第156回国会 文教科学委員会 第18号
平成十五年六月五日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 六月五日
    辞任         補欠選任
     山根 隆治君     浅尾慶一郎君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         大野つや子君
    理 事
                仲道 俊哉君
                橋本 聖子君
                佐藤 泰介君
                山本 香苗君
                林  紀子君
    委 員
                有馬 朗人君
                有村 治子君
                大仁田 厚君
                北岡 秀二君
                後藤 博子君
                中曽根弘文君
                岩本  司君
                江本 孟紀君
                神本美恵子君
                山根 隆治君
                草川 昭三君
                畑野 君枝君
                西岡 武夫君
                山本 正和君
   国務大臣
       文部科学大臣   遠山 敦子君
   副大臣
       文部科学副大臣  河村 建夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        巻端 俊兒君
   政府参考人
       文部科学大臣官
       房総括審議官   玉井日出夫君
       文部科学大臣官
       房審議官     樋口 修資君
       文部科学省初等
       中等教育局長   矢野 重典君
       文部科学省高等
       教育局長     遠藤純一郎君
       文部科学省高等
       教育局私学部長  加茂川幸夫君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国立大学法人法案(内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人国立高等専門学校機構法案(内閣
 提出、衆議院送付)
○独立行政法人大学評価・学位授与機構法案(内
 閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人国立大学財務・経営センター法案
 (内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人メディア教育開発センター法案(
 内閣提出、衆議院送付)
○国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備
 等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

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○委員長(大野つや子君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に文部科学大臣官房総括審議官玉井日出夫君、文部科学大臣官房審議官樋口修資君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君及び文部科学省高等教育局私学部長加茂川幸夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大野つや子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(大野つや子君) 国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の六案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○北岡秀二君 久しぶりに質問をさせていただきたいと思います。今日は、私の方は、国立大学法人を中心に質問をさせていただきたいと思います。
 もう既に何回か質疑をやられていらっしゃるわけでございますが、国立大学につきましては、もう皆さん方御承知のとおり、戦後の果たしてきた役割というのは非常に大きなものがあるように私は感じております。
 すなわち、技術革新のもう先駆者であったり、あるいは研究開発、各方面にわたっても多大な御貢献をいただいておる。そしてまた、大変有為な人材を戦後の高度成長あるいは日本のこの豊かな社会をつくるに当たって多く輩出をしていただいておる。さらに、私、個人的に特に感じることは、地域にあっては、私は徳島県で、徳島大学の存在ということを考えてみますと、地域のそれこそ学術の殿堂、本当に、特に私どものところでは工学部、医学部を中心に、県内の主要な人材というのは徳大を卒業されていらっしゃるし、そしてまた、なおかついろんな分野で地域貢献も非常に大きくされてこられた。本当に今日までの国立大学が果たしてきた役割というのは非常に大きなものがあろうかと思うわけでございます。
 ただ、私どもも感じておることの一つに、近年、国立大学の存在ということを考えてきたときに、当然、私学がどんどんどんどんいろんな意味で幅を利かせてき始めた、いろんな体制も整ってき始めた。そういうところで、今申し上げました私どもの郷土にとりましても、国立大学の存在自体がややもすると過去の大きな存在から比べるとだんだんだんだん希薄になりつつある。当然、有馬先生いらっしゃいますが、東京大学を中心に、日本の中枢的な役割を担う大きな国立大学の存在としてはまだまだ私は大きな意味というのはあるように感じるんですが、全般的に申し上げますと、今申し上げたとおり、大きな大きな曲がり角に差し掛かっているであろうと。
 そしてまた、なおかつ国際環境の変化等々を考えてみますと、我が国の国際競争力をもっともっと付けていかなければならない、技術革新を更に更に進めていかなければならない。そういう状況であったり、あるいは、これはもう大学のみならず教育全般ですね、本来の教育の在り方をもう一度見直していくべきじゃなかろうかというような、これまた教育全般にまたがっての大きな変革期に差し掛かってきておると。
 そういう転換期、大きな転換期にある状況にありまして、国立大学ということを考えてみますと、確かに制度疲労を起こしておるんじゃなかろうか、その辺りを何とか変えていかなければならない。
 私は、このたびの国立大学に関連する一連の改革というのは、基本的には、その辺りの体質改善に根本から切り込むという観点から、賛成であるというような立場を取らせていただくわけでございますが、ただ、一部の方が不安に感じていらっしゃるとおり、基本的なところからの大きな改革であるだけに不安が伴うのも当然でございますし、そしてまた、国立大学が今度新たに法人格を持つということによって、先ほど申し上げました私学との違い、国立大学、国立の大学とする理由、存在意義は一体何であるんであろうか、根本的な問題がこれまで以上に問われることになると私は思うものであります。
 こういったところから、基本的なところから何点かまずお伺いしたいんですが、今申し上げました今日に至るまでの国立大学の存在意義について、もう既に、四年制大学のうち、学校数では七五%、学生数の八〇%を私立大学が占めておると。一つの見方を申し上げますれば、我が国の高等教育は、これは一つの側面でございますが、私学が支えておるというような状況だろうと思うんです。こういった中で、国立大学が独自の存在理由、意義を示すことは大変難しいように思われておるだろうと思うわけでございますが、戦前は、特に戦前は国家枢要の人材育成が国立大学の使命とうたわれておりましたが、今日に至るまで、現在の国立大学の存在意義を文部省はどういうふうにとらえていらっしゃったのか、まずお伺いを申し上げたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 我が国の大学制度でございますが、国公私立大学がそれぞれの設置形態の下で役割を分担しながら、教育研究水準の向上と全体としての多様かつ特色ある発展を遂げてきたわけでございますが、中でも私立大学は、御指摘のように大学数でも学生数でも大きな割合を占めているわけでございます。これらの私立大学は、各大学の建学の精神にのっとりまして、自主的な運営を行い、それぞれに特色ある教育研究を展開するところに特徴があるわけでございます。
 国立大学は、このような状況の中で、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うということ、それから学問分野のバランスの取れた人材養成に大きな役割を果たしていること、地域間のバランスの取れた配置によりまして、地域の活性化や学生の進学機会の確保に貢献しているというようなことなどの点におきまして大きな役割を果たしているというふうに考えておる次第でございます。
○北岡秀二君 平成十年の大学審議会の答申におきまして、国立大学につきまして、国費により支えられているという安定性や国の判断で定員管理等が可能であるなどの特性を踏まえ、その社会的責任として、計画的な人材育成の実施などを政策目標、など政策目標の実現、社会的な需要は少ないが重要な学問分野の継承、先導的、実験的な教育研究の実施、各地域特有の課題に応じた教育研究とその解決への貢献などの機能を果たすべきことが期待されているというふうに述べられておるわけでございますが、今答弁されたことも併せて、このような一つの存在意義というのは法人化後も変わらないと考えてよろしいんでございますでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 端的に申し上げれば、変わらない、むしろその役割を更に発展させていくということであろうかと思います。今引用いただきました平成十年の大学審議会答申、これはタイトルから、「二十一世紀の大学像と今後の改革方策について」ということで、日本の大学が国公私を通じて競争的な環境の中で個性が輝く大学になってもらうようにということで、その在り方を論じていただいて、私は大変優れた答申であったと思いますが、その中で、国立大学は公財政支出により支えられる大学であるとの特性、そして社会的責任を踏まえてその果たすべき機能というものを十分に発揮するということを求めているわけでございます。
 今回の法人化は、国からの一定の財源措置というものを前提として各大学の自律的、自主的な運営を促すということでございまして、日本の高等教育、それから学術研究の水準の向上、それから地域間、学問分野間のバランスの取れた発展というようなことを目指しておりまして、現在、国立大学が果たしている役割を一層しっかり果たさせるようにするということを目的とするものでございます。
 したがいまして、冒頭にも言いましたように、国立大学が持っている大変国にとっての重要な役割、特に二十一世紀における知の拠点として、私学とともに、公立とともに、設置形態の特色を生かして、国立大学というものはしっかりとそのあるべき使命を発揮してもらう、そのために私ども今回の法案を提示をいたしまして、日本の知の世界が大きく輝いていく、そして活力ある社会にしてもらうための必要な人材を育成してもらう、そのようなことを目指しているわけでございまして、国立大学の役割は普遍である、あるいは更に発展してもらいたいということを申し上げたいと思います。
○北岡秀二君 先ほど申し上げましたとおり、日本全体の教育が正にもう大きな大きな過渡期に差し掛かってきておる、そしてまた、なおかつなかなか新しい一つの指標というのが見いだせない。私、今、大臣が答弁されていらっしゃったとおり、変わらないと、そしてまた更に発展させるんだというようなお話がございましたが、私はこれは非常にそういう面では容易なことじゃない、そしてまた、なおかつそれだけに大変基本的なところでよっぽど重大な覚悟がなければその辺りの、過去にあったように、教育研究分野で日本の国を本当に力強くリードしていくと、そういう場面を復活をさせようと思えば、今申し上げましたとおり、相当な覚悟でこの改革というのに取り組んでいかなければ駄目だろうと思います。是非ともその辺り、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 今のことに関連してなんですが、先ほど申し上げましたとおり、国立大学の一つの大きな今まで果たしてきた役割の中に、各都道府県どういう地域にいらっしゃっても大学進学の機会あるいは生涯学習の機会をずっと提供し続けてこられた。全国どこでもアクセスされるように配置されておられるわけでございまして、私も一番最初申し上げましたとおり、地方にあっては非常に心強い存在、そしてまたいろんな分野で学術関係の、あるいは人材輩出関係の中心的な役割を担ってきたという、これまた非常に大きな、一つの側面ではございますが、使命がございました。このユニバーサルアクセスのための高等教育機関としての役割、地域に貢献する国立大学という観点は、今度の法人化後、長期的に見てどういうふうに変遷をしていくのか、文部省自体のお考えをお伺いを申し上げたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 北岡委員御指摘のとおり、地方の国立大学が果たしてきた地域貢献というのは非常に大きいものがある、私も全く同感でございます。今回の大学法人化に伴ってその機能をもっと高めていきたい、こう考えておるところでございます。
 御指摘のとおり、全国四十七都道府県にそれぞれ国立大学を置く、これによって高等教育の機会均等等にも大きな貢献をしておりますし、地域の人材育成あるいは産業、文化、この発展に非常に大きな役割を果たしてきたわけでございます。今回、その国立大学が果たしてまいりました役割を更に一層積極的に展開するために、まずその運営の仕組みというものをもっと改革をしていく必要があるということもございましたし、各大学の研究教育、研究の活性化といいますか大学の活性化につなげていく、あるいは個性化、そういうものをこの法人化によって進めてまいりたいと期待をしておるわけでございます。
 そして、地方の国立大学がそれぞれ担ってきた役割というもの、これは法人化後においても高めることはあれ低くなることはないわけでありまして、これから更に地元の自治体との連携あるいは産業との連携、そういうものも容易になってまいりまして、恐らく地域が持っている個性的な特色ある教育機関、研究あるいは地域貢献策、そういうものにそれぞれの大学が積極的にかかわっていただきたいと、こう思っておるわけでございます。
 TLOあるいは知的クラスター、これは文部科学省も推薦をしておりますし、それから産業経済省辺りもいわゆる産業クラスターといいますか、それぞれの地域、それはやっぱり大学を中心に考えている、こういうことでございまして、委員御指摘のユニバーサルアクセスという観点からも、今回の法人化は大きな一つそれの出発点になる、こういうふうに考えておるところでございます。
○北岡秀二君 今のことにも関連するわけでございますが、今後の国立大学の変遷ということを考えていくときに、地域間格差が生まれるんじゃなかろうかという危惧もございます。と申しますのは、評価というシステムの中で、当然、財政的な問題あるいはお金の提供の問題というのは付いて回るわけでございまして、今現在、各地域の地方大学、地域事情によりまして学部あるいは組織規模等々様々な形態を取られておられる、そしてまた、なおかつ地理的なハンディと申しますか、いろんな地理的条件あるいは地域事情等々がございまして、各大学大学、地方大学にあってはどうしても規模のメリット、スケールメリットをなかなか出しづらいし、そしてまた、なおかつその地域の中にどういう人材輩出が要求されておられるかというような状況等々にもその大学の存在自体も非常に影響を受ける。
 非常に、先ほど申し上げましたとおり、今後国立大学法人が実行される過程の中で、当然中期目標と中期計画、あるいはそれに関連する評価というのが付いて回るだけに、いろんな心配される部分がございます。ややもするとハンディを持つことにもなるし、いろんな意味で先ほど申し上げました地域間格差というのが発生する可能性がある。そういう面で、各国立大学の置かれた環境の違いをどういうふうに考えて、そしてまた、なおかつ法人化後の資源配分等に反映させていかれるのか、基本的なお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 御指摘のように、それぞれの国立大学が置かれております地域環境は異なっておりまして、例えば都市部の大学と地方の大学という視点から見ますと、都市部の大学は、都市に様々な機能が集積しているということを生かしました幅広い産学連携が可能となる一方で、地域社会とのつながりがややもすれば希薄になりがちであるということでありますのに対しまして、地方の大学におきましては、地元の社会や産業界との緊密な連携の下に地域振興の拠点としての役割が期待されているといったようなことなどがあるかと思います。
 それぞれ国立大学におきましては、このような地域環境の違いや地域や社会の要請を踏まえながら、法人化を契機にそれぞれの大学がより特色を明確にしまして、その役割を一層果たしていくことが求められているということだと思います。
 このため、各大学に対する資源配分ということに当たりましても、まず、大学ごとにそれぞれの地域環境等を十分に踏まえました中期目標、中期計画を策定をしまして、その中期目標、中期計画に基づき、当該大学の個性を生かした教育研究活動を確実に実施できるよう、国としても必要な財源を措置するということにしているわけでございます。これによりまして、各大学が地域の事情にも対応しました特色ある取組を積極的に展開できるものと期待をしているところでございます。
○北岡秀二君 もう一つ、ちょっと今のことに関連して。
 数年前から国立大学の再編・統合の取組が、これは文部省主導かあるいは自発的にやられているのか、十分ちょっと私も承知しておりませんが、ある程度促しながら、今国会でも約十組の統合が行われておられる。再編・統合が着手をされて、順調にと申しますか、それなりにここまで進行しておる。
 これはもう基本的には、ある程度長期的な一つの見通しというか、需要と供給に基づいて、必要とあらば更に再編をしていかなければならないという状況なんだろうと思うんですが、この再編・統合の流れ、法人化後、更に続いていかれるものであるか、あるいは文部省自身、この再編・統合についてどういうスタンスで臨んでいらっしゃるのか、今後、何らかの統合計画あるいは統合の対象となる基準、ガイドラインを示すのか、お教えをいただきたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学の再編・統合でございますけれども、それぞれの大学の枠にとらわれずに、限られた資源の有効活用によりまして教育研究基盤の強化を図るということでございます。各大学におきまして、それぞれの教育研究の将来の発展という視点から、また更なる活性化の好機として幅広く検討がなされてきておるわけでございます。
 御指摘ございましたように、その結果、平成十四年十月に二組四大学、四大学が二大学に統合した。それから、今国会で成立をさせていただきました国立学校設置法、それに基づきまして、十五年、本年十月に十組二十大学の統合が予定されているということでございます。さらに、合意ができておりますものとしては、一組三大学、これが十七年十月の統合に向けて合意をしているということもございまして、再編・統合の検討がそれぞれの大学におきまして着実に進展をしているのではないか、こう思っておる次第でございます。
 文部科学省といたしましては、各大学が地域の実情等に応じまして自主的に検討していただくということが基本であり重要だと、こう考えておりまして、再編・統合の一般的な基準やガイドラインを設けるといったような考えはないわけでございますが、各大学が法人化された後も個性と特色のある大学となるよう必要な支援や助言をしていくこととしておる次第でございます。
 このような考え方に立ちまして、各大学における検討の熟度等を踏まえながら、また地元関係者等の理解と協力も得ながら、諸条件の整ったものから再編・統合を図ってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
○北岡秀二君 これはもういつの時代でもそうなんですが、再編・統合するときというのは大変難しい問題が発生する。
 ただ、一つ言えることは、規模の問題じゃない。どうしても、規模じゃなくて、あるいは需要と供給のバランスといういろんな問題もあるだろうと思うんですが、基本的には、小さくても、あるいは少なくても非常に価値のあるものがございます、どの分野でもそうなんですが。その辺り、大学独自でその辺りは判断しつつ、そしてまた、なおかつ文部省もできるだけそういう部分では、やらなければならない部分とどうしても守っていかなければならないところというその辺りの取捨選択というのは、大きな目で見ながら是非とも見守っていただきたいというふうに感じるわけでございます。
 それともう一つ、国立大学の大きな特色の一つに、過去に果たしてきた役割の大きな特色の一つに、安い授業料であったと。これも、非常にそういう部分というのは、日本の国全体、高学歴社会を迎えるに当たっての果たしてきた役割も非常に大きなものもございますし、そういう特色もございましたが、この低廉な授業料について、授業料の一部自由化が実施される状況になったり、これも法人化されると今後かなり大きく変わっていくんじゃなかろうかというような推測もされておるわけでございますが、文部省としてこの授業料についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、あるべき姿、その辺り、お考えをお示しをいただきたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 先ほどから御説明させていただきますように、国立大学は全国的に均衡の取れた配置によりまして地域の教育、文化、産業の基盤を支えまして、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供する上で重要な役割を果たしてきております。こういった国立大学の役割は、法人化それ自体によって変わるものではないと、こう思っておるわけでございます。
 したがいまして、法人化後の授業料は各国立大学法人が定めるということになりますけれども、今後とも、このような国立大学の役割にかんがみまして、国立大学に対しまして、必要な財源措置など国の事業としての責任を持って対応しながら、その授業料につきましては、学生が経済的理由により国立大学への進学を断念するということのないよう、適切なものとなるよう努めていきたいと、こう考えておる次第でございます。
○北岡秀二君 さらに、教育と研究のバランスということでちょっとお伺いを申し上げたいんですが、国立大学の果たすべき役割、大まかに申し上げると、教育、研究、社会貢献、大くくりに申し上げると大体この三つぐらいじゃないかなと思うんですが、当然、今後、国立法人化されると、教育分野に非常に優れた、特化した大学もひょっとしたらできるかも分からないし、研究分野だけに特化されるところ、あるいは社会貢献に特化されるところ、その辺りのそれぞれに更に更に特色を出そうという試みもなされるだろうと思います。
 ただ、過去にあっては、これはもうつい先日の参考人の先生方の御意見をお伺いしても共通して出てまいったことなんですが、国立大学というのは、ややもすると研究にばかり関心が向き、学生の教育、人材育成には余り熱心ではなかったんじゃなかろうかと、その辺りの批判もございましたし、この前、学長先生とかその辺り、御出席をされていらっしゃってもその辺り、自らその辺りをお認めになっていらっしゃったところもございます。ただ、これから国立大学法人としてスタートをされる、そしてまたいろんな意味で評価をされるということを考えてみると、当然人材を育成する教育分野にもどうしてもこれから力を入れていかざるを得ないだろうと思います。
 そしてまた、なおかつ今の日本の社会ということを考えてみますと、技術革新やそういうところの分野でも、私はもう以前から感じておったんですが、先端の技術革新をどんどんどんどん追求する、研究開発をどんどんどんどん追求すると。それと同時に、それにまつわるすそ野の技術者というか、もう最先端の、もうそれに従事する直接の人材のみならず、研究者のみならず、それをフォローアップする企業サイドや、社会全般にまたがって、研究分野に所属しているわけではないんですが、それの橋渡し役をする人材、あるいはいろんなところで、研究者でもない、技術者でもないんですが、それなりの高い知識をあるいは素養を身に付けた人材というのが特に今の日本社会の中で必要とされておるように私は感じております。
 そういう観点から申し上げると、今申し上げました国立大学自身が今まで研究分野に非常に力を注いでおった部分、これどうしてもそういう観点から申し上げると、方向転換をしていかなければならない、いま一度教育の原点に立ち返ってバランスを取り直していかなければならないというのも一つの大きな至上命令になってくるだろうと思うんです。
 そういう面で、教育機能の在り方を私は国立大学に、もう各大学において再検討をしてみる必要がある。国立大学の教育機能はいかにあるべきか、文部大臣自体どういうふうに御認識をされておられるか、お伺いしたい。そしてまた、なおかつ評価が難しいとされる今の人材育成、教育機能に関して積極的に取り組む大学をどのように評価し、支援していくのか、お伺いをしたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 北岡委員御指摘のとおり、国立大学の新しい役割の中にいわゆる教育、研究、社会貢献といいますか、こういうものがあるわけでございます。そして、委員も御指摘のように、ややもすると大学は研究に偏っているんではないかという声もありますし、国民の期待は、むしろ第一義的には教育機関として教育機能をしっかり果たしてもらいたい、こういう声があることは事実でございます。
 したがって、これからこの今回の法人化によって教育機能を高めてもらいたいと、そのことを思っておるわけでございますが、特に今後、各大学がそうした教育機能をどういうふうに発揮するかということを、これは評価も受けるわけでございますが、委員も御指摘のように、教育活動の評価というのはなかなか難しい点もあるわけでございまして、そういうことに対しては、やっぱり教員が教育面の業績評価をやって国民の期待にこたえたいということで、そういう大学も増えつつあることも事実でございます。
 例えば、各科目の授業計画を示したシラバス、もう事前にこういう教育をこういうふうにやりますということを教授自らが発表される、あるいは教育内容、方法を改善する、さらにそれを教員同士がお互いに見せ合って向上しようとする、ファカルティーディベロプメントなんて、こういう表現をしておりますが、そういう取組もなされておりますし、さらに成績評価を厳格にひとつしようというような、そういう成績評価の方法を取り入れる等々多様な取組を今やっておるようなわけでございます。
 そうして、さらに学生自らにも授業に対する評価をしてもらう。これももう大多数、八割、九割の大学がそれを取り入れておるようなわけでございますが、そうした中にあるわけでございますけれども、今回の国立大学の法人化によって大学の教育機能の充実と、こういう観点に立ったやはり意識改革といいますか、そうした意識改革を行うようにそれを取り組む一つの大きな契機になるべきものであると、このように考えております。
 法人化することによりまして、法令や予算による制約も緩和をされますし、学内の資源配分を弾力的に行うことができると、あるいは各大学が学生のニーズを十分踏まえながら、柔軟なカリキュラムを作ったり、あるいは学科、コース、そうしたものの編成も可能になってくるわけでございます。さらに、教育の実施体制とか内容、方法等が評価対象にすると、含まれていくということによって授業内容が充実し、指導方法が改良、改善されるということも期待されるわけでございます。
 そうした一連の方向によって大学の教育面の充実が期待をされるというわけでございますし、このような大学の教育活動というものをこれからの法人化に伴います中期目標あるいは中期計画、こういうものに照らして法人評価の中で適切に評価をされるというものでなければならぬと、こう思っております。
 各国立大学におかれましても、是非このような法人化の趣旨を踏まえて、教育機能の充実を重視するという観点に立って、教育機関としての十分な責任を果たしていただくように大きな力を注いでもらいたいと、このように考えておるわけでございます。
○北岡秀二君 今おっしゃられましたとおり、これからは私は、この分野というのは非常に、国立大学自身が更によみがえっていくことを考えてみると、これは大事なことだろうと思います。私どももそんなに高い研究者、教育レベルをお持ちの方との余り付き合いはないんですが、数少ない付き合いの中でも、教授、先生方が一番の価値観というか、目指しているところというのは研究成果を上げて何ぼと。私はこれだけの研究をやってこれだけの大きな成果を生み出しましたと、そういう雰囲気というのは伝わってくるわけなんですよね。本当に私はこれだけの人材を育成していますと、これだけすばらしい日本の国のための有為な人材を私の授業によってつくりましたと、そういう自負心をお持ちの方というのは余り巡り合ったことがない。
 私はそういう面で、これからこういうふうに法人化をされるに当たって、今の教員の資質の問題、そういう方向転換の問題も含めて、今ちょっと横文字で難しい話をされて、FDというんですか、横文字で難しい話をされていらっしゃっておられましたが、さらにこれからいろんな中期目標等々を提示する過程の中で、より具体的にその辺りの本来の大学の原点に立った使命というのを達成できるように方向転換をしていかなければならないだろうと。その辺りは是非とも今後の文部省のかかわりの中で強く御指導いただきたい。
 当然、私がこういうことを申し上げると、これから研究を中心にやらなくていいんだということではございません。当然、日本は貿易立国でもございますし、科学技術立国ということで、その辺りの中枢を担っていただける大学の研究分野も更に更に増強していくと同時に、もう一つの車の、車の両輪じゃないですが、もう一つの柱というのを是非ともこのたびの基本的な改革の中で打ち立てていただきたいというふうに感じるわけでございます。
 私は、もう一つこれ付け加えて申し上げると、それをやれば基本的に今、日本の、我が国が抱えておる、小学校、中学校、高校も含めて、教育分野の根本的な改革の大きな切り口につながっていくような感じがします。是非とも、その辺りも重要なことでございますので、河村副大臣おっしゃったとおりの今後の方針で強力に取り組んでいただきたいと思う次第でございます。
 そういう面で、評価ということが大事になりますが、評価についての総まとめの質問はもう一つ次にお伺いしたいと思うんですが、その評価に関連して、これから学内のお金の問題、資源配分の問題に関して、旧来は多分ある程度文部科学省の方から算定基準、基本的ないろんな基準があって、算定基準に即した形で資源配分がなされ、それに準じてまた学内でも資源配分をするという、ある程度積み上げてこられた、そしてまた、なおかつ悪く言えば、過去の習慣に基づいていろいろもう順次学内の資源配分もされていらっしゃっただろうと思うんです。
 しかし、今度こういう改正、法改正になって新しく基本的な大学の体制が変わる中で、大きく変わる中の一つに、学内でのその辺り、お金の資源配分、かなり自由度が増してくる、そしてまた、なおかつ学長並びにその辺りの経営スタッフというのか、その辺りの当然権限も大きくなってきますし、ある程度自由に資源配分がされていく。これにいろんなこれから工夫も必要でしょうし、その辺りに従事される学長さん始め責任ある立場の方というのは大変御苦労されるだろうと思うんです。ただ、御苦労されて、これからその辺りの自由自在、自由自在と言うとちょっと語弊があるかも分かりませんが、弾力的に、そしてまためり張りを付けた学内の資源配分をこれから執り行うに当たって、結果的に評価制度があるだけに評価委員会の、国立大学評価委員会の評価においてこういった経営面での評価、しっかりしていかなければならないだろうと思うんです。
 そういう面で、学内の資源配分に対してどういうふうなお考えをお持ちなのか、そしてまた、なおかつそういった経営面の取組、どう評価されていくのか、基本的なところのお考えをお伺いしたいと思うんですが。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学の法人評価でございますけれども、国費が有効適切に使用されたかどうかということを国として検証するという観点もあるわけでございまして、各大学の中期目標、中期計画において記載されました今御指摘の業務の運営の改善、効率化ということも一つの項目になっておるわけでございますけれども、そういったようないろんな諸事項につきましての達成状況につきまして総合的に評価をするというものでございます。
 業務運営の改善、効率化につきましては、例えば中期目標として戦略的な学内資源配分の実現に関する基本方針を設定をしまして、そして中期計画でこの方針を実現するための具体的な方策を設定をするということが考えられるところでございまして、このような中期目標、中期計画の内容に照らしまして、これがきちんと達成されているかどうかといったような状況を評価をするということになろうかと、こう思います。
 国立大学法人の評価でございますけれども、国立大学法人の業績全体について評価するものでございまして、そういう学長さんのそういった資源配分といったような、これも本当に大学の戦略そのものが出てくる大事な話でございますけれども、そういった経営面での努力についてもしっかり評価が行われるということになると考えておる次第でございます。
○北岡秀二君 ちょっと通告の順番と一つ入れ替わりましたが、評価についてもう一度、一つお伺いしたいのが、昨年の臨時国会の学校教育法改正で第三者評価制度、事前チェックから事後チェックへということで、それが新しくスタートするわけでございますが、今回の国立法人の評価制度とどういう関係になっていくか、システム的に同じ考え方で運営されていかれるのか、その辺りもちょっと併せてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 昨年の学校教育法の改正によりまして導入されました認証評価でございますが、これは国公私立大学を通じまして文部科学大臣の認証を受けた複数の評価機関が大学の教育研究、管理運営の全般につきまして全学的な状況を対象に評価を行うわけでございますが、各評価機関が定める評価基準に従いまして多元的に行われるということを想定をしておるわけでございます。そして、その目的は、大学に自己改善を促すということを目的としまして実施をされるものでございます。
 これに対しまして、今回の国立大学法人の評価でございますが、国立大学に対しまして国が所要の財政措置を行うということを踏まえまして、文部科学省の中に置かれます国立大学法人評価委員会が教育研究の質の向上、業務運営の改善、効率化、財務内容の改善等々、設定されました中期目標、中期計画に記載された事項を対象にしまして各事項における達成状況を評価をしまして、投じられました国費が有効適切に使用されたかどうかを国として検証すると、こういったような性格を持っておるわけでございます。
 したがいまして、法人化後の国立大学でございますけれども、国立大学法人委員会による評価と、それから認証評価機関による評価という二種類の評価を受けるということに相なるわけでございます。
○北岡秀二君 分かりました。
 私は、先ほどから評価についていろいろ申し上げておりますが、今までの委員会の中で中期目標、中期計画についてのいろんな質疑がなされましたが、私は、人間でも何でもそうなんですが、どこの組織でもどこのシステムでもどこの分野でもそうなんですが、最終どう評価されるか、それによってすべて、生かすも殺すも評価次第、当然目標や計画というのは、当然立派な目標が立たれて、余り細かいところを突かれるようなことのない目標が多分立つだろうと思いますし、ややもするときれい事の領域の目標も多分あるだろうし、そしてまた計画自体は当然目標に符合するような形での計画をやっていかれる。
 ただ、ここに本当の意味での魂が入るかどうかというのは、私は最終的に評価次第だろうと思います。本当にこれはもうくどく申し上げたいことなんですが、評価いかんによって今後新しく、これから国立大学が本当の意味で更に更に発展をしていこう、よみがえっていこうということからすると、ここがすべてを決するように私は感じます。本当にそういう面では評価委員会の構成であるとか評価の方針、これは多少試行錯誤しながらやっていかざるを得ないところもあるだろうとは思うんですが、基本的に今のところ、これ大事なことであるだけに、大臣の基本姿勢と、そしてまた決意のほどをお伺いを申し上げたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 評価が大事であるということは正に御指摘のとおりでございまして、日本ではなかなか評価というものがなじまない国情もあるわけでございますけれども、これからはあらゆる場面で、行政においても政策面におきましてもプラン・ドゥー・シーという、いかにその評価というものを適切なものにしていくかということが大変大事な時代に入ってまいっております。
 国立大学法人の評価につきましては、文部科学省が直接評価を行うということではございませんで、有識者で構成される国立大学法人評価委員会が総括的な角度から評価を行うわけでございますが、教育研究の中身につきましては、それは大学評価・学位授与機構の評価結果を尊重するということになっております。また、個別のことを細々と文部科学大臣が見て評価ということではございませんで、それぞれの大学における内部的な自己評価・点検というものも前提としながら行うと。
 そのようなことで評価をやってまいるわけでございますが、そういう全体構造というものを御承知の上で国立大学法人評価委員会はどのような委員をじゃ選ぶのかということにつきまして申し上げますと、社会、経済、文化などの幅広い分野の有識者を始めといたしまして、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する方々によって構成することを考えております。公正かつ的確な評価が行われるよう、適切な人を人選することにしたいという考え方でございます。
 それから、国立大学法人評価の役割は一体どうなのかということでございますが、国立大学に対して所要の予算措置、国費を投入するということを踏まえまして、その国費が有効適切に使用されたかどうかということを国として検証するという観点が大事でございまして、各大学のそれぞれの中期目標、中期計画の達成状況を評価するものでございます。
 それらは、何か、評価によって大学自体の存立の根本というものを何か左右するということではございませんで、私は、各大学における教育研究の高度化あるいは個性豊かな大学作りに資する、そのための適切な評価でなくてはいけないと、そのように考えているところでございまして、そうした評価のねらいが十分達成されるように私どもとしては十分意を用いてまいりたいと、そのような考え方でございます。
○北岡秀二君 私は、ここは非常に大事なところだろうと思うんです。と申しますのは、これはもう一般論で申し上げますが、まあこれ日本社会の非常に悪いところでもあるんだろうと思うんですが、これはもう文部科学の領域だけじゃなくて、事前規制で後はどうなろうとも全然お構いなし、結果的にもうだらだらだらだら、あるいはいい加減な状態に収まるというのは、これは地域社会の中でもそうなんですが、ありとあらゆる領域の中で、これは日本の文化かも分かりませんが、戦後作り上げてきた大きな一つの欠陥が私はあったように思います。
 それが最近、自己責任とかあるいは自律とかいうような話の中で、事後規制をもっともっとやっていこうと。これは私は、基本的に今の日本がいろんな意味で大きく大きく行き詰まってきておる部分を根本的に打開をする大きな私は手法の一つだろうと思います。
 そしてまた、なおかつ、このたび、昨年の学校教育法の改正でもそうでもございましたし、なおかつ今度の国立大学法人化をするに当たっても、資源配分ということが結果付いて回るんだろうとは思うんですが、評価制度ができ上がってきておる。私はこれは、今のちょっと大臣のニュアンス、両面に受け取られるからちょっと私は心配なところもあるんですが、評価されても私はいいだろうと思いますし、ただ、評価するに当たって間違った評価をしてしまうとやる気をなくしますし、やっぱり一生懸命頑張ってそれなりの成果を、目に見えないところでもそれなりの成果を上げておるところは的確に評価してあげるということが最終的には活力にもつながっていくし、活性化にもつながっていくし、新しい発展にもつながっていくだろうと思います。
 ですから、私は、非常に難しい分野であるだけに、いきなりがちがちに構えて、大上段に構えて大なたを振るうということまでは望みませんが、それなりに、今後生かすも殺すもという観点からすると、中期目標の六年の間にそれができるかどうかは別にして、それこそ五年、十年、二十年のサイクルで、しっかりとした評価システム、しっかりとした評価委員会の確立、試行錯誤は私はあって当然だろうと思うんですが、是非ともその辺りの心意気というか、その辺り、トータル、大所高所、あるいはつかず離れず指導していく文部省のお立場として、是非ともその辺りの重要性の認識と覚悟はしていただきたいなというふうに感じる次第でございます。
 それともう一点、国立大学のその大学院がこれからどうなるのか。
 昨年も、これも同じように学校教育法改正で専門職の大学院の制度化がされた。いろんな意味で、ロースクール、ビジネススクール、いろんな分野の人材、その大学、高度な知識、技能を持たれたその人材も社会の要求としてその必要性が出てきておりますし、過去にあっての旧来の大学院、研究の場として研さんを積んでいく、そしてまた成果を出すという大学院、これも法人化されて以降、先ほどの話ではないですが、評価が付きまとう過程の中で、大学院の姿もこれから変わっていく可能性もある。
 その辺り、環境変化の中で、今後、国立大学の大学院に何を求め、その使命をいかに考えていらっしゃるのか、この節目にもう一度お伺いしたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 御指摘のとおり、これから大学院の果たす役割というのはますます高まってくるであろう、またそうでなければならぬと、こう思っておるわけでございます。そういう意味で、大学院というものは重要な位置付けになっておるわけでございます。
 今後は、基礎はしっかりやりますけれども、さらに、研究者や高度の専門的知識を有した人材をつくるという、こういうことでございまして、特に国立大学において、現実に大学院修士課程の学生の五八%、また博士課程においても七一%は国立大学が占めておるわけでございます。特に技術系といいますか、理科系、理工系を見ますと、更にその比率は高うございまして、修士課程の学生の六六%、博士課程の八三%が国立大学ということでございますから、この分野における研究者を始めとする人材育成、こういう面で大きな貢献をしているわけでございます。
 この使命、役割というものは、この法人化によって変わるどころか、もっと高めていってもらわなきゃならぬ、こう思っておるわけでございまして、法人化によって、産官学連携等々、いろんな意味で、いわゆる科目の取り方の緩和とか、いろんなこのメリットが生かされると、こう思っておりまして、やっぱりそれぞれの大学院が自主的な取組で是非その優れた教育あるいは特色ある研究、これに積極的に取り組んでもらって、やっぱり、あそこの大学のこういう大学院に行きたいと、学生が選ぶ場合もそういうふうな形にこれからなっていく、魅力ある大学院を形成してもらいたいと思っていますし、いよいよ専門職大学院、当面は法科大学院ができるわけでございますが、これから恐らく各大学が持っている大学院はまたその方へも変わっていくわけでございまして、ますます大学の役割、使命、高まってまいりますので、この法人化を契機に一層ひとつその役割を高めていただきたいと、このように考えておるところでございます。
○北岡秀二君 先日、この委員会で参考人の御意見をいろいろお伺いしました。参考人の御意見に基づいて、数点ちょっと更に付け加えてお伺いをさせていただきたいと思います。
 いろいろ意見がございましたが、その中の一つに、国立大学の法人化はこの法案が成立したとしてもそれで終わりというわけではない、いかにして各大学がスムーズに実行に移すかによってその成否が懸かっている、法人化の立ち上げの際はもとより、その後しっかりと軌道に乗るまで十分な支援体制が必要であるというような意見がございました。
 当然そうですよね。いろんな部分、すべてではございませんが、根っこの部分から制度が変わっていくということでございますので、劇的にそう大きく学校の内部が変わったり学校の姿が変わるということではないだろうと思うんですが、基本的なところを変えるに当たって、これからシステムが本当の意味で機能するまでの間というのは大変だろうと思います。ですから、文部科学省は法人化の際の支援そして法人化後の支援をどういうふうに考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 法人化につきましては、それぞれの大学もそうでございますけれども、国立大学協会、ここがやはり共通の課題ということで、今、移行に向けたいろんな、移行後の話でもございますけれども、いろんな検討を行っているということでございますから、その国立大学協会と私どもとの間で意思疎通を密にするということが大事だと思いますし、また、それぞれの大学、法人化になりましたら、これはどうなんだろうかというような、いろんな制度上等の疑問がいろいろ抱いているわけでございますので、そういう疑問に対応していくということなど大学関係者との連携を十分に図っていくことが重要だと、こう思っております。
 具体的に申しますと、国立大学協会の中でも法人化特別委員会と、こういうところでこの問題は扱っておりますけれども、そこでいろんな共通的な課題についての検討をしておりますけれども、そこに対しまして一〇〇%の協力をしていきたいということもございますし、本省に個別の大学からの問い合わせに対応するための相談の窓口といったようなものも設置をしてございます。それから、法人の移行に伴いまして、通常の経費等とは別に移行経費というものも必要になってまいりますので、それをしっかりと予算として確保するといったようなことなどいろんな対応を進めていきたいと、こう思っておるわけでございます。
 こういったような取組を通じまして、各大学の状況や意見の把握に努めまして、必要な情報提供を行うとともに、関係省庁とも十分に連携を図りまして各法人への移行が円滑に軌道に乗るよう支援を行ってまいりたいと、こう考えております。
○北岡秀二君 もう一点、このことにも、今のことにも関連することだろうと思うんですが、こういう御意見がございました。
 法人化によって新たな財務会計制度が導入され、また職員の身分も非公務員となるなど、あらゆるものが一新されると。これに伴い事務負担も膨大なものとなることは想像に難くないということで、法人化に伴うその事務負担、多分数年の間だろうと思うんですが、非常に増大、事務量の増大に憂いを持たれる発言もございましたが、事務負担の軽減のためにも会計制度など規制緩和を是非ともお願いしたいという意見もございまして、法人化に要する事務負担の軽減についてどういう方針で望まれるのか、これもお伺いしたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 御案内のように、これは一大事業でございますから、大変な準備も必要でございますし、また法人化になりましてもそれぞれ確立するまで大変な事務量があるだろうと、こう思うわけでございます。
 今現在、そういうことで各大学におきまして、法人化に向けまして、中期目標の原案の作成でありますとか業務方法書、会計規程、その他法人内部の規定等の作成の準備、あるいは就業規則を作るといったもろもろの事務があるわけでございまして、そういう準備が進められているところでございますが、その過程におきまして、学内で多方面にわたって議論あるいは実際の作業などが必要になってきておるわけでございます。
 国立大学の法人化は我が国の大学制度の長い歴史におきます一大転換点でございまして、移行期にありましてはこういった様々な準備作業が必要となる、これはある程度やむを得ないことはあるんではないかなと、こうも思っておるわけでございます。しかしながら、この準備作業に忙殺されまして、結果として大学における教育研究がおろそかになるということになりましてはやはり本末転倒でございますから、文部科学省といたしましても、例えば中期目標、中期計画の作成等に係る事務手続の簡素化あるいはその必要な助言と、もろもろの準備についての必要な助言など、来年四月の円滑な移行に向けまして最大限私どもとしても努力をしてまいりたいと、こう思っております。
○北岡秀二君 もう一点、参考人から出てきた意見の中でお伺いしたい。
 ちょっとこれはもうある意味でいうと面白い御意見ですが、これから国立大学がいろんな意味で改革をされていかれる、そしてまた、なおかつ現場、大学の現場の意識もこれから徐々に徐々に多分変わっていくだろうと思います。そういう状況の中で、文部省の中にも意識改革の必要があるんじゃないかと、それを対応するですね。
 というのは、やっぱり長年国立、今日その関連の方々がいらっしゃるんだろうと思うんですが、国立大学を指導してきて、教育全般その指導してきて、先ほど申し上げたとおり、基本的に大きなところの私は違いというのは、事前規制から事後規制、そしてまた自主的にいろんなことをやっていただく、そういう分野に、これはもう本当に、先ほど申し上げたことでもあるんですが、我が国社会の文化を基本的にちょっと方向転換をさせるというところの部分もあるだろうと思います。なおかつ、国立大学が果たしてきた役割、そしてまた、なおかつこれから果たしていただきたい役割ということを考えると、私はこれはもう、今申し上げましたとおり、大所高所に立って付かず離れず側面から指導というか見守る立場にある文部省自身が、文部科学省自身が、基本的にその辺りの意識の改革も当然そうですし、なおかつこれ暗中模索のところもあるだろうと思うんですが、基本的にその辺りの姿勢、意識改革、必要になってくるだろうと思うんですが、非常に答えづらい質問かも分かりませんが、この辺りについてどういうふうな御決意をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 今御指摘の点は大変大事なことだと思っております。
 今回の法人化といいますものは、これまでの行政組織の一部としての国立大学の存在から、法人としての法人格を持ってもらって自主性、自律性を高めてもらうということでございますので、これまで日常的にかかわっていろいろ支援をしたり助言をしたりしてきた細々とした対応というやり方そのものを変えていかないといけないと思っております。
 その意味で、意識改革ということも大事でございますが、私は文部科学省内の高等教育にかかわる様々な組織の体制も変えていかなくてはならないと思っております。この法律が成立すれば本当に新しい方向が出るわけでございますので、その新たな方向に向かって意識改革及び内部の体制の改革をしていかなくてはならないと思います。文部科学省だけではなくて、関連する財務省それから総務省も通じて、私は非常に大事な点を今御指摘されたと思っております。
 具体的に申し上げれば、今おっしゃったとおりでございますけれども、これまでの毎年細々とした日常的な指導助言といった関与から、大学の自主性、自律性というものを尊重して、事後的な評価、あるいは求めに応じて適切に相談をしていくといった抑制的な対応の方向というふうに持っていかなくてはいけないと思います。大学側も、今まではすべてとにかく文部科学省へ駆け込んで相談してみてという姿勢もあったと思いますけれども、これからは自らの目標をきちっと持ち、計画も立ててやるわけでございますので、大学側も変わっていただきながら文部科学省自体も変わっていく。それによって、委員が御指摘になったような、文部科学省としては大所高所から国立大学の法人化というねらいが本当に達成されるように、自己抑制的にかつ必要なことについては援助、支援をしていく。これは、国立大学についてだけではございませんで、私学も、それから公立大学についても、日本の知を担う大学全体の活性化ないし成果を上げていただく、社会的な貢献を通じて日本を活性化していく。そのことにおいて、行政組織としての文部科学省はどうあったらいいかというようなことも含めて、大いにこの点については私どもとしても考えていこうというふうに思っております。
○北岡秀二君 ありがとうございます。
 最後に、お金の問題でもう一度確認をしたいんですが、制度改正である以上、改革である以上、当然、法人化後の国立大学への国費投入の在り方というのも当然変わっていくだろうと思います。それはもう、先ほどから何回も何回も申し上げておるとおり、評価という問題にも絡んでくるでしょうし、当然変わっていかなければならないだろうと思うんです。
 ただ、今までの御発言で、総枠は変えない、従来どおり要る部分のお金は出します、それによって国から投下するお金を削るようなことはしないというようなお話が、そういう関連の御答弁があったように思うんですが、過去にですね。ただ、そのお金の使い方自身、これから国費投入の在り方もう当然変わっていかなければならないだろうと思うんですが、この辺りの基本的な考え方をお伺い申し上げて、多少時間余るかも分かりませんが、私の質問を終わりたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、法人化後の国立大学の在り方、これはいわゆる教育機関としての機能あるいは研究機関としての機能を高めていくという方向であるわけでございますし、国立大学法人でございまして、これは私学化するわけではございません。やっぱり国がきちっとした責任を持つという観点に立っておりますから、それに見合った必要な財政措置は行う、これはもう当然のことでございます。
 しかし、その中にあって、国立大学の自主性、自律性を拡大して個性ある大学を作っていく、こうした発展を図ってもらうと、こういうことでありますから、教育研究等の実施に必要な経費として交付するこのお金は、運営交付金、これについてはいわゆる渡し切りの交付金でございますから、今までのように各項目ごとに細かく分析して渡しておった、そういうものと違います。
 それによって、各大学が自らの判断、戦略で、そして重点的にこの交付金を活用していただくことができるということ、また、中期目標あるいは中期計画、この達成状況も評価をしますから、その評価結果を踏まえて、次の中期目標、中期計画を策定する中で、更に優れた教育研究活動の拡充をする、あるいは不要な組織を縮小する、そのようなことも交付金の精算によって見直しができるということがございますので、この渡し切りの交付金については、ひとつ私どもの方としてもめり張りを付けた国費の投入でなければいかぬと、こう思っております。それをまたしっかり活用していただいてめり張りのある運営をやっていただきたいと、このように考えておるところでございます。
○北岡秀二君 もう結論で私も終わりたいと思うんですが、今、正に河村副大臣おっしゃられたとおり、めり張りを付けると。そしてまた、なおかつ一連の私も中心で申し上げましたが、評価に基づいてめり張りを付ける部分、すべて評価に準じることではないんだろうと思うんですが、本当にそういう部分というのが、今後基本的にはこの新しい法人が生かされるか殺されるか、もうすべてそこに集約されるだろうと思います。
 本当に、是非とも、これは大事な改革でございますし、そしてまた、なおかつ全く未知の分野に投入される部分もございますので、一発に大きく劇的には変わらないだろうと思いますが、ある程度じっくりと腰を落ち着けて今後の生かされた改革に臨んでいただきたいことをお願いを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○神本美恵子君 民主党・新緑風会の神本美恵子でございます。
 これまで、衆議院での議論、議事録を読ませていただきましたし、それから参議院に移りましてからの議論をお聞きしまして、この国立大学法人法案について中心的に議論がされてきておりますけれども、私はお聞きしながら、大体何のための改革なのか、これは大学改革の一貫であるというふうにずっと御答弁なされておりますけれども、行革・人減らしのための改革ではないかという疑念がいまだに払拭できずにおりますし、本当に学問の自由や大学の自治といったようなものが確保されるのか、文科省のより一層の支配が強まるのではないかというような疑念もまだ払拭できずにおります。
 本当に、教育研究の充実発展、それから、大学が活性化して国際的にもこれまで以上の役割を果たしていけるような、そういう大学改革になるものなのかという点で疑問を抱きながら議論を聞いてきておりますけれども、この国立大学法人法案に関してまだ触れられていない点についても幾つか、それから、今国会にはこの委員会には六本の法案が付託されておりますけれども、その中で、国立高等専門学校機構法案、それからこの法人法案に伴って関係法律整備法案というのも出されておりますので、そういった点についても御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、法人法案についてですけれども、今、北岡委員からも幾つか参考人の意見が御紹介されておりましたが、私も、この参考人の方々から、本当に正に大学の現場にいる方による実感のこもったお話、実際その渦中にいる方でないと分からないお話をお聞きしまして、大変、自分自身は、大学といいますと、学生の経験からしか、その立場からしか見えていなかった部分が本当にたくさんあるんだなということを感じて、大学の内部で今本当に改革のあらしといいますか、これがいいあらしなのか、いい刺激なのかどうかというのはこれからだと思いますが、その内部にいての怒りにも似た参考人の御意見もお聞きしましたし、そういった観点から幾つかお伺いしたいと思います。
 その一つが、小規模大学、小規模研究所の方々が抱いている危惧の問題です。
 お茶の水女子大学の本田学長や大阪社研の小野教授のお話では、大学や研究所の統廃合ということにおいて、小規模なところは小規模というだけでもうマイナス評価で俎上に、統廃合の俎上に上りやすいというふうに受け止められているお話がございました。現に大阪大学の社研では俎上に上ったということで、実地体験というお話がございましたけれども、お茶の水女子大学の本田学長は、今回の法人化によって自分のところのような小規模大学は真っ先に消されてしまうのではないかという不安もお話しなさいました。
 また、評価という点についても、国際競争のあらしが吹き荒れる中で、競争原理の中で、自分のところのように、共生、ともに生きるということを理念として掲げてやってきている大学は存在意義が認められない、評価されないのではないかというような危惧も出されておりました。
 一つ、まずこのような小規模大学、研究所の不安や危惧についてどのように認識していらっしゃるかということが一点と。
 続けて、その評価の問題ですけれども、これについても多くの指摘がございました。それは、引用して申し上げますと、現代の研究分野は非常に細分化されており、一定の事柄の立派な専門家であっても他の分野では素人である、例えば分野別に専門家による評価が行われるといっても、結局は素人集団による評価になり、文部科学省の意向が強く働くのではないかというような御意見や、それから、不完全な評価とトップダウンによって、お金が取りやすくて素人受けする研究がもてはやされる傾向が生まれるのではないか、また、高等教育は本来市場でペイするようなものではない、一定のタームで成果がすぐに現れるようなものではない、したがって大学の組織、業務を評価することはできないのではないか等々の御意見もございました。
 先ほど大臣は、日本は評価になじまない国情もあるというようなことをおっしゃいましたけれども、現在も評価が行われて、その膨大な作業に評価漬けといいますか評価疲れもあるというふうなお話もございました。今回の改正によってまた評価が追加されるようですけれども、文部科学省としては、大学に対して何のためにどのような評価を行おうとしていらっしゃるのか、また、先ほど幾つか評価機関のお話が紹介されましたけれども、それぞれの評価の役割と関係はどのようなものになるのか、参考人の指摘をどのように受け止められるのかということについて、まずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) いろいろな御質問がございました。順次お答えしたいと思います。
 国立大学の再編・統合という点でございますけれども、これは、各大学の枠にとらわれないで、限られた資源の有効活用をすることによって教育研究基盤の強化を図るというためのものでございます。各大学におきましては、こういう観点に立って各々の教育研究をどう発展させるかという視点から、あるいはまた、更なる活性化の絶好のチャンスということで幅広く検討がなされてきております。我が省といたしましても、各大学における検討というものを踏まえた上で、大学同士の合意が得られる、あるいはその地域の社会との関連、そういった諸条件が整ったものについて再編・統合を進めているところでございます。
 もうこれについては何度も御説明しているわけでございますけれども、再編・統合につきましては、規模の大小によって一律に再編・統合を進めるという考えではございませんで、各大学が地域の実情等に応じて自主的に検討していただくことが重要と考えております。ねらいとしては、いかに個性輝く優れた大学、活性化した大学が生まれるかという角度であるわけでございます。先般の参考人質疑の際にも、今回の法人化ということを契機に、初めて、自らの大学が国立大学として値するのかどうか、その存在意義は何であるのかということを振り返って、しっかり議論することができたというようなお話が出たように記憶いたしております。
 正にそういった自らの大学の存在意義、特に社会の中における存在意義というものをしっかりと踏まえた上で、いかにそういう再編・統合も含めた改革に取り組んでいくかということが大事だと思っております。
 そうした自らの高い目標というものを定めて、その中で中期目標あるいは中期計画というものを作り、そして、それに対してどれだけ達成できたかということを評価していくというのが今回の大きな流れの一つであるわけでございます。
 今、委員御指摘のように、分野別の評価というのができるのかどうか、素人ができるのかどうかと、様々な御議論もあったかもしれませんけれども、私は、再三御説明しておりますように、大学におけるそれぞれの教授がどのような研究テーマを定め、どのように研究をしていくか、正にそれは学問の自由でございます。憲法に保障された学問の自由というものはしっかりと守っていくのは当然であるわけでございます。
 私どもが国立大学評価委員会を通じて見ようとしているのは、総体的に、大学がそれぞれの中期目標、中期計画に基づいてやって、それが十分成果を発揮したのかどうか、そして国費の投入として成果があったのかどうかという包括的なものを審査してもらおうというものでございまして、これは当然のことでございます。その点については、北岡委員も御指摘になったとおりでございます。
 今の御質問についてだけお答えいたしますけれども、いろんな種類の評価があると。例えば自己点検・評価といいますものは、それぞれの大学が自らの教育研究水準の向上を図って、目的あるいは社会的使命を達成するために自ら自己点検・評価を行うものでございまして、大学の自律的な活動を促す当然のものでございまして、これは既に平成三年の大学設置基準の改定で努力義務として定められ、各大学が既にやっているところでございます。
 国立大学法人の評価委員会が行います評価は、先ほど来答えておりますけれども、国費を投入するということを踏まえまして、その国費が有効適切に使用されたかどうかということを国として検証するという観点でございまして、それによって中期目標、中期計画の達成状況を評価する、そして教育研究の側面については、大学評価・学位授与機構、これはもう先行的に既に活動を始めているわけでございますが、その意見を聴くということでございまして、それらのいろんな評価というものを総合的に判断して大学についての評価というものが確立されていくというふうに考えております。
○神本美恵子君 その評価については、別の委員からは、無駄な書類を山ほど作るとか、紙の無駄というようなこともおっしゃっていました。
 幾つもの評価機関からの評価を受けるということは、それぞれの役割があって、全く不必要ということは言えないかもしれませんけれども、受ける側からすれば、自己点検、自己評価、それから学位授与機構からの評価、それから認証機関による評価、今度新しく大学法人からの評価というふうに、それに対しては報告書を当然出さなければいけないでしょうし、評価を受ける側といいますか、そちら側のこともやはり考えてやるべきではないか、また評価の基準なり在り方について、あるいは評価のプロセスの公開というようなことについても考えるべきではないかというふうなこともお話を伺いながら感じたところでございます。
 次に、中期目標、中期計画、これについても、これまで何度も議論になっておりますが、大阪大学の小野教授は、実際は大学が決めるのであって、文部科学省の関与は形式的なものだという、これはこれまで御答弁でもあったんですけれども、そうであれば、そもそも形式的なものであるならば態度で示すべきであるというふうに述べられました。これは、このような規定は無用であり、教育研究への介入の余地を残すものだとの意見だというふうに私も思います。
 このことについては、先日、我が党の鈴木委員も指摘をしましたし、届出にすべきではないかというふうな意見を申し上げたと思うんですけれども、つい近年まで、教育長の、県の教育長の任命承認制という制度がございましたけれども、この規定が実際に使われることはなくても、いわゆる伝家の宝刀のように、地方にとっては大きなおもしとなってきたという事実もございます。このようなことが大学でも起こるのではないかと。
 中期目標の作成主体は大学であるというふうにおっしゃって、ずっと答弁されておりますけれども、教育研究には自由な雰囲気が不可欠であるというふうに考えますけれども、この中期目標、中期計画の決定に関する規定が大学を実際に萎縮させる、しんしゃくするというようなことも、そういう言葉も参考人からは出ておりましたが、そういう可能性についてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
 もう一つ、糟谷参考人からは、そもそも放送大学のスキームを使うべきであった、中期目標、中期計画、業務報告書は要らないというような、断言的にそういう御意見もあったわけでございますけれども、その点についても御認識をお伺いしたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 中期目標、中期計画、法案に基づいて教育研究に文部科学省の介入の余地があるんではないかという御指摘なんでありますが、国立大学の法人化は、国の直接的な関与というものはできるだけ限定をする、各大学の運営上の自主性、自律性を拡大しながら大学が社会との連携の間で直接意思疎通を図るために新たな環境を作っていこうとするものでありますから、どうしても中期目標、中期計画、重要な仕組みであると、こう思っております。
 したがいまして、大学は何といっても、先ほど来も北岡委員も御指摘ありましたように、大学の本質的な機能である教育研究をいかに向上させて魅力的なものにするかというものでなければなりませんから、そのことをまず中期目標、中期計画に盛り込むということはこれは私は当然であろうと、こう思っておるわけでございます。
 もちろん、国が所要の財政措置を行うために中期目標の策定や中期計画の認可、これは必要最小限の関与というのは必要でありますけれども、ありますけれども、中期目標の作成において国立大学法人の意見に配慮する、あるいは大学の自主性、自律性を十分尊重することが必要であるということ、この点は法案にも組み込まれておる。特にそれを配慮しなきゃいかぬというのはそこでございます。
 そして、具体的には国立大学法人法案には、あらかじめ国立大学法人の意見を聴いて、その意見に配慮する、第三十条にあるわけでございます。そして、特に私は思うのでありますが、独立行政法人評価委員会とは別に、国立大学の法人評価委員会の意見を聴かなきゃならぬと、こうなっておるわけでございまして、中期目標、中期計画、これを定めていく場合には、必ず国立大学法人委員会の意見も聴くわけでありまして、一方的に文部科学省の方がこれに介入をしてということにはならない、私はこれを、ここで一回レビューされるわけでございます。
 そして、中期目標を定めたときには、国立大学法人に対しては、指示じゃなくて示すんだということがそこにあるわけでございまして、一方的に文部科学省がそれを示して、それをそのとおりに指示してやれと、こういうことにはならないわけでございまして、特に法律の運用に当たっては、国立大学における教育研究の特性に常に配慮しなきゃならぬということが規定されているのは正にそこにあると、こう思うわけでございます。
 なお、中期目標及び中期計画に記載をされております教育研究の質の向上に関する事項についてでありますけれども、例えば各大学が目指しております教育目標や研究水準、その実施体制などに関する事項などを想定しているわけでございますが、第一点として、記載内容は、原則として全学的な視点からのものに限って、各大学の特性を踏まえて一層の個性化を図る観点を考慮しながら明確かつ簡潔に記載することとし、第二点としては、学部や研究会における個々の子細にわたる教育研究活動についての記載は求めないこととしておる。
 こういうことでございまして、大学が自ら中期目標の原案や中期計画に記載することを希望する場合にはこれを否定するものではないわけでありまして、大学は中期目標において個々の教員の教育研究の具体的な在り方を一方的に定めるものではなくて、そういう意味から考えてみても、私は大学の教育研究に文部科学省が介入するということにはならないと、こう思っておるわけでございます。
○神本美恵子君 御説明で、三条に教育研究の特性への配慮、それから、指示ではなくて示すというふうになっているという、配慮がにじんでいることは分かるんですけれども、それでもなおやはり介入の余地を残しているのではという参考人の御意見を改めてお聞きしたわけでございます。
 次に、この法人法案に関していまだ本当に十分に議論されていないのではないかと思われる教職員の方々の問題について幾つかお伺いしたいと思います。
 それは、この法人化に伴って公務員から非公務員になられるわけですけれども、これは通則法によれば、必ずしも非公務員型にする必要はないというふうにお聞きしています。これまでもかなり議論にはなってきておりましたけれども、教職員すべてを非公務員型とする理由は何なのか、まずお伺いしたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) お答え申し上げます。
 国立大学、今回の法案は、組織や教育研究の活性化を図りましてより自律性を高めていくということでございますので、したがいまして教職員の人事がより弾力的に行われる必要があるわけでございます。
 そこで、法人化後の国立大学の教職員の身分をどうするか、大変大きな議論でございまして、様々な角度から多くの関係者によって議論がなされました。特に、国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議、個々多くの大学関係者が入られていただいた会議でございますけれども、そこが公務員型、非公務員型の比較を十分しながら御検討をいただいたわけでございます。
 そこでは、国家公務員法等にとらわれない、より柔軟で弾力的な雇用形態、給与体系、勤務時間体系が必要ではないか、外国人の学長、学部長等、管理職への登用を可能にする必要があるんではないか、あるいは兼職・兼業の弾力的な運用が必要ではないか、さらには試験採用の原則によらない専門的知識、技能等を重視した職員の採用が必要ではないか等々の弾力的な人事制度を実現し得ると、こういう意味におきまして非公務員型が適当であるというふうに判断をされたわけでございまして、その中におきましては、教職員はやはり一体的に活動するわけでございますので、全体として非公務員型という形になっていったわけでございます。
 そこで、そういう意味でなっておりますので、私どもとしては、法人化後において各国立大学が諸規則の緩和だとか大学の裁量の拡大という法人化のメリットがあるわけでございますので、そこを最大限に活用して社会から期待される責務を果たしていただきたい、かように期待をしているわけでございます。
○神本美恵子君 メリットというお話がありましたが、私は、幾つかデメリットといいますか危惧される部分もありますので、そこについて続けて御質問させていただきたいと思います。
 まず、おおよその数字で結構ですから、大学の現在の教職員を事務系、技術・技能系、医療系、教務、その他の常勤職員の数としてまず示していただきたい。
 また、大学には多くの非常勤職員がいらっしゃるというふうに参考人の発言にもございましたが、その数も示していただきたいと思います。
 また、これは、非常勤に関しては人件費ではなくて物件費で扱われているというふうにお聞きしたんですけれども、ちょっとそれはあんまりではないかという素朴な感想を抱いたんですけれども、それはどういうことになっているんでしょうか。
○政府参考人(玉井日出夫君) まず、職員の教職員数でございますが、平成十四年五月一日現在におきます国立大学、これは短大を当然含みますけれども、国立大学の常勤職員数は、事務系が二万四千五百十六人、技術・技能系が八千五百十五人、医療系が二万一千七百四十七人、教務系が七百三十六人、その他七百三十二人、それから教員が六万一千四百六十四人で、合計十一万七千七百十人というふうになっております。
 それから、お尋ねの非常勤職員でございますけれども、これは平成十四年七月一日現在でございますが、国立大学、これも短大を含んでおりますが、全体で七万二千八百二人という数になっているわけでございます。
 そこで、お尋ねの非常勤職員に係る経費でございますけれども、国立大学におきます非常勤職員のいわゆる給与関係、賃金を含めました給与関係でございますけれども、職務内容や雇用形態がそれぞれ違いますので、給与を支弁する費目、どこの費目から、国立学校特別会計のどの費目から出すかということでございますが、それは多種多様でありますが、一般的に申し上げますと、日々雇用の単純労務に服する者につきましては、主として物件費として扱われています公費、この中で賃金ということがございまして、そこから支弁されるのが一般的であります。
 また、これ以外の非常勤講師だとかあるいは非常勤医師と言われる職員がいらっしゃるわけでございますが、ここでは人件費として扱われる非常勤職員手当という費目により支弁をされているということでございます。
○神本美恵子君 今お示しいただいた非常勤の方々の職員の数、七万二千八百二人ですかね、というその方たちの問題については、この法案の基になっている、先ほどもおっしゃった調査検討会議ですかね、その報告の中ではほとんど書かれていないし、検討された形跡もちょっと見当たらなかったんですけれども、これは非常に大きな問題だと思います。
 そこで、この非常勤職員の方たちは法制度上これまでどのような位置付けにあって、例えば社会保険制度や雇用保険制度はどうなっていたのか、また今度、非公務員型になってどのようになっていくのかということについてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) 御指摘いただいたその調査検討会議でございますけれども、ここの基本的な目的は、国立大学の法人化についての組織、業務、人事制度、目標評価、財務会計制度の基本的な枠組みというものについて多くの大学関係者を始めとする有識者による検討が行われる場でございまして、その議論の中では、常勤、非常勤を併せた教職員全体の身分ということでの議論はなされたわけでございますけれども、非常勤職員のみを取り出しての議論は確かに行われていなかったと承知をしております。
 そこで、今のお尋ねの非常勤職員の法制上の位置付けでございますけれども、現在の非常勤職員は現在、国家公務員でございまして、原則として常勤職員と同様に国家公務員法や国家公務員災害補償法の適用を受けるわけでございます。ただし、社会保険制度や、あるいは御指摘の雇用保険制度につきましては、民間と同様に勤務時間数等に応じた健康保険、厚生年金等の保険制度が現在でも適用されるという仕組みになっているわけでございます。
 そこで、法人化後でございますが、国家公務員ではなくなりますので、国家公務員災害補償法ではなくて労働者災害補償保険法の適用ということになりますし、それから社会保険制度や雇用保険制度につきましては、これはこれまでどおりの扱いになるということになるわけでございます。
○神本美恵子君 この法が成立すれば、雇用の契約が来年の三月三十一日で切れるだけでなく、適用法制も身分も変っていくわけですよね。そうすると、退職金はどうなるんでしょうか、支払われるのかどうか。それから、今後の退職金制度についても教えていただきたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) 現在、国家公務員でございますので、国家公務員退職手当法によりますと、職員とみなされる、これは国家公務員退職手当は常勤が前提でございますけれども、非常勤の場合も職員とみなされる非常勤職員、これは御案内のとおり、十八日以上勤務した月が六月を超えた者というふうな一定の非常勤職員になるわけでございまして、ここが退職をしたときにはこの手当法に基づく支給率で計算した退職手当が支給されるという形になっているわけでございます。それ以外の、今の該当しない者は退職手当法の対象にはならないということになるわけでございます。
 そこで、今度は国立大学の法人化後の退職金制度がどうなるかでございますけれども、国家公務員退職手当法はもう適用されませんので、各国立大学法人がそれぞれ定める退職金などの退職金規定というものをルールとして定めていくわけでございますけれども、その退職金規定によることとなるわけでございます。
 したがって、現在、今いらっしゃる非常勤職員、先ほど申し上げました一定の非常勤職員になるわけでございますけれども、これは今までも一年を超えない範囲内で雇用しているわけでございまして、今までも雇用期間満了したときに退職手当を今の一定の退職手当法に対象になる者については支給をしているという形になるわけでございます。
○神本美恵子君 それで、非常勤職員、公務の場における非常勤職員の方はいわゆる民間法、これから民間労働法制が適用されることになるわけですけれども、パート労働、いわゆる短時間労働者に関して、今、パート労働法の見直しが厚労省の方で行われておりまして、労働政策審議会での議論を受けて二月に出された報告では、通常の労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を指針で示すというふうな報告が出され、お聞きしましたところ、厚労省の方ではその指針を速やかに作るということで今作業が進められているというふうにお聞きしたんですが、これは非常勤職員だけではなくて、ごめんなさい、非常勤の職員だけではなくて非常勤の教員にも適用されることになると考えております。
 そこで、その指針が示されれば当然これに従うことになると思いますが、文部科学省として、この民間労働法制のこういう動きも含めて、その適用に関してしっかりと大学法人の方に説明していく責務があるというふうに思います。また、必要な予算措置も行う責務があると思います。七万人を超える非常勤の教職員にかかわる生活上の問題でありますし、この問題については先日、決算委員会で私もお聞きしていたんですが、河村副大臣がお答えになっておりますので、是非ともしっかりとした対応についての御答弁をお願いしたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 今御指摘いただいた点でございます、決算委員会は時間がございませんで若干舌足らずな点もあったと思いますが、改めてお答え申し上げたいと思いますが、非常勤講師の手当については、御案内のように、一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第二項にそのことがあっておりまして、常勤を要しない職員については、各庁の長は、常勤の職員の給与との権衡、バランス、これはバランスのことでありますが、考慮して、予算の範囲内で給与を支給すると、こういうことによって予算の範囲内で各大学が決定をしてきておるわけでございます。
 今度、国立大学の法人化をいたしますと、非常勤講師についてはいわゆるパート労働法といいますか、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、この適用になっていくわけでございますから、同法によりますと、今度は「事業主は」と、こうなってきておりますが、通常の労働者との均衡等を考慮して適正な労働条件を確保すると、こうなっておるわけでございます。国立大学法人の非常勤講師の給与については、この趣旨にのっとって、この趣旨にのっとって各国立大学法人においてそれぞれの自主性、自律性の下に決定をすると、こういうことになっていくわけでございます。
 文部科学省といたしましても、国立大学法人の運営費交付金の算定に当たりましては、この法人化前における支給実績と、さきの決算委員会では支給実績等十分実績を踏まえてということを御答弁申し上げましたが、正にこの支給実績等を十分に踏まえて、今労働省の間で検討されておりますが、そうした流れといいますか、そういうものの、その趣旨にのっとって、そしてこれまでの実績、そういうものを踏まえて十分にひとつ交付金の算定をやっていきたいと、このように考えております。
○神本美恵子君 ありがとうございます。
 この非常勤職員、教職員の方々の問題については、今、私学の方では本当にいろんな労働争議といいますか、解雇の問題もありますけれども、そういう問題も起きておりますので、非公務員になって民間労働法制ですから、しっかりと労使の間で話ができるように、また今、副大臣からの御答弁いただきましたように、運営費交付金の方でしっかり現状を踏まえた上で、また新たな流れも踏まえて対応していくということで、ちょっと安心をいたしました。ありがとうございます。
 さらに、地方公務員と国立大学附属学校の関係でも問題があるというふうに感じております。それは、附属の、国立大学附属学校の教員の約五千四百人、八割に当たる人たちが人事交流で公立の教職員から国家公務員に身分を変えてこれまで勤務してきております。衆議院の答弁ではこれまでどおり大学と教育委員会の間に人事交流協定を結んで実施していくというふうにお聞きしたんですが、しかし、これから民間になるわけですから、附属に行った場合、そうするとそこでは当然、団体交渉権、労働協約締結権、争議権、いわゆる労働三権が付与されることになると思いますけれども、そういうふうに、それで間違いないんでしょうか。
○副大臣(河村建夫君) 神本委員御指摘のとおり、国立大学の附属教員の八〇%は教員が公立学校から人事交流で行っていると、そういうことでありまして、これは非常に有意義な、能力開発等々においても両者の人事交流は非常に大事なものでありますから、これからもその方針というのは変わらないと思いますが、またやらなきゃいかぬことだと思っております。
 そして、それをやる場合については、法人化後でありますから、今、委員御指摘のように、人事交流協定を結ぶことによって引き続き実施していくと、そういうことでございますし、あわせて、法人化後の国立大学の教職員は、附属学校の教職員も含めて国家公務員の身分を有しないことになりますから、当然、団結権、団体交渉権、争議権、いわゆる労働基本権三権が付与される、こういうことになるわけでございます。
○神本美恵子君 それで、それでといいますか、衆議院の委員会の中で、これは参考人質疑の中でのやり取りのようですけれども、非公務員型になると組合運動の温床化するのではないかとの指摘に対して、文部科学省が、そういうことも含め評価されるから大丈夫と答えたというふうなことが議事録に載っておりまして、私は、それを見まして、もう本当に実に不見識なやり取りではないかというふうに正直感じております。
 組合運動というのは当然の働く人たちの権利でございますし、そのことを評価の対象にしていくという、組合運動をしているとマイナス評価になるというような、抑え込もうというようなことにも私はぱっと読んで受け取ったわけですけれども、そういうことがあっては、決してあってはならないことだというふうに私は思っていますので、その点お伺いしたいのと、それから、この法人化を機に大改革をしようというその入口において、あってはならないと思いますが、不当解雇が発生したり労働問題が起きたりということは好ましくないというふうに私も思っております。
 それで、労働協約や就業規則、これはそれぞれの国立大学法人において事業所ごとに決定されるというふうに思いますけれども、私立学校においてはこういう仕組みがなくて、労働委員会などでは提訴案件が度重なり、教育分野のそういう案件が多いというふうに聞いております。非常勤も含む教職員が安心して共同して大学改革に進んでいけるように、文部科学省も国大協と十分事前に協議をして対処していかれる必要があると思いますけれども、そういったことについての今後の仕組みについてはどのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) 委員御指摘の議事録でございますが、もしか違ったら恐縮でございますけれども、私どもの承知しておる限りは、衆議院で御質問があって、質問者がその質問の中で似たような引用をされたと、こういうことであって、私どもが何か質問に対してお答えしているということではたしかなかったというふうに私は理解をしております。
 ただ、私どもは、いろんな場面でこの法人化に当たっての、こういう場合にはどうなるのか、ああいう場合にはどうなるのかという御質問を受けますし、また御説明もいたします。そういうときに、一般論でございますけれども、労使紛争により長期にわたり正常な大学運営が行われなくなるような場合どうだというような御質問も受けるわけでございますが、そのときには、そのような大学は社会一般から厳しい批判を受けるとともに評価委員会の評価等にも反映されることになるであろうということはお話しいたしますし、問われればまたそういうふうにお答えするわけでございますが、これは何ら合法的に行われるそういう行為等を抑制する趣旨のものではないことは当然でございます。
 それから、法人化後は各大学の構成員、当然のことながら、一丸となって大学の発展を図っていっていただくようなことが当然必要でございますので、したがいまして、良好な労使関係構築に向けた取組が不可欠というふうに考えておりますし、各国立大学法人において適切な対応がなされることを当然のことながら期待をしているわけでございます。
 また、国大協の御指摘もございましたが、私ども文部科学省としても、今後とも国立大学協会等と連携いたしまして、就業規則の制定等の手続が円滑に進むように各国立大学等に対して必要な情報提供を行うなどの協力は当然のことながら行ってまいりたいと、かように考えているわけでございます。
○神本美恵子君 良好な労使関係を構築していくという観点から考えていくということで、私も全くそれが必要だと思います。これまでこの委員会の中でも山本委員がよく引用されておりましたが、戦後、文部省は学校の先生方の組合を結成するようにという指導もなさったというようなことも歴史の中で私は聞かせていただきましたが、そこまでは言いませんけれども、今度、非公務員型になっていく大学法人で働く方たちの良好な労使関係が結んで、そこで良好な労働環境の中で働いて改革に邁進していけるようにというふうなことに是非御尽力いただきたいということを御要望したいと思います。
 次に、午前中の時間が余りなくなりましたが、高等専門学校機構法案について三点ほどお伺いしたいと思います。
 これは、国立高専も高等教育機関とされておりますし、行政機関を対象とする独立行政法人にはなじまないのではないか、なぜ国立大学法人法案と同じような制度設計ができなかったのかなという単純な疑問を抱いているわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 大学につきましては、学校教育法の五十二条におきまして「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、」と、こういう規定をされているわけでございます。大学は、学術の中心として、深く真理を探求することを本旨とします教育研究機関でございまして、その性格上、学問研究及びその成果の教授が外部の干渉を受けることなく自由に主体的に行われることが必要であるということで、いわゆる大学の自治が慣行として認められているわけでございます。
 このことを踏まえまして、国立大学法人法におきましては、大学における学問研究の自律性を担保するという観点から、学長の任免方法や中期目標の作成の方法等について特段の配慮をするといったようなことでの国立大学法人法となっておるわけでございます。
 これに対しまして高等専門学校でございますが、これも学校教育法第七十条の二で目的が規定されておりますけれども、ここでは、「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。」と、こう規定されております。
 高等専門学校につきましては、研究教育機関である大学とは異なりまして、実践的技術者の養成を目的とする教育機関であると位置付けられているということでございまして、このため、現在におきましても国立の高等専門学校につきましては校長の任免の判断は文部大臣が直接行っていると、こういうこと、それから教授会が置かれていないといったような、大学とは異なる制度となっているところでございまして、こういったような法律上の位置付けや役割の差を踏まえまして、国立高等専門学校につきましては、国立大学のような学問研究の自律性を担保するための特例は設けずに、原則どおり独立行政法人通則法による法人化を図るということとしているものでございます。
○神本美恵子君 法律上の位置付けの違いというふうに今御説明がございましたが、やはり高等教育機関という観点から考えますと、国立大学法人法案で、三条で教育研究への配慮義務が担保され、あるいは中期目標を示すというような配慮がされていると同じような、そのような視点がこの高専の機構法案では全く欠落しているように思います。
 それで、そうなると、他の独立行政法人と同様に、中期目標の決定は文部科学大臣が指示するというふうになるのでしょうか、確認ですが。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 先ほども申しましたように、独立行政法人通則法による法人化でございますので、その独立行政法人通則法の規定に従いまして中期目標の決定は文部科学大臣が指示するといったような形になっておるわけでございます。
○神本美恵子君 五十五の高専を一つの機構本部が取り仕切るというやり方になるわけですけれども、文部科学省の独立行政法人評価委員会の業績評価に基づいて文部科学大臣が資源配分を行うという枠組みでは、各高専の自主性や個性化あるいは活力の発揮ということができるのかどうかということについて大変私は疑念を抱くわけですけれども、この独立行政法人の仕組みにスケール、規模という観点からだけ安易に乗ったのではないかというふうに思えてならないんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 今回、国立高等専門学校を一つの機構とするということで法案を提出させていただいておるわけでございますけれども、この点につきましては、従来それぞれの学校で行われておりました業務の一部、あるいは学校の枠を超えた共通的な課題、例えばインターンシップにつきましては個々で推進するよりも全体として推進した方がいいのではないか、あるいは研修を通じました教職員の資質の向上、新たな教材の開発といったような共通的な課題につきましては、機構が行うということで法律的に対応をすることができるんではないかということがございます。
 一方で、各学校では、引き続き学校教育法上の独立した学校でございまして、機構が行う共通的な課題への取組の基礎の上に立ちまして、それぞれの学校が特色ある教育活動や学生サービスの向上に重点的に取り組むことによりまして、その自主性を一層発揮し、個性化、活性化が推進されるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
○委員長(大野つや子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時一分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(大野つや子君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、国立大学法人法案外五案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○神本美恵子君 午前中に引き続き質問させていただきます。
 午前中は国立大学法人法案を中心に質問させていただきましたが、午後は、これは実に約六十五万人の公立学校教員の給与の決め方にもかかわる大きな問題であります関係法律の整備に関する法律案を中心に御質問させていただきたいと思います。
 まず、国立大学法人法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案によって、教育公務員特例法第二十五条の五の公立学校教育公務員の給与の種類及びその額は、当分の間、国立学校の教育公務員の給与の種類及びその額を基準として定めるものとするとの規定が削除されることになっております。いわゆる公立学校教員の給与の国立学校準拠制が廃止されることになります。
 この国立学校準拠制というのは、国に準拠することによって国立学校教員の給与水準を同一として、待遇の不均衡を生じないようにして、全国的な教育水準の確保、均衡を図る、そのために設けられたものであるというふうに承知しております。
 この国立学校準拠制のこのような考え方が今回この二十五条の五の削除によって変わるわけですけれども、今回の改正によってこの考え方そのものが変更されるのかどうかということについてまずお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 今回の改正といいますものは、国立大学の法人化に伴いまして国立学校の教員が非公務員とされるということを受けまして、これまでの国立学校準拠制というのを廃止する、せざるを得ないわけでございます。各都道府県ごとが地域ごとの実態を踏まえて教員の給料や諸手当の額をより主体的に決定できるようにする。これは地方分権の流れにも沿っているわけでございます。
 しかしながら、教員の給与ということについての国の基本的な考え方といいますか、それについては変わらないものが多いわけでございまして、この法案におきましては、教員の職務と責任の特殊性に基づく現行の教員給与体系の基本は維持するということにいたしているわけでございます。
 御存じのように、教員の給与につきましては、一つは、人材確保法に基づき優遇措置を講じております。それから二つ目には、職務と責任の特殊性に基づいて定めるということになっております。また、職員の給与といいますものは、国や他の地方公務員などの給与その他の事情を考慮して定められなければならないというふうになっているわけでございまして、これは地方公務員法上のいわゆる均衡の原則というわけでございますが、それらのことはそのまま引き続き規定されているわけでございますので必要な水準は保たれるというふうに考えているわけでございます。
 教員の給与水準の確保ということによって必要な教育水準の均衡化を図るという考え方は基本的に変更がないというふうにとらえております。
○神本美恵子君 基本的に改正によって考え方が変わるものではないという御答弁をいただいたと思います。
 あと、少し細かくなっていくと思いますけれども、順次質問をしていきたいと思います。
 この現行の教育公務員特例法二十五条の五は、公立学校教員の給与を当分の間、国立学校教員給与を基準として定めるというふうにしておりまして、この規定は制定当時、国公立の教育公務員の給与を一本にした給与法の制定を予想していたためだとされております。全国的な教育水準の均衡を図るために設けられていた国立学校準拠制が廃止されるわけですので、それに代わる何らかの基準が必要ではないかというふうに思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。
○政府参考人(矢野重典君) 国立学校準拠制が廃止された後、国はそれに代わる何らかの基準を示すべきではないかというお尋ねでございますが、その点につきましては、私どもといたしましては、これは地方の権限と責任をできるだけ拡大していくという地方教育行政の改革の方向性に沿ったものといたしますために、国が公立学校教員の給与について全国的に一律に給与の額を定めるといったことは行わないということにいたしたところでございます。
 今後は、教員の職務と責任の特殊性に基づく現行の給与体系の基本は維持した上で、それぞれの都道府県が教員の職務と責任の特殊性、また人材確保の趣旨、さらには現在の教員の給与水準等を踏まえまして、人事委員会の勧告に基づいて教員の給料及び諸手当の額を定めることとなるものでございます。
○神本美恵子君 考え方も変わらずに教育水準の確保ということも考えていくということですけれども、この国立学校準拠制というのは、教育の機会均等あるいは教育水準の維持向上を全国的に保障するための方策の一つであるというふうに考えております。今後は、地方の主体性というふうにもおっしゃいましたが、都道府県の財政力によって給与水準に格差が生ずることがあるのではないかというような危惧も抱くわけですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(矢野重典君) 公立学校教員の給与につきましては、先ほど申し上げましたように、地方の権限と責任を拡大する、そういう観点から、国立大学の法人化に伴い国立学校準拠制を廃止して、各都道府県が教員の給与水準をより主体的に決定できるようにいたしたところでございます。
 他方、この法案におきましては、教員の職務と責任の特殊性に基づく現行の教員給与体系の基本、これは維持することといたしておりまして、具体的には、教員について一般の公務員給与水準に比較して優遇措置が講じられなければならないといういわゆる人材確保法の規定は維持いたします。また、教員の給与はその職務と責任の特殊性に基づき定めることといたします。さらに、地方公務員一般の原則として、教職員の給与は国や他の地方公務員の給与等を考慮して定められなければならないということがあるわけでございまして、こうしたことなどから、各都道府県における教員の給与につきましては引き続き必要な水準が保たれ、全国的に優秀な教員を確保して義務教育の水準を維持することができる、そういうふうに私どもは考えているわけでございます。
 そこで、格差ということについての御指摘がございましたが、この点については私どもは次のように考えております。
 今回の改正は、地方分権というそういう観点から、各県が地域ごとの実態を踏まえて教員の給料や諸手当の額を主体的に決定できるようにするものでございまして、その結果として、各県ごとに給料や諸手当の額に違いが生じている、これは御指摘のとおり生じてくることもあるわけでございますが、その場合でも、先ほど申し上げましたように、国や他の地方公務員の給与等を考慮して定められなければならないとされているわけでございます。
 こうしたことなどから必要な水準は保たれるわけでございまして、その上で生じてくる差異、そうした差異は、これは各都道府県が、物価などのそれぞれの地域の事情があるわけでございますが、そうしたそれぞれの事情を踏まえた各自治体の私どもは判断だというふうに考えるものでございます。
○神本美恵子君 違いは生ずるであろうが、それは必要な水準を確保した上での違いであるというふうに御答弁をいただきましたので、そうかなとも思いますけれども、今回削除される二十五条の五が制定された当時には、その解説を読んでみますと、地方教育公務員の所属する地方公共団体は、その財政能力に種々の相違があり、放任しておくならば待遇に甚だしい格差が生ずることを避け得ない、これを避けるために規定せられたのが本条第一項なのであるというふうな解説もございまして、やはり心配がありましたけれども、今の御答弁のように必要な水準はきちっと確保されると、大きな格差が生じないようにというようなことは今後とも引き続き是非とも文科省としても御努力をお願いしたいと思います。
 次に、それでは本改正案が成立すると各都道府県はどのように教員給与、手当等を決定をするのか、具体的に、しかも簡潔に御答弁をお願いします。
○政府参考人(矢野重典君) これまで、公立学校教員の給与につきましては、国立学校の教育公務員の給与を基準として定められていたために、人事院の勧告に基づき定められた国立学校の教員の給料や諸手当の額、これに準拠しながら各人事委員会の勧告等に基づいてそれぞれの都道府県が定めていたわけでございます。
 今後は、国立大学の法人化によりまして国立学校教員の給与の額に関する規定がなくなりますために、人事院が教員給与について勧告を行うことはなくなるわけでございますけれども、各都道府県は教員の、先ほど申しましたように教員の職務と責任の特殊性に基づく現行の教員給与体系の下で、人材確保の趣旨あるいは国や他の地方公務員の給与、更には現在の教員の給与水準等を踏まえながら、それぞれの人事委員会の勧告に基づいて教員の給料や諸手当の額、これを定めることになるものでございます。
○神本美恵子君 ありがとうございます。
 先ほどから局長の方からもおっしゃっていただいていますが、この教育公務員特例法の改正によって十三条に給与の規定が新設されることになっております。それは、公立の小学校等の校長及び教員の給与は、これらの者の職務の責任と特殊性に基づき条例で定めるものとするとされております。第一条の法律の趣旨でも同じような文言で、「教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき、」との規定がございます。
 繰り返し、再度規定されているところに文部科学省としての教員給与に対する責任意識というものも感じますけれども、あわせて、今後への一抹の不安というものもあるのではないかというふうに私は読み取るんですが、(「一抹じゃない、もっとだ。」と呼ぶ者あり)この十三条は具体的にどのようなことが各県の条例に反映されるよう求めている規定なのかをお伺いしたいと思います。
○政府参考人(矢野重典君) 先ほど御指摘のように、これまで公立学校教員の給与につきましては、教育公務員特例法第二十五条の五によりまして国立学校準拠とされてきたところでございまして、公立の学校教員の給与につきましては、この規定に基づき国家公務員に準拠することで全国一律に教員の職務と責任の特殊性を反映した給与体系、これが担保されてきたところでございます。
 国立大学の法人化に伴いこの規定は削除されることとなるわけでございますけれども、先ほど来御説明申し上げておりますように、引き続き教員の職務と責任の特殊性に基づき、一般の公務員とは別の給与体系とする必要がありますことから、公立学校の教員の給与につきましてはその職務と責任の特殊性に基づき条例で定めるということを新たに規定をいたしまして、一般の公務員とは異なる教員特有の給与体系を担保することといたしたものでございます。
 具体的には、教員の給料につきましては、一般職の公務員の給料表とは別に教員特有の給料表を定めまして、校長、教頭、教諭などの職務に応じた級に分類すること。また、教員に特有の職務や勤務条件等に対しましては、一般職の公務員に支給される諸手当とは別に、若しくは別の支給要件に基づきまして、その職務や勤務条件の複雑困難性に見合う諸手当が支給されることが必要であるというふうに考えておるところでございます。
○神本美恵子君 教員給与の優遇措置、それから教員に係る手当についてもう少しお伺いしたいと思いますが、今、西岡先生の一抹の不安ではないという声が聞こえましたが、たしか西岡先生が大臣のときだと思いますが、人材確保法、これが作られまして、その一部改正で今回三条の「一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない。」との規定は残されておりますけれども、それを担保していた第四条の人事院勧告の規定が削除されることになっております。
 では、この「必要な優遇措置」ということについて、文部科学省は具体的にどのようなものと考えていらっしゃるのか。この人確法の改正後、この精神はどのように担保されるのかということについてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(矢野重典君) 人材確保法、改めて申し上げますと、これは義務教育に従事する教員に優れた人材を確保するために、教員の給与につきまして一般の行政職員よりも優遇することを定めるものでございまして、現在、同法の趣旨を踏まえて、給料の額でございますとか義務教育等教員特別手当の支給等によりまして具体的な優遇措置が講じられているところでございます。
 国立大学の法人化に伴いまして国立大学の教員が非公務員として整理されますことから、人事院の勧告について定めました人材確保法第四条は、これは削除することとしておりますけれども、国立大学の法人化後も、一つは優遇措置について定めております同法第三条の規定が引き続き残るということ、それから教育公務員特例法におきまして、義務教育等教員特別手当の支給根拠を新たに置くことにいたしました。また、義務教育費国庫負担金につきましては、教員給与の優遇措置の状況も考慮して算定すること、こうしたことなどから義務教育に従事する公立学校の教員の給与につきましては、引き続き人確法の趣旨を踏まえて、一般の行政職員よりも高い水準、優遇措置が保たれるものというふうに考えているところでございます。
○神本美恵子君 そのことで、引き続き担保されるものと考えておりますではなくて、もう一歩踏み込んでこのように文部科学省としては担保するというふうにお伺いしたかったんですけれども、そこはちょっと通告はしておりませんけれども、もう一度念を押したいと思います。
○政府参考人(矢野重典君) 繰り返しになりますが、人確法の第三条の規定は引き続き存続いたします。また、義務教育特別手当、これは新たに教育公務員特例法におきまして支給根拠規定を置いております。こうしたこと、さらに、更に申し上げますれば、義務教育費国庫負担法、失礼、義務教育費国庫負担金につきましては、そうした教員給与の優遇措置の状況も考慮して算定するといったことにいたしておるものでございますから、そういう意味で、現行の人確法が有しております一般の行政職員よりも高い水準、優遇水準というものを担保されるものというふうに考えているところでございます。
○神本美恵子君 次に、給与特別措置法、いわゆる給特法についてお伺いしたいと思います。
 時間外勤務手当、休日勤務手当が支給されないということについての補償措置として、教職調整額についてこの給与特別措置法第三条で規定されているわけですけれども、その改正案は、給料月額の百分の四に相当する額を基準として条例で定めるところにより支給されなければならないというふうにされております。この百分の四という基準は、拘束力があるものというふうに理解してよいのかというのが一点です。
 また、その三条二項においては、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」というふうにされております。この規定は恐らく現行の三条三項及び八条に定められていたものを規定し直したものであるというふうに思いますけれども、現行と同じであるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(矢野重典君) 現在、国立学校の教育職員につきましては、その職務と勤務態様の特殊性から、時間外勤務手当の支給はなじまないためにこれを支給しないことといたしまして、これに代えて勤務時間の内外を問わず包括的に評価するものとして、俸給月額の四%に相当する額の教職調整額を支給することといたしておりまして、公立学校の教育職員につきましても、国立学校の教育職員を基準として、同様の措置を講じることといたしているところでございます。
 国立大学の法人化後も、公立学校の教育職員の職務、そして勤務態様の特殊性には、これは何ら変化があるものではないわけでございますから、引き続き公立学校の教育職員につきましては、時間外勤務手当の支給を義務付けている労働基準法第三十七条を適用しないことといたしますとともに、教職調整額が必ず支給されることとする必要があるというふうに考えているところでございます。
 その際には、教職調整額の趣旨が形骸化しない、形骸化することのないように適切な額が支給される必要があるわけでございまして、教職調整額につきましては給料月額の四%、これは法律で定めておるところでございますが、それを基準として条例で定めることといたしたところでございます。
○神本美恵子君 この給特法については、昨今といいますか、本当に超過勤務が学校現場では物すごい量になっておりますし、この給特法そのものについて是非が論じられたりもしております。
 そのことは置いておきまして、今、今後も支給されるべきものであるというような御答弁をいただきましたが、給料の本体にこれは入るものですので、たとえ四%じゃなくて三・九九%であっても、そういった格差が県によって出るということは大きな格差にまたつながっていくものでもありますので、是非とも百分の四という基準をきちっと各県が、きちっとといいますか、格差が生じないようにすべきものだというふうに私は思いますので言っておきたいと思います。
 次に、この給特法の一部改正では、第六条において、教員を「正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、」、いわゆる時間外勤務、超勤ですけれども、「政令で定める基準に従い条例で定める場合に限る」というふうにされております。この「政令で定める基準」というものはどのようなものなのか、現行と同じというふうに受け止めていいのかということです。それから、各都道府県は今回の改正によって改めて条例を制定し直すことになるのか。あわせて、教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合に関する規定というのが昭和四十六年七月に文部省訓令として規定されておりますけれども、これも同じものが通知で示されることになるのか。
 以上三点についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(矢野重典君) お尋ねの政令におきましては、これまで国立学校の教員について定められておりました教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合に関する規定、文部省訓令でございますが、これと基本的には同じ内容のものを考えているところでございます。すなわち、一つは生徒の実習に関する業務、また二番目といたしましては学校行事に関する業務、また教職員会議に関する業務、さらに非常災害等やむを得ない場合に必要な業務、これらのいわゆる超勤四項目を同政令において定めることといたしているところでございます。
 したがいまして、国立大学の法人化に伴う今回の改正によって、各都道府県は現行の条例につきまして、その実質的な内容を改正する必要はないというふうに考えているところでございます。また、この新たに定めます政令の内容等につきましては、現行の教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合に関する規定、文部省訓令と基本的に同じものであると、そういうことを通知等によりまして各都道府県に対してお示しをしてまいりたいと考えております。
○神本美恵子君 ありがとうございました。
 次に、特殊勤務手当についてお伺いしたいと思います。これについては、一般職給与法十三条、具体的な内容は人事院規則九―三〇に定められております。国立学校準拠制が廃止されると、その内容は各地方公共団体の裁量ということになるのでしょうか。また、同様の勤務を行っている教員の特殊勤務手当の内容は全国的に均衡を取る必要があるというふうに思いますけれども、それについてはいかがでしょうか。
○政府参考人(矢野重典君) 教員特有の特殊勤務手当といたしましては、現在、教員特殊業務手当、また多学年学級担当手当及び主任手当がそれぞれの支給要件に該当する職務に従事する者に対して支給をされているところでございます。
 このような特殊勤務手当につきましては、国立大学の法人化後も、地方公務員の給与について規定をいたしております地方自治法や地方公務員法の規定等を根拠といたしまして、公立学校の教員に対しても現行と同様に支給することができるものでございまして、その上で、特殊勤務手当の支給対象となる職務の特殊性、困難性はこの法律改正後も変わらないということ、そして、改正後の教育公務員特例法の規定によりまして、教員の給与は職務と責任の特殊性に基づき支給されることとされておるところでございますので、こうしたことから、各都道府県におきましては改正前と同様に適切に支給することが必要であるというふうに私どもは考えているところでございます。
○神本美恵子君 全国的に均衡を取ることが必要だと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
○政府参考人(矢野重典君) 額につきましては、これは給料本体を各都道府県の判断にゆだねることとしてございますので、そういう意味での額については各自治体の判断にゆだねるわけでございますが、今申し上げました手当の種類につきましては、これは全国的に同じ扱いをしていただく必要があろうかと思っております。
○神本美恵子君 額についてちょっとそれでいいのかなというふうに思いますけれども、今ずっと、細かいことのようですが、いろいろお聞きをしました。しかし、これはやっぱり国準拠制がなくなるということで、全国の教育水準の確保、均衡を図るという意味で非常に重要なことだと思って確認をさせていただきました。
 しかし、この公立学校の教員給与に関して、今非常に大きな根幹を揺るがすような問題が出てきております。それはもう御承知のように、ここの委員会でも何度も問題にされましたいわゆる義務教育費国庫負担制度でございます。これについては、去る五月七日、地方分権改革推進会議が示しました重点的に推進すべき事項ということで、義務教育費国庫負担制度、その中の対象経費の見直し、定額化・交付金化、全額一般財源化、事務・栄養職員の一般財源化等、こういったものが挙げられております。
 義務教育費国庫負担制度については、この三月にも法律改正が行われて、その際にも議論がなされましたけれども、与野党を問わず、その重要性については皆様から御意見が出たところでございます。そして、附帯決議においてもその重要性が確認をされております。そのような中でこういったものが地方分権改革推進会議の中から出てくるということは、私は国会軽視と言わざるを得ないと思います。
 子供の数を基準とした交付金化というようなことも聞こえてきておりますけれども、学校というのは一つのクラスを単位として動いているというところから考えますと、非常に現実離れをした机上の空論ではないかというようなことも現場にいた人間としては感じるところでございます。
 また、遠山大臣は、五月二十八日の経済財政諮問会議において、事務職員、学校栄養職員は、教員と並ぶ学校の基幹的職員であるとの認識をはっきりと示されております。このことは歴代の文部大臣の答弁でも幾度も確認されてきていることでございます。
 一方で、大蔵省、当時の大蔵省ですが、もう十九年も前から事務職員、学校栄養職員の国庫負担の一般財源化を言ってきております。
 義務教育費国庫負担の対象外にするという、学校事務職員、栄養職員をですね、というような意見は、私はこれもまた学校現場がどのように動いて教育活動、子供に対して教育活動を行っているのかということを知らない人たちの全く教育論のない意見だというふうに、大変な私は怒りを持って聞いておりますけれども、学校現場では、本当に教員のみならず、事務職員、栄養職員、そのほかの職種の方々も高校などにはたくさんいらっしゃいますけれども、みんなで共同して教育活動に当たっているという実態を是非考えていただきたい。そういう意味で大臣も繰り返し、基幹的職員というのはそういう意味でおっしゃっているというふうに思います。
 中教審の今後の地方教育行政の在り方の答申でも、教員以外の職員の重要性ということは指摘されておりますし、是非とも、今申しました教員の給与についてのその根幹になる義務教育費国庫負担制度について、日本の教育に責任を持つ、大臣には何度も決意をと言ってお伺いをしましたけれども、今回のこの法案にもまたその根幹となるものでございますので、是非とも義務教育費国庫負担制度をめぐる最近の動きに対して、事務職員、栄養職員の問題も含めて堅持する立場から毅然とした決意を、多分もう決意はしていらっしゃることは分かりながら、改めてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 先般成立させていただきました義務教育費国庫負担法の質疑の際にも、明確に与野党の総委員の方々から義務教育費国庫負担制度の根幹は守るべしというお話がございました。私も答弁の中でそのことを明確に申し上げましたし、また附帯決議においても明確に書かれているところでございます。
 私は、先般の五月二十八日の経済財政諮問会議でも、非常にあれですね、義務教育費国庫負担制度というものを国の骨格ないし国の礎という認識をどうも欠いているのではないかという角度から一般財源化しろ、さらには事務職員、栄養職員についてもこれは一般財源化というようなことが軽々に論じられたような気がしたときに、すかさず反論をしたところでございます。
 私の考えそのものはもう何度も述べているところでございますし、事務職員、栄養職員も学校の基幹的職員ということは、今、委員がおっしゃいましたように、学校を構成する教員、栄養職員、失礼しました、養護教員とともに非常に大事な役割を担っている職種の方々でございまして、これを一部を一般財源化するというようなことは、混乱が生じこそすれ何の私は利益もないというふうに思うところでございます。
 そのようなことから、義務教育そのものについての重要性、そして、それを実際に国民に対して一定水準の教育を確保するという角度で頑張っておられる学校の構成員が安心して職務に邁進していただけるように、この義務教育費国庫負担制度の根幹を守るというのは私どもの大きな役割だと思っております。
 同じ経済財政諮問会議が行われました朝、歴代の文部大臣がお集まりいただきました。その中には財務大臣と法務大臣は入っておられませんけれども、これは現職、別の職をやっておられるということもございますが、それらの十人の歴代の文部大臣の方々の強い御決意も、義務教育費国庫負担制度の根幹を守るということと同時に、事務職員、栄養職員についてもこれを一般財源化することは絶対にしてはならないという強い御決意を語ってくださいました。また、その結果につきましては要所要所にお話しいただいたものというふうに考えております。
 そのように、これは行政とかいろんな立場を超えまして、日本の、私は日本の国を一つの城と思いますと、義務教育というのはその石垣、城を構成する石垣の部分だと思います。その石垣の部分の大きな石を取り崩していくなんというようなことがないようにやっていくということは私の信念でございますし、また、委員の先生方の是非ともお力添えを得まして、このことについて私どもとしてこの考えを全うすることができるように御支援をいただければと思うところでございます。
○神本美恵子君 ありがとうございましたというか、お互いに頑張りましょうということなんですけれども。
 私も学校現場におりまして、自分がこの義務教育に携わる者として給与をいただきながら子供と教育活動、学習してきたわけですけれども、そのときは義務教育費国庫負担制度というような、こういう制度は知らなかったんですが、この仕組みということをよくよく見てみますと、ああ、この上に乗っかって安心して教育活動ができたんだなと、しかも、学校で、構成員とおっしゃいましたが、様々な職種の人と一緒に携えて教育活動ができたのはこの制度があったからだということを改めて、今回浮上してきて再確認をしているところです。
 ですから、そのことを私は、自分も国民の皆様によく分かっていただきたいと思いますし、この国会の中では、ほかのよく訳の分からない人たちにはしっかりと教育論として、この義務教育費国庫負担制度がいかにこれまでの教育の支えになってきたのかということを教育論として是非言っていただきたいし、私自身も学校現場におりましたときに、事務職員、栄養職員の方々の仕事を直接よく見えなくて理解できなかったという部分も多々あったように思います。そういう意味では、基幹的職員ということの内実についても是非とも大臣にはこれまで同様に、あるいはこれまで以上に認識をしていただいて頑張っていただきたいということをエールを送りまして、質問を終わりたいと思います。
 ちょっと超過しまして済みません。ありがとうございました。
○山本香苗君 公明党の山本香苗です。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、国立大学法人法案を中心に質問させていただきます。
 まず、大臣にお伺いしたいんですが、本法案の第一条の「目的」には、「大学の教育研究に対する国民の要請にこたえる」とございますが、この国民の要請という文言が入った背景、理由、そしてその意義を大臣はどうお考えになっていらっしゃるかについてお伺いいたします。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学は、現状におきましても、あるいは法人化後におきましても、高度な学術研究の推進、あるいは大学教育の機会均等、さらには地域の活性化への貢献といった役割におきまして、社会の変化に対応して国民の要請にこたえるべき存在として非常に重要な役割を持っているということに変わりはないわけでございます。
 御指摘の国立大学法人法案の第一条に「国民の要請にこたえる」という点をあえて明記いたしましたのは、公的支出に支えられます大学として国立大学が担っている役割に対する国民や社会の期待を踏まえまして、その期待にこたえることが国立大学の使命であるということを端的に示したわけでございます。特に、法人化ということによって、先般も参考人の方がおっしゃいましたように、社会とのかかわりにおいて大きく転機を迎えるということでもございますし、その意味を国民の要請ということで表現をしたわけでございます。
 この法人化の問題についての調査検討会議におきましても、最終報告において、国民の期待にこたえた国立大学等の改革と新生、それから、国からの財政投入に支えられる大学として国民の負託にこたえた教育研究の充実を図るといったような点が明記されているわけでございまして、そうしたようなお考えというのも前提にしながら本法案での第一条に盛り込ませていただいたところでございます。
○山本香苗君 今も昔も国民の要請にこたえる、これは大学の使命だと、そういった御答弁だと思うんですが、今までの大学というのは必ずしもそれにきちんと全部こたえ切れてなかったところもあるんではないかと思います。
 こうした中で、従来の護送船団式ではなくて、国の内部組織としてじゃなくて、法人化して大学に自主性、自律性を持たせるという改革の方向は正しいと私は思うわけでございますけれども、本法案におきまして、大臣はきちんとその前提となる大学の自主、自律性というものは確保されている、そのように御認識かどうか、お伺いいたします。
○国務大臣(遠山敦子君) 現在の国立大学といいますものは、制度的に、委員御指摘のように、行政組織の一部でございまして、文科省の内部組織として位置付けられてきたわけでございます。
 したがいまして、国の予算制度あるいは国家公務員法制の下にございまして、その意味での制約をどうしても受けるわけですね、会計の規則の問題あるいは人事上の問題等々。そういったことでは、各大学の教育研究を柔軟に展開するということにおいて様々な限界があったわけでございますね。そのこと自体が国立大学職員、教職員の不作為を呼んでいたと。もっとこうやるべきだけれども、いろいろな制約があるからやらないというような理由にもなってきたわけでございますし、そういったようなことを乗り越えるということで、乗り越えていくことは大変大事だと思っているわけでございます。
 現在では、運営上の権限と責任の範囲が必ずしも明瞭でないというような状況にあるわけでございます。法人化は、こうした面を改めまして、自律的な環境の下で国立大学の更なる活性化を図って、優れた教育、そして特色ある研究、そして世界の中でも競争力を持つような優れた魅力ある大学にしていくということを目的としたものでございます。
 公的な財政にこれからも支えられる大学として国立大学には国民や社会から高い期待が寄せられているところでございまして、法人化によってそうした、先ほど申しましたようないろんな束縛というものを解き放つことによって、学長を中心とした自主的、自律的な運営体制の下でこうした国民の期待にこたえていくと、そのような国立大学が実現され得るものというふうに考えております。
○山本香苗君 大臣にこの間も、前々回の委員会のときにおきましてもこの点について質問が集中したわけでございまして、今回の法案で文科省の統制とか介入が強化されるんじゃないかと危惧される方がいらっしゃることも存じ上げておりますが、その懸念を完璧に消し去るというのは大変難しいことだと思うんですけれども、大学が実質的に自主性、自律性を確保していくことができるかどうかというのは、先ほど来お話が出ておりますけれども、国からのきちんとした財政的な支援、それが確保されるか否かに懸かっているんではないかと思います。
 この点、参考人の中からも、それが削減されてしまうんじゃないかといった御心配の声もございましたが、そういった心配はない、予算的なバックアップはしっかりしていくと、その言葉を大臣からいただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学の先ほど申しましたような重要な役割を引き続き担ってもらいますためには、御指摘のように、財政措置が大変大事であるわけでございます。
 私どもとしましては、移行前、つまり現在ですね、現在必要とされている公費投入額を十分踏まえて、国立大学における教育研究が確実に実施されますよう国としての責任を果たしていく考えでございます。
 具体的には、国からの財政措置については、教育研究活動の業務運営に要する事業費としまして運営費交付金が措置されるということになるわけでございますが、施設整備に要する経費については施設整備費補助金を措置するというようなこともございまして、万全の体制でやっていただく。
 これは、国立大学の今の状況を単に守るということではございませんで、自主的、自律的に優れた活動をしてもらうことを支えると。そうした国民の血税を使うことに伴う、必要なものは出すけれども、大学自体もしっかりとそこを自覚してやっていただきたい。そのような考えで私どもとしても必要な援助は十分やっていくという考えでございます。
○山本香苗君 大学が財政難に陥って、その跳ね返りがというか、授業料や入学料の値上げ等になって学生に負担が来るようなことがないように、しっかりと支えていただきたいと思います。
 次に、午前中も御質問がございました評価について、参考人の方々からも評価能力が疑わしいとか、賛成の立場をお取りの先生方からも、いまだにどういった評価がなされるのかよく分からない、そういった声もございました。
 こうした不安を払拭するために、先ほど北岡先生の御質問の中にもございましたが、もうちょっと具体的に評価委員会のその運営及び構成、そうしたものについてお教え願えますでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学の法人評価委員会でございますけれども、国立大学法人制度におきまして重要な役割を担うということでございますから、その委員につきましては、午前中、大臣からも申し上げましたように、社会、経済、文化等の幅広い分野の有識者を始め、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する方々によって構成するというふうに考えておるところでございますし、また人選に当たりましても、公平でかつ教育研究の高度化や個性豊かな大学作りに資する適切な評価の実施が確保されるよう十分意を用いるとともに、委員の氏名や経歴などについては社会的に公表をする予定でございます。
 それから、評価委員会の組織等についてでございますけれども、これにつきましては政令で定めるということとしてございますが、独立行政法人評価委員会の規定例も参考にしつつ、法案成立後、関係省庁とも協議しながら、パブリックコメントを通じて社会にも広く意見を求めていく考えでございます。
 内容的には、委員の人数、任期、分科会の構成、どのような分科会を置くかといったようなことでございますけれども、分科会の構成、それから議事運営につきまして、会議の定足数、議決の出し方、関係行政機関の長に対する資料の提出等の要求といったような、内容といったような、議事運営等に関する事項といった内容をできるだけ速やかに決定することを考えております。
 それから、評価の実施に当たりましては、画一化を招かないよう各大学の個性や教育研究の特色を考慮するとともに、大学が作成する資料を精選するなど、大学の過重な負担とならない効率的な評価となるよう十分留意して行うことが必要であると考えておる次第でございますし、また、多元的な視点による評価ということもございますから、評価に学生の声を反映させるといったようなことも必要ではないかと考えておる次第でございます。
 それから、国立大学法人に関する評価の具体的な在り方につきましては、今後、評価委員会において検討されていくこととなりますけれども、大枠といたしまして、教育研究の質の向上、業務運営の改善、効率化、財務内容の改善、自己点検・評価及び情報提供といったようなことが中期目標で設定をされておりますけれども、そういった中期目標、中期計画に記載された事項を対象に、投じられた国費が有効適切に使用されたかどうかを国として検証する観点から、例えばその評価でございますけれども、十分達成した、おおむね達成した、ある程度達成したが必ずしも十分ではない、不十分であるといったような段階的な評価区分を設けまして、各評価項目における目標計画の達成状況について評価をすることとなるのではないかと、こう考えておる次第でございます。
 文部科学省といたしましても、評価の結果が社会一般に分かりやすく大学の状況を示すものとなるよう意を用いてまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
○山本香苗君 その評価委員会の委員の方というのは、文科省の方が選定されるわけですよね。そのことによって委員の方が文科省の言いなりになるんじゃないかといった、ちょっとうがったというか懐疑的な見方もございます。これを払拭するためには、その委員会の審議の結果とか、結果だけをぺらっと出してくるんじゃなくて、審議の内容、そうしたものをきちっと公表していただくことが必要だと思うんですが、これは公表していただけますでしょうか。
○副大臣(河村建夫君) 山本委員の御指摘、もっともだと思います。
 法人評価委員会、国立大学の法人評価委員は、社会、経済、文化等幅広い分野の有識者の皆様を始めとして、大学の教育研究あるいは運営に関して高い識見を有する人、そういう方々で構成をしていただくということでございまして、まず委員の氏名や経歴、これは社会にまず公表する、当然であります。そして、御指摘のように、評価結果を公表することはもとよりでございますが、その審議の過程についてもオープンにしていくということでございまして、議事録を公表する、それから評価委員会の会議を公開すると。そうしたことでこの委員会の透明性確保、しっかり取り組んでいきたいと、このように考えます。
○山本香苗君 今回、この法案、本法案につきまして、理事の数が指定されることが前回の委員会の中でも指摘されておりましたけれども、このことについて事前に文科省の方にお伺いしたときに、この数というのは上限ですといったお話をお伺いしていまして、例えば京都大学だったら七、七だったら七より以下でもいい、取りあえずマックス七なんだという話をお伺いしていたんです。そうしたら、この間、先日の参考人質疑におきまして、現場では取りあえず定員一杯埋めなさいよと、そういった形で文科省が言っているようにも取られるような御発言があったわけでございますが。
 そこで改めてお伺いしたいんですけれども、実際、文科省、この理事の置き方についてどうお考えになっていらっしゃるんでしょうか。また、例えば四人の定員枠があったとします。どうしても空きのポストがないから一人だけ置くということも許されるんでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) この法人法の第十条第二項で、各国立大学法人に役員として別表に定める、それぞれ別表に定める員数以内の理事を置くと、こう規定しておるわけでございます。これは、円滑な法人運営に必要な運営体制を確保するということと同時に、法人の役員数の膨張を防ぐという観点で、各大学ごとに置く理事の数の上限を示しているというものでございます。
 法人化後は、学長と理事が中心となりまして、自ら経営戦略を確立し、責任ある大学運営を行うことが強く求められるわけでございまして、各大学におきましては、法案に定められた上限の範囲内で大学運営を円滑に進めるために必要な理事数を確保するということが求められておるわけでございます。
 実際には、各大学の事情に応じまして、上限を若干下回る理事数となったり、あるいは一部非常勤の理事を設けると、その定数の範囲内でですね、柔軟な運用がなされることになるというものと考えておる次第でございます。
○山本香苗君 じゃ、理事というのは非常勤であったりとか兼任であったりしてもよろしいんでしょうか。
 済みません、そもそもこの理事の数の積算根拠というのは一体何なのかお教えいただけますか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 基本的には大学の教職員数等の規模がその基礎にあるわけでございますけれども、例えば病院があるとか、去年、今年と統合ございますけれども、統合したとかといったような特別の事情で加算をすると、こういうことで言ういわゆる客観的な基準を設けながら数を決めていっているということでございます。
○山本香苗君 兼任も許されるわけですか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 兼任の意味でございますけれども、要するに、よそに、民間に職を持っていて、そして非常勤的といいますか、そういう意味での兼任ということはあろうかと思います。
○山本香苗君 分かりました。
 じゃ、ちょっとまた違う話になりますが、今までの国立大学におきましてはどちらかというと学生の視点が欠けていたということがよく指摘されております。事実、先日の参考人の方の発言の中でも、昔の話でありますけれども、学生ということを考えたことなんかなかったみたいな発言もあったりしました。
 学生の視点というものが欠けてきた背景を文科省としてはどう考えていらっしゃるのか、また、法人化後の大学運営におきます学生の役割といったもの、どういったことを期待していらっしゃるのか、お答え願いたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 大学においてまず学生に求められることは、高い自らの学習意欲や目的に応じて、様々な学習機会を、これを主体的に活用しながら、そして社会で活躍できるような付加価値を付けて、高い付加価値を自ら付けて出ていく、そして学生が学習活動とか、それから学生が社会に出た後の評価等を通じて大学の教育研究活動そのものが活性化されていくというふうに考えておるわけでございまして、このような学生の在り方が今回の国立大学の法人化されてからより私は強く求められていくと、こう思うわけでございます。大学そのものの評価というのも、そこから出ていった学生の活躍ぶりというか、そういうことにも懸かってくるんではないか、そういうことが問われてくると、こう思うわけでございます。
 今回の法人化によってやっぱり教育の受け手側である学生の立場に立った大学運営をやっていくんだと、これも大事な視点でございまして、委員からも御指摘ありましたが、学生あっての大学でありまして、大学運営を実現、そうした大学運営をやっていくんだという意識改革を、今回、この法人化によって改めて大学を運営する方々がそうした視点からこの大学運営に取り組むという大きな意識改革の契機になると、こう考えております。
 具体的に申し上げるならば、法令や予算による制約というものはかなり緩和されます。したがって、学内の資源配分を弾力的に行うことができる。そして、それが、各大学がやっぱり学生のニーズといいますか、そういうものを十分しんしゃくしながら、より柔軟にカリキュラムを作っていく、あるいは学科やコースを編成する。やっぱり学生の方へ目を向けてそうしたものを作っていくことができる。
 それから、学生による授業評価ですね、これはかなり大学の教育面での取組状況が法人評価の中でもやっぱり適切に評価されると。これ、学生の授業評価を入れるということはかなり私は大きな改革になるわけでございまして、これによって授業内容の充実や指導方法の改善が図られていくだろう、こう考えますし、あわせて、大事なことは、学生に対するカウンセリングや就職支援等を今回の法案で業務としてはっきり明記をするということによって学生サービスの向上が、充実改善が図られるということでありまして、こうした学生の立場に立った大学運営を是非やっていただく。
 そのことを大いに期待をいたしておるわけでございまして、今回の法人化によってその法人化の趣旨というものが十分生かされて、学生の視点を重視することによって、いわゆる高等教育機関としての質の高い教育が提供できる大学になってもらいたい、このように考えるわけであります。
○山本香苗君 学生の視点というものはこれからもっと重視されてくるんだということだと思うんですけれども、実際は教育現場に、大学においては現役の学生さんの関心というのが薄いというふうなことも参考人の中のお話の中でございました。在学生よりも、私はこの大学法人化についてもっと関心を持っているのはこれから大学を受けようという人たちじゃないかなと思うんです。
 そこで、お伺いしたいんですけれども、法人化後の大学入試というものはどういうふうになるんでしょうか。今日、朝、新聞を見ていましたら、大学入試センター試験の分野がこう変わるみたいな形で書いてありましたけれども、これを必ず受けなくてもいいという形になってくるんでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 大学の入試につきましては、各大学の教育理念、教育内容等に照らしまして、受験生が入学後の大学教育を受けるにふさわしい能力、適性を有するか否かを判定するものでございまして、基本的には各大学の自主性に基づき行われるものでございます。この点については、国立大学が法人化した後についても同様であるわけでございます。
 ただ、従来から、国立大学につきましては、大学入試の個性化、多様化の観点から大学入試センター試験と各大学が実施する個別試験とを適切に組み合わせた入試を実施しておりまして、また個別試験につきましても、受験機会の複数化を図る観点から分離・分割方式を導入しているというところでございます。
 国立大学協会におきましては、少なくとも法人化後の平成十六年度と十七年度におきましては、受験生への配慮等の観点から現行の入試方法を維持すると聞いておるわけでございます。現在、それ以降、平成十八年度以降の大学入試についてどうするかということにつきまして、国立大学協会においてその在り方を検討していると承知をしておる次第でございます。
 文部科学省といたしましては、現在、国立大学協会における自主的な検討を見守っております段階でございますが、その検討に当たりましては、国立大学が担うべき社会的役割を十分踏まえ、それぞれのアドミッションポリシーを明確にして大学の自主性、自律性が発揮される大学入試となるよう期待をしておるところでございます。
○山本香苗君 試験の関係ではそういった配慮がなされるということなんですが、法人化によって大学側が学部だとか学科とか、そうしたものをいろいろ裁量で変えていけると。急に大学生が目指していた学科がぱっとなくなっちゃうということもあるのかなと。試験科目とかも、平成十八年度以降どうなるかちょっとよく分からないと。
 受験生が振り回されることとならないように何らかの配慮が必要だと思うんですが、文科省としてはどういうことをお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
○副大臣(河村建夫君) 今回の、このたびの法人化によって組織編制における各大学の裁量が拡大をしてまいります。各大学が一層創意工夫をして教育研究の活性化を図ることを可能にするんだと、こういうことでありますから、このために法人化後の国立大学は、学部、学科については、第一は、学部はあらかじめ大学から提出された原案に十分配慮した上で中期目標に記載をすることになっておりますし、学科につきましては、各国立大学法人の判断によって弾力的な編制を可能にすると。こうした各大学が主体的な判断によって弾力的に取組をやっていくものでございます。
 したがいまして、これまでの既設の教育組織の改編に伴いまして、学生募集をする、これについては、まずは、今御指摘のように何か目の前で急に変わったということにならないように、八月末の概算要求後におけるPRをまずきちっと実施すること。それから第二点は、十二月下旬の政府予算原案成立後の募集要項の発表など、予算の流れを踏まえてこれまで実施していたところでございますけれども、これを法人化後におきましては、それぞれこれまで以上に早期に対応することが可能にするということにいたしまして、予算ができなきゃできないよというようなことじゃなくて、やっぱり学生の方を向いて、早く事前にそういう方向をPRする、知らせるということをまず考えなきゃいかぬというふうにしておるわけでございます。
 なお、教育研究組織の見直しについては、各大学の個別な事情だけじゃなくて、学生を始め社会や地域のニーズを踏まえて、各大学がやっぱり創意工夫を生かしながら責任ある対応を取ってもらいたいと考えておりますから、委員の御指摘のように、いわゆる大学に入ろうとする人たちの期待に反するようなことにならないように最大の注意を払って大学運営をやってもらうということを期待をいたしておるわけであります。
○山本香苗君 ありがとうございます。
 次に、午前中にもちょっと北岡先生の御質問の中に出てまいりましたが、やはりこの新しい法律が出てきて新しい仕組みを作ろうと思ったら、かなりのやっぱり膨大なエネルギーというものが必要で、すごい労力が必要になってくるんだろうなということを参考人の先生方からの陳述を聞きながら感じておりました。
 初めというのは、幾ら労力を費やしても万全でスタートできるというのは非常に難しい。やっぱり移行期において何らかの特別な配慮が必要だという東大の佐々木先生のお話もございましたけれども、先ほど移行期においては、これを文科省として支援していくために省内に各大学からのいろんな御相談に乗れるような相談窓口があるというふうにお伺いしましたけれども、これは今年の初めからできたというふうにお伺いしているわけなんですが、この体制というもの、移行期というのはこの二、三か月で済むようなものではなくて、この四月までで終わるような話ではなくて、もっと長くなるんじゃないかという話を現場の方から聞いておりますので、もっときちっとした総合窓口、体制、いろんな大学からのいろんな事務的な相談にもきちんと対応できるような、たらい回しにされない、そこに電話したらもうすぐぱっとスペシャリストが出てきてぱっと対応していただける、そうした体制になっているのかどうか。また、求めに応じてではありますけれども、現場に足を運んでいただけるような、そうした体制を作っていただくことはできないかということをお伺いしたいと思います。
 と併せまして、先ほど移行経費という話が、移行経費を確保するといったお話がございました。これについては平成十六年度から計上しようということだと思うんですけれども、どれぐらいをお考えになっているのか、併せてお伺いいたします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 相談体制でございますけれども、実は地域別に大学を四つのグループに分けまして、それぞれのグループについてこちら文部科学省の方でもチームを作りまして、そのチームには、高等教育局の担当課の職員、人事課の職員、会計課の職員あるいは研究振興局の職員といったようなチームをそれぞれやっぱり四つ作りまして、それで、というのは、前に相談に行った人が行ったら違う人で全然話が通じなかったということにならないように、そういう責任を持ってそれぞれ対応するというような形でそういう窓口の整備をこの二月から行っておるわけでございます。
 こちらから出掛けていってというお話もございました。必要があればもちろん出掛けていって、いろんな、総合的にそこでお話を伺っていろいろ相談に乗るということもあろうかと、こう思いますけれども、とにかく法人化まで、あるいはそれ以降につきましてもそういった体制を整えていきたいと、こう思っております。
 それから、経費につきましては総括審議官の方から。
○政府参考人(玉井日出夫君) いろんな準備、例えば会計面あるいは人事面でございます。それらにつきましては、例えば会計関係の規定につきましては、会計基準を文部科学省の方で省令で定めますけれども、それに応じましてもう既に報告書などを出しながら各大学で今会計システムの構築の準備を進めていただいております。それに当たって、さらにブレークダウンしたいろんな規定がございますが、これまた国大協の方でひな形を示しながら今準備を進めておりますし、それから就業規則につきましても、これまた国大協の方でいろんな参考資料を配りながらやっております。つまり、私どもと国大協と各国立大学との間で連携をしながら様々な今準備に努めているところでございます。
 そこで、今の御指摘の移行経費でございます。これは十五年度から実は必要でございます。今、私申し上げました中で、既に会計のシステムの構築を今準備を始めていると、こう申し上げましたように、例えばもう既に各国立大学法人に属することとなる土地建物等の資産の確定を今後やっていかねばなりませんし、さらには企業会計システムの構築やあるいは導入準備がございます。さらには、今度は法人内部規定の整備とか諸準備があるわけでございます。それらについては、実は移行経費として十五年度予算において国立大学運営改善経費として既に計上をしているところでございます。
 ちなみに、企業会計システム導入経費につきましては、この十五年度予算では九十五億二百万円を既に計上しておりまして、これらを準備の整ったところから既にそれぞれ配分をしながら各大学で準備を進めていただいています。
 さらに、移行後のことでございますけれども、基本的には運営費交付金あるいは施設費補助金という形になるわけでございますが、その言わば十六年度概算要求の中でそれぞれ策定をしていくわけでございますが、法人化に伴いまして各大学共通に新たに必ず出さねばならないという必要経費も想定されるところでございまして、例えば事業主として各大学に加入が義務付けられます労災保険あるいは雇用保険に係る事業主負担分ということがまた出てまいります。これらについては、これは具体の数字は十六年度概算要求に向けて積算をしていかねばなりませんけれども、仮に十五年度の取りあえず人件費総額ということを念頭に置いて、本当の試算でございますけれども申し上げますと、労災保険については五十四億、雇用保険について百十三億ぐらいの一応見通しがあるわけでございますが、これはいずれにせよ十六年度概算要求に向けて、この法人化、この法律成立後、更に精査をしながらそれぞれの予算について検討をさせていただきたいと、かように思っているわけでございます。
○山本香苗君 もう大分時間が迫ってまいりましたが、今回の法案で、大学職員の人事権というものは学長に移るわけでございますが、今後、今、文科省と大学の間で人事交流ございますけれども、これはどういうふうな形になるのか。また、人事という点につきましては、適材適所の名の下に文科省の役人の天下りを許すことになるんじゃないかという懸念もいろいろと指摘されているところでございますが、この点につきまして、皆様方の不信を払拭するような明快な御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) 人事交流の件について御答弁を申し上げます。
 御案内のとおり、法人化後は、職員の任命権は、これは各大学の学長に属するわけでございます。したがいまして、各国立大学法人においては、自らの人事戦略に基づいたより弾力的な人事システムを設計し、その運用が可能でございますので、それぞれの教育研究の特色だとか地域性、その他の特性を生かして必要な人材の確保に努めていただく、これが基本でございます。
 ただ、一方、組織の活性化を図る観点から、大学の枠を越えた幅広い人事交流ということも重要でございます。このことは、国立大学の関係者等入っていただいて御検討いただいた国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議でも大変重要なことだという御指摘があるわけでございまして、そういう意味におきまして、文部科学省としても、各国立大学法人の学長の人事権を、これは当然のことながら前提としつつ、大学からの要請があった場合には、適材適所の観点から必要な人事交流、これは行ってまいりたいと、かように思っているわけでございます。
○国務大臣(遠山敦子君) 今お答えしてもらいましたように、これからの大学の学内の人事といいますものは、役員も、教職員につきましても、学長が責任を持って自らの判断でやるということでございまして、正にそのことが大学が活性化する一つの大きな要件であろうと思っております。
 その意味で、すぐに何か天下りがあるのではないかというような懸念をされるようでございますけれども、そういうことではございません。各大学の学長が自ら判断をして、自らの責任の下に適材適所を配するということがこの法人化の精神でございます。その中において、学長が自ら判断をして、こういう能力を持った人がいいというようなことで様々な経験をしたような人を採用する中に、そういったことについての経験を持つ人も採用するということはもちろん自由でございますけれども、何せそこは正に学長ないし大学自体の判断というものが働くわけでございまして、そこにおいて良識ある対応がされるということを私は期待をしておりますし、また確信をするものでございます。
○山本香苗君 もちろん大学側が選ぶということなわけでございますけれども、大臣の方でもしっかりとチェックをしていただくとともに、人事交流のことにつきましては、参考人の先生方の中から、これは国大協の中でも大変まだいろんな議論が出てきてまとまっていないんですといったお話がございました。そのときに、文科省の方からも知恵を出してもらいたい、真剣に話し合ってもらいたいといったことのお声がございましたので、この点しっかりと踏まえまして、文科省の方でもいろいろと御検討、前向きに、早めに検討していただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。
 国立大学法人法案を中心に質問をいたします。
 五月の二十三日に本会議で質問をさせていただきましたが、その中で、百年に一度の大改革が大失敗にならないようにという与党内の懸念、危惧の声があることも御紹介をいたしました。やはり、この間の議事録あるいは新聞などを読みますと、まず第一に危惧されるのが、中期目標を最終的に文部科学大臣が決定することが学問の自由を侵すのではないかということに集中しております。
 そこで、私、質問をいたしますが、まず遠山文部科学大臣に具体的に伺いたいと思います。大学では様々な教育研究が行われております。例えば、物質創成科学あるいは分子情報・生体統御医学、これらはどのような研究教育をされているのでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) それこそ専門家にお聞きになったらいいと思います。文部科学大臣が決定しようとするようなことは、そのような内容にこたえる内容ではございません。
○畑野君枝君 そうおっしゃいますけれども、全学的にかかわる中期目標を文部科学大臣がお定めになるということですから、それは全体のことを知っていない方が決めるということは、これは本当に難しいことだと思うんです。今、文部科学大臣も、それは私には分からないということをおっしゃったわけですね。私も分かりません。
 例えば、物質創成科学。これはどういう内容の研究教育かといえば、電子の挙動を制御する新規な量子物質の創成などを始め、多彩な新機能物質の創成というふうになっております。それから、分子情報・生体統御医学。これは、生命現象の根幹は生体を構成する最小単位の細胞、各種細胞から構成される組織、器官、そしてこれから成る種々の生体システムの機能が正常に営まれることにある、分子情報・生体統合医学専攻では、高次生命体における情報伝達・統御機構の基礎的側面についての教育研究に取り組む、こういうふうになっているわけです。これは、もう本当にすべて分かるという人は、これはいらっしゃらないわけでございます。
 このように、例えば大学における教育研究というのは、対象領域も深く広いわけでございます。もう本当に聞いたこともない教育研究が山ほどあるわけでございます。それは大臣でもそうでしょうし、私もそうでございます。そして、分からないわけですから、そういうことで教育研究の特性に配慮してとか、教育研究の質の向上とか、もう幅広いものを統合したものが、これが大学の目標になってくるわけですけれども、そういう中期目標がそもそも定めることが文部科学大臣にできるのか、まあ強いて言えば能力があるのかと、こういうことでございまして、私は、今度の法案では、もう八十九の大学一つ一つですよ、もう何千あるか分からない、本当にそういうものを統合した八十九の大学の個々それぞれの中期目標、文部科学大臣が最終的に決定することは、私は能力的にもできるはずがないというふうに思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(遠山敦子君) できるだけ冷静にお答えしたいと思いますけれども。
 国立大学の法人化といいますのは、各大学の運営上の裁量を大幅に拡大することによりまして個性豊かな大学作りを進めるということを目指すものでございまして、中期目標は法律上各大学ごとに文部科学大臣が定めるということにしているわけでございますが、中期目標につきましては、国が所要の財政措置を行いますために、最終的には主務大臣が定めるという独立行政法人制度の枠組みを使うということでございます。これは、現在でも、独立行政法人にかかわる、様々な独立行政法人できつつあるわけでございますが、それぞれの所管大臣が中期目標を定めるわけですね。自ら決定することになっているんです。
 そのようなそれぞれの役割を持っている人が、細部にわたって、教育の内容、研究の内容、それを知らなければできないというようなことは、国の制度の在り方として、そのような論じ方というのはいささかどうかと思うわけでございますが、御安心いただきますために御説明いたしますと、文部科学大臣が決定ということでございますけれども、その際には大学の教育研究の特性への配慮義務、今正におっしゃったようなことを各大学ではやっている。それらは政治あるいは行政というものが評価をして甲乙を付けるようなものではありません、そのような特性を持っていますよということに十分配慮しろというのが第三条の規定であるわけです。
 それから、国立大学法人の意見、原案を事前にちゃんと聴取しなさいと法律上書いてあるわけですね。さらには、国立大学法人の意見、原案へ十分配慮しなさい。これだけのことを条件にした上で、しかし国のお金を投入する。したがって、その中期目標を大学の原案の上に評価委員会の意見も聴いて、様々なことを配慮した上で決めるということは、文部科学大臣といいますか、国が責任を持ってその機関における財政措置をするということなんですね。むしろ、責任を取るということであるわけでございます。
 しかも、先ほどのような幾つかの配慮すべき事項があるということは、その中期目標の実際上の作成主体といいますものは、言わば国立大学法人とも解されるわけですね。原案を作り、それに配慮しよう、全体の教育研究の質を、特質をちゃんと踏まえろということでございますから、それは国立大学とも、国立大学法人が実際上作成主体になるとも解されるものでありますけれども、他方、高等教育全体の在り方あるいは財政上の観点などから文部科学大臣もかかわって、両者が十分に意思疎通を図りながら協力をして中期目標を形成していくわけでございます。
 これは、例えばそれぞれの大学がどうぞお定めなさいといって、仮にその決定という権限を文部科学大臣が負うことでなければ、それぞれの大学が、例えば巨大な研究施設を作りたいと言ってくる、あるいは大きな移転事業をやりたい、そのようなことを認めるということは、それは国が責任を負えないということになるわけですね。
 そういうことではなくて、大きな枠組みとして、国の財政上の観点からあるいは高等教育全体の在り方から、それは一つの大学でやるのがいいのか、あるいはいろんな大学が共同してやるのがいいのか、国際的な共同研究の情勢はどうなっているのかなど様々な幅広い角度から包括的に考えて、そして決定をしていくということでございます。
 しかも、その中期目標の作成に当たっては、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する方々によって構成される国立大学法人評価委員会の協力を得るということにしているわけでございまして、それらの意見を十分に踏まえた上で決定をしていくということでございます。
○畑野君枝君 私、一番最初に例として大学の教育研究の具体的な中身を伺いましたら、大臣はそれは大学に聞いてくださいというふうにおっしゃいました。私も本当にそのとおりだというふうに思います。つまり、大学のことが分かっているのは大学なんです。ですから、その目標を定めることができる能力がどこにあるかといえば、正に大学自身じゃありませんか。これが学問の自由であり、それを保障する大学の自治ということが取られてきたわけであります。
 大臣が率直におっしゃったように、なぜこんな目標を大臣が最終決定するのか。その理由は独立行政法人、これが骨格だから、それ以外にないじゃありませんか。だからたくさんの問題点が出てきているんじゃないでしょうか。
 私、六月一日付けの新聞のコラムに、長谷川眞理子早稲田大学教授が科学者として発言をされているのを大変注目をして読ませていただきました。この間議論をされている中心点に現場の学者の方が発言をされているという点だからでございます。少し御紹介しますけれども、
  学問の自由は、なぜ大切なのだろうか?それは、真実の追究という行為は、真実だけを審判に行われなければ、信用されないからである。大学という組織は、中世ヨーロッパで、真実を求めて議論するために集まった若者たちによって自然発生した。日本やドイツの大学など、19世紀以降、国力増強を目的に国家によって設立された大学においてすら、大学の使命は真実の追究と知識の蓄積と普及であり、それをまっとうするために大学という組織は自治を守り通してきた。それは、知的活動の発展は、予測のつかない部分をかかえた、すそ野の広い活動に支えられているからであり、抑圧と介入がよいものを生み出したためしがないからである。
ずばりその学問の自由の本質を私はおっしゃっているというふうに思います。
 私、大臣に伺いますけれども、「学問の自由は、これを保障する。」という憲法二十三条は、教育研究の内容について国は介入してはならないという意味を含んでいるのでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 学問の自由といいますのは憲法第二十三条に定められておりますけれども、これは学問の研究それからその成果の発表の自由を意味しているところでございまして、これは正に大学が学術の中心として深く真理を探求するということを本旨としていることにかんがみまして、特に大学について保障したものと解されるわけでございます。
 このことはむしろ私の方から冒頭にこの委員会の質疑の際にも申し上げたところでございまして、学問の自由を守るというのは当然のこと、憲法上に明確に書かれていることでございまして、今引用されたような方の論文に書かれていることはすべて当然のことであります。なぜ今ごろそのようなことをおっしゃるのかと思わないでもないくらいでございます。
 そういったことを前提としながら、しかし国立大学という国民の期待にこたえ、かつまた国費を投入するような大学が総体としてどのような仕組みで、どのような業務上の重点を置き、そして活性化していくかということを支えるために、今大きく、単に行政組織の一部としてあるというよりは、そういう法人格を持って動いてもらうための仕組みを作っているわけでございます。
 私は、何度説明してもそれが説明が足りないかのようにおっしゃいますことに対しましては、私としては誠実に繰り返しお答えするしかないのでございますけれども、学問の自由を守り、そして大学人のそれぞれの人たちが自由濶達に研究されることは当然でございます。
 しかし同時に、教育についてももっと力を入れて、学生の期待にこたえる、社会の期待にこたえる、そのような大学でなくてはならないわけでございます。そのことを活性化して、より日本の知的の水準を上げていこうというのが今回の法律案の目的であるわけでございます。国費を投入するための必要なチェックだけを最小限やろうということでございまして、大学の自治を侵すとか学問の自由に反するとか、そのような次元の話ではないわけでございます。そこのところを十分お考えいただきたいと思います。
○畑野君枝君 これは六月一日付けの新聞ですから、これはその一つの資料として委員会の中で私は読み上げたわけで、当然のことでございます。当然のことがどうなのかということで私は質問しましたけれども、答えておられません。
 これは介入しないということを、意味を含んでいるんでしょうか、その点どうですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 介入するような分野ではございませんね。介入しないということでございます。正に濶達に、学問の自由、真理の探求、それとともに、そのエネルギーを学生の教育にもつぎ込んでいただきたいし社会貢献にも使っていただきたい、そういうことでございます。
○畑野君枝君 介入しないことだというふうにおっしゃいました。
 私、振り返りますと、この学問の自由というのは、既に四年前に本会議で質問したときに当時の有馬大臣からも御答弁をいただいておりまして、学問の自由とは学問の研究及びその成果の発表の自由を意味しておりますということを含めて、常に議論になってきていることでございます。本当にこれはいろいろな法律が変わろうとも守らなくてはならないことだというふうに思います。
 それで私、この点で文部科学大臣に伺いたいのは、先ほどちょっと触れていただいたんですが、正にこの学問の自由というのは憲法の基本的人権の大事な一つでございますよね。そして、この点でなぜ、中期目標では教育研究の質の向上にかかわる事項も定めるということになっている。どうしてこの教育研究の質の向上にかかわる中身まで大臣が定めるのか、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 教育研究の質の向上は常に大学が取り組んでいただかなきゃいけないわけですね。そして、質の向上のためにどういうことをしようとしているかということを聴かせていただくわけですね。そのことがあってこそ、じゃ国はそういう努力に対してこういう運営交付金を交付しようということでございまして、大学の研究機能の中核たる教育研究の向上についての大学の努力目標というものを原案でいただいて、それを配慮して中期目標に定めるということです。
 私は、そもそも各国立大学が、これまでは自らの大学の存在意義を考えたことがなかった、今初めて考えたというような参考人も出るぐらいに、各国立大学が自らの大学のあるべき姿、国民に対して果たすべき役割について明確なことをメッセージとして発してこなかったのではないか。そうした高い理想というものをそれぞれの大学が持つべきであります。
 そういうことを実現するために、中期目標という、短期間の間で、じゃこういうことをしましょう。これは佐々木参考人が、私も聞いておりましたが、いみじくもおっしゃいました。これは国と大学の間におけるその期間の契約である、契約をきちっと定めてそのことをしっかりやろう、それによってこそ、自分たちは国費を投入してもらえるのだと、総長がおっしゃっているわけでございます。そういう角度から見れば、私は、教育の研究、質の向上について、その大学の意見を聴いて、それに配慮をして中期目標の中に組み込んでいく、そのことは当然であろうかと思います。
○畑野君枝君 おっしゃいましたけれども、大臣はこれから八十九大学の中期目標にかかわろうと、そういうお立場なんでしょうけれども、私は本当に不安に思いました。
 例えば、既に今の国立大学でもそれぞれ本当に真剣な議論をされて理念や中期目標、失礼、理念や目標を持たれていますよね。例えばこれは、広島大学の理念は、「平和を希求する精神」掲げておりますし、長崎大学の理念・教育目標は、「地球の平和を支える科学を創造することによって、社会の調和的発展に貢献する。」、「宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が「平和」に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行う。」、正に被爆地広島や長崎の置かれている大学の個性を大いに発揮した理念や目標を持たれているわけです。
 そして、こういう目標や理念というのは、今回、中期目標で書きなさいというふうに言われていくわけですけれども、既におっしゃったように、これまでの仕組みでは、国立大学は自らの目標を決め、一方で国からの財政支援、税金投入を行われる、そういうことで十分やってきたじゃありませんか。そして、今本当にその努力が一層強められようとしております。
 ですから、本当に答えに、なぜ、今度の国立大学法人法案になれば税金出すから目標も定めていいのだということにはならない。私は、ここに致命的な法案の欠陥があると思いますよ。だって、先ほど大臣がおっしゃったように、介入してはならない、学問の自由、大学の自治、これを保障するのは当然、当然のことですと大臣は力説したわけです。現場のことは現場に任せる。これが、これからも二十一世紀、大学の改革というならば、その方向でこそ進められるべきだというふうに私は思います。この点では論理の飛躍が私はある、説明になっていないというふうに言わざるを得ません。
 この点では、正に、先日、田端博邦参考人からもお話があったように、出発点が行政改革、正に独立行政法人通則法を骨格にして進められたからだという指摘どおりだというふうに私も思います。
 私、先ほどから大臣は、そうはいっても大学の意見を伺うんだ、配慮されるんだというふうに度々おっしゃっておりますが、それなら私は大学が決めればいいと思うんですが、そうはならない。大学の中期目標に対する原案が出されて、それと違うことを文部科学大臣が中期目標で定めるということはあるのですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 大学の自由な学問研究について介入しない、当然の前提の上で、中期目標に記載する教育研究の質の向上に関する事項といいますものは、例えば各大学が目指す教育目標や研究水準、その実施体制などに関する事項などを想定しておりますけれども、記載内容は原則として全学的な視点からのものに限るわけでございまして、各大学の特性を踏まえ、一層の個性化を図る観点を考慮しながら、明確かつ簡潔に記載することといたします。
 そして、学部や研究科における個々の教育研究活動等については記載を求めない。委員が先ほど来おっしゃっているのは、学部、研究科のレベルじゃなくて、もっと個人の研究者が没頭しておられる研究内容について云々ということでございますが、そういうことはむしろ中期目標の中に記載するものとしては想定していないのです。
 で、御質問の点ですけれども、大学の原案となる内容を中期目標として定めることがあるのか、それはそのとおりで、原案と異なる内容となる場合はどうするのかということでございますが、文部科学大臣に対して、中期目標については教育研究の特性や大学の意見、原案への配慮を義務付けるということで、中期目標の実際上の作成主体は言わば国立大学法人とも解されるものでございますけれども、先ほど来申しておりますような国費投入ということで、さらには高等教育全体の在り方ということにかかわって、文部科学大臣とそれから大学側とで十分に意思疎通を図りながら、また有識者の意見も聴きながら中期目標を形成していく仕組みになるわけでございます。
 で、中期目標の作成に当たりましては評価委員会の協力を得ることになっていまして、こうした過程において、例えばこういうことが起こると思うんですね。財政上の理由等から、例えば先ほど申しましたように大きな移転計画が突如大学から出てくる、さらには大規模研究所、研究施設みたいなのをぼんと出してくる。そのようなことは相当の検討を重ねた上でやっていく必要もあるわけでございまして、今言ったのは単なる例で私の思い付きでございますけれども、そういったこと、ないし財政上の理由等から国立大学法人評価委員会から意見が付されて、その意見を大学に通知して修正を求めるといったようなことは考えられるところでございます。
 しかし、基本におきましては、それぞれの大学が希求する教育研究水準の向上といったものについての各大学の意見というのを尊重し配慮するという精神においては、この中期目標の形成において当然守られるべき行き方だというふうに考えております。
○畑野君枝君 つまり、大学の原案と違うことを文部科学大臣が中期目標で定めることはある、大学の原案と違うことを文部科学大臣が中期目標で定めることはあるという御答弁でした。しかし、財政的というふうにおっしゃいますけれども、これまでもこれは大学自治でそういう問題もきちっと定めてきたんですよね。ですからもう理由にならないわけでございます。
 私、ちょっと加えて伺いたいんですけれども、原案が出されてきまして、そこに書いていないことを中期目標として定めなさいと文部科学大臣が定めることはあるんですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 先ほど言いましたように、中期目標の中には個々の研究者レベルのようなことは全く上がってきません。で、これは、学部や研究科におけるその個々の教育研究活動等については記載を求めないということでございます。
 ただ、その大学が志向している、あるいは向上を図ろうとしている内実について書いていなければ、余り抽象的な、例えば先ほど読み上げられたようなことではこれは目標にならないわけですね。中期目標にはならないわけでございましょう、抽象的過ぎて。そのような場合には、じゃ、大学は学内の組織をどのようにしようとしているか、学生に対してどのような教育研究の充実を図ろうとしているかというようなことについてもう少し詳しくお書きくださいというようなことを言うかもしれません。
 それは、中期目標の原案として上がってくるものはどういうものであるのか、それを直接文部科学大臣ないし文部省が何か言うのではなくて、国立大学法人評価委員会にかけて、そしてその意見を聴いて、それについて両者の間で目標を形成していくということであるわけであります。
○畑野君枝君 本当にこんなことをやっていたら正に大学の自主性というのは保障されなくなるというふうに私は言わなくてはならないというふうに思います。
 やはり、大学が自らきちっと研究教育の目標を持って行うということが本当に大事になってくる。もう本当に介入してはならないということを私厳しく申し上げておきたいと思うんです。正に質の向上といった場合には、それはもう具体的なものになるわけですよ。正に個々の研究にも掛かってくることになるんですよ。
 私、国立国会図書館で日本語大辞典というのを引いてまいりましたけれども、質とは何かというんですよ。「ある物を形づくっている材料を、良否・粗密などその性質の面から見たもの。」と。正に個々の具体的な話に入ってくる。もうそんなことは絶対にやってはならない。そういう点からも、本当に聞けば聞くほどもう驚くような法案の中身じゃありませんか。
 大臣が最初におっしゃった学問の自由、大学の自治、守るのは当然の当然の当然のことだ、介入するなんてことがあってはならないとおっしゃる一方で、この法律の仕組みを聞けば、そういうことにも口を出していくような方向になるということであれば、これは絶対やってはならないことだというふうに私は厳しく申し上げておきたいと思います。
 私、別の視点で伺いたいんですけれども、学校法人としての私的自治を持つ私学について伺います。
 これは、当委員会にもいらっしゃる西岡議員も提出者になられた私立学校振興助成法ですが、一九七五年の国会の審議の中で、森喜朗衆議院議員が質問をされ、「私学の質の向上といいましょうか、あるいは経営のあり方ですね、そういう面についてこれからどのように文部省は考えていかれるのか、お伺いをしたいと思います。」とおっしゃり、その答弁として文部省の管理局長が、「私どもこの経常費補助金を通じて考えることは、教育の内容には絶対に関与することなく、その教育の外的な条件の整備確立ということについて国費との関連で配慮すべき点は十分努力をして、たとえば定員の増加が多くて教育条件が悪いとか、そういうことのないような努力をすべきである、」と明確に答弁をされております。
 正に、援助すれども統制せず、サポート・ノーコントロールということで進められたというふうに思いますが、こういう内容でございましたでしょうか、確認をいたします。
○政府参考人(加茂川幸夫君) 学校法人に対する私学助成についてのお尋ねでございます。
 委員御指摘のように、私立学校につきましては、私立学校法第一条に規定にございますように、私学の自主性を尊重するという大原則、先ほど来議論になっておられます学問の自由を保障するという観点からも、最大限私学の自主性を尊重するというのは大原則だということをやっぱり確認をする必要があるかと思います。
 ただ、私学振興助成法に基づきます私学助成につきましては、学校法人、教育の事業に対する助成になりますけれども、これについては憲法上の別の要請もございまして、すなわち公の支配に属している事業でなければ助成等はできないという規定でございます。
 学校法人及びその設置する学校につきましては現在も学校教育法の適用があるわけでございますが、今申しました私立学校法あるいは私立学校振興助成法によりまして、例えば法人の解散命令、あるいは助成法の規定に基づきます役員の解職勧告、予算変更勧告など各種の監督規定が設けられておるところでございまして、学校法人に対する管理運営面の必要な監督規定が設けられておるわけでございまして、この意味では、そのノーコントロールという言い方は必ずしも正しくないと言えるのではないかと思っております。
○畑野君枝君 内容については、これは関与してはいけないということでよろしいですね。確認します。
○政府参考人(加茂川幸夫君) 個々の教育研究内容についてはおっしゃるとおりかと思います。
○畑野君枝君 私は、そういう点では、学問の自由というのは国公私、共通して守らなくてはならないと遠山大臣もこの間おっしゃっているわけですから、これは更に私学問題を通じて国の税金の投入の仕方というのは発展したというふうに私は思うわけでございます。私学については関与してはならないと。しかし、今回の国立大学法人の場合は目標にまで国は関与していると。本当におかしいことだというふうに思うんです。
 大体、これまで自治のある組織に対して所管大臣が中間目標を定めるような法律はあったんでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 自治のある組織と、こういうお話でございますけれども、自治の具体的な内容につきましてはその組織の性格等によりいろいろだと、こう考えられますので、一律にお答えすることは難しいわけでございますけれども、大学の自治ということでいいますと、大学に対して中期目標等を示すというのは我が国の大学制度では新しい仕組みであると認識しておるわけでございます。
 ただ、今回の、大学の自治は、先ほど来議論になっておりますように、教育研究に対する大学の自主性を尊重する制度と慣行でございまして、これらにつきましては、教育研究に直接責任を負う教員の組織が教育研究に関する大学の自主的決定の基盤となる限り多様な大学の自治の仕組みを考えることが可能ではないかと考えておりまして、今回の法人化は、大学の自主性、自律性が大幅に拡大するものであるということとともに、学長の選考を各大学に置かれる学長選考会議で行うことや、中期目標の作成に当たって大学の意見に配慮する仕組みを導入しているということから前述の意味での大学の自治を損なうものではないと、こう認識をしておる次第でございます。
○畑野君枝君 つまり、本当になじまない型に体を合わせようと思うと体はおかしくなってしまうんですよ。絶対売ってはならない魂、それは学問の自由、大学の自治だと最高裁の大法廷の判例でもこれは確定していることなんです。
 ですから、今回のような大臣が中期目標を決定するのは世界にもない、過去にも日本ではない。そして今、自治を有する組織にとってそういうこともないと、もう重大な御答弁がありましたけれども、本当に最大の問題はこの二十三条、憲法の二十三条違反と。もう本当にこれは廃案にするしかないというふうに私は思います。
 中期目標に絞って質問をいたしましたけれども、先ほどから言われている、税金を投入するから最低限の関与は必要という理由でフリーハンドで中期目標を定める大臣の権限を導入しているというのは、これ間違いです。本来なら、教育研究を担当する省庁としては、ダムや橋に税金を投入する一般の法理に対して、学問の自由、教育研究に対して税金を投入するにはどうしたらいいかという法理を二十一世紀確立していかなくちゃいけないというふうに思うんです。
 そういう点では、研究者は研究しております。その上で、大学改革というのならば、高等教育予算の大幅増額、経理の公開、財政配分の公正な配分のために独立した大学財政機関を確立していくと、こういう大学改革をやるべきだということを申し上げて、質問を終わります。
○西岡武夫君 委員長のお許しをいただき、また山本委員のお時間を若干いただきまして、冒頭に、先ほど文部科学省の方から御答弁がありました点でどうも私としては聞き捨てならない文言がありましたので、大臣にお尋ねをいたします。
 この法案が今これだけ真剣に審議をされている最中であります。しかも、国立大学を抜本的に、改正と私は思いませんけれども、これだけの大きな改革をやる審議が国会で行われている最中に、既に文部科学省としては、この法律が成立をしたということを前提とした移行のための経費をお使いになったり、あるいは新しい会計システムの研究等々いろいろな研究を進めておられると。もしも進めておられるとするならば、当然この審議の場に、新しい、文部科学省が今考えておられる独立行政法人という新しいシステムの傘の中に、私は、傘の中にあると思うんですけれども、その国立大学法人の全容をすべて明らかにして、そして審議が進められるべきであると思いますけれども、この二点について、どうも先ほどの文部科学省の御説明は国会審議を無視しているんじゃないかと。もう法案は当然通るんだと。与党の皆さん方が多数だから通るんだとお考えになるのかもしれませんけれども、先般の私の質問でも申し上げましたように、衆議院における審議も十分行われていないままに参議院にこれが、法案が来てしまったと。これで日本の将来のことが本当に文部科学大臣が責任が持てるのかと。国会の審議を何とお心得になっておられるのか、お尋ねをいたします。
○国務大臣(遠山敦子君) この国立大学の法人化のことにつきましては、今正に国会において御審議をいただいているところでございます。しかし、これは突然私の方で出してきたということではございませんで、既に政府として昨年六月に国立大学の法人化を平成十六年度を目途に開始すると閣議決定をいたしております。閣議のメンバーであります私といたしましては、そのことを踏まえてそれに必要な準備を整えるということでございます。もちろん、その法律の成立を待ってすべて始めるという、そういう言い方もあろうかと思いますけれども、閣議決定をされて、しかも平成十六年度からは実施に移すという段階で、例えば今法律が成立してそれに必要な経費を十分に準備するということができますでしょうか。私としては、そのことについて閣僚の一人として必要な準備を並行してやっているということでございます。
 しかし、それは内部的な、この法律が本当に成立をして、整然とそれからいろんなことが動いてまいると思いますけれども、言わば足踏みといいますか準備段階でございまして、そのことについて、ここにおいて整然とした形でお示しをする、それこそ、それこそ国会軽視ということになると思います。
○西岡武夫君 今の大臣の御答弁は極めておかしいと思いますね。閣議決定をなされたからやるのが当然だと。じゃ、国会を何とお心得になっているんですか。どっちが大事ですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 閣議決定をされて、そして政府の方針として平成十六年度から国立大学法人化ということを目指してやれということでございまして、現にそれをやるかどうかは国会の場でお決めになることでございます。しかし、例えば、例えば平成十六年度からということで、何もしないでこの成立を待って事柄を急に急ぐということになりましたら、それこそ日本の大学は大混乱になります。
 私は、西岡委員というのは大変尊敬をいたしておりますし、正に国立大学を愛しておられる典型だと思いますけれども、そのことと私どもが真剣に取り組んで、正に今は国立大学法人法の成立に向けて全力を傾けて、何か月間も二十四時間体制でみんなやっているわけでございますけれども、それは正に国会での御審議を尊重するからでございます。同時に、しかし大学に対しては不安を抱かすということがないように必要な準備というものはやっていくということでございます。必要が、もし、もしこれが通らなければそれは必要がなくなるわけでございましょう。
 私は、委員の御指摘はある意味では正鵠をついた御質問かもしれませんけれども、かつて文部大臣をおやりになりました方の御意見とは思えないわけでございます。
○西岡武夫君 今の大臣のお言葉は、これはお取り消しをいただきたいと思います。私が申し上げているのは、閣議決定を盾にして国会での審議を愚弄するものだと思いますね。お取り消しをいただきたい。
 私が申し上げているのは、閣議決定をして、何月、何年の何月からやるから、ここで国会の審議は早くやってもらいたい、それを前提として、じゃなぜ法案が、私は反対ですけれども、万が一、与党の皆さん方もこれを本当にいいと思ってやっているとは到底思えないんですけれども、万々が一通ったとして、通ってから十分な時間を掛けてからスタートさせるべきじゃありませんか。
 今の大臣のお言葉はおかしいじゃないですか。取り消してください。
○国務大臣(遠山敦子君) 私の考え方は先ほど申したとおりでございます。これは是非とも理事会においてしっかりと御議論をいただきたいと思います。
○西岡武夫君 大臣、大臣を、私、西岡武夫が文部大臣をかつてやった言葉とは思えないという言葉は取り消してください。
○国務大臣(遠山敦子君) その点につきましては取り消させていただきます。申し訳ございませんでした。
○山本正和君 これは大臣がどういう立場で言っておられるか、一生懸命に取り組んでこられた経過から分かりますけれども、だけれども、三権分立といいますけれども、国権の最高機関たる国会なんですよ。国権の最高機関たる国会がまだ決定していないことを、閣議決定があるからといって、閣議決定を優先して発動するようなその考え方が間違っているというわけなんですよ。
 いいですか、国権の最高機関なんですよ、国会というところは。国会が決まるまでは駄目なんです。だから、閣議決定というのは国権の最高機関たる国会の決定を何とか得たいと、そういう願望も含めての閣議決定なんですね。閣議決定が最高決定じゃないんですから、そこは間違えないようにしていただきたい、ここは。ちょっと今のところは、役所に長い間おられたから、役所というところはこれはいやでも応でも閣議決定を大事にするのは当たり前だからそれは分かりますけれども、そうじゃないんですから。
 国会は最高の機関なんです。国権の最高機関なんです。その最高機関が決定していないことを、閣議決定がこうありますので、決定していませんけれどもかくかくいたしますというそのことは駄目なんですよ。それは率直にお取り消しください。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、行政を進める行き方としまして、その方向を目指して準備をするということでございまして、私は並行しつつ少しずつ準備をしていくというのは当然の作業ではないかと思います。そのことにおいてこの法案自体の御審議を、法案自体の御審議を妨げるようなことは一切いたしていないわけでございます。
○山本正和君 ちょっと整理をして、大臣もちょっともう一遍御自分がおっしゃったことを後で速記録見てもろうたら分かりますから。今のような形で、要するにこの法案が通過した場合にどういうことが必要かということのための準備をするということと、閣議決定がありますので、したがって国会の決定がまだされていませんけれどもかくかくしかじかのことを進めますということは意味が違うんですから。ですから、そこのところをもう一遍速記録を十分見ていただいて、私はこの問題を取り消していただきたい。
 要するに、国会の決定前ですけれども閣議決定があるのでかくかくいたしておりますと、それはもう重大な事柄なんですよ、その言葉は。そこはひとつ是非取り消してもらわなきゃいけない。分かるでしょう、意味。
○国務大臣(遠山敦子君) おっしゃる趣旨は分かります。ただ、その法案を出して、ただ私どもの考えで、政策決定はそれぞれの省がやりますから、大臣の政策決定の上に法案を出して、それを待って成立を待つ、そしてそのために準備する、それはいいとおっしゃるわけでございますが、それに加えて私としては閣議決定というものもあるという意味で申し上げているわけでございます。山本委員が政策の大きな転換ということで、それに対する準備が必要ということでおっしゃるとすれば、それは同じことではないかと思います。
 私の言い方がやや閣議決定があったから、だからというふうにもし取られたといたしましたら、それは違います。私どもとしては、その準備を進めるということは、各国立大学が戸惑いなくスムースに新しい法人に移っていただくために必要最小限のことをやるというのは私どもの義務と思うわけでございます。
 しかし、それは、法案そのものの御審議はこちらにお願いをしているわけでございまして、そのことにおいて、私は、西岡委員の御議論について申し上げたのが私の考え方でございます。
○山本正和君 それでは、ひとつ是非休憩していただいて、理事会で協議していただきたいと思いますけれども。
 ただ、もう一遍、大臣、言われる言葉の中で、ひょっとしたら間違って受け止められるかもしれないので、あえて老婆心、老爺心で言いますけれども、問題は、法案を提出したら、提出した場合の成立に備えて様々な準備するというのは、役所としてやるのは当然のことなんですね。閣議決定があろうとなかろうと関係ないことなんですね。いいですか。
 ところが、先ほどの御発言は、本法案がここで審議中であるにもかかわらず、閣議決定があるので云々ということを言われたので、それはもう重大なる国会に対する、国会の審議に対する、侮辱とまでは言いませんけれども、適当な言葉じゃない、そういう言葉を使うのは。そういう意味で言っているので、そこは本来からいえば取り消すべきなんですよ。私はそう思いますよ。何も言わずに、閣議決定という部分は取り消しますと、こう言われれば済む話なんです。要するに、法案が成立した場合に備えて準備をいたしておりますということならば、それ以上のことではない、何も。その辺は間違えないようにしてください。
○国務大臣(遠山敦子君) 法案が成立することを目指して着々と準備をさせていただいております。
 それについて、先ほど申しました、閣議決定を引用して、私としてはむしろそれは、そのことを正当化する一つとして申し上げましたけれども、もしそれが十分でない、あるいは意に反するということでありますれば、私といたしましては、その分については取り消すこともやむを得ないと思います。
○委員長(大野つや子君) 速記を止めてください。
   〔午後三時二分速記中止〕
   〔午後三時十九分速記開始〕
○委員長(大野つや子君) 速記を起こしてください。
○山本正和君 先ほど、大臣から、国会のいわゆる権限とかの、そういうふうなことについての誤解を招くような部分があった場合には閣議決定云々の部分については、その部分を取り消すことには別にやぶさかではないと、こういう御発言がありましたけれども、これは事実上、閣議決定云々という部分については取り消されると、こういうふうに受け止めてよろしゅうございますか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私の不十分な発言によりましてお時間を取りまして誠に申し訳ないと思います。今おっしゃいましたように、閣議決定というくだりにつきましては取り消させていただきます。
○山本正和君 それでは、私、引き続いて質問をしてまいりますが、委員長、あと何分ぐらいありましょうか。
○委員長(大野つや子君) 四十五分までだそうです。
○山本正和君 そんなにまだあるんですか。
 それじゃ、まずお伺いいたしますが、この本法案については様々な議論があるわけでありますけれども、実は国大協も、また文部省当局、事務局も含めてですね、歴代の文部大臣も、今日はここに前文部大臣、元文部大臣、三人お見えでございますけれども、歴代の文部大臣も、独立行政法人化という言葉が出たときには、これは駄目だと、こういう御意見が多かったというふうに聞いております。したがって、独立行政法人化についてはこれはやっぱりおかしいと、こういうことを当時文部省がお考えになったその理由を若干お聞かせいただきたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 平成八年に行政改革会議が設置をされまして、行革の観点から独立行政法人制度の創設が議論をされたわけであります。その中で、国立大学の独立行政化についても議論がされたわけでございます。
 これに対して、国立大学協会の方も、いわゆる定型化された業務について効率的に、短期的に評価する独立行政法人は大学にふさわしくないんだと反対の決議が行われました。
 文部科学省も、当時のあの段階で、議論が行われていた段階で、いわゆる定型的な業務にとってはそれは行政法人化というのは可能かもしれないけれども、また国の財政措置もはっきりしない段階で、とにかく独立行政法人制度の全体の全体像が明らかでないということもあって、やっぱり国立大学の法人化についてやるならば、当然、大学改革の一環として検討を行うべきだというのが当時の文部科学省内の検討でありまして、当時の町村文部大臣が大学の独立行政法人化には反対という表明を行ったわけでございまして、いずれも独立行政法人制度の制度設計が不明確であった当時の状況を反映したものだと、こう思っておるわけであります。
○山本正和君 独立行政法人化ということについて大変な懸念がそれぞれお持ちでございました。私も実はそういうことでこの独立行政法人ができた経緯をずっと調べてみたんですが、何と、既に独立法人になっているところ、箇所、国が従来しようと思っておったものを独立法人にしていったというのをずっと調べてみたんです。そうすると、財務省が実は、私はこう思うんですよね、国立大学をもし独立法人化したとするならば、国が国税庁を独立法人にするみたいなものだというぐらい私はそのとき思ったんですね。要するに、文部省というものの持っている国民に対する責任、そしてその重さ、そういうことからいえば、義務教育と高等教育、特に高等教育を明治以来我が国がずっと大事にしてきた。
 それで、国立大学の最大の、何といいましょうか、強さというのは、貧しいうちに育った子供でも国立大学には入れたわけですね。村の有志が、あの子ようできるからと大学に入れたというふうな経過もありますね。
 ですから、国立大学というものが日本の国にあったからこそ、明治から、そして戦争負けたときに、あれぐらい貧しかった日本の国が、とにかく今経済、世界で第二の大国というふうに言われてきている。その役割を国立大学が背負ったのは非常に大きいと私は思っていますね。そしてまた、旧大日本帝国という時代においても、大学の学問の自由というのはある程度保障されていた、全面的とは言いませんけれどもね。ですから、例えば天皇機関説なんかも堂々と大学内で議論されている。
 そういういろんな経過、経緯含めて、ですから文部省が設立以来、文部省が設置されて以来、ずっと背負ってきた重大な任務の中に国立大学というものがあったと。文部省としては切っても切り離せない重要な仕事だと私は思っているんですね、国立大学というやつは。
 ところが、独立行政法人というのは、これは通則法の初めに独立法人の定義が書いてありますよね。見たら、何かといったら、社会的、公共的に必要なもの、そういう事務事業、そういうものがあると。しかし、その中で、国が主体性を持って責任を持ってそがなくていい部分、これを独立法人にしているわけですよ。
 だから、文部省が、何でそんな、国立大学を独立法人なんてけしからぬというのが私はその当時の、これは恐らく中曽根文部大臣もあるいは有馬文部大臣も、歴代文部大臣、また古くは西岡文部大臣以来のずっと古い文部大臣の人たちはみんな思っていただろうと私は思うんですよね。だから、独立行政法人というのはけしからぬと、こう思ったというふうに私は思うんですけれども、そういう理解でよろしいですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私も、この独立行政法人化という議論を海外にいたときに聞きまして、愕然といたしまして、それは国立大学の本質論とはもとるというふうに大使公邸の中でじだんだを踏んだことがございます。
 しかし、それは、当時に、今聞きますと、町村文部大臣も言われたと同じことだと思います。これは、独立行政法人という今おっしゃったような本当に定型的な業務を任せるというたぐいのものではないということにおける私自身の反応であったというふうにも思いますが、しかし、後に様々な経緯、様々な方々の御努力によって、これをそういう角度ではなくて、むしろ長年日本の中でも議論され、国際的な情勢も見た上で、やはり国立大学というものも、国の行政組織の一部ではなくて、独立した法人格を持つべしという底流、その政論の底流があった上に、何度も閣議決定がなされ、あるいはその方向性として大学改革の一環としてやるという確固たる思想が出てきたということにおいて、それは総合的に見てこの方が今日ある国立大学の存在、設置形態であるよりはいいという判断の下に、周到な議論を重ね、そして大学人自身の御意見も十分に伺いながらやってきたということでございまして、私は、今日この時点においてこの法案を御審議をお願いしております真意というものは、何度も言っておりますような、日本の国立大学をより活性化をして日本の知の拠点というものを強化していきたい、その考え方の表れでございまして、今は単純な意味の通則法による独立行政法人ではない、その中でいかに自律性を確保していただくかということにおいて十分議論をし、十分に構想をして御審議をお願いしている法案だというふうに考えております。
○山本正和君 ですから、今度出された法案の国立大学法人というものは、要するに独立行政法人というんでは困る、だからこれにしたんだと、こういう御主張だと思うんですね。文部省の意向だと思うんですね。
 また、国立大学法人というものが実際は、実は今度のこういう行革の中で、これは平成十一年だったですかね、行革が通ったときね、行革法案、関連法案が。何か十八法案だったですかね、あのときはね。もう訳の分からぬと言ったらしかられるけれども、国会でもどれを議論しているか分からぬいうぐらいたくさん錯綜しておったですね。それが通ったのは平成十一年ですからね。それ以来、独立行政法人という動きが、国立大学もそうしなさいという様々な動きがあったことは事実ですけれども、文部省としてはそれじゃ困ると言って、国立大学法人じゃなくちゃいかぬと。要するに、こうしたらまだ学問の自由も守れるじゃないかと、大学の自治もできるじゃないかというぎりぎりの限界として頑張ってこられたと。私はその努力は否定しません。一生懸命取り組まれた御苦労はよく分かる。特に、一番御苦労いただいたのは有馬先生じゃないかと思いますけれども、本当に大変な御苦労の中で取り組まれたことは私たちよく分かるんですよ。
 ところが、ところがここに来て、なぜこの法案に対するいろんな問題が出てきたかといったら、独立行政法人の第三条以下、これを準則の中で適用すると、こうきている。要するに、国立大学法人ならば、一本の法律として、例えば評価の問題であろうと目標の問題であろうと、国立大学法人その中できちっと決める。これは、私は文部大臣の場合によってはあれ受けてもいいと思うんですよ、指導なりあるいは、何というかな、お互いの折衝というのはあってもいいと思いますよ。
 しかし、それをなぜ総務省に、総務大臣のところまで持っていって、おかしなものにするかということが出てくる。それはなぜかといったら、独立行政法人の中の様々な、第三条以下のいろんなものを準則適用という表現を使っているから問題があるので、なぜ国立大学法人法としてきちっとそれも含めてやらなかったんですか。私はそこが一番おかしいと思う。
 要するに、何ぼ独立行政法人じゃありませんと言いながらも、独立行政法人の枠の中にはまらざるを得ない。そして、最大のこれは私は問題は、今の政府の中で文部省が少しおとなし過ぎると思うんです。これはほかの省庁の役人は物すごく、つかみ合ってけんかぐらいするような勢いでやるけれども、私はちょっと文部省は紳士的過ぎると思うんですよね、正直言って。だって、この独立法人ができた、ずっと見てみると、よその省庁は自分のところの肝心なものは一本も放していないですよ。文部省はもう極めて理論的ですから、要するに何とか、じゃ、どういうふうに調整するかという遠慮があったような気がしてならないんです、ここのところはね。
 私は正直に言いますけれども、これなぜ準則を作ったんですか。準則なんか作らずに全部国立大学法人で一本化したものとして、そしてしかも、大臣が何遍も繰り返し言っておられるように、大学の自治、学問の自由、これを保障するためには今の国が直接やる制度よりも国立大学法人にした方がいいんですよというその部分を際立たせて浮かせるような法律に作るのならば、これは私は賛成できると思うんですよ、大学改革は必要ですからね。
 しかし、何ぼ言っても、これは最初に大仁田委員が改革賛成だと言われた。私も改革賛成ですよ。しかし、何もかも一緒くたにして、どこかその辺の出先のちょこちょこした機関も国立大学も、同じ出先法人にならないですよ。国立大学というものの任務は重要であると。我が国が世界に誇る学校制度なんですよ。世界じゅうでこういう制度を百年近くも保った国、どこにもないですよ。だから、国立大学をもっと良くするための国立大学法人化なら私は大賛成だ。
 そういう意味で、私はこの法案の中で矛盾点があるのはこの準則の問題、何でこのことを準則でやったのか、その辺のひとつ理由をお聞かせ願いたい。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 大変事務的な説明で恐縮でございますけれども、国立大学の法人化につきましては、平成十一年四月の閣議決定で大学改革の一環として検討すると、こうなっておりまして、独立行政法人制度を活用しながら、それをいかに大学の自主性や教育研究の特性に配慮した形に再構築していくかという観点から検討が重ねられたものでございまして、その結果、御案内のように、文部科学省の調査検討会議におきましても、独立行政法人の枠組みを活用しながら、学長の任免等におきまして独立行政法人とは異なる取扱いとすることが妥当だと、こういうこととされまして、こういう仕組みを法制化するに当たりまして、独立行政法人通則法に基づく独立行政法人としての位置付けとして位置付けるのではなくて、本法案によって設立される国立大学法人とした上で、必要に応じ独立行政法人通則法の規定を準用すると、最も適切であるということで、事務的にはこんなような法案のような形になったということでございます。
○山本正和君 だから、今のお話聞いたら、文部省としての大学に対するいろんな思いというか、哲学というものがその中に、この今の局長のお話の中では出てこないんですよね。
 独立行政法人通則法の中で独立法人の定義が書いてある、ちゃんとね。その定義を見たら、本当にもうこれはというぐらい腹立つんですよ。どういうことかといったら、「この法律において「独立行政法人」とは、」と。「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び」職業であってと、大変重要な仕事ね。事務及び職業ですよ、職務か、事務及び──「事務及び事業」だよね、「事務及び事業であって、」だ、そして「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、」、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、」、この中に国立大学も入ったというのが最初の議論なんですよね。
 こんなばかなことを言われたら、今の現職の皆さんは知らぬけれども、恐らく平成十一年当時の皆さんは怒っただろうと思う。「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、」、これから独立行政法人を作った。それに対して抵抗して、文部省は国立大学法人にしたわけでしょう。そうしたら、なぜ独立行政法人の第三条以下を適用するんですか。独立行政法人とは違いますよということでけんかせにゃいかぬ。
 ところが、何ぼ言っても、だれが偉いのか知らぬけれども、総務大臣の片山虎さんが偉いのか、石原行革庁長官の、あのかわいい坊ちゃんが偉いのか知りませんよ。何でこんなことをするんですか。何でそんな通則を、こんなけしからぬ法律の、けしからぬておかしいですよ。大学とはなじまない法律ですよ、大学とはなじまない法律の条項をなぜ国立大学法人法に適用したんですか。それを私は一番、これが、この法律を見たときにびっくりしたんです。
○副大臣(河村建夫君) 私ども、私どもといいますか、この職に就く前、党にあってもこういう議論をしたわけでありまして、これは山本委員言われるとおりで、いわゆる通則法ではこれはとてもなじまないというのが皆さんの結論なんですね。
 したがって、国立大学法人でしようとしたわけでありますが、しかし、我々の議論の中で、この仕組みの中で活用できるものもあると、しかし、大学の運営の中にはあると。それは何と何なのかということでその部分を準用しようとしたわけでありまして、本旨のその根幹のところは、大学の特殊性といいますか、大学法人であるわけです。しかし、全体の仕組みの中で一部準用できる部分もあるということをここで取り入れただけであって、本筋は大学法人という大学の特殊性というものを配慮した法案になっているということで、私どももいろんな議論の中で、このやっぱり枠組み、その通則法の利用できるものは利用するけれども、しかし大学の特性上どうしても必要だということでそういうふうになっていったわけでありまして、準用していることそのものがけしからぬので、最初から一切そういうものを排除してやればよかったじゃないかと言われれば、それはそういう議論も成り立つと思いますけれども、しかし全体の仕組みの中で、やっぱり大学といえども運営の効率化とか図っていただく、図らなきゃいかぬと、もっと大学は活性化して世界に発信する大学を作る、これは一つの大きな国民の世論もあったわけであります。そういうものにこたえたのがこの法案であると、こういうふうに考えているわけです。
○委員長(大野つや子君) ちょっとお待ちください。質疑の途中でございますが、先生、ちょっとお待ちくださいませ。
    ─────────────
○委員長(大野つや子君) 質疑の途中でございますが、委員の異動について御報告いたします。
 本日、山根隆治君が委員を辞任され、その補欠として浅尾慶一郎君が選任されました。
    ─────────────
○山本正和君 副大臣がおっしゃったその気持ちは分かるんですよ。ところが、この独立行政法人通則法を適用するとなった場合には、独立行政法人通則法で言っている独立行政法人というのは、先ほど言いましたように、国が主体性を持って、責任を持ってやらなきゃいけない仕事じゃないと、そういうものを適用するための通則法を作ったわけです。その中にですから中期目標も設けられたし、あるいは計画も定められた。
 要するに、それはなぜかといったら、しかも、そうではあるけれども、国民生活に必要だから国が管理する必要があると。大学のような、私は象牙の塔とこの前言いましたけれども、それぐらいすばらしいものを国が管理するなんという発想はこの独立行政法人の中にないんですよ。もっと世俗的な様々な事業、それが間違ったらいけないので国がやっぱり計画も見なきゃいけないし、目標も定めることについても相談に乗らないかぬとなっているんですよね。その通則法というみたいな、正に通俗の通則法ですよね。それをなぜこんなものを準用するのかと。国立大学というのは、もっときちんと国民に誇るべき、正に高貴な存在ですよ、私から言わせれば。高貴な存在である法律を、なぜそんな、どうでもいいとは言いませんよ、傍系的な国の職務の部分の独立行政法人の通則というところになぜ合わせなきゃいけない。むしろ、国立大学法人のいいところに向かって、通則法はあんなすばらしいところに行きたいと、こう言われるのが当たり前じゃないですか。
 文部省というのは、私は、文教の府なんですよ。日本人の心を、魂を立派にはぐくんでいくための大事な役所なんですよ。その役所が、何か知らぬけれども、札束でひっぱたくような役所に頭を下げる必要はないんですよ。
 私は、そういうことが気になって仕方ないもんだから、だから本当は、これ、何とかこれは今から省内でも議論していただいて、私は総理とも話をしていただいていいと思うんですよ。これはやっぱり何ぼ言っても日本の国の大学の権威にかかわると。せめて、国立大学法人にするならば、準則だけは外しますよというぐらいやっていただくわけにいきませんか、そこのところは。なぜ、これにこだわらなきゃいけないんですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 大学の設置、経営というものは、私は国が直接関与して行うものではないと思います。その意味で、独立行政法人というのは国が直接やるというものではないものについてというふうに引用していただきましたけれども、正に大学のようなものは国が直接、教育研究をやるという現在の仕組みそのものがおかしいというふうにも言えるわけでございます。
 独立行政法人との関係でございますが、私は、そこのところが一番これまでの議論であり、かつまた大学関係者も真剣に御議論をいただいて、調査検討会議において結論を出されました。その結論をしっかり守って作ったのがこの法案でございます。ですから、大学についての中核部分は、正に国立大学法人として、その教育研究の特性にかんがみた様々な留意点、配慮点というものをしっかり持った法人格を与えようということでございます。
 したがいまして、独立行政法人そのものの枠組みの中で、全体があって準則、準則を、幾つかの条文は引用しているわけでございますけれども、そういうことではなくて、むしろ国立大学法人という明確な法人格を作り上げると、そのことにおいて極めて真剣にかつ慎重に、そして大学人の意見も聴きながら今日の法案にまとめてきたところでございます。
 その心は先ほど来言っているようなことでございまして、私としましては、この法人化法というもののねらいというものは、むしろ先生が御懸念いただく通常の、次元の低いというようなたぐいの表現をなされたようでございますが、そのようなものとは違う別格の意義を持つものとして国立大学法人という形で形成をしていこう、構想をしていこうということで取り組んでいるところでございまして、私は、ですから幾つかの条文を準用しているということをもって、そのことの理想なり、あるいはそのことの重要性なりというものは変わらないというふうに考えております。
○山本正和君 もう時間がないのでこの次にまた回しますが、もう一遍、ひとつ独立行政法人法というのがどういう根拠で作られて、そしてどういうものを対象に現在なっているかというのを見ていただきたいと私は思うんですよ。国の各省庁はたくさんありますよ。国のいわゆる機関が、その中核たる任務を独立行政法人にしているというところはないんです。
 私は言いますけれども、大学が学問の自由、研究の自由を保持することは必要です。それが国の、現在の学校教育法で定める国が設置すると、したがって国の学校だと。それがもしも学問の自由を阻害していることの事実があったならば、あるいは研究の自由、そんなものを学問、大学の自治を阻害しているようなことがあったとしたら、それは大変なことですよ。しかし、それがもし国立大学法人にした方がもっといいというならば私は大賛成です、それはね。しかし、そのことと、独立行政法人というものを作っていこうとしたときの哲学が違うんですよ、哲学が。哲学が違うものをしゃにむに一緒にしようとすると、おかしくなっちゃうんですよ。
 私は、やっぱりそこのところが、だから文部省が、正に二十一世紀における教育改革の中で、これ具体的にぽんと出てくる表れなんですよ。後世の国民に対して責任を持って言い得る大学改革だというならば、本当に国立大学法人法にしてほしい。何ぼ見ても、なぜ独立行政法人法の通則を適用するなんということを使うんですか。どこの法律にありますか、基本法規で、各省庁の。最も各省庁の中で大事な法律の中で、どこそこの借りますってありますか、そんなものは。
 だから、これは役所の大方の人に言わせたら、独立行政法人通則法の枠内の法人だと、こう言っているんですよ、人は。何ぼ文部省がそうやって力んでも、その証拠に準則はこうなっているよと、肝心なお金の部分は全部独立行政法人法と一緒ですよと、こうやられちゃうんですよ。そこに最大のこの問題があるんです。
 私は、衆議院の論議もずっと読みましたよ。しかし、なぜ国家の正に一番大切な教育の基本からかかわる議論がされていないんでしょうか。単につまらぬ部分だけのやり取りが多いですよ。日本の国に責任を持つ教育行政という観点から、本当に教育とは何かという観点からの議論がされていない。そういう意味で、私は、何とかこれをもう一遍、省内においても再検討していただきたい。
 また次に譲りますが、これだけ申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
○委員長(大野つや子君) 本日の質疑はこの程度といたします。
 次回は来る六月十日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十七分散会