文部大臣記者会見,1997年10月

国立大学の独立行政法人化について

 文部大臣 所信

1. 国立大学,とりわけ東京大学,京都大学の独立行政法人化については,種々報道されているが,昨日,今日と,私のところに,東京大学,京都大学の両総長から,それぞれ,独立行政法人化には反対である旨の申し入れがあったところである.

2. 国立大学を独立行政法人化することについては,大学の教育研究の特性に鑑み,以下のような問題点があり,反対である.

 (1) 独立行政法人は,定型的な業務にこそふさわしく,それに応じた短期的で,しかも効率性に重点を置いた運営が想定されているが,大学の教育研究は長期的視点に立って,多様性をもつことを本質とするものであり,大学の教育研究にはなじまないこと.

 (2) 独立行政法人のねらいは,効果的な業務の実施にあるが,文部大臣が3〜5年の目標を提示し,大学がこれに基づき教育研究計画を作成,実施する仕組み,及び計画終了後に,業務継続の必要性,設置形態の在り方の見直しが制度化される仕組みは,大学の自主的な教育研究活動を阻害し,教育研究水準の大幅な低下を招き,大学の活性化とは結びつくものではないこと.
 また,効率性の観点から一律に大学を評価することは,各大学の特色を失わせ,現在進めている大学の個性化に逆行すること.

 (2) 現下の厳しい財政状況の下で独立行政法人化する場合,安定的な研究費,人件費等の確保の保障がなく,その結果,独自の資金を有しない我が国の大学においては学術においては学術研究水準が低下し,科学技術立国を目指す我が国の発展は望めないこと.

3. 文部省としては,大学の自律性を確立し,世界に通用する教育研究水準の確保・向上を図る観点から,現行設置形態のもとで,(1)大学院制度,(2)学部教育,(3)教育研究の質的向上を図るための大学の運営システムについて,抜本的な大学改革を行うこととしており,今月中に大学審議会に審議をお願いすることとしている.

4. なお,ハーバード大学等は,多年にわたり,多額の資金を蓄積しており,また,多様な寄附金を得られる情況を背景に教育研究活動を展開しているが,我が国の国立大学においても,委任経理金制度などの活用により外部資金の充実に今後とも積極的に努めていくこととしている.