第156回国会 本会議 第26号
平成十五年五月二十三日(金曜日)
   午前十時一分開議
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○議事日程 第二十六号
  平成十五年五月二十三日
   午前十時開議
 第一 個人情報の保護に関する法律案(内閣提
  出、衆議院送付)
 第二 行政機関の保有する個人情報の保護に関
  する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第三 独立行政法人等の保有する個人情報の保
  護に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第四 情報公開・個人情報保護審査会設置法案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第五 行政機関の保有する個人情報の保護に関
  する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に
  関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第六 著作権法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
 第七 自動車安全運転センター法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第八 証券取引法等の一部を改正する法律案(
  内閣提出、衆議院送付)
 第九 電気通信事業法及び日本電信電話株式会
  社等に関する法律の一部を改正する法律案(
  内閣提出)
 第一〇 林業経営の改善等に必要な資金の融通
  の円滑化のための林業改善資金助成法等の一
  部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付
  )
 第一一 森林法の一部を改正する法律案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第一二 食品衛生法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第一三 健康増進法の一部を改正する法律案(
  内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
 一、国立大学法人法案、独立行政法人国立高等
  専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・
  学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財
  務・経営センター法案、独立行政法人メディ
  ア教育開発センター法案及び国立大学法人法
  等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法
  律案(趣旨説明)
 一、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運
  営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等
  に関する法律の一部を改正する法律案(趣旨
  説明)
 以下 議事日程のとおり


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○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、以上六案について提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。遠山文部科学大臣。
   〔国務大臣遠山敦子君登壇、拍手〕
○国務大臣(遠山敦子君) このたび政府から提出いたしました国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 知の時代とも言われる二十一世紀にあっては、知の拠点としての大学が学問や文化の継承と創造を通じ社会に貢献していくことが大きく期待されております。
 今回提出いたしました国立大学法人法案等の六法案は、このような状況を踏まえ、現在、国の機関として位置付けられている国立大学や国立高等専門学校等を法人化し、自律的な環境の下で国立大学をより活性化し、優れた教育や特色ある研究に積極的に取り組む、より個性豊かな魅力ある国立大学を実現することをねらいとするものであります。
 次に、法律案の内容の概要について順次御説明申し上げます。
 初めに、国立大学法人法案についてであります。
 この法律案は、国立大学法人及び大学共同利用機関法人の組織及び運営について、次のような事項を定めるものであります。
 第一に、国立大学法人及び大学共同利用機関法人は、それぞれ国立大学法人法案の定めるところにより設立される法人とし、その名称及び各国立大学法人が設置する国立大学について定めております。
 第二に、国立大学法人等の業務に関して評価するための国立大学法人評価委員会の設置について定めております。
 第三に、国立大学法人に役員として学長、理事及び監事を置き、予算など重要事項については学長及び理事で構成される役員会の議を経て学長が決定することとしております。また、審議機関として経営協議会及び教育研究評議会を設置するとともに、役員や経営協議会の委員に学外有識者を迎えることにより、民間的な発想を取り入れつつ、学長を中心とした国立大学法人の経営体制の確立を図ることとしております。
 第四に、文部科学大臣による国立大学法人の学長の任免や中期目標の策定等については、大学の自主性に配慮した仕組みを定めております。
 第五に、国立大学法人の業務の範囲について定めるとともに、財務及び会計に関する規定を置き、併せて独立行政法人通則法の規定を必要に応じ準用することとしております。
 第六に、大学共同利用機関法人についても、国立大学法人と同様に、組織、業務及びその自主性に配慮した仕組み等を定めております。
 第七に、国立大学から国立大学法人への事業の承継に伴う権利義務の承継その他所要の経過措置等に関する事項を定めるとともに、この法律の施行期日を平成十五年十月一日とし、また、国立大学法人等の設立の期日は平成十六年四月一日としております。
 次に、独立行政法人国立高等専門学校機構法案においては、五年制の高等教育機関である国立高等専門学校を設置する独立行政法人国立高等専門学校機構について、その名称、目的、業務の範囲等に関する事項や役員について定めるとともに、各国立高等専門学校の名称及び位置を規定しております。
 また、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案及び独立行政法人メディア教育開発センター法案は、大学評価や学位授与、財務・経営、メディア教育のそれぞれの観点から大学等を支援する業務を行う三機関を独立行政法人化するため、その名称、目的、業務の範囲等に関する事項や役員について定めるものであります。
 これらの機構及びセンターにつきましては、国立大学法人等と同様に、その設立の期日は平成十六年四月一日としております。
 なお、国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、国立大学法人法等の施行に伴い、国立学校設置法及び国立学校特別会計法の廃止を行うとともに、学校教育法外五十二本の関係法律について所要の改正を行うものであります。
 以上が国立大学法人法案等の六法案の趣旨でございます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。岩本司君。
   〔岩本司君登壇、拍手〕
○岩本司君 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となりました国立大学法人法案関連六法案につきまして、文部科学大臣及び財務大臣に質問をさせていただきます。
 日本で帝国大学令が公布されましたのが明治十九年、そして現在の国立大学を規定する国立学校設置法が定められましたのが昭和二十四年であります。このたび政府から提出されております国立大学法人法案は、我が国の国立大学の在り方を抜本的に転換する内容の、正に五十年、いや百年に一度の大改革法案であると言っても過言ではありません。
 遠山文部科学大臣は、その提案理由におきまして、自律的な環境の下で国立大学をより活性化し、優れた教育や特色ある研究に積極的に取り組む個性豊かな魅力ある国立大学を育てると述べられました。大学改革の本質は、教育研究の自由と大学の自治を最大限認め、関係者の自発性、自立性を引き出す環境づくりを進めることにあり、大臣の述べられました提案理由は政府の姿勢を鮮やかにうたい上げた言葉として高く評価するものであります。
 しかし、法案内容をつぶさに検討するに、その内容は、このすばらしい提案趣旨を具現したものであるどころか、これまで国立大学に対して行われてきた以上に国の関与を深め、各大学の主体的な発展を阻害し、ひいては我が国の高等教育の将来を危うい方向へ導くおそれがあり、このままでは国立大学改悪法案であると言わざるを得ません。
 私たち民主党は、現在、国の組織の一部と位置付けられております国立大学について、従来どおりの形態を維持し続けるべきとは到底考えておりません。むしろ、改革の必要性を大いに認め、国の組織から切り離して各大学の一つ一つに法人格を与えるという基本的スキームは評価する立場ではありますが、しかし、そうであるからこそ、具体的な改革の手法や、そこから導き出される方向性については政府案のそれとは異なるものであるべきと確信いたしております。
 現在、八十九あります国立大学は、東京大学や一橋大学などのように広く名前を知られた総合大学ばかりではありません。北は北海道大学から南は琉球大学まで、その所在は全国各地に及んでおり、さらには工業大学、教育大学、医科大学、畜産大学、体育大学、芸術大学など、その専門とする分野も様々に及んでおります。得意とする個別研究テーマも、学生の規模も、積み重ねてきた歴史も、これから目指そうとする方向も、一つ一つの大学が他のどの大学とも違う全く独自のものを持ち合わせているという事実がございます。
 政府から提案されております国立大学法人法案では、第三十条において、教育研究の質の向上、業務運営の改善及び効率化、財務内容の改善などのそれぞれについて、これを六年間のうちに国立大学法人が達成すべき中期目標として定めることとしておりますが、その六年間の各大学の運営方針の骨格ともなる中期目標を定めるのはだれかといえば、これを文部科学大臣が定め、当該国立大学法人に示すこととしております。
 国立大学を国の組織から切り離し、提案理由にありますように、自律的な環境の下で個性豊かな魅力ある国立大学を育てるのではなかったのでしょうか。
 各大学の主体的な発展を期待することにこそ改革のコンセプトを置くべきであり、さらには各々の大学が目指すべき将来の姿を最も的確かつ意欲を持って策定できるのは各大学自体にほかならないことを思えば、文部科学大臣が、しかも財務大臣との事前協議の上、中期目標を定めるなどとする根拠は極めて薄く、正に大学の自治の根幹にかかわる問題と考えられます。
 文部科学大臣には、中期目標を各大学が策定するとした場合にどのような問題が生じるとお考えなのか、財務大臣には、中期目標を定める際のこの事前協議の必要性について、それぞれお伺いいたします。
 次に、国立大学法人に対する評価についてお尋ねします。
 政府案においては、国立大学法人等の評価に関する事務等をつかさどるため、文部科学省に国立大学法人評価委員会を置くとともに、評価の際には独立行政法人大学評価・学位授与機構が行う教育研究評価の結果を尊重する、さらに総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の関与も記されております。
 評価の在り方については、今回の改革において最も重要かつ困難な課題を含んでいるのは論をまたないところであります。さきに述べましたように、それぞれの国立大学においては全く独自の歴史とまた資産、未来の方向性を志向しており、中期目標の在り方と同じように、それに対する評価手法や基準についても全く一律というわけには到底まいりません。さらには、その評価結果が各法人に対する運営費交付金の算定に反映されるとあっては、明確かつ透明性ある基準、そして十分な説明責任を果たすよう求められることも言うまでもありません。
 私たちは、こうした極めて困難な作業が予想されるからこそ、評価が文部科学省に置かれる国立大学法人評価委員会や独立行政法人大学評価・学位授与機構といった言わば官の視点によって行われることを強く危惧いたしております。
 その理由は、評価の技術や透明性の観点からばかりではありません。中期目標を策定するのが文部科学大臣であり、そして、それに対してどれだけ近づいたのか、実績を上げられたのかを評価するのがまた官によって行われるとあっては、正に入口と出口を官が握ったままの国立大学法人化であり、百年に一度の大学改革と言うには極めて不十分なものと言わざるを得ないのであります。
 私たちは、国立大学の評価に当たっては、有識者の知見はもとより、大学関係者、学生、学会、経済界、各地域、あるいは国際的観点など、様々な立場からの多元的な視点が導入されることが不可欠であり、そうして初めて各大学の強みを生かした自律的な発展につながるものと考えております。文部科学大臣に、そうした多元的な視点による評価の重要性をどのようにお考えかお尋ねするとともに、文部科学大臣と財務大臣の両大臣に、政府案による評価のスキームを一体どのように運営費交付金の算定につなげるお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
 最後に、一人の人物を御紹介し、私の質問を終わります。
 スイスの貧しい田舎町で、はだしの子供たちが遊んでおりました。その近くで一人の老人が、何か物を拾ってはポケットに入れ、何か拾ってはポケットに入れて、にこにこ笑って子供たちのそばに立っておりました。警察官が何やら怪しい人物だと思い、その老人をつかまえて、おい、今何を拾ったんだ、拾ったものは交番に届けることになっているのを知らないのか、怪しいやつだ、職権によって何であるか調べると、いきなり老人のポケットに手を突っ込みました。ポケットから出てきたのは警察官が思ってもいないものでした。それはガラスのかけらでした。道で遊ぶ子供たちがけがをするかもしれないからと、子供たちをそばで見守っていたわけです。この老人こそ、後世になって世界の教育者と呼ばれるスイスのペスタロッチであります。
 足りない私を始め、すべての大人がペスタロッチのようにすべての子供たちを温かく見守り、また、文部科学省もこういう姿勢で、国立大学の改革はもとより、教育行政を行っていくべきであると強く申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣遠山敦子君登壇、拍手〕
○国務大臣(遠山敦子君) 岩本司議員にお答えいたします。
 まず、中期目標を大学が策定することとした場合の問題点についてのお尋ねでございますが、今回の法案は、大学の活性を図るため、国による財政措置を前提としつつ、国立大学を独立した法人とすることにより、各大学の運営上の裁量を大幅に拡大するものであります。
 その上で、さらに、中期目標を大学が策定する仕組みとすることは、高等教育全体の在り方、あるいは財政上の観点等を踏まえた国の責任ある対応という観点から問題があると考えております。
 なお、中期目標を定めるに当たりましては、あらかじめ大学の意見を聴き、その意見に配慮する旨を明確に定めておりますなど、大学の自主性を十分に踏まえることとしております。
 次に、多元的な視点による評価の重要性についてのお尋ねでございますが、国立大学法人の評価に際しては多元的な視点による評価が重要でございまして、国立大学法人評価委員会の委員には、社会、経済、文化等の幅広い分野から高い識見を有する方々を選任することや、評価に学生の声を反映させることも必要であると考えております。
 最後に、法案に定める評価のスキームをどのように運営費交付金の算定につなげていくのかというお尋ねでございますが、その基本的な在り方については、今後、国立大学法人評価委員会における検討結果を踏まえて決定することとしておりますが、基本的には、評価結果を踏まえて次期の中期目標、中期計画が策定され、これを受けて次期目標、計画期間中の運営費交付金措置を講じることになります。
 その際、例えば、地域貢献活動や国際交流の推進など、大学の教育研究活動を奨励する経費として一定額を運営費交付金の中に算定することなどもあり得るものと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣塩川正十郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(塩川正十郎君) 私に対するお尋ねは、国立大学法人の中期目標の中になぜ事前協議しなきゃならぬかということでございますが、この中期目標を策定いたします場合に、財務内容の改善に関する事項というのがございまして、具体的に申しますと、この法人の自己収入の目標を立てること並びに経費抑制の目標を立てること等について協議をすることになっておりますので、この規定があるという次第であります。
 それから、もう一つお尋ねの件は、国立大学法人等の評価に係る運営費交付金の算定についてのお尋ねでございますが、国立大学法人の評価結果につきましては、競争的環境の確立、各大学の個性ある発展を促進する観点から、運営費交付金の算定に反映されるべきであると考えておりますが、このような観点から、次期以降の、次以降の中期目標期間の運営費交付金の算定に当たっては、各大学ごとの中期目標の達成度や、あるいはまた分野別の研究業務等の水準等に応じまして運営経費の交付金を措置するということになっておりますので、協議するということになっておりますので、御承知いただきたいと存じます。(拍手)
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○議長(倉田寛之君) 畑野君枝君。
   〔畑野君枝君登壇、拍手〕
○畑野君枝君 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法案など関連六法案について質問いたします。
 我が国の高等教育の将来にかかわる重大な法案であるにもかかわらず、この六法案は、衆議院では二日間の参考人質疑を入れてわずか五日間、十三時間余りの審議で本院に送られてきたものであります。百年に一度の大改革が百年に一度の大失敗になってしまうのではないかという声まで出されています。二院制の中の一院たる参議院が果たすべき役割は、将来に禍根を残さないよう徹底審議を行うことにあります。
 そこで、以下、文部科学大臣に具体的にお尋ねします。
 第一に、憲法の学問の自由に根本から反して、大学の中期目標を文部科学大臣が定めるという問題です。
 法案は、文部科学大臣は六年間において各国立大学法人等が達成すべき業務運営に関する目標を中期目標として定め、その内容に教育研究の質の向上を始めとする事項を掲げています。遠山文部科学大臣は、衆議院で、大学の教育研究は大学が自主的に決定した方針に基づいて行われることが主要な点として学問の自由が守られ大学の自治につながると答弁されています。大学が自主的に決定するというのなら、どうして文部科学大臣が教育研究を始めとする大学の中期目標を定める必要があるのですか。学問の自由を守るということに反するではありませんか。明確にお答えください。
 そもそも、大学の目標を文部科学大臣など政府の閣僚が定めるような大学制度はほかの先進諸国にはありません。日本でも、これまで国立大学の学問研究の内容や計画を政府が一方的に定めたことはないと遠山大臣が答弁したように、大学の目標を大臣が決めるなどという異常な法案は今回が初めてです。
 文部科学省は、国が責任を持って予算措置を行うものだから中期目標の策定など国の一定の関与は必要だと言いますが、これまで、国立大学については、国が予算措置をしていても教育研究の目標は大学が自主的に決めていたではありませんか。今なぜ中期目標を文部科学大臣が定め、関与することが必要となったのですか。納得のいく答弁を求めるものです。
 さらに、重要なのは、この中期目標を達成するために、国立大学法人は中期計画を作成し、文部科学大臣の認可を受けるとしていることです。中期計画は、少人数教育や対話型・双方向的授業を展開するなど、教育の内容や方法など具体的なものです。なぜそこまで文部科学大臣の認可を受けなければならないのですか。お答えください。
 この中期計画を実施する上で不適当となったときは、大臣が法人に中期計画を変更するよう命ずることができるとしています。しかも、大臣の命令に従わなかった場合は、役員は二十万円以下の過料という罰を受けることになっています。これでは、教育と研究が政府の不当な支配に屈服する体制になるのではありませんか。教育研究活動を罰則でもって命令に従わせる制度のどこに自主性、自律性があるのですか。答弁を求めます。
 第二に、文部科学省や総務省の中に評価機関が設置され、その評価による予算配分や廃止、民営化を含めた措置などが取られることで国の統制が強められるという問題です。
 文部科学省内に設置される国立大学評価委員会の事務局は文部科学省が担当すると言われています。委員会のメンバーや評価の内容などは政令で定めるとして、明らかにされていません。この委員会の評価が予算配分やその後の廃止、民営化を含めた措置につながるのです。国立大学評価委員会の構成とともに、どのように評価するのか、その内容と基準など具体的に明らかにすべきです。衆議院では、参考人から、研究評価がいかに難しいか、軽々しくやると国を滅ぼすという危惧が表明されたではありませんか。答弁を求めます。
 文部省と総務省に設置される評価委員会による二重の評価が行われます。その評価に基づいて国が予算配分を行うことは、政府の進める重点分野の研究などに拍車が掛かり、長期的視野に立って行われる基礎研究がなおざりにされ、学問研究を衰退させることになるのではありませんか。ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊名誉教授は、採算に結び付かない基礎科学が冷や飯を食うと語っているではありませんか。答弁を求めます。
 その上、六年ごとの評価に基づいて大学の廃止、民営化について文部科学大臣が決めるのですか。大学の生殺与奪まで文部科学大臣が握るなどということでは、大臣の言う学問の自由、大学の自治の尊重は偽りだということになるではありませんか。答弁を求めます。
 第三に、国が立てる目標を忠実に実行できるように、学長の専決体制をつくり、学外者の権限を極端に肥大化させるという問題です。
 学長選考会議のメンバーは、学長が任命する学外有識者が二分の一参加するとされています。スモン病や水俣病、枯れ葉剤などの研究が産業界から圧力を受けたことがありますが、そういう不当な介入が行われない保障があるのでしょうか。
 学長のリコールなど、大学構成員による学長へのチェック体制もありません。結局、文部科学大臣が学長の任命権と解任権を持ち、国の立てる目標を忠実に実行させる体制にしようということではありませんか。答弁を求めます。
 第四に、労働安全衛生法や労働基準法などの遵守にかかわる問題です。
 国立大学法人化で教職員が非公務員化され、これまでの人事院規則に代わって労働安全衛生法や労働基準法が適用されることになります。文部科学省の調査では、今回対象とされている機関の九二%に当たる百五十六機関で問題点を抱え、労働安全衛生法上、労働者の生命と安全を守る国の基準を満たさず、このままでは法人化イコール法律違反という事態に直面するのです。これまで国が当然行わなければならなかった条件整備への予算措置を行わず、放置してきた文部科学大臣の責任は重大です。法人化をして国の責任を法人に転嫁することは到底許されるものではありません。
 法人化しようという二〇〇四年四月一日の段階で、労基法や労働安全衛生法には違反はしないと断言できますか。違法状態をなくすために一体幾ら掛かるのか。改善箇所数とその予算額を具体的にお示しください。併せてお聞きします。
 第五に、学費など国民負担が増えるという問題です。
 この法律では国立大学の設置者を国立大学法人としているため、財政上の責任を国から法人に転嫁しています。これまでも授業料、入学金は相次ぐ値上げで世界一になっていますが、衆議院で、大臣は、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するという国立大学の役割というものは法人化によっても変わるものではないと答弁されています。
 学費は学ぶ学生にとって切実な問題です。学費について、学部間やロースクール・法科大学院など専門職大学院も含め格差を付けるべきではありません。学生の負担にならないよう改善することが必要ではありませんか。答弁を求めます。
 本法案は、国立高等専門学校の独立行政法人化の問題を始め、六法案全体の徹底審議が求められています。また、法案の内容が明らかになるにつれ、相次いで教授会の批判的決議が上げられています。国立大学協会の総会での法案への合意も得られていません。
 学問の自由にかかわって、憲法制定当時、金森徳次郎国務大臣は、学問を止めて人類の完成というものがどうしてできるであろうか、その芽を摘むようなことは、たとい一時の国家の方便から行ってよろしくても悪くても、そこに手を付けてはいかぬと答弁しました。人類にとって学問がどれほど大切か、国家がいかに学問に介入してはならないかを当時の国務大臣が明確に述べたものです。
 本法案は我が国の高等教育機関の発展と国民の教育権を危うくするものです。このような憲法に反する欠陥法案は廃案にすべきだということを強く主張して、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣遠山敦子君登壇、拍手〕
○国務大臣(遠山敦子君) 畑野君枝議員から十一点について御質問がございましたが、六つの項目に整理してお答えをいたします。
 初めに、中期目標についてのお尋ねでありますが、国立大学の法人化は、国の財政措置を前提としつつ、日常的な規制を撤廃し、各大学の裁量を大幅に拡大し、大学の活性化を図るものであります。
 このように、大学の裁量を拡大する中で、国が財政措置等の面で責任ある対応をするためには、中期目標など運営の基本方針に限定して一定の関与が必要であります。その際、中期目標は、大臣が一方的に定めるのではなく、あらかじめ大学の意見を聴いて、それに配慮することなどを規定することにより、大学の自主性、自律性を十分担保する内容となっております。
 次に、中期計画についてのお尋ねでありますが、中期計画は中期目標の実現を図るために各大学の責任で作成されるものでありますが、その実施を確実なものとするため、財政措置の責務を負う文部科学大臣の認可を受けることとしたものであります。また、中期計画の変更命令は、予測し難い事情の変化など真にやむを得ない場合にのみ行われるものでありまして、大学の自主性、自律性を損なうことはないと考えております。
 また、評価に関してのお尋ねでございますが、評価委員会の委員については、社会、経済、文化等の幅広い分野から選任することを考えており、評価基準については、中期目標、中期計画の達成状況を評価するとの観点から、評価委員会で検討するものと考えております。予算配分については、法人化後も基礎研究がおろそかになることがないよう、大学側の意見を十分尊重して対処してまいります。
 また、評価に基づく廃止等については、大学の置かれている状況等を十分勘案の上、最終的には国会で慎重な御審議をいただいて決定されるものであると考えております。
 さらに、学外者の参加や大臣による学長の任命、解任権についてのお尋ねでありますが、法人化後の学長は学内者と学外有識者が協力して選ぶ仕組みとなります。その学外有識者についても、学長が学内の代表者の意見を聴いて任命する仕組みとしております。したがって、学長の専決体制であるとか学外者による不当な介入といった御指摘は全く当たらないものと考えます。
 また、国立大学法人への労働基準法、労働安全衛生法の適用についてのお尋ねでありますが、法人化後はこれらの法令に適合することが必要であり、御指摘の点については、現在、安全衛生管理等に関し改善を要する事項についての調査を実施し、改善の具体案を検討しているところであり、これを踏まえ法人化への諸準備が円滑に進むよう必要な支援を行ってまいります。
 最後に、学費についてのお尋ねでありますが、法人化後の授業料は各国立大学法人が定めることとなりますが、国として必要な財源措置を講ずることや授業料設定の指標となる標準額と範囲を示すことなどにより、適切なものとなるよう努めてまいります。
 以上でございます。(拍手)
○議長(倉田寛之君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) この際、日程に追加して、
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。坂口厚生労働大臣。
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂口力君) 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 厳しい雇用失業情勢や働き方の多様化等が進む中で、労働力需給のミスマッチを解消し、多様なニーズにこたえていくためには、公共及び民間の労働力需給調整機関がそれぞれの特性を生かし、労働市場においてより積極的な役割を果たしていくことが必要であります。
 このため、職業紹介事業や労働者派遣事業が労働力需給の迅速、円滑かつ的確な結合を促進することができるよう、求職者の保護や派遣労働者の雇用の安定等に配慮しつつ、これらの事業に係る制度の整備等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明を申し上げます。
 第一は、職業安定法の一部改正であります。
 まず、無料職業紹介事業について、地方公共団体が住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に附帯して行う場合及び特別の法律により設立された一定の法人がその構成員を対象として行う場合には、届出制により実施することができることとしております。
 次に、職業紹介事業の許可等の手続について、事業所単位から事業主単位に簡素化することとしております。
 このほか、兼業禁止の廃止や委託募集の許可制の見直し等を行うこととしております。
 第二は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正であります。
 まず、派遣期間について、その上限を一年から三年に延長し、一年を超える派遣期間とする場合には、派遣先はその事業所の過半数を代表する労働者等に通知し、意見を聴くものとしております。
 また、派遣先が期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合及び期間に制限がない業務に三年を超えて同一の労働者を受け入れている場合において新しく労働者を雇い入れようとするときには、その派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならないこととしております。
 次に、物の製造の業務について労働者派遣事業を行うことができることとし、この法律の施行後三年間は派遣期間の上限を一年とすることとしております。
 このほか、紹介予定派遣について派遣労働者の就業条件の整備等を行うとともに、労働者派遣事業の許可等の手続について事業所単位から事業主単位に簡素化すること等としております。
 最後に、この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上がこの法律の趣旨でございますので、よろしく御審議を賜りますようお願いを申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。山本孝史君。
   〔山本孝史君登壇、拍手〕
○山本孝史君 民主党・新緑風会の山本孝史です。
 ただいま議題となりました法律案について、会派を代表して質問いたします。
 本題に入ります前に、SARS対策について御質問をさせていただきたいと思います。
 小泉内閣が発足をして二年が過ぎました。私は、小泉内閣は何かやってくれているようでその実何もしてくれていない内閣、小泉総理は悲劇の予告編ばかり連続して見せる映画館の映像技師だと思っています。
 緊急事態法制が審議されていますが、肝心の国民保護法制は後回しです。りそな銀行の国有化は、金融危機に対しては国民の税金を投入して当面の最悪事態は回避するけれども、肝心の経済・金融政策は無策であることを改めて示しました。
 また、BSE問題や牛肉偽装事件では、政府には、情報を早期に把握し的確に分析した上で国民に正確な情報を適時に開示するなど、適切な対応策を講ずる責務があったにもかかわらず、極めて心もとない状況に終始をしました。
 そして、観光で来日した台湾の医師がSARSに感染していた問題でも同じ過ちが繰り返されたのです。SARS感染者の日本国内への入国に対する十分なマニュアルを準備していなかった政府の姿勢は批判を免れません。そんな政府に日本周辺における軍事的有事に迅速かつ的確に対応できるはずがありません。
 あらゆる事態を想定して、必要な対策を即座に講じられるように準備しておくのが有事への対応ではないでしょうか。民主党は、あらゆる有事への対応を常日ごろから検討しておくために、危機管理庁を設置すべきであると改めて主張します。
 SARSへの政府等の対策において反省すべき点は何か。また、今後、地方自治体との連携の下、どのような対応策を整えるのか。今回、営業自粛や風評被害によって非常に大きな損害を被った業者への補償を検討するとの坂口大臣の記者会見での発言、また、日本国内の観光地における香港や台湾からの旅行者の入国を制限しようとする動きへの対応を含めて、坂口厚生労働大臣に答弁を求めます。
 労働者派遣法改正案について質問します。
 厚生労働省は、派遣労働を、労働者にとっては自分の都合に合わせて働ける制度だし、企業にとっては一時的に専門的な人材を補充できるために、双方にメリットのある制度だと繰り返し答弁をしています。私もそのような利点があることは否定をしませんが、だからといって現状のままに派遣労働者が増え続けることをのうてんきに容認することはできません。
 二〇〇二年秋に行われた東京都産業労働局の派遣労働に関する実態調査によれば、派遣労働者の七割がそれまでは正社員が行っていた仕事に正社員に代わって就いて働いています。
 これが現実なのに、厚生労働省は、労働者派遣の期間について制限を設けているので派遣労働者が常用雇用の代替になっていることはないとの答弁を繰り返しています。厳しい現実と厚生労働省の誤った認識とのこの大きな落差は、一体どこから生じているのでしょうか。
 企業にとって、雇用に伴うリスクを最小限に抑えつつ必要な労働力を確保するのに、派遣労働者は非常に使い勝手の良いものです。そのことを裏返せば、派遣労働者は不安定な雇用を強いられやすい立場にあるということです。特に買手市場の現状では、派遣労働者は極めて厳しい状況に置かれています。
 派遣労働についてのルールを強化するなどの労働者保護策が盛り込まれないままに派遣法が本改正案どおりとなれば、更に常用代替が、あるいは反復雇用が進んで不安定労働者が増大するとともに、賃金、労働条件の切下げが一層進むことになるのではないでしょうか。
 派遣労働者が置かれている現状をどのように認識をしているのか、また、今回提出されている法案が成立することで派遣労働者を取り巻く労働環境がどのように改善をされるのか、厚生労働大臣に答弁を求めます。
 そもそも、派遣労働はテンポラリーな、臨時的、一時的な労働力の需給調整策と位置付けられているにもかかわらず、派遣期間の上限を一年から三年に延ばすのは本来の趣旨に反するのではないでしょうか。
 厚生労働省の労働者派遣事業報告によれば、雇用期間は短期化しており、登録型派遣の場合、三か月未満が七一・八%、六か月未満が九〇・五%となっています。このような状態で派遣期間の上限を一年から三年に延ばすことは、都合が良ければ反復して雇用し、不要な派遣はいつでも打ち切ることができる、そんな流れを加速するのではありませんか。政府はどのような予防策を講じる考えですか。
 民主党は、長期にわたる反復雇用は認めるべきではなく、一定の期間を経過したときは期間の定めのない契約とするみなし規定を設けるべきだと考えますが、厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。
 今回、紹介予定派遣が法律上明記され、就業開始前の派遣先における面接や派遣先への履歴書送付が可能となりますが、そのことは派遣先が労働者を選定するものではないという労働者派遣の大前提を崩すものです。派遣事業者間の競争が激しい中、容姿端麗、若い人といった違法な発注が行われています。紹介予定派遣を認めることにより、年齢や性別による差別が強まるのではありませんか。どのような措置を講ずる考えなのか、お示しをください。
 紹介予定派遣は、通常の試用期間ないし見習い期間と同様の趣旨と解されます。長期にわたる紹介予定派遣は、通常の派遣労働と区別がなくなるため、期間を三か月ないし六か月に限るべきではないでしょうか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
 製造業への派遣については禁止とされてきましたが、今回、解禁をされます。請負労働との区別を明確にすることができるとも考えられますが、安全対策は十分なのでしょうか。解禁するというのであれば、有資格者や熟練労働者に限るべきだと考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。
 職業安定法改正案について質問します。
 今回の改正によって、学校については職業紹介を行う対象者の範囲が拡大され、また、地方公共団体も職業紹介ができることになりますが、そのことは、民間企業による職業紹介や職業あっせんの大幅な規制緩和とも考え合わせると、ハローワークの敗北宣言とも受け止められます。今後、国営の公共職業安定所、ハローワークはどのように位置付けられるのか、どのような機能を果たさせるのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。
 職業安定法の改正によって兼業禁止規定が削除され、貸金業者や飲食業者等も職業紹介事業を行うことができるようになりますが、それに伴って不当な職業紹介行為が横行することにはならないのでしょうか、また、そのような事態を防ぐ対策は講じられているのでしょうか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
 提出された法案について質問してまいりましたが、そもそも非正規労働の増加を政府はどのように受け止めているのでしょうか。
 厚生労働省調査によれば、正社員の割合は、昭和六十二年には八四%を占めていたのに、平成十一年には七二・五%まで低下し、パートタイマーや派遣労働者などが急激に増えています。
 今回提出された改正法案は、そうした非正社員化の流れを加速する、あるいは是認する立場で立案されていると私は受け止めていますが、このような非正規雇用の増加傾向は良いことなんでしょうか。企業は人を直接雇用する責任を負うべきではないのでしょうか。非正規雇用の増加が日本社会にどのような影響をもたらすと考えておられるのか、労働者を保護する立場の坂口厚生労働大臣と経済産業活動をつかさどる平沼経済産業大臣にお伺いをします。
 働き方の多様化を推進する、働きやすい環境をつくるとの美名の下に、労働現場における規制緩和を拡大するのであれば、労働者の権利を保護する制度を整備する、特に派遣労働者や短時間労働者が労働条件や待遇において正規労働者との間で不当な差別を受けないよう、職場における均等待遇の原則が確立されているべきだと民主党は考えますが、厚生労働大臣の考えをお聞かせをください。
 企業責任を指摘してきましたが、働く者にも自らの価値を高める努力が今後とも求められます。そして、行政には、働きながら、あるいは休職をして、新たな知識や技能を得ようとする意欲的な勤労者への支援策が求められます。
 民主党は、大学への社会人入学枠の拡大、都心における大学院の開設促進、新知識・技能獲得のための休業制度の整備などが必要と考えますが、遠山文部科学大臣並びに坂口厚生労働大臣の答弁を求めます。
 先日の厚生労働委員会で、私は、坂口大臣に、厚生労働省は働く者の立場に立っているのか、あるいは企業の側に立っているのですかとお尋ねをしました。
 今国会における厚生労働省は、労働基準法を改正して従業員を解雇しやすい状況をつくり出す一方で、雇用保険法を改正して失業者に対する失業給付を大幅に減額をする措置を取りました。そして、派遣労働法の改正によって不安定な短期や臨時の雇用で働く者の増加に拍車を掛けようとしているのです。坂口大臣は、厚生労働省は労使の間に立って調整役を果たしていると答えられましたが、私には企業の代弁者であるように思えてなりません。
 今後、どのような労働政策を選択するのか。それは、将来の日本社会における働く人々の姿をどのように思い描いているのか、これによります。
 民主党は、派遣、パートによる正社員の代替雇用を推進することではなく、均等待遇の原則の下、正社員の就業形態を多様化することで多様な働き方を実現すべきであると考えています。
 坂口厚生労働大臣には、年間総労働時間、退職年齢、転職回数、失業率、女性の就業率、派遣労働者や外国人労働者の割合などを切り口に、この議場におられる皆さんを高校生あるいは大学生だとお考えいただいて、皆さんがこれから学校を卒業した後、社会で働かれているときに、日本人はこういう働き方をこれからするようになるんです、そしてそのために厚生労働省はこういう労働政策を展開していきます、そういうストーリーを是非お聞かせをいただきたいと思います。
 最後に、厚生労働大臣に一言申し上げたい。
 それは、木村義雄厚生労働副大臣への厚生労働関係団体からの不透明な多額の献金についてであります。多くの疑惑が寄せられていますが、坂口厚生労働大臣にもその真相を明らかにする責任があることを指摘するとともに、適切に措置されることを求めて、私の質問を終わります。
 ありがとうございます。(拍手)
   〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂口力君) 山本議員にお答えを申し上げたいと存じます。
 まず、一番最初、本論に入ります前に、SARSの問題をお尋ねをいただきましたので、まずそれにお答えを申し上げたいと思いますが、今回の日本におきます台湾の旅行者の問題につきまして、この中で我々として反省をすべき点も幾つかあるというふうに思っている次第でございます。
 それは、一つは、医療従事者に対する対応ということが十分に私たちの認識の中になかった。医療従事者は、きちんとその役割を果たして、そして行動をしてくれるものというふうに思っておりましたけれども、そうでなかったということでございまして、こうしたことも見直していかなければならないというふうに思っております。
 それから、広域的な対応でございます。今まで、都道府県に対しましては、都道府県にアクションプログラムをつくっていただいて、そして対応をしていただいておりますが、今回のように広域的な行動がされるということになりますと、各都道府県の皆さん方の意見の一致をそれぞれ得ていかなければなりませんので、国の方がもう少し中心になりまして、そして都道府県との対応を考えなければならないということでございます。
 情報と風評被害との問題につきましても、情報を早く国民の皆さん方に提供をしなければならないということと風評被害やプライバシーを守るというところにつきましても、更により具体的なことを考えておかなければならないというふうなことにつきまして、反省点として今整理をいたしているところでございます。
 今回の台湾人医師問題につきまして、厚生労働省内のオペレーションセンターの設置に関しましては、関係府県と緊急合同会議を開催をいたしまして、さらに近畿厚生局に連絡室を設置することによって関係自治体との連携を密にして、国民への情報提供の強化を適切に努めてまいりたいと思います。
 また、検疫体制や情報の伝達等につきまして強化徹底を図ることが重要と考えており、検疫所職員の増員や空港における体温測定の強化、迅速かつ的確な情報収集でありますとか連絡体制の確保に努めているところでございます。
 それから、営業自粛等によります影響につきまして、政策金融機関に相談窓口を設置をし、運転資金の貸付け等、必要な措置を講じたいというふうに思っているところでございます。
 また、外国人旅行者への制限の動きにつきましては、誤った知識に基づく不当な偏見、差別がなくなりますよう、普及啓発活動にも努めてまいりたいと考えているところでございます。
 以上、SARSについて御答弁を申し上げました。
 派遣労働者の置かれております現状、改正法案によります派遣労働者の労働環境の改善についてお尋ねがございました。
 派遣労働者につきましては、必ずしも不安定労働とは言えず、自分の能力やライフスタイルに合った働き方ができるものとして積極的に評価する声もございます。賃金など労働条件につきましても、直接に雇用される労働者に比べまして、一般的に劣っていることは認められますけれども、すべてにそういうことが言えるわけではございません。厳しい雇用情勢の下で、一定の雇用機会を提供するという役割もまた果たしていることもあるというふうに理解をいたしております。
 今回の改正は、派遣労働者の雇用の安定や労働者保護にも必要な配慮をしておりまして、指導監督体制も強化する考えであります。これらによりまして、派遣労働者の労働環境の改善に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
 雇用契約の反復更新についてのお尋ねがございました。
 意図的に短期間の雇用契約を反復更新することは派遣労働者の雇用を不安定にする面もあると考えておりますが、当事者の意思にかかわらず、一定期間を経過したときに期限の定めのない雇用契約とみなすことは適当ではないと考えております。
 厚生労働省としましては、派遣元事業主及び派遣先は労働者派遣契約及び雇用契約の締結に際しまして派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をすることが望ましいと考えておりまして、その旨、指針で明記するなど、必要な対応を考えたいというふうに思っております。
 それから、紹介予定派遣についてのお尋ねがございました。
 紹介予定派遣の対象となります派遣労働者の年齢あるいはまた性別によります差別を防止することは望ましいと考えております。その旨、指針等で明確にしていきたいと考えております。
 また、紹介予定派遣の期間につきましては、余りに長期とすることは好ましくないと考えており、派遣先と派遣労働者がお互いに十分に把握するのに必要な期間、例えば六か月程度を念頭に、今後、必要な点を検討していきたいと考えております。
 物の製造の業務への派遣解禁についてのお尋ねがございました。
 今回の改正により、物の製造の業務について労働者派遣を解禁するに当たりましては、派遣労働者の安定を確保するため、派遣元や派遣先の責任者の職務に安全衛生に関する連絡調整を追加する等の措置を講じることとともに、労働者派遣法の特例による労働安全衛生法等を派遣先に遵守させる取組を強力に進めることといたしております。
 したがいまして、派遣の対象となります労働者を有資格者や熟練労働者に限定するのはなかなか難しいというふうに思っている次第でございます。
 ハローワークの位置付け及び機能についてでございます。
 今回の改正におきまして、厳しい雇用失業情勢の下で、地方公共団体、民間及び国それぞれの特性を生かして、全体として労働力需給調整機能の強化を図ろうというふうに思っております。
 ハローワークの敗北ではないかという御指摘がございましたが、敗北とまでは考えておりませんで、機能分担をしたいというふうに考えているところでございます。
 今後とも、全国的なネットワークを活用しました効率的な職業紹介や雇用保険などの各種事業に全力で取り組み、雇用不安を払拭していきたいと考えているところでございます。
 兼業禁止規定の削除についてのお尋ねがございましたが、兼業禁止規定を廃止するに当たりましては、求職者の保護を図りますため、不適切な職業紹介行為が行われることのないよう、職業紹介事業の許可基準等において必要な対応をしていきたいと考えております。
 非正規労働者の増加についてのお尋ねがございました。
 非正規労働者の増加につきましては、その背景には、経済・産業構造の変化でありますとか価値観の多様化などを反映をいたしまして、企業や労働者の多様な働き方に対するニーズが増大していること、企業における雇用管理を始め社会システムの在り方にも影響を及ぼすものと考えております。
 厚生労働省といたしましては、個々の労働者の方々が多様な就業形態を選択できるとともに、その就業形態にかかわりなく、その能力を有効に発揮できるような環境づくりを進めていくことが重要であると思っておりますし、パートや派遣労働者に対しましても、その働き方等におきまして常用雇用の皆さん方との格差がないように努力をしたいと考えているところでございます。
 派遣労働者や短時間労働者と正社員との均等待遇についてのお尋ねが改めてございました。
 我が国における労働条件決定の仕組みや職種別の賃金が設定されていないこと等を考慮すると、一般的な均等待遇のルールを設けることは我が国の社会的な実態を踏まえたものと言えず、慎重な検討を要する問題と考えております。
 短時間労働者につきましては、正社員との均衡を考慮した処遇の考え方を具体的に示しまして、社会的な浸透、定着を図っていくために必要な措置を講じる考えでございます。
 派遣労働者の福利厚生等の措置につきましては、派遣先の労働者との均衡に配慮をした取扱いが行われますよう、指針等によりまして適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
 労働者の能力開発に関するお尋ねがございました。
 労働者の自発的な能力開発を支援することは、労働移動が増加する中でますます重要になってきているという認識をいたしております。文部科学省とも連携を取りまして、大学、大学院の社会人受入れ枠の拡大を図りますとともに、教育訓練給付制度の対象講座として積極的に指定し、講座受講を支援しているところでございます。
 また、教育訓練休暇につきましては、事業主が労働者の能力開発のために講じる措置として法律で規定するとともに、教育訓練休暇の付与につきまして奨励をする助成を行っているところでございます。今後とも、文部科学省あるいは経済産業省と連携を密にさせていただきたいというふうに思っているところでございます。
 最後に、特に若年労働者、大学生、高校生の問題についてお触れをいただきました。
 私たちも全体のこの失業状況等を見ましたときに、若年者のこの問題につきまして最も大きな問題があるというふうに考えておりまして、特別にこの若年労働者の問題を取り上げて、そしてこれに対応をする措置を講じなければならない、政策立案をしなければならないというふうに考えているところでございまして、経済産業省並びに文部科学省と連携を密にさせていただいているところでございます。(拍手)
   〔国務大臣平沼赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(平沼赳夫君) 山本議員にお答えをさせていただきます。
 非正規雇用の増加による日本の社会への影響についてのお尋ねでございました。
 坂口厚生労働大臣からも御答弁がございましたけれども、日本経済というのは、九〇年代以降、サービス経済化あるいはIT化に伴いまして、組織形態、就業形態の多様化、さらには柔軟化が進展しておりまして、言ってみれば、時間や場所にとらわれない就業形態というのが現実には進行しているのも事実だと思っております。
 このような就業形態の多様化の流れを受けまして、パート労働者や派遣労働者といった非正規労働者が増加をしている、良いか悪いか、こういうお尋ねでございましたけれども、これは、良い悪いということよりも一つの流れである、こういうふうに思っているところであります。
 こうした動きに加えまして、更に今後、個人の価値観の多様化や就業意識の変化が進展すると考えられる中で、就業形態というのを柔軟に選択できるような環境を整備することは社会にとっても個人にとっても重要でありまして、今回の法案はそのような環境の整備に資する内容になっている、このように私どもは考えています。
 経済産業省といたしましても、こうした動きというのは言わば世界的な一つの流れでありまして、今後の日本にとって必要なことは、創業でございますとか、あるいは起業の促進、規制改革の推進等を通じまして雇用の拡大を図って、おっしゃるように正規に就職をする、そういう機会を広げていくということも私どもは重要だと思っていまして、御承知のように、政策的にそのことを重点的にやらせていただいているところでもあります。
 そして、多様な就業形態の下で人材が有効活用されるように、そのための環境整備を図ること、このことにも積極的に取り組んでいかなければならない、このように思っておりまして、私どもといたしましては、そうした施策を通じて、そして正規の雇用、そしてその流れの中でのこういった一つの就業形態、これにも柔軟に対応していくことが現実必要なことだと、このように思っているところでございます。(拍手)
   〔国務大臣遠山敦子君登壇、拍手〕
○国務大臣(遠山敦子君) 山本孝史議員にお答えいたします。
 意欲的な勤労者への支援策として、大学への社会人入学枠の拡大や都心における大学院の開設促進についてのお尋ねでございますが、御指摘のとおり、意欲的な社会人を支援するために、大学院の開設あるいは社会人入学枠の拡大等を行うことは極めて重要と考えております。
 これまでも、各大学の努力により、社会人特別入試の拡大や都心で大学院教育を行うサテライト教室の整備などを進めてきたところでございますが、今後ともこれらを更に充実するとともに、専門職大学院制度の創設やパートタイム学習の制度化など、大学への社会人受入れを積極的に進めてまいります。
 以上でございます。(拍手)
○議長(倉田寛之君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) 日程第一 個人情報の保護に関する法律案
 日程第二 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案
 日程第三 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案
 日程第四 情報公開・個人情報保護審査会設置法案
 日程第五 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上五案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。個人情報の保護に関する特別委員長尾辻秀久君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔尾辻秀久君登壇、拍手〕
○尾辻秀久君 ただいま議題となりました五法律案につきまして、個人情報の保護に関する特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、個人情報の保護に関する法律案は、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念、個人情報の保護に関する施策の基本となる事項、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定めること等により、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護しようとするものであります。
 次に、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案は、個人情報の適正な取扱い、個人情報ファイル簿の作成及び公表、開示、訂正及び利用停止、罰則規定の整備等、行政機関における個人情報の取扱いに関する事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護しようとするものであります。
 次に、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案は、独立行政法人等のうち百三十二法人について、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案に準じた取扱いを定めようとするものであります。
 次に、情報公開・個人情報保護審査会設置法案は、内閣府に設置されている情報公開審査会を改組して情報公開・個人情報保護審査会とし、同審査会において、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案等の規定による不服申立てについても調査審議することとするものであります。
 次に、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、登記簿、特許原簿等、開示又は訂正等について独自の手続が定められている文書に記録されている保有個人情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案第四章の規定の適用を除外する等、関係法律の規定の整備等を行うものであります。
 委員会におきましては、以上五法律案を一括して議題とし、小泉内閣総理大臣、細田国務大臣、片山総務大臣等に対する質疑を行い、また、石破防衛庁長官の出席を求めて防衛庁に対する集中的審議を行い、さらに、警察行政をめぐる件について谷垣国家公安委員会委員長に対して集中的審議を行ったほか、六名の参考人から意見を聴取するなど、八日間にわたり慎重かつ精力的な審査を行いました。
 委員会における主な質疑の内容は、個人情報取扱事業者の範囲、主務大臣の関与の在り方と第三者機関設置の必要性、金融・医療・情報通信分野等における個別法整備の必要性、住民基本台帳法に定める四情報の原則公開の見直し、自衛官募集業務に対する自治体の情報提供の在り方、警察作成とされる個人情報の外部流出問題、個人情報の取扱いに関する苦情処理の窓口機関の整備など多岐にわたっておりますが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 一昨日、質疑を終局しましたところ、民主党・新緑風会、日本共産党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)及び社会民主党・護憲連合を代表して内藤正光委員より五法律案のそれぞれに対し修正案が提出されました。
 個人情報の保護に関する法律案に対する修正案及び情報公開・個人情報保護審査会設置法案に対する修正案は予算を伴うものであるため、国会法第五十七条の三の規定に基づき内閣から意見を聴取しましたところ、内閣としては両修正案に反対である旨の意見が述べられました。
 次いで、討論に入りましたところ、民主党・新緑風会を代表して藤原正司委員より、原案に反対、修正案に賛成、自由民主党・保守新党及び公明党を代表して山本保委員より、原案に賛成、修正案に反対、日本共産党を代表して八田ひろ子委員より、原案に反対、修正案に賛成、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)を代表して森ゆうこ委員より、原案に反対、修正案に賛成、社会民主党・護憲連合を代表して福島瑞穂委員より、原案に反対、修正案に賛成の旨の意見が、それぞれ述べられました。
 次いで、順次採決の結果、内藤正光君提出の修正案はいずれも賛成少数により否決され、五法律案はいずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、個人情報の保護に関する法律案に対して八項目、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案に対して九項目から成る附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) 五案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。内藤正光君。
   〔内藤正光君登壇、拍手〕
○内藤正光君 私は、民主党・新緑風会を代表して、政府提出の個人情報保護関連五法案に反対する立場から討論を行います。
 昨年までに政府が提出した一連の法案は、個人情報取扱事業者に対する主務大臣の権限が強大であり、義務規定の適用除外となる報道の範囲があいまいであるなど、個人情報保護の名の下に官僚が国民を監視し管理しようとする意図が透けて見える一方、膨大な個人情報を取り扱う官僚に対しては非常に甘いものでした。そのため、我々野党四党は一致団結して撤回を求め、廃案に追い込みました。
 政府は、廃案となった旧法案に新たに行政機関に関しては罰則を設け、報道機関等に関しては適用除外とする等の修正を加えた上で、国会に出し直してきました。しかし、官僚による国民管理という思想が依然として背後にある上、官僚自らにはまだまだ甘い法案であることに何ら変わりはありません。
 先日、このことを象徴する事件が発覚いたしました。防衛庁が、自衛官募集のダイレクトメールを送るために、満十八歳を迎える適齢者の情報提供を各市町村に要求し、石川県七尾市が提供した一覧表では、両親の離婚や別居などの家庭環境までもが推測できる内容となっていたのであります。この事件は、行政が自分の情報を勝手に収集、蓄積して活用しているのではないかという国民の不安や不信を更に増幅させました。さらに、武富士をめぐる警察情報の流出疑惑も委員会審議を通じて浮き彫りになりました。行政側の不透明な情報収集やセンシティブ情報の収集を明確に禁ずることのない政府案では、今後、類似の事件が再発しないかという国民の不信や不安を到底払拭することはできません。
 以下、政府案に反対する理由を具体的に申し述べます。
 まず、一般法と行政機関法に共通して言えることとして、自分に関する情報は自らコントロールできるという自己情報コントロール権に関する明確な規定が一切ありません。これでは、個々人の価値観や考え方が多様化している今日、個人情報保護法制の哲学がないも同然であり、個人情報保護とは名ばかりのものとなりかねません。
 我々野党が修正案で示したように、個人情報の取得、利用、第三者に対する提供等に関し、本人が関与できる旨の規定を法律にしっかり明記すべきです。
 そして、思想、信条その他の心身、経歴等に関する一般に公表を欲しない個人情報や差別の原因となるおそれのある個人情報、すなわちセンシティブ情報については特に慎重な取扱いを求めるべきです。既に、地方自治体の条例の約六割にその旨が規定されているにもかかわらず、政府案にはそのような規定がありません。
 次に、一般法について申し述べます。
 政府案は、包括法の形式を取っているにもかかわらず、それぞれの主務大臣に監督権限を持たせるという矛盾を抱えています。これでは、複数の主務大臣が関与し得る場合、あるいは逆に主務大臣が存在しない場合など、その都度、調整が必要となります。アメリカやEU諸国の実情を見ても、個別法なら主務大臣制、包括法なら第三者機関というのが論理的な帰結なはずなのに、第三者機関の創設については二重行政になるとか行革に反するというのは全くもってまやかしであり、理由になってはおりません。
 また、金融や医療、情報通信の三分野においては、情報漏れが起きた場合の権利利益の侵害が甚大であるということは政府自身も認めていることであります。しかしながら、個別法に反対する業界側の意向をおもんばかってか、個別法の制定を一切明言せず、あわよくばガイドラインの改訂程度でお茶を濁そうという姿勢すら伺えます。これら三分野での個人情報保護の重要性を認識しているならば、少なくとも本法律の公布後二年を目途として個別法を制定する旨を附則に明記すべきではないでしょうか。
 続いて、行政機関法について申し述べます。
 個人情報を収集、利用する際の行政機関の裁量の幅が大きいと、必要以上の個人情報が収集されたり、悪用されたりするおそれがあります。政府案では、個人情報の収集について、その方法や範囲等を制限する明確な規定が一切なく、官僚に大きなフリーハンドを与える内容となっております。また、目的外利用等の是非を判断するのが情報の利用当事者である省庁という、正に選手が審判を兼ねるという行政の裁量幅が大きなものとなっています。
 我々が修正案でお示しいたしましたように、あらかじめ本人の同意を得ないでセンシティブ情報を取り扱う場合や、利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用又は提供する場合には、第三者機関への諮問を求め、と同時に当該取扱いに関する記録を義務付けることで客観的な歯止めを掛けるべきではないでしょうか。
 個人情報に係る訴訟に関しては、国民全員の利便性に配慮する必要があります。しかるに、政府案には、裁判管轄の特例規定がないため、東京地方裁判所以外には訴訟をできないことになっており、地方居住者に対する配慮が極めて欠けていると言わざるを得ません。情報公開法では認められているこの裁判管轄の特例、より弱い立場の個人が切実な理由から訴えることが予想されるこの行政機関法では、なおのこと認められるべきではないでしょうか。
 また、行政の不作為を放置させないためにも、修正案で示したように、各省庁が不服申立てを受けてから審査会に諮問するまでの期限及び審査会から答申を受けた場合の裁決をする期限をそれぞれ三十日以内とするなどの規定がないのはなぜなんでしょうか。
 膨大な個人情報を保持する行政機関には特に厳しい姿勢で臨み、実効性のある罰則を設けなければなりません。しかるに、政府案の罰則規定では、利己的な動機で個人情報を不正利用した場合などにしか対応してはおりません。そのため、防衛庁において、他の部署から請求者の情報を聞き出すなどして、請求時には記述の必要のない請求者本人の生年月日や所属する市民グループなどの個人情報を記載したリストを作成したというような事件は不問に付される可能性が非常に高く、その意味では、政府案は行政機関に対し非常に甘い法案であると断ぜざるを得ません。
 そして、総理を始め政府も再三答弁しておりますように、この法案の実効性を確保するためには、行政機関で働く職員の個人情報の保護に関する意識改革に懸かっていると言っても過言ではありません。ところが、政府案は掛け声ばかりで、そのことについての具体的な言及が全くありません。防衛庁リスト問題から一体何を学び取ったんでしょうか。保有する個人情報の取扱いに関する定期的な監査の実施や職員研修の実施等を安全確保の措置として明確に規定していないことは大変な欠陥です。
 以上をまとめて言うならば、一般法については、総理が特定の業種にとらわれないよう包括法にしたと言いながら、監督機関としては特定の業種に対応した主務大臣制を取ったことから、多くの矛盾を抱えたものとなってしまいました。また、行政機関法については、制度管理の厳格化が本質であるにもかかわらず、その点に関する措置が何一つなされていないずさんなものとなっております。
 高度情報化社会が進展しつつある今日、個人情報保護法制の必要性は十分認めながらも、政府提出の個人情報保護関連五法案には到底賛成できるものではないことを強く申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(倉田寛之君) 常田享詳君。
   〔常田享詳君登壇、拍手〕
○常田享詳君 自由民主党・保守新党、公明党を代表し、ただいま議題となりました内閣提出の個人情報の保護に関する法律案等関係五法案に対し、賛成の立場から討論を行います。
 私は、平成十二年、最後の郵政政務次官としてIT基本法の成立にかかわらさせていただきました。以来、IT時代におけるデジタルデバイド、いわゆる情報格差の解消と、個人情報保護のルールづくりが急務であることを痛感してまいりました。
 近年の高度情報通信社会の急速な進展の下、各種の事業において個人情報の利用は著しく拡大しております。また、個人情報を蓄積、活用したサービスがIT技術と融合して利便性を高めていることも忘れてはなりません。
 しかし、残念ながら、顧客名簿の流出、インターネットホームページからの個人情報の漏えいなどの事例が発生しているのも事実であります。このような中、自分の個人情報が不当に収集されていないか、目的外に利用されていないかといった国民の不安感は解消されず、国民のプライバシー意識も高まりつつあります。すなわち、今、我が国に必要なのは、個人情報の有用性に配慮しつつ、プライバシーを始めとする個人の権利利益を保護することであります。
 第百五十一国会に内閣が提出した個人情報の保護に関する法律案は、正にこのような今日的課題に的確に対応し、IT時代における国民生活の保護のために不可欠な基盤法制として提出されましたが、一部に個人情報の保護に関する法律案はメディア規制を意図するものであるとの不安、懸念が払拭されない状況にあったことは誠に遺憾であります。
 与党三党としても、このような不安、懸念を払拭するための努力を重ね、与党修正要綱を昨年十二月に取りまとめいたしました。
 今国会に内閣が提出した個人情報の保護に関する法律案は、この与党修正要綱に沿って昨年廃案となった旧法案を修正したものであり、具体的には、メディア規制を意図するものであるとの不安、懸念を払拭するため、一つ、旧法案における基本原則を削除する、二つ、報道機関等への情報提供者に対し主務大臣は関与しないことを明記する、三つ、報道の定義を明記する、四つ、報道機関に個人を含むことを明記する、五つ、著述を業として行う者を個人情報取扱事業者に対する義務規定の適用除外とすることを明記するなどの修正を行っております。この修正によって、個人情報の保護に関する法律案がメディア規制を意図したものではないということが明確になったと考えます。
 また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案は、昭和六十三年に制定された現行の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律について、一つ、保護の対象となる個人情報の範囲を電算処理された個人情報ファイルから行政機関が組織的に保有するすべての個人情報に拡大する、二つ、新たに訂正請求権、利用停止請求権を明記するなど、現行法を全面的に充実強化するものであります。
 なお、本法案においても与党修正要綱に沿った修正を行い、行政に対する国民からの信頼を確保するため、コンピューター処理されている個人データの漏えいに対する処罰など、新たに罰則を設けております。
 このたびの内閣提出の個人情報の保護に関する法律案及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案等の関係五法案により、官民の両分野においてIT社会にふさわしい個人情報の保護が推進されるものと確信いたしております。
 個人情報の保護に関する特別委員会においても、四十時間を超える長時間の審議を行いました。審議を通じて、巷間言われておりますような、本法案がメディア規制を意図したものであるとか官に甘く民に厳しいとかいった指摘については全くの誤解であることを明らかにいたしました。良識の府としての本院の役割を十分に果たしたものと考えます。
 よって、私は、一日も早くこの法案を成立させ、個人情報保護のルールの下で便利で健全なIT社会を構築することこそが国民の期待にこたえることになると確信するものであります。
 以上、内閣提出の個人情報の保護に関する法律案等関係五法案に対する賛成の理由を申し述べ、与党を代表しての賛成討論を終わります。(拍手)
○議長(倉田寛之君) 八田ひろ子君。
   〔八田ひろ子君登壇、拍手〕
○八田ひろ子君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の個人情報の保護に関する法律案及び関連四法案に反対の討論を行います。
 委員会審議では、個人情報保護に対する政府の基本的姿勢にかかわるいわゆる自衛官適齢者名簿が問題になりました。防衛庁が特別委員会に新たに提出した資料によって、住所、氏名、生年月日、性別の四情報以外の本籍や親の職業などの個人情報を、住民基本台帳法の趣旨を踏みにじり、五百五十七自治体から提供させていたことが判明しました。
 さらに、警察から大手サラ金業者への犯歴データの流出、その見返りとして業者から警察へビール券や時計などが届けられた贈賄疑惑、また警察官の個人信用情報が大手サラ金業者から警察に提供されていた疑惑などが次々と明らかになりました。
 これら個人情報保護の根本にかかわる問題の解明もまともに行わないまま採決に付すことは国会の責務を放棄するものであり、極めて遺憾であるとまず述べさせていただきます。
 反対理由の第一は、表現、言論の自由を脅かすおそれがあることです。事業者の取り扱う個人情報が報道目的なのか著述目的なのかの判断は個人情報取扱事業者を監督する主務大臣にゆだねられております。このため、主務大臣の恣意的な判断によって報道や著述の範囲を狭く限定して、公権力がマスメディアに介入する余地が残されています。
 さらに、NPOや市民団体、労働組合なども個人情報取扱事業者とされ、主務大臣の監督対象とされていることも問題です。政治的思惑等によって、労組、民主団体への介入、規制がないとは言い切れません。
 これに対して、野党が求めた修正では、主務大臣制ではなく、個人情報保護委員会という行政から独立した第三者機関を設置し、公正中立の立場から個人情報を取り扱うことにしています。独立、中立の第三者機関の設置こそ個人情報保護のかぎを握るものであり、国際標準です。大規模な行政組織が必要になるなどといって第三者機関の設置を拒否する政府の態度は、国民の基本的人権にかかわる個人情報保護の重要性を軽視するものであり、容認できません。
 反対理由の第二は、法案には、思想、信条など個人の名誉、信用、秘密に直接かかわるセンシティブ情報収集の原則禁止規定が欠落していることです。
 これらの個人情報は、民間事業者であれ行政機関であれ、特別の場合を除いて原則収集禁止をするべきです。このことは、国際標準であるばかりか、個人情報保護条例を策定している地方自治体の六割が既に実施しているものです。現に、経済産業省や総務省のガイドラインも、人種、門地、本籍地、思想、信条、犯歴、病歴などのセンシティブ情報の収集を禁止しているではありませんか。
 また、政府は、センシティブ情報の漏えいが問題になっている特定分野の個人情報保護のための個別法の制定についての計画も全く明らかにしていません。センシティブ情報の特に慎重な取扱いも規定できない法案では、国民の不安を解消できないことは明らかです。
 反対理由の第三は、自分の情報の取扱いに本人が関与し選択するという自己情報コントロール権が明記されていないため、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合は開示の例外とされており、結局、企業や行政機関の運営が優先され、憲法上の権利であるプライバシー保護を中心とした個人の権利が後景に追いやられています。
 小泉首相は、自己情報コントロール権について、その内容、範囲及び法的性格に関し様々な見解があり、明確な概念が確立していないと答弁しました。しかし、自己情報コントロール権は、情報の高度化の中でプライバシー権を保護するものとして生成してきた権利であり、これを取り入れない法案は時代後れなものと言わなければなりません。
 目的外利用についても、政府は相当な理由などというあいまいな規定で目的外利用ができると答弁しています。
 さらに、行政機関から経常的に提供を受けている機関の公表が規定されてはいますが、省庁の外郭団体をトンネルにした提供という手法で全くの空文とされてしまうことが国土交通省から警察への自動車登録データ提供の実態によって明白になりました。
 野党が求めた修正では、利用目的が異なる個人情報ファイルを照合又は結合することが個人の権利利益を侵害するおそれがあることに配慮しなければならないと、いわゆるデータマッチング規制が置かれていますが、法案にはそのような規定はありません。
 行政の都合や利便性に偏った判断で、個人情報が国の機関から地方公共団体まで全国の行政機関で使い回しされるおそれが払拭できず、行政機関に対する国民の不安と不信は高まるばかりです。
 また、行政機関法では、委員会審議で明らかにされましたように、自衛官適齢者名簿提供事件及び警察の個人情報保護に無力であることが浮き彫りになったことを指摘しておくものであります。さらに、都道府県警察の個人情報保護については、条例の規制さえ全くない不合理な実態があることも明らかになりました。
 反対理由の第四は、法案の制定によって、金融など手厚く個人情報保護策を講ずる必要がある分野の施策がむしろ後退するおそれがあることです。
 これらの分野は、現在、所管省で基本法案よりハードルが高いガイドラインを設けています。ところが、所管省からは、基本法に合わせてガイドラインのハードルを引き下げる意向が明らかにされています。個人情報保護法の制定が個人情報保護策の引下げの役割を果たそうとしていることは、看過できない重大問題です。
 政府は本法案の成立をもって住基ネットの本格稼働の免罪符にしようとしていますが、とんでもありません。本法案が成立しても個人情報の保護に万全を期すため所要の措置を講ずることにはならず、住基ネットの個人情報の漏えいの危険性はなくなりません。このような住基ネットは直ちに中止すべきであります。
 日本共産党は、今後とも、憲法の基本的人権の大切な柱であるプライバシー権を守り、個人情報の保護と表現、報道の自由を守るため、国民の皆さんとともに全力を尽くすことを申し上げまして、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(倉田寛之君) 平野貞夫君。
   〔平野貞夫君登壇、拍手〕
○平野貞夫君 ただいま議題となりました個人情報の保護に関する法律案など五法案について、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)を代表して、反対の立場から討論を行います。
 多くの文化人や有識者が戦前の治安維持法の再来になる危険性があると強く反対を表明、多くの国民が官僚の情報支配に危惧を抱いた個人情報保護法案は、昨年、廃案となったはずであります。その後、与党三党の合意を受けて、今国会で新たに政府から提出された五法案も何ら本質は変わっておりません。
 反対の最も基本となる理由を申し上げます。
 第一は、自由主義社会の根底にある言論、表現の自由を危機に陥れる扉を開いたことにあります。絶対に手を付けてはならない部分に踏み込んでしまったことであります。新聞、テレビという政府権力が保護したり管理できるメディアと、出版、雑誌という独自の活動をしているメディアを分断し、差別し、権力の言うままにならない出版や雑誌等の自由を弾圧できる仕組みをつくったことであります。政府答弁や附帯決議で歯止めを掛けたとは言うものの、今の小泉自公保政権にその約束を守る保証はなく、信用しろと言われてもそれは無理というものでございます。
 報道の定義が新たに盛り込まれるに至っては言語道断であります。「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること」という定義は一体何を言おうとしているのですか。権力がいつでも、どうにでも解釈、判断して弾圧できるぞということを宣言していることに等しいことです。国家が報道を枠付けし、規制しようということは憲法違反の疑いがあります。
 第二の理由は、政府案では、個人情報を取り扱う民間業者の監督を主務大臣が行うとしていることです。また、報道の定義を最終的に主務大臣が判断することとともに、重大な問題を含んでおります。
 よく考えてください。主務大臣とは、報道する側がチェックし、監視すべき立場にいる人間です。その報道の監視対象となる当事者を相手側が監督するということは、容疑者が警察を監視する論理と同じではないですか。どう考えても倒錯した考え方です。国民から信頼される個人情報保護委員会といった、野党の主張する第三者機関を設置すべきであります。
 そもそも、五法案は、当初、住基ネットの稼働で公務員が膨大な情報を手にすることに伴って、公務員を適切に規制する趣旨で自自公三党で合意されたものでした。それが、官僚が情報をコントロールすることで国民を管理しようと、月刊誌や週刊誌で批判を受けた総理大臣等が権力者と手を結んで、全く逆の趣旨の法案をつくり上げたのです。個人情報を保護するという言葉を悪用して言論や情報を取り締まり、権力者の悪口を書かせない法案に仕上げたのであります。
 情報化社会が進展する中で、個人情報を官僚や悪徳業者から守る制度をつくることは必要であります。しかし、この五法案が全く別の思惑で提出されたことは誠に遺憾なことであります。
 また、野党四会派が修正案を提案し、修正協議を呼び掛けたのに対し、拒否した与党の対応は不誠実極まりない対応です。強く抗議します。
 さらに、人権擁護という美名を利用し、擁護とは反対に人権や報道の自由を侵害しかねない法案が恥じることなく政府から提出されています。小泉自民・公明・保守連立政権の国民を愚弄する姿勢に怒りを覚えます。民主主義の健全な育成と発展、そして日本人の在り方について数々の指導的著作を執筆されている城山三郎先生が全身全霊をもって反対を続け、小泉総理に裏切られた気持ちで一杯と言わしめた個人情報保護法案関係五法案は、もう一度根本的に見直されるべきであります。
 最後に申し上げたいことは、あと数分でこの悪法は成立します。ここに至ったことについて、野党の非力を反省します。さらに、個人情報野党プロジェクトの一員として国民におわびいたします。今日、平成十五年五月二十三日は、この悪法をがんじがらめに監視し、きばを抜く闘いに挑むスタートの日であることを申し上げ、討論を終わります。(拍手)
○議長(倉田寛之君) これにて討論は終局いたしました。
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) これより五案を一括して採決いたします。
 五案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十二  
  賛成             百三十  
  反対              百二  
 よって、五案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) 日程第六 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長大野つや子君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔大野つや子君登壇、拍手〕
○大野つや子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、著作権制度をめぐる内外の情勢の変化に対応し、著作権等の適切な保護に資するため、映画の著作物の著作権の存続期間を公表後五十年から公表後七十年に延長するとともに、著作権等を侵害された者の救済を図るための制度を充実するほか、著作物等の公正な利用を図るため、いわゆる拡大教科書の作成や遠隔授業等をより円滑に行えるようにするための措置等を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、著作権教育の充実、拡大教科書の作成、使用に係る支援等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十三  
  賛成           二百三十三  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) 日程第七 自動車安全運転センター法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長小川敏夫君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔小川敏夫君登壇、拍手〕
○小川敏夫君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、平成十三年十二月に策定された特殊法人等整理合理化計画の実施の一環として、自動車安全運転センターを民間法人化するため、政府の出資、役員の選任等に係る政府の関与の縮小等について所要の改正を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、民間法人化の理由、自動車安全運転センター役員への天下り問題、同センターにおける個人情報保護の在り方、民間法人化後の会計検査院の検査対象、外部評価の実効性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 昨日、質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して吉川理事より反対の旨の意見が述べられました。
 次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し三項目から成る附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十二  
  賛成            百四十二  
  反対              九十  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) 日程第八 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。財政金融委員長柳田稔君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔柳田稔君登壇、拍手〕
○柳田稔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、内外の金融情勢の変化に対応し、証券市場の構造改革を促進する必要性にかんがみ、証券仲介業制度を創設するとともに、証券会社等についても主要株主に関する制度の整備を行うほか、証券取引所等について持ち株会社制度及び外国の取引参加者が国内に支店を設けることなく取引所取引に参加できる制度の整備を行う等、所要の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、証券仲介業制度の導入が証券市場の活性化に及ぼす効果、証券取引所等の提携・再編の可能性、証券市場の公正性及び透明性確保に向けた監視体制の強化の必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表し池田幹幸委員より本法律案に反対する旨の意見が述べられました。
 討論を終了し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十三  
  賛成             二百五  
  反対             二十八  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) 日程第九 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。総務委員長山崎力君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔山崎力君登壇、拍手〕
○山崎力君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、ユニバーサルサービスの適切、公平かつ安定的な提供を確保しつつ電気通信事業者の多様な事業展開を促すため、同事業の第一種及び第二種の区分を廃止する等、規制の合理化のための措置を講ずるとともに、民間能力の一層の活用を図るため、総務大臣又は指定認定機関が行う技術基準適合認定等について総務大臣の登録を受けた者が行うこととするほか、末端機器の技術基準適合性を製造業者等が自ら確認する制度を新設し、あわせて、東・西NTTの電話の接続料が同等の水準となることを確保する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、電気通信事業の第一種、第二種の区分を廃止することの意義、事業者への規制見直しの必要性、新たに設けられる利用者保護制度の効果、光ファイバーに関する指定電気通信設備規制の在り方、ユニバーサルサービス基金の在り方等について質疑が行われました。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して八田ひろ子委員より反対の旨の意見が述べられました。
 討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し八項目から成る附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十一  
  賛成             二百四  
  反対             二十七  
 よって、本案は可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) 日程第一〇 林業経営の改善等に必要な資金の融通の円滑化のための林業改善資金助成法等の一部を改正する法律案
 日程第一一 森林法の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長三浦一水君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔三浦一水君登壇、拍手〕
○三浦一水君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、林業経営の改善等に必要な資金の融通の円滑化のための林業改善資金助成法等の一部を改正する法律案は、林業、木材産業の一体的な構造改革を図るため、林業、木材産業が経営改善等に必要な資金の融通を円滑に受けられる仕組みを構築するため、関係資金制度を再構築しようとするものであります。
 次に、森林法の一部を改正する法律案は、森林の整備と保全を一体的に推進するため、森林計画制度を見直す等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、地球温暖化防止と森林整備、森林整備保全事業計画の在り方、国産材、地域材の利用拡大等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、順次採決の結果、両法律案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両法律案に対しそれぞれ附帯決議を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十二  
  賛成           二百三十二  
  反対               〇  
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
     ─────・─────
○議長(倉田寛之君) 日程第一二 食品衛生法等の一部を改正する法律案
 日程第一三 健康増進法の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長金田勝年君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号(その二)に掲載〕
    ─────────────
   〔金田勝年君登壇、拍手〕
○金田勝年君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、食品衛生法等の一部を改正する法律案は、近年における国民の食生活を取り巻く環境の変化等にかんがみ、食品の安全性の確保のため、国、地方公共団体及び食品等事業者の責務の明確化、食品に係る規制の見直し、監視指導の強化、食中毒等への対応の強化等の措置を講じようとするものであります。
 次に、健康増進法の一部を改正する法律案は、いわゆる健康食品の増加にかんがみ、これらの食品の虚偽又は誇大な広告を禁止する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、食品の安全に関する情報公開と消費者参加の重要性、新設される食品安全委員会と厚生労働省の役割分担、輸入食品等に対する監視指導体制の強化、健康食品の規制の在り方等について質疑を行ったほか、東京都築地市場及び市場衛生検査所の実情を調査し、また参考人から意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 両法律案に対する質疑を終局し、順次採決の結果、両法律案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両法律案に対し附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十二  
  賛成           二百三十二  
  反対               〇  
 よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
    ─────────────
   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
○議長(倉田寛之君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十三分散会