(司会)10分ほど時間があります.質問をどうぞ.
(学生)いま核実験というのは世界的に禁止されていますけど,いまスーパーコンピューターで核シミュレーションというのがアメリカで行われているんですけど,このことついてどう思われますか?
(豊島)やはりそれは核兵器開発には違いなので,もちろん放射能は発生しないでしょうけど,しかし核兵器開発なので,そういう意味では良くないことだと思います.科学者としては関与すべきではないだろうし・・・,北朝鮮の科学者も,やっぱりやめてもらいたい.
(司会)他に質問は?
(途切れたので発言,豊島)一晩留置場で過ごしましたが,そこでふんだんにあるものというのは,時間ですね.それから,留置場の中に張り紙がしてありまして,それを暇だから写し取ったんですけど.そこに何が書いてあったかというと,留置されている人の権利と言うのがずーっと書いてあって,そこに,INDEPENDENT CUSTODY VISITING SCHEME ,つまり,留置されている人が不当な扱いを受けていないかを第三者がチェック出来ると.そういうものが必要だったら頼みなさいということがちゃんと書いてあるんですね.だから,留置場の中でも人権が守られている,そういう配慮がありましたね.
(教員A)非常に漠然とした質問になってしまうんですけど,これまでの大学教員としての,大学人としての生活を振り返られて,何か思うところというか,たくさんあると思いますが・・・
(豊島)だいたい,その,公的に言えることは学科ニュースに書いたようなことで,・・・たいへん自由に,一般の企業などとは違って,何と言っても自由な職場だと思いますので,そういう意味では,ハッピーな仕事ができたと思っています.ただ,未完成になった実験が,もう少し完成に近づけられたら良かったなと思います.心残りがありますけど.
(教員B)平和運動をするに至った,何かきっかけみたいなものはありますか?
(豊島)私たちが学生の時代というのは,先ほど写真がちょっと出ましたように,いわば今の沖縄のような状態で,デモや集会というのは日常の事で,大学封鎖とかストライキとか,ああいう時代なので,学生の時代,多感な時代にそういうことをたくさん考えた,ということがあるわけですね.ですから,そういうなかで,物理学の先達たち,湯川秀樹,朝永振一郎,そういう人たちが非常に熱心に核廃絶運動をやっていた,ということも知ったわけですから,そしたらやはり,同じ物理の人間なら,ということは一つありますね.それから最近のことではやはり,先ほどのアンジー・ゼルターという女性と偶然ネットで繋がったということが非常に大きいですね.
(教員C)科学やっているものとして,どう叛逆して行ったらいいですか?何か,サジェスチョンがあったら・・・.
(豊島)だから,やっぱり正直であることだと思います.今の現実的な問題に即して言えば,「20ミリシーベルト」などとんでもないことが言われていますよね.避難する,しないの境界は20ミリシーベルト.フイルムバッジを使っている人だったら,年間20ミリシーベルトなんてとんでもない話しだと思うわけですけど,そのことを正直に発言すること,そういうことじゃないでしょうか.つまり,学問的な事実,そのことを正直に,だれ臆することなくね,要するに,空気を読まずにね,発言すると,そう言う事じゃないでしょうか.それだけだと思いますけどね.
(司会)なかなか,空気を読まずに,ということが非常に難しくなって来ていますけどね.特に,私は豊島さんとけっこう身近なところで接していまして,20年近くやっているんですけど,やはり豊島さんのあのう,反骨精神というんですかね,何か,正しくないものに対してはものすごく抵抗心を出される.横で見ていても,私なんかとても真似が出来なくて,ああいうふうにやりたいなあとは思うんですけど,なかなか・・・.
(豊島)プライベートな情報を漏らしてしまいますとですね,私の父が教員で,ストライキをやって,昔ストライキは違法,今でも違法ですけど,それで投獄されて,一ヶ月ぐらいブタ箱に入っていたということがあって,そういうことを小学6年の時に目の当たりにして,まあその先には文科省がいるわけですから,文科省はわが家の敵であると(笑).ということが小学生の頭に叩き込まれたということがあるわけです.
(学生A)核のすべてが悪いでしょうか?
(豊島)核エネルギーという形ではない,核医学とか,放射線治療とか,放射線診断とか,そういうことは非常に重要で,役に立っていますし,実際私も久留米大学で放射線科にいたわけですから.そういう分野では多いに利用して行くべきだろうと思いますね.しかしエネルギーとして大規模に使う,つまり原子力発電として,エネルギーとして使うと言うやり方は—爆弾はもちろんですけどね,原爆はもちろんですけど—間違った道だったんじゃないか,と思います.福島を目の当たりにするとね.
(学生B)福島の震災で原発が(聴取困難)されて,今全国的に撤去するという動きなんですけど,簡単に考えていくと多分,エネルギーが足りないんじゃないかと.原発を撤去してしまうと,エネルギーが供給不足になるんじゃないかと考えられるんですけど,それに対する対策というか,原発を全部撤去したときの新たなエネルギー源というか,発電というか,豊島さんなりの,対策というか・・・
(豊島)現状でもすでに原発ゼロになっているわけですね.少なくとも九電管内ではゼロ.それから全国的にも,関西電力の2基,大飯の2基だけですから,現状では火力で足りていると.ですから当面は火力でしのいでいくと.特にコンバインド・サイクルという形で熱効率を上げる.最新鋭のガスタービンだと60%の熱効率が出ますので.それに対して原発は30%ですからね.そのように効率を上げると言うことと,リニューアブル・エナジー,太陽光であったり風力であったり,そういうものを増やして行くと,それで十分代替できると.当面は火力,それから省エネ.ドイツの話を聞いたんですけど,ドイツでは住宅の暖房に電気を使うことが禁止されていると.つまり断熱が徹底していて,真冬でもほとんど熱源なしで室内20℃とか,そういうことが可能なようで.
(教員C)熱源はあるでしょう?
(豊島)熱源は人体の熱でね.
・・・
(教員C)ドイツはフランスからエネルギー買ってるじゃないですか.
(豊島)それもどうも信憑性というか,トータルで言うとそうでもないらしいです.
(教員C)いや,そんなことはない.明かに買ってますよ.
(豊島)そうですか.
(教員C)だから,その分,ちゃんと考えないと.
(豊島)少なくとも今日本は火力で足りてることは事実ですね.
(教員C)だけど借金はどんどん膨らんでる.
(豊島)カネより命ですよ.
(教員A)すみません,それは「反逆」ですよ(笑).りっぱな反逆ですよ.
(豊島)特に日本の場合は,核廃棄物を捨てる場所はないわけですよ.どこにも埋める場所がない.
(教員C)もうすでに十分たくさんあるわけじゃないですか.
(豊島)十分ある.ですからこれよりもう増やすわけにはいかない.・・・この話しは今日の範囲を超えるのではないかと・・・.
(司会)だいたい予定の時間になりました.