Date: Thu, 26 Nov 98 12:21:48  JST
From: toyo@cc.saga-u.ac.jp (TOYOSHIMA Kouichi)
Subject: [reform:1065] 省庁再編法で独立行政法人化は可能か
To: Reform@ed.niigata-u.ac.jp (Daigaku Kaikaku Joho ML)

佐賀大学の豊島です.

新潟大学の渡辺氏より,[reform:1063] で政府が国立大学の独立行政法人化の方針であるとの情報が寄せられましたが,これに関連してある疑問が生じました.

省庁再編法の第三十六条で独立行政法人の定義がなされています.

第三十六条 政府は、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要はないが、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるか、又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものについて、これを効率的かつ効果的に行わせるにふさわしい自律性、自発性及び透明性を備えた法人(以下「独立行政法人」という。)の制度を設けるものとする。

これによると,

1. 民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがある

     または

2. 一の主体に独占して行わせることが必要である

ものが対象になるとのことです.

しかし,すでに私立大学として我が国の大学生の大半を受け入れている機関が存在しているので項目1は当てはまらず,また同じ理由で,あるいは自明のこととして項目2にも該当しません.

そもそも,大学は教育・研究の機関であって「行政」というカテゴリーではなく,この名称にもそぐわないものです.

もしこの法律を根拠に国立大学を独立行政法人化しようとするのであれば,この点に関してどのような理屈をつけて正当化するつもりなのでしょうか?それとも別の法律に根拠があるのでしょうか.それとも根拠などどうでもいい?

(追加)

 [reform:1065]の「省庁再編法で独立行政法人化は可能か」で私は条文上の問題を指摘しましたが,形式的な問題に違いないですし,別の根拠法律を作れば何でも可能ではあります.しかし法治主義を重視する立場から,条文の言葉の解釈がいい加減になされるのを放置してはいけません(韻を踏んでいます).

 もしこの法律の第三十六条を根拠にするのであれば,私立大学では出来ないこと,あるいは私立では十分国民に応えられない部分(例えば大学院などの先端教育,研究で多額の経費を要するものなど)については,独立行政法人化するというように解釈することになるでしょう.この立場をとれば,この条文の「事業」という言葉をせまく解釈するほかありません.つまり大学について,「教育」「研究」一般と理解するのでなく,特定の分野,内容のそれ,というように.そうすると,ある国立大学がまるごと独立行政法人化されるのではなく,分割された上で,ということになります.これが唯一可能な三十六条に合法的な手続きでしょうか?