1. 教育基本法要綱案(1946.12.29文部省調査局)
(十一)教育行政 教育は、政治的又は官僚的支配に服することなく、国民に対して責任を負うべきものであること。学問の自由は、教育上尊重されなければならないこと。教育行政は、右の自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならないこと。
2. 教育基本法案(1947.1.15文部省)
第十一条 教育行政 教育は、不当な政治的または官僚的支配に服することなく、国民に対し、独立して責任を負うべきものである。教育行政は、右の自覚のもとに、学問の自由を尊重し、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
3. 教育基本法案(1947.1.30閣議案)
第十一条 教育行政 教育は、不当な支配に服することなく、国民に対して直接に責任を負うべきものである。教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
4. 教育基本法案要綱(1947.2.28教育刷新委員会第二五回総会で承認)
第十条 教育行政 教育は、不当な支配に服することなく、国民に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
5. 教育基本法案(1947.3.4閣議決定)
第十条(教育行政)教育は、不当な支配に服することなく、国民に対し直接に責任を負って行われるべきものである。教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
6. 教育基本法案(1947.3.8枢密院修正、1947.3.12帝国議会提出案)
第十条(教育行政)教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
そして、無修正で全会一致を以て議決された。
第九二回帝国議会衆議院教育基本法案委員会議第一回(1947.3.14)の中で、永井勝次郎委員の質問に対しての高橋誠一郎文部大臣と辻田力文部事務官の答弁
永井: 次に教育行政の問題でありますが、ここに「不当な支配」ということがありますが、「不当な支配」ということは、具体的にはどういうものを指すのであるか。それから国民全体に対して直接に責任を負うということは、具体的にはどういうことであるか。そうしてこの教育行政については、もちろん地方教育行政法が出るようでありますが、文部省においては、内務行政から離れた文部省の直轄行政を目途として計画を立てておられるのであるか。もしそうだとするならば、その進捗状態はどうであるのか、その具体的な実現の見通しはどうであるか、どういう構想であるか、その具体的な内容を承りたいと思います。
辻田: お答えを申し上げます。第十条の「不当な支配に服することなく」というのは、これは教育が国民の公正な意思に応じて行われなければならぬことは当然でありますが、従来官僚とか一部の政党とか、その他不当な外部的干渉と申しますか、容喙と申しますかによって教育の内容が随分ゆがめられたことのあることは、申し上げるまでもないことであります。そこでそういうような単なる官僚とかあるいは一部の政党とかいうふうなことのみでなく、一般に不当な支配に教育が服してはならないのでありまして、ここでは教育権の独立と申しますが、教権の独立ということについて、その精神を表したのであります。次の「国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものでる」と申しますのは、さればとて、教育者が単なる独善に陥って、勝手なことをしていいということではないのでありまして、教育者自身が国民全体に対して直接に責任を負っておるという自覚のもとに、教育は実施されなければならぬということを徹底いたしますために、まず、教育行政上において教育自体のあるべき姿をうたったわけであります。なお第二の点といたしまして、教育行政に関する法律についてのご質問でありましたが、これは教育刷新の委員会におきまして御意見の御開陳がありまして、それによってわれわれとしては研究しておりまするが、なおそれぞれ関係筋ともいろいろ打ち合わせして研究をしておるわけありますので、今ここではっきりとしたことを申し上げることは許されないのでありますが、大体におきましては市町村とか都道府県という所に教育委員会を設けて、その民主的な教育委員会において教育行政が運営されるというふうな考え方でございます。