関連文書:国大協会長への共同質問書


文部科学大臣

遠山敦子様


国立大学独法化阻止全国ネットワーク(代表 山住 正己)
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  事務局長 豊島耕一

 840-8507 佐賀市本庄町1
 佐賀大学理工学部物理科学科(教授)
 電話/ファクス: (ウェブ上では省略)

 拝啓
 国会も始まりいろいろとご多端なことと拝察致します.
 その様な折りに恐縮ですが,国立大学の独法化問題につきまして,是非ともお尋ねしたいことがあります.なにとぞよろしくお願いします.

 現在,文部科学省の「調査検討会議」において国立大学の法人化の案が検討されており,名称としては「国立大学法人」となりそうなことなどが先日公表された「中間報告」で明らかになりました.しかしこれにつきましてはいくつかの重大な疑問があります.そこで次の3点をお尋ねします.ご回答いただきますようお願い致します.

質問1:「国立大学法人」制度は中央省庁等改革基本法第三十六条が定義するところの「独立行政法人」に法律上含まれるのでしょうか.

 これは極めて基本的な事ですが,必ずしも文部科学省や「調査検討会議」はこのことを明言されていないように思いますので,是非とも明確にしていただきたいと思います.
 この「調査検討会議」発足に当たっての2000年5月26日の
国立大学長・大学共同利用機関長等会議での文部大臣の説明では,「文部省としては,今後,独立行政法人制度の下で,大学の特性に配慮しつつ,国立大学を独立行政法人化する方向で,法令面での措置や運用面での対応など制度の内容についての具体的な検討に,速やかに着手したいと考えております」とありますので,この会議の検討の範囲は独立行政法人制度に限られるとも考えられます.しかしこれから時間も経過しており,また「国立大学法人」という名称であることから「独立行政法人」とは異なる制度を検討しているのではないか,という印象を持つ人がいないとも限りません.もしそのようなことがありますと,国民が判断を誤ることも起こり得ます.

質問2:中間報告が「中期目標」と「中期計画」の制度を採用していることは,97年10月に発表された文部大臣の所信と基本的に矛盾するのではないでしょうか.もし矛盾しないというのであれば,その理由を明確にお示し頂き,「説明責任」を果たして下さい.

 97年10月に発表された文部大臣の所信では,独立行政法人制度が定める「中期目標」,「中期計画」についても,「文部大臣が3〜5年の目標を提示し,大学がこれに基づき教育研究計画を作成,実施する仕組み,及び計画終了後に,業務継続の必要性,設置形態の在り方の見直しが制度化される仕組みは,大学の自主的な教育研究活動を阻害し,教育研究水準の大幅な低下を招き,大学の活性化とは結びつくものではない」として,これに反対を表明されています.昨年10月5日に私ども「全国ネット」は大学改革室長の杉野剛氏と会見しましたが,その際貴省はこれを撤回されていないと明言されました.これに対して中間報告ではこの「中期目標」等の制度が採用されていますので,97年所信とは矛盾するものと考えられますがいかがでしょうか.
 中間報告にある「あらかじめ各大学が文部科学大臣に中期目標(案)を提案」とするだけで最終的な決定権を文部科学大臣が持っているとすれば,問題は何も変らないと私たちは考えます.

質問3:「中期目標」等の期間の終了時に,業務を継続させるかどうかについて主務大臣はどのような関与を行うのでしょうか.

 中央省庁等改革基本法三十八条八項および独立行政法人通則法三十五条には,中期計画または中期目標の期間の終了時において,主務大臣が当該独立行政法人の業務を継続させる必要性の検討を行い,「所要の措置を講ずるものとする」とあり,さらに通則法三十五条には具体的に,政令で定める審議会が事業の改廃に関し主務大臣に勧告することが定められています.しかしこの問題について中間報告は全く触れていません.
 個々の法人の改廃に関して文部科学大臣が権限を持つかどうかはきわめて重大な点です.上に引用した文部大臣の所信では,この制度についても明確に反対されていますので,その態度が変わっていないのかどうかを明確にお答え下さい.

 以上,できるだけ速やかにご回答くださいますようお願いいたします.なお質問1は非常に簡単な内容なので,これについては即答を期待しております.
                                敬具

2002年2月1日