教授会決定に反する「評議会決定」は法的に無効である 教養部 豊島耕一
佐賀大学評議会は去る5月26日,教養部教授会の前日の否決決議にもかかわらず,「文化教育学部」設立の概算要求案を強行可決した.これは単に,従来からの重要問題での学部・教養部一致の慣行を無視する暴挙であるというだけではない.法的に効力を持ち得ない,単なる「ミス」である可能性が大きい.
「国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則」という省令があり,これに評議会の権限として,「学部,学科その他の重要な施設の設置廃止に関する事項」を審議するとあるのは事実である.さらに,この省令を受けて本学の規程に同様の条項がある.しかし,これは大学を構成するすべての教授会の同意が前提となっているのである.
なぜなら,当然のこととして省令よりも法律が優越するからである.学校教育法59条は「大学には,重要な事項を審議するため,教授会を置かなければならない」と規定している.これは大学における基本的な審議機関が教授会であることを示している.その教授会自身の存廃にかかわることが「重要な事項」でないはずはなく,その決定を学内の他の機関がくつがえすことはできない.教育学部など他の教授会の決定は無視されるのかという反論は成り立たない.なぜならその決定内容が別の教授会に関わるというどころか,その消滅を意味するものだからである.
物理屋の説く「法律論」はにわかには信じがたいと思われるかも知れないので,教育行政の専門家の文章を「」で引用しよう.省令にしか根拠をもたない「評議会は学部教授会間の調整機関であり,その権限はもともと教授会に由来し,教授会の承認の下に大学全体に関わる重要事項について審議することができると言え」るのである.
評議会はこのことに気付き,すみやかに今回の錯誤による決定を取り消していただきたい.佐賀大学はそんなことも知らなかったのかと言われて恥をかくまえに.
今回の教養部の決定について少し付け加えれば,教授会による概算要求案否決を,意外で唐突なものと受け取る方も多いと思うが(意外という点では私自身も意外であった),決して唐突ではない.教養部教授会は昨年末,「文化教育学部」案の具体的計画策定を承認したが,この案の前提となる教養部廃止についての最終的な態度決定は今日まで留保していたのである.そしてこのことは評議会にも明確に伝えられていたはずである.したがって教養部での今回の否決は決して唐突でなく,今の段階での何らかの議決は予定されていた.その時期が(切迫しすぎていて)適切でなかったのかも知れないが,これは学長や評議会自身の采配のしかたにも関わることであり,ひとり教養部だけが責められる理由はないと思う.(1995.5.29)