Date : Tue, 24 Feb 2004 09:01:04 +0900
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Subject : [he-forum 6729] 独法化に対する「違憲表明」18件を掲示
2月28日 一部修正

独法化に対する「違憲表明」18件を掲示

佐賀大学 豊島耕一

昨日次の二件の新聞の文章が紹介されました.

1)『読売新聞』社説 2004年2月23日付/[産学連携]「大学の研究を売り込む戦略作れ」/大学は、国の予算を使い、何を研究してきたのか。

2)『徳島新聞』2004年2月20日/連載 変わる国立大学
 「・・・これまで護送船団方式の横並びで安穏としてきた国立大が、法人化後は社会の目にさらされ、評価される。」

 国立大学「法人化」の問題点は忘れ去って,使い古された国立大学攻撃のフレーズがまたまた付和雷同よろしく出てきたようです.政府や世の風潮には実質的に無批判で,むしろその尻馬に乗り,流行のバッシング用ターゲットをお手軽に「批判」してみせる,そのような極めて低レベルの記事として読みました.自分たちの「記者クラブ」という護送船団についてはどう見ているのでしょうか?(しかしこんな記者たちを社会に送り出した大学とは何だ,とまた批判は部分的に大学に跳ね返ってくるのかも知れません.)

 このような論調は,独法化に対して,多くの人がその対応に追われ,本質的な批判がなくなったためかも知れません.大学関係者の発言や運動が活発な横浜市立大学や,都立大に関する報道と比べると,そう感じられます.法案審議の時は,マスコミに対する批判もかなり行われましたが,最近は放置されているようなので,なんとかしなければいけないと思います.

 ところで,自衛隊のイラク派兵に対しては,北海道と名古屋で違憲訴訟が起こされています.名古屋訴訟*の請求事項は,差止請求,違憲確認,慰謝料請求の三点です.国立大学の独法化についても,法案の成立前から「違憲である」との主張が多くの団体,個人からなされましたので,このまま放置することはできないと思います.何らかの法的手段を取るべきでしょう.

 そのような「違憲表明」のうち団体やグループによるもの18件を,ネット検索などで集めて一覧表にして次に掲示しています.

http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/UniversityIssues/unconstitutional.html

 「違憲である」との主張をしたら必ず訴訟をしなければならないというわけではないでしょうが,これだけ多くの指摘があるのに,だれもそのことを法廷に持ち込まないというのもかなり不自然です.このままだと,多くの人や団体が,大したことでもないのに「違憲だ」といたずらに世間を騒がせた,ということになるでしょう.

 権利が侵害されたとき,法が冒されたとき,これを正すために行動することはむしろ義務です.法学系の学生にとっての必読書とされる古典,イェーリングの「権利のための闘争」(岩波文庫)の一節に次のようにあります.

すでに述べたように,権利者は自分の権利を守ることによって同時に法律を守り,法律を守ることによって同時に国家共同体の不可欠の秩序を守るのだと言えるとすれば,権利者は国家共同体に対する義務として権利を守らなければならぬと言えないわけがあろうか?(85ページ)

倫理的苦痛は、肉体的苦痛と同様に−−それぞれの主体の感受性の違い、権利侵害の形式や対象の違い(これについては後に詳しく述べる)によって−−強いものもあれぱそれほどでないものもあるが、もう無感覚になってしまっている人間、つまり現実の無権利状態に慣れ切ってしまっている人間は別として、あらゆる人間に倫理的苦痛として受けとられ、肉体的苦痛と同様に警告を与えるものである。(59ページ)

ではどのような法的措置が可能なのでしょうか.ある専門家の意見を紹介します.

1)正攻法:法人法を廃止する法律案を立案し、議員立法で国会上程、成立を目指す.単なる廃止法ではなく,国公私立大学全てを網羅した大学のあり方を定める総合的な新規立法とすることが考えられる.

2)「国家公務員等地位確認請求訴訟」(民事訴訟).大量の教職員から国家公務員としての地位を奪う法的根拠を問う.

3)国家賠償請求訴訟.法人法のもとでの教育研究に対する国家統制により学問の自由を侵害され、それにより精神的苦痛を被ったことに対する賠償.

この他にはどのようなやり方があるでしょうか? (1)は大規模で組織的なものですから,相当な準備期間を必要とします.したがってすぐに取りかかるべきは2や3と思われます.

 就業規則や「過半数代表」の問題など,当面の対応としてやるべきことがたくさんあると思いますが,人々の関心やこだわりは広いスペクトルを持っているはずです.ことは憲法問題ですから,これを重視する人が少ないはずはないと思うのですが,いかがでしょうか.

*名古屋訴訟のウェブサイト
http://www.haheisashidome.jp/