([he-forum 5053] ,[reform:04394] のわずかな修正バージョンです.)

佐賀大学/独法化阻止全国ネットの豊島です.

今朝の新聞で報道されましたが,全国ネットは代表の山住氏を失いました.奥様はじめご家族の皆様の悲しみを拝察すると共に,氏の遺志を何倍にも受け継いで,行法化阻止のために活動したいと思います.

教授会・評議会で行法化の是非そのものを議題に

 「法案の概要」*と称する文書の“リーク”**がなされていますが,間もなく法案そのものも明らかになるでしょう.このような時点に際して,すべての国立大学関係者個人と教授会,評議会には新たに大きな責任が生じているように思われます.それは,国立大学行法化が正式に国会と国民に提示されようとする今こそ,当事者にはそれが何ものであるかを正直に証言する義務が課せられているのではないかと言うことです.

 これまで大学関係者は「中期目標」作成という,この制度への事前協力に荷担して来ました.しかしこれは「仮に行法化すれば」という,仮定の上の,相対的な対応であったはずです.どの大学も明示的に「独法化無条件支持」を議決したとは聞いていません.したがって法案そのものの是非を検討することと,上の相対主義的活動とは何ら矛盾しません.実際,国大協は法案についての意見を求めているのです.

 つまり今まさにこの制度の「絶対評価」が大学に求められています.「中期目標」の内容はさておき,そもそも行法化が大学にとって良いのか悪いのか,その当事者としての評価を示さなければなりません.当事者の正直な意見表明なしに,国民が,そして国会が正確な判断をすることには大きな困難がともなうでしょう.

 具体的には,各大学の教授会,評議会で,行法化の是非について審議することが決定的に重要だと思います.反対運動をしている活動家の教員の皆さんは,あるいは行法化に疑問を持つ方は,教授会・評議会で是非ともそのような提案をしていただきたいと思います.2.1集会宣言にも「教授会、評議会、学長への要請行動」というのがありますが,教員の場合は自分自身がそれらの機関のメンバーなのです.法制上,唯一「重要事項」を審議する権限が与えられている教授会の責任はとりわけ大きいと思います.行法化問題が大学にとっての「重要事項」でないはずがありません.

 また,文通団の中には評議会メンバーの方も,あるいは学長もおられるかも知れません.「どうせ取り上げられないだろう」といって沈黙するのは責任回避です.会議で法案反対の意見が通る可能性は小さいかもしれませんが,しかし個人は責任を果たさなければなりません.必ず採決を取り,だれが賛成し反対したか,一人一人の責任が明らかになるようにしていただきたいと思います.組合の集会などで原則論を言うのは「周辺的」な活動です.本務でこそ責任を全うしていただきたいと思います.もちろん私自身も所属の教授会でそのようにしていますが,まだ成果はありません.

 その教授会でも感じるのですが,何か法案そのものを審議するのは畏れ多い,というような雰囲気がたしかにあります.極端な臆病さが支配しています.その正体が何かを見極めるのが重要たど思います.もちろんテロの脅しがあるわけではありません.国鉄解体の時のように,直接教員に解雇の脅しがかけられているわけでもありません.また学部長などシニアのメンバーにとっても,別に退職金や年金が減らされる心配もないのです.要するに「葵の御紋」に過ぎないのです.「水戸黄門ドラマ」は「テレビの中高年への悪影響」として広範なサブリミナル効果をもたらしていると思われます.このドラマの最後に常に現れるシーンの暗示は「権力は究極的には善である」,「中央権力には刃向かうものではない」というものです.このように,少なくとも国立大学への官僚支配はその主要な基盤が文化的なものだと思われます.

 もちろん,どの大学も,あるいはどの講座もすべてそうだと言うつもりはありません.封建的で困難な状況のところもあるでしょう.また,気の強い人も弱い人もいるでしょう.しかし私の感触では,多くの場合教員は抵抗を「自粛」しているに過ぎないと思われるのです.「厳しい情勢」や「生き残り」を口実にして自分の臆病さをカモフラージュする傾向はいただけないと思います.そして大学教員の三無主義--無気力・無感動・無関心--も.(2003.2.5. ver.1.0, 2003.2.6. ver.1.1 )


 *「概要」をちらっと見ただけでも,導入されようとしている制度が近代性からかけ離れた,いかにもグロテスクなものであることが分かります.まるで一党独裁体制の社会に変わるかのようです.また,「法人」というのも,そのトップが大学のそれと同一人であり,ペーパー・カンパニーのように見えます.

** 無署名の「未定稿」文書として流れていることを称して,カッコ付きの“リーク”と表現してみました.