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2002/03/25
新しい「国立大学法人」像について



新しい「国立大学法人」像について




平成14年3月26日
国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議

目 次
はじめに

1 基本的な考え方

  1. 検討の前提
  2. 検討の視点

2 組織業務

  1. 検討の視点
  2. 制度設計の方針

    (1) 法人の基本
    (2) 運営組織
    (3) その他の組織
    (4) 目的・業務
    (5) その他

3 人事制度

  1. 検討の視点
  2. 制度設計の方針

    (1) 身分
    (2) 選考・任免等
    (3) 給与
    (4) 服務・勤務時間
    (5) 人員管理

4 目標・評価

  1. 検討の視点
  2. 制度設計の方針

    (1) 基本的な考え方
    (2) 中期目標・中期計画等
    (3) 評価
    (4) 情報公開

5 財務会計制度

  1. 検討の視点
  2. 制度設計の方針

    (1) 中期計画と予算
    (2) 運営費交付金
    (3) 施設整備費
    (4) 土地・建物等
    (5) 長期借入金債務
    (6) 寄附金等
    (7) 会計基準等

6 大学共同利用機関

  1. 検討の視点
  2. 制度設計の方針

    (1) 組織業務
    (2) 人事制度
    (3) 目標・評価
    (4) 財務会計制度
    (5) その他

7 関連するその他の課題

おわりに



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はじめに

 「知」の時代とも言われる21世紀にあって、学問や文化の継承と創造を通じ、人類や国際社会への貢献がますます求められている。
 「知」の拠点としての大学の責務は、重大である。
 本調査検討会議は、平成12年7月、独立行政法人制度の下で、大学の特性に配慮しつつ、国立大学及び大学共同利用機関を法人化する場合の制度の具体的な内容について調査検討を行うことを目的に発足した。
 以来、本調査検討会議は、公私立大学とともに我が国の「知」を支える国立大学等の在り方を問い直そうと試みてきた。描こうとしたのは、法人化後の新しい国立大学等の姿である。目指したのは、法人化を契機とした国立大学等の改革と新生である。
 会議には、国立大学、大学共同利用機関、私立大学、公立大学、経済界、言論界等から関係者が集い、約1年8ヶ月にわたり議論を重ねた。その間、昨年9月には、それまでの調査検討の成果を中間報告として公表し、これに対する各界からの意見を参考にさらに検討を進め、ここに最終報告をとりまとめるに至った。
 今後、この報告の内容を踏まえ、政府において関係法令の策定作業等に当たるとともに、国立大学等の関係者が法人化に向けて準備を進め、できるだけ早期に国民の期待に応えた国立大学等の改革と新生が図られることを期待する。.



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1 基本的な考え方

1. 検討の前提(国立大学の法人化を検討する場合に、まず前提とされるべき基本的な考え方の整理) 

前提1:「大学改革の推進」
   国立大学の法人化は、閣議決定でも確認されているとおり、大学改革を推進するための一環として検討が行われるべきものである。
   すなわち、この問題は、行政機能のアウトソーシングや、運営の効率性の向上といったいわば行政改革の視点を超えて、教育研究の高度化、個性豊かな大学づくり、大学運営の活性化など、従来からの大学改革の流れを促進し、活力に富み、国際競争力のある大学づくりの一環として検討することが前提となる。
   また、そのためには、現在の国立大学に、単に法人格を付与するとか、既存の法人制度の枠組みを単純に当てはめるといった消極的な発想ではなく、予算、組織、人事など様々な面で規制が大幅に緩和され、大学の裁量が拡大するといった法人化のメリットを大学改革のために最大限に活用するという積極的な発想に立って、新しい国立大学の姿を模索する必要がある。
   さらに、国立大学の法人化が、国立大学のみの改革にとどまらず、我が国の大学全体の活性化と教育研究の高度化に真に資する契機となるためには、その前提として、国公私立大学を通じて、第三者評価に基づく重点投資のシステムの導入など、適切な競争原理の導入や効率的運営を図りつつ、高等教育や科学技術・学術研究に対する公的支援を拡充することが不可欠である。

前提2:「国立大学の使命」
   国立大学の法人化に当たり、法人化のメリットを最大限に活用した新しい国立大学像を模索する一方、国立大学が本来果たすべき使命や機能を、いかに従来以上に実現させ得るかという観点が、検討の前提として必要である。
   国立大学に期待される使命や機能については、すでに大学審議会答申等でも整理されているが、国立大学は、公私立大学とともに、今日まで我が国の学術研究と研究者等の人材養成の中核を担ってきたほか、全国的に均衡のとれた配置により、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生に経済状況に左右されない進学機会を提供するなど、重要な役割を果たしてきている。
   もちろん、こうした使命や機能は、公私立大学との関係において常に相対的なものであり、また、時代の変化や社会の要請を踏まえて変化していくものである。また、個々の国立大学ごとに、置かれている状況や条件によって、期待される使命や機能の内容に相当の幅が存在することも否定できない。
   しかし、国立大学の果たすべき使命や機能の重要性は、法人化それ自体によって変わるものではない。むしろ、21世紀の我が国の「知」の基盤を支えるため、国立大学への期待がますます高まる中で、各大学ごとに期待される使命や機能の明確化とその確実な実現が従来以上に強く求められる。
   同時に、納税者たる国民や社会の意見が大学の運営に適切に反映されること、大学運営の実態や教育研究の実績に関する透明性の確保と社会への積極的な情報提供がなされること、さらに、これらを基礎に大学の在り方が適切に検証されることなど、国民に支えられ、最終的に国が責任を負うべき大学にふさわしい法人像を模索する必要がある。

前提3:「自主性・自律性」
   前提の3点目として、これも閣議決定で確認されているとおり、学問の府としての特性を踏まえた大学の自主性・自律性を尊重するとともに、各大学における運営上の裁量を拡大していくことが必要である。
   およそ大学の教育研究活動は、大学の設置形態に拘わらず、教育研究者の自由な発想や、大学人自身による企画立案が尊重されることによって、初めて真に実りある展開と発展が見られるものである。したがって、法人化後の新しい国立大学像の設計に当たっては、前提2で指摘した「国民に支えられ、最終的に国が責任を負うべき大学」にふさわしい法人像との調和を図りながら、大学としての自主性・自律性が十分に尊重される制度であることが、当然の前提となる。
   また、前提1のように、法人化により国立大学の改革を推進していくためには、予算、組織、人事など制度の様々な面で、公私立大学の扱いとの均衡に留意しつつ、大学としての円滑な運営に障害となるような日常的な規制はできるだけ緩和し、運営面での各大学の裁量を拡大することが必要である。
   さらに、法人化は、国立大学の多様化に途を拓くべきものである。公私立大学との使命や機能の分担にも十分留意しつつ、法人化を契機に各国立大学の特色や個性を伸ばす観点から、大学独自の工夫や方針を活かした柔軟な制度設計ができるだけ可能となるよう特に留意すべきである。

2. 検討の視点(法人化を契機に、国立大学がどう変わるのか、どのような大学を目指すのかという基本的な視点の整理)

視点1:

個性豊かな大学づくりと国際競争力ある教育研究の展開
   これからの国立大学は、人材育成や学術研究面での国際競争が激しくなる中で、国からの財政投入に支えられる大学として、国民の付託に応えた教育研究の充実を図り、国際競争力ある大学づくりを目指すべきである。
   また、地域にあっては、公私立大学との連携・協力・支援関係を深めつつ、地域の発展基盤を支える教育、研究、文化の拠点としての機能の充実強化に努めるべきである。
   各大学は、国立大学として期待される使命や機能を認識しつつ、各々が置かれている状況や条件を踏まえ、まず、大学独自の理念や目標を明確にし、国立大学としての存立の意義を明らかにすることが求められる。その上で、各々の理念や目標の実現を目指して、教育研究を多様に展開し、個性豊かな大学として発展していかねばならない。
   関連して、各国立大学の将来の在り方、存立の意義等を検討する中で、未来に向けての多様な発展と運営の基盤強化等を目指し、各大学の枠を越えた再編・統合を大胆かつ積極的に進める必要がある。

視点2:

国民や社会への説明責任の重視と競争原理の導入
   これからの国立大学は、国民に支えられる大学として、国民や社会に対する説明責任(アカウンタビリティ)を重視した、社会に開かれた大学を目指す必要がある。
   このため、教育研究、組織運営、人事、財務など大学運営全般にわたって、ルールの明確化、透明性の確保、社会への積極的な情報の提供に努めるべきである。
   また、大学運営に高い見識を持つ学外の専門家や有識者の参画により、国民や社会の幅広い意見を個々の大学の運営に適切に反映させつつ、モニタリングするとともに、社会の多様な知恵を積極的に活用し、大学の機能強化を図っていくことが重要である。
   同時に、大学の運営に当たって、教育研究の「サプライ・サイド」からの発想だけではなく、常に、学生、産業界、地域社会などの「デマンド・サイド」からの発想を重視する姿勢が重要であり、とりわけ教育の受け手である学生の立場に立った教育機能の強化が、強く求められる。
   さらに、国立大学における教育研究の世界に、第三者評価に基づく適切な競争原理を導入すべきである。このため、厳正かつ客観的な第三者評価のシステムを確立し、各国立大学及びその構成員の教育研究等の実績に対する検証を行うとともに、評価結果に基づく重点的な資源配分の徹底を図るべきである。

視点3:

経営責任の明確化による機動的・戦略的な大学運営の実現
   これからの国立大学は、法人化により経営面での権限が大幅に拡大するなど、大学運営における自主性・自律性が拡大することに対応して、大学運営における権限と責任の所在の明確化を図るべきである。
   また、拡大する経営面の権限を活用して、学部等の枠を越えて学内の資源配分を戦略的に見直し、機動的に決定、実行し得るよう、経営面での学内体制を抜本的に強化するととともに、学内コンセンサスの確保に留意しつつも、全学的な視点に立ったトップダウンによる意思決定の仕組みを確立することが重要である。
   同様に、各学部等においても、全学的な運営方針を踏まえつつ、運営の責任者である学部長等を中心とした円滑な意思形成とダイナミックで機動的な運営の仕組みを導入すべきである。
   関連して、学長など大学運営の責任者に学内外から適任者を得るための方法を確立するとともに、学内における教育、研究、運営等の適切な役割分担による諸機能の強化を図る必要がある。.



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2  組織業務

1. 検討の視点(法人化を契機に、組織業務の在り方を通じて国立大学がどう変わるのか、どのような大学になるのかという視点の整理)

視点1:

学長・学部長を中心とするダイナミックで機動的な運営体制の確立
(具体的には)
  学長は、経営・教学双方の最終責任者として、学内コンセンサスに留意しつつ、強いリーダーシップと経営手腕を発揮
  大学運営の重要テーマごとに副学長を十分配置して、学長の補佐体制を大幅に強化
  重要事項に関しては、「役員会」の議決により、透明性の高い、適正な意思決定を確保
  事務組織は、教員と連携協力して企画立案に参画し、学長以下の役員等を直接支えるなど、専門職能集団としての機能を発揮
  教授会の審議事項を精選し、学部長を中心にダイナミックで機動的な学部運営を実現
  学内での教育、研究、運営等の適切な役割分担を行い、教員の教育研究活動以外の負担を軽減し、大学全体としての諸機能を強化 など

視点2:

学外者の参画による社会に開かれた運営システムの実現
(具体的には)
  法人役員に広く学外からも有識者や専門家を登用し、幅広い視野から大学を運営
  新たに設ける運営協議会(仮称)に学外の有識者や専門家が相当数参加し、社会の意見や知恵を大学運営(とりわけ経営面)に適切に反映させつつ、モニタリング
  その他大学運営のスタッフに学外の幅広い分野から専門家を積極的に登用し、大学の諸機能を強化 など


視点3:

各大学の個性や工夫が活かせる柔軟な組織編制と多彩な活動の展開
(具体的には)
  各大学の自主的な判断で柔軟かつ機動的に教育研究組織を編制し、得意分野等に資源を重点的に投入
  職員の構成も、教員、事務職員等の従来の画一的な区分にとらわれることなく各大学の実情に即した多様な職種を自由に設定
  大学が獲得した外部資金を活用して、必要な研究従事者等を弾力的に採用・配置
  研究成果の普及事業や移転事業など、教育研究活動に付随する多彩な活動を広範囲に展開し、必要に応じTLO等関係法人へ出資
  教育研究組織等の一部を国立大学法人本体から独立させ、特性に応じたより弾力的な運営を可能とする仕組みを創設 
  各大学で産学官連携に関連する業務を弾力的・効果的に展開 など

2. 制度設計の方針

  (1) 法人の基本
    (法人の単位)
   法人の単位については、大学の運営の自主性・自律性を高め、自己責任を強める上で自然な形であり、また、大学相互の競争的な環境の醸成や大学の個性化に資することが期待できることなどから、各大学ごとに法人格を付与することを原則とする。

    (法人の名称)
   法人の一般的な名称については、1高い自主性・自律性を前提に、大学教育及び学術研究を主体的に展開する法人としての基本的な性格を適切に反映させること、2昭和24年に制定された国立学校設置法に基づき「国立大学」の総称が社会的にも広く定着していること、3後述のように法人化後の大学の学校教育法上の設置者を国とする方向で整理すること、などを総合的に考慮し、「国立大学法人」(仮称)とする。
     各法人の名称は、従来の名称、活動実績、経緯等を考慮する。

    (大学の設置者)
   法人化後の大学の設置者については、1中期目標・中期計画や業績評価等を通じた国の関与と国の予算における所要の財源措置が前提とされていること、2後述のように大学の運営組織と別に法人としての固有の組織は設けないことを原則とすること、などを考慮し、学校教育法上は国を設置者とする。

    (教育研究施設)
   大学の附属図書館、附属学校、附属病院、附置研究所等の教育研究施設については、従来、大学の教育研究活動と不可分な関係にあるものとして位置付けられてきたことを踏まえ、大学に包括されるものとして位置付ける。

    (施設等への出資)
   大学の施設等のうち、運営の実態や独立採算の可能性等を踏まえ、より柔軟な運営を実現するなどの観点から、特定の施設等を国立大学法人(仮称)から独立させ、別の種類の法人とするとともに、必要に応じて国立大学法人(仮称)がこれらの法人に出資できることとする。

    (根拠法)
   国立大学法人(仮称)の根拠法については、大学の教育研究の特性を踏まえて、各大学に共通して必要な事項と、各国立大学の名称など、個別の大学に関する事項とを合わせて規定した法律(「国立大学法人法」(仮称)、「国立大学法」(仮称)など)を制定する。

  (2) 運営組織
  (法人組織と大学組織)
   国立大学法人(仮称)については、1教学と経営との円滑かつ一体的な合意形成への配慮、2設置者としての国による大学への関与の存在、3従来からの国立大学の運営の実態、などを総合的に考慮し、効率的・効果的な運営を実現させる観点から、「大学」としての運営組織と別に「法人」としての固有の組織は設けない。

    (役 員)
   国立大学法人(仮称)の役員の構成・名称については、現在、大学に置かれる職として学長、副学長が学校教育法上規定され、また、現に各国立大学には学長のほか、副学長が原則複数名配置されていること等を踏まえ、「学長」(法人の長)、「副学長」(複数名)、「監事」(2名)とすることを原則とする。

   学長は、法人化された大学の最終責任者として、法人を代表するとともに、学内コンセンサスに留意しつつ、強いリーダーシップと経営手腕を発揮し、最終的な意思決定を行う。

   監事は、国立大学法人(仮称)の業務を監査し、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、学長又は文部科学大臣に意見を提出することができることとする。実際の監査に当たっては、大学における教育研究の特殊性に鑑み、基本的には各教員による教育研究の個々の内容は直接の対象としないことが適当である。
     監事のうち少なくとも1名は、大学の教育研究及び大学運営に関し高い識見を有する学外者から登用する。

   副学長は、学長を補佐し、業務の一部を分担する。
     法人化に伴い権限・責任が拡大する学長を補佐するため、大学運営の重要テーマ等(例えば、総括、学術研究、教育・学生、財務会計、人事管理、施設管理、学術情報、環境・医療、産学官連携、国際交流など)に応じて、担当の副学長を十分配置する。

   監事以外の役員についても、学内からの登用にとどまらず、広く学外からも大学運営に高い見識を有する者や各分野の専門家を招聘する。必要に応じ非常勤とする。
     また、法人化を契機に、事務職員等が教員と連携協力して大学運営の企画立案に積極的に参画していくことが期待されるが、各学長の判断により、こうした事務職員等のうち、大学運営に高い見識を有する者を役員に積極的に登用することも考えられる。

   役員以外のスタッフにも、学外の幅広い分野から専門家を積極的に登用し、大学の諸機能を強化する。また、役員をはじめ大学運営のスタッフに、女性の積極的な登用を進める。

   役員の数は、学部・研究科等の規模、職員数など各大学の規模や大学間の再編・統合の状況等を勘案し、また、全ての大学で学外者を監事以外の役員にも必ず登用することを踏まえ、各大学ごとに適切に定める。 

    (役員以外の運営組織)
   役員以外の運営組織については、
    1  法人化に伴い経営面(例えば予算編成・執行、財産管理、組織編制、職員配置、給与決定、勤務時間管理など)での大学の裁量が大幅に拡大することに対応して、その裁量を効果的に活用し得る組織とすること、
    2  国の直接的な関与を制限する代わりに、公的な財政支出に支えられる大学として、国民や社会に対する説明責任を重視し、学外の有識者の意見を運営に積極的に反映させつつ、モニタリングする仕組みを整えること、
    3  経営、教学両面において、学内コンセンサスの円滑な形成に留意しつつ、大学法人としての教育研究に係る経営戦略を確立し、中・長期の観点に立ったダイナミックで機動的な意思決定を可能とする仕組みを採り入れること、
    などの観点から、経営面に関する権限と責任の所在を明確化するとともに、その権限と責任を担う組織に学外の有識者を参画させることが重要である。
   また、大学本来の自主性・自律性に加え、法人化に伴い運営上の裁量が大幅に拡大することを考慮すれば、意思決定プロセスの透明性の確保、役員間の適切な責任分担による一体的な運営、さらに適正な意思決定の担保といった観点から、大学運営上の特に重要な案件については、大学としての意思決定に際し、役員による合議制を制度的に導入することが適当である。

   このため、具体的には、以下のような運営組織とする。
    1  主に教学面に関する重要事項や方針を審議する評議会(仮称)と並んで、主に経営面に関する重要事項や方針を審議する運営協議会(仮称)を設け、そこに相当程度の人数の学外有識者の参画を得る。
    2  学長は、主に経営面に関する運営協議会(仮称)の審議と、主に教学面に関する評議会(仮称)の審議を踏まえ、最終的な意思決定を行う。
    3  ただし、特定の重要事項については、学長の意思決定に先立ち、役員会(仮称)(監事を除く役員で構成し、学外者を含む)の議決を経る。

   基本的な運営組織の関係を図に示せば、以下の通りとなる。

運営組織の関係図

  (注)
  「役員会」(仮称):

    監事を除く役員で構成し、学外者(常勤又は非常勤)を必ず含む。
    経営、教学の両面にわたり、中期目標・中期計画、予算・決算など特定の重要事項について、学長の意思決定に先立ち議決を行う。特定の重要事項の内容については各大学の裁量を認める。

  「運営協議会」(仮称):
    大学の経営に関する学外の有識者(非常勤)及び大学の経営に関する学内の代表者(役員等)で構成する。
    学外の有識者が相当程度の人数を占める。
    主に財務会計(予算、決算、財産処分等)、組織編成、職員配置、給与、役員報酬など経営面に関する重要事項や方針を審議する。

  「評議会」(仮称):
    大学の教学に関する学内の代表者で構成する。
    主に教育課程、教育研究組織、教員人事、学生の身分など教学面に関する重要事項や方針を審議する。

   なお、上記の運営組織の運用に当たっては、経営と教学の双方にまたがる案件については、例えば、運営協議会(仮称)と評議会(仮称)の代表による合同の委員会等を開催するなど、学内における円滑な合意形成のために、各大学の判断で柔軟な運営を工夫することも必要である。

    (事務組織)
   各大学の事務組織については、法令で規定せず、予算の範囲内において各大学の判断で随時に改組等を行うことを可能とし、適切な組織編制を行う。
     その場合、事務組織が、法令に基づく行政事務処理や教員の教育研究活動の支援業務を中心とする機能にとどまらず、また、日常の大学運営事務に加えて、教員と連携協力しつつ大学運営の企画立案等に積極的に参画し、学長以下の役員等を直接支えるなど、大学運営の専門職能集団としての機能を発揮することが可能となるよう、組織編制、職員採用・養成方法等を大幅に見直す。

    (学部等の運営)
   学部等の運営については、全学的な運営方針を踏まえながら学部長等の権限と責任においてダイナミックで機動的な運営を実現するとともに、教育研究活動以外の教員の負担をできるだけ軽減し、人的資源を有効に活用し得る体制に改める必要がある。
     このため、教授会における審議事項を真に学部等の教育研究に関する重要事項に精選する一方、学部等の運営の責任者たる学部長等の権限や補佐体制(副学部長等の設置など)を大幅に強化する。

    (内部監査機能の充実)
   大学運営の自主性・自律性の拡大を踏まえ、各大学における財務運営等を含めた自己規律、自己責任の確立が求められる。このため、法令・予算等に基づくこれまでの監査の仕組みから、法人内部における監査機能の充実とそのための体制の確立が必要である。

  (3) その他の組織
    (教育研究組織)
   大学の教育研究組織については、各大学の自主的な判断で柔軟かつ機動的に編制することにより、学術研究の動向や社会の要請等に適切に対応し、大学の個性化を図るため、学科以下の組織は法令に規定せず、各大学の予算の範囲内で随時設置改廃を行うこととする。
     その際、公私立大学についても、国立大学の場合と同様の観点から、国の設置認可を緩和する。

   なお、大学の教育研究組織のうち、例えば、学部、研究科、附置研究所等については、その性格上いわば各大学の業務の基本的な内容や範囲と大きく関わるものであり、これらの内容や範囲は、あらかじめできるだけ明確にしておく必要がある。また、公私立大学における学部等の設置認可の扱いとの均衡にも留意する必要がある。
     このため、独立行政法人制度における各法人の内部組織が原則として各法人(の長)の裁量に委ねられることを考慮しつつ、また、現在、中央教育審議会で検討が進められている公私立大学の設置認可の弾力化の方向にも留意した上で、各大学の業務の基本的な内容や範囲を法令(具体的には省令)等で明確化する方法を工夫する。

   特に国としての政策的判断や相当の予算措置を要するような大規模な教育研究組織や事業については、当該大学の業務の確実な実施を担保するとともに、運営費交付金等の公費の支出の積算根拠を明示する観点から、あらかじめ中期計画に記載し、文部科学大臣の認可を得る。

    (職員構成・配置)
   職員構成は、従来の画一的な職種の区分にとらわれることなく、各大学の実情に即した多様な職種を、各大学が自主的に設定する。また、学内の職員配置も、各大学の判断で自主的に決定する。
     さらに、外部の競争的資金等を活用し、当初の人件費見積りの枠外で中・長期の経営の観点を念頭に置きつつポスドク等の研究従事者等を随時雇用することを可能とする。

  (4) 目的・業務
    (目的)
   法律上定める各大学の目的については、各大学ごとに固有の目的規定を定めるのではなく、各大学の個性や特色の発揮を阻害しないよう十分留意しつつ、法人化後の国立大学に共通する一般的な目的規定として整理する。

    (業務)
   法律上定める各大学の業務については、各大学の目的と同様に、法人化後の国立大学に共通する一般的な業務内容として整理するとともに、さらに各大学ごとの業務の基本的な内容や範囲を下位の法令等で明確化する方法を工夫する。
     なお、法律上定める目的と業務が極めて似通った内容となることも十分予想されることから、目的と業務を一体的に規定することもあり得る。

    (業務の範囲)
   業務の範囲については、公私立大学との使命や機能の分担にも十分留意しつつ、 国立大学としての目的を達成するために必要な業務は、各大学の自主的な判断により、できる限り広範に展開できるよう配慮する。
     具体的には、1附属の教育研究施設等を含め、大学として行う本来の教育及び研究や、2入学者選抜、学位授与、診療、学生の厚生補導、公開講座・研究会・講演会等の開催、広報誌の発行など、教育研究に密接に関わるものとして現在すでに各大学で行われている各種業務のほか、3特許の取得・管理、大学会館の設置・管理、教育研究費の助成、学術図書の刊行・頒布・援助、奨学金の支給、研究成果の民間への移転事業など、教育研究に密接に関わるものの、種々の制約から現行では大学自ら実施し難い業務についても、法人化に伴い大学の業務として実施できるようにする。

   特に、近年、大学の教育研究の活性化や新産業の創出等への期待から、産学官連携の必要性が強く指摘されており、大学自らの総合的・戦略的な判断に基づき、産学官連携を推進することが重要である。
     このため、法人化後の大学における産学官連携に関する業務(リエゾン機能、TLO、インキュベーション業務、特許等知的所有権の管理など)については、各大学の主体的な判断により、事務組織の在り方等を含め、弾力的・効果的な推進体制を整備できるようにする。
     また、後述のような「非公務員型」による人事制度の弾力化を踏まえ、各大学の判断により、国立大学の公共性等を考慮した兼業ルールや責務相反・利益相反のルールを整備・確立する必要がある。
     なお、大学で生じた特許等は、発明者への十分な対価の還元に留意しつつ、法人有を原則とすべきである。

   以上の関係業務の展開に当たっては、一大学では必ずしも十分に行い得ないものや、共同して行うことによってより効率的・効果的な運営が期待されるものについて、複数大学が共同して行う方途等を検討する。

    (他の法人への出資)
   業務の一部については、法人化後の国立大学とは別の法人に実施させることにより、業務のアウトソーシングによる効率的な運営や弾力的な事業展開の実現、複数の出資者を募ることによる資金確保の途の拡大等に資することが期待できることから、業務の膨張への歯止めに留意しつつ、国立大学法人(仮称)からこれらの法人への出資も可能とする。

    (収入を伴う事業)
   収入を伴う事業については、国立大学法人(仮称)が、1独立採算制を前提とせず、国の予算による所要の財源措置が行われること、2その事務・事業も公共上の見地から実施されるものであること、などを考慮し、本来の教育研究等の業務及びそれに密接に関わる事業等(例えば、学生・患者等に対するサービス、教育研究の成果の普及、所有する施設等の有効活用など)に限定した上で、各大学の自己努力による収入の増加を図る。

    (学生定員)
   学生収容定員については、各大学・学部等の業務の規模や教育条件を規定する基礎的な要素であり、運営費交付金等の算定の際の基本的な根拠となることから、あらかじめ中期計画に記載し、国の認可を得る。

    (業務方法書)
   業務方法書については、その中でどこまでの事項を規定することとするか、教育研究活動に関する方法を業務方法書で定めることが妥当かどうか、学則等の規定事項とその扱いとの関係をどう整理するか、等の問題があるが、他方、社会に開かれた存在としての大学における契約関係事務など財務規律や透明性を全体としてどのように確保するか、等の課題もあり、これらを総合的に考慮し、作成しないこととする可能性を含めその取扱いを決定する。

  (5) その他
    (移行方法)
   具体的な移行方法としては、全ての大学を同時に法人に移行させることとし、その具体的な時期については、事務局を含めた組織運営体制の整備や財務会計システムの整備など、移行に伴う諸準備の見通し等を総合的に考慮しつつ、できるだけ早期に移行する。

    (国立大学の連合組織)
   今後、各国立大学における自主的・自律的な運営を前提としつつも、必要に応じて大学間で連携・協力して案件の処理を行うことが可能となるよう、地域や分野・機能等に応じた連携・協力体制を整えるとともに、国立大学全体の連絡、協議等のための自主的・自律的な連合組織の体制・機能の強化や位置付けの明確化を図る。



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3  人事制度

1. 検討の視点(法人化を契機に、人事制度の在り方を通じて国立大学がどう変わるのか、どのような大学になるのかという視点の整理)

視点1:

教員の多彩な活動を可能とする人事システムの弾力化
(具体的には)
  法人化のメリットを最大限に活かし弾力的で多様な人事制度を実現する観点から、職員の身分は「非公務員型」を選択
  教員の採用・昇任等は、教員人事の自主性・自律性に配慮しつつ、各大学独自の方針や工夫が活かせるよう、制度を弾力化
  教育、研究、管理運営など、職務内容の適切な分担を可能とする弾力的な人事システムの導入
  産学官連携や地域社会への貢献に資する職員の学外活動を促進するため、兼職・兼業規制を緩和
  ワークシェアリングなど、多様な勤務形態を導入するとともに、一定の要件の下での裁量労働制等の導入を検討 など

視点2:

業績に対する厳正な評価システムの導入とインセンティブの付与
(具体的には)
  職員の業績に対する厳正な評価システムを各大学に導入
  個々の職員の有する潜在的能力を発揮させるインセンティブ・システムを給与制度等に導入
  教員の選考過程の客観性・透明性を高めるため、公募制を積極的に導入するとともに選考基準を公開
  事務職員等の採用・昇任等は、幹部職員も含めて学長の下に一元的に管理 など

視点3:

国際競争に対応し得る教員の多様性・流動性拡大と適任者の幅広い登用
(具体的には)
  任期制・公募制の積極的導入のための実施方法の工夫等を中期計画の中で明確化
  世界的な研究者等を短期間招聘するための年俸制の導入など、多様な給与体系へ移行
  競争的資金を活用した任期付職員の採用制度を導入
  国民や社会への説明責任等の観点から、学長選考の過程に社会(学外者)の意見を反映させる仕組みを導入 
  学長が不適任の場合に、学内における審査を経て主務大臣が学長を解任できる仕組みを導入 など

2. 制度設計の方針

  (1) 身分
   職員の身分については、国家公務員の身分を付与する場合(「公務員型」)と付与しない場合(「非公務員型」)で、概ね次のような違いがある。

  「公務員型」:
    身分保障は、法律で規定。
    労働三権のうち争議行為は禁止。
    採用については、教員を除き原則として試験採用。
    兼職・兼業、政治的行為の制限等の服務については、原則として国家公務員法上の制約。
    外国人の管理職への登用は原則不可。
      (給与や勤務時間等については、「非公務員型」と同様に法人が基準等を決定)

  「非公務員型」:
    身分保障は、法人の就業規則等において規定。
    労働三権を付与。
    採用は、法人の定めるルールにより採用。
    兼職・兼業、その他の服務に関しては、必要に応じ、法人の就業規則等で規定。
    外国人の管理職への登用も可能。
      (医療保険・年金や収賄等の刑法の適用等については、国家公務員と同じ扱い)

   公務員制度については、近年の国家公務員制度(採用、給与、兼職・兼業など)の弾力化措置に加え、昨年12月に閣議決定された「公務員制度改革大綱」を踏まえた更なる制度改革が検討されているが、こうした動向をも考慮した上で、法人化後の「公務員型」と「非公務員型」とを比較検討した場合でも、職員の多彩な活動を可能とする次のような弾力的な人事制度を実現し得るという点で、「非公務員型」により優れた面が多い。
    1  国家公務員法体系にとらわれない、より柔軟で弾力的な雇用形態及び給与体系、勤務時間体系
    2  優れた教育研究能力等を有する外国人の学長、学部長等の管理職への登用、外国教員任用法の枠にとらわれない多様な雇用形態
    3  営利企業の役員等を含む兼職・兼業について、法人の方針に基づく弾力的な運用
    4  教員以外の職員について、国家公務員法上の試験採用の原則によらず、各法人の人事戦略に基づく専門的知識・技能等を重視した採用

   「知」の時代たる21世紀にあって、大学の責務は極めて重大である。国立大学が社会から期待される使命や機能の実現を目指し、その責務を全うしていくためには、「諸規制の大幅な緩和と大学の裁量の拡大」という法人化のメリットを最大限に活用して、大学及び職員の持てる能力を存分に発揮させることが重要であり、こうした観点に立ち、職員の身分については「非公務員型」とすることが適当である。

   「非公務員型」を採用するに当たっては、法人への移行以前から各国立大学に勤務している職員の処遇について配慮が必要である。
     このため、医療保険・年金、宿舎などについては、法人化後も全ての職員を対象に引き続き国家公務員と同様の扱いとすることに加え、法人への職員の引継ぎや退職手当の期間通算のための所要の法的措置が講じられる必要がある。
     また、各大学の就業規則等において、休職、解雇、退職、定年その他について適切な定めが必要である。

 なお、「非公務員型」による新たな人事制度の創設に際しては、新制度のメリットを十分に活用するとともに、各大学の構成員が一丸となって大学の発展を図っていくためにも、関係者の自覚と奮起の下、各大学及び国立大学全体としての良好な労使関係の構築に向けた取組が不可欠である。

  (2) 選考・任免等
  (大学における人事の自主性・自律性)
   憲法上保障されている学問の自由に由来する「大学の自治」の基本は、学長や教員の人事を大学自身が自主的・自律的に行うことである。法人化後の教員の任免、分限、服務等に関しては、このような考え方を新しい大学の運営体制の下でも適切に取り入れる。

   具体的には、教員の人事に関する方針及び基準・手続きは、主に教学面に関する重要事項や方針を審議する機関である評議会(仮称)の審議を経て、大学内部の規則として定め、当該方針及び基準・手続きに基づいて個別の人事を行う。
     これにより、法人化を契機に、各国立大学の特色や個性を伸ばすために、人事面においても各大学独自の工夫や方針を活かした柔軟な制度設計がなされることを期待する。

  (学長の選考方法等)
   法人化後の国立大学の学長は、経営・教学双方の最終責任者として、学内コンセンサスに留意しつつ、強いリーダーシップと経営手腕を発揮することが強く求められる。
    つまり、法人化後は、学長の見識・能力如何が大学の命運を大きく左右することになり、このため、学長には、教育研究に高い識見を有すると同時に、法人運営の責任者としての優れた経営能力を有している者が選任される必要がある。

   学長は、学内の選考機関における選考を経た後に、文部科学大臣が任命する。また、学長の選考に関する基準、手続は、法人の管理運営に責任を持つ法人の長として必要な要件をも加味したものとすることが適当である。

   これからの国立大学が、国民や社会に対する説明責任を重視した、社会に開かれた大学を目指すこと、さらに、法人化に伴い、学長に大学の経営面での責任が加わるなど、その社会的責務が増大すること等にかんがみ、各大学における学長の選考基準、選考手続の策定に際し、また、具体の学長選考過程において、学内のほか社会(学外)の意見を反映させる仕組みとすべきである。

   学長の選考基準、手続の策定や具体の選考過程において、学外の意見を反映させる方法としては、新しい運営体制の下で設置される運営協議会(仮称)を積極的に活用することが適当であり、具体的には、経営に責任を持つ法人の長としての役割と教学の長としての学長の役割を等しく重視する観点から、運営協議会(仮称)及び評議会(仮称)の双方のメンバー(の代表)から構成される学長選考委員会(仮称)において、学長の選考基準、手続を定め、学長候補者を選考する。

   選考機関の関係を図に示せば、以下の通りとなる。

選考機関の関係図


   なお、具体の選考過程において学内者の意向聴取手続(投票など)を行うことも考えられるが、その場合であっても、例えば、学長選考委員会(仮称)(又はその下に置かれる学外の有識者を含む調査委員会)が広く学内外から候補者を調査し、候補者を絞った上で意向聴取手続を行うことや、意向聴取対象者の範囲を、大学・法人運営の最高責任者を選ぶ上で適切なものとなるよう、教育研究や大学運営に相当の経験と責任を有する者に限定することなどが重要である。

   上記の学長選考過程の例を図示すると、以下の通りとなる。

学長選考過程の例

   現行制度上、学長の任期は、再任の可否、再任を認める場合の任期を含め、教育公務員特例法により各大学が個別に定めている。法人化後の学長の任期については、各大学において定める方法、法律において定める方法、法律で定める期間の範囲内(○年から×年まで)において各大学が定める方法等が考えられるが、いずれの場合にあっても、大きな裁量を与えられて大学運営を委ねられる法人の長としての役割を兼ねることを考慮し、また、中期計画の期間が原則として6年の期間で一律に設定されることとの関連にも留意すべきである。

   法人の長としての学長が不適任とされる場合には、一定の要件の下で文部科学大臣が、学長の選考を行った機関の審査等の手続を経て解任できる。

  (役員、学部長等の選考方法等)
   大学の運営を適切に行うために、学長を助け、大学運営に責務を負う副学長をはじめとする執行体制を整備することが必要である。また、役員とともに大学運営に責任を負う学部長等の権限と役割を明確化すべきである。

   副学長は、学長を補佐し、その業務の一部を分担するものであることから、学長が自らの責任において任命する。
     任命に当たっては、副学長の職務の性質等を踏まえた基準及び手続により行われるべきである。

   副学長の任期の定め方については、学長の場合と同様の選択肢があるが、いずれにしても、その任期については、学長に任命されて、学長を補佐し、業務の一部を分担するという職務の性格上、学長の任期の範囲内とすべきである。
     副学長の解任については、任命権者である学長が行うこととする。その場合の手続については、任命の場合と同様の観点から検討されるべきである。

   監事は、大学の業務の適切な執行を担保するという職務の性質上、文部科学大臣が任命、解任する。
     監事の任命に当たっては、大学の教育研究及び大学運営に関し高い識見を有する者が選任されることとする。

   学部長等は、学長が任免する。任免に当たっては、大学全体の運営方針を踏まえつつ、ダイナミックで機動的な学部運営が求められる法人化後の学部長等の職務の性質等を踏まえた基準及び手続により行われるべきである。また、学部長等の任期については、各大学において定める。

  (教員の任免等)

   具体の教員選考に際しては、専門性を有する学部等の考えが尊重されるとともに、大学全体の人事方針が適切に反映されることが重要であり、新しい大学の運営体制の下で、大学・学部等の運営の責任者たる学長及び学部長等がより大きな役割を果たすべきである。

   教員の選考過程の客観性・透明性を高めるために、公募制の積極的な導入や選考基準・結果の公開等を進める。
     さらに、その選考のための委員会に学内外の関連分野の教員等の参加を求めたり、学外の専門家による評価・推薦を求め参考にするなどの方法により、外部の意見を聴取し、より総合的な判断を可能とする仕組みを設けることが必要である。

   国内外の優秀な人材が積極的に採用されるよう、教員の職務内容(教育、研究、大学の管理運営等)に適切に対応できる弾力的な人事システムとすべきである。
     また、教員人事の流動性・多様性を高めるために、任期制や公募制の積極的導入など具体的な工夫等を中期計画の中で明確化するなどの措置が必要である。さらに、他大学出身者、外国人、女性、障害者の教員への採用を促進するための人事運営上の配慮や条件整備が必要である。
     なお、国際感覚に富んだ優秀な若手教員を育成する観点からは、若手教員が積極的に海外の大学等において研究の機会を得ることができるよう、サバティカル制度の導入など人事運営上の配慮や条件整備が必要である。

  (教員以外の職員人事の在り方)
   大学運営の自主性・自律性を高める観点から、教員以外の職員の人事システムについても、教員の場合と同様、各大学が決定し、任命権は、学長に属することとする。

   職員の構成は、教員、事務職員、技術職員等の既存の職種の画一的な区分にとらわれることなく、専門性の高い職種に従事する職員が高いモラールを維持できるように、各大学の実状に即した多様な職種を自由に設定できることとする。また、例えば教員の支援業務を担当する職員など、教員とその他の職員とが連携・協力して教育研究環境を整える視点も重要である。

   「非公務員型」による弾力的な人事制度を実現した結果として、事務職員、技術職員など教員以外の職員についても、その職務に対する積極的な努力と実績が十分に評価され、報いられるようにすることが必要である。
     また、これらの職員においても、高度の専門性を必要とされる職域が広がっていることに鑑み、専門性に基づく処遇を可能とするような人事制度を、各大学で設けることとする。
     さらに、事務職員等については、事務組織の機能の見直しに関連して、大学運営の専門職能集団としての機能が発揮できるよう、採用、養成方法を検討する。

   「非公務員型」を採用することにより、国家公務員法で定められた採用、研修などの体系から離れることになるが、公平かつ透明な採用や能力の開発・向上のための研修の実施については、各大学における人事の主体性を前提としながらも、大学間で協力したり、共同して取り組むことがより効果的・効率的な場合もあることから、例えば、以下のような方策を検討する必要がある。
    採用
      国家公務員試験の対象とならなくなることから、試験問題の作成、試験の実施・採点など、採用関係事務の効率的な処理や質的水準・公正性の観点から、複数の大学が共同で試験を実施することなどの具体的な方策
    研修
      財務会計、人事管理、安全衛生管理など各大学に共通する課題について、複数の大学が共同して研修の実施に当たるための具体的な方策

   また、法人化に伴い、職員の任命権は全て各大学の学長に属することとなるが、特に事務職員等の能力の向上や組織の活性化等を図る観点から、各大学における人事の主体性を前提としつつ、法人化後も大学の枠を超えた幅広い人事交流が可能な仕組みを整えることが重要である。
     このため、具体的には、
    1  地域や分野・機能等に応じて各大学間を始め幅広い人事交流を促進するための協力体制・仕組みの整備
    2  各大学間等の退職手当の相互期間通算、国等との交流の場合の退職手当の期間通算等の措置(教員についても同様)
       等の方策についての検討が必要である。

   なお、現在、文部科学大臣の任命権の下に国立大学間等を異動している事務職員については、法人化により、任命権が在籍する大学の学長に属することとなるが、そのまま配置を固定された場合に生じ得る組織の活性化の問題や処遇の問題等を考慮する必要がある。
     このため、これらの事務職員については、法人化後、当分の間の過渡的な対応として、本人の希望等も勘案して他の大学等への適切な異動が可能となるよう、各大学が他大学等と連携・協力し、文部科学省もこれを支援するなど、運用上の工夫が必要である。

  (3) 給与
   各大学が定める給与基準においては、職員の潜在的な能力が十分に発揮されるよう、職員の業績を反映したインセンティブを付与する給与の部分が適切に織り込まれたものとすることが必要である。
     このため、各大学において、職務の性質を踏まえた個人の業績を評価するための制度を設ける。この場合、大学における教育研究が中・長期的視点に立って行われること等を踏まえ、適切な評価が行われるように配慮すべきである。
     また、国際的に競争力のある多様な教員構成を実現するために、年俸制の導入など、多様な給与体系を可能とすべきである。

   法人化の趣旨を踏まえ、上記の給与システムを実現するため、具体的な給与基準は各大学において決定するが、各大学における適切な給与決定の参考とすることができるような給与モデルを作成することの必要性も考慮する。

   教員の流動性を高める観点からは、例えば、任期付教員の給与を一定の要件の下に優遇すること等により任期制ポストへの異動を促進するなどの工夫も必要である。
     また、外部資金を活用した大規模な研究プロジェクトを推進するため、競争的研究費を、当該プロジェクトを担当する任期付職員の人件費等に充当できることとする。

  (4) 服務・勤務時間
  (服務等の考え方)
   教育及び研究に従事する教員の職務の特殊性に鑑み、特に教員について各大学において多様な勤務形態を認めることを可能とする。

   法人化の趣旨を踏まえ、職員の服務、勤務時間等は各大学において決定する。
     この場合、国立大学が公的な財政支出に支えられることに鑑み、自己規律と国民に対する説明責任を踏まえたものでなければならない。
     なお、服務等に関する基本的な考え方が大学間で大きく異なることがないように、共通の指針を設けることの必要性も考慮する。

  (兼職・兼業)
   大学教員の有する優れた知識や経験等を社会に還元し、産学官連携の推進や地域社会への貢献等に資する観点から、職員の社会的貢献のための学外活動を広く認めることとし、「非公務員型」により兼職・兼業に関する規制を緩和する。

   この場合、兼職・兼業が教員の本務、特に学生に対する教育の面で支障を生じたり、大学と教員個人との利益相反が生じることがないよう、各大学において、ガイドラインを設けるなど、適切な配慮を行うことが必要である。ガイドラインは、教員にとって明確な基準であると同時に、国民に対する適切な情報開示が行われるものとする。

   また、より柔軟な事業展開を可能とする観点から、国立大学法人(仮称)の業務や組織の一部を別法人にアウトソーシングする場合、各大学の職員がその身分を保有しつつ、これらの関連法人の業務を兼ねることも可能とする取り扱いが必要である。

  (勤務時間管理)
   教育研究に従事する教員の特殊性に鑑み、各大学において多様な勤務形態(例えば週3日勤務制などのワークシェアリング)を認めることを可能とする。

   また、教員の職務の多様性にかんがみ、その潜在的な能力を発揮しやすいよう、勤務時間管理の在り方を弾力的なものとし、例えば、一定の要件の下での裁量労働制等の導入も可能とすべきである。

  (5) 人員管理
  (中・長期的な計画に基づく人員管理)
   法人化により職員の定員は、従来の手法による定員管理の対象外となるが、国立大学が教育研究を担う特殊性を有する組織であることを踏まえ、人員(人件費)の管理に関しては、各大学の中・長期的な展望等に沿って行うことが必要である。

   このため、学内において、中・長期的な人事計画の策定と組織別の職員の配置等(人件費管理を含む)についての調整を行うための仕組みを設けることが必要である。この場合、新しい運営組織の下で、経営面からも十分な検討が行われ、調整が図られる必要がある。

   また、国立大学評価委員会 (仮称)における各大学の業績に対する評価に際しても、給与等の人件費総額が適切に管理されているかどうか、慎重かつ厳正な評価を行うことが必要である。

  (外部資金を活用した職員の任用)
   外部資金の獲得に対する各大学の積極的な努力を促し、その努力が報いられるようにする観点から、外部資金 (競争的研究費等)による職員の新たな任用は、運営費交付金により人件費が措置される他の職員とは区別して考えるべきである。また、外部資金を活用した研究プロジェクト等を推進するため、その資金の一部を、当該プロジェクトを担当する任期付職員の人件費に充当できることとする。



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4  目標・評価

1. 検討の視点 (法人化を契機に、目標・評価の仕組みの導入を通じて国立大学がどう変わるのか、どのような大学になるのかという視点の整理)

視点1:

明確な理念・目標の設定による各大学の個性の伸張
(具体的には)
  各大学の教育研究の特色・地域性等を踏まえ、大学全体としての基本的な目標や重点的に取り組むべき事項などを中期目標に掲げることにより、各大学の個性を明確化 など

視点2:

第三者評価による教育研究の質の向上と競争的環境の醸成
(具体的には)
  大学の教育研究活動について、厳正で客観的に評価する第三者評価の仕組みを導入
  国際的な活動実績等を有する幅広い分野の有識者から構成する国立大学評価委員会 (仮称)が総合的に評価
  教育研究に関する事項は、大学評価・学位授与機構による専門的な評価の結果を活用
  評価結果を各大学における教育研究等の改善、次期以降の中期目標・中期計画の内容や運営費交付金等の算定に反映 など

視点3:

目標、評価結果等の情報公開による説明責任の確保
(具体的には)
  各大学の中期目標、中期計画、年度計画を公表
  入学・学習機会、卒業後の進路、教育研究状況等に関する幅広い情報を積極的に提供
  各大学に対する国立大学評価委員会(仮称)等による第三者評価の結果を積極的に公表
  情報提供に当たり、利用者の立場に立った分かりやすい内容と方法を工夫 など

2. 制度設計の方針

  (1) 基本的な考え方
   国は、大学関係者や広く各界の有識者で構成される審議機関による検討を踏まえ、我が国の高等教育・学術研究に係るグランドデザインや政策目標、さらには国や国立大学が果たすべき役割や責務等を明らかにしていく責務を負っている。

   他方、各国立大学は、大学としての自主性・自律性の下に、当該大学の教育研究の基本理念やこれを実現するための長期的な目標を自ら明らかにすることが期待される。

   中期目標・中期計画の策定とこれらを前提とした評価の仕組みは、こうした国としての高等教育・学術研究に係るグランドデザイン等と、大学ごとの基本理念や長期的な目標を踏まえ、一定期間における両者の制度的な調和と各大学の質的向上を図るための改革サイクルとして位置付けられる。
     また、中期目標・中期計画・評価の各段階で広く公表することを通じて、国立大学としての国民に対する説明責任を果たすことにも資する。

  (2)中期目標・中期計画等
  (中期目標・中期計画の性格)
   中期目標は、各大学の基本理念や長期的な目標を実現するための一つのステップであり、一定期間内の達成目標である。また、大学が中期計画を策定する際の指針となるとともに、大学の実績を評価する際の主な基準になるという性格を有する。

   中期計画は、中期目標を実現するための具体的な計画である。運営費交付金等についての予算を要求する際の基礎となるとともに、中期目標の達成度を評価する際の具体的要素となるなどの性格を有する。

   中期目標及び中期計画は、相互に密接に関連するのは当然であるが、特に大学の教育研究の方針は大学の主体的な判断ができるだけ尊重されるべきであり、企画立案と実施の機能を国と大学との間で完全に分離することは適当でないことから、それぞれの原案はあらかじめ各大学において一体的に検討する。

  (中期目標・中期計画の期間)
   中期目標・中期計画の期間は、大学におけるカリキュラム編成の実態や修業年限等を考慮し、6年を原則とする。

   期間中の中期目標や中期計画の見直しについては、各大学が社会のニーズや科学技術の進展等に適切に対応できるよう、大学からの意見提出や申請等に応じ、文部科学省において、大学の自主性を尊重しつつ、文部科学省に置く国立大学評価委員会 (仮称)の意見を聴取して、年度を単位に可能な限り柔軟に対応する。

  (中期目標・中期計画の作成手続き)
   中期目標については、大学の教育研究の自主性・自律性を尊重する観点から、あらかじめ各大学が文部科学大臣に原案を提出するとともに、文部科学大臣が、この原案を十分に尊重し、また、大学の教育研究等の特性に配慮して定める。
     こうした基本的スキームを制度的に担保するため、例えば、
    1  大学から文部科学大臣への事前の意見 (原案)の提出
    2  文部科学大臣に対する大学の意見(原案)への配慮義務
    3  文部科学大臣に対する大学の教育研究等の特性への配慮義務
    などの規定を「国立大学法人法」 (仮称)等で明確に位置付ける。
     中期計画については、各大学において、あらかじめ中期目標と中期計画の原案を一体的に検討しておいた上で、最終的に確定した中期目標に基づいて作成し、文部科学大臣が認可する。

   文部科学大臣は、各大学の中期目標・中期計画について、あらかじめ文部科学省に置く国立大学評価委員会 (仮称)の意見を聴かなければならない。
     中期計画には中期目標期間中における予算を記載することから、国立大学評価委員会 (仮称)は、各大学に対する運営費交付金等の配分についても意見を述べる。

   文部科学省や国立大学協会等は、中期目標・中期計画の形式及び内容について、複数の参考例や作成指針等を提示することが望ましい。

  (中期目標・中期計画の内容)
   中期目標は、原則として、全学的にわたるもので、主に大きな方向性を示す内容とし、大学運営の基本的な方針や当該大学として重点的に取り組む事項等を中心に記載する。なお、各学部等ごとの内容は中期計画の中で記載する。

   具体的に中期目標に記載すべき事項としては、大学の特性を踏まえ、次のとおりとする。
    1 中期目標の期間
    2 大学全体としての基本的な目標
    3 大学の教育研究等の質の向上に関する目標
    4 業務運営の改善及び効率化に関する目標
    5 財務内容の改善に関する目標
    6 社会への説明責任に関する目標
    7 その他の重要目標

   中期目標は、各大学における教育研究の高度化、活性化に資するとともに、社会からの要請にも適切に対応した内容とする。また、全大学に共通する内容を基本としつつ、各大学ごとの教育研究の特色、地域性、その他の特性を踏まえ、一層の個性化を促進するよう工夫する。

   中期計画には、予算の根拠として必要な事項や法令に定める事項の他、大学の社会に対する意思表示として、可能な限り中期目標を実現するための数値目標や目標時期を含む具体的な内容を記載する。

   具体的に中期計画に記載すべき事項としては、大学の特性を踏まえ、次のとおりとする。
    1 大学の教育研究等の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置
    2 業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
    3 財務内容の改善に関する措置
    4 社会への説明責任に関する措置
    5 その他の重要目標に関する措置

  (年度計画)
   各大学においては、中期計画に基づき、各事業年度の業務運営に関する計画 (年度計画)を定め、これを文部科学大臣に届け出る。

  (3) 評価
  (基本的な考え方)
   国立大学法人 (仮称)に対する評価制度は、大学運営の自主性・自律性や教育研究の専門性を尊重しつつ、評価により、大学の継続的な質的向上を促進するとともに、社会への説明責任を果たすことを目的とする。

   また、社会一般に分かりやすく大学の状況を示すことができる評価制度とするとともに、大学の過重な負担とならない効率的な評価や、評価制度自体の透明性への留意が必要である。
     さらに、常により良い評価の仕組みを求めて、不断に工夫・改善を重ねていくことが重要である。

   なお、大学における教育研究活動の評価に当たっては、計量的・外形的な基準だけでは適切を期し難い面があることや、教育研究活動の中長期的な視点にも十分に留意すべきである。

(評価の主体)
   国立大学法人(仮称)の特殊性及び国立大学法人(仮称)全体の規模の大きさ等を踏まえ、より効率的・効果的な評価を実施するため、文部科学省に、独立行政法人評価委員会とは別に、国立大学評価委員会(仮称)を設け、同委員会が各国立大学法人(仮称)の評価を行う。

   国立大学評価委員会(仮称)は、社会・経済・文化等の幅広い分野の有識者を含め、大学の教育研究や運営に関して高い識見を有する者によって構成する。その構成員の選任に当たっては、各分野において国際的水準の活動に従事した経験を有すること等を基本的な要件とする。なお、大学関係者については、現に所属する又は過去に所属した大学の個別評価に参加することはできない。

   各評価主体の基本的な役割・性格については、1各大学は、中期目標の達成度について、種々の外部評価、第三者評価を活用して厳正な自己点検・評価を行い、2大学評価・学位授与機構は、各大学の自己点検・評価に基づき、主として教育研究に関する事項について専門的な観点から評価を行い、3国立大学評価委員会(仮称)は、教育研究に関する大学評価・学位授与機構の評価結果を尊重しつつ、国立大学法人(仮称)の運営全体に対して総合的な評価を実施する。
     なお、大学評価・学位授与機構が国立大学法人(仮称)の主として教育研究面の評価を行うことに伴って、その業務内容を見直す必要がある。

(評価の内容・方法・手続)
   評価は、各大学ごとに中期目標の達成度について行うとともに、各大学の個性を伸ばし、質を高める観点から、分野別の研究業績等の水準についても行う。
     国立大学評価委員会(仮称)は、評価事項のうち、教育研究に関する事項について、評価に先立って、大学評価・学位授与機構の意見を聴き、尊重する。

   具体的には、国立大学評価委員会(仮称)の評価に先立って、1各大学が中期目標の達成度について自己点検・評価を行い、国立大学評価委員会(仮称)に報告する。2国立大学評価委員会(仮称)は報告されたもののうち、教育研究に関する事項に係る部分の評価を大学評価・学位授与機構に依頼する。3同機構においては、専門的な観点から教育研究に関する評価を行い、その結果を国立大学評価委員会(仮称)に報告する。4国立大学評価委員会(仮称)は、同機構の教育研究に関する評価結果を尊重して、総合的な評価を行う。

   国立大学評価委員会(仮称)及び大学評価・学位授与機構は、評価を決定する前にその結果を大学に示して、意見の申立の機会を設ける。また、国立大学評価委員会(仮称)及び大学評価・学位授与機構は、評価結果を公表する。

(評価結果の活用)
   各大学においては、評価結果を教育研究その他の活動の改善のために役立てるとともに、自らの基本理念や長期的な目標の点検に活用する。

   評価結果は、次期以降の中期目標・中期計画の内容に反映させる。その際、その内容が、評価結果を踏まえて、発展的・現実的なものとなるよう配慮する。

   評価結果は、次期以降の中期目標期間における運営費交付金等の算定に反映させる。その際、競争的環境の醸成及び各大学の個性ある発展を促進する観点から、教育研究その他の業績に対する評価の結果を適切に反映した算定が行われなければならない。
     また、運営費交付金の算定に評価結果を反映するに当たっては、各大学・学部等の理念・目標・特色・条件等を踏まえた弾力的な算定方法の可能性を考慮する。
     なお、運営費交付金等の算定に用いる評価項目については、適切なものとなるよう慎重に検討するとともに、各大学の自主性・自律性が結果として大きく制約されることのないよう配慮する。また、運営費交付金等の算定の基準や方法を予め大学及び国民に対して明確にしておく。
     上記諸点を十分に踏まえ、評価結果の運営費交付金等への適切な反映の方法と手続について、具体的な検討を行う必要がある。なお、評価結果を次期中期目標等に適切に反映させるための実行段階における課題についても、さらに具体的な検討が必要である。

(各年度の業務の実績に関する評価)
   各大学は、各事業年度における業務の実績について、主として中期目標達成に向けた事業の進行状況を確認する観点から、国立大学評価委員会(仮称)の評価を受けることとするが、この評価は、一定のフォーマットにより収集した情報に基づき実施するなど、各大学にとって過度の負担とならないよう配慮する。
     各大学においては、国立大学評価委員会(仮称)による各事業年度の業務実績の評価結果を活用して、自主的に業務運営の改善等を図る。
     国立大学評価委員会(仮称)は、各事業年度の業務実績の評価結果を公表する。

(4) 情報公開
   国立大学は、その多くを公財政支出に支えられた極めて公共性の高い機関として、社会に対する説明責任を果たしていく必要がある。
     このため、各大学において、中期目標、中期計画、年度計画をはじめ、財務内容や管理運営に関する情報、大学への入学や学習機会に関する情報、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する情報、さらには、国立大学評価委員会(仮称)の評価結果など、当該大学に関する情報全般を、社会に対して積極的に提供する。
     なお、これらの情報を提供するに当たっては、利用者の立場に立った分かりやすい内容と方法を工夫する。



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5  財務会計制度

1. 検討の視点(法人化を契機に、財務会計の在り方を通じて国立大学がどう変わるのか、どのような大学になるのかという視点の整理)

視点1:

教育研究等の第三者評価の結果等に基づく資源配分
(具体的には)
  運営費交付金等の資源配分に当たり、競争的環境の醸成及び各大学の個性ある発展を促進する観点から、各大学の教育研究等についての第三者評価の結果を適切に反映など

視点2:

各大学独自の方針・工夫が活かせる財務システムの弾力化
(具体的には)
  運営費交付金は、使途を特定せず各大学の判断で弾力的に執行(年度間の繰越しも可能)
  一定の学生納付金については、国が示す範囲内で各大学の方針・工夫により具体的な額を設定
  各大学の自己努力による剰余金は、あらかじめ中期計画で認められた用途に充当
  施設については、国が措置する施設費による整備のほか、長期借入金や土地の処分収入による整備及び各大学におけるその他の自己収入による整備も実施
  寄附金等の自己収入は、原則として運営費交付金とは別に経理して、各大学の努力が報いられるようインセンティブを付与
  地方公共団体からの寄附金等の受入を一定の要件の下に容認など

視点3:

財務面における説明責任の遂行と社会的信頼性の確保
(具体的には)
  運営費交付金の算定・配分の基準や方法を予め大学及び国民に対して公表
  各大学の毎年度の財務内容を広く公表・公開
  大学の特性を踏まえた会計基準の検討 など

2. 制度設計の方針

(1) 中期計画と予算
   国は、各年度の資金交付に当たっては、原則として中期計画に記載された事業等の実施を前提とするものの、当初予見困難であった状況への対応が求められることなども考えられることから、必要に応じ中期計画の変更を行いつつ、各年度の財政状況、社会状況等を総合的に勘案し弾力的・機動的に措置するものとする。

   予算措置の手法は、基本的には中期計画において計画期間中の予算額確定のためのルールを定め、各年度の予算編成においてルールの具体的適用を図るいわゆる「ルール型」とするが、事前のルールにしたがった算定にはなじまない経費も考えられるため、そのようなケースにも適切に対応し得る手法とする。

(2) 運営費交付金
(運営費交付金の算出方法)
   各大学に対する運営費交付金は、予算配分における透明性の確保や各大学の自主性・自律性の向上の観点、及び、特定の事業等の実施に適切に対応する観点から、次の1及び2の額を合計したものとする。
    1  学生数等客観的な指標に基づく各大学に共通の算定方式により算出された標準的な収入・支出額の差額(=標準運営費交付金)。
    2  客観的な指標によることが困難な特定の教育研究施設の運営や事業の実施に当たっての所要額(=特定運営費交付金)

   運営費交付金には、競争的環境の醸成及び各大学の個性ある発展を促進する観点から、中期計画終了後の各大学に対する第三者評価の結果等を適切に反映させるものとし、その具体的方法や手続についてさらに検討する。
     また、各大学・学部等の理念・目標・特色・条件等を踏まえた弾力的な運営費交付金の算定方法の可能性を考慮する。
     なお、運営費交付金の算定に用いる第三者評価の項目については、適切なものとなるよう慎重に検討するとともに、各大学の自主性・自律性が結果として大きく制約されることのないよう配慮する。
     また、運営費交付金等の算定・配分の基準や方法を予め大学及び国民に対して明確にする。

(自己収入の取り扱い)
   自己収入を、通常の業務遂行に伴い収入が必然的に見込めるもの(学生納付金、附属病院収入等)とそれ以外のもの(寄附金等)に区分した上で、前者については、運営費交付金の算出に用いることとし、後者については、原則として運営費交付金とは別に経理し、運営費交付金の算出に反映させない。
     なお、自己収入の増加に向けてのインセンティブを付与する観点から、前者についても、例えば、附属病院において標準収入を上回った収入があるなど、自己努力により剰余金を生じた場合には、あらかじめ中期計画において認められた用途に充てることができるものとする。

(学生納付金の取り扱い)
   学生納付金については、教育の機会均等、優秀な人材の養成とあわせて、大学の自主性・自律性の向上等にも配慮する必要がある。したがって、運営費交付金算定への反映のさせ方に配慮しつつ、各大学共通の標準的な額を定めた上で、一定の納付金の額について、国がその範囲を示し、各大学がその範囲内で具体的な額を設定することとする。

(3) 施設整備費
(財源)
   国立大学の施設整備は、国家的な資産を形成するものであり、毎年度国から措置される施設費をもって基本的な財源とするが、財源の多様化や安定的な施設整備、自主性・自律性の向上等の観点から、長期借入金や土地の処分収入その他の自己収入をもって整備することを可能とする。また、より効果的・効率的な整備を行うため、PFIによる施設整備も可能とすべきである。

(長期借入金)
   各大学における多様な財源確保の観点から、長期借入を行うことを可能とする。

(不用財産処分)
   現在、国立学校特別会計において認められている学校財産処分収入をもって国立学校の施設整備の財源に充てる仕組みについては、これを存続させる。

(長期借入等を行うシステムの構築)
   移転整備及び附属病院整備に係る長期借入や不用財産処分収入の処理等を行うためのシステム(以下「システム」という。)を構築する(共同機関の設置等)。
    なお、その際、国立学校財務センターの活用を検討する。

(施設整備の仕組み)
  国は、概ね次のような業務を行う。
  ・大学全体の施設整備計画の策定及び実施
  ・各大学の施設整備計画(中期計画)の調整
  ・各大学の施設整備関係予算のとりまとめ及び配分 など

   各大学は、概ね次のような業務を行う。
  ・各大学の施設整備計画の策定及び中期計画への反映
  ・配分された施設費及び自己財源による施設整備 など

  「システム」は、概ね次のような業務を行う。
  ・移転整備及び附属病院整備に係る長期借入金の一括借入れ及び償還
  ・国の配分方針に基づく長期借入金及び不用財産処分収入の各大学への配分 など

(4) 土地・建物等
(移行時の措置)
   各国立大学が移行前に現に利用に供している土地・建物は、処分が適当と考えられるものを除き、各大学の財産的基礎を確立する観点等から、原則として国から当該大学に対し現物出資又は無償貸与するものとする。
     なお、現に利用に供している設備、備品等については、無償で引き継ぐものとする。

(土地・建物の処分収入の取り扱い)
   土地・建物の処分は、主務大臣の認可を経てなされるが、原則として当該処分収入の一定部分については各大学の自己収入とし、残余は国立大学法人(仮称)全体の施設整備の財源調整に充てる。

(5) 長期借入金債務
   現在、国立学校特別会計が有している長期借入金債務については、「システム」に承継させることとし、同「システム」が附属病院を有する大学からの拠出金をとりまとめ、確実に償還する仕組みを検討する。

(6) 寄附金等
(地方公共団体からの寄附金等)
   現在、地方財政再建促進特別措置法により禁じられている地方公共団体からの寄附金等については、法律制定当時と現在との社会経済情勢の変化、国立大学の地方貢献の進展等の状況を踏まえ、一定の要件のもとに可能とすべきである。

(税制上の取り扱い)
   寄附金の全額損金扱いを含め、国税及び地方税における現行の非課税措置等の取り扱いは、これを存続させるべきである。
     関連して、私立大学についても寄附金などの税制上の扱いの改善を図るべきである。

(7) 会計基準等
   独立行政法人全般へ適用する会計基準については、既に「独立行政法人会計基準」が策定されているが、これを参考としつつ、大学の特性を踏まえた会計基準を検討する。

   大学の規模に関わらず、財務規律の確保、資源の有効・適切な配分、対外的説明責任等の観点から、全ての大学は、財務に関する学外の有識者を加えた適切な内部監査体制を整備するとともに、会計監査人の監査を受けるものとする。

   各大学の財務内容は、毎年度、広く公表・公開する。



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6  大学共同利用機関

1. 検討の視点
   全国の国公私立大学等の関係研究者が集まって、大規模な施設設備の共同利用や国際協力事業等の実施等を行い、効果的な共同研究を進める大学共同利用機関は、研究者の自由な発想を源泉とする学術研究を推進する組織であり、国立大学セクターに属する機関として位置付けられている。このため、大学共同利用機関の法人化を検討するに当たっては、以下の諸点を除き、原則として国立大学と共通した制度設計を行うことが適当である。
   なお、大学共同利用機関についての制度設計の検討に当たっては、次の視点に立って検討を行った。

視点1:

学術研究をさらに発展させる観点からの制度設計
   大学共同利用機関は、それぞれの学術分野において我が国を代表する中核的研究機関であり、その研究成果は国際的にも高く評価されている。したがって、大学共同利用機関の法人化に当たっては、我が国の学術研究が高い国際的競争力をもち得るよう、学術研究をさらに発展させる積極的観点から、大学及び他の研究機関(独立行政法人・特殊法人等)との関係を含め、制度を検討する必要がある。

視点2:

大学や研究者コミュニティに開かれた運営システムの確保
   大学共同利用機関は、全国の国公私立大学や研究者コミュニティ(国内外の関連分野の研究者群)の研究者が集まり、共同研究を進めるところにその特徴があり、制度創設の当初から、評議員会と運営協議員会を通して機関外部に開かれた運営を行ってきたが、法人化後の大学共同利用機関の運営システムについても、大学や研究者コミュニティをはじめ、さらに広く社会に開かれた柔軟な運営体制を確保できるよう、制度を検討する必要がある。

2. 制度設計の方針(国立大学の場合と異なる点を中心に整理)

(1) 組織業務
(法人の単位)
   法人の単位については、大学共同利用機関ごとに法人格を付与する。

(法人の名称)
   法人の一般的な名称については、大学共同利用機関がいくつかの点で大学と異なる制度設計上の特殊性を有することになることに考慮し、「大学共同利用機関法人(仮称)」とする方向で検討する。

(根拠法)
   大学共同利用機関法人(仮称)については、国立大学法人(仮称)の根拠法と同一の法律に、その名称、目的、組織、運営の在り方等を規定する方向で検討する。

(役員)
   大学共同利用機関法人(仮称)の役員の構成については、機関の長(法人の長)、監事(2名)及びその他の役員とする。

   法人の長は、法人化された大学共同利用機関の包括的な最終責任者として、法人を代表する。

(役員以外の運営組織)
   大学共同利用機関は、共同利用のための機関であり、また、大学の学術研究の発展に資すること等を目的とする機関であることから、特に機関外部に開かれ、関連分野の研究者コミュニティに支えられる運営体制の確保を前提としつつ、今後、大学共同利用機関の間の分野を超えた連合等の可能性と、それにより形成される「機構」の具体的な在り方についての検討の状況、さらに法人化後の国立大学の運営組織との整合性等も考慮しつつ、具体的な仕組みについて結論を得る。

(機構を構成する研究所の運営)
   大学共同利用機関の中には、現在、複数の研究所で「機構」を形成している機関があるが、研究所の組織業務運営、人事、予算等について、機関全体の運営方針を踏まえつつ、大学等の研究者コミュニティの意向を反映することを含め、一定の自律性を確保する。

(研究組織)
   大学共同利用機関の研究組織については、各機関の予算の範囲内で随時に設置改廃を行うこととする。
     なお、「機構」を構成する研究所については、いわば「機構」の業務の基本的な内容や範囲に大きく関わるものであり、これらの内容や範囲を法令で規定する方法を工夫する方向で検討する。

(法人の目的)
   各大学共同利用機関の目的を法律に規定する。

(2) 人事制度
   大学共同利用機関の教員の人事に関する方針、基準・手続は、選考基準について大学側の対応する職種の選考基準に配慮して定めるなど、大学との人事交流を円滑にする観点を踏まえつつ、適切な審議機関の意見を聴いて、機関内部の規則として定める。

   法人の長である機関の長は、その機関に置かれる適切な選考機関により選考された者について、文部科学大臣が任命する手続とする。

   法人の長である機関の長の任期は、当該機関の長の申し出を斟酌しつつ、機関ごとに文部科学大臣が定めることとするが、国立大学における検討の状況をも考慮する。その他の役員の任期も同様とする。

(3) 目標・評価
   中期目標・中期計画の内容については、大学と共通のものに加え、共同利用に関する事項を記載する。

   国立大学評価委員会(仮称)は、大学共同利用機関も評価の対象とするが、同委員会の構成に関しては、大学共同利用機関においては、同一研究分野のコミュニティに開かれた運営を行っているため、現在又は過去に当該機関に関わった者を広く参加させないとした場合、その研究分野に適切な知識を有する評価者を確保できない恐れがあることに留意する必要がある。

(4) 財務会計制度
(運営費交付金の算出方法)
   運営費交付金については、大学共同利用機関にふさわしい算出方法を採用する。

(5) その他
(総合研究大学院大学との連係について)
   総合研究大学院大学においては、多くの大学共同利用機関が連係して研究科を構成し、大学共同利用機関の高度な研究環境を利用した大学院教育が実施されているが、法人化後も高度な研究人材や専門家の養成が円滑に行われるようにする観点から、緊密な連係・協力関係が保たれるよう配慮する必要がある。
     なお、今後、大学共同利用機関相互又は大学共同利用機関とその他の関連する研究機関等との連合・再編・統合等の進展の状況に応じて、総合研究大学院大学が教育研究を行う上での連係・協力の対象となるべき機関の範囲・要件等を適宜見直していくことが必要である。



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7  関連するその他の課題

   本調査検討会議は、国立大学及び大学共同利用機関を法人化する場合の制度の具体的な内容について検討を行ったが、法人化後の国立大学及び大学共同利用機関の在り方と深く関わる問題として、以下のような課題についても、別途、速やかに検討されることが必要である。

(1) 国としての長期的な高等教育・学術研究政策やグランドデザインの在り方(その検討の方法や策定の手続き等についての検討を含む)

(2) 各国立大学の枠を超えた教育研究の充実のための再編・統合の在り方

(3) 各地域において国立大学と公立大学・地方公共団体、私立大学等とが連携・協力・支援の関係を強化することが可能となるための具体的方策

(4) 国立大学の場合と同様に公立大学・公立短期大学等に法人格を付与することの必要性及び法人格を付与する場合の具体的な制度の在り方

(5) 高等専門学校など国立大学・大学共同利用機関以外の国立学校設置法上の機関の扱い(法人化する場合には、その具体的な制度の在り方を含む)

(6) 現行の大学共同利用機関が分野を越えて連合等を行う可能性及びそれにより形成される「機構」の具体的な在り方.



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おわりに

 国立大学等の法人化とは、各大学等が、競争的環境の中で切磋琢磨することで活性化し、能力・個性を最大限に発揮できるよう、国と国立大学等と社会との三者の適切な関係を樹立し、各大学等において自主的・自律的で活力ある運営体制を確立するための改革である。
 その意味において、まず国に対しては、改革の趣旨に沿った周到な制度設計に加え、何よりも法人化後の制度運用における大学等の自主性・自律性への配慮と、高等教育や科学技術・学術研究に対する効果的で十分な支援について責任が問われることになる。
 他方、各国立大学等に対しては、自主性・自律性と表裏をなす自己責任に対する深い自覚が求められるとともに、真に自律的な運営、すなわち、自らを厳しく律するルールや体制を自らの手で確立することができるかどうかが問われる。
 また、産業界その他大学等を取り巻く社会に対しては、「知」を支える大学等の在り方に対する高い関心と深い理解に加え、我が国の大学等の発展への積極的な参加と貢献が期待される。
 法人化による国立大学等の改革と新生は、新制度に移行した後の、このような国と国立大学等と社会の各々の絶えざる努力と、相互の意思疎通と信頼関係の進展によってこそ、その実を上げ得るものと言える。重ねて関係者の真摯な取組を期待するとともに、当事者たる国立大学等の全ての構成員が、法人化の趣旨を十分に踏まえ、自覚と自信を持って新しい道を切り開いていくことを希望する。



(高等教育局大学課)

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