山本正和君 しつこいぐらい聞きますからね、というのは後に関連するから、私、言っておきたいんだけれども。
 今のあなた方の立場、要するに各省庁を統括する立場からいった場合には、これは他の独立行政法人と一つの共通の枠組みの中にあるものだと、枠組み。特色はそれぞれありますよ、みんな。そこで、特に国立大学法人だからということで、先ほど言ったような学問の自由とかあるいは、何というかな、特別な教育への配慮というふうなこと、それは書いてあるけれども、また評価についても特別な措置というものは書いてあるけれども、しかし、いずれにしても最終的な評価の形式というものは全く一緒になっていると私は思うんですね。だから、あくまで独立行政法人という、国が定めた独立行政法人という枠組みの中でこれは存在していると、これは間違いないでしょう。
○政府参考人(松田隆利君) 独立行政法人は、独立行政法人通則法、それに基づきまして、各個別法と言っておりますが、個別の法律に基づいて作られるわけでございます。それが独立行政法人でございます。
 この国立大学法人は、その独立行政法人通則法に基づく個別法ではございませんで、それとは別の国立大学法人法ということで制度設計されているわけでございます。制度設計の内容は、先ほど申し上げましたように、基本的な枠組み、自主性や自律性を与える、あるいは中期的な目標を管理をする、さらにその前提としての国が設立をする、あるいは国が財源措置の義務付けを負っている、そういう点では同じであるわけでありますけれども、制度としては別の制度設計になっているということでございます。
○山本正和君 そうすると、ちょっと具体的に聞きますよ。評価ということについては、他の独立行政法人とは全く違う観点からこれを行うと。極端なことを言ったら、学問の自由という非常に難しい問題がある。そういうことからいった場合の評価というのは、他のもののように、実績がどうだとかこうだとか、やれ採算が合うとか合わぬとかというふうなものとは違った問題だから、そこは文部省内にあるところの評価委員会が学問の自由の観点から様々に議論したものならば、それについてはノータッチだと、あえて言えば。例えば、学問の自由に関する部分については総務庁の持っておる評価委員会はノータッチですとあなたは言えますか。私はそこのところを一番心配しているんです。
 要するに、他の独立法人と違うということで苦労して苦労して国立大学法人ができた。しかし、それはいわゆる今、個別法に基づく法人とは違いますよとまであなたは言ったんですね、もっと違うものだと。もっと違うものならば、それなりに評価についても予算についても違う位置付けを政府として考えていると言えるんなら私はよく分かる、手続は一緒であっても。評価や予算にあっては違いますと、他の法人とはおのずから違うものとして、統括する立場の者としても十分理解しておりますと、こういうふうに今日言えますか。
○政府参考人(松田隆利君) お答え申し上げます。
 今、評価の問題で申し上げますと、一般の独立行政法人は各省の独立行政法人評価委員会が評価するということになっておるわけでございますが、この大学の場合には、大学の評価研究、大学評価・学位授与機構による評価もございますし、それから独立行政法人評価委員会ではなくて国立大学法人評価委員会という特別の評価委員会で評価するという、そういう仕組みになっているわけでございます。
 ただ、先ほど申し上げましたように、通則法の枠組みが、基本的な枠組みが活用されているというゆえんは、正に国が設立する法人であるということでありますし、また財源措置について国が義務付けられているということから、例えば通則法の枠組みでいいますと、この大学法人評価委員会の評価だけではなくて、言わば政府全体としての評価である総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の二次評価もあるという、そういう仕組みになっているものと考えております。
○山本正和君 そこが、だから私は、形がそうなっておるとしても、としても、当然他の独立行政法人とは違った位置付けであって、要するに、学問の自由だとかそういう問題については、これは評価し得ない。極端なこと言ったらおかしいですけれども、学問、研究というものはだれが評価するんですか。だれも私は分からぬと思うんですよ。そういう学問、研究の評価なんということを、私は、政府がするというのは世界じゅうのいわゆる文明国で聞いたことがない、本当の話が。
 だから、要するに、ここで言う評価というのは、全く他の、いわゆる他の独立行政法人というのは、簡単に言えば行政の効率化と、能率化と、国民サービスなんですよね。学問の自由とは違うんですよ。そこのところが独立行政法人通則法の中に入れるというのは私はおかしい。これは別においておいてね、これはまた後ほどやりますけれどもね。
 そういう中で、当然、各独立行政法人を束ねる立場の総務庁の評価委員会もそういうことについては十分承知しておりますと、したがって、少なくとも大学については他の独立行政法人と同じような物差しではありませんよということをこの場で言えるかと私は聞いている。私は言えぬだろうと思うんだけれども、いわゆる通則法で枠が締められているから、役所としては。
○政府参考人(松田隆利君) お答え申し上げます。
 正に教育研究の特性への配慮ということでは、今回の国立大学法人法案の第三条におきまして、「この法律の運用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなければならない。」と、こう書いてあるわけでございまして、当然のことながら、今申し上げたような仕組み、中には通則法の準用という部分の仕組みもあるわけでありますが、その運用に当たってはこの第三条の規定にのっとって行われなければならないと考えております。
○山本正和君 これは、ちょっと今度は大臣に来てもらって、両大臣目の前に置いて質問せぬと、どうも局長さんでは難しそうだからこの程度にとどめますけれども、今日私が質問した趣旨を是非ひとつ大臣に御報告願って、そして、国立大学法人というものをこの通則法で扱っておるけれども、これはどういうふうな形でこれから取り組むのかについての見解を是非次は示していただきたい。これだけ要望しておきます。
 これでもうあなたへの質問終わりますから、どうもありがとうございました。どうぞ、どうぞ、もういいですから。
 そこで、文部省の方に質問しますけれども、実はいろいろと調べてみると、随分長い間苦労しておられるんですわ。有馬文部大臣の大学関係者に対するお話だとか、中曽根元文部大臣のお話とか、それから更には自民党文教部会におけるこの問題についての扱いだとか随分議論されておるんですね。大変な激しい討論もあったようですけれども。
 しかし、その中でやっぱり一貫して主張しているのは、独立行政法人にはなじまぬと、こう言っているんですよ、みんな。どなたも言っているんです、なじまぬと。だから、違うものを作ろうというんで一生懸命苦労してできたのが国立大学法人のはずなんですね。
 ところが、実際の話、事務手続は他の独立行政法人と同じようにせざるを得なくなっている。だから、今度でも学校に、早うから準備しなければいけないというような問題も出てくるんです。他の独立行政法人みんなやっているんだから。予算組む上で、準備していく上でどうにもならぬというのがあるのは当たり前ですよ。
 だから、あれだけ与党の中で真剣に議論して、独立行政法人というのはなじまぬから、枠組みは分かるけれども、行政改革の一環の中で、しかし、何とか国立大学法人を作っていこうといって与党の中であれだけ議論して、そしてしかも、大臣談話を見ても、大学の学問の自由、研究の自由というものを保障しなけりゃいけないと、特にしつこく言っておられる、ずっと、歴代の。
 しかし、なぜここまで来て、私は通則法に準用するという部分で、そこでもっと議論ができなかったのか。なぜできなかったという理由を私は聞きたいんです、今日は。
 通則法というものは、これは簡単に言うと、簡単に言うと天下国家の大計じゃないんですよ。天下国家の大計と言ったらおかしいよ。天下国家の未来を目指すものじゃないんですよ。現実に政治的にどう処理するか、この国の経済をどうするかという問題から来ている。しかし、教育というのはそうじゃないんです。百年の大計ですよ、正に。
 それじゃいかぬということを一生懸命みんなで議論してきたのになぜ、合理化ですよ、あれは。政府の合理化ですよ、行政府の。政府の合理化と同じような通則法の中になぜはまったのかと、これが。どうしてもここが分からない。そこのところをひとつ説明してほしいんですがね。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学の法人化につきましては、平成十一年四月の閣議決定で、「大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討」すると、こうされたわけでございまして、これを受けまして、独立行政法人制度を活用しながらも、教育研究の特性を踏まえまして、大学の自律的な運営を確保することにより個性豊かな国立大学を創造するという大学改革の観点に沿って検討を行ってまいりまして、独立行政法人制度を活用しながら、その大学の独自性ということで種々の特例を設けた国立大学法人法をお願いをしておるわけでございますけれども、その法人化に当たりましては、その根幹たる主要な、大学の独自性を示します根幹たる主要な枠組みについてはこの国立大学法人法で定めておるわけでございます。
 ただ、独立行政法人制度を活用してございますので、その枠組みの基本的な部分、例えば公共上の見地から確実に実施する必要があり、しかし国自らが直接実施する必要はなく、かつ民営化にもなじまないという業務について、国が財政措置を含めた一定の責任を負いながら、国から独立した法人が行うと、そういう枠組みは国立大学の法人化にも活用できると、こういうことでございますので、これも恐縮でございますが、法技術的な観点から独立行政法人通則法の枠組みのうち、国立大学法人にも活用できる部分につきましては、独立行政法人通則法の関係条文に必要に応じまして修正、読替えというような形で修正を加えた上で活用するということとしてございます。
 準用という、法律上の言わば一種の技術になるわけでございますけれども、これは直接には適用されない別の仕組みを当てはめるということを意味しておりまして、したがいまして準用という規定したことは、正に国立大学法人が通則法に基づく独立行政法人ではない独自の法人類型であると、こういうことでございまして、そういう意味で根幹の部分について国立大学法人法で書かせていただいたと、こういうことでございます。
○山本正和君 局長さんの答弁はそれでいいんですけれども、何というかな、もっと理屈だけ言うなら、別に準用せぬでも全部と書いてあるじゃないかと、本当はね。そこまで言いたいけれども、それはおいておきましょう。
 そうじゃなしに、私は大臣にお伺いしたいのは、両大臣お二人とも、我が国の国立大学がいかに他の国と違って、違った状況の中で頑張ってきて、そして我が国の今日のために、今日あるために、あるいはこれから将来に対してもどういう役割を果たしてきているんだ、またどれぐらいの大きな任務を持ってきたんだということについては十分御存じだと思うんですよね。ただし、その中で幾つかの欠陥が指摘されてきたと。大学改革の問題も議論されてきたと。しかし、大学改革の議論もいろいろされてきたけれども、率直に言ってですよ、率直に言って、今日ある大学問題での最大の問題を一つ挙げよ、国立大学の抱えている最大の弱点、難点を一つ挙げよと言ったら、一つはどれにされますか、一点だけ挙げよと、こう言われたら。
○国務大臣(遠山敦子君) 委員のお話のように、日本の国立大学は非常に大きな役割を果たしてきていると思います。もちろん日本の大学のメジャーな部分は私立大学が量的には負っていただいていると思いますけれども、教育研究の中核的な組織として役割を果たし、そして各地域のいろんな産業なり文化なり人材供給という意味でのセンターになってきている、あるいは学費の問題等、様々な面で非常に重要な役割を果たしてまいっていると思います。
 しかし、一番の、これまでのより濶達な大学の教育研究をやっていただくという観点から考えまして、私どもとして一番の問題、あるいはこれまで様々な議論があった中で一番の問題点であったのは、行政組織の一部であるということに伴う様々な規制であるということであったと思います。そういうものをできるだけ外していくということで自主性、自律性を高めてもらう、それによって、本来、国立大学が担うべき国民の期待にこたえて、しっかりした教育研究をやってもらい、かつ社会貢献をしてもらう、それに資する制度改革でなくてはならないという信念の下に、今日まで様々な方々がかかわり、御努力をされて、この法案に結集してきていると思います。
 その意味で、私は、今回の法改正といいますものは、これまでの国立大学というものがいろんな意味でやろうと思ってもできない、それは文部科学、文部省がという理由を言ってこられましたけれども、それは行政組織の一部であるということに伴う国家公務員法上の制約あるいは会計基準上の制約、様々な制約があったということでございますが、それらをできるだけ排除して、しかしながら一方で国費によって国民の血税を一部投入をしていくという、そのことに伴う国としての関与というものは必要なわけでございます。そこのところのぎりぎりの線で私どもとしては独立行政法人という枠組みで発足したんでございますけれども、先ほど行管の局長の方からいみじくも話がございましたように、これは異なる、他の独立行政法人とは異なる制度設計であるというふうに明確にとらえているわけでございまして、これは政府全体の意思であるわけでございます。
 したがいまして、私としては、今の委員の御質問に端的に答えるとすれば、より自主的、自律的にその教育研究及び社会貢献の作用を行おうとする際にあるこれまでやりにくかった点、そこのところが問題ではないかなと、行政の角度からはですね。さらに、国民の角度からいえば、様々にもっともっと国立大学にこうしてもらいたい、いろんな問題があるという話は出ていることは確かでございますけれども、私としてはそんなふうに考えているところでございます。
○山本正和君 何というかな、大学がもっと自主性、自律性が必要だと、これはもうおっしゃるとおりだと思うんですよね。ただ、そういうことができない理由は何かといったら、国立だからできないんじゃないと私は思うんですよ、極端なことを言ったらね。
 例えばヨーロッパでも、ヨーロッパはほとんどもう国立ですよ。国が金出している。しかし、法人格を持っている、確かに。アメリカでも州立が多いですよ。かなりありますよね。しかし、みんな法人格を持っているんですよね。だから、法人格を持つことについては私は別に異論はないんですよ。
 しかし、行政改革で、なるべく安上がりの行政をしようという中で生まれた独立行政法人の中に大学法人をほうり込むとは何事だというのが私が一番怒っていることなんですよね。本当に国立大学法人作るなら、どこの国に比べても負けぬぐらい立派な、自主性、自律性があって、国がしっかり面倒も見れる、その国立大学法人なら私は何にも、逆に全面的に賛成しますよ。だから、大臣が趣旨説明で言われた、私は、大学の自主性、自律性というのは、本当に気持ちはよく分かるし、本当にそれは全力を挙げてやってほしいと思うんですよ。
 ところが、この法案を見たら、先ほど総務庁が言ったでしょう、あくまで枠内でございますと言っておるんですよ、枠内。こんな、日本の国民が教育に長い間ずっとやってきているこの百年間の歴史の中で、大学がこんなにばかにされたことがありますか。お金でもって独立行政法人という枠組みの中にはめられたというね。枠組みにはめられたといっても、それは場合によっては力関係でやることがあるかもしれぬ。
 もっと知恵出したらどうなんですか。通則法というべらぼうなものを持ってきて、準用すると。こう書かなければほかの役所が文句言うだろうと、言うただろうと私は思うんですよ。そこでなぜ頑張らなかったというのが私は一番心配なんです。なぜ、大学は違うんですよということを国民の前にも、大学というものの権威というか、位置付けをぴしっと示すのが私は文部省の役割だと思う。
 何か知らぬけれども、独立行政法人、いろんなものがありますよ、たくさん見てみたら、確かに。役所がやらぬでもいいような仕事をよくやっているものたくさんありますよ。それもみんな独立行政になっているでしょう、数見てみたら。
 だから、せめて言うんならば、どうしてもと言うんならば、附則で準用するなんて書かずに、きちっと一つ一つ、例えばこれはだれそれと協議すると書いてもいいですよ。そんなことすらできなかったというのが私は非常に残念で仕方ないんだ、これね。
 もう一つ言うと、そこからどんどんどんどん迫られていったもんだから、何とも言えない他の独立行政法人の作業状況に合わせて、文部省が独自で現在の大学の置かれた状況を十分そんたくして、そしてその中からやっていくという立場に立たずに、次、他の独立行政法人と予算の取り合いになりますからね、これやがて八月、九月。後れたらやっぱり大変ですよ、一年後れたら、予算は。だから、その気持ちは分かる。しかし、なぜ、だから出発点のけんかができなかったのか。なぜ総理大臣に対して、あなた、日本の教育分かっているのかと、けんかできなかったというのが、私は腹立って仕方ないんですよ、これ。
 しかし、ちょっとそれはもう、これはこの次のまた質問にまた回しますけれども、大臣が言われた、本当に大学の自主性、自律性を大切にするための法人化をしていこうという気持ちは分かりました。何とか、しかし、今からでも、中でもいいから、例えば、先ほど総務庁が言った中で、しかしこの、これだけは別ですよという部分を拡大するように、ひとつ是非頑張っていただきたい。これは要望しておきます。
 私、ちょっと時間、二分ぐらいあるんですけれども、西岡委員の方から一言だけ発言求めまして、私の質問を終わりますので、よろしくお願いします。
○西岡武夫君 お許しをいただきまして、次の委員会の質問の見出しという感じで問題提起をしておきます。
 基本的には今、山本委員からお話があったことが基本でございますけれども、一つ、これまでの衆議院での議論等々で若干触れられておりますけれども十分議論がされておりませんのは、国立大学の一般職の皆さん方、大体十三万人でございますか、おられると思いますけれども、この方々の国家公務員としての身分というものが何を根拠に剥奪、まあ剥奪という言葉はちょっと過激かもしれませんけれども、事実上ここで奪われるわけで、こういう、この法律でそういうことが一体できるのか、何を根拠にしているのか、このことについて十分な御審議をこの委員会でもしていただきたいという問題提起をして、私の発言を終わります。
○委員長(大野つや子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時三十分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十一分開会
○委員長(大野つや子君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、国立大学法人法案外五案を議題とし、質疑を行います。
    ─────────────
○委員長(大野つや子君) この際、河村文部科学副大臣及び政府参考人から発言を求められておりますので、これを許します。河村文部科学副大臣。
○副大臣(河村建夫君) 先般の委員会におきまして、内藤議員の国立大学法人に対する文部科学省と総務省の評価の関係はとの御質問に対しまして、私が、二重評価ということがあり得ないように、そういう前提に立ってきちっと詰めさしていただきますと答弁を申し上げたところでございます。
 この趣旨は、総務省の評価委員会が毎年度行う評価について、国立大学法人を直接の評価対象とすることではなく、国立大学法人評価委員会が行った評価結果を対象に二次評価として行うものであり、それぞれの役割を明確に整理すると、こういう意味で、いわゆる文部科学省が行った、大学評価委員会が行ったものをまた総務省がそれをということ、この役割は、それはあり得ないことだというふうに申し上げたわけでございます。
 しかし一方、総務省の評価委員会には、こうした評価のほか、中期目標期間終了後に文部科学大臣に勧告を行うことができると、こうなっておるわけでございます。この勧告は、一次評価の結果について評価を行うというものではなくて、総務省の評価委員会として自らの判断によって行うものであると、こういうことでございます。
 この点について、内藤委員もこのことも含めて質問をされたとしたら、私は十分お答えをしていなかった点もあったと思って、遺憾に思うわけでございまして、この点は補足をさせていただきたいと存じます。
 なお、ただ、大学法人法には、大学に対する配慮義務といいますか、配慮条項があるわけでございます。この勧告の在り方についても今後詰めていかなきゃいかぬと私は思っておるわけでございますが、仄聞いたしますところによりますと、総務省においては、これまでの既存の独法とは異なって、国立大学法人に直接資料等を求めたり調査を行うというようなことにはならないと、そういう取扱いにはならないようなことで検討をしているんだということも漏れ聞いておるわけでございますが、そういうことも踏まえて詰めてまいりたいと、このように思っておるところでございます。
○委員長(大野つや子君) 政府参考人、総務省田村行政評価局長。
○政府参考人(田村政志君) 私の方から、二点、発言をお許しいただきたいと思います。
 最初に、総務省の独立行政法人評価委員会の勧告は、二次評価ではなくて、自ら直接判断を行うという性格のものかどうかということでございますが、総務省の評価委員会は、本法案による独法通則法の準用規定に基づき、中期目標期間の終了時に主務大臣である文部科学大臣に対して行うことが、勧告を行うことができるとされているところでございます。この勧告は、一次評価の結果について評価を行い意見を述べるという毎年度の評価の仕組みとは異なりまして、自ら直接判断を行うという性格のものでございます。
 ただし、この勧告は直接国立大学法人に対して行うものではございませんで、文部科学大臣に対して行うものでございます。この勧告を受けて、文部科学大臣は自ら見直しの検討、判断を行うものでございます。
 次に、勧告を行うに当たって直接国立大学法人に対して調査を行うのかということでございますが、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が勧告を行うに当たっては、国立大学法人法案第三条の規定の趣旨を踏まえ、必要な資料の提出等の依頼は直接国立大学法人に対して行うのではなく、文部科学大臣に対して行うこととすることを検討しているところでございます。
 現在検討している勧告の取組の方針案というものは、現在の既存の独立行政法人の勧告についての方針でございます。国立大学についての方針の策定に当たっては、法案の第三条に十分配慮してまいります。
    ─────────────
○委員長(大野つや子君) 質疑のある方は順次御発言願います。
○櫻井充君 ありがとうございました。
 今の内容ですと、要するに法律ができ上がらないとまだ十分に検討できないという説明なのかなと、そう思います。
 一方で、法律ができ上がっていない段階で中期計画を書かせている、若しくは自主的に書いているといっても、それに対してのアドバイスを行っている。本来であれば、法律が定まっていないのだから、あなた方は中期計画を書く必要がありませんよと言うのが私は当然だろうと思うんです。つまり、一方で法律の整備はしない。条約などを制定する場合には法律を、関係法律を制定してから条約を結ぶことになっています。それは何かというと、今の国内の規定は憲法があって、そして条約があって国内法があるからです。
 そこで、一方、憲法に立ち返って考えてみますと、憲法の七十三条に、内閣は「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」、四項のところに、「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。」とございます。つまり、私は、今、遠山文部大臣がおやりになっていることは、それをお認めになっていることは、実は憲法の七十三条に抵触するんではないかと、私はそう考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 七十三条の、内閣の行うべきことが書いてあるわけでございますけれども、法律の、法案の提出をした段階で、それが成立した場合に非常に大きな変革を伴う場合には準備をしておくということの重要性につきましては、山本委員も午前中の審議の際に明確に準備行為というのは当然であるというふうにおっしゃいましたが、私どももむしろそのことは世の中に対して、あるいはその大きな変革を担おうとする大学に対してそれなりの準備、心構えというものが重要でございまして、そうしたことについて法案の成立というものを待って、本格的なことはもちろんそれからやるわけでございますけれども、必要なことはやっていくというのは私どもとしては当然のことではないかというふうに考えております。
 しかも、今回の一連のいろんな資料のことについて御指摘ございましたけれども、午前中の審議の冒頭にお話ししましたように、それらが各大学のいろんな場所で受け取られ方が、必ずしもその趣旨が十分徹底していなかったということで過重な作業になってしまったような、そのようなことの御指摘があったことについては心からおわびをするということでございます。
 しかし、この一定の法案の成立があった場合に対しての準備を行うという点におきましては、私としては憲法というものに抵触しているというふうなことではないというふうに考えております。
○櫻井充君 法律が制定されていない。業務を執行しているわけですから、業務の執行権というのは法律が、根拠法があって業務を執行することができます。そうすると、中期目標を、曲がりなりにも自主的なと言いながらアドバイスを行っている。じゃなければ、もっと言いましょうか。
 ここに資料があるんですが、これは概算要求の参考資料として、もう人事のことにまでついてかなり詳しく踏み込んだものになっています。この法律違反のまず前に、この法案の一番大きな基本的な考え方は、ここに書いてありますが、要するに予算や組織、人事など様々な面で規制が大幅に緩和されるんだと、大学の裁量が拡大するというような積極的な発想に立った法律なんだと、こうなっているわけですが、それじゃ、十六年度の国立大学の法人教職員の数とか、それから予算はどうなるのかといいますと、このような事務連絡がもう全部配られておりましてね、大臣、そしてそこの中に、もう学生数に基づいて標準の教員数が定められているだけではなくて、しかも人件費試算単価表まで付けられております。しかも、東京大学などは調整手当が付いて一二%増しだと。我が地域の東北大学は田舎にあるせいか調整手当は三%付かないとか、こんな事細かなことまで指示されているわけですね。これが自主性を重んじるような国立大学の法人になるんでしょうか、大臣。
○国務大臣(遠山敦子君) 今の御質問は、今年五月三十日付けで各大学に対して平成十六年度概算要求参考資料、これは特殊要因等調べということでございますが、それについて照会をしているということにかかわる御質問ではないかと思っております。
○櫻井充君 それとは違います。それとは違います。じゃ、改めて質問します。
○国務大臣(遠山敦子君) それでは、この作業のために大学がどの程度の──これとは違いますか。
○櫻井充君 それとは違います。
○国務大臣(遠山敦子君) それでは、先ほどの御質問の点は、いろんな積算の資料でありますとか人事に関する、あるいは給与に関するいろんな様々な積算についてまで明示して作業をしているというのは法律の執行ではないかというお話でございますが、私はこれは執行ではないと思います。準備作業の一環であるというふうに考えております。
○櫻井充君 じゃ、自主性に反するんじゃないですか。これは基礎額を調べるものらしいんですけれども、要するに、大臣、こういうことを知らないんだと思うんですよ。知らないで、全部役所が、役人がやっていて、そのことを知らないで今多分御答弁されているんだと思うんです。
 つまり、前にもお話ししましたが、大臣、私、だまされていませんかと申し上げているのはそういうところにあるわけでして、こんな人数まで、学生の人数に対して教職員の数が定められています。そうなると、例えば小樽商科大学だったかと思いますが、現在の職員数の七三%だったかな、そのぐらいまで削減されるとか、山形大学での試算も出ているんですよ。しかも、給与も全部決まっているんですね、これ見ると。学長は一千七百万とか、これが基本単価らしくて、あとは調整費用で一二%上乗せとかなんとかまで全部定められています。
 人事や人件費なんかは、ここのところでその規制が大幅に緩和されると言っているけれども、緩和されやしないじゃないですか。そのほかに、このほかにこんな分厚い一センチもあるような特殊要因について参考資料で出せと。これ見ましたが、大変な量です。中期計画以外にこんなものまで書かされているわけですね。だから死ぬんですよ。
 いいですか、言っていることとやっていることが違うじゃないですか。しかも、大学関係者の皆さん、これ今書いているでしょう。これは私に対してどういうレクをしたかというと、概算要求のために必要なんだと。しかし、この積み上げたもので運営交付金というのが出たら、今度は、後は自由に使っていいですよと言うんですよ。じゃ、何のためにこんな分厚い資料を書かされているんですかと。根拠のためだと、根拠があって予算を積み上げているけれども、使うのは自由ですよと。こんなことのためになぜやらされなければいけないんでしょうか。おかしくないですか、やっていることが。
○国務大臣(遠山敦子君) 今の点が正に今回の大改革の特質でもあるんですね。つまり、運営交付金というものをいったん出しましたら、その中身については、使い方は自主性が認められるということなんです。
 じゃ、その最初の額をどう決めるかということなんですが、それは、全く大づかみで根拠もなく出すというようなことは国費の支出として認められるはずがございません。その運営交付金、最初の年の、仮に法律が成立した場合に運営交付金となるわけでございますけれども、最初に予算化されるところの運営交付金の額というものがきちんとリーズナブルに、また透明性を持って国民が納得できるようなものにするというための積算は要るわけですね。ですから、それは準備の一環としてやっているわけでございます。
 ですから、委員正におっしゃいましたように、それが仮に来年度の初めにおきまして運営交付金として正式に決定された場合には、それの使い方においてはそれぞれの積算とはまた別に各大学が自らの自主性によって使うことができる、そういう性質のものでございますので、御理解をいただきたいと思います。
○櫻井充君 「下記に基づき提出願います。」と書いてあります。「下記に基づき提出願います。」と。これは行政権の執行じゃないですか。根拠のない行政権の執行でしょう、大臣。
○国務大臣(遠山敦子君) 資料の種類としては、準備のための資料でございます。
○櫻井充君 それでは、中期計画の分も文部科学省で出たものも準備のための資料だから、結果的にはこれは行政の執行権ではないということになるんですね。
○国務大臣(遠山敦子君) 法律に基づく、新たに、今御議論いただいております法律が成立した後には中期目標、中期計画というものを正式にお願いすると思いますが、それは執行になると思います。しかし、今の段階でお願いしているのは未定稿の、しかも大学側からいろいろ御要請があってお作りをしている。それに乗っかって各大学が作業をしておられるというのは、これは私どもとしては正に準備の一環としてお願いをしているわけでございます。
○櫻井充君 そうすると、行政は無駄なことをやっているわけですね。つまり、本来行政というのは法律に基づいてしか仕事ができないんですよ。それ以外のことをやっているんだったら、怠慢じゃないですか。これは国家公務員法違反ですね。
○国務大臣(遠山敦子君) 私どもの法律の執行というのは、それはそれぞれの目的に乗っかってやるわけでございますが、今回、各大学が作業をしているものは、この今審議をお願いしております法案が成立し、そして法人化が図られる場合に備えて準備をしているわけでございまして、それは、大学の新たな設置形態に基づく活動というものが円滑に行われるための、あるいは国費の支出というものができるための、そのための準備であるわけでございまして、私としては正に準備の一環として作業がなされているというふうに考えております。
○櫻井充君 準備の一環としてそのようなことを請求しても構わないという根拠法はどこにありますか。
○国務大臣(遠山敦子君) 根拠法と申しますが、これは行政の持つ、私は行政の事務の一つとしてお願いできるものだと考えております。
○櫻井充君 その行政権限を定めているものは、じゃどこにあるんですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 各省の設置法の根拠が、根拠があると思います。それは明確に、じゃ、どの準備資料についてお願いしたらいいとか、細々と書かれているものではございませんけれども、行政の事務を円滑に進めるための必要なことについてできるといいますものは、私はそれは権限の一部としてあり得るというふうに考えております。
○櫻井充君 その条文の中身を教えてください。どのものをどのように解釈すれば、法律に書いていないことに対して執行、執行でなくても結構です、そのような準備段階で、準備段階で行うことができることの根拠を教えていただけますか。
○国務大臣(遠山敦子君) 法人の設立前におきましても、中期目標などの素案の作成あるいは概算要求の手続など事実行為としての準備作業を法人化が予定されている機関及びその職員が行うことが可能でございまして、こうした事実行為を行うに当たりましては、特段法律上の規定によらず、機関の権限と責任において行うことができるわけでございます。このことは先行する独立行政法人においても同様であるわけでございます。これは既に国会答弁にもあるわけでございます。
 国立大学の法人につきましては、国立大学法人法において、原則として現在の国立大学の学長が国立大学法人の学長となること、あるいは国立大学に属する職員といいますものは国立大学法人に当然に引き継がれること、さらに、国立大学に関する国の権利及び義務は国立大学法人に引き継がれることなどを前提に現在の国立大学法人は法人化後の国立大学となり、両者は同一性を有することが特に法定されております。
 したがって……
○委員長(大野つや子君) 簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学法人の設立に向けた作業といいますものは、基本的には法律上、法人化後の国立大学と同一性を有する現在の国立大学が行うことが最も適切でございまして、法制的にも予定されているものでございます。その他更に御説明が必要であれば詳細を御説明したいと存じます。
○櫻井充君 これは委員会止めていただけないんだったら、もうあとは質問しなくてもいいですよ、私、今日は。根拠法になるものだけ示してくれと、その条文を読んでくださいと、設置法にあると言ったんですよ、読んでくださいよ、そこを。
○国務大臣(遠山敦子君) 各行政機関がそれぞれの責任と権限を行使するということはできるわけでございまして、先ほど申しましたような中身につきましては、事実行為を行うに当たって特段法律上の規定によらずできるということにつきましては先行する独立行政法人においても同様であるわけでございます。
○櫻井充君 私は、だから条文、遠山大臣、勘違いしないでいただきたいのは、私は独立行政法人化賛成ですからね。ただし、今の内容が悪いと言っているだけの話でして。そういう意味で別に反対のためにやっているんじゃないんです。中身が問題だからやっているんです。
 今の御答弁で、いいですか、私は、これが最後です。根拠になる条文を示してくださいと言っているんです。条文がないんであれば、今回はこういう形で特例で認めさせてくれと言えばそれで済むことなんですよ。そういうことでしょう。条文があるのかないのか私は聞いているんですよ。
○国務大臣(遠山敦子君) あえて条文というお尋ねでございますので、これは御説明させていただきますけれども、文部科学省設置法におきまして、第二章第二節「文部科学省の任務及び所掌事務」でございますが、第四条第十五号でございますけれども、大学及び高等専門学校における教育の振興に関する企画及び立案並びに援助、助言に関することという規定がございます。
○櫻井充君 それは法律に従ってそのことをやりますと書いてあるのであって、根拠法がなきゃ駄目なんですよ。そして、その根拠法の上には、この法律が正しいかどうかはその上に憲法があるんですよ、大臣。だから、それを根拠法とおっしゃるんであれば全然違いますよ、考え方が。行政のトップとしてふさわしくないんじゃないですか、そんな答弁じゃ。
○国務大臣(遠山敦子君) 先ほども申しましたように、法律、準則主義というのは当然ながらあるわけでございますが、ただ法律が細々としたことについてすべて書いてあるものではございません。私どもの行っておりますことは、設置法の中できちんとした守備範囲があるわけでございまして、大学における教育の振興に関する企画及び立案、そして援助、助言という中に入るわけでございまして、その意味では、私としてはこの法律に基づいてやっているわけでございます。
 また、別の委員会での国会答弁でも明らかなように、こういう事柄については事実行為としてできるということが明確に国会の場で認められているわけでございます。
○櫻井充君 与党の理事の方にも聞いていただきたいんですが、これが国会の議論でしょうか。法律があって、この国は法治国家のはずです。憲法があって、法律があって、そしてそれを執行するのが行政の権限であって、それ以上のものをやっていることに対してきちんと認めるべきだと私は思うんですね。別にこのことだけ細かくやろうと思っているわけでも何でもないんです。ただし、問題がかなり多くあるから、これから本当は中期目標の話をしたかったんです、こんなことで時間をつぶしたくなかったんですよ。これは是非、今の答弁で本当にいいとお考えなんですか。
 私は、これは与党の理事の方、野党の理事の方、そして委員長に、今の答弁で本当に適切なのかどうか、そして適切だと判断されるんであればこのまま継続いたします。委員長、どうなんでしょうか。
○委員長(大野つや子君) 是非、私は、この委員会を継続していただきたいと思います。
○櫻井充君 委員長の判断がそういうことであれば仕方がないと思います。
 それでは、中期目標をじゃなぜ定めなきゃいけないのか。もう時間がありませんが、じゃこれは国の権限で、国立大学だから国が責任を持たなきゃいけないんだと、そうおっしゃるのであれば、文部科学省に中期目標があるんですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、大学は、大学自身の持つそれはその社会的存在としての大きな目標なり理想なりというのがあると思いますし、それぞれの大学が長期的なあるいはその設置の理念というものをお持ちだと思います。
 中期目標といいますものは、そういう長期的な目標なり理念なりというものを前提にした上で、各大学においてこの期間はじゃこういうことに目標を置いてやりましょうという、そういう短期的なものであると思っております。しかも、これにつきまして、中期目標を決定するという際には、国立大学については事前に国立大学自体の原案を聴くことになっておりますし、それに対して十分な配慮をするということになっております。また、今回の国立大学法人法の第三条では、全体としてこの法人の性格において国立大学の特性というものに配慮すべしということがあるわけでございまして、私としては今のお尋ねは、正にこの法律が国立大学法人ということで特性を持って制度設計をしている、そのことにかかわるものでございまして、それは私としましては……
○櫻井充君 答弁になっていない。全然違うよ、言っていることが。ちょっといいですか、大臣。委員長……
○国務大臣(遠山敦子君) いいえ、私としましては、やめてもよろしいわけでございますけれども、そういうふうな手続というものにおいても完備をし、そして国としては高等教育全体の在り方を見据えながら、国立大学に期待される社会的役割を踏まえて、大学との十分な意思疎通を図りながら協力してこれを作っていくという仕組みとなっているわけでございます。
○櫻井充君 そんなこと聞いていないんですよ。そうじゃなくて、大学に中期目標、国の役割だから中期目標が必要だというのであれば、文部科学省も中期目標を定めたらいかがですか。自分たちがこの国に対して一体何をやっていくのか、そういう目標を定めて、その上でほかの方々から評価していただいたらいいんじゃないですか。それをほかの人たちには中期目標を定めさせて、それでやっていく。果たしてそれじゃないと評価できないんでしょうか。東京大学にじゃ中期目標がありましたか。中期目標なくたって、東京大学はどういう役割を果たしてきたかということを評価されるじゃないですか。
 つまり、大学に目標があるから、もう一つ言うと、目標があるから、その目標に向かって努力したかしないかで判断されるからゆがむんですよ。そこがゴールになっちゃうんですよ。そういうことじゃないでしょう、研究というのは。いいですか、大臣。
 大臣、だったら、そういうことをほかの人たちに押し付けるんじゃなくて、自ら行政も、コスト分析だ何だということをされるんだとすれば、その目標があるんですか、まず。中期目標というのが文部科学省本体にあるんですか。大学法人ではなくて、文部科学省にありますか。この一点だけです。
○国務大臣(遠山敦子君) 国の行政機関のなすべきことにつきましては、憲法以下設置法、それぞれの役割というのが明確に決まっております。
○櫻井充君 国立大学法人も、一条をちょっと読んでおりませんが、今ここに、手元にないので読めませんが、きちんとした目標があるはずです、目的があるはずです。それが設置法です。そうではなくて、この設置法を実現するために今回は大学に対して中期目標を課しているんじゃないんですか。
 しかし、もう最後、時間がありませんから、大臣、私の感想、話をさせていただきますと、僕は研究をやっていた中で、目標を決めたからといってその目標どおりに研究なんて進んだことないんです、だから大学を出されたのかもしれませんが。今一緒にやっている方で、例えばこれは群馬高専の先生ですが、炭素繊維をコンクリートの中に入れて曲がる建材を作りました。これが建築素材として使えるかどうかということから始まったんです。河川工事にそのものを使いました。そうすると、ヒルが寄ってきたんですね。これは炭素を入れると全然違うかもしれないといって、今や炭素繊維を使って水の浄化と、それからそこの魚や何かの生物の復活というんでしょうか、そこで物すごく業績を上げていらっしゃいますよ。榛名湖でワカサギが釣れなくなって村が、町が随分収益が落ちましたけれども、二年間で復活するようになりました。
 じゃ、この方の目標が炭素繊維という素材を使ってコンクリートというものを、新しい建材を作るということを目標に定めさせられて、それに向かって六年間やらされていたらこういうことは起こらないわけです。研究なんてこんなものですよ。
 もう一例挙げましょう。これは東北の医学部の地方会であったことですけれども、もう四十年、五十年前の出来事です。そのときに、ある医者、研究者が、胃の中に細菌がいると、そういう報告をいたしました。その細菌がいるという報告をしたときに、胃酸の強いようなところにそういった細菌がすむはずがないんだから、東北大の研究者ともあろうものがこういった報告はあってはならぬことだからといって議事録から削除されました。しかし、後になってヘリコバクター・ピロリという菌が胃の中から見付かって、これは今や胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因だと言われていますし、胃がんに関与しているんじゃないかとも言われているわけです。
 そうすると、ある特定の個人の価値観によってそういった研究というものが価値を決められてしまうというところに私は大きな危険性があるんだと思っているんです。そういう意味において、中期目標というものを国が定めていくということは、結果的には大きな研究成果を得られないものだと、私はそう考えています。
 もう一点、要するに、先ほども申しましたが、中期目標を定める、中期計画を書く、そうすると、それに向かってどうなのかという評価だけしかされないというのは、これは大きな間違いなんですよ。そうではなくて、十年間なら十年間、六年間なら六年間自由にやらせて、何ができたのかということをチェックするべきことが極めて大事なことです。
 文部科学省は、事前関与型をやめると、事後チェックにするんだと、そういうふうにお話しされているはずです。しかし、今回のはもう事前チェックの固まりじゃないですか。そう首を振られるけれども、今までの制度と違って自由になると思っていたら、山のような資料が来て、そして中期目標などは今まで、中期計画などを書かされるのは学部を申請するときだけであって、今までの研究の中でそういうことをやれということはなかったわけです。
 その意味で、その意味で、いいですか、最後になりますが、私はそういう観点から文部科学大臣が中期目標を定めるなどということはおやめになった方がいいんじゃないだろうか、各大学の個性を重んじるということになればですね。
 そしてもう一つ、大学は大学で目標を書かなきゃいけないんです。それはだれに向かってかというと、新たに入ってくる学生さんたちや社会に対しては目標を書くんですよ、これは。これは国に対して、国というよりも文部科学省に対して書くことではなくて、国民の皆さんに書けばいいことなんです。そこに文部科学省が口出しをするということが私は一番大きな問題だと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(遠山敦子君) その観点は、これまでこの委員会でも十分に御議論をいただきました。学問の自由というものはもちろん守るわけでございますし、個々の研究者がどのような課題をどれだけの期間を掛けておやりになっても、それについて国が云々することではございません。むしろ、それは厳しく学会なりあるいは国際的な評価というものが行われるということは、これはあると思いますけれども、その点について一つ申し上げます。
 それから、文部科学大臣が勝手に決めるのはどうかというお話でございますが、そういう仕組みではないということをもう再三にわたってお答えしているところでございまして、これ以上繰り返しませんけれども、途中から突然委員におなりになりましたわけでございまして、その経緯につきまして(発言する者あり)でございますけれども、私どもとしては、きちんとその点については議論をしてまいっているわけでございまして、正にその辺が一番の誤解を生んでいるところでございますので、最も、最も私としては、このことについてはしっかりと対応しておりますし、十分こたえられる内容を持っている法案であるというふうに考えております。(発言する者あり)
○櫻井充君 ちょっと待ってください。これ、時間(発言する者あり)これはひどいよ、委員会に出てこないから、ちゃんと議事録読んでやっていますよ。何だよそれ、(発言する者あり)ひどいよ。
○委員長(大野つや子君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
○委員長(大野つや子君) 速記を起こしてください。
 ただいまの大臣の御答弁の中に不穏当と認められる言辞があったように思われますので、後刻速記録を調査の上(発言する者あり)いいですか、じゃ、ここで取消しをお願いできますか。
○国務大臣(遠山敦子君) 不穏当な点がありました点につきましては、取り消させていただきます。
○委員長(大野つや子君) 今、いらっしゃらなかったですか。(発言する者あり)じゃ、もうこのまま次に進ませていただきます。──じゃ、お願いします。
○山本香苗君 公明党の山本香苗です。
 本日の審議に至るまで、多くの関係者の方々から今回の国立大学法人化の法案につきまして御意見をいただきました。
 大学法人化という大改革につきまして賛否両論、様々な意見があると思います。しかし、法案に賛成の方も、また反対の方も、根底では皆さん大学を良くしたいという思いがあることは間違いないと思っております。とにかく今のままではいけないと、大学を活性化したいと、毎日たくさんの陳情書を受ける中でそうした関係者の方々の熱い思いを感じております。
 改革の中で、いや応がなしに大学側の意識は変わってきております。それに対しまして、以前もほかの委員の方々からもございましたが、やはり文部科学省が変わらないといけないんじゃないか、そう思っております。この点、まず最初に、遠山大臣にこの点につきましての御認識をお伺いいたします。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学の法人化は、国立大学を独立した法人とすることによって運営上の裁量を大幅に拡大する、そして各大学においてその拡大した裁量をしっかりと活用できる責任ある運営体制の確立を図るということを目的といたしております。したがいまして、今回の法人化に伴って文部科学省と国立大学の関係といいますものは、従来の内部組織としての関係から比べて限定的なものになります。
 文部科学省の業務も変化することになります。例えば、これまでの内部組織としてかかわってきた日常的な指導、助言といった関与から、大学の自主性、自律性をより尊重をして、必要な情報提供、あるいは求めに応じた指導といったより抑制的な対応の方向へ互いの関係というものを改めることが必要であると考えております。
 この点につきまして、もちろんその職員一人一人が法人化の趣旨を十分に理解をして、各大学への対応や資料のやり取りなどにおきまして大学の自主性、自律性を尊重するとの自覚を持って今後の職務に当たりますよう、省全体としての意識の改革について十分意を用いてまいりたいと考えております。
○山本香苗君 こちらの方に来ていただきました参考人の先生方の中でも、本当にこれは控え目な表現なのかどうか分かりませんが、政府、特に文部科学省の大学に対するかかわり方は決して一律ではなく、段階を踏んで変わっていくべきものであるというふうに私は考えておりますというような御発言もございました。また、新聞の中で、大学人の方が、本来の目的、今言った限定的である、抑制的なものであると、そういった形で大学に自主性、自律性を与えていくんだ、その目的から逸脱することなく官僚的体質を改め、大学に対し極力非介入の態度を貫かねばならない、今、大学は改革の痛みに耐え大きく変わろうとしている、文部科学省も大きく変わるべきであるといったことを書いていらっしゃいました。今日もずっと朝からというか、ずっとこの審議の中でいろんな御意見出てきましたけれども、今日はそういった意識を持っていただいてこの三十分間、その後の答弁にもしっかりと答えていただきたいと思っております。
 具体的な質問の方に入らせていただきたいと思いますが、検討委員会の最終報告、この中でいろいろ全部が全部尊重されたわけではなかったということで、一つ大きな問題として、最終報告では大学の設置者というところで学校教育法上国を設置者とするというふうな形にしておりますが、本法律案では設置者は各大学となっていると。この点、なぜ変わったかという質問、以前もございましたが、再度もうちょっと分かりやすく。また、ここが変わったことによりまして、多くの方々からの陳情によりますと、国による財政保障があいまいになるんじゃないかという危惧の声がございます。そういった危惧はあるのかないのか、併せて大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(遠山敦子君) 御指摘のとおり、国立大学法人法案におきましては、国が国立大学を設置するのではなく、国立大学法人が国立大学を設置するということにいたしております。
 そうなりましたのは、法令上、設置者というものは、設置する学校の土地あるいは建物などの財産を所有、管理をして、そしてその学校を直接運営するものを指すと解されております。したがいまして、法人化で国立大学を国の行政組織から切り離して、国から財産の出資を受けて、それを自らが所有、管理するとともに、法人が直接大学を運営するというふうなことになるわけでございますので、法令上は国立大学の設置者は国立大学法人とするものでございます。
 一方で、国立大学法人法におきましては、大学の設置について法律で定めますとともに、法人化後も国として必要な財源措置を行うということといたしておりまして、国を設置者とすると提言することによって法人化後も国立大学に対する国の責任を明示しようとした検討会議の最終報告の趣旨は実現されているものと考えております。
○山本香苗君 そういった国として必要な財政保障はきちんとこれからも、法人化後もしていくんだということでございますが、文部科学省としてはそういうふうな考えを持っていらっしゃると。この点につきまして財政当局との間できちんとやり取りはなされていらっしゃるんでしょうか。きちっと認識を共有されていらっしゃって、これから確実に政府として確保できるような形になっているのかどうか、その点についてお伺いいたします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、国立大学法人は国立大学の設置、運営という、国が責任を負うべき事業を担うということでございますので、独立採算制を前提とせず国からの財源措置について定めた独立行政法人通則法第四十六条の規定を準用をいたしまして、運営費交付金等の交付など国が所要の財源措置を行うということにしているところでございます。
 さらに、この独立行政法人通則法四十六条は、中央省庁等改革基本法第三十八条四号で、「国は、独立行政法人に対し、運営費の交付その他の所要の財源措置を行うものとすること。」と規定されていることを前提としておりまして、ここでも国の財源措置の責任が明示をされているということになろうかと思います。
 また、特に移行時の予算措置についてでございますけれども、平成十一年四月の中央省庁等改革推進本部決定でございます「中央省庁等改革の推進に関する方針」、ここにおきまして、移行前に必要とされた公費投入額を十分踏まえ、当該事務及び事業が確実に実施されるよう十分配慮するものとすると、こうされてございます。
 特に国立大学につきましては、当時の総務庁長官が、国立大学が独立行政法人化したとして、独立法人という言い方をしておりますけれども、その時点でこれだけの一般会計からの繰入れがあるということであれば、当面はそれを渡し切りの交付金の中で確保をしていきますと答弁をしているということもございます。
 なお、本法案の衆議院における審議でも、財務省の政府参考人の方がいらしたわけでございますけれども、国立大学法人の財源措置については、中期計画の定めるところに従いまして、運営費交付金及び施設整備費を毎年度の予算編成の中で確実に手当てをすることとしておりますと、こういう答弁もしているところでございます。
 いろいろ含めまして、国立大学の法人化によりまして国立大学に対する財源措置を含めた国の責任は変わるものではないと、こういうふうに思っておる次第でございます。
○山本香苗君 そうした財政保障の部分、これからもしっかりと財政当局との間で、今おっしゃっていただいたように確保していただきたいと思っております。
 今回の法律では、第三十三条でございますが、長期借入金や大学法人等の名称を冠する債券の発行ができることとしております。これによって多様な資金調達が可能となるように思われますが、他方、債券発行は国立大学法人の財務を企業的な経営に巻き込む可能性を高め、更に債券管理会社の大学経営に対する発言権を強める可能性を持っているという御指摘もいただきました。
 そこでお伺いしたいんですけれども、なぜ今回この第三十三条に長期借入金や債券が発行できることにされたのか、その目的は何なのか。また、併せまして、その第三十三条のところにおけます条文を見ますと、政令で定める云々というくだりがございます。その規定の意味は何か、教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(玉井日出夫君) お答え申し上げます。
 御指摘の国立大学法人法案第三十三条でございますが、第一項において、国立大学法人等は、政令で定める土地の取得等に必要な費用に充てるため、文部科学大臣の認可を受けて、長期借入金をし、又は債券を発行することができると規定しているわけですが、この長期借入金あるいは債券発行の対象につきましては、政令で附属病院の整備事業及び移転に伴う施設整備事業に限定することを予定をしているわけでございます。
 なお、第二項は、文部科学大臣の認可を受けて、長期借入金又は債券の借換えができる旨等について定めております。
 そこで、なぜこういう規定を入れているのかということでございますが、現在、国立学校特別会計におきましては、国立学校施設の整備の促進を図るために、附属病院の整備事業、それから移転に伴う施設整備事業等につきまして借入金を行うことができるということとしているわけでございまして、各大学において必要となる施設整備を安定的に実施するために、従来より長期借入金を活用した施設整備を行ってきたところでございます。
 したがって、また法案をお認めいただきました後には国立大学等の法人化、なるわけでございますが、その後の施設整備につきましては基本的には施設整備費補助金で措置をするというふうに考えておりますけれども、引き続き国立大学等の施設整備を確実に実施していくためには長期借入金又は債券発行による整備を可能とすることが必要であるというふうに考えたわけでございます。
 そして、その整備対象は、正しく先ほど政令のところで限定すると申し上げましたように、現在同様、病院収入を償還財源とする附属病院の整備、それから移転後の土地処分収入を償還財源とする移転に伴う施設整備に限定することを予定しているわけでございまして、しかも、それはこの委員会で何度か御説明いたしましたけれども、当面は独立行政法人国立大学財務・経営センターを通じた財政融資資金からの長期借入金のみを今念頭に置いているわけでございまして、もちろん、今後の財政融資資金の在り方など諸般の動向等によりましては、将来的には各法人が債券発行による資金調達を行うこともそれはあり得ると考えておりますが、当面は今申し上げた国立学校特別会計のあの機能を国立大学法人化後にも生かしていきたいと、こういう考え方でございます。
○山本香苗君 すなわち、その第三十三条におけます政令に定める云々というくだりというのは、長期借入金の方にも、また債券の方にも掛かってくると。そういうことであれば、いわゆる債券を発行して自己調達をするということは、その二つに限られるということでよろしいんですね。
○政府参考人(玉井日出夫君) 御指摘のとおりでございますし、またその借入先につきましても、先ほど申したとおり、当面は財政融資資金を、からの、通じた、独立行政法人国立大学財務・経営センターを通じた資金というふうに考えているわけでございます。
○山本香苗君 そこで、債券云々というと、私大がよく、私立大学がやっていますように、産学官連携だとかベンチャービジネスへの出資などを可能とするために置いたというわけではないということですね。
○政府参考人(玉井日出夫君) 御指摘のように、私立大学は今いわゆる学校債というものを発行できる形になっています。これは正しく多様な自己資金を調達するものであって、正に発行目的にかかわらずそれぞれの法人の判断で発行するということですけれども、しかし一方、今申し上げました国立大学法人が発行する債券は、その当該法人の経営の健全性を確保するために、債券の発行目的を収入が見込まれる附属病院の整備及び移転に伴う施設整備に限定しますし、また発行に当たっては文部科学大臣の認可を受けるという仕組みにしておりますので、両者は性格、目的を異にするものと、また手続にも異にするものと考えております。
○山本香苗君 じゃ、もう一点確認なんですが、大学がその債券による資金調達がうまくできないことに対して評価されるということはないということですね。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学法人の評価でございますけれども、これは中期目標、中期計画の達成状況を評価するということでございまして、長期借入金等の対象となります附属病院の整備事業や移転に伴う施設整備事業の実施については中期計画に記載されるということになろうかと思いますけれども、その資金調達方法まで記載するという必要はないわけでございますし、また仮に長期借入金等を実施するということにつきましては、今回の法案の中で別途、文部科学大臣の認可事項として中期計画とは別に規定をしているということもございますので、長期借入金等の取組状況がその国立大学法人評価における評価の対象になるというものではないというふうに考えております。
○山本香苗君 債券による資金調達、今御答弁あったように限られていると、誤解があるんじゃないかなという感じもしたわけですが、大学法人化によって少なくとも、大学、今までよりも企業的な経営というものに軸足がちょっと重きをなされるような感じがあるんじゃないかといった不安の声をたくさんいただきました。
 そこで問題となるのは、やはり大学の経営能力というところに行き着くわけでございますが、今まで大学はいわゆる護送船団方式でやってきた、文科省がそのはしの上げ下ろしまで指図してきたという状況の中で、一朝一夕に大学側の経営能力が付くとは思われないんです。となりますと、大学の運営の在り方とか予算の配分、教育研究組織の在り方などが学外からの経営担当者によって決定される仕組みになってしまって、教育研究に責任を持つ教職員の方々が意思決定に実質的に関与できなくなるんじゃないかという危惧をお持ちの方もいらっしゃるわけでございます。
 この危惧を払拭するような御答弁をいただきたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 法人化後の国立大学にとっては、受託研究とか寄附金等の自己財源を得るということで教育研究や学生に対するサービスの向上を増していく、そしてそれが積極的に展開できるようにということ、これは意義のあることだと思っておるわけでございますが、一方、国立大学法人というのは独立採算制ではございませんので、運営交付金等の公財政支出といいますか、それによって支えられているわけでありますから、まずその使命である教育研究の発展を図るということを第一の目的にしていかなきゃならぬと、こう考えるわけであります。
 この大学法人制度において、経営的な面に偏り過ぎるということだけではなくて、いわゆる経営面と、そして今申し上げた教学といいますか、そのバランスを取りながら運営をしていただくということがまた肝心になってくるわけでございます。
 そこで、教育課程、教員人事などのような教学に関する重要事項については、教学に関する学内の代表者で構成されております教育研究評議会が審議をすると、こういうことになっておりますし、それから一方、現在、副学長などで就任が見込まれる理事と、それから学長とで構成する役員会が設けられることになっておりますが、ここで中期目標、中期計画、あるいは予算等に関する大学運営上の重要事項について役員会の議を経ると、こういうことになっておりますので、こうした制度設計の下で、学内の教員の意見も十分に踏まえながら、経営と教学、この双方の責任者たる学長を中心にして大学運営がされていかなきゃならぬ、こういうことになっていくわけでございます。
 また、学外理事の任命については学長の裁量にゆだねられておるものでございまして、経営的な能力だけではなくて、大学の教育研究への深い理解を有して、その大学の一層の発展に尽くしてもらえるような方を選ぶと、この確保を学長はやる、その責任もあるわけでございます。
 このような全体の制度設計、そして正に適任の方を任命をいただくということによって、御心配、御指摘あったような、経営面だけが強調されて、その学外理事が主導権を握って、十分、学内の教学の面が薄れていくんだと、そういうことにならないように制度設計をされておるわけでございますので、その点の御懸念はなきものというふうに思っておるところであります。
○山本香苗君 非常に運用上、大変、運用の面でまた大変な、運用でうまくいかないといけないという、制度としてきちっとこういう形でやっているけれども、実際それがうまく機能するような形でどうにかやっていかなくちゃいけないわけでございますけれども。
 最終報告にもう一つ抜けている点があるんです。というのは、大学の業務の基本的な内容、範囲を法令等、具体的には省令で明確化する方法を工夫するという形でなっていたわけでございますが、法案からこの規定そのものはすとんと落ちているわけなんですね。ほかの委員の方々の質問に対しまして、これは中期目標で書いてもらうからそういう形になったんですよというふうな形を御答弁されていたと思います。
 この中期目標に書くということと、そしてまた省令で書くということと、これ、どう違うのか、何でその省令で書くという方向にしたのか、その点について、二点についてお伺いします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 学部、研究科、附置研究所というその国立大学の基本的な組織についてでございますが、最終報告におきましては、理由としまして、これらの組織の在り方は各大学の業務の基本的な内容と範囲と大きくかかわるものであり、あらかじめできるだけ明確にしておく必要がある、明確にしておくというのが一つあるということ。それからもう一点、一つの観点として、独立行政法人制度における各法人の内部組織が原則として各法人の判断にゆだねられているということを考慮する必要があるということで、各大学の業務の基本的な内容や範囲を法令等で明確化する方法を工夫するということが提言をされているわけでございます。
 法案の立案に当たりまして、このような提言を受けまして、学部や研究科の名称につきまして文部科学省令で規定するということも検討したわけでございますが、検討の結果、最終的には、教育研究組織の編制を始めとする大学運営につきましては大学の裁量を尊重するというその法人化の趣旨を踏まえまして、学部、研究科等の名称につきましては、文部科学省が法令で規定するということではなくて、中期目標記載事項に共通する基本的な事項として大学の意見を踏まえた形の中期目標に記載するということを予定しているということにしたわけでございます。
 これによりまして、最終報告の提言の趣旨、あらかじめ明確にする、そして内部組織は原則として各法人の判断という趣旨が実現されているというふうに考える次第でございます。
○山本香苗君 ということは、省令で書くよりも中期目標とした方が大学の自主性、自律性という大きな目的にそぐうということでございますか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) そういう考え方でございます。
○山本香苗君 それで、大学側の方も、そういった形でだったらこの意図は十分尊重されていると、そういうふうに御認識されていらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) この点につきましては、本年四月に国立大学協会の法人化特別委員会が取りまとめました見解がこれ公表されておりますけれども、そこでも同様の認識でございまして、私どもとしては大学関係者の理解も得られていると、こう思っておるところでございます。
○山本香苗君 次に、ちょっと違う話になりますが、前回質問させていただいたことでございますが、理事と役員ポストへの天下りにつきまして大臣にこういうことはないようにしてほしいというふうな話をしましたら、大臣が、これはあくまで学長が、その学長が自主的に判断するんだという趣旨の御答弁をしてくださっておりましたが、それを聞きながら、これじゃ大学側が選んでしまえばどうしようもないということなんでしょうか、何ら手だてはないということなんでしょうか。
 この法案が通った後に、例えば大学の役員会の理事の方々の名前というのは公表されます。そういったときに、文部科学省出身の方がずらっと並んだりするようなことはないということでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私はもう少し大学の自主性を信頼しているものでございます。
 法人化後の国立大学の理事につきましては、学長が自らの考え方に基づいて幅広い分野から任命することとされております。具体的には、副学長あるいは学長補佐など、現在も学長を支えて大学運営を担っている者などのほか、経済界あるいは私学関係者、高度専門職業人といった幅広い分野から適任者を登用されるのがいいのではないかなと考えております。
 いずれにしても学長の判断になるわけでございますが、その学長が適材適所の観点から自らの判断で、結果として現在の事務局長など行政経験者を理事に選任することもそれはあり得るかもしれません。しかし、理事の選任といいますものはあくまでも学長の人事権に基づくものでありまして、文部科学省としてもこのことを大学関係者に対して十分に説明し理解を得るよう、それが必要であれば努めていきたいというふうに考えております。
○山本香苗君 大学側の良識的な対応というものに期待するという大臣のその御意見というのは分かるんです。私も、いろいろ、片方で公務員改革とかもいろいろ行われております。天下りというものに対してどんどんどんどん国民の皆様方の目は厳しくなってきている状況の中で、今日朝ぱっと新聞を見たら、東京新聞に大きく見出しが出ていたわけでございます。それが本当かどうかというのはちょっと私には分からないわけでございますが、国民の皆様方のこの意識というものは省庁の皆様方とちょっとずれがあるんじゃないかと思います。
 大学側が、要すれば、確かに大学運営がうまくいくようにいい人材を選んできてという形はもちろん必要な観点でございまして、必要な人材が必要なポストに就くことは大事なことだと思いますが、他方、こうした天下りとかわたりとか、そうしたものに対する厳しい目というものをしっかりと文部科学省が、本当にこれから教育、二十一世紀の教育行政をしっかり担っていくんだというその立場を踏まえた上で何らかの手だてをしていただけないかと思っておりますので、文部科学省としての対応も今後しっかりと検討をしていただきたいと思っております。
 もう一つ、先日お会いしました大学関係者の方からお伺いしたことなんですが、その中期目標、中期計画のことについてもういろんな議論、この委員会の中でもお話ありました。その中でその方がおっしゃっていらっしゃったことは、目標と計画を立てる際に、もう立てる際に、六年で達成可能なものにしなければならないという雰囲気がもう学内の中にあると。そうすると、自分の中の、自分の頭の中でこうしたいなと思って描いている構想、これが、その方いわく、ちょっと具体的には申し上げませんが、六年じゃちょっと無理だなと、聞いたときにちょっとこれは六年じゃ無理だろうと私も思ったんです。でも、とってもいいアイデアだなと思ったんです。そうしたものも、その方は大変おとなしそうな方でありましたけれども、言い出せないでいるということを言っていらっしゃいました。
 このような傾向が続いていくと、教育とか研究が短期的な実績を求めるものばっかりになっちゃって、知の拠点としての大学の使命が果たせなくなるというだけじゃなくて、我が国の将来的な教育研究レベルというものも低くなっていってしまうんじゃないかというおそれを抱いております。
 こうした危惧を払拭するような御答弁をしていただきたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 山本委員の御指摘の点は非常に大事な点だと思いますし、これまでの議論の中にもそういう指摘もありましたし、私の方にもそういう声が届いております。
 中期目標、中期計画、これは各大学が基本理念、長期的な目標を実現するために六年間、今後これから立てていくわけでございますね。そして、その実施のために具体的に具体化していくということでありますけれども、評価に当たってはまずは組織としてその達成状況をまず見る、これは評価することになるわけでございます。
 それで、そこで通常、個々の研究の最終的な成果が記載されるというものではなくて、評価においても必ずしも個々の研究を対象に最終的な成果が出たかどうかを評価することにならないと、こういうふうに考えておるわけでございまして、国立大学はこれまで短期間で成果の出ない地道な取組が必要な分野の研究を始めとして、我が国の学術研究の推進に大きな役割を担ってきたスーパーカミオカンデのようなああいうケースもあるわけでございます。こうした役割が、中期目標、中期計画の達成状況を評価する際においては、こうした学術研究における役割についても組織としてきちんと取り組んでいるかどうかということも重要な要素の一つに、評価する場合の重要な要素になっていくと考えておるわけでございます。
 国立大学は基礎的な学術分野の研究を推進していくという大きな役割があるわけでございますし、これはこれからもますます重要になっていくわけでありますから、法人化したがためにそういうことがおろそかになっていくということになっては大変でありますから、その辺は十分配慮して、評価の際にも十分配慮していかなきゃならぬことでございますので、御懸念の点については、十分評価の際にそのことについてはきちっと評価すべきものは評価していくという形で持っていくべきものであろうと、こういうふうに思っております。
○山本香苗君 学内でそういう雰囲気があって何か言い出せないような状況というのは、多分いろんな誤解があるんじゃないかと思います。法律が成立した後にしっかりとした、そうした中期目標、中期計画ってどういうものを書くのかというのをしっかりとした形で、適切な形で伝えていただきたいと思います。
 ちょっと時間が最後になりました。やはりその評価という部分、今評価の部分でこうしませんという話が、こうしますとかそういう話がありましたけれども、やっぱりまだまだ皆さんの中で、評価委員会の評価ってどうなるんだろうというところが一番大きなところになってくるんではないかと思いますが、この間も聞きましたが、更にこの参議院での審議を踏まえて、この評価委員会の評価、どういう形にするんだ、今の現状況におけます検討状況を教えていただきたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 評価委員会の構成等のお話として今お答えさせていただきますけれども、国立大学法人評価委員会の委員としては、社会、経済、文化等の幅広い分野の有識者を始め、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する方々によって構成することを考えておりまして、例えば国際的水準の研究に従事している方、学長経験者など大学の管理運営の責任者として従事した経験を有する方、文明や広く社会の在り方について大局的な見識を有する有識者など、公正かつ的確で大学や社会から信頼される適切な評価を実施し得る方々を選任するということを考えております。
 大学関係者につきましては、現に所属する又は過去に所属した大学の個別評価に参加することはできないとする予定でございまして、これらの委員の氏名や経歴などにつきましては社会に公表するということを考えてございます。
 組織でございますけれども、これにつきましても政令で定めるということにしておりますが、法案成立後、関係省庁とも協議しながら、パブリックコメントを通じて社会にも広く意見を求めた上で、委員の人数、任期あるいはその分科会の構成、その他会議の定足数等々議事運営に関する事項といった内容をできるだけ速やかに決定することを考えております。
 具体的には、委員の人数としましては有識者十数名程度で構成することを考えておりますし、国立大学法人と大学共同利用機関法人とをそれぞれ担当する分科会を設けるということにしておりますとともに、その下で専門的な事項について審議できるよう必要に応じ各種の部会を設置をするということなどを考えてございます。
 さらに、評価委員会の会議でございますけれども、原則として公開するということと考えておりますし、議事録も公表することを考えていますほか、評価結果を決定する前に大学から意見の申立ての機会を設けるということなども予定をしているところでございます。
○有馬朗人君 国立大学法人化に関しまして、今回は主として財政に関することと評価に関することについてお聞きいたしたいと思います。
 本題に入る前に一、二述べておきたいことがあります。
 先日も申し上げましたように、私は、一九九七年の行政改革会議で国立大学の独立行政法人化案に反対いたしました。その理由は先日述べたとおりでありますが、実はもう一つ、私が深刻に感じていたことがありました。それは、国立大学民営化の第一歩であるというおそれが感じられたからであります。議論の中にそういうことが示されました。現在も大変大勢の方たちから国立大学民営化、むしろ促進せよという方たちがおられるということを聞いております。
 そこで、今回の国立大学法人化が決して決して民営化への一歩ではないということを文部科学大臣に御確認いただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学の大きな役割といいますものは今後も変わるものではございません。
 今回の法人化は、国立大学のこれまで果たしてきたような役割を各大学が一層しっかりと担うことができるように運営システムの改革を図るということを目的としたものでございます。法人化後におきましても、国が高等教育に対する責務を果たすという観点から、所要の財源措置あるいは一定の関与を行うことが前提とされておりまして、国の事務事業として行う必要がないものを独立採算制の事業主体にゆだねるようないわゆる民営化とは全く異なるものでございます。
 欧米先進国におきましても、学校数あるいは学生数の上で国立ないしは州立といった大学が多数を占めておりますなど、国が責任を持って高等教育を支えていくという姿勢は貫かれているわけでございます。欧米先進国に比べまして日本はむしろ私学の比率が極めて高いわけでございまして、既にその意味では民営化がかなり進んでいると言っていいのかもしれませんが、国立大学は引き続き国の責任の下にその使命を果たすことが求められるものでございまして、今回の法人化を国立大学の民営化への第一歩とすることは考えていないところでございます。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 むしろ、私は、私学助成を増やすというふうな格好で、国が私学を助成していくということを更に盛んにしていただきたいと思います。ましてや、国立大学に対してはしっかりと今後も守っていただきたいと思っております。
 国公私立、様々な大学にそれぞれの使命、義務があります。そこで、国が大きく支援する国立大学の役割、位置付け等をこの際明確にしておく必要があるのではないかと私は考えております。
 そこで、例えば、現在お考えであります中教審での教育振興基本計画などにおいて、この国立大学が特に多くの大学の中でどういう役割を占めるべきかというふうなことについてはっきりとお決めいただければよいと思っておりますが、現在はどのようにお考えでしょうか。
○副大臣(河村建夫君) 国立大学の役割につきましては、平成十年の大学審議会答申において、公財政支出により支えられる大学であるとの特性と社会的責任を踏まえて、その果たすべき機能を十分発揮することが重要であるとされたわけでありまして、具体的に、我が国の学術、文化等の面から重要な学問分野の継承、さらに社会の変化に応じた先導的、実験的な教育研究の実施、また全国的に均衡の取れた大学配置による教育の機会均等等への確保への貢献や各地域特有の課題に応じた教育研究の実施、さらに学生が経済状況に左右されることなく高等教育を受ける機会の確保、また計画的な人材養成の実施など国の政策目標の実現などの機能を果たすことが必要であると、このように提言をされたところでございます。こうした役割や位置付けは法人化後も変わるものではなく、引き続き国の責任において国立大学としての使命を果たしていくことになると思います。
 現在でございますが、中央教育審議会においては、大学改革の進展や社会経済の状況等を見通しつつ、今後の高等教育の新たなグランドデザインについて審議されておるところでございます。これまでも、専門大学院制度がいよいよ実施され、法科大学院もいよいよ実施される、こういうことになっておりますが、こういう形で将来を見据えた国立大学の役割についても今議論が行われておるところでございます。
 また、本年三月に取りまとめられました中教審答申、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」においても、大学は知の世紀をリードする大学改革の推進に関する基本的な方向を教育振興基本計画において明らかにすることが適当であると、このように提言をされておりますので、この教育振興基本計画において国立大学の役割や位置付けも含めて大学改革の基本的方向について盛り込まれることが今検討されておると、このように思っておるところでございます。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 やはり国立大学は、あしたに利益を生み出すというふうなものではなくて、長期にわたって知の殿堂であるべきであると私は思います。そして、あしたまで、すぐに役立つというものだけではなく、それはもちろんやりますけれども、十年、百年先をねらった人間の英知を積み上げていくという努力をしていかなければなりません。これはマーケット原理、市場原理でもって行うべきことではないと私は思っております。そういう意味で、国がしっかりと国立大学、そして、できるならば私学も公立も含めて大学の役割を十分守っていただきたいと思っております。
 さて、技術的なお話になりますが、今後、国立大学は運営費交付金が一番大きな財源になります。今までの一般会計や国立大学特別会計による財務運営よりも様々な点で運営がやりやすくなると私は評価しております。例えば、予算の残余分を翌年に繰り越す手続が現在よりはるかに容易になると思います。
 そこで、現行の国立大学特別会計と運営費交付金の使い勝手の変化についてお教えください。
○政府参考人(玉井日出夫君) お答え申し上げます。
 運営費交付金につきましては、使途の特定がなく各法人の判断により弾力的な執行が可能なものとして、現在、独立行政法人において措置されておりますので、国立大学法人におきましても同様の取扱いを考えているわけでございます。
 そこで、御指摘の現行の国立学校特別会計との比較で申し上げますと、一つは、予算費目等により区分され用途が特定されていたものがいわゆる渡し切りの交付金となり、使途の内容は特定されなくなるということがございます。二つ目に、現在、施設費などの繰越しの特例を除きまして単年度での執行が原則でありましたけれども、これがプロジェクト経費等で当該年度に使い残しが生じた場合には翌年度に使用が可能となるわけでございます。三つ目に、さらには、自己収入の増収や経費節減等により剰余金が生じた場合には国立学校特別会計全体の使途に充てられていたものが、今度は各法人において一定の要件の下で中期計画にあらかじめ示された使途に充てることが可能となる。こういったいろいろな変更が行われることになります。
 したがいまして、これらの変更によって各法人の自主的な判断による機動的かつ弾力的な執行が可能になるとともに、いろんな努力というものの結果が直接国立大学法人に反映されることになる、大いに活用していただきたいと、かように思っているわけでございます。
○有馬朗人君 後でその点はしかと確認をさせていただきますので、また後ほどにその質問をさせていただきたいと思います。
 もう少し詳しく運営費交付金についてお聞きしたいのです。
 まず、教育費は学生数に比例するのか。する部分以外に特別枠があるのか。比例部分は学生一人当たりどの大学でも同じなのか、差があり得るのか。その辺についてお聞かせください。
○政府参考人(玉井日出夫君) いずれにせよ、これらは今後、法案が成立してから具体的に検討させていただくことになりますけれども、現在いろんなことで検討していることで申し上げますと、運営交付金の算定に当たりましては、学部や研究機関における学生の教育に必要な経費ということになりますが、やはりそれは学問分野等においてそれぞれちょっと単価が違うと思っておりますが、要は学問分野等に応じた学生数に基づいて、それに比例して算定するということになるというふうに今は検討をしているわけでございます。
 それから、学生一人当たりの経費などの運営交付金の具体的な算定方法、私ども今後検討することになります。したがって、今どうこうとまだ申し上げかねるわけでございますけれども、その際、各大学における教育水準を十分に維持できるといいますか、そういう低下を招くことがないように、そこは十分配慮したいというふうに考えているわけでございます。
○有馬朗人君 現行の特別会計では、講座当たりかつては実験系が八百万円、約八百万円、非実験系が約二百万円であったと思いますが、どうでしょうか。現在はどちらも約二百万円になって統一されたようですね。このいわゆる当たり校費、これは大変評判が悪い面も社会ではあるんですが、非常にいい制度なんです。アメリカなどにいてつくづく思うのは、この制度があったために基本的な教育、基本的な研究を続けられた。というわけで、私はこの当たり校費の役割というものを強く評価するものであります。
 今後は講座制がなくなりますが、競争的資金以外に教員に配分される教育研究費は幾らぐらいでしょうか。また、法人化すると講座制が各大学の自由に任されると理解していますが、正しいでしょうか。この点についてお聞きいたします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学は、基礎学問分野を始めとします我が国の学術研究の推進や研究者等の人材を育てるのに大きな役割を担っているわけでございますけれども、こういった基盤的な教育研究に必要な経費につきましては、現在いわゆる、前は当たり校費と言っておりました、それに該当します教育研究基盤校費というもので措置をしております。平成十五年度の予算では、これは総額で二千百二十九億円を計上をしているところでございます。
 法人化後の国立大学におきましても、引き続き国立大学に期待される役割を十分発揮できるよう、また基盤的な教育研究が確実に実施されるよう、従来の教育研究基盤校費も含めまして、移行前に必要とされました公費投入額を踏まえ、運営費交付金を交付するということとしております。
 今後とも、国立大学における基盤的な教育研究経費の支援に努めてまいりたいと思いますが、先生、幾らかというお話でございますけれども、これは、いわゆる運営交付金というのは使途を特定しないいわゆる渡し切りの交付金でございますし、授業料などの自己収入と併せて各法人の裁量によりまして学内配分を行うと、こういうことでございますから、総額ということではあれでございますけれども、具体に幾ら幾らというのはそれぞれになってくるだろうと、こういうふうに思っております。
○有馬朗人君 しかし、ある程度、概算要求するときにはある程度めどが付かないと困りますよね。ですから、なるべく早い時期にその辺もお決めいただきたいと思います。
 ちょっと派生的なことになって恐縮です。全く違うことでちょっとお聞きしておきたいことは、私は自分も助手をやりましたし、多くの助手を採用しておりましたけれども、その助手というのは、一人一人見ているとやはり独立した研究者である場合が非常に多いんですね。そういう意味で、助手という名前が私は気に食わない。この独立行政法人の際に助手をやめる大学が、名前をやめる大学があってもよろしいでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 教授、助教授、講師、助手でございますけれども、学校教育法でそういう職が決まり、さらにはその職務内容と。ただ、これは余りにもちょっと現代には合わないんじゃないかという御指摘もありまして、この点については検討課題の今一つになっておりまして、近い将来、中央教育審議会等での御議論をしてもらおうと、こう思っております。
 ただ、現実の問題として、例えば助手を講師に振り替えるというような話等になりますと、これは予算の範囲内で各大学が自由に決められると、こういうことになると思います。
 それから、先ほどちょっと私、お答え失念したのかと思いますけれども、講座の設置や編成も自由になるのかと、こういう話でございますけれども、これにつきましても、基本的には、法人化後は基本的には各大学の判断と、こうなってくるだろうと、こう思っております。
○有馬朗人君 ありがとうございました。私が考えていたことはほぼ一致いたしましたので安心いたしました。
 教育費についてもう少し議論を続けさせていただきます。
 私のニューヨーク州立大学での教授体験から判断いたしまして、あの競争の激しいアメリカでも教育に従事するための給料は十か月黙って出してくれました。そしてまた、例えば実験器具や教科書の購入とか教育のための費用は、要望すれば大学が出してくれました。したがって、NSF、DOE、私はDOEから研究費をもらっていましたが、DOEとかNIHなど外部から競争して研究費をもらえない人も安心して教育ができます。それは、大学が州なり財団なり様々なところから金をもらってくることと、研究を活発にやっている人々が外部からもらってくる研究費、その一部を大学がオーバーヘッドして、それを教育や地道な人文系などの基礎的学術の研究に回すことができたわけであります。もっとも、二か月分の給料は教員各々がNSF、DOE、NIH等々から研究費の一部として取ってこなければなりません。
 ここで質問をいたします。
 教育のための教員の給料や教育のための実験器具、参考書などの費用は、法人化した後の大学でも競争によらず与えられるのでしょうか。そして、与えられるようにしていただきたいと思います。先ほどちょっと高等教育局長もお答えになっておられましたが、確認させていただきます。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 法人化後の国立大学におきましても、我が国の教育研究に国立大学が果たしている重要な役割を引き続き担っていくということでございますから、今後とも国として財政措置を行うということにしておりまして、教員の給与や実験器具などを含め、教育研究の確実な実施に必要な経費につきましては、競争的資金ではない運営費交付金を交付するということにしてございます。
○有馬朗人君 それだけでは足りないという場合があると思うんですね。そこで、もちろん研究費のかなりの部分というのは科学研究費補助金のような外部資金を取ってこなければならなくなると思います。その際に是非お考えいただきたいことは、オーバーヘッドを大学の執行部が取るという制度であります。既に科研費などで一部取り入れられているようでありますが、この点につきまして、現状と将来についてお聞かせください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) いわゆるオーバーヘッドでございますけれども、私ども公式には間接経費と、こう言っておりますけれども、間接経費につきましては、各種の競争的研究資金におきまして平成十三年度より導入をしたところでございます。これは競争的資金を獲得した研究者の研究開発環境の改善あるいは大学全体の機能向上といったようなところに活用されておりまして、基盤的な研究の充実にも活用されているところでございます。
 御指摘の科学研究費補助金におきます間接経費でございますけれども、現在は研究費規模の大きい一部の研究種目におきまして導入をされておりまして、科学研究費補助金の平成十五年度予算額、一千七百六十五億円ございますが、このうち百二十五億円が間接経費として措置をされているというところでございます。平成十六年度以降、他の研究種目につきましても順次導入を図ってまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
○有馬朗人君 奨学寄附金のようなものもオーバーヘッドが取れるんでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 現在の奨学寄附金制度でございます。これは大学、委任経理金ということで、学長のといいますか、大学の裁量でございますから、使い道はもう正に大学がお決めになってということになろうかと思います。
○有馬朗人君 その辺、是非とも各大学の自由になるようにしていただきたいと思っております。
 さて、先ほどお答えいただいた運営交付金の使い勝手の問題でありますが、運営交付金の範囲内であれば大学が自由に運用できるようになることが非常に大切であると思います。そしてまた、先ほどのお答えでは、かなり自由になるようにお聞きいたしました。
 そこで、確認をさせていただきたいと思います。ある一定の項目に関して複数年度にわたる契約を行わなきゃならないような場合の予算執行、これは自由になるでしょうか。あるいは、特に外国人を採用したような場合、契約雇用のような場合、年俸制を導入したいと私は考えていますが、こういう年俸制の導入が可能になるのでしょうか。それからまた、専攻の新設・統廃合、小規模研究所等の新設・統廃合などが予算も含めて自由にできるべきだと思いますが、この点はどうでしょうか。
 このような点で、使い勝手についてお聞きいたします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学法人に対します運営交付金につきましては、使途を特定しない、いわゆる渡し切りの交付金とするということを予定しているわけでございまして、御指摘の点でございますけれども、第一点目、複数年度にわたる契約による予算執行の話でございますが、契約の主体は各国立大学法人でございまして、複数年契約も含め、契約の期間、内容は各国立大学法人が自ら決定できるというものでございます。
 それから、年俸制の話が出ましたけれども、年俸制の導入などの給与体系、これにつきましても各国立大学法人自身が定めることでございます。
 それから、専攻の新設、小規模研究所等の新設・統廃合というお話がございました。これまで機構、定員といった予算や法令によって縛られておりました大学院の専攻や研究施設の設置等につきましても、基本的には各大学の判断により可能となるわけでございます。
 こういった運営費交付金、使途を特定しない仕組みを活用することによりまして、各大学の判断によりまして機動的かつ弾力的に御指摘のような事柄に取り組むことが可能になると、こう考えております。
○有馬朗人君 大変有り難いことだと思います。
 運営費交付金になったときに私が一つ大変心配していることがありますので、お聞かせいただきたいと思います。
 それは、通常の科学研究費の配分額に比べてかなり大幅に超える、例えば百億円に近い研究が今後も一大学で行えるのであろうかということであります。大学に聞きますと、十億ぐらいまででと、こういうふうに思っている人が非常に多いんですが、私はそれでは駄目だと思うんです。
 その一番いい例がスーパーカミオカンデのようなニュートリノ天文学の研究であります。現在は東京大学から予算要求して実行していますが、運営費交付金でこのような大きな計画が実行できるのでしょうか。方針をお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(石川明君) ただいま先生からお話のありました、例えば東京大学の宇宙線研究所におけるスーパーカミオカンデは、大変今重要な研究が進められておりまして、優れた研究成果が生まれているところでございます。
 今後とも、国立大学の附置研究所等におきまして、先生今お話ございましたように、このように大型で重要な研究プロジェクトの実施というのは予想されるところでございます。このように重要と考えられます新たな大型のプロジェクトに係る施設費とか大型の設備費等というようなものにつきましては、施設費補助金というところにおいてまず措置をすることになるというふうに考えておるところでございます。
 また、そういった施設設備の運営等に係る経費につきましても、これは運営費交付金によりまして適切に対応していきたいと、このように考えているところでございます。
○有馬朗人君 是非、大型な研究が大学から提案され、それが実行できるようにしていただきたいと思います。
 スーパーカミオカンデの予算要求は私が東大総長のころでありまして、百億円近い予算であったと思いますが、それを実現してくださったことを大変さかのぼって御礼を申し上げたいと思います。
 次に、評価について考えてみます。
 私も、国の内外、東北大学の理学部、名古屋大学の理学部など、多くの大学や高エネルギー研究所などの研究所、国際原子力研究機関、IAEAの原子核データのグループの評価、国連大学の評価などを、ほとんどの場合、委員長として行ってまいりました。極めて大変なものです。これはもう本当に大変なものでありまして、数週間それに没頭しなければならないくらいのものだということをまず最初に申し上げておきたいと思います。
 各大学の教員一人一人については各大学の自己点検、自己評価が十分に行われているのでありますから、大学評価委員会等の評価は教員一人一人の段階まで至ることは原則としてないと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学法人評価でございますけれども、これは組織を対象に地域目標、地域計画の達成状況を評価するということでございますから、例えば教育面の評価につきましては、大学として目指す人材育成がなされているかどうか、あるいは教育・学習環境が適切に整備されて活用されているかどうかなど、そういった組織としての評価をするということになろうと思います。
 研究面の評価につきましても基本的に同様でございまして、評価の要素の一つとなる当該組織の研究水準を調査分析するという際にも、その構成員である教員の個別評価に関する大学から提出された資料を基に組織として総合して判定するということになると考えておりまして、その教育研究について評価をいたします大学評価・学位授与機構が教員一人一人の業績を直接評価をするということはないというふうに考えております。
○有馬朗人君 株式会社やNPOの学校を特区で作ることに私は賛成ではありません。既に学校法人という制度があり、株式会社が学校法人を作って学校を運営すれば済むことだと思うからです。
 しかし、大学の設置基準がかなりきつかったり、大学設置審議会の目がかなり厳しかったことも事実です。近年、この点、相当緩和されてきていると思います。問題は、設置された大学が本当にその質を保っているかどうかの評価であります。アメリカでは、大学評価、アクレディテーションのための協会が充実していますが、日本はまだまだです。大学基準協会がありますが、まだ十分その役割を果たしていると思えません。
 今回の法律では国立大学法人評価委員会が創設されますが、この委員はだれがどのようにして選ぶのでしょうか。外国人も入れた方が良い場合もあると思いますが、入るでしょうか。この人選も、事務局も、なるべく文部科学省と独立の方が将来は望ましいと私は思っています。しかるべき第三者的機関にゆだねるというお考えは将来ともないでしょうか。
 現在も科学研究費の第一段階審査委員は学術会議の推薦を受けています。そこで、国立大学法人評価委員の一部は国大協や大学基準協会等の推薦を受けるという考えはどうでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学の法人評価でございますけれども、国立大学に対して国が責任を持って予算を措置をするということを踏まえまして、そういう国費が有効適切に使用されたかどうかということを国として検証するという観点もあるわけでございます。こういったような評価でございますので、こういう評価を実施する国立大学法人評価委員会の委員につきましては文部科学省の責任において適切な方を人選した上で任命するということにしてございます。
 その委員は、例えば国際的水準の研究に従事している方、あるいは学長経験者、文明や広く社会の在り方に大局的な見識を有する方など、社会、経済、文化等の幅広い分野の有識者を始め、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する方々によって構成されることを考えておりますが、外国人の有識者を選任するかどうかと、こういう点につきましては、これは具体の人選の中で検討していかれることだろうと、こう思います。
 それから、その人選に当たりまして国大協や基準協会等の推薦ということは考えられないのかということでございます。先ほど申しましたように、人選については文部科学省の責任において行うということだろうと思いますけれども、御指摘のように関係団体等の声にも耳を、人選に当たっては耳を傾けるということも重要ではないかと、こう考えておる次第でございます。
 それから、外部に任せてはどうかと、こういうお話でございますけれども、やはり国立大学法人評価の性格にかんがみまして、アメリカのアクレディテーション、これは大学間の自主的な取組で、大学の質の確保、向上ということを目的としておるわけでございますけれども、ちょっとやはりこのアメリカのアクレディテーションとは異なるんではないかと、こういうふうに思うわけでございまして、やはりここは文部科学省として責任を持って取り組むことが重要ではないかと、こう考えております。
○有馬朗人君 公平に透明性のある組織を作っていただきたいと思います。
 国立大学法人の評価は、国立大学法人評価委員会、大学評価・学位授与機構、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が行うこととなりますが、大学の立場からいたしますと、同一の事項を三者それぞれに評価されることになり、その評価に追われて、本来使命であるべき教育研究への取組がおろそかになりかねないと私は心配しております。
 この三者の評価の役割分担を明確にし、大学側に過度の負担が掛からないようにすべきと考えますが、いかがでしょうか。もし調査報告のための書類等を提出させるのであれば、統一したものを一種類、一度にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学法人評価委員会でございますけれども、これは国立大学法人の業務実績全体の総合的な評価を行うものでございます。このうち教育研究面の評価につきましては、専門的な観点から大学評価・学位授与機構に実施を要請して、その結果を尊重すると、こういう仕組みになっておるわけでございます。この国立大学法人評価でございますが、国立大学に対して国が責任を持って予算を措置をすることを踏まえまして、その国費が有効適切に使用されたかどうかということを国として検証する観点から、各国立大学法人の中期目標、中期計画の達成状況を評価するものでございます。総務省の評価委員会でございますけれども、国立大学法人制度における評価機能を客観的、中立的な立場から二次評価をするというものであるわけでございます。
 このように各評価機関の役割は明確に整理されていると考えておりまして、国立大学法人が同一の事項についてそれぞれの評価機関から重複して評価を受けるということはないような仕組みとなっていると考えておる次第でございます。したがいまして、国立大学法人が同一の事項について作成する資料は一種類になるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
○有馬朗人君 また、総務省の評価委員会についてお聞きいたしたいと思いますが、各省の先行独立行政法人を評価するに当たって各法人に対して直接資料を請求していると聞いておりますが、国立大学法人につきましては、国立大学法人評価委員会や大学評価・学位授与機構が様々な資料やデータを基にしてきちっと評価を行うため、総務省の評価委員会が個々の大学に直接資料等を請求するようなことは、大学に請求するようなことによって大学に負担を掛けないようにしていただきたいと思いますが、総務省はどうお考えでしょうか。
○政府参考人(田村政志君) お答えいたします。
 総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会は、各府省が行った一次評価の結果について二次評価を行うに当たりまして、各府省の評価委員会がどのようなデータ、資料などに基づきどのような結論に達したかという評価のプロセスを確認するということで対応してございます。
 その際、業務実績報告書や公表資料などからは当該プロセスを確認できなかった場合、各府省の評価委員会に対して一次評価の際に別途参照した資料等の提供をお願いしてきております。しかし、一次評価の結果の二次評価を行う総務省の評価委員会の評価の性格上、評価に当たって個別の法人に直接データ、資料等の提供を要請することは基本的には想定されておりませんので、今ある独法、昨年の評価の際もそのような直接の要請は行っていないところでございます。
 このような取扱いは国立大学法人についても同様であると考えておりまして、私どもの、総務省の評価委員会は、国立大学法人評価委員会に対して一次評価の際に用いた資料等の提供を要請することは、評価委員会に対してはあり得ますけれども、直接国立大学法人に対して要請するということは基本的には想定をされていないところでございます。
 また、先ほど委員長のお許しを得て発言をさせていただきましたが、勧告、総務省の評価委員会が行う勧告の際についても十分その辺は留意をして対応してまいりたいと思っております。
○有馬朗人君 繰り返しになりますが、要は国立大学が自主的に教育研究のため最善の努力ができるようにすべきであり、その努力に悪影響を与えるような煩瑣な評価であってはならないと思います。法三章という言葉がありますが、法は三章をもって足りるというような精神でやっていただきたいと思います。抑えるのではなく、育てる、励ますという精神で評価をやっていただきたいと思いますが、お願いできますでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学の法人化に伴って導入されます評価の仕組みにつきましては、最終的には各大学の教育研究が一層発展し、個性豊かな大学作りに資するものであることが必要であると思います。評価を受けるための作業が大学にとって過度の負担となって、教育研究活動に取り組む上でかえって支障となるようなことがあってはならないことは当然でございまして、先ほどもお答えしたとおりでございます。
 したがいまして、実際の評価に際しましては、各大学が実施する自己点検・評価の結果を始め、可能な限り既存の資料を活用するなど、効率的な評価となるよう工夫をし、大学側にとって過度の負担となることがないよう、これは十分に留意していかなくてはならないというふうに思っております。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 度々私は、古くは湯川秀樹先生の中間子理論、朝永振一郎先生のくりこみ理論、福井謙一先生のフロンティア電子理論、最近では野依さんの触媒による不斉合成、小柴昌俊さんのニュートリノ天文学のどれもがボトムアップの精神によって成功した大研究であり、ボトムアップの精神によって伸びた大研究であり、トップダウンで行われたものではないということを繰り返し強調してまいりました。この委員会でも質疑が中期目標、中期計画に集中しましたが、やはりトップダウン的になるというおそれを感じる人々が多いからだと思います。
 しかし、第三十条三項に「文部科学大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、国立大学法人等の意見を聴き、当該意見に配慮するとともに、評価委員会の意見を聴かなければならない。」とあります。文部大臣が将来この点を十分御配慮くださることをここで御確認をいただけますでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 有馬委員御指摘のとおりでございまして、大学における研究といいますものは、ボトムアップ精神といいますか、研究者が自ら発想をして自由濶達な研究をしていただくというところが正に生命線であると考えております。その研究者の自由かつ柔軟な発想を大切にするということは非常に大事なことと考えます。
 中期目標、これは、大学運営の基本的方針や大学として重点的に取り組むものを中心に全学的にわたる事項について記載されるものでありまして、個々の研究内容について記載されるものではないわけでございます。さらに、中期目標を定めたり変更する際にも、各大学法人の意見に十分に配慮していくということは確保されるわけでございまして、正に先生がおっしゃるようなボトムアップ精神に基づいてすべて対応していくということが非常に大事でございますし、私どもとしても、今後、そういう運用に際しましてはそのことの精神を貫いていく必要があると思っております。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 今後とも、大学が知の継承・発展の中心として自由に活躍できるように、そして基礎学術、基礎科学の教育研究を今まで以上に大切にして、国立、公立、私立を問わず、大学を財政的にもっとしっかり支援をしてくださることをお願いをいたしたいと思います。
 文部大臣及び副大臣に一言ずつ、絶対やるとおっしゃっていただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) そもそも今回の国立大学法人化を法律としてお願いしておりますのは、正にそのことを更に徹底するためでございます。
 かつて野依先生が、ノーベル化学賞をお受けになりましたときにお電話で直ちに言っていただきましたことは、文部科学省が長年にわたり科研費等によって基礎的な自分の研究を支えてくれたその成果によるものであって、心から感謝するというお話を聞きました。
 私どもは、そのようなことをやっていくのが我が省の役割でございまして、基礎的な学問分野を含めて、多様で質の高い教育研究を行うという国立大学の使命が全うされるようにしっかり支援していくことが大事だと思っております。
 同時に、もう研究、研究というふうにおっしゃいますけれども、大学は研究だけではなくて教育も大事であり、そして社会貢献も大事でございます。研究の自由はしっかり確保いたしますけれども、大学全体として優れた人材の育成、そして社会への貢献というものを忘れないでいただきたいとは思います。科学技術基本計画におきましても、人類の知的資産の拡充に貢献する基礎研究を重視して、そして着実に推進すべきことが強調されております。
 我が省としましても、いろんな補助金あるいは施設の整備、各般の整備に更に努めてまいる所存でございますけれども、その際に、基礎的な学問分野の重視ということについては徹底して考えてまいりたいというふうに思うところでございます。
○副大臣(河村建夫君) もう大臣から御答弁がございました。尽きているわけでございますが、これからの二十一世紀が懸かっておりますし、特に日本の進むべき科学技術創造立国、こういうことを考えますと、大学の振興といいますか、特に基礎科学、基礎学術、科学の教育そして研究、これを今まで以上に力を入れていく、非常に大事なことでございますので、全力を尽くして財政的にもしっかりバックアップしてまいりたいと、このように思います。
○委員長(大野つや子君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十四分散会