「国立大学法人の枠組についての試案*」への応急的な批判

                           2001年2月20日

             「国大協への署名」世話人

                 北海道大学  辻下 徹
                 佐賀大学   豊島 耕一
                 岡山大学   野田隆三郎

1. 国大協の「独法化反対」に反する,事実上の独法化容認案である.

(イ)「独立行政法人の基本的枠組を参考にして」国立大学法人法を作るとあり,これへの批判,「対案」を作ろうという意欲、姿勢が見られない.

(ロ)しかも「中期的な活動の目標」と「その目標達成のための具体的な計画」として「基本法**」と「通則法」の中期目標と中期計画の概念・制度を容認している.「大学が決定する」とはしているものの,「主務省と協議」を認め「行政指導」の受け入れを表明しているのである.

(ハ)「大学の評価は、計画期間の終了時に設定した目標に対する計画の達成度を中心に行う」として,いわゆる中期目標と中期計画を前提にした評価を容認しており,これも「基本法」と「通則法」の通りである.しかも多元的評価と言いながら,「第三者機関」であるどころか,正真正銘の政府機関である「大学評価・学位授与機構」による評価を認めている.つまり国家による評価制度を許容している.

2. 名前が「独立行政法人」でなければよい,あるいは通則法と違う法律であればよい,というものではない.「基本法」と「通則法」の基本的枠組み,つまり内容無限定の国家による指揮・監督・評価が含まれる限り名前を変えた「独立行政法人」である.

3. 法人化を論じる文脈において,現行国立大学制度のどこがどう悪いのかについての国大協による分析を見たことがない.現状分析を踏まえない方針はおよそ方針の名に値しないと言わねばならない。  

* 国立大学協会,設置形態特別委員会 委員長 長尾 真氏の2001年2月7日付けの文書
** 中央省庁等改革基本法