第156回国会 文教科学委員会 第16号
平成十五年五月二十九日(木曜日)
   午後一時四分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十八日
    辞任         補欠選任
     岩本  司君     齋藤  勁君
     江本 孟紀君     鈴木  寛君
     山根 隆治君     佐藤 雄平君
 五月二十九日
    辞任         補欠選任
     佐藤 雄平君     山根 隆治君
     畑野 君枝君     富樫 練三君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         大野つや子君
    理 事
                仲道 俊哉君
                橋本 聖子君
                佐藤 泰介君
                山本 香苗君
                林  紀子君
    委 員
                有馬 朗人君
                有村 治子君
                大仁田 厚君
                北岡 秀二君
                後藤 博子君
                中曽根弘文君
                神本美恵子君
                齋藤  勁君
                鈴木  寛君
                山根 隆治君
                草川 昭三君
                富樫 練三君
                西岡 武夫君
                山本 正和君
   国務大臣
       文部科学大臣   遠山 敦子君
   副大臣
       文部科学副大臣  河村 建夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        巻端 俊兒君
   政府参考人
       財務省主計局次
       長        杉本 和行君
       文部科学大臣官
       房総括審議官   玉井日出夫君
       文部科学大臣官
       房文教施設部長  萩原 久和君
       文部科学省初等
       中等教育局長   矢野 重典君
       文部科学省高等
       教育局長     遠藤純一郎君
       文部科学省研究
       振興局長     石川  明君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○国立大学法人法案(内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人国立高等専門学校機構法案(内閣
 提出、衆議院送付)
○独立行政法人大学評価・学位授与機構法案(内
 閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人国立大学財務・経営センター法案
 (内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人メディア教育開発センター法案(
 内閣提出、衆議院送付)
○国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備
 等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

    ─────────────
○委員長(大野つや子君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十八日、岩本司君及び江本孟紀君が委員を辞任され、その補欠として齋藤勁君及び鈴木寛君が選任されました。
 また、本日、畑野君枝君が委員を辞任され、その補欠として富樫練三君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(大野つや子君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に財務省主計局次長杉本和行君、文部科学大臣官房総括審議官玉井日出夫君、文部科学大臣官房文教施設部長萩原久和君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君及び文部科学省研究振興局長石川明君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大野つや子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(大野つや子君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国立大学法人法案外五案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大野つや子君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大野つや子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(大野つや子君) 国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の六案を一括して議題といたします。
 各案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○有馬朗人君 有馬朗人でございます。
 実は、質問を一時間半する予定だったのが一時間になりましたので、たくさん多くの質問をさせていただくことになろうかと思いますが、なるべく手短にお答えを賜れれば幸いでございます。
 まず、今回の国立大学法人化は、一八七七年に東京大学が、一八九七年に京都大学が、ともに国立大学として発足して以来の大改革と言ってよいと思います。それだけに、単なる経済原理だけで変革をしてはならないのであります。しっかりとした理念、理想を実現するためのものでなければなりません。
 一九九七年九月、行政改革会議で国立大学の独立行政法人化が提案されましたとき、私は直ちに反対いたしました。独法化の理由が国の財政の軽量化のためであったからであります。そしてそのとき、国はもっと財政的にも国公私立を通じて高等教育を大切にすべきであると主張いたしました。
 また、当初、独立行政法人は非公務員化が予想されたことに対しまして、私は批判的であり、また、教育研究は独立行政、行政になじまないと考えました。その点、今回の法律が国立大学法人であることを大変喜んでいます。
 しかし、その後、アメリカやヨーロッパを始め、他国の大学がほとんど法人格を持っていることを知り、日本の国立大学が真の自主性を持つために法人格を持つことがよいと判断をいたしました。
 そこで、第一問といたしまして、今回の改革の理念をどう思っておられるか、また、国立大学は本当に自主性を得ることができるのか、その自主性とは何を意味するのか、文部科学大臣にお聞かせいただければ幸いであります。
○国務大臣(遠山敦子君) 誠に大学の在り方は一国の未来を決めると思います。特に、知の世紀と言われる二十一世紀におきまして、知の拠点である大学がその本来の機能を十分に発揮していただくということが大変重要であるわけでございます。特に、国立大学は国民の税金で賄われる大学でございまして、そのことをしっかりと考えながら私どもといたしましては今回の法案を提出しているわけでございます。
 国立大学の法人化は、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討するという平成十四年四月の閣議決定を踏まえまして、平成十一年ですね、大学の教育研究の活性化を図るという、正に大学改革の観点から行われるものでございまして、優れた教育やあるいは特色ある研究に積極的に取り組み、より個性豊かな魅力ある国立大学を実現することを目的とするものでございます。
 現在の国立大学は、様々な工夫はいたしておりますけれども、基本的には文部科学省という行政組織の一部として位置付けられておりますので、国の予算制度あるいは国家公務員法制の下で日常的に文部科学大臣の広範な指揮監督下に置かれているわけでございます。欧米諸国においては既に法人化があるということは議員の御指摘のとおりでございまして、今回の法人化は、そういった状況にかんがみまして、日本におけるこれまでの国と国立大学との在り方を大きく見直そうとするものでございます。
 一つは、国立大学を独立した法人とすることによりまして、国の枠組みから外して各大学の運営上の裁量を制度上大幅に拡大するということをねらいとしておりますし、国の関与につきましては、中期目標、中期計画といった六年間の入口の部分と、それから事後的な業績評価などの出口の部分に制度上限定しようとするものでございます。このように、法人化による各大学の自主性の拡大といいますものは、正に大学における創造的な教育研究の実施を促進することを目的といたしております。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 大変適切なお考えをお持ちで有り難く思います。
 私は、高等教育のみでなく、初中教育も含めた教育に対する公的財政負担が余りにも少ないと思っております。
 そこで、GDPで日本及び主な国々の高等教育並びに初中教育に係る公的財政負担率を教えてください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国によりまして条件が様々でございますので単純な比較は困難だと思いますけれども、OECDの調査によりますと、一九九九年における我が国の高等教育の公財政支出、学校教育費のGDPに対する割合は〇・五%でございまして、アメリカが一・一%、イギリスは〇・八%、フランスが一・〇%、ドイツが一・〇%となっております。初等中等教育についてでございますが、日本が二・七%、アメリカが三・五%、イギリス三・三%、フランス四・一%、ドイツは二・八%となっております。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 私が調べたところでは、高等教育はGDPに対する割合で、今もお返事がありましたが、日本は主な国の中で最低、アメリカに比べて半分以下でありました。初中教育はそれに比べるとまだよいのですが、それでもアメリカに比べて八割になっています。そして、アメリカに比べて〇・六%も少ない。今お答えいただいた数字に近いものであります。
 このように、初中教育費が少ないにもかかわらず日本の初中教育の質がそろっているということは、教員の給料に対する国庫負担と国としての学習指導要領の存在によります。それを地方交付金にしようという動きに対しまして、私は反対であり、大変危惧を感じております。
 私はアメリカで子供二人を近くの小中学校に入れ、地方地方によって教育の間に極めて格差があるということに驚いたものであります。国庫負担について文部科学大臣が大変な御苦労をなさっておられる御努力に心から感謝いたしますが、この点に関しましてどのような方向を今後お取りになろうとしておられるか、お聞かせいただければ幸いであります。
○副大臣(河村建夫君) 有馬委員御指摘のように、義務教育費国庫負担制度、これは国の責任によって最低保障の、義務教育の平準化といいますか、そういうものを保障する制度でございまして、御案内のとおり、教職員の給与等の二分の一を国が負担をすると、こういうことになっております。その結果、全国的な観点からも教育の機会均等や教育水準の維持向上が図られてきた、有馬委員御指摘のように、高い水準でといいますか、保ってきたものだと、こう思っています。
 これを地方に移管という話でございますが、仮にこの制度を廃止するということになりますと、全額一般財源化というような方向になりますと、これは地方の自由でありますから、首長さんの考え方いかんにもよるわけでございますが、ほかの用途にも、道路に化けるかもしれない、こういうことも可能になってくるということでございまして、義務教育の水準確保の保障がなくなるということが、そういうような懸念があるわけでございます。
 義務教育費に係る経費負担の在り方については、昨年十二月の三大臣合意におきまして、教育改革の中で義務教育制度の在り方の一環として検討を行うということになっておるわけでございます。このため、文部科学省といたしましても、中央教育審議会において義務教育制度全体の中で御議論をしていただく、こういうことにいたしておりまして、先日、五月十五日でございますが、今後の初等中等教育改革の推進方針についてということを諮問をいたしておるところでございます。
 中教審での御論議も踏まえながら今後検討いたしていくわけでございますが、その際には、一般財源化の問題点が指摘をされているということも念頭に置きながら、義務教育について国としての責任をしっかり果たしていくという観点に立たなきゃならぬと思っておりますが、私も、有馬委員御指摘のとおり、やはり義務教育、この国庫負担制度、この根幹を堅持するということは、やっぱり私は義務教育の保障を国がするという基本認識を持たなきゃいかぬと、こう思っておりますので、私はそれを堅持すべき方向でなければいかぬと思っておりまして、これから中教審の議論も十分踏まえながらその方向で我々としては考えてまいりたいと、このように思っているところであります。
○有馬朗人君 大変力強いお考えで安心いたしました。是非それをお進めいただきたいと思います。
 また、高等教育は私立大学に大変依存していまして、高等教育費をしたがって国としては余りにも少なく抑えているということを一体文部科学省はどう御認識になり、どう改善しようとおられるかについてお聞かせいただきたいと思います。
 国立大学の法人化の理念を実現するために最も必要なことは、財政的基盤を強化することではないかと私は考えております。そしてまた、私学の助成を増やしていく、これが極めて日本の高等教育において大切なことではないかと思いますが、どうお考えでいらっしゃるか、副大臣、お聞かせください。
○副大臣(河村建夫君) 高等教育が果たしている役割、人材の養成等大きなものがあるわけでございまして、さらに、これからの二十一世紀を考え、知の時代を考え、高等教育を更にこの面で投資をしていくということは極めて重要な課題であると、このように思っておるわけでございますが、特に、高等教育に対する公的財政支出、先ほどございましたが、これは制度の違い等もあって一律には比較はできませんが、確かに欧米先進国と比べて日本のGDP比等も低いこと、このとおりでございます。
 それは、やっぱり私学に非常に大きなウエートがあるということは紛れもない事実でございまして、そういう意味からいっても、やっぱりこの高等教育への投資が未来への先行投資であるという観点に立つならば、厳しい経済財政情勢の中にあることは分かっているわけでございますけれども、やっぱり教育投資、未来の投資だという御理解は私は国民にも広くいただけると、こう思っておりますので、必要な高等教育予算は伸ばしていかなきゃいかぬと、このように思っておりますし、それにあって当然私学助成というものも更に強めていかなきゃならぬ、そのことによって高等教育に対するいわゆる資本の投資といいますか、それが増すわけでございまして、文部科学省挙げて取り組んでまいりたいと、このように思っております。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 小泉総理は施政方針演説の中で米百俵の精神を説かれました。私はそれを聞いて本当にうれしく思いました。教育を大切にするこそ政治の一番大切なことだと思ったからであります。
 そこで、ここの数年間にわたって国の支出する教育費はどのように上昇したのか、特に高等教育費についてどう変化してきたかをお教えください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 文部科学省の一般会計予算で見ますと、平成十五年度で六兆三千二百二十億円でございまして、厳しい財政状況を反映して義務教育国庫負担金の対象経費の見直しということもございまして、平成十二年度の予算に比べまして四年間で二・九%の減と、こうなっておるわけでございますけれども、高等教育関係で申しますと、国立学校特別会計、これにつきましては予算額が三・八%の増加になっておりますし、私学助成につきまして、これも高等教育の部分でございますが、予算額が四・四%の増加となっておる次第でございます。
○有馬朗人君 まだまだ満足できる数字ではありませんけれども、でも、こうやって御努力になっていることに対して感謝いたします。是非とももう一歩、もう二歩、ひとつ頑張ってお進みいただきたいと思います。
 ここで、法人化の際、大きな問題をはらんでいると私が考えております中期目標と中期計画についてお聞きいたします。
 三十条関係の中期目標には教育研究の質の向上に関する事項があり、三十一条関係、中期計画にも教育研究の質の向上に関する目標を達成するために取るべき措置が述べられています。それぞれの意味するところは何か、短くお聞かせください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 中期目標、中期計画につきまして、「教育研究の質の向上に関する事項」と、こう書いておるわけでございますけれども、これは各国立大学が教育や研究の面におきまして目指します教育目標や研究水準、その実施体制などに関する事項を想定しているわけでございます。
○有馬朗人君 文部科学省、特に旧文部省の優れている点は、ボトムアップ方式を大切にして、大学の各教員の考え、そしてそれを集約した大学の考えを大きく取り入れ、推進してきたことでありました。このボトムアップを大切にする方針は、中期目標、中期計画の達成の際に、今後も十分に考慮していただきたいと私は考えております。そうしませんと、大学の自主性が十分にその良さを発揮することができないと思います。
 法律では、トップダウン的に中期目標が立てられ、それに基づいて大学が中期計画を立てることになっています。予算とか教職員数、学生数など、ある部分はトップダウン的な点もあってよいと思いますけれども、しかし、教育の方針や内容、研究の主題や進め方などはボトムアップ型でなければ実行できないのではないかと私は思います。もちろん、トップダウン的な方針をお示しになる、研究の上でも教育の上でもお示しになることも必要でありますけれども、やはり各教員一人一人、個々の大学それぞれがボトムアップ的にやりたいと思っていることを実行すべきだと私は思います。中期目標を立てる際に十分に大学の考えを聴いていただきたいのです。この点、いかがお考えでしょうか、お聞かせください。
○副大臣(河村建夫君) 今、有馬委員御指摘のボトムアップ、私もこれ大事なことだと、全く同感の思いで今伺っておったわけでございますが、これまで、現在の国立大学、先ほど大臣の答弁にもありましたように、国、文部科学省の行政組織の中にあったわけでございます。したがって、教育研究、組織、予算、最終的には国、政府の責任で定めておるわけでございますけれども、有馬委員御指摘のとおり、文部科学省といたしましても、教育研究、組織の編成については十分国立大学の御意向というものを踏まえながら予算措置を行ってきた、かなり綿密な連携を取ってやってきた、そして大学の意向や自主性を尊重してきた、そのことを御指摘をいただいたと思うんでありますが。
 国立大学の法人化に伴って、これは、国は所要の財政措置をやるわけでありますが、国立大学は法人化することによって、この運営上の裁量は、これは非常に大幅に拡大をして、そしてその結果、自主性、自律性を高めてまいりたいと考えております。そういう点からいきますと、大学の意向や自主性を尊重するということについては今後ともいささかも私は変わらないものだと、このように思っております。
 そういう意味で、これからも中期目標を立てる、策定することになっておるわけでございます。これは文部科学大臣がと、こうなっておるわけでございますが、これは、大臣に対して、御案内のように、第三条では大学の教育研究の特性への配慮義務がございますし、三十条三項には国立大学法人の意見、いわゆる原案への事前の聴取義務、さらに国立大学法人の意見への配慮義務ということも、法律上の義務を課しているのも正にそれでございます。中期目標の実際上の作成主体というのは、これは当然国立大学法人と解されるわけでございますから、これ、大学の方がこれをきちっとやってくるということでございまして、一方、高等教育全体の在り方や財政上の観点から文部科学大臣も関与していかなきゃならぬということで、ともに中期目標を形成していくと、こういう仕組みになっておるわけでございます。
 また、各大学は中期目標などに基づいて魅力的で個性ある教育研究を展開するに当たりましては、これまで以上に各国立大学との連携を十分に取りながら、それぞれの理念や使命感、そういうものをお伺いをしながら、その自主性を十分尊重して、中期目標を軸にして各大学の個性や特色を一層伸ばしていく、これができるようにということで文部科学省として取り組んでまいらなきゃならぬと、このように思っているところであります。
○有馬朗人君 ありがとうございました。安心いたしました。
 各大学が自主的に、最も良いと考えた中期計画を中期目標で積極的に採用し援助する方針で進んでいただきたいと思います。この考えを大切にしていただけますでしょうか、お聞きいたしたいと思います。もう既にある程度お答えいただきましたが、高等教育局長、お聞きします。
 また、その際に、中期目標、中期計画は本質的なものであるべきで、数値目標の中に論文の数を幾つにせよとか特許の数を幾つにせよとまではお決めにならないようにしていただきたい。あるところでやって困っているところがあるようでありますので、ここまできめ細かいのはきめ細か過ぎると思います。この点につきまして、高等教育局長、お考えをお聞かせください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 中期目標、中期計画、各大学で最も良いと考えたものをということでございます。
 今、副大臣が御答弁したとおりでございまして、文部科学大臣が中期目標を策定するに当たりましては、国立大学における教育研究の特性を十分に踏まえ、各大学の意見を事前にお伺いし、それに配慮をするということになっておりまして、御指摘のように、各大学における創意工夫や意欲をしっかりと受け止めまして、それを支援する観点から取り組みたいと、こう考えております。中期計画の認可もこのような観点から行うこととしておりまして、各大学がその個性や特色を一層伸ばしていくことができるようにしてまいりたいと思っております。
 御心配の点でございますけれども、私どもはそこまで細かなことが入ってくるということは予想はしておりません。
○有馬朗人君 大学の自主性や自治で最も大切なことは、法を犯さない限り教育の内容、研究の主題を自由に選べること、大学がその目的を達成するために最も適切な教員を選ぶ人事の自主性であります。このことは法人化したときにも守られるだろうと思っておりますが、どのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) それは当然のことでございまして、まず我が国の憲法は第二十三条で学問の自由というのをしっかりと定めております。これは、それぞれの研究者が真理の探究の下に自らの研究活動をすること、またその結果を公表することについて何ら外からの力によって妨げられないということをきちっと保障しているわけでございまして、その憲法の下にいろんな制度があるわけでございますが、大学における自主性の中で最も大事なのはその教育研究の自由、教授が持つ自由であろうと思います。当然ながら、それは新たな法人化いたしましても、正にそれがより自律的に自主的に行われるようになるということでございます。
 さらに、人事の面につきましても、当然ながら、大学の教育研究に携わる者につきましては、現在は法制上、文部科学大臣が国立大学の教職員については任命権を持っているんです。事実上それを委任をしているわけですね、学長に。新たな法人の下におきましては、制度上、もうその教職員の任命権を大臣から学長に移行するわけでございます。大臣による任命というのは学長と監事に限られておりまして、その学長につきましても学長選考会議の議を経て大学の申出に基づき行うということでございまして、今、有馬委員が御心配の点は、更にその方向に行きこそすれ、何ら御心配はないということでございます。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 ところで、学長の選考問題でありますが、学長の選考は学長選考会議によって行われるようになりますが、学内の意向が十分反映できるようにしていただかなければならないと思います。全学をまとめていく学長は構成員の信頼と尊敬を受けるような人でなければならないと思うからであります。
 どのようにして学内の支持を得られるように工夫してやるか、その方策についてお聞かせください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 法人化に伴いまして、国立大学の学長には教育研究に関する識見のみならず、優れた経営手腕が要求されるということになるわけでございます。これからの国立大学を社会に開かれた大学としていくことも求められておるということで、こうした責務を担う学長を選考するに際しましては、学内のみならず学外者の意向を反映させると、こういう仕組みが取られているわけでございます。
 このため、学長の選考でございますが、学部長など学内者により組織される教育研究評議会の代表者と協議会の学外委員の代表の同数で構成される学長選考会議が行うということになっておりまして、学外者とともに学内者の支持を前提として選考が行われるという仕組みとしているところでございます。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 ところで、この法律には教授会に関する条文がないと思うんです。学校教育法の条文が用いられるのでしょうか。教授会の在り方についてどうお考えか、お聞かせください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 国立大学法人制度におきましては、各法人の自主性、自律性を高め自己責任の拡大を図っていくという観点から、内部組織につきましては可能な限り法人の裁量にゆだねて、法令等での規定をしないということを原則としているわけでございまして、これまで教授会の設置の単位とされてきました学部あるいはその研究科につきましても法律上規定を設けていないということになっているわけでございます。
 こうした点を踏まえまして、どのような教育研究組織の単位にどのような形で教授会を置くかということにつきましては法人の定めにゆだねるということとしたものでございますが、学校教育法第五十九条の規定に基づいて法人化後の大学に教授会が置かれるということには変わりはないわけでございます。
 現在、教授会につきましては、国立大学については、国立学校設置法におきまして、学部又は研究科の教育課程の編成に関する事項、学生の入学、卒業又は課程の修了その他その在籍に関する事項及び学位の授与に関する事項、その他当該教授会を置く組織の教育又は研究に関する重要事項を審議すると、こういう規定をされておるわけでございますが、法人化後も引き続きこうした役割を担うというふうに理解をしておるわけでございます。
○有馬朗人君 ここで話題を大きく変えさせていただきます。
 大学の改革は、単に教員のみを対象として考えることはいけません。やはりそこで学ぶ学生のことを考慮して、学生の教育がより良くなることを図らなければならないと思うんですね。今回の法人化によってどのような点で教育が目に見えて良くなるのでしょうか、お聞かせください。
○副大臣(河村建夫君) 今回の大学法人化に伴う大学改革、大きな改革でございますが、それによって、有馬委員御指摘のように、教育、受け手側である学生にとっての教育が良くなるというものでないと意義がないと思っております。
 既に大学、高等学校、高等教育への進学、大学への進学率が五〇%を超えるという、こういう時代でございます。そういう意味で、学生の能力、関心、適性というものも非常に多様化している、そういうものに対応して、やっぱり学生が自らの関心や将来の進路を踏まえて目的意識を持って大学で学ぶ、そうした環境をきちっと整えていくということが何よりも大事な課題になってきておるわけでございます。そういう視点で、やっぱり大学側も思い切った今回の法人化に伴って意識改革をやってもらわなきゃいかぬと、こうも思っておるわけでございます。
 今回の法人化によって、いわゆる教育を受ける側の学生の立場に立って大学運営をするということで、具体的には、この法人化によって、まずは各大学が学生のニーズに応じた柔軟な学科コースを編成するということが可能になっていくわけでございます。これまで一々そういうものを文部科学省にお伺い立てなきゃできないというような、こういう仕組みもあったわけでありますが、こういうものが大きく緩和されるということでございます。
 それから、この法律の三十二条にも、学生に対し、修学、進路選択及び心身の健康等に関する相談その他の援助を行うということで、いわゆる学生に対するカウンセリングとかそういうサービスも徹底してもらうということが、そうした改善を図るということもうたっておるわけでございますし、あわせて、学生による授業評価、これをきちっとやる、それが評価対象に含まれているということも業務として法案できちっと明記をいたしているわけでございまして、正に学生の立場に立った学校、大学運営、この実現が期待をされるわけでございます。
 このことは、正に学生が本当に勉強しやすい環境を作っていく、しっかり学ぶということ、これは世界の大学に比較して日本はまだその点後れていると、こう言われておりますから、そういう点が、私は大学が開かれていく、そして法人化、それぞれの自主、責任を持って法人化していくことによって正に競争関係にも入っていくわけでございまして、そういうことで、今回の法人化の趣旨を踏まえて、学生の教育の充実ということを特に重視をしてこれからの教育機関としての責任を十分ひとつ果たしていってもらいたいし、そのために文部科学省も十分力を注いでいくという方針でございます。
○有馬朗人君 学生による評価というのは私はもうさんざん受けまして、これは絶対やるべきだと思っております。それを今回積極的におやりくださるようになったことは有り難く思っています。
 また、私は長年、宿題の採点や授業の理解を深めるためにティーチングアシスタンツをもっと活用したらどうかということを主張し、この十年、不十分ながら日本の大学でも実行されるようになってきました。その現状は現在どのような様子でしょうか。
 アメリカの大学院学生は、このティーチングアシスタンツかリサーチアシスタンツとしての収入によってアルバイトをせずに自立して生活し、勉強を続けています。日本でもこのような水準までティーチングアシスタンツあるいはリサーチアシスタンツを雇うようにできないものでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) ティーチングアシスタントの仕組みでございますけれども、平成四年度からティーチングアシスタントの経費を計上してやっておるわけでございまして、年々その充実を図っておりまして、平成十五年度予算におきましては約五十八億円、予算上の大学院生の数にしまして二万二千人強ということで、学生数の約一割でございますけれども、措置をしているということでございます。
 それから、研究補助者としての機会の提供のためのリサーチアシスタントの経費でございますが、平成八年度から予算に計上しておりまして、平成十五年度予算におきましては二十四億四千万、数にしまして四千七百三十六人分ということで措置をしているところでございます。
 学生に手渡る月額でございますけれども、ティーチングアシスタントでいいますと約四万円程度、リサーチアシスタントにつきましては約八万円ということで、これから充実ということになると思いますけれども、これとともに育英奨学制度あるいは日本学術研究会特別研究員制度の充実などを行いまして、そういう学生の支援という意味での各般の施策の充実に努めていきたいと、こう思っております。
○有馬朗人君 随分数が増えてきたことを喜んでおりますけれども、まだ足りませんね、金額の上でも。よろしく御努力を賜りたいと思います。
 そこで、大学としてはやっぱり教育費をきちっと確保するということが非常に重要だと思うんですね。それからまた、少なくとも学部では研究以上に教員の教育での努力を評価していくということが必要だと思うのです。そういう意味で、教員の人たちが更に教育に熱心になれるような工夫はできないものでしょうか。
 この点、遠山大臣が教育で努力をする大学を選んで顕彰してくださるというようなことをしてくださったようでありまして大変喜んでおりますが、その辺についても手短にお聞かせいただけますでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 学生に対して法人化どうかということで、先ほど副大臣御答弁されましたように、この法人化を契機にやはりより以上に教育に力を入れてほしいと思っておりまして、先ほど副大臣から申し上げましたように、評価というところにおきまして、例えば休講の状況だとか学生による授業評価を取り入れるといったようなこと等々、教員の教育への取組をやはり多面的に評価をするということで教育活動に対する教員の意識が高まり、そして授業内容の充実、指導方法の改善といったようなことが促すことになろうと、こういうふうに私ども考えておる次第でございます。
○有馬朗人君 学生のことについてもう少しお聞きいたします。
 それは、入学金や授業料のことであります。私が教授を務めておりましたニューヨーク州立大学にしても、フンボルト賞で招待されました客員教授であったドイツのチュービンゲン大学にいたしましても、入学金はなかったと記憶しております。アメリカでは、私立大学も州立大学も、授業料は取っていましたが入学金は取らなかったと思います。チュービンゲン大学を始めヨーロッパ諸国の大学、それが、ほとんどがイギリス、フランスのように国立かドイツのように州立でありますが、授業料はゼロかゼロに近かったと思います。もっとも、イギリスは最近授業料を少々取るようになりましたが。アジアの国々は日本の状況に似ています。
 そこで、ヨーロッパ及びアメリカ各国の大学の入学金のありなし、授業料の金額についてお聞かせください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) アメリカ、イギリス、フランス、ドイツともに入学料は取っておりません。授業料ですが、アメリカの州立総合大学で平均四十四万六千円、それからイギリスでは十九万三千円、フランスにつきましては授業料という形ではなくて登録料という形で一万三千円、それからドイツにつきましては、一般には無償でございますが、一部の州で十二万円程度の授業料を取っているということがあると理解しております。
○有馬朗人君 ドイツの場合もごく一部ですね。
 日本の国立大学の使命の一つは、やはり貧しい家庭の学生も教育できることでありました。それは、入学金も授業料も安かったからであります。しかし、先ほどのお答えが示しておりますように、もはや日本の国立大学の授業料はアメリカの州立大学より高くなっている。同じかむしろ高くなっております。
 そこで、まず入学金は欧米並みに取らない方法はないのでしょうか、そこまでいかなくても、法人化する際、入学金や授業料はもっと安くできないものでしょうか、お聞き申し上げます。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 大学におきまして入学金徴収するかどうか、あるいは徴収する場合にどの程度とするかということにつきましては、各国の大学制度あるいはその歴史的発展の経緯によるところが大きいと、こう考えておりまして、我が国の国立大学につきましては、大学教育を受ける者に一定の負担を求めるという考え方から、明治以来、入学金を徴収をしてきておるわけでございます。
 従来から、教育の機会均等の理念を踏まえ、私立大学の水準や社会経済情勢等を総合的に勘案して設定をしてきているということでございまして、近年、授業料と入学料を国立大学隔年で改定をしてきたという経緯がございますが、厳しい経済情勢を踏まえまして、平成十六年度の入学者、これは入学料を上げる番ではあったんですけれども、今回改定を行わないと、こうさせていただいたところでございます。
 今後とも、入学料の取扱いについては、法人化になりましても、そういったようなことで適切に対処してまいりたいと、こういうふうに思っております。
○有馬朗人君 私は、中学校の三年生のときに父親を亡くしまして、しかも収入のない母と祖母と三人で非常な貧乏生活をいたしました。旧制の四年生のとき、中学四年生のときに家庭教師として住み込むというふうなことで、高校、大学、大学院とも、午前もとは言いませんが、午前中は大学に来ておりましたけれども、午後はほとんどアルバイトにアルバイト、そして週末は完全にアルバイトをしてきました。そのときに助けられたのは、奨学金と授業料免除、授業料免除という制度でありました。辛うじて高等学校と大学を卒業し、大学院三年を修了したわけであります。
 そこで質問ですが、育英会が学生支援機構に変わったとき奨学金のための予算が減ることはないということをひとつ言っていただきたい。
 そのことと、もう一つ授業料の免除、せめて入学金。授業料をどうしても取らなきゃならなければ、授業料の免除枠を増やしていただけないか、そしてまた、入学金を免除するというふうな制度が導入できないか、お伺いいたします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) まず、奨学金についてでございますが、御指摘のように、日本学生支援機構法案ということで現在御審議をいただいているところでございますけれども、独立行政法人移行後におきましても、これまでの奨学金事業をしっかりと継続をしまして、教育を受ける意欲と能力のある学生が経済的な面で心配することなく安心して学べるよう更なる充実に努めてまいりたいと、こう考えております。
 それから、授業料免除の制度につきましては、その経済的理由などにより授業料納付が困難である者などを対象に、修学継続を容易にし教育を受ける機会を確保するという意義を有しておりまして、法人化後もこのような観点から授業料免除の仕組みにつきましては維持をする必要があると、こう考えております。
 入学料につきましては、既に災害等の特別な事情がある場合、免除できる制度を現在既に実施をしているということがございます。
 免除枠につきまして拡大できないかということでございますが、私ども努力をしていきたいと、こう思っておりますけれども、厳しい財政状況の下でございますので一層の努力をしたいと、こう思っております。
○有馬朗人君 ありがとうございました。
 次に、話題をまた少し変えますが、私が今回の法人化で一番心配していることの一つでありますが、実学系のものは今後も大いにサポートされていくだろうと思います。工学、薬学、医学等は大丈夫だと思うんですが、人文科学、私はしょっちゅうサンスクリットと言うものですからサンスクリットの先生におしかりを受けておりますけれども、人文科学、特に例えばサンスクリット、自然科学で申しますとごくごく基礎的な化石の研究であるとか素数、素数の研究であるとか、私のように理論物理学の研究というのはすぐには実用化されません。利益を生み出さない分野の教育と研究を法人化した後にどうやって守っていくのか、この点、私は非常に心配しているわけであります。
 しかしながら、そのようにすぐに応用の利かないことでありましても、しかしながら人類の好奇心を満足させる、そういうもの、そして人類の英知として継承していくべき分野の教育、研究は国が何らかの方法で支えていかなければならないと思いますが、今後法人化した際に、そのような基礎的で非実用的分野の研究と教育はどうやって支持していくことができるのでしょうか、お考えをお聞かせください。
○国務大臣(遠山敦子君) 大学の基礎研究の重要さといいますものは言うまでもありませんで、冒頭にお答えしましたような学問の自由ということでその研究者の研究活動は保障されているわけでございますが、日本の大学、国公私を通じて基礎研究は大事だと思っております。特に国立大学の場合は、学問研究を通じて様々に、人類の英知に新たなフロンティアを付け加えるなどの大変な成果を上げてきてくれておりまして、最近ではそうした成果がノーベル賞受賞者の三年連続というような形で結晶してまいっております。
 私は、法人化後も大学の、特に国立大学のこういう基礎研究の重要性というのはますます増してまいりこそすれ、これを何か妨げるようなことになっては決して日本の未来はないというふうに思っているわけでございます。
 じゃ、どうなるのかということでございますが、これは、今回の法人化といいますものは国からの一定の財源措置を前提といたしております。各大学の自律的な運営を確立するということを目的といたしておりますので、例えば予算の執行あるいは教職員の配置などの面で各国立大学の裁量が大幅に拡大するわけでございます。したがいまして、各国立大学は、基礎学術の推進というものをしっかりその大学の重視する政策として置きまして、そして中期目標の策定あるいは中期計画の中に優先順位を高くして出していただきたい、国としてはそういう中期目標、中期計画というものをしっかり支えていく、そういう関係になろうかと思います。
 私は、これまでいろんな束縛があったものから、より大学が自由な判断でやっていただきたいし、正にそこにこそその大学ないし法人の見識が問われる、そのような時代になると思います。
○有馬朗人君 大変心強いお考えをお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 ボトムアップの精神を大切にすること、基礎の学術の教育と研究の重視、これがないと野依さんの触媒不斉合成や小柴昌俊さんのニュートリノ天文学の研究は生まれなかったと思います。トップダウンの方式では絶対このような研究は生まれないのです。
 基礎研究の成果の多くはすぐには役に立ちませんが、例えばニュートリノの研究がそうであります。しかし、ノーベル賞で代表されるような世界に誇ることができる基礎研究の成果は、日本の若者たちを元気付け、文化国家としての日本の在り方を世界に示す上で大いに役立つものであると思っております。
 サンスクリットのような基礎中の基礎の教育と研究で世界じゅうの中心になることも、文化国家として日本が世界の人々に貢献することではないかと思っています。これは文部科学省が今まで大切にしてこられた方針であります。このことが法人化された国立大学でも今まで以上やりやすくなるようになるということが大学改革の一番重要なことではないかと思います。先ほどの文部科学大臣のお考えを心より感謝しながらお聞きした次第であります。
 次に、教職員の身分について論じさせていただきます。
 行政改革会議で、国の行政組織の軽量化のために、独立行政法人で非公務員化が前提でありました。このことが国立大学独法化に私が反対した理由でありました。しかし、後に、公務員型独法化が大勢を占めましたので、私は、その点では考えを変え、大学の法人化により自主性が強化できるという考えに立ち、公務員型の国立大学法人について検討してほしいという要請を一九九九年九月二日の国大協の席上でいたしました。
 しかし、今回の法案では非公務員型になっております。この方針の変化はなぜ生じ、非公務員型を良しとする理由は何でしょうか。
○政府参考人(玉井日出夫君) お答え申し上げます。
 法人化後の国立大学の教職員の身分の在り方、これ大変重要な課題でございます。
 御指摘のとおり、様々な角度からの御議論がなされ、関係者の間でも慎重な検討がなされたわけでございます。特に、国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議、これは多くの大学関係者に入っていただいた会議でございますが、そこにおきまして公務員型と非公務員型とを比較して慎重な検討が行われました。
 その結果、国家公務員法等にとらわれないより柔軟で弾力的な雇用形態、給与形態、勤務時間体系が取れるのではないか、外国人の学長、学部長等管理職への登用が可能になるのではないか、兼業・兼職の弾力的な運用ができるのではないか、試験採用の原則によらない専門的な知識、技能等を重視した職員の採用が可能になるのではないか等々の弾力的な人事制度を実現し得ると、そういう点で非公務員型の方が公務員型よりも優れた面が多いというふうに判断し、非公務員型とすることが適当というふうにこの会議において判断をされたわけでございます。
 したがいまして、法人化後におきましては、各国立大学がこのような非公務員型のメリットを最大限に生かして、正に各国立大学、今まで言われてきた正にもっと自律的なあるいは自主的な運営ができるように、そういうことから、内外からの優れた人材の確保あるいは教職員の能力を十分に発揮させ産学連携や地域貢献を行う、こういった大学及び教職員が社会から期待される責務を全うしていくことを私どもとしては大いに期待を申し上げているわけであります。
○有馬朗人君 ありがとう。
 次に、それでは非公務員化した教職員の身分は何で保障されるのでしょうか。特に教授のテニュア制は大切であると思いますが、どうやって保障されるのでしょうか。テニュア制は、時代の流れに流されず教員が自主性を持って教育や研究を行う上で絶対必要なものであります。ファシズムのあらしの中でのアインシュタイン、そしてまた東京大学の矢内原忠雄先生たちの戦争中の苦悩を考えますと、このテニュア制は絶対必要なものと私は思っておりますが、この点、文科省はどうお考えでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) これまで国立大学の教職員の任命権が文部科学大臣にあったということで、先生御指摘のようなことのないようということで教育公務員特例法が制定されまして、教授会の議に基づいて学長が行うと、こういう仕組みになっておったわけでございます。
 これに対しまして、法人化後の国立大学におきましては、教職員の任命権はすべて学長が持つということになっておるわけでございまして、しかもその学長の選考が学内の学長選考会議によって行われると、こういう仕組みになっておりまして、言わばその法人化後の教員人事につきましては法律によって公権力による影響を排除すると、こういう従来の考え方を取る必要がなくなったということがあろうかと思います。
 このため、国立大学法人法におきましては現行の教育公務員特例法のような規定を設けておらないわけでございますが、教員の身分取扱い、こういうことにつきましては各大学におきまして自主的に決定をすると、こういう仕組みになったわけでございます。
○有馬朗人君 次に、教職員の定年についてお聞きいたしたいと思います。
 今までは、教育公務員特例法によって教授、助教授は自分たちで定年を決められました。今後はどうなるのでしょうか。
 しかし、職員は、普通の公務員法で六十歳と定められていました。私は、最近、東京大学が定年、教官の定年を、何年か掛けてではありますが、六十五歳にするといったときに反対いたしました。その理由は、職員の人たちの定年も同時に延長を図るならばいいよというわけであります。もし、両方が六十五歳にできるのであれば、私は反対いたしませんでした。
 できる限り早い時期に教員と職員の定年を平等にすべきだと私は考えております。そこで、職員の定年はどうやって決めるのでしょうか。
○政府参考人(玉井日出夫君) 現在の定年制度、国家公務員関係は国家公務員法及び大学関係は教育公務員特例法、この世界で決められているわけでございますが、ここは非公務員型になりますので、法人化後の教職員の定年年齢につきましては、各国立大学法人が就業規則を定めることになるわけでございます。
 その中で定めていくということになりますけれども、御案内のとおり、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律がございますし、さらには、やはり年金との関係などもバランスを考えながら各大学法人において適切に御判断なさる。ただ、そのとき、やはり各法人が教職員の職務の性格に応じて自主的、自律的に決定されると、こういう仕組みになろうかと思っております。
○有馬朗人君 職員の方たちのこともよくお考えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 次に、共同利用研究所のことについて論じさせていただきます。
 まず、この制度は、湯川秀樹先生のノーベル賞受賞を記念いたしまして京都大学に一九五三年に創立されました基礎物理学研究所から始まっております。そこで大学を異にする大学院生も含めた全国の研究者が、ここで旅費を支給されて自由に勉強、研究ができるようになったわけであります。大学の壁を越えたわけでありました。
 私も、東京大学の大学院学生時代からこの恩恵を十分に受けました。そこで大学院生や若手が湯川、朝永、両大先生を始め、そうそうたる先輩とちょうちょうはっしの討論ができたことは私たち若手にとって大変な恩恵でありました。
 これが更に発展し、スーパーカミオカンデで有名な宇宙線研究所や、小柴昌俊さんや私が若いころ、全く同じころに勤めた原子核研究所が東大附置の共同利用研究所として創設されました。この大学共同利用研究所は世界で注目される制度であり、特に乏しい時代、乏しきを分かち合いながら世界的な成果を上げてまいりました。
 この共同利用の制度が発足し、一九七〇年代になって高エネルギー研究所が大学から独立して現在の国立大学共同利用研として確立し、さらに、東大から宇宙科学研究所や天文台が独立して東京大学から離れ、国立大学共同利用研究所群に加わりました。
 さて、共同利用研究所のうち大学附置のものは、法人化した際、一体どのような運営形態を取るのか。今回、提出の国立大学法人案には書かれていないので心配をし、御質問申し上げます。
 ちょっと待ってくださいね。
 それでもう一つ、大学附置の共同利用研究所が今まで以上にその活力を発揮するためには、大学の運営交付金にその大学の運営を超える共同利用部分への配慮が必要だと思います。
 例えば、共同利用のための施設設備費、特に共同利用のための旅費が必要であります。例えば、スーパーカミオカンデはどのように今後支援していってくださるのでしょうか。
 このような大学附置の共同利用研究所の運営をどう考えておられるか、文科省のお考えをお聞かせください。
○政府参考人(石川明君) 共同利用の形態の研究所についてのお尋ねでございます。
 このように、今お話しのございました共同利用という研究所の形態、これは研究遂行上、大変大きな意義を持つものだというふうに私どもも考えておるところでございます。
 今回の法人化に当たりましても、引き続きこのような共同利用の形による研究活動の仕組み、そしてまた、この体制といったようなものはしっかりと維持していくべきものというふうに考えております。
 こういう観点から、私ども文部科学省といたしましても、我が国の学術研究において中核的な研究組織、そういった位置付けのものにつきましては、例えば国立大学法人の意見に配慮をして、中期目標あるいは計画において適切に位置付けるなど、引き続き十分にその役割を果たしていけるような、そういったような対応をしてまいりたいと思っております。
 それから、先生から、この共同利用に係る経費といいましょうか予算上の御心配、お話ございました。
 もう先生、既に御存じと思いますけれども、こういった共同利用のために掛かる経費につきましては、現在、その附置研究所やそういった研究施設につきましてそういった経費が措置されております。
 共同利用の形態の研究活動というものの重要性にかんがみまして、これをきちっと維持をしていかなければならないというふうに私ども思っておりまして、こういった経費につきましては、今後とも所要の措置を行うことが必要であるというふうに考えておるところでございます。
○有馬朗人君 是非よろしくお願いいたします。
 大変重要な研究所、例えば先ほど申し上げました京都大学の基礎物理学研究所、東京大学のスーパーカミオカンデを持っている宇宙線研究所、そして地震研究所、東北大学の金属研究所、こういうものがすべて伝統ある大学の共同利用研究所でございますので、是非ともこれの存在をお忘れなくお願いをいたします。
 最後に、二分いただきまして、施設のことについて御質問申し上げます。
 私は、長年、大学貧乏物語を展開いたしまして、大学や研究機関の教育研究施設設備の改善と充実及び教育研究費の増大を訴えてまいりました。最近、文部科学省の御努力で随分改善されてきたことを有り難く思っています。しかしながら、今後の国立大学施設の整備充実に関する調査研究会協力者会議の主査をやらせていただきまして、しみじみ見たところ、いまだに化学実験室など危険な施設が残っております。
 しかし、法人化した後には、労働安全衛生法の基準を満たさなければ、今まで以上に厳しく満たさなければならないようなことがあると思います。それを法人化する前に満足させようとすると、現在の各大学の努力だけでは不可能だと思います。特別な予算措置が必要ではないかと私は考えておりますが、差し支えない程度、この点に関してどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
 そしてまた、二〇〇一年の科学技術基本計画によれば、国立大学の施設費として五か年に一・六兆円が予定されております。この使用状況と、法人化が行われた後の施設設備の改善充実は、そして、保守、メンテナンスはどのように行われるのか、御説明ください。法人化したら終わりということではないでしょうね、この点を確認させていただきます。
○政府参考人(萩原久和君) 国立大学等施設についてお答えいたします。
 国立大学等における安全管理の問題でございます。安全衛生管理につきましては、教職員、学生等の安全と健康を確保するとともに、快適な教育環境を形成する上で非常に重要なことと認識しております。
 既に、国立大学等におきましては、昨年、文部科学省から発出しました通知に基づきまして改善計画が立案され、対策に着手しつつ、ところでございます。
 今回その大学等の進捗状況、実施状況を確認調査を行いました。その結果、施設に関しまして、施設整備の改善に要する費用が総額で三百六億円必要ということが集計で分かっております。これらを踏まえまして、五月二十八日、昨日でございますが、文部科学省としての改善対策を取りまとめ、公表したところでございます。
 その内容を、主な内容をお話ししますと、まず一つには、安全衛生管理対策の速やかな実施や具体的な改善に向けての取組等を各国立大学に更に指示をするということでございます。
 二つ目としましては、施設整備の改善についてでありますが、国立大学等に既に配分されております予算で対応できない部分については、今年度、文部科学省が確保している施設関係予算の中から追加配分をしていくということを発表しております。その追加配分の額でありますが、大学要望でございますが、約百六十億円と認識しております。
 これらの対策に基づきまして、各国立大学等に対し積極的な取組を求めるとともに、文部科学省としましても、今年度中に安全衛生管理の改善が行われるよう万全を期していきたいと考えております。
 もう一点、緊急整備五か年計画の御質問でございますが、第二期の科学技術基本計画の指摘を踏まえまして、文部科学省においては国立大学等施設緊急整備五か年計画を策定して、国立大学施設の老朽化、狭隘化の解消に重点的、計画的に行っているところでございます。同計画におきましては、平成十三年度から五年間、事業量で六百万平米を施設目標としております。それから、所要額で、先生御指摘のように、一兆六千億を見込んでいるところでございます。最大の所要額でございます。現時点におきましての実施状況でございますが、事業量で約五五%の達成率でございます。
 今後、国立大学等が法人化になってどうなるかということですが、引き続き法人化においても本計画の着実な実施をするとともに、国立大学等施設の改善充実に向けて最大限の努力をしていきたいと考えております。
○有馬朗人君 時間が参りましたのでここで終わらせていただきますが、日本の大学は大変経済的につらいですけれども頑張っています。非常に世界的でもいい地位に今入っておりまして、最近アメリカのISIという研究所が調査した中でも、日本の大学は物理や材料科学では世界一の論文数及び被引用度を示しておりますし、その他の分野でも随分日本の大学は頑張っております。
 こういう意味で、国立大学の法人化は国立大学が更に活性化をできるように、活力を増すようにするものであってほしいと思います。一層、国が教育を、そして大学を大切にしてくださることを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 私は、民主党の大学改革プロジェクトチームの事務局長をいたしてまいっております。実を申しますと、私、特に民主党の中でも国立大学法人化という政策については正直推進をしてきた者の一人であります。文部省が国立大学の独立行政化ではなくて国立大学法人化なんだということをきちっと表明されたことを機に、党内でも様々な議論がございましたけれども、その方向についての意見調整といいますか、意見醸成に努めてきたわけでございますが、正直、今回の法律を、正に法文を見せていただきまして、そうした私といたしましては大変に裏切られた思いを持っているということを冒頭に率直にお伝えをしたいというふうに思います。
 正に文部科学大臣は、今までの様々な意見表明の中で、更に申し上げますと国会の中でのこの提案理由説明の中でも、要するに、法人化によって自律的な環境の下で国立大学をより活性化し、優れた教育や特色ある研究に積極的に取り組む、より個性豊かな魅力ある国立大学を実現することをねらいとするというふうにおっしゃっておられますが、この法案、一言で申し上げますと、私は羊頭狗肉、換骨奪胎法案だというふうに申し上げたいというふうに思います。私は、そのことを見逃したのか、知っていたけれどもしようがないと思ったのか分かりませんが、我が尊敬する有馬先生もいらっしゃる与党がこの欺瞞を見逃されたことに対しては大変に率直に残念に思いますし、正に良心の府である参議院でもってこの欺瞞性をきちっと明らかにしていきたいと思っております。
 民主党は衆議院におきまして、正に、羊頭狗肉ではなくて、正に大学の、先ほども文部科学大臣から御答弁がございましたけれども、国立大学が国の枠組みから外れて自主自律の国立大学にしていくんだということを文字どおり実現するための修正案を衆議院において出させていただきました。この修正案について文部科学省並びに与党はもう少し真剣に御検討いただけるものと期待をいたしておりましたけれども、我々の修正案に対するこの一顧だにされない態度ということについても私は大変に問題だということを申し上げたいというふうに思っております。
 それでは、幾つかこの問題に入ります前提としてお伺いをしていきたいと思っておりますけれども、いろいろな抽象的な理念は既にいろいろなところで答弁されたり語られたりしておりますけれども、元々、この国立大学法人法を立法する、その立法が必要だと判断をされましたいわゆる客観的な立法事実についてお述べをいただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、この国立大学の法人化といいますものは日本の大学制度の大転換点になる大変重要なものでございまして、本法案の内容について衆議院で民主党の賛成が得られなかったということは大変残念に思っております。
 そのときに出されました修正案といいますものが、中期目標、中期計画とともに国立大学法人が作成をして文部科学大臣への届出にするというような、つまり、これはもう国立ではなくなるわけでございますね。それでは高等教育全体の在り方あるいは財政上の観点を踏まえた国の責任ある対応という観点からは疑問であったというふうに言わざるを得ないわけでございまして、しかし、有馬先生との応答、あるいは私が心を尽くして答弁しております中で是非とも私どもの真意をお酌み取りいただきまして、参議院の独自性をもって民主党も参議院で賛成に回っていただきたいと思うわけでございます。
 お尋ねの件でございますけれども、現在の国立大学は、大学としての特性を踏まえて様々な特例措置を講じておりますけれども、基本的には行政組織の一部として位置付けられているわけでございまして、予算、組織、人事などの面で様々な規制を受けて教育研究の柔軟な展開に制約があるというのは、これはだれも納得しているところではないかと思います。
 こうした国の組織であることに伴う諸規制を緩和をして、国立大学がより大きな自主性、自律性と自己責任の下でこれまで以上に創意工夫を重ねながら、教育研究の高度化あるいは個性豊かな大学作りに取り組むということを可能にするために法人化する必要があったわけでございます。
 私は、是非、先生の貴重なお時間をもらって恐縮でございますが、今回の国立大学の法人化というのは忽然として出てきたものではございません。そのことについて若干時間を取らせていただいて説明をさせていただきたいと思います。
 日本の国立大学の設置形態につきましては、国の行政組織としての位置付けに由来する制度的な限界を踏まえまして、昭和三十年代の末ごろから各方面で多種多様な法人化論が提起されるようになったわけでございます。
 例えば、中央教育審議会の昭和四十六年の答申、ここでは法人化を国立大学改革の選択肢の一つとして位置付けました。また、昭和六十二年に飛びますけれども、この臨時教育審議会答申第三次におきましては、国立大学の改革手法の一つとして国立大学の法人化を検討した上で、将来に向けての検討課題としたのは多くの方が想起していただけると思います。
 臨教審以降、国立大学の改革は、新たに設置された大学審議会、私、たまたまこれは高等教育企画課長として立案をし、そして最初の滑り出しまで担当したわけでございますけれども、その審議会の議論などを踏まえて、現行設置形態の下での自主自律体制の確立と教育研究の特質に応じた柔軟、活発な運営の実現を目指して諸規制の緩和、弾力化が進められたわけでございます。その改革は大学の個性化、高度化、活性化という高い理念の下に進められておりまして、国公私を通じて今強力な大学改革が進んでいるところでございます。
 その後、平成八年に発足しました行政改革会議では国立大学の民営化が取り上げられたわけでございます。しかし、平成九年五月の中間整理におきまして民営化を不適切と整理をされまして、続いて独立行政法人化が検討されたわけでございますが、平成九年十二月の最終報告において、大学改革方策の一つの選択肢であるとしながら、長期的な視野に立った検討を行うべき課題であると結論をされたわけでございます。
 その後、国による財政措置を前提とした独立行政法人制度の詳細が明らかになったことを機に、平成十一年四月には、政府として、国立大学の独立行政法人化の問題を、単なる行革の観点ではなく、大学の自主性、自律性を尊重しながら大学改革の一環として検討するとの方針が確認された、これは閣議決定でございます。
 これを踏まえて、平成十二年の七月に、多くの国立大学関係者も参画する形で専門の調査検討会議を発足させまして、法人格の国立大学の具体像の検討をその後一年八か月にわたって重ねました。ここには国公私立の大学関係者その他の有識者がお集まりになって、本当に熱心な御議論の上この報告書が出たわけでございます。昨年三月にそれが取りまとめられたわけでございますが、今回の法案は、その最終報告に基づいて法制化を図ったものでございます。
 その基本的な方針としては、国立大学については、独立行政法人制度の基本的枠組みを活用しながらも、国立大学の自主性、自律性の尊重、それから大学の教育研究の特性への配慮の観点から、独立行政法人とは異なる仕組みが必要ということで、通則法ではなく、国立大学法人として法人化するものでございます。
 政府の長い議論の中で、民営化か独立行政法人かという二者選択を迫られたときに多くの、中曽根委員もそうでございますし、有馬委員もそうでございますし、さきの町村先生もそうでございますが、多くの方の努力によって、それは独立行政法人ではなくて、しかし民営化ということもなじまないということで、国立大学法人という形で今日提案をしているわけでございまして、いかにして、そこのところの独立行政法人の大きな枠組みを活用しながらも民営化ということをむしろ避けるために、いかにして国の責任において大学を維持していくかということにおいて、すべての法案はやってまいっているわけでございます。
 そういう経緯自体、あるいは私どもの取り組んでいるこの意欲というものについて、十分に御参酌の上、これからの御論議をいただきたいと存じます。
○鈴木寛君 今みたいな経緯は我々も十分承知をしております。しかし、今おっしゃったことが、一条から見ていくと必ずしもそのようになっていないんではないかと。要するに、国の枠組みから外れて、例えば今規制緩和とか制約を取り除くとかいろんなキーワードがございました。本当にこの条文を一つ一つ見ていったときに、そういうふうになっているかどうかという、具体的な条文のところに至りますと、そうではない。
 大臣がそこまでおっしゃるのならば、私はこれはだまし討ちと申し上げてもいいと思うんです。私はもうちょっと冷静に議論をさせていただこうと思いましたが、そこまでしゃあしゃあとおっしゃると、ちょっと私もかりかりはしてまいりましたけれども。
 要するに、我々民主党も、まず立場をきちっと明らかにしておきたいと思いますが、まず国立大学の法人化をする、正に言った国立大学法人化ですよ、独立行政法人ではなくて国立大学法人化をするということについては、これは一つの取り得べき方向として賛成をしております。
 しかし、その目的は、大学の自律ということがきちっと文部省から確保されているということと、と同時に、大学の独善になってはいけませんから、それが内外の大学の関係者あるいは社会全般からきちっと評価を受けて、あるいはそうした方々の創意工夫とか努力とかというものが結集されて、我々はこれをユニバーシティーガバナンスの向上という言い方をしておりますけれども、正に大学の自己統治能力というのが向上して、さらに文部省の息の掛かった評価機関のみならず、正に第三者の評価機関から様々な観点からの評価がなされて、何といいますか、自己革新というものが不断に行われていくということが私は望ましいというふうに思っているわけでございまして、その民主党の基本的な考え方と、じゃ文部科学大臣の御意見はどこが違うのか、一緒なのか、そこをまず一回きちっとさせていただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、決してだまし討ちでもないわけでございまして、真摯な検討の後に今日法案を提出しているわけでございます。
 今お挙げになりました点で評価のことがございました。私は、評価というのは、国が国の意思において設置する大学に対して責任を持って国費を投入するわけでございまして、国費を投入する以上は、これはしっかりした評価がなされて、そしてその国費が目的に沿ってきちんと使われたかどうかということを検証した上で、次の期における国費の投入に反映させていく、これは当然のプラン・ドゥー・シーでございまして、恐らく委員もそのような行き方ということで法人化に賛成していただいていると思います。
 評価につきまして、確かにおっしゃるように第三者機関で様々な形でなされるのも本当にいいと思うわけでございますけれども、今の日本では第三者機関による大学評価をやっているところはどこもないわけです。アメリカでは、本当に何十といういろんな評価機関が自主的に開発されてきて、いろんな角度からの評価機関があるわけでございますけれども、日本では百年河清を待ってもなかなかそういう状況になってこないわけで、これは社会のいろんな状況ないし国民性にもよるのかもしれませんけれども。今日ありますのは、大学学位授与評価機構でございますが、今回の私どもの評価も、一番大切な教育研究に係る評価につきましては大学学位授与機構の評価を当てると、もって当てるということになっております。したがいまして、おっしゃるところの第三者機関で評価をするわけでございます。
 ただ、業務とかあるいは予算上の問題ですね、そういった業務にかかわる事柄につきましては教育研究とは違いますので、そこのことにつきましては、これはほかに評価機関がないわけでございますので、文部科学省における国立大学評価委員会でしたかね、においてやると。しかし、それも官僚がやるというわけでは全くございませんで、それこそまた英知ある方々のお集まりの上で委員会を構成してやっていこうということでございまして、法文上は一見そのように骨を書くわけでございますから、国が文部科学省の中における委員会において評価というふうに読めるかもしれませんけれども、私どもの真意は、ここに正に書かれておりますように、評価のやり方についてはそのとおりやろうというふうにしているわけでございまして、決してそれがおっしゃるような、また、何かやるというようなたぐいではございませんよね。
○鈴木寛君 大臣、非常に答弁巧みなんですよ。
 申し上げます。業務と予算上のことについては文部省が、あるいは国がきちっと対応すると。ここについての私は合理性は認めておりますし、そのことについて評価委員会がそれを担っていくということについては、私もその合理性を一定程度認めるものであります。
 しかし、例えば中期目標の中には、三十条でありますけれども、教育研究の質の向上に関する事項というのが入っているわけですね。私はいろんな真意は分かるつもりなんです、今までは非常に好意的に解してきましたから。その報告書が出たときも党内でいろんな議論がありました、あるいは世の中でいろんなことを言う方がいました。その中では、真意はこういうことだと、で進められているということを信じていました。ですけれども、真意がそこにあるんであれば、それから御答弁を聞いていると、恐らく真意がそこにおありになるということもうかがい知れるんですけれども、であれば、法律を作るということはやっぱりいろんな懸念があるわけですよね。その懸念をやっぱりきちっと払拭しておくと。特にやっぱり成文法をきちっと作るというときには、やっぱり想定される心配事というのは全部、全部最小化して、そしてそういう真意が真意として反映されるような私は法律作りをすべきだと思うんです。
 例えば、いろいろな経緯がある。例えば、国立大学協会が十三年六月に設置形態検討特別委員会報告というのを出しております。その中で、中期目標・計画は大学側が決める形、それが望ましいという御意見があります。それも今、大臣がおっしゃったいろんな経緯の中で重要な指摘だというふうに思います。であれば、大学側が中期目標、中期計画を作るというふうに条文で書くべきだと思うんです。そして、先ほどから、例えば副大臣、大臣が御答弁の中で、国は、あるいは役所は財政面の支援とか業務上のものだと。だったらそのように私はきちっと書いて、三十条を修正をされたらいかがですかと。そして、この名前は分かりませんけれども、例えば中期経営計画とか中期財務目標とか、そういうふうに書けばこんな議論をするつもりはない。我々も国立大学をより良くしたいと思って提案をさせていただいているわけでありますし、修正案もそういう気持ちで作らさせていただいているわけであります。
 でありますから、私は、羊頭狗肉と申し上げているのは、御答弁を聞いていると、微妙に文部省と国立大学法人との関係のところは余りお触れにならないで、それ以外のところの真意、それ以外の真意はよく分かりました。であれば、その真意をきちっと法文に書きましょうと、正に法律を作るというのは私はそういう作業だと思うんです。で、いろんなことが懸念される。そのことを申し上げているということで、例えば、であれば、先ほど申し上げました十三年六月の中期目標、中期計画は大学で決める形がいいというのが国大協の考え方でありました。しかし、条文ではなっていません。平成十四年の長尾国大協会長は、そういうことを言っていたけれども、まあ何となく盛り込まれたから良しとするという非常に苦し紛れの国大協見解を出しておられますけれども、そうではなくて国大協がそういうふうにおっしゃっているんだったらやっぱりきちっとオリジナルな条文にされたらいかがですかというふうに思いますが、どうでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 今のことは先ほどの経緯をじっくりお聞きいただければ十分回答になっているわけでございますけれども、大きな国の方針の中で、民営化か独立行政法人化かという中で、独立行政法人の大きな傘の下で国立大学法人という独自性を持った法人を作ろうということでできているわけでございまして、国立大学が、国の意思で設置をし国費を投入するというところから、一番その骨格となる部分の決定者は、決定者自体は文部科学大臣となっておりますが、三十条の中に、正にお触れになりました三十条の中に、それは中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、国立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮するとともに評価委員会の意見を聴かなければならない。評価委員会につきましては先ほど言いましたように実質、そうですね、行政組織としての公務員がやるということではないわけですし、それから、国立大学法人の意見を聴き、あるいは尊重しということでございますから、実際的には私は大学が定める、あるいは大学の原案というものをベースにして決めていくわけでございまして、大学ないし大学法人の意図というものが生かされていくわけでございます。
 私の今言っております実際的にはというところを是非とも将来にわたって記録に残しておいていただきたいと思うわけでございます。
 しかも、この法人法の、国立大学法人法の第三条におきまして、これは他の法律にはないわけで、独法には、他の独立行政法人関連の法律には絶対ない条文でございますが、国は、この法律の適用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなければならないという大前提の下、三条でございます、書いてあるわけでございまして、私は今御懸念の点は当たらないというふうに思います。
○鈴木寛君 実際的にとおっしゃるんだったらそのとおり書けばいいということを私は申し上げているんですよ。法律を作るというのはそういうことですよね。要するに、これ未来永劫この条文をその時々の当事者が参照をして、よりその法文に忠実に大学行政をやっていこう、あるいは国立大学を運営をやっていこうと。そのときに一番立ち返るところが法文でありますから、そうすると法文をきちっと直せばいいわけでありまして、法文が残るんですから。それを答弁でどうのこうのと言う、おっしゃるんだったら、真意がそこにあるんだったらそのとおり書いたらいいんじゃないですかということを私は申し上げているわけでございます。
 ちょっと確認をしたいんですけれども、これ、独法というのは元々国が中期目標を作って、そしてその独法が中期計画を作って認可すると、こういうスキームになっていますね。一点確認したいんですが、独法がそうだから国立大学法人をそうしたのではないですよね。要するに、国立大学法人というものの、独法がどうであれ、そのこととは全く切り離して今回の国立大学法人法の策定に当たって国が目標を作り、そして計画を認可するというフレームワークがやっぱり正しいと、これは独法の議論に引っ張られたものではないということだけちょっと確認させてください。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 先ほど来から大臣が御答弁申し上げておりますように、大学改革の一環として検討され、こういう国立大学法人の制度ができたと。委員も御指摘のように、大学を法人化し、自由な裁量に基づきまして自主性、そして教育研究を大いに伸ばしていきたいと、こういうことでございまして、その際に独法、これは御案内のように国が必要な事務事業を、効率化という観点も入りますけれども、きちんと財政措置をしながら法人化をすると、こういうスキームでございますので、そのスキームを活用しながら、これも御答弁何度も申し上げておりますように、大学という特性、この特性に配慮してその特性が生かされるようにということでございまして、したがいまして、法人化をし、国が財政措置をする、しかしやはり財政措置をする以上国が責任は持たなくちゃならない。
 その接点をどうするかという際に、目標、計画という、やっぱりそのスキームというのは目標、計画があり、それで事後的な評価と。そのスキームというのは、基本的にはよろしいけれども、ただそのままではやはり大学にとってふさわしくないと、こういうことで目標について条文に書いてございますように大学から出していただいて、それを配慮するという形、そしてこれを実現するためには財政措置、したがいまして、その計画、中期計画に沿ってこれを実現するわけでございますから、そういう意味でやはりそれを認可という形にさせていただいたと、こういうことでございまして、そして全般的に大学に配慮、特性に配慮しなければいけないという三条を設けさせていただいたと、こんなような形になると思います。
○鈴木寛君 これは、大学固有の問題であるということは今の御答弁で確認できました。先ほどから大臣のお話、そして局長のお話の中で、私も財政上国が責任を持って、そしてその前提として中期目標、中期計画を定めていくということについて何ら、同じ考え方です。
 であれば、第三十条の二項の第一号に教育研究の質の向上に関する事項というのがございます。この条項を削除していただいて、中期目標、中期計画の名称を、例えば中期財政目標とか中期業務目標とか、中期業務計画というふうに変更していただくという修正案を提起した場合には、それは御検討していただけますか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) やはり大学の使命は何であるかということを考えますと、やはり教育研究と、そしてそれを向上するというのがやはり大学の第一の使命でございますから、大学が自らの姿勢として目標にそれを掲げるのは当然だろうというふうに思っております。
○鈴木寛君 私も、大学当局が、大学がそれぞれにその使命として教育研究の質の向上を自ら作成し、そしてそのことを世の中に公表することは大変にいいことだと、あるべきことだというふうに思っております。しかし、この問題の本質は、正に教育研究の質の向上に関する事項というものを明確に含む中期目標を文部科学省が策定をするというところにあります。そのことは御理解をいただけていると思いますし、今正にこの法案をめぐって極めて重要なポイントの一つだというふうに思っております。
 それで、私は、この法律の問題点というのは、正にその教育とか研究とかといったものについての基本的な認識といいますか、それが少し違うのかなということが一つございます。
 それから二つ目は、正に大学行政といいますか、大学政策というのは極めて戦後大変な歴史の積み重ねがある。そして、憲法上の要請の下に、そうした先人たちの積み重ねの結果、様々なことが慣習法として確立をしているわけですね。そこで、慣習法として確立をされた憲法を実現をするための極めて重要なルール、学問の自治とか、大学の自治の保障ということが今回の成文法によって、正に変えられてしまうと、ここが私は決定的に問題だと思っております。
 今までは我々は、文部省の蚊帳の外から、あるいは官僚統制から独立をするんだ、離れていくんだと、そういう前提で、そしてそういうことについては非常にいい方向じゃないかと思って、遠山文部大臣のそうした試みといいますか、御活躍に対して一定のというか、一定以上の御協力をさせていただいたつもりでございますが、しかし、そうした正に、一見、国立大学法人が文部省の傘から出ていくというふうなことを標榜しながら、その実見てみますと、教育研究の質の向上、教育研究の内容については今までは文部科学省は介入できませんでした、してきませんでした。そのことは当然のことだと思います。
 しかし、今回の法律でもって、中期目標の中で、しかも法律に書いてまでその研究、教育の質の向上に関する事項に対して、文部省の目標制定権を定めているというところが私は問題だというふうに思いますし、それから、独法化でないと、そう表明されて我々もそれでよかったと思っていたにもかかわらず、国立大学法人と独法との議論がまだ未整理だということであります。
 事前に、五月二十七日の朝日新聞に、「私の視点」というところに京都大学の佐和隆光先生の投稿を読んでおいてくださいということはお願いを申し上げました。佐和先生は衆議院の参考人質疑でも参考人として来ていただいて、大変に見識のある大変大事な御意見をいただいたわけでありますが、まず、要するに研究を計画できるのかどうかということについて少し議論をさせていただきたいと思います。
 佐和先生のおっしゃることは、計画と統制というものは研究とか教育というものになじまないんだということをおっしゃっております。私も全くそうだと思います。それから、ほかの参考人で、あるいは有馬先生もおっしゃいましたけれども、ノーベル賞を取られた今までの、参考人の赤池さんは、田中耕一さんとか白川さんとか福井さんの例を挙げて、研究というものがなかなか計画したどおり、インプットこれぐらいしたらアウトプットがこう出てくるというものではない、非常に複雑なあるいは不確実なものだということをお話しになりました。
 それから、私は先日、野依先生とお話をする機会がございました。基礎研究、とりわけ基礎研究を語る上でセレンディピティーという言葉があるのは御存じだというふうに思いますが、御存じでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 質問をいただいて勉強しまして、セレンディピティーと、これは思わないものを偶然に発見する能力、偶然と幸運による発明といったようなことが辞書に書いてあります。
○鈴木寛君 そうなんです。思わないものを幸運に発見する能力。例えば、田中耕一さんのお話を聞いても、正にセレンディピティーによってノーベル賞を受賞する発見に結び付いているわけですね。
 私は、野依先生の研究のお話を聞きましたが、野依先生がセレンディピティーなるものに直面するのに十年掛かっておられるんですよ。そうすると、中期計画は六年なんですね。そうすると、六年の間にセレンディピティーが来るかどうかというのは分からないわけです。そういう意味で、非常に研究というのは難しい。そのことは有馬先生も同じお気持ちでお話をされたんだと思います。
 佐和先生も、正に参考人質疑の中で、学術研究を計画することは不可能なばかりか有害だとおっしゃっています。そして、研究には多大な不確実性がつきまとう、研究の成果のいかんを事前に予測することは神ならざる人間にとって不可能な仕業なのです、したがって、研究は経済以上に中央集権的な計画になじまないというふうにおっしゃっておられますけれども、この佐和先生の御発言といいますか、見解について何か御意見がありますか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 御指摘のように、個々の研究につきましては、短期的なもの、長期的なもの、いろんなものあると思います。今ここで、この法人法で言っております中期計画ということでございますけれども、個々の教員の研究計画を中期計画として出していただくというような趣旨では全くないわけでございまして、あくまでも大学全体、大学という組織全体として研究の体制その他そういう教育研究等の計画を記載していただくということでございます。
○鈴木寛君 本当に参考人質疑というのは非常に参考になるなというふうに思っておりますんですけれども、これも衆議院の参考人質疑の中で、統制の愚ということを前鹿児島大学の学長の田中参考人が非常にクリアに言っておられます。
 正に、国立大学の法人化の中心目的は自主性と自律性の拡大にある、ところが、本法案は予算、組織、人事に関する運営上の裁量は拡大するが、大学の本来の任務である教育研究の自主自律は逆に大きく損なわれるとおっしゃっています。なぜなら、独法通則法を基本とする本制度においては、大学が一体となって持っていた企画、立案、実施の機能は分割をされ、企画、立案は文部科学省に権限が移されて、大学は実施の機能しか割り当てられない。正にこういうふうに、中期目標を文部省が作って、そして計画を大学がやって、そして文部省の認可が要ってと、こういう制度になっています。しかも、文部科学省は、その業務の成績評価、予算配分、大学の改廃まで決定する権限が与えられている、したがって、この制度は政府や官僚が強力な権限を持ち、国立大学を直接統制することができる仕組みを内包していると言うことができるのでありますと。
 このことを多くの方が懸念されているわけです。御答弁では、いや、そんなことはございません、ございませんとおっしゃいます。であれば、法文でもってきちっと懸念は晴らしましょうということをずっと申し上げているわけでありますけれども、再度、この田中参考人の説に対する反論を聞いてもまた同じことだと思いますので。
 さらに、田中参考人は、大学に対するこのような国の縛りは我が国において存在したことがなく、もちろん現行制度にもありませんと。従来、文部科学省はその権限の行使に当たって法律に別段の定めがある場合を除いては行政上及び運営上の監督は行わないものとする、これ文部科学省設置法第六条の第二項でありますけれども、とされてきたのでありますと。したがって、この制度は大学に対する規制強化を意味しておりまして、構造改革の旗印である規制緩和と明らかに矛盾するものでありますとおっしゃっています。私も全くこの意見に賛成をいたします。
 でありますから、先ほど、この国立大学法人法に乗じて規制強化しているというところを問題を指摘をさせていただいたわけでありますが、この点について文部省の反論をお聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 今、文部省設置法六条二項というお話がございましたけれども、これは文部省がその権限の行使に当たって法律に別段の定めがある場合を除いては行政上及び運営上の監督を行わないと、こういう規定でございますけれども、今までは、国立大学につきましては国の組織の一部ということで、内部組織ということで位置付けられていたわけでございまして、そのため、その内部組織であるという必要から予算あるいは組織面等々、日常的に言わば大学と相談をし、助言をし、指導するという関係にあったわけでございますが、これはあくまでも内部組織でございますから、言わば文部省設置法六条二項の規定の対象ということではなかったというふうに思っておるわけでございます。
 今回、法人化に当たりまして、これはもう内部組織から独立をして法人化にされるということでございまして、その関与につきましては、中期目標、中期計画、評価といったような点、それも一定の配慮をしながらのそういう関与に限定をして各大学の裁量を大幅に拡大すると、こういう仕組みにしているところでございます。
○鈴木寛君 それを役人答弁と言うんだと思うんです、私は。
 なぜこういうふうな設置法第六条第二項が設けておられるのかと。これは正に憲法の二十三条の要請であり、戦後の大学行政をめぐる、大学政策をめぐる我々の先人たちの積み重ねの結果、やっぱりこういうものがその設置法の条文として反映をされていると思うんですね。
 正に、さらに田中先生は、大学本来の学問的使命に対する以上のような歪曲は、世界に例を見ないものでありますと、これはまた、憲法二十三条の学問の自由の保障や教育基本法第十条の教育の不当な支配の排除に反するというふうに述べられております。
 こうしたことの観点から、いろいろな法律を作るに当たって、我々の先人たちはいろんな配慮をしてき、そしてそれに基づいて適切ないろいろな行政が行われてきたんだと。その根っこのところが、今、先ほどから何回も繰り返しておりますけれども、三十条の二項で教育研究の質という文言が堂々と書いてあって、そこを目標設定権限が文部科学省にこれは追加的に付与されているということが私は大事、大変に問題だと思っております。
 私は、この学問の自由というのは、正に民主主義の原点だというふうに思っております。表現、言論の自由が大事だということはよく言われますが、表現をする中身、正に真実というものが何であるかということを探求するのが学問でありますから、よって、私は表現、言論の自由と同等の憲法上の重要性を学問の自由は有するというふうに思っておりますし、言論人、言論をする人材というものを育てるというのが大学教育の最大の使命でありますから、そういう意味で、言論人を本当にきちっと、先ほどの民主主義の担い手としての言論人を養成する、その大学の自治が確保されているかどうかということは極めて重要な問題でありまして、したがって、そのところに文部省が明示的に権限、根拠を追加をするということは問題であるということを申し上げているわけであります。その点について反論を求めます。
○政府参考人(遠藤純一郎君) いわゆる学問の自由、憲法二十三条につきましては、この規定に由来するものといたしまして、大学に対しまして教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行である大学の自治というものが慣行上認められてきておるということでございまして、その内容を国立大学について見ますと、一つは人事でございまして、大学の教育研究に携わる人の人事は大学の自主的な決定にゆだねるということ、それからもう一つは、教育研究につきましては大学が自主的に決定した方針に従って行われるべきであるということが、この二点が主要な点として認められてきたということになろうかと思います。
 この点につきまして、国立大学法人法案におきましては、まず人事の面につきましては、文部科学大臣による学長の任命、これについては学長選考会議の選考による国立大学法人の申出に基づき行うということにしておりますし、教員の任命は学長が行うと、こういうことになっておるわけでございます。
 それから、教育研究について自主的に決定する云々の問題でございますけれども、これも中期目標の策定に当たりましてあらかじめ国立大学法人の意見を出していただくと、そしてそれに配慮をするということにしておるわけでございまして、またその法人の内部におきましても、教育研究に関する重要事項は教員の代表者で構成される教育研究評議会が審議をするという規定を置いておるところでございます。
 私どもとしては、こういったようなことで学問の自由という点について十分配慮をしているというふうに考えておる次第でございます。
○国務大臣(遠山敦子君) 局長の答弁のとおりでございますが、ちょっと私の感想も言わせていただきたいと思いますけれども、やっぱり委員会の議論というのは次々に積み重ねていって中身のある議論にしていった方が、していくことが望ましいと私は思います。
 私と有馬委員との間で展開いたしました、それらは学問の自由を守り、これまでの研究者の持ってきた自由というのは更に確保されるんだということも明確になり、かつ憲法の引用も私からいたしたところでございます。そうした積み重ねの上で議論はなされていくのが望ましいと思いますし、さらに、先ほど引用されました参考人、確かにそういうふうなことをおっしゃったようでございますけれども、他の参考人も二人おられまして、これらは現役の国立大学の学長たちであったと思います。その方々の参考人意見といいますものは、中期目標、中期計画についての今の法案の行き方というのは当然であるということを明確に述べられているわけでございます。
 田中参考人は、前の鹿児島大学の学長であったわけでございますが、国立大学協会の中でも明確に参考人意見として述べられたような立場でおられたようには思います。しかし、それは国立大学協会のすべての学長たち、総長たちを代表する意見ではございません。私は、本当に今、大学の学長なり総長たちが自らの大学をこれからの世紀に合う知の拠点として活性化していくという角度から正に取り組み始めておられるときであるというふうに考えております。
 そして、論点は中期目標、それから中期計画の立て方に絞られているわけでございますけれども、そのことにつきましては再三御説明しているとおりでございまして、繰り返すことはいたしませんけれども、大学の自主性、自律性を守りながら国費を投入し、またそのことについての責任を持つということの表れの法文であるわけでございまして、そのことについて十分な御理解をいただきたいと存じます。
○鈴木寛君 今の大臣のお話に非常に端的に表れていると思うんですね。前国立大学長の、鹿児島大学の学長をやっておられた田中さんは、やっぱり自分が御経験されてきたこと、そして自分の信念を御自由に吐露していただいたんだと思います。そして、現職にあられる大学長は、文部省の御意向というものを横目で見ながらそうした答弁をせざるを得なかったと。正にこの問題というのの核心が今の大臣の御答弁の中に入っていると思うんです、私は。
 なぜ、ここまでにこの中期目標あるいは中期計画についての文部省についての関与についての懸念が世論の中で沸き上がっているかというと、結局、戦後五十年の文部科学省が、旧文部省が大学当局にいろんな意味で有形無形の、正に生殺与奪の権限を持つ文部科学省が有形無形の圧力を掛けてきたと、その正にトラウマがこれだけの議論を呼んでいるわけであります。
 そうしたことを私は、例えば、今おっしゃいましたけれども、石さん、一橋大学の学長、現学長でありますが、賛成の立場からの参考人だったと思います。しかし、石さんですら、各大学の努力あるいは自覚、才覚の問題で、大学自らがビジョンを立て、大学全体となって努力すればある方向で報いられると、制度設計が大事だと。ここは配慮するというふうにおっしゃっていますが、配慮するぐらいだったら作っていただいたらいいんじゃないかということを再三申し上げておるわけでありますが。
 さらに、その石参考人の発言ですが、「大学の裁量の幅をでき得る限り広げる、つまり逆のことを言えば、無用なコントロール、無用な介入はやめていただきたいということが恐らく大学人の共通の要望だ」と。役所も変わってもらわなきゃ困るということを石さんがおっしゃっているわけですね。
 そして、そういう懸念を払拭するためには、もちろん役所がこれからきちっとそういう変わったということを実践をされるということも大事でありますが、それと同時に、法律上もそうした懸念は全くないんだよということをおっしゃった方が、これはもう本当に多くの、多数、国民多数の賛意と、そしてこれから、今までのことはいろいろあったけれども、二十一世紀にもなったし、大学は本当大事だし、法律にも書いてあるし、文部省も改心すると、改心するかどうかはちょっと今お伺いしますが、というふうに、何というか、お互いに気持ちよくスタートできると思うんですが。
 まず、役所は変わる気があるかどうかというこの石発言に対する御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 今回の法案によりまして国立大学と文部科学省との関係も必要最小限の関与ということで変わってくるわけでございますので、私ども、これまで日常的にいろいろ相談にあずかったり助言をしたりというようなことをしてきたわけでございますけれども、やはりこれまで以上に大学の自主性、自律性をより尊重をするということで、職員の意識もやはり変わっていくことが必要だろうと、こういうふうに思っておるわけでございます。
○鈴木寛君 少し具体例を挙げてお話をさせていただきたいと思うんですが、私も是非変わっていただきたいというふうに思いますけれども、今回の法律の原案は文部科学省が作っておられると思うんですけれども、相変わらずやっぱりはしの上げ下ろしといいますか、非常に細かいことも規定されているんですよね。
 これは民主党の修正案の中にも入っていますけれども、例えば、今回大学の理事ということを決めることになっています。民主党の修正案は、十人以内ということだけ決めておいて、各大学の自主性でその理事の数は判断したらいいというふうに考えているんですが、文部省の出されている案では、なぜか九州大学、神戸大学、筑波大学が理事の数が八人で、東京大学、京都大学、名古屋大学は七人なんです。こんなことまで法定する必要があるんでしょうか。そういうことをいまだに法定してきちっと決めていこうというような姿勢がまだ見え隠れするので、こういった御発言なりこういった社会的な認識というものがいまだに続いているんだと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 法人化後の国立大学におきましては、学内のコンセンサスに留意しながら、学長と理事が中心となって責任ある大学運営を実現するということが強く求められているわけでございます。また一方で、通常の独立行政法人におきましても、円滑な法人運営を確保するという観点とともに、法人の役員数の膨脹を防ぐという観点から、各法人ごとに職員数に応じまして必要最小限の役員数の上限を法律で定めると、こういう考え方が取られておるわけでございます。
 国立大学の法人の理事数につきましても、原則といたしまして、通常の独立行政法人における理事の数の基本的な考え方に倣いまして、各それぞれの大学の規模をベースにしながら、国立大学法人の制度設計あるいはその再編・統合等の状況といったようなことを勘案しまして、人数を算出をしまして法定をしているというところでございます。
○鈴木寛君 私の質問は、要するに、神戸大学は八人だとか東京大学が七人だとか、そういう一つの大学ごとにそう事細かに、しかも法律で決めなきゃいけないんですかと。
 例をほかに挙げましょう。例えば、経営協議会というのができます。学外委員というものを入れると、これは私は方向として悪いことではないと思っております。しかし、それもまた必ず半数以上じゃなければいけないということが法律で書いてあります。
 例えば、一橋大学みたいなところは八割だっていいかもしれない。しかし、例えば京都大学のような純粋なところを、きちっと突き詰めていくというところでですよ、学外からの人が例えば一〇%になるという御判断もあってもいいかもしれない。それは文部省が決めることではなくて、正に世の中に公開をされて、なるほどこの大学は学外からこういう人を、しかもその人数の比率だけではなくて、私たちが掲げています民主党の案では、どういう人が経営協議会のメンバーであるかという固有名詞を掲げたらいいんではないか、それでもってそれぞれの大学の個性、正にその経営協議会の人事にもその大学の運営方針というものが出るわけでありますから、それでもっていろんな観点から評価を受ければいいと、そういうふうに思っているわけでありますが、こうしたことも法定をするというフレームワークになっております。
 でありますから、やはりまだ文部省というのは事細かにそういうことを決めていきたいんだなということが条文でにじみ出ている。それをもうちょっと、本当に自主自律とおっしゃるんだったら、何も法律で七名とか八名とか書く必要ないではないですかということを申し上げているんです。いかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 先ほども申し上げましたように、独立行政法人の、通常の独立行政法人におきまして法人の役員数の膨脹を防ぐ、こういう観点から各法人ごとに上限、役員数の上限を法律で定めているわけでございまして、個々の国立大学法人につきましても一定のルールの下に各大学の理事の数、上限を決めて法定をさせていただいているということでございます。
○鈴木寛君 今のことを我々は否定していません。したがって民主党修正案では上限十人以内と決めているわけです。もちろん、大きな大学、小さな大学と分ける必要があれば十人以内と五人以内と分けても、それはそういう修正協議の中で詰めていけばいい議論でありますけれども、今のお答えは全く答弁になっていないというふうに思います。
 更に申し上げると、この中期目標、先ほどからくどいですけれども、教育研究の質の向上に関する事項を含む中期目標、あるいはその実施について詳細に決めている中期計画、これが財務省協議の対象になっているんです。これは余りにもおかしいんではないかというふうに思っております。もちろん、財務省は予算上の観点という御答弁をされるんだと思います。本会議でもそういう御答弁をされました。その答弁はもう結構です。
 であれば、中期目標の財務内容の改善に関する事項とか、そういうことに限定をするような法文の書きぶりにするとか、それから、私は元々中期目標というものを大学が決める部分と、それから役所が関与する部分と分けるべきだというふうに思います。その御提案について、この提案が受け入れられるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 中期目標の定め、変更しようとするときに、中期計画もそうでございますけれども、財務省の協議と、こう書いてございます。
 今、一部に限定したらということでございますけれども、これ全体として、業務運営にしても財務内容にしても教育研究の質にしましても、全体として財政ということにかかわってくるということがございますので、やはりこれは全体としての協議ということになろうかと、そういうことで理解をしているわけでございます。
○鈴木寛君 あのですね、私は元々全く財務省協議は必要ないというふうに思っています。なぜならば、財務省というのは予算編成権の最終査定権限を持っているわけです。毎年年の予算でこの大学に幾らの交付金を出そうかということは最終的に財務省は決めれるんですよね。ですから、その一回でいいんだと。結局、中期目標、中期計画のところで当然財務省の査定、値切りが入りますから、すると値切りを一回受けるよりは、二回値切りたいから財務省はそういう条項にしているんだと思いますが、これは私つらつらいろいろ考えてみて、私は遠山文部大臣のこと大変に好きなものですから、何でこういうことになってしまったんだろうということを考えてみました。
 聞くところによりますと、財務省が、この中期目標を文部大臣が決め、そして財務省協議にすべきであるということを強硬に主張し、文部省がそれに屈してしまったということなのかなという推理も成り立つんですが、そこはいかがでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) これは、独立行政法人全般についてそういうことでございまして、そのスキームにのっとってやっておるということでございまして、そういう形で財務省協議を、形式的にはそういうことでございます。
○鈴木寛君 その答弁が出てくると、もう一回一からやり直しなんですよ。だから一番最初に御確認したんです。これは独法化なんですか、もう一回大臣に聞きます。
○国務大臣(遠山敦子君) これは、再三お答えいたしておりますように、閣議決定におきまして、独立行政法人そのものではなくて独立大学法人というものをやるということでございますが、しかし、大きな傘の中で、本質にかかわらない部分といいますか、それについては独自性をということでございます。
 運営交付金が今後も国立大学に対して措置をされるわけでございまして、これは国民の血税を投入するということでございまして、これは財政状況も勘案しながら毎年度ごとに予算措置されるものでございますけれども、その際には、あらかじめ認可された六年間の中期計画の枠組み、あるいはそれに盛り込まれた内容が前提となるものでございまして、各大学の事務事業の必要性を年度ごとに一から詳細に検討、査定するという形で国が関与するものではないということでございまして、先ほどの局長答弁の意味はそういうことを指しているわけでございます。
 これまでのように、極めて、例えば一つの学科を作るあるいは講座を新たにする、さらには小さな研究施設、それらも細々と毎年文部科学省も一緒に考え、そして財務省にもお願いをしという形でやってまいりましたけれども、これからは大きなくくりの中でやっていくということでございまして、私は、その意味で裁量権は極めて大きくなる。ただ、国費を投入するという以上、これは、私は財務という角度からの関与というのは当然あるべきだと思っております。
○鈴木寛君 今の文部科大臣の御発言は少し問題だと思います。
 と申しますのは、予算案というのは最終的に国会で審議されるんですね。ここは与党の委員の先生方もよく聞いておいていただきたいんですけれども、予算は、それがいいのかどうか、我々は審議できるんです、予算委員会、そして本会議を通じて。しかし、中期目標あるいは中期計画、これは国会は関与できません。ですから、国会の関与ができないところでキャップといいますか大体の大枠が決められてしまって、そして、その枠の中で細々したことが予算化されて我々の国会に出てくると。これは、予算を国会で議論をしていく、正に国民の皆さんからお預かりをした税金の使い道を国会で決めていくということに対して大変な問題のある条文になっているということは、是非この委員会のすべての委員の方に御理解をいただきたいというふうに思います。
 その上で、やはりなお財務省が中期目標、中期計画の段階で、私たちの民主党の法案も、修正案も、例えば長期借入金の問題とか積立金の問題とかあるいは債券の発行とか、こうした極めて財政的に関係のあることについての財務省協議についてはそれでいいと言っているんです。それは修正案をごらんいただいたらお分かりだと思います。
 しかし、正にその目標と計画の部分についてまで財務省に協議をしなければいけないのかと。しかも、国会が関与できない中期目標、中期計画について財務省に協議をし、そして文部科学省と財務省で専権的に決めていいのかということを問題提起をしているわけでありますが、この点についての、財務省からも少し御意見を聞きたいと思います。
○政府参考人(杉本和行君) 先ほどから御議論になっていますように、その中期目標、中期計画につきましては、国の財政にも関連すること、しかも国の財政資源というのは有限でございますので、財務大臣との協議規定が設けられるところでございます。
 そもそも、この国立学校の法人化に伴いましては、国の予算上の関与も、現在の国立大学に比べまして、先ほど文部科学大臣から御説明がありましたように、かなり柔軟化した対応が可能ということになっておりますので、そういった点にも配慮していただきたいと思っております。
 国の予算、政府部内での話でございますが、国の全体の予算とも絡む話でございますので、中期計画におきまして期間内の予算額の算定のための大きな枠組みを作りまして、それを毎年度の予算に具体的な適用を図っていくということになっております。その毎年の予算はもちろん国会に御審議いただくわけでございますから、そういった形で国会の御審議も経ることは可能だと思っております。
○鈴木寛君 この問題は、実は、いい大学を作っていくという観点からも問題だと思っています。
 と申しますのは、中期目標あるいは中期計画で、私は、まず大学がきちっと自主的にお作りになって、そして世の中にまず公表すべきだと思っているんです。今後の国立大学というのは、もちろん運営交付金は非常に貴重な財源の一つでありますけれども、それ以外にも、授業料とかあるいは公開講座をやるとか、それから研究開発の委託費あるいは共同研究費をもらうとか、歳入も多角化していくわけですね。
 そうすると、この大学としてはこういう目標を掲げて、こういう計画で、こういうことをやりたいということをまず世の中に明らかにした方がいいと思っているんです。その上で、この部分は予算で面倒を見ましょう、そして足らない部分があります、したがって債券を発行しますから買ってくださいとか、この部分はまだ足らない、よって民間の資金をどんどん導入してくださいと、こういう議論も、むしろ大学が目標を定め、計画を定め、そしてオープンにする、これが民主党案の基本的な考え方ですけれども、ということの方がより良い大学作りに資すると思う。そのために民主党はああいう修正案を出させていただいているわけです。
 もちろん、これは善意に解すれば、何とか予算を付けなきゃいけない、しかし、ないそでは振れないということなんですが、結果として、結局二回査定が入ることによって、そうした目標あるいは大学の経営というものがシュリンクしてしまうという実質的なマイナス面もあるということを是非指摘をさせていただきたいというふうに思いますし、そういう意味で、少しちょっと観点を変えてお伺いをしたいと思うんですが、これからは、これはもう十分承知していると、御存じのことだと思いますが、やっぱり官僚機構あるいは官僚機構のやる仕事というのは得手な部分と不得手な部分とあるんですよね。私は、削ることというのは非常に得手なことの一つだと思いますけれども、何かあることをエンカレッジして、そこにどんどんどんどん増査定していくと、こういうふうなダイナミズムとか、いろんな意味で、いろんな関係者がやっぱり入って、そしてまずは、一番最初のオリジナルな案を世の中にオープンにしていくことによって関係者の議論を深めていくと、こういう制度論にしたらいいというふうに思っているわけですけれども、これは、中期目標についての意見というのは、全く文部省が事前チェック、事前コントロールをしないで作られて、そしてその後に目標を定めるわけでありますが、その以前に公表されるんですか。どうなんですか、そこは。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 大学が正式に持ってきたものについて、やはりこういう意見を出すということについてはやはりオープンにすべきだと、こういうふうに思っております。
○鈴木寛君 そうすると、事前に大学の考え方というのは世の中にオープンにされて、それに対して文部省がどういうふうな変更を加えたかと、これは新旧を対照すれば分かるということになるというふうに理解してよろしいですか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 大学から出てきました原案につきまして評価委員会に、国立大学法人評価委員会で審議をしていただくわけでございますけれども、そういう場で会議を公開にするといったような形もございますし、そういったようなことで透明性を確保しながら進めていくということだろうと思います。
○鈴木寛君 それから、文部省から、そして財務省協議のところで変更になったこともこれは後で、我々、後でというか、要するにそのプロセスがトランスペアレントになるというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 正式な原案についてこういう意見があったということについては公開していくということになると思います。
○鈴木寛君 これからやっぱり我々目指すべきというのは、だれがその案を責任を持って考えて、そしてだれがそれに対して意見を言って修正を加えてという、正にそれぞれの主体の自己責任ということが透明になって、そしてその政策形成過程が我々手に取るように分かるということはとっても大事だというふうに思っていますので、その点は是非更なる審議の中でも詰めさせていただきたいというふうに思っておりますが、御指摘をさせていただきたいというふうに思います。
 それから、第三者評価委員会の件で、冒頭に大臣からお話がございました。私は、繰り返しになりますけれども、別に国立大学法人評価委員会の存在を否定しているわけでは全くございません。恐らく適正な予算の執行の観点から必要な評価をするということを否定しているわけではありません。しかし、それ以外も多角的にあった方がいいんじゃないですかという提案をしていて、今ないことは我々共有しています。
 さっきも申し上げましたけれども、どうしてもこれは国立大学法人評価委員会、事務局は恐らく官僚の方がおやりになるんだと思います。メンバーの構成は非常に多角化されると言っておられますが、そこももう世の中の方々は、結局は事務局が相当な力を持ってやっておられるという実態について百も承知だからこういう懸念が出てくるわけですね。もちろん、その懸念をなるべくミニマイズしていただくという努力はしていただきたいということは当然なんですが、やはりそこには限界がある。よって、ネガティブチェックじゃなくて、もっと、評価というのはあらを探すというかネガティブチェックだけじゃなくて、ポジティブにいいところはいいということをどんどん正に評価し、褒めてそれをエンカレッジするという意味で、こういう仕事は私はお役人とちょっと遠いところの人がやった方が私はうまくいくんではないかということで、第三者評価機関の設立をもうちょっと社会全体として政策論として推進をすべきではないかというふうに思っておりますが、その点はいかがでしょうか。
○副大臣(河村建夫君) 他の内閣委員会に出ておりまして、中座して失礼いたしました。お許しをいただきたいと思いますが。
 今の鈴木委員の御指摘は、私は非常に大学評価、大事でありますし、そういう観点をこれから高めていかなきゃいかぬと、こう思っております。
 現在、大学基準協会あるいは短期大学基準協会等の評価機関が大学の質の向上を図る観点から評価活動を展開をいたしておるところでございます。また、多くの私立大学が加盟しております日本私立大学協会を中心に新たな評価機関を設立したいというような動きもございまして、私はこれらの機関が早く立ち上げて活動をしてもらいたいと、こう思っておるわけでございます。
 残念ながら、日本においてはまだこうした第三者評価機関というものの成熟度が高まっておりません。平成十五年度予算でも第三者評価に関する調査研究費を措置をいたしておりまして、認証評価機関としての認証を受けて、第三者評価を実施しようと準備を進めている機関に対しては、その体制整備を進めるための経費を委託するということにいたしておるわけでございます。認証を受けた評価機関に対してこれから国の支援をどうするかということについても今検討をいたしておるところでございます。
 おっしゃるように、国の機関でもない、ただ身内の自己評価というのがございますが、それの外の段階で評価を受ける、非常に公正な評価機関というものが是非私は必要だと考えておりますので、文科省としてもそうした多元的な評価を行えるような機関の設置といいますか、それについては積極的に支援をしてまいりたいと、このように考えております。
○鈴木寛君 今の点は是非その方向で頑張っていただきたいというふうに思います。
 それから、この法案の構造的な問題、要するに慣習法上いろいろ積み上げられてきたルールが、条文だけ読むとそれがむしろ規制強化といいますか、我々の今まで大事にしてきたことと逆方向になっているという懸念がいろんなあるということをずっと指摘をさせていただいたわけでありますが、その中の一つに学長の選考の問題がございます。
 私が承知しておりますところによりますと、政策科学大学院を除き、国立大学における学長選考というのは基本的には選挙によって、正に民主的手続によって行われているというふうに理解をしております。正にそのことが重要な慣習法として定着をしているというふうに思っておりますけれども、今回の条文だけ見ますと、学長選考会議というものが学長を決めていく、民主的手続が引き続き確保されるのかそうでないのかということについてグレーなんですけれども、この点についてはいかがでございますか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 現在の国立大学の学長の選考でございますけれども、これも教育公務員特例法におきまして、学部長等によって構成されております評議会、ここで選ぶと、これだけ書いておるということでございます。
 今回の法人化後でございますけれども、これについては、学内者のみで学長選考を行ってきたという方式を改めまして、学内の教育研究評議会の代表者だけではなくて、それと同人数の経営協議会の学外委員の代表者で構成されます学長選考会議が学長選考を行うと、ルールも決めるという方式を導入するということでございます。
 いわゆる学長選挙でございますけれども、先ほども申しましたように、評議会で学長を決める際の言わば参考という形で、法令上に位置付けられた手続ではなくて、各大学の学内規定等におきまして学長選挙といったようなことが行われてきたわけでございます。法人後につきましては、どういうやり方で学長を選ぶかということについてもその学長選考会議が定めるということでございまして、各大学の御判断ではありますけれども、例えば学長選考会議の選考のプロセスにおきまして何らかの形で学内者の意向聴取ということも行うということも考えられるわけでございますけれども、その場合でありましても、例えば学長選考会議が広く学内者から候補者を調査をし絞った上で学内の意向聴取を行って、その結果を参考にしながら最終的に責任を持って選ぶといったようなことが重要だというふうに考えておる次第でございます。
○鈴木寛君 こういう民主的手続を確保するというようなことで、やっぱり私は法律で書くべきだと思うんです。こういうことこそちゃんと制度で担保するということが必要だというふうに思うわけであります。
 最後に是非申し上げたいわけでありますが、この法案については、趣旨において私たち別に反対するわけではございません。そして、そうしたことがどんどん進むように我々も本当に真摯に検討し、修正案の提案ということを衆議院で行わせていただきました。今日の御議論で、やはり少しでも懸念があることは、真意に邪心がないということは分かりましたから、であればそのことを法律上きれいに書いて、そしていろんなところからなされている懸念というのは全くない形で、私はこれ、正に多くの関係者が、多くの会派が賛成をした形で、正に五十年ぶりの大学改革政策の大転換期でありますから、そうした船出を私はした方がいいのではないかというふうに思います。
 そのためには、是非この審議なども踏まえながら、条文の修正ということについても真摯に御検討をいただきたいというふうに思いますが、その点についての文部科学大臣の御答弁を求めます。
○国務大臣(遠山敦子君) 今日、鈴木委員が本当に真剣に大学の将来考えていただいて、ポイントとなる御質問をいただきました。私どもも誠実にその御質問にお答えしてまいったつもりでございます。
 冒頭にもお答えいたしましたように、私どももできるだけ多くの党の御賛同を得ながら、この非常に大事な法案の門出を見たいと思っていたわけでございますが、御党の方からの御提出案が余りにも国の責任という角度から見て取り上げにくいということで衆議院において否決されたわけでございます。
 ただ、答弁を通じ、あるいは討議を通じまして、私どもといたしまして、大学の自主性の尊重という点を十分に踏まえて、国としての責任ある対応を今後ともしていくということで明確な態度を表明したところでございます。
 その意味におきまして、今回の法案の理念あるいは目的とすることも私どもとしては明確にしたつもりでございまして、私といたしましては、このままの内容で多くの会派の方の御賛同をいただきたいというふうに考えております。
○鈴木寛君 終わります。
○草川昭三君 草川であります。
 まず最初に、国立大学法人化の問題に関する有識者、大学関係者等による検討の場では、日本の大学が著しく国際競争力を失ってきたこと、優秀な研究者が海外に頭脳流出をしていること、優秀な高校生までが日本の大学に進学せず欧米の大学に入学していることなど、日本の大学の空洞化していくということへの危機感が背景に様々な議論がなされてきたと思います。
 今回のこの国立大学法人法案の成立によってこのような心配はなくなるのかどうか、お答えを願いたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 日本の大学は、特に九〇年代以降、国公私立を通じまして着実に改革が進められてまいっておりまして、いろんな成果が最近では出ていると思いますけれども、今、委員御指摘のように、様々な問題がまだあるということも確かでございまして、特に国立大学の場合には、大学審議会自体の答申の中にもよく出てまいるわけでございますが、どうも研究中心であり過ぎる、あるいは学生に向けた魅力的なカリキュラムという意味では十分な計画を持っているかどうか、さらにはその運営の在り方が学部自治ということにとらわれ過ぎて閉鎖的である点など、様々な問題も指摘されているところでございます。
 将来を見ますと、日本の大学がより国際的な競争力も持ち、魅力的な大学としてインターナショナルな評価も受け得るような存在になってもらう必要がある、そのようなことの危機感及びあるべき方途というものを見詰めた上で、大学人とも様々な協議を重ねた上で今日の法案に至っているわけでございまして、今回の法案を成立させていただきますれば、私は、大学がその特性である自主性を高めて、各大学が互いに切磋琢磨しながら一層その個性化を図り得る状況を醸成していくというふうに思っているわけでございます。
 それを担保するために、中期目標、中期計画による目指すべき理念の明確化、学長のリーダーシップの下で戦略的大学運営を実現するための運営体制の整備、国の予算制度や公務員制度による規制、制約の緩和、定期的な評価の実施による改革サイクルの確立などを実現することで教育研究の更なる向上に向けた様々な取組を可能とするものでございまして、したがいまして国立大学の法人化がなされればそのような課題の改善に大いに資すると思いまして、最も大事なことは、各大学が法人化のこうしたメリットを十分に活用して積極的に教育研究の向上に取り組んでいただくことであるというふうに考えます。
○草川昭三君 今そういう御答弁があったわけでございますが、この法案を作るに当たって国立大学協会と十分な意見交換をされてきたと思うんでございますが、いろいろの御質問等を聞いておりますと、かなりの経過があったように思います。
   〔委員長退席、理事仲道俊哉君着席〕
 この間の議論の経緯を簡単に問題点だけ御報告願いたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 国立大学の法人化は、我が国の高等教育機関における歴史的な改革でございます。そういう意味で、委員御指摘のとおり、検討の節目には国立大学長の全国会議あるいは地区別会議を開催して直接意見交換をやってきたものでございます。また、国大協との意見交換も積み重ねてまいりまして、その意見も勘案をしながら制度設計を行うなど、国立大学関係者の意思疎通と合意形成には特に意を配ってきたところでございます。
 今御質問のございました経緯を御説明申し上げますと、平成九年の十月に行政改革の柱の一つとして独立行政法人制度の創設が提唱された、この段階では制度設計の詳細が明らかになっていなかったと。このため、国大協においては、行政事務の効率化を目的とした独立行政法人制度をそのまま大学に当てはめるということは大学の特性に照らして相ふさわしくないという意見が取りまとめられた。有馬委員もそのことを言っておられました。反対であるという意見が高かったわけであります。
 その後、次第に独立行政法人制度の制度設計が明らかになるとともに、平成十一年四月の閣議決定において、国立大学の法人化については、行政改革の観点よりもむしろ大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討すべきであると、こうされたわけでございます。これを受けまして、平成十一年六月には、国大協内部でも国立大学を法人化する際に必要となる特例等に関する検討を始めることとなったわけでございます。
 さらに、翌十二年六月には、独立行政法人制度の下で大学の特性を踏まえた法人制度を検討するために置かれた文部科学省の調査検討会議にも国大協も積極的に御参加をいただいたところでございます。このため、調査検討会議においては、国立大学協会関係者も多数参加をされ、約一年八か月にわたって大学改革に資する制度設計を検討してきた結果、昨年の三月に新しい国立大学法人についてと題した最終報告がまとめられたわけでございます。
 御指摘の平成十四年四月の国大協の会長談話、最終報告がまとめられた直後に発表されたものでありまして、最終報告で提言された、国立大学法人の制度設計が真に大学改革に資するものとして国大協から一定の評価が得られた結果であるというふうに認識をいたしておるところでございます。全体として見るとき、二十一世紀の国際的な競争環境下における国立大学の進むべき方向としておおむね同意できる、国立大学協会は、この最終報告の制度設計に沿って法人化の準備に入ることにいたしたいという報告が談話としてなされたわけでございます。
 その後、最終報告を踏まえた法案の作成段階におきましても、その概要を国大協に示しながら意見交換等を行ってきたわけでございます。その結果、二月二十四日の国大協理事会では、国立大学法人法案の基本的な枠組みは最終報告を尊重して立案されているとの法人化特別委員会の見解が了承されました。また、法案提出直後の地区別学長会議や国大協の委員会においても法案に対する特段の異論はなかったところでございます。
 以上でございます。
○草川昭三君 そういうことだとは思いますけれども、その後、いろいろと衆議院でもいろんな議論があったわけでございますが、その中で、この国立大学法人制度が実施をされるようになると独創的な研究の芽が摘み取られることになるのではないか、あるいは我が国はいつまでも基礎研究へのただ乗りの国から脱することができないのではないか、むしろ国際競争力が低下する、あるいは本制度の下では真の研究は困難であり、我が国の学問は衰退するという反論が依然としてあるわけでございますが、その点についてどのような反論をされるのか、お答えを願いたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 先ほど来の御議論でもあったところでございますけれども、私は、国立大学の法人化といいますものは組織運営のシステムの改革を図るものでございまして、法人化後の国立大学も、自らの判断と責任において基礎研究の推進といった使命を果たすことが求められております。学問の自由なり、あるいは研究の自由なり、そういったことは、より自由になれこそすれ、それが何ら妨げられることは全くないわけでございます。
   〔理事仲道俊哉君退席、委員長着席〕
 それを具体的に申しますと、教育研究の組織でございますけれども、これまでといいますか、現在もそうですけれども、法人化されるまでは法令や予算で厳格に定められているわけですね、組織。これが今後は各大学の判断で機動的に編制できるようになります。省令とか様々なかっちりした法体系の中でなくて、それぞれの大学において、社会の動きあるいは学問上のニーズに応じて改編できるようになるわけでございます。それによって研究者の独創性を生かした先駆的な研究を推進する体制を柔軟に整備することが可能になります。
 また、資金の面でも、運営交付金が出されますと、それは渡し切りでございまして、中の使い方は自由でございます。六年間ほぼその自由が確保されるわけでございまして、これまでのように毎度、文部科学省あるいは財務省と相談をしながらということも必要でないわけでございます。さらに、その運営交付金以外に外部の資金もいろいろあるわけでございまして、例えば科学研究費補助金は最近は大変な伸びを示しておりまして、今や国公私を通じてではございますが千七百億あるわけでございますし、その他我が省でも研究費持っておりますし、他省庁にも様々な研究費が用意されているわけでございます。
 研究者は自らの優れた発想によって研究テーマを出し、そしてそういう外部資金も堂々とお取りになって、ますます自由な形での基礎研究というものをおやりいただきたいと思いますし、私は非公務員型になること、あるいは人事、会計上のいろんな制約をなくすということにおいて、基礎研究はより発達、前進、あるいは言葉を換えれば進化、高度化する、またそうでなくてはいけないというふうに思っております。
○草川昭三君 今の大臣の答弁を聞きますと、今までいろんな疑問点というものがきれいに払拭されるという、そういう御答弁だと思うんですが、元々この法案についての反対論の方々は、大学は競争に本来なじむ世界ではないということを言っておみえになるのではないだろうかと私は推察をするわけですが、この点についての反論はどのようにお考えか、お伺いします。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 我が国の大学の教育研究の活性化を図って世界のトップレベルの大学と伍して発展していくためには、大学の教育研究の特性を十分踏まえた上で適切な競争的環境を整備することが極めて重要でございます。
 そのため、今回の法人化によりまして、そういうことがしやすいということで、各大学の自主性、自律性を高めるという点、あるいはその評価のシステムの確立という点の制度にしておるわけでございまして、こういったような制度の下で競争的環境の醸成を図っていただければと、こう思うわけでございまして、例えば学生の立場に立ってカリキュラムを改善した大学により多くの学生が集まるといったようなこともあるわけでございまして、適切な評価や大学の教育研究の多様性を踏まえた競争というものは大学になじむものだというふうに私どもは思っておるわけでございます。
○草川昭三君 では、次に移ります。
 先ほども学長の任命について質問がございました。それで、いわゆる学長選考会議の申出によりという、こういうお話であったようでございますが、それで大臣が任命される。大臣は申出を拒否することは将来あり得るのか、ないのか。あるいはまた、任命された学長が仮に、大変御無礼な、誇り高き参議院の委員会上なじまない言葉か分かりませんが、先ほど来の議論を聞いているとかなり乱暴な御発言があるようですから私も許していただいて、例えば、任命された学長が仮に独裁的な暴君だと、仮にですよ、仮に暴君となった場合、学長の解任はどのように行われるのか、またそのとき大臣はどのような対応をされるのか。大変御無礼な見通しでございますが、お伺いしたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 通常の独立行政法人では、法人の長は大臣の裁量で任命することになっているわけでありますが、国立大学の学長については、大学の自主性、それから自律性尊重という立場で、学長選考会議の選考結果を大学が申し出て、それに基づいて行う、こうなっておりまして、したがいまして文部科学大臣は、大学の申出に法的に拘束をされて、例えば所定の手続を経ていないとかの申出があった場合に、あるいは学長に誠にふさわしくない著しい非行がある、申出に明白な形式的な違反性がある、そういう違法性があるというような場合、明らかに不適切と客観的に認められる場合、これを除いては拒否することができないと、こうなっておるわけでございます。
 したがいまして、今御指摘があったように、学長が独断専行になった場合、暴君だと、こういうような場合、学長が意思決定を行うに当たっては、経営協議会あるいは教育研究評議会、これが審議や役員会の議決を踏まえる必要があるなど、一定のチェックの仕組みはあるわけでございます。しかし、万一、学長個人の職務執行に起因して学内が混乱をしたというようなケース、それから正常な教育活動ができない、これが長期にわたるという場合に、学長が交代しない限り改善の余地がないと、こうなった場合には、第十七条に基づいて学長選考会議が学長の解任を大臣に申し出ることが可能になっておるわけでございます。
 このように、学長選考会議の申出があった場合には、大臣は所定の手続を経ているからといった点や、解任要件に当たって、当てはまるかといったチェックは一応いたしますが、申出に従って学長を解任することができると、こういうふうになっております。
○草川昭三君 それから、もう一つ、監事というのがございますね。各法人ごとに二名大臣が任命することになっている。法人業務を監査し、必要があるときは大臣に意見を提出することができるとされているわけですが、これも非常に皮相的なというんですか、嫌な質問になりますけれども、これは文科省のお目付役的な位置付けになるんではないだろうか、いわゆる法人の自主性というものを阻害する立場に立つのではないだろうかという心配があると思うんですが、その点はどうでしょうか。
○政府参考人(遠藤純一郎君) この国立大学法人制度におきましては、大学の自主性を踏まえて、法人運営の責任者である学長の任命は法人の申出に基づいて行うということ、あるいは、その法人の業務運営の目標でございます中期目標を定めるに当たりましては法人の意見に配慮するということなどが規定されておりまして、こういった制度設計の下での法人化であるわけでございますけれども、監事につきましては、そういう事後的に運営状況の監査を行うといった職務にあるわけでございまして、こういう職務の性格を考えますと、監事の任命を大臣が行うということでその大学の自主性が損なわれるということはないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
○草川昭三君 じゃもう一つ、こういう質問をしたいと思うんですが、監事が文科省から派遣されるということはあるのかないのか。あるいは、現在の国立大学の事務局長などは本省人事の一環として管理職クラスが出ておみえになると思うのでございますが、管理職クラスが監事として出向することがあるのか。また、その場合は戻るということになると思うのでございますが、そうなるのか。あるいは、言うところの退職者、本省の退職者の方々が監事として天下っていくようなこともあり得るのかどうか、お答え願いたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君) お答え申し上げます。
 まず監事についてでございますが、先ほど監事の職務を御説明いたしましたとおり、運営状況の監査を行う、こういうことから、通常の独立行政法人と同様に各法人に二名ずつ置くという形になっているわけでございます。今後、この法案が成立して、そして具体のことがこれからになるわけでございますが、監事の現在のところ抱いているイメージとしては、例えば一名はやはり会計監査に精通した者、これは企業監査の経験が豊富な公認会計士等が考えられるわけでございます。もう一名は当該大学の行う業務に精通した者を任命するということなどがイメージとしては持っているわけでございます。その任命に当たりましては、以上のような監事に求められる能力、適性を踏まえて、適材適所の考え方に基づいて官民を問わず幅広い分野から適切な者を起用していくということが重要だと認識をしております。
 したがって、今申し上げたような幅広い分野、官民を問わず幅広い分野から適材適所を考えていく、その際に文部科学省関係者というものもそれはあり得ると思っているわけでございますが、先ほど申したとおり、あくまでもその職務の性格に基づいて幅広く適任者を選任する、これが基本だというふうに考えているわけでございます。
 それから役員、いわゆる理事ということでございますが、これは今回の法人のまず基本的な性格からいいまして、学長が正しくそこをきちんと任命するということが基本になっているわけでございます。したがって、学長自らがその考え方に基づいて幅広い分野からこれもまた任命するということになりますので、具体的には、恐らく副学長や学長補佐など、現在の学長を支えて大学運営を担っている者、そのほか経済界や私学関係者、さらには高度な専門職業人など、幅広く有識者を登用することが見込まれているわけでございます。そういう、あくまでも学長が自らの考え方に基づいてきちんと任命するということでございます。その際、学長が適材適所の観点から自らの判断により、例えば現在の事務局長等を理事に選任することもそれはあり得るというふうに考えているわけでございます。
 いずれにせよ、先ほど来申し上げているとおり、国立大学法人、正に自律性を持つわけでございますから、学長がきちんとした任命権を持って、自らの人事戦略の下で適切に対応していく、こういうことになるわけでございます。
○草川昭三君 では、今度は評価の話でございますが、これはもう皆さん何回かお尋ねになっておられますが、大学に対する評価といっても、組織全体に対する評価と個人の業績に着目した評価ということになりますと、その手法はかなり変化があると思うんですね。
 例えば、大学に六年間の中期目標を、中期計画を一体的に検討、立案をさせる、これはもう御答弁もありましたね。そういう目標に対して評価する仕組みと言っておみえになるわけですが、個人を対象とした評価と組織を視点に当てた評価のどちらをウエートを重んじられるのか。難しい話だと思いますけれども、非常に抽象的な質問ですが、問題点だと思うので、お答え願いたいと思います。
○副大臣(河村建夫君) 国立大学法人の評価は、国立大学に対して所要の財政措置を行うことを踏まえておりまして、その国費が有効、適切に使われたかどうか、国が検証しなきゃならぬ、こういう観点もございまして、大学の組織全体としての中期目標、中期計画の達成状況を評価する、こうなっておるわけでございます。
 したがって、研究面の評価についても同様の観点から行われるものであって、例えば学部等の組織を構成するその教員の個別業績といいますか、その教授の持っている業績というものを基にいたしますが、それらを総合した研究水準が中期目標に照らしてどのぐらいのものなのか、組織としての中期目標、中期計画の達成状況を評価するという観点でございますから、どちらにウエートがあるかと言われれば、組織にウエートが掛かっている、こういうことでございます。
○草川昭三君 それで、衆議院の参考人の佐和さんの話が先ほども取り上げられましたが、ちょっとそれに参考して御質問なさらなかったようでございますので、私、少し砕いて分かりやすい質問をしたいと思うんですが。
 例えば、A大学とB大学において同じ分野を専攻する学科を比較するという場合があったとします。その場合に、A大学はいわゆるノーベル賞クラスの非常に評価の高い研究者が一人お見えになるけれども、その他の研究員の方々は、これもまあ言葉は悪いですが、余りぱっとしないという場合があったとします。これはもう仮定の話ですからね。もう一つのB大学には世界に名の知れた研究者はいませんけれども、教員あるいは研究員一人当たりの論文だとか、あるいは学会誌に取り上げられた論文の数はA大学に比べてはるかにB大学の方が多いという場合の査定もあり得ると思うんですね。
 という場合にどのような評価がなされるのか、お伺いをしたいと思うんです。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 大変難しい御質問でございますけれども、国立大学法人を評価するに当たりましては、御指摘のようにノーベル賞クラスの研究実績の有無、あるいは論文の被引用回数ということも評価の要素の一つだと考えられるわけでございますけれども、こうした研究水準に関する要素だけではなく、ほかにも、例えば研究の実施体制はどのように整備されているか、あるいは大学の研究活動が地域の産業や文化にどの程度貢献しているかといったことなど、各大学の中期目標、中期計画に照らしまして、様々な要素を勘案して大学全体としてその達成状況はどうであるかということを評価するということになると考えております。こうした研究面の評価は、その特性に配慮しまして、専門的評価機関である大学評価・学位授与機構が専門家によって実施をするということでございます。
 御指摘の事例につきましては、大変どちらの大学がどうというのは難しい問題だと思いますし、やっぱり専門家がそれぞれの大学の状況を総合的にとらえた上で判断されるべきものではないかと。したがいまして、今この立場では、今どっちというのはなかなか難しいかなというふうに思っております。
○草川昭三君 少し嫌みのある質問でございましたので、ですけれども、御関心のほどは実は一番深い問題ではなかろうかと思ってあえて質問をしたわけであります。
 組織というものは個人の集合体だと思うんです。研究を行う主体は組織ではなくて個人の方々の創造性が発展をして研究成果になっていくのではないだろうかと、私は素人ですけれども思うわけであります。研究評価における個人と組織の関係についてどのようにお考えになっておられるのか。先ほど河村副大臣の方からも御答弁があったんですが、いま少しお答えを願いたいと思うんです。
 また、大学の経営状況というものも一つ評価の中に入れるべきではないだろうか。あるいは、教育研究面とともに業績全体を総合評価する、そして予算配分にそれが反映をしていく。これらをどのように連携をしていくのかということが非常に関係者には模索をしておみえになるんではないだろうかと思うんです。そういう点で、先行事例である諸外国における大学評価をやっている国々があるわけでございますが、少し事例をお示ししていただきたい、このように思うわけです。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 最初に、外国の事例につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
 イギリスでございますけれども、ここは準政府機関である高等教育財政カウンシル、HEFCEと言っておるようでございますが、ここが大学の研究面を評価しまして、その結果を基に研究資金を配分しているということでございます。その各大学では、所属教員の研究業績に関する資料を学問分野ごとにHEFCEに提出しまして、HEFCEがこの資料を基に大学ごとに七段階で評点を付けて研究資金を傾斜配分しているということのようでございます。大学が提出する研究業績については、どの学問分野を提出するか、どの教員の業績を出すかといったようなことについては大学の判断であると、こうされているようでございます。
 アメリカでございます。アメリカはいろいろでございますけれども、サウスカロライナ州の州立大学での評価ということでございますけれども、その州の審議会が教員の質、授業の質、産学の連携、管理運営の効率、研究資金等々の視点から、大学の業績全体を五段階で評価をして、その結果に応じて予算を増減させて配分しているということのようでございます。
 アメリカでは、州立大学ですと、研究費というのはよそからもらってくると。大体、その運営、教育費を州が支出しているということでございますから、研究の評価というのも、それ自体じゃなくてどれだけ資金を取ってきたかということで評価をしているということのようでございます。
 それから、フランスの国立大学は、教育内容、学生の学習、生活条件の改善、施設整備計画など、大学における教育研究活動全般にわたる活動方針につきまして国と四年間の契約を結びまして、これに基づいて大学運営を行っておりまして、国はそれに必要な財政措置を行っているということのようでございます。四年間の契約期間終了後にその実施状況を国が評価をしまして、次の契約内容及びそれに伴う財政措置に反映をするということでございますが、ただ、その評価結果あるいはどう反映しているかということについては非公表ということで、残念ながらその内容、中身については分かっていないという状況でございます。
 今回の国立大学法人の評価でございますけれども、研究評価における個人と組織の関係につきましては、先ほど副大臣が御答弁を申し上げましたように、研究組織を構成する教員の個別業績を基に、それらを総合した研究水準が中期目標に照らしてどのくらいかといったようなことなど、組織としての中期目標、中期計画の達成状況を評価をするということになると、こう考えておる次第でございます。
 また、評価は、研究面だけではなくて、業務運営や財務内容等を含め、法人としての業務実績全体につきまして総合的に行うものでございまして、評価結果が当該国立大学法人に対する予算措置に適切に反映されるよう、その具体的な在り方につきましては、これからできます国立大学法人評価委員会における検討結果を踏まえて決定をするということにしておりますが、基本的には、評価結果を反映させた次期中期目標、中期計画が策定され、その内容に応じてその業務の確実な実施を担保するための所要の予算措置を講ずるということになるものと考えております。
○草川昭三君 時間がもうあと二、三分しかありませんので、二つ続けて質問しますから、まとめて答えていただきたいんですが。
 一つは、今の答弁にもあります大学法人に配分する資金は、一つは人件費等の運営交付金ですね。それからもう一つは、いわゆる研究費補助金、科研費と言われるものになるんですが、いわゆる競争的研究資金に分類されるわけですが、どうしても若手研究者の、本当に若い芽が出たというような研究は非常に取り上げられないような制度ではないだろうかと私は想像するわけでございますが、法人化後のこの配分について、若手研究者を積極的に支援するような配慮を是非考えてもらいたい、どのようなお考えかというのが一つと。
 それからもう一つは、もうこれは本当に、いわゆる債務の話になりますけれども、大学の附属病院を持つ法人は、この債務を非常に多く抱え込んで承継することになると思うのでございますけれども、ひとつ法人化と同時に引き継ぐ債務の総額は、例えば十四年度末に幾らぐらいになるのか、そしてそれをどのように承継されていくのか。
 その二点を質問して、私、時間が来ましたので、終わりたいと思います。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 私の方から最初に、若手研究者の件についてお答えさせていただきます。
 これまで国立大学におきましては、若手研究者に対しまして、国立学校特別会計におきまして若手教員研究支援経費と、こういうものを計上をしているのが一つございますし、また各大学で学長裁量経費というものがあるわけでございますけれども、それを学長の裁量によりまして若手研究者の支援に充ててきた大学が多かったわけでございます。それからもう一つには、御指摘のように科学研究費補助金等の競争的資金により若手を支援してきたということでございます。
 法人化後の国立大学につきましては、教育研究等の実施における必要な経費としまして、運営交付金を交付するということでございます。運営交付金の算定、積算におきまして、これまでに引き続き若手研究者の独創的、萌芽的研究への支援や、次世代を担う有望な若手研究者への支援など、様々な取組が可能となるよう十分配慮をしていきたいと、こう思っておりますし、あわせて、科学研究費補助金における若手研究者の支援の一層の充実も図っていきたいと、こう思っております。
○政府参考人(玉井日出夫君) 御指摘の十四年度末におきます国立学校特別会計の有する債務、附属病院に限って申し上げますと、附属病院整備に係る長期借入金残高及びこれに係る予定利子額という形になりますが、合計約一兆二千六百億円という形になっております。
 これらの附属病院に係ります債務につきましては、今回、法人化後でございますか、独立行政法人国立大学財務・経営センターに一括して承継させるとともに、関係の国立大学法人、すなわち病院の収入を前提に借り、また病院の施設整備をやってきたものですから、その附属病院を持つ国立大学法人が同センターに対して一定の債務を負担するという仕組みになるわけでございます。
 そして、その償還も、これまでもその病院の収入を前提として着実に償還してきておりまして、平成十三年度でいいますと償還額一千三十億円、平成十四年度でも償還額約一千三十二億円と、着実に償還しているわけでございまして、十四年度末の既存債務だけを見ますと、平成三十九年度で償還するという、そういう予定を立てているわけでございます。もちろん、新たな借入れがあればそれがまた変わってくるわけでございますが、いずれにしても、今までも着実に償還をしてきておりまして、法人化後も当然着実にこれをまた償還していくと、こういうことで、支障のないようにきちんと対応してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
○草川昭三君 以上です。
○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 今日は、国立大学法人関連六法案のこの参議院の委員会での最初の審議の場となるわけですが、たださなければならない問題、本当に山ほどあるわけです。しかし、私は、大学で働いている教職員の皆さん、また学生の皆さんの健康と命にかかわる問題ということで、まず労働安全体制について質問をしたいと思います。
 四年前、一九九九年の日本学術会議の勧告に基づいて、私は当時本委員会で質問をいたしました。そのときの大臣は中曽根文部大臣、今日も委員としてこちらにいらっしゃいますけれども、答弁に立たれまして、「国立学校施設の老朽・狭隘化対策に積極的に取り組むとともに、教育研究の発展充実に資するよう、施設の整備充実に一層努めてまいりたい」と決意表明をなさいました。ところが、それから三年たって昨年の十月に文部科学省が行った実験室等における安全衛生管理に関する調査では、全国百六十九機関のうち、何と九二%の百五十六機関において何らかの改善を要することが確認されました。
 しかし、この問題というのは、もう十年も前から指摘されているわけですね。一九九三年二月の日本学術会議化学研究連絡委員会の報告では、こんなふうに述べております。大規模な火災や地震が起きた場合、避難すら困難であり、このような状態は一刻も放置すべきではない、学生等の居室と実験室との分離が行われていないため、有機溶剤を始めとする危険な薬品のそばで論文の執筆や文献調査が行われている、実験室や廊下に大量の可燃性ガスのボンベが持ち込まれ、その管理状態も十分でなく、安全管理上の常識では考えられない状態である、こういうふうに指摘されているわけです。
 私は、おととい、一番新しいところでということで、東京大学工学部に行って実験室を見せていただきました。そして、十年たった今も、ここで指摘されたようなことがそのままだということを実感したわけです。ただ、廊下は大変きれいに片付けられておりましたので、ここだけは進歩をしたのかなという状況だったわけですね。
 そして、そこで伺ったことは、こういう状態を見て、来る留学生がみんなびっくりする、こういうことなんですね。ですから、世界から見ても異常な状態だと思うわけです。知の拠点だなどと胸を張れる状態ではないわけですね。
 さらに、法人化となりますと、来年の四月から労働安全衛生法の適用となります。労働基準監督署の立入検査や罰則もあります。問題のある施設は使用停止命令ということも受けることになるわけです。
 大臣、大臣はこういう状況はよく御存じのことだというふうに思うわけですけれども、法人化スタートのその時点で労働安全衛生法に違反している、違法状態だ、こういうことでスタートするということは許されないことだと思いますが、どういう御認識でしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) 先生御指摘のように、大学における安全管理は、学生の、学生のみならず教職員等の安全、健康を確保する上で非常に重要なことと認識しております。
 文部科学省といたしましても、その法人化に向けて、労働安全衛生法の適用について問題が生じないように必要な支援を行って万全を期す所存でございます。昨日、文部科学省としての対策を発表したところでございます。
○林紀子君 今、大学、国立大学というのは人事院規則が適用されているわけですね。その責任者というのは、具体的な措置は学長に委任するとされておりますけれども、責任者は文部科学大臣であるわけですね。ですから、大臣の御認識も是非聞かせていただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 現在も人事院規則上で明確に、大学のその教育研究施設は安全、衛生を守らなくてはならないということが明らかにされているわけでございまして、今日でも問題であれば問題なんですね。来年度、十六年度の、十六年の四月から適用される法律が変わってくるということで、危機感を募らせていらっしゃるお気持ちは大変よく分かります。
 そこで、衆議院の委員会でも明確に申し上げたんですが、違法状態を起こさないということで、今、真剣に我が方も大学も取り組み始めておりまして、今、担当の方からお答えいたしましたように、それぞれの大学の個別の細かい計画、それから、それはどれぐらいお金が掛かってどうしていくかということについて、今、詳細な計画、改善計画もでき上がりました。そういうことで、予算上の措置も十分なされる範囲内でございます。
 そのようなことで、私どもとしては、来年度、今回法案を通していただいて、来年度から法人化になりますときには違法状態は起こさせないということでしっかり対応していきたいと思っております。
○林紀子君 今、大臣からお話もありましたけれども、衆議院のところでも大分論議になりまして、しかし、施設改善に幾ら掛かるのかというのは衆議院の場ではその資料も出ないままこちらに送られてきた。そして、昨日、ようやく、「国立大学等における安全衛生管理の改善対策について」というものが出されまして、昨日の午後、私もそれをいただきました。
 それを見ますと、一万三千五百六十二室の改善が必要だというふうになっておりますけれども、これはどういう実験室を対象にしたのでしょうか。文部科学省の調査研究会の報告書でも、化学物質等の使用だけでなく、クレーン、ボイラー、圧力容器、放射線、エックス線検査装置などの作業危険性のある設備についても対応が必要である、こういうふうに言われているわけですけれども、こうしたすべての設備について調査をなさったのでしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) 先生、先ほど御指摘の一万三千五百六十二室、これは昨年十月に調査した結果でございます。今回は、これの改善進捗状況を調査したものでございまして、一部についてはもう既に対応がなされております。
 それで、その対象でございますが、労働安全衛生法に適用を受けると考えられる実験室、これは化学の実験室のみならず、医学、薬学、農学あるいは工学系の実験室についてもその対象としているところでございます。
○林紀子君 この一万三千五百六十二室というふうになっておりますので、そうしますと、実験室の外、それも含めて全部調査をなさったのでしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) この調査は、施設の改善が必要なものということでやっておりますので、室内の実験室が調査対象でございます。
○林紀子君 労働安全衛生法によりましたら、室内のものだけではなくて外にあるものというのもやっぱり対象になるところというのはあると思うんですね。そうすると、これはやっぱり対象としては網羅をしていないということになるのかなというふうに思うわけです。
 そして、この文書によりますと、施設整備の措置を含む改善、九千四百九十六室、先ほど御説明がありましたけれども、所要額は三百六億円であって、そして、「既に配分されている予算で対応できない部分については、追加配分を行う。」ということも書いてありますので、これは、予算、追加配分をするということですね。
○政府参考人(萩原久和君) そのとおりでございます。
○林紀子君 それに関連してなんですが、これは十六日、報道によりますと十六日付けで安全衛生管理対策実施状況調査を、緊急依頼を全国の大学にしたと。その際に、追加財政支援はないという前提で、学長裁量経費、競争的研究資金の間接経費、それに営繕費が考えられるが、こういうものを総動員して、何が何でも今年度中にこの安全衛生対策やれというようなお話が全国の経理部課長会議ですね、そこでお話があったということで、これを聞いて、全国の大学では、それは大変だと右往左往しているという話も聞いているんですが、それじゃ、これは間違いであると。そのことをきちんと全国の大学にも早く言っていただかないと、本当に混乱状態ますます拍車を掛けるんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) 御指摘の経理部課長会議でございますけれども、ここで文部科学省として申し上げましたのは、各大学が新しい追加財政を期待して、それを待ってからやるんではなくて、速やかに、まあこれは今年度中にその対応をする必要はあるわけでございますから、早急に必要な改善を行っていただきたいという趣旨で申し上げたわけでございます。
 施設に関する予算は、今年度、施設費及び大学に配分しています営繕費等ございますので、まずそれで対応するということが大事ということを経理部課長会議で力説したものでございます。
 それで、調査した結果、やはり今配分しているお金では大学、足らないということでございまして、それについては更に、今年度予算まだ配分していないものがございますので、そういったもので十分対応していけるということでございます。それが追加配分ということでございます。
○林紀子君 そこで、お聞きしたいんですが、この所要額三百六億円、この金額はどういうふうにして計算をなさったのでしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) これは、大学の改善計画に基づいて見積もられたものを集計したものでございます。でありますから、言ってみれば大学の要望額ということになるかと思います。
○林紀子君 それがちょっと私の認識と違うんですけれども。
 おととい、東京大学の工学部に行きました。そして、直接お話を伺ったところでは、どのくらいの金額になるか、その工学部だけでもなかなか見当が付かないんだというお話だったんですね。
 東大の工学部で見当が付かないのに、各大学から金額を聞いて積み上げたと、そこが矛盾するんじゃないか、どういうふうになっているのかと思うんですが、どうですか。
○政府参考人(萩原久和君) 施設の改善に要する費用は、これは専門的な知識あるいは技術が必要でございまして、大学の中には施設部あるいは施設課というのがございます。そこに専門集団がおりまして、東大におきましては施設部というのがございます。そこで、先生方のお話を聞き、そしてそれが幾ら掛かるかということを専門的に見積もって、工学部のみならず全学の集計をして文部省の方に報告していただいたと。各大学の報告を集計したのが三百六億円という見積額、総計でございます。
○林紀子君 専門集団、施設部の専門集団というのがいらっしゃるということなんですけれども、これも東京大学の工学部でじかに伺ったお話というのは、労働安全衛生法の内容というのは大変細かくなっていると、そして各研究室で一体どこが問題なのか、ほとんど見当が付かないと言うんですね。ですから、この教室は問題だろうというのは分かるから、先ほど出てきました一万三千五百六十二室というのは、学校ごとにそういう、この教室は問題だよというのが出てくるんだと思うんですが、それでは、その教室の中のどこが問題なのかというのは、そこにいらっしゃる方たちも、なかなか労働安全衛生法と引き比べてどうかというのが分からない。だから、労働安全コンサルタントに相談をしなくちゃいけない。それだけでも二千万円のお金が、委託料というのが掛かるということなんですが、その労働安全コンサルタントに来月に診断をお願いして、そしてこれから改善計画を作って予算要求をしていくんだというお話だったんですよ。そうすると、この積み上げて集計した三百六億円というのがどうも揺らいでしまうわけなんですね。
 じゃ、東大というのはこの三百六億円から外れているんでしょうか、入っていないんでしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) コンサルタント、その専門のコンサルタントがあるということは認識をしております。一部の大学においてはもう既にコンサルタントに診断をお願いして、それに基づいて出しているところもありますし、中にはこれからというところもあるようには聞いております。
 東京大学の場合、先生方、ユーザーである先生方が規則に違反しているかどうか分からないということはないと私は考えております。人事院規則も労働安全衛生規則も、規則についてはほぼ同じものでございます、罰則規定が多少違うとは聞いていますが。ですから、ユーザーである先生方はそれを認識して実験室を使っていらっしゃる。
 ですから、今回の調査も、こういう化学物質、こういう装置があるところについて調べてくださいという調査を掛けておりますので、現場については、その実験室が人事院規則あるいは労働安全規則に適合しているかどうかということは分かっていらっしゃると思います。
 ただ、その積算については各大学が事務局の方で積算しておりますので、そこの数字を我々は合計して今回三百六億円としたところでございます。
○林紀子君 そうしますと、東大からは事務局から聞いたということなんですね。事務局長さん、事務長さんとおっしゃるんでしょうか、その方から報告が来たということなんでしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) 事務局の方で各部局のものをまとめて文部科学省の方に報告していただいたということでございます。
○林紀子君 ですから、じゃ事務局と工学部、東大の工学部というのは一番労働安全衛生法に引っ掛かるといいますか、そういう化学物質なども一杯使っているわけですよね。そういうところとは、じゃ連絡がないかもしれないと、なくても事務局が言ってきたことを、はいはいそうですかといってメモにして全部積み上げた、こういう話になるんでしょうか。
○政府参考人(萩原久和君) 先生方はどこが問題かは認識していらっしゃると思います。それが幾ら掛かるかというのは、なかなか研究者の方は分からないと。ですから、そういう問題点は事務局の施設の方と先生方と打ち合わして、それじゃそれなら幾ら掛かるということをはじいている、事務局ではじいていると思います。
 ですから、分からないというのは、先生方分からないというのは、幾ら掛かるかがまだ聞いていないということであって、何が問題かは、これ先生方、十分認識されていると思います。
○林紀子君 事務局と現場の先生たちと、一番実験などをしている先生たちと連絡をして幾らというのが分かるんでしたら、何も二千万円も使ってコンサルタントなんて入れる必要ないわけですよ。だけれども、工学部の先生たちは、やっぱりコンサルタントにきちんと見積もってもらわなくちゃそのお金が出てこないと言っているんですね。出てこないと言っているのに出ているというところが不思議でしようがないわけなんですね。
 それじゃ、各大学や機関ごとの金額、積み上げた額でしたら、それは分かるわけですね。東大というのは全部で幾らだったわけですか。
○政府参考人(萩原久和君) 東京大学でございますが、所要額は二十七億八千四百万円というふうになっております。
○林紀子君 東大、二十七億八千万円。これじゃやっぱり絶対にできないと思うんですよ。ですから、現場の先生たちは言って分かるというお話、今ありました。
 そこでお聞きしたんですけれども、東京大学の工学部で配付されている資料の中には、化学実験でできた有毒ガスを排気するためのドラフトチャンバー、実際見てまいりました。壁際などにあって、その中で実験をして、そして有毒な空気を吸い上げて外に出すという装置ですね。そういうドラフトチャンバーとか、有害物質を除去して外気に出すための、スクラバーと言うんだそうですね、除去装置が、ダクトの中間なんでしょうか入口なんでしょうか、あって、それを出す。そういう装置だけで、やっぱり東大工学部だけで十七億円ぐらいは掛かるんじゃないかというふうに言っているということなんですね。これは工学部だけです。
 これとは別に、まだ実験室と、先ほど御紹介しましたように、実験室と教室を分けるための部屋の改造もしなくちゃいけない、それから出入口の確保もしなくちゃいけない。一つしか出入口がないと、もしそこで何か出火などをしたら、大変可燃物や何かが充満しているその教室から出られなくなるから、少なくとも二つは出入口がなくちゃいけないということもきちんと規定されているということですけれども、それもしなくちゃいけない。緊急シャワーとかガスボンベを実験室の外に置くための措置など、本当に多額の費用が掛かる、十七億円以外にそれだけ掛かる。それで、東京大学は、工学部だけではなくて、医学部もあれば理学部、農学部、薬学部、附置研究所、十以上の部局が対象になっているわけですね。ですから、こういうことで、正にこれは類推になるわけですけれども、推計して考えてみると数十億円から百億円近く掛かるんじゃないかと思われるわけですね。
 ですから、東京大学だけでも二十七億八千万円じゃ到底足らない、全体でも三百六億円で済むなどというのは正に机上の計算、事務局とやり取りして、大体そんなくらいだろうなというので書いた数字を積み上げただけ、そういうことなんじゃないですか。
○政府参考人(萩原久和君) 先生方とそれから事務局は十分な連絡を取ってやっているものと聞いております。
 改善経費の額の問題ですけれども、老朽・狭隘ということがあります。それは緊急整備五か年計画でやっているわけですが、その緊急整備の老朽・狭隘がこの労働安全衛生法の問題にもかかわってくるわけでございますけれども、多額の費用の掛かる増築や改修、こういったものは五か年計画で着実に行っているわけで、今回の対象としていますのは、今年度、労働安全衛生法に抵触しないようにするためのものを計上しているわけでございまして、しかも問題ある実験室、一万三千と言っておりますが、これらも施設の整備を伴わないで、点検、整理整とんをしたり、あるいは実験室の使い方の見直し、こういうことも併せて解決を図るということにしております。
 昨日発表しました対策の中で、調査研究協力者会議の報告書も付いておりますが、その中にもそういったソフト、ハード併せて対応していかないと労働安全衛生法に対応できないというようなことも述べられておりますが、それらを総合的にやっていくという上で必要最小限といいますか、今年度中にやるべき施設整備が三百六億円という合計になっているということでございます。
○林紀子君 ですから、私も、建物そのものを建て替えなくちゃいけない、建て替えないと労働安全衛生法の基準に達しないというところもあるわけですけれども、そこを言わなくても、先ほど言いましたようにドラフトチャンバーとかスクラバーだとか、それからガスボンベを外に出すとか、緊急シャワーだとか、そういうことだけで十七億円が最低掛かって、もっとそれに積み重なるんだということを言っていますので、私も、ですから老朽・狭隘というのはそれとは別だというふうに考えているんです。それでもこうなんですよね。
 そしてもう一つ、東京大学だけではなくて、私のところにもう一つ資料があるんですが、この資料によりますと、京都大学です、京都大学では、七月三十一日までに予算の見積りをまとめるというやはり資料があるわけなんですね。七月三十一日までにこの資料をまとめなさいと、こんなふうにちゃんと表まで作って、こういうふうに書きなさいよというので、全部京都大学のそれぞれの学部に回しているというんです。
 そうしますと、七月三十一日というのはまだ来ていないわけですからね。先ほどと同じように、やっぱりこれも実際の見積りじゃなくて、非常にあやふやな、非常に不十分な、そういう数字が、電話でお聞きになったのかどうか分かりませんけれども、そういうところで来て、それを集計した、そういう話なんじゃないですか。
○政府参考人(萩原久和君) 東京大学の工学部が幾らかということはちょっと今認識していないわけでありますけれども、また京都大学については、我々つかんでおります数字では、十八億二千五百万という数字でございます。
 その個々の先生おっしゃいました東大工学部の数字ということは、内容は分かりかねるわけでございますが、詳細の内容につきましては、その各大学の事務局、先生方と十分打ち合わせて、責任を持って文部省に提出しているものと認識しております。
○林紀子君 私は、ですから、昨日資料を出すということで、それを待って、それを見て一生懸命考えたわけですよ。それでもどうも話が合わない。
 大臣、東では東大が、西では京大が、それぞれまだちゃんとした見積りも出ておりません、これからですと言っているのにこういう数字が出てきた。こんなおかしい話、正に大変いい加減な数字で私たちがこの論議をするというのはどう考えてもおかしいと思うんですけれども、どうですか。大臣もこれ、本当におかしいと思いませんか。
○国務大臣(遠山敦子君) 委員は大学側のどこにお聞きになったんでしょうか。
 私どもは、大学の学内についてしっかり責任を持って、学内の安全衛生の基準に合うようにということで見積りもし、そして将来計画も立てている部局と連携を取ってやっているわけでございます。
 所要額につきましては、各大学の改善計画に基づく見積額を集計したものでありまして、もちろん今後、執行に当たりましては、各大学と協議の上に適切に対応していくものでございます。そういう性格のものでございます。
○林紀子君 私は、おととい、三時から四時までの間、東京大学工学部五号館、化学実験室、研究室、三百一号室から四百四十七号室まで、一、二、三、四、五、六、七、八つの実験室を拝見いたしました。そこで労働安全衛生法にかかわって今までいろいろやっていらっしゃる先生を中心にお話を聞いたものです。ですから、工学部の問題につきましては非常に一番よく分かっている、そういう先生から直接お話を聞いてこういう状況になっているわけです。
 ですから、今、大臣は責任のある大学の担当のところから聞いたと言いますけれども、しかしその責任ある担当というのがその先ちっともパイプが通っていないじゃないですか。それでどうしてちゃんとした数字だなんというのが言えるんですか。これは本当におかしい話だと思うんですよ。
 私たちは、だから、本当にきちんとした数字で、そして本当に来年の四月の一日に労働安全衛生法違反じゃないところでスタートできるのかどうか真剣に考えているのに、どこから聞いてきたんですかなんて、そういうのは大変失礼な話じゃないかと思いますけれども、やっぱり大臣、おかしいですよ。
○政府参考人(萩原久和君) 昨日発表しました対策の中にフォローアップという項目がございまして、三か月ごとに、九月、十二月、それから三月とフォローアップしていくつもりでございます。
 ですから、もし大学の方に漏れというか不備がありましたら、その時点で訂正し、それは、今回の調査に入っていないからやらなくていいというものではございません。それは必要なものは是非やるということで、適切に対応していきたいというふうに考えております。
○林紀子君 そうです。私たちがちゃんと論議をするのは、きちんとした資料に基づいてじゃなければ私たちの論議だって非常に不正確になるわけじゃないですか。もう一度ちゃんと正しい数字を出してください。どうですか。
○政府参考人(萩原久和君) 今回、時間的には短時間でございましたけれども、精一杯やったつもりでございますし、この調査については正しいものが出てきているものと認識しております。
○林紀子君 確かに、現場でやっていらっしゃる方はもう徹夜徹夜続きでやった。昨日も本当にもう大変な、血の気のうせたようなお顔で持ってきていただいて、本当にそれは御苦労さまと私も申し上げたんですけれども。そもそもの数字が違っている。そもそもの大学との関係が違っているんですからね。そこは幾ら一生懸命やっていただいても、その虚偽の上に組み立てたものをまた私たちの方に出てくるわけですから。そういうことは、本当に国会の審議というのをどれほどきちんと考えていらっしゃるかということだと思うんです。
 そして、大臣、もう一つ言いたいことがあるんですけれども、といいますのは、京都大学では更に大変なことに、大臣は四月一日、何とか違反状態なしにスタートしたいということを先ほどおっしゃいましたけれども、この京都大学で各学部に回っているものなんですけれども、これは先ほど七月三十一日までにですから提出をしてくださいということと同時に、年次計画の策定という、そういう文書が回っていて、そういう表を出しなさいということも回っているわけなんですね。労働安全衛生法の運用に伴う実験室改善年次概算金額というのを年次を追って出しなさい、そういうことを言っているわけなんですね。
 これはAランク、Bランク、Cランクというふうに分けてありまして、Aランクは、現状では使用に耐えられず、かつ運用では対応できないものなんだと、Bランクというのは、改修工事があったらそのとき対応すればいいと、Cランクというのは、当面使用はできるけれども、本来は対応しなければいけない不可欠なものなんだという注釈も加えながら、このランクA、ランクB、ランクCでそれぞれ表を出しなさい、こういうことになっているんですが、これを見て私もびっくりいたしましたが、ランクAの今は使用ができないものについてどうして改善するかといったら、十四年度にはこれこれやりました、十五年度にはこれぐらいの予算でこうやります、十六年度にはこうやります。Bランクでは、平成十七年度から取り掛かって、十八年度以降にやります。Cランクでは十八年度以降にやります。これ、年次を追って書きなさいとなっているんですよ。そうしますと、年次を追ってということは、今年度じゅうということはできないということじゃないですか。こういうことがあるんですね。
 大臣、どうしてこれで四月一日に労働安全衛生法に違反しないように全部やれるんですか、スタートできるんですか。
○政府参考人(萩原久和君) さっきの答弁と重なるかも分かりませんが、年次計画でやっていくのは老朽・狭隘対策でございます。これはもう既にやっているところでございます。
 労働安全衛生法に関するものは、これは今年度中になるべく早い時期にやるということでございますので、その辺が混乱しているのかと思いますが、ちょっと私その資料見ておりませんので。
○林紀子君 ですから、私もこれは先ほどおっしゃったように老朽していたり狭隘なものを年次を追ってやるのかなと思ったんですけれども、よくよく見たら、労働安全衛生法の運用に伴う実験室改善年次概算金額というのを出しなさいというんですから、これはどうしても労働安全衛生法に引っ掛かってくるものじゃないですか。
 大臣、これじゃ四月一日、無理なんじゃないですか。そしたらもう凍結しなければいけないと思いますよ。凍結するべきじゃないですか。
○政府参考人(萩原久和君) 繰り返しになりますが、今回のこの計画は、昨年十二月に文部科学省から発出しました通知書に基づきまして、そのときに改善計画を立てて着手してくださいということを通知をしているわけですが、これに基づいて各大学が今までやってきたものについてその進捗状況を調べたものでございまして、そういう、信頼できる調査になっていると考えております。
○林紀子君 もう私は時間がなくなりましたけれども、信頼できるものというふうなお話ですけれども、どう見てもこれは本当に机上の空論、信頼できないものだということになると思いますし、来年の四月一日にはこれがスタートできないという、そういう本当に資料になっているわけですよ。ですから、もう一度きちんとした金額が幾らになるのか、本当に四月一日からそれでスタートできるのか、そういうものを出し直してください。
 今日はこれで質問を終わりますけれども、また次、ほかの問題も含めまして質問をさせていただきます。
○西岡武夫君 文部科学大臣に御質問申し上げます前に、委員長と与党の皆様方にお願いを申し上げます。
 これだけ、これまでの各委員の御議論を承っておりましても、また衆議院での審議の状況等々も報告を受けておりますけれども、これだけ大きな問題でございますから、基本的な理念、そしてそれをめぐる周辺の問題、そして更に逐条の審議まで含めますと、かなりの時間が、審議の時間が必要だろうと思います。
 その点におきまして、委員長におかれては、十分この法案について、日本にとって将来を左右する大変大きな問題でございますので、十分な審議時間をお取りいただくように御配慮をいただきたい、まずお願いを申し上げます。いかがでしょうか。
○委員長(大野つや子君) ただいまの御意見、確かに大変重要な問題であるということでございますので、十分な審議を尽くすように理事会でも諮っていきたいと思っております。
○西岡武夫君 ありがとうございます。
 文部科学大臣に御質問を申し上げます。
 先ほど、大臣の御答弁の中にもございましたけれども、大臣はかねがね国立大学に法人格を与えるということは一つの考え方だったということをおっしゃっておられたんですけれども、これは法人化することが正しいと、そういう前提のお考えだったんでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 国立大学、私は日本の大学群の中で中核的な役割を果たしている存在だと思いますけれども、大学人自らも、現在の状況における国立大学については様々な制約があって十分ではないということで、殊に行政組織の一部としての存在ということに伴う様々な制約、人事権あるいは会計上の制約等々ある、それでは十分に自主性、自律性が発揮できないという、そういう自覚があり、かつまた、大学審議会等様々な場でもそれが討議されてまいったわけでございます。
 では、そういう問題を解決するのに、日本の国内法の中で、しかも国が責任を持って国家の意思として国立大学として存置をし、かつまた財政上の支援もしていくということになると、これは私といたしましては、法人化といいますか、今回の国立大学法人という形で制度化するというのが最も状況に適した適切な対応であるというふうに考えております。
○西岡武夫君 それでは、大臣がお考えの法人格が望ましいというときの大学教官及び職員の皆さん方の身分は国家公務員であってはならないというお考えでしたか。
○国務大臣(遠山敦子君) 身分の問題は、かなり私はこれは論議がなされたと思います。様々な論議がなされた上で、やはり今日の国家行政組織の一部としての機構、組織の存在、それから人事院規則等の通常の国家公務員に伴う様々な規制といいますか縛りというものがあっては濶達な研究活動、教育活動、さらには社会貢献、兼職・兼業もできない等のことがあって、さらには今日では産学官連携のこともございますし、さらには私は、もっと大学というものは、例えば給与の格付、給与の、給与費の定め方においてももっと自主性があっていいと思います。例えば、トップクラスの世界の研究者を持ってきて、それに対して年俸で多額の報酬を考えるということも現在では全く不可能なわけですね。
 しかし、これからの日本の大学というものがより世界に羽ばたくあるいは国際的な競争力を持つという観点からは、そういったことも可能にならなくてはならないわけでございまして、そのようなことを様々に勘案をして、私は、今回、大学人の方からむしろ非公務員型がいいというふうな提案があったというふうに考えております。
 その非公務員型のメリット、せっかくでございますから具体的に申し上げますと、例えば、優れた研究者を給与法の体系によらず柔軟に処遇できること、また、外部の優れた研究者を年俸制で短期間招請することが可能であること、サバティカルリーブ等の弾力的な勤務時間管理の導入が可能であること、兼職・兼業が各法人の判断で弾力的に許可することができること、あるいは国家公務員試験によらずに各大学の人事戦略に基づいて専門性を重視した事務職員等の採用が可能になること、大学の実態に合わせた多様な職種の設定が可能になることなどなどでございます。
 そのようなことから、私は、大学人の英知を集めて検討いただきました「新しい「国立大学法人」像について」の報告書におきましても、国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議において非公務員型というものを結論付けられたというふうに考えております。
○西岡武夫君 大臣は心ならずも今のような答弁をなさっているんだろうと思いますから、余り大臣をいじめたくないんですけれども、大体今回のこの法案提出というのは、元々は国家公務員を削減すると、その計画に文部省もやり玉に上がったと。
 ですから、次から次へと国家公務員を削減するといいましても、特殊法人の看板を書き換えただけの独立行政法人という形で、文部省のこれまでの国立博物館を始めとするいろいろな組織をすべて独立行政法人にして国家公務員から外してしまったと。そして、最後のとりでとしてあった国立大学も国家公務員を削減するという目的で独立行政法人化されるということを、こういう法案にいろいろ書いてありますけれども、結局は、最終的には独立行政法人の通則法の規定の適用というものもちゃんと付いているわけですから、形は独立行政法人ではないとおっしゃっているけれども、実際は独立行政法人の傘の下にあるという形で、国家公務員の定員を削減するという小泉政権下における考え方に国立大学をのせてしまったと、こう申し上げていいと思うんですが、いかがですか。
○副大臣(河村建夫君) 私どもも最初にこの話を聞いたときに、まず行政改革、特にこの国立大学の法人化、あるいは元々の独立行政法人に当たるその設計というものがまだはっきりしていなかった。そういう意味で、当初、有馬委員も冒頭の質問で我々反対だったということでございました。
 先ほど、草川委員の説明の経緯の中でも私、御説明申し上げたんですが、やはりこれは大学改革という視点でないと我々は受け入れるわけにいかないんだということで、そういう方向で議論をしていったわけでございます。そして、閣議において、平成十四年、独立行政法人というのは何たるものだということがまだあの当時は我々も分からなかった。イギリスのエージェンシーというものらしいという程度のことでありまして、イギリスにも視察等を出したりなんかしながらいろんな話を聞いていって、やっぱりこれは、その手法というのはこれからの時代に必要なものであろうけれども、まず大学改革だということからいこうということになって、これは政府としても、平成十一年四月の閣議決定において、国立大学の法人化については、行政改革の観点よりも、むしろ大学の自主性を尊重しながら、大学改革の一環として検討をしたい、すべきであるという閣議決定を得て、これを受けて初めて国大協も、そういう視点ということであれば我々も協議しようということでスタートして今日に至っていると、こういうことでありますから、行政改革で国家公務員を減らすための犠牲にこれがなったということは、私は、スタートはいろいろな、ともかくこれは国立大学ではなくて、国家公務員を削減という方針は小渕内閣のときに多く出ました。
 その中の一つにこれが上がってきたことは我々は承知いたしておりますが、それ以外にも、大学改革の観点で考えたときに、我々記憶に新しいのは、例えばあの一橋の先生がどこかの取締役になろうとしたけれども国家公務員法があってできないんだというような話も一つの話題になったりいたしましたけれども、もっとこれ、大学がダイナミックに変わっていく一つの手段として考えていこうというのが最終的なこうした大学協会等々で議論をされて、おおむね我々としてはこれを受け入れようということになったと、こういうことであるというふうに思っております。
○西岡武夫君 私は、かつて人確法、いわゆる人確法という法律を立案し、提案し、立法化した経験があるわけでございますけれども、その際に、教育研究について一般の、一般職の公務員の皆さん方と同じ身分といいましょうか、この公務員という形ではなくて教育研究職という新しい国家公務員の、給与体系にしても身分にしても、そういうものを作って、そして今、副大臣からお話がありましたように、いろいろなところとの人事交流等もできるというような、そういう第三の身分といいましょうか、そういうものも大分人事院とも話をし、提案をしたことございますけれども、私、微力にして実現することができませんでした。
 今、副大臣のお話ございましたけれども、じゃ、なぜ国家公務員のまま今の法人化ができなかったんですか。
○政府参考人(玉井日出夫君) ちょっと御説明を、恐縮でございますが……
○西岡武夫君 いや、大臣。いや、大臣。
○国務大臣(遠山敦子君) 委員長の指名ですから。
○政府参考人(玉井日出夫君) 新たな身分、一つの大変示唆に富む御提案と受け止めているわけでございますが、なかなか公務員制度全体の中での難しさがあるのは、もうこれは西岡先生よく御存じのとおりでございます。教員の特性にかんがみ、教特法の世界でそれぞれ特例は設けておりますけれども、やはり何といっても公務員という大枠の中でございまして、その中に全く違った形まで持っていくのは大変難しいということがございます。
 一方、今のこの時代、世界の中で我が国の大学がそれぞれ伍していかねばならない、あるいは地域貢献を更に図っていく、そういう中で、それぞれどういうふうに考えたらいいかという中から、今、教職員の自律性を高めるための人事の在り方というのが国立大学関係者始めいろんな方々からの御議論があり、そして先ほど大臣、副大臣御説明いたしましたとおり、お答え申し上げたとおり、これはそれぞれの調査検討会議の中でかなりいろんな角度から御議論がなされて、その結果、やはり非公務員型という形でより自律性、主体性を高め、それによって教職員のより自由な様々な活動が行われ、それが結果として大学としての活性化を図っていこうと、こういう流れがあったわけでございます。
○西岡武夫君 大臣にお尋ねをいたします。
 当初は、文部科学省は、法人化した場合も大学人の身分は国家公務員であることが望ましいとお考えになっておられたと思いますけれども、違いますか。
○国務大臣(遠山敦子君) それはどの時点のことであるのか分かりませんが、少なくとも私自身は、身分の在り方については広く議論をした上で考えるべしと思っておりました。
 そのことに関しまして幅広い論議がありまして、恐らく私は大学人の中でもいろんな考えがあったものと思います。しかし、そのメリットという点から考えて、恐らく非公務員型の方が様々な自由、自主性がある。
 先ほど、もう本当にさきの文部大臣でございますので、私としては大変もう答弁は今日しにくいのでございますけれども、西岡委員がおっしゃいましたような新たな教育研究職ですか、そういうものも作ってみようというほどに、やはりそれはそこの大学を担う教員の持つ独自性なり、自由活発な学問研究に基づく優れた教育を展開していくという通常の、私どものような事務職、私もかつてそうであったわけでございますが、とは違った機能を持つ存在というものが更に本来のあるべき機能を発揮していただくには、一般の国家公務員という枠内にとどまるよりは非公務員型の方がいいというのが、私は多くの比較検討の後に大学人が選ぼうとした方途であるというふうに考えております。
 そういう意味で、私は、この問題について様々な議論があり得たと思いますけれども、今日この法案でお願いしておりますものは、今回の法人化の目的を達成するために、その身分も非公務員型であるということにおいて、よりその目的に合致するというふうに考えているところでございます。
○西岡武夫君 大臣にお尋ねをいたします。
 その御議論の過程の中で、先ほど私が申し上げました教育研究職という第三の身分というものを公務員として考えると、そういう議論はありませんでしたか。
○国務大臣(遠山敦子君) これはむしろ歴代の文部大臣であられた中曽根委員やあるいは有馬委員の方が御存じかもしれませんけれども、私はそれが正式の課題として関係者によって論議されたということは残念ながら記憶にないところでございまして、私は一つの大変示唆に富む御提案とは受け止めますけれども、公務員制度全体の中では極めて難しい問題があるということは先生も御承知のとおりでございます。
○西岡武夫君 大臣にお尋ねいたしますが、教育と研究、学問の研究という、これを構成する一番大切な要素というのは何とお考えですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 教育、そして研究をつかさどるといいますか、それに携わる人そのものであると思います。
○西岡武夫君 その教育と学問の研究というこの分野について、私どもが一番大切にしなければいけないのは人材だと思います。そして、その人材の蓄積ということが大きな我が国にとっても財産であると思います。その人材の身分というものをこういう形でぱっと変えて非公務員型がいいんだということにされるということについては、どういう御感想をお持ちでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、そこのところが正に大学人たちを中心にする調査検討会議で真剣に検討されたと思っております。
 正に教育、研究を担う最も大切な要素である人、その教員、まあ職員も入りますけれども、今の議論の場合には教授等の教員というふうに考えた方がいいと思いますけれども、そういう人の身分の在り方というものが、やはりこれまで様々に議論されてきた法人化への転換という機に当たって、より活発に本来の使命、本来の機能を発揮していただくという点で、非公務員型の方がいいということで私は結論付けられたと思っております。
 非公務員型でありまして、民間人ではないわけでございます。それは、また詳細は担当の方から御説明したいと思いますけれども、民間人ではないわけでございまして、非公務員型、それは大学の組織の中でしっかりと国の運営交付金というもので支給される給与というものをベースに活動を展開できるという存在であるわけでございます。
○西岡武夫君 大臣にお尋ねをいたします。
 今回のこの国立大学法人の内容でございますけれども、この役員会と経営協議会と教育研究評議会という三本立てのような形になっています。もちろん、執行機関というのは役員会だろうと思いますけれども、経営協議会と教育研究評議会との関係というのは、場合によっては相反する、意見が異なる場合が、場合によってはではなくて多々あるのではないかと私は思います。
 なぜそういうことを申し上げるかといいますと、元々、特に基礎研究については、先ほど来、有馬委員からも御指摘があったように、非常に大切なことでありまして、このことを一般企業の経営的な感覚で考えていこうということになりますととんでもないことに私はなると思うんです。こういう組織の在り方と、これについて当然、国立大学法人でございますから、今度は財務監査についてもかなり厳しい監査をしていかなきゃいけないという仕組みになっているわけで、監査法人が監査するのか公認会計士が監査するのか知りませんけれども、そういう仕組みの中で正に、直ちに評価されない、結果を生まないという、そういう学問分野というものがおろそかにされるというおそれはないのか。
 この点について、大臣、どのように御認識か、お伺いいたします。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、基礎研究というものを大事にしていくという意味で一番大事なのは、もちろん憲法上の学問の自由という精神に基づいてすべての人がそのことを尊重していく。国は文部科学省が直接の責任を持つものとして、その研究の自由というのを守っていくというのが一番ベースにあると思いますけれども、研究テーマを選んだり、あるいは研究組織をどうしていくかということは学内では大変大事だと思います。それは、法人化してもそれは全く変わらなくて、むしろ研究テーマはもちろんその研究者が自ら選び、そしてそれについての自らのプランの下に科学研究費を取るなり、いろんな方途によって遂行していくんだと思いますが、研究組織などは、私は、むしろこれまでよりは法人化によって、先ほど来様々に御説明いたしておりますように、学内において自由にできるようになるんですね。ですから、これは、これまでは本当に文部科学省の組織の一部でございましたから、もうすべてのあらゆる細々とした、組織を改編するについてもすべて我々と財務省とも御相談いただいてやってまいったわけでございますが、これは全体の運営交付金の中で弾力的に運用できるわけでございます。
 その意味で、私は、研究テーマはもちろん自由に選べるわけでございますし、それを実施するための研究組織もより弾力的になるという意味で、私は、法人化によって、むしろ基礎研究というものをその大学がしっかりと支えるつもりになればこれは私は十分に対応できるようになると思いますし、正にそのこと自体が大学の本来の在り方であるというふうに考えております。
○西岡武夫君 私がお尋ねしておりますのは、大学の経営ということと基礎的な研究というものは概念としても余り両立をしないと思うんです。ですから、学長になられる方も、経営感覚が非常にあって、俗で言う商売上手の方が学問的な実績、業績というのをどれくらいお持ちなのかということを考えますと、どういう方が学長に選ばれてくるのかなということを、これから先どうなるのかなと、この法案が通りせばですね、どうなるのかということを私は心配するんです。
 私は、やっぱり一般的な経営感覚というものももちろん大学の運営については求められますけれども、どちらを大切にするかということについては、これまでの国立大学にいろいろ問題点はあったと思いますけれども、そういう点では学問ということに専念をするという意味で大きな意味を今日まで持ってきたと思います。
 私は、たまたまこの文教委員会に籍を置くようになりましたのが、あの昭和四十四年をピークといたします大学紛争のとき以来でございまして、そのときの大学の自治というものの在り方というのは、極端なことを申しますと、大学の中で殺人が行われても大学の自治の名の下に警察権は介入できないという、そういうすさまじい状況が現にありました。その中で、この大学紛争を何とか収束させなければいけないということで私どもが文教委員会に配属されまして、それから文部行政についていささか今日までいろいろと意見を申し上げ、法案も立案をしてきたわけでございますけれども。
 その私の経験からいたしましても、今回のこの国立大学法人の法案の内容は余りにも文部大臣に権限が集中しているのではないかと。私が言うんですから。大学紛争のときは、本当に大学の自治というのはこんなものなのかと思うくらいの経験をしたわけであります。その私の立場で考えても、今回のこの法案、これ逐条でお話をしたいんですけれども時間がありませんからできませんけれども、今日はできませんが、文部大臣が結局は何でもかんでも決められるような感じになっていると私は思うんです。現に、学長の選考会議というのがありますね。ここに学長が入っているのはどういうことですか。いや、大臣ですよ。
○政府参考人(遠藤純一郎君) 法人化後の学長選考は、その職務の重要性を踏まえたふさわしい仕組みが必要であるということで、教学及び経営の双方の側面から学内の意向を反映させるということで、学外者の意向を反映させることを考慮しまして、経営協議会の学外委員の代表者と、学長、役員以外の教育研究評議会の代表者から成る学長選考会において選考を行うと、こういう仕組みとするものでございます。
 その上で、大学によっては、例えば各国立大学法人の規定等で再任が認められておらず、現在の学長が学長選考において当事者にならない場合などもあり得るということもございますので、学長選考会議の定めるところによりまして、学長又は理事を加え得ると、いろんなパターンができるというような柔軟な仕組みとさせていただいたところでございます。「ただし、その数は、学長選考会議の委員の総数の三分の一を超えてはならない。」ということとしておりまして、そういった面での配慮も併せて規定しているところでございます。
○西岡武夫君 大臣にお尋ねをいたします。
 今、局長からの御答弁ですけれども、学長選考会議の構成メンバーに学長が入っているというのは、大臣はどうお考えですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 現在の規定におきましても、学長の選考は評議会が行うわけでございますけれども、評議会の必要的な構成員に学長はなっておりまして、その学長が選考に加わることは法令上禁止されていないところでございまして、各大学が大学の選考会議におきましてそれぞれの判断において学長を加えるという場合には加えるということもあり得てよろしいんではないでしょうか。
○西岡武夫君 経営協議会と教育研究評議会とが意見の対立があった場合に、これはどういうふうになるんでしょうか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、それぞれの大学において良識ある人々が選ばれて、経営協議会あるいは教育研究評議会の構成が決まるわけでございまして、そこでの論議そのものは合意形成が可能なものであろうとは思いますけれども、仮にその二つの評議会なり協議会において意見が合致しない場合には、それは最終決定は役員会の議を経て学長が行うわけでございます。
 私は、恐らく今、委員が想定されますことは、教育研究という角度から、特に研究のような場合に、最近では例えば素粒子の研究にしたって大変多額の設備費、研究費が掛かるわけでございまして、限られた運営費の中ではそれが優先されると他のものが圧迫されるとか、様々なそういう議論があって、ではその教育研究評議会の方ではともかく出してみようと。しかし、それは経営協議会の方では、これは法人の一定の運営交付金等の手配の中でどうかということで、マネジメントの観点からそれなりに意見調整が行われる必要があると思います。そのときに、やはり役員会において議論をされて最終的に学長が決めるということになると、そういう仕組みになっているわけでございます。
 その意味で、私は、マネジメントというのはこれからの組織体、特に法人化するような場合には不可欠なものでございます。しかし、それは株式会社のような利益追求のための組織とは違うわけでございまして、正に教育研究の質の向上というものをねらいとする、そういう大学におけるマネジメントということはまた別途の、何といいますか、能力というものが要ると思います。
 その意味で、学長は、学長の資質というものが大変大事になるということは確かでございますけれども、私は、それぞれ大学内においてそうした問題をどのように解決していくかということは十分に議論をし、対応できる問題でありますし、またそのような形で各大学が法人化する際に自らの意思決定というものをしっかりしていく、そういう存在になってくれるものと思っているところでございます。
○西岡武夫君 大臣にお尋ねをいたします。
 もう時間がほとんどありませんので、私はこの法案には反対であります。反対でありますが、こういう国立大学法人化をやるにしても、なぜ文部省は、国立大学機構を一つの法人として作って、そしてそこが大学を設置するということをお考えにならなかったんですか。
 私は、なぜそれを申し上げるかといいますと、私が政務次官のころでございますが、昭和四十六年ごろ、国立学校庁というのを文部省に、当時の文部省に作って、そこが国立大学を監督するという形が望ましいのではないかということを申し上げたことがあります。かつてです。
 そういうことから考えますと、こんなに国立大学の法人を一つ一つ全部法人化するというよりも、一つの法人を作ってそこが国立大学を設置するということにはなぜならなかったんですか。
○国務大臣(遠山敦子君) 私は、西岡委員が現職であられますころお仕えいたしましたときに、様々な大学の問題について理想をお持ちになり、いろんな、何といいますか、構想をお持ちだったということを思い出します。しかし、そういう、しかしかなり独自性のおありになる構想でございまして、なかなか全体の動きにはならなかったということも確かでございます。
 今のお話でございますけれども、国立大学機構というものが八十九の大学を設置するようにしたらどうかということでございますが、今回の法案は、本当に成り立ちといいますか、私どものねらいというものは大学としての自主性、自律性を確立するという観点でございまして、それは、大学ごとに法人化をして、国立大学が切磋琢磨しながら特色ある多様な教育研究を展開するということを目指しているわけでございます。
 国立大学機構法人、機構方式というふうに仮に言わせていただきますと、これは言わば形を変えた護送船団方式でございまして、各大学の自主性、自律性を拡大することには必ずしもつながらないというふうに考えます。
○西岡武夫君 終わります。
○委員長(大野つや子君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十一分散会