「届け出制」ならいいのか?

佐賀大学の豊島です.

TBSニュース23の櫻井インタビューが暗示するかのように,「中期目標届け出制」でかわされる恐れも出てきたと思われます.櫻井氏は,廃案で出直すのが一番いいと言いながら,「ここまで来たからには」,中期目標は届け出制にし,それを文部科学省が認可するように変えてほしい,と述べました.

 http://news.tbs.co.jp/20030613/newseye/tbs_newseye766126.html

しかしこれがほとんど名目上の意味しか持たないということは,国立大学関係者ならだれでも知っています.国会でも,六月三日の参考人質疑で小野善康氏は,文科省はああしろこうしろとは「絶対言わない」が,「怖くてしようがない」ので我々が「それを斟酌」する,と述べています*.まさにこれこそが官僚支配の「定型」です.

 「怖くてしようがない」理由はもちろん政府による「評価」と,文部科学省が直接の予算権限を持つという二点(特に後者が決定的)です.これがある限り,大学側は「自主的に」文部科学省の「意向」を予測し,それに沿った「目標」を届け出る,すなわち暗黙の,不透明な命令制度となるだけです.むしろあからさまな命令制度の方が「透明性」があるとすら言えるでしょう.

 野党も,この程度で「修正を勝ち取った」などと言うとしたら,まさに文部科学省にまんまと名を捨てて実を取らせることになります.

 そもそも「中期目標・中期計画」が必要なのか,実際的な意味を持つかということ自体が議論されていません.いままで何十年もこんなものなしでやって来たのです.単に書類を増やすだけのことではないのか.かりに届け出制であるにせよ,いわば「報告義務」であり,かつて69年の「大管法」の際は,これ自体も問題にされたのです.うろ覚えですが,かつてヨーロッパのどこかで(多分ドイツ?)このような届け出制が実施されたが,実際的な意味がないので廃止されたというようなことがあったと思います.(2003.6.15)



* 小野善康氏の意見陳述

http://ac-net.org/dgh/03/603-san-bunkyou.html

「これは中期計画、中期目標を文科省に出させて、そこが認可すると言っているわけです。もちろん、文科省はそんなすごいことを、おまえらこうしろ、こうしろなんていうことは絶対言わないわけですけれども、そういう制度であると我々がそれを斟酌始めるわけです。怖くてしようがないです。」

豊島耕一
TOYOSHIMA Kouichi
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佐賀大学理工学部物理科学科
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