04年9月26日の地方紙各紙に,教育基本法改正についての世論調査の記事が出ましたが,これについてはいくつか疑問があります.記事のタイトルは次のようです.

(西日本)教育基本法改正 賛成59% 現状への不満背景 全国世論調査
(佐賀)教育基本法改正「賛成」59% 現状へ強い不満反映 全国世論調査
(東京)教育基本法改正6割賛成 世論調査

 まず調査主体ですが,「日本世論調査会」というのは,独立した組織というより,実体は共同通信のようです.地元の新聞にこの名前で電話番号を教えてもらったところ,共同通信につながりました.この名前でウェブ検索をかけてもサイトは出てきませんし,ウェブ電話帳でも番号は出てきません.

 また,記事となった調査結果の元データの提供を共同通信に依頼したところ,「共同通信からの出稿がすべてであり,それ以上は出せない」とのことでした.そこでその出稿記事全文をファクス11ページで送ってもらいました.しかしこれも十分詳細なデータを含む物ではありません.例えばその中には年齢や支持政党と質問項目の相関について書かれていますが,回答者の年齢・支持政党の内訳は不明です.回答者の内訳で示されているのは男女の比のみでした.

 このように調査結果の元データが開示されないのでは第三者による最小限の検証も不可能であり,客観的な,アカウンタブルな世論調査と言えるのかどうか疑問です.

 内容の問題で私が最も疑問に思ったのは次のことです.教基法改正についての賛否を問うのが主な目的ですから,その前提,つまり教基法について回答者がどの程度の認識があるのかというのが,最小限必要な質問項目であるはずです.ところがその質問項目はありません.では,調査者は教基法全文を用意していたのかと聞いたところ,これも持たず,回答者に提示可能だったのは簡単な要約(“とは物”と表現されました)だけとのことです.

 以上のように,責任の所在も曖昧であり,データの開示もされない,内容や方法にも問題ありということで,これはまともな世論調査とは受け取れません.むしろ世論誘導作業ではないのか,その疑いを強く持ちました.(04年9月28日)

(転載歓迎)

- ホーム -