佐賀大学長
上原春男様
佐賀大学理工学部教授 豊島耕一
拝啓
「国立大学法人」法案の閣議決定が迫る中,国大協は各学長に,「法案概要」についての意見を15日までに求めていると聞きます.期日は迫っていますが,以下の私見を御参考にしていただければ大変ありがたく存じます.
文部科学省が国大協に示したとされる「法案概要」が,「未定稿」のラベル付きで出回っていますが,まずこのような曖昧な情報提示で,しかも全教職員に正式に公表することなく国大協の意志決定プロセスを進めることには大変問題があると思います.国大協内部のささいな事柄に関するものならいざ知らず,全国立大学のあり方に根本的な影響を及ぼす問題に関して,このような,いわばインサイダー取引,「談合」とも言えるやり方は取られるべきではありません.まず何よりも,正式の法案の提示を文部科学省に要求し,正確な情報に基づいてそれに対する態度を決めるための総会を早急に開くべきではないでしょうか.
もし現在国大協が取っているようなやり方が正当であるとすれば,それは国大協が単なる学長の懇談会,サークルに過ぎず,その決定には何らの権威も重みも持たないということを意味するでしょう.もしそうであれば,国大協が全国立大学を代表するかのような態度を取るべきではありません.
国大協が求めている「法案概要への意見」のために,私見を申し上げます.一見して明らかなように,「中期目標」を文部科学大臣が定めるとするなど,独立行政法人制度と何ら基本的な違いはなく,しかも多くの項目で通則法を準用するとされています.したがって,国大協の従来の態度,「通則法による独法化に反対」の態度を変えない限り,国大協にとって到底受け入れることの出来ないものだと思われます.もしそう判断されないとすれば,この「通則法による独法化に反対」という言葉の意味が「通則法から一字一句でも違えば容認できる」ということであったのか,あるいはこの態度そのものの撤回を意味するのか,その何れかでしょう.ぜひその点を明らかにされ,決して「なし崩し」の撤回=独法化容認とならないようにしていただきたいと思います.
今や「国立大学法人」が「独立行政法人」の変種*に過ぎないことが明白になったのですから,国大協は97年の反対声明の原点に帰り,これまでの経緯にとらわれることなく,これへの「絶対評価」を下すべきであります.そうでなければ,わが国の大学の歴史の中に,国大協が決定的な汚点を印すことになってしまいます.上原学長はじめ全学長の皆様が,このことをどうか真剣に考えていただくようお願いします.敬具
2003年2月14日