ディベートという看板に偽り
せいぜい「陳情番組」

佐賀大学 豊島耕一
Ver1.1. 2001.12.16, 12.17.

 12月15日深夜にNHK-BS1で放送された「インターネット・ディベート」と称する番組は,およそディベートの体をなしておらず,せいぜいでも文部科学大臣への「陳情」というべき中味であった.例えば「ディベーター」が独法化について官僚支配などの危険性を指摘すると,文部科学大臣は「そんなつもりはない,大学の自主性を発揮してもらうことが重要」などと答えるだけで,それ以上の「ディベート」らしいロジカルな論争がほとんど行われない.大臣のリップサービスが垂れ流しされるだけで,およそディベートと呼べるものではなかった.

 もしこのような番組の編集が,当局者の言うことを信用しなさい,という姿勢によるものであればそれは民主主義的な思考と無縁である.のみならず「アカウンタビリティー」の考えに対する挑戦でもある.実際,文部科学省自身が4年前に「独法化反対」と言っていたのをわずか数年でひっくり返したのである.しかもそれに対するまともな説明もない.このような実績に照らして見れば,遠山文科相が「大学の自主性を尊重する」と言うのを信用する人がもしいれば,ずば抜けたお人好しであろう.

 番組制作者による論点の掘り下げの努力もほとんど感じられず,表面的な言葉でなぞるだけに終わった番組であった.視聴者は退屈な思いをしたのではないだろうか.