Talk by Angie Zelter,
Japan, March, 2000.
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「いったいぜんたい、敵国の住民を大量に殺害し、その地の大気を汚染し、敵国の住民に癌、ケロイド、白血病を誘発し、将来生まれてくる多くの子どもたちに先天的障害や知恵おくれを引き起こし、敵国の国土を破壊し、食糧を汚染して食べられないようにすること、こういった行為が常識に照らしてみて『基本的な人道的考慮』と両立しうるものだろうか。自信を持って両立しうると答えられないかぎり、核兵器は国際人道法に違反するかどうか、したがって国際法に違反するかどうか、という争いはもう決着がついている。もちろん核兵器は国際人道
法、したがって国際法に違反するのである。」
国際司法裁判所1996年7月8日「核兵器の威嚇または使用の合法性に関する勧告的意見」に付されたウィラマントリー裁判官の反対意見からの引用(君島東彦訳)
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本日は、人々の軍縮の必要と、イギリスのトライデントプラウシェアキャンペーンでの地球市民の核軍縮活動への取り組みについて、お話する機会を設けていただきましてありがとうございます。私が申し上げるべきことは至って簡単なのです。
世界は死にかけている、ということです。
今日の我々の社会の多くの活動が、非道徳的であり持続不可能なものであるということに、ますます多くの人々が気づいています。原子力発電所、核兵器、武器輸出、古い森林の伐採、薬品漬けの農業、個人の車の使用、世界銀行と国際的債務、特にWTOを通したグローバルな「自由」貿易の推進、など。
そうです、世界は死にかけているのです。自然の生態系は分解しかけ、人間の共同社会は壊れつつあります。多くの土着の民族や文化が破壊されてきました。悲劇的に膨大な数の人類以外の種族が絶滅し、全ての生命が拠り所としている生命の多様性が破壊されています。地球温暖化は前例のない気候の変化をもたらし、オゾン層の消耗は多くの生命体に深刻な健康上の問題をもたらしています。
これらは全て結びついていると思います。結び付けているのは「権力の濫用」です。そして、核兵器を使用することの所有と脅威は、「権力の濫用」の究極のものです。
政府、国家、そして各国の小役人たちは、グローバルな金融機関や国際的組織と共に仕事をし、伝統的社会による土地や資源の管理を取り上げる、個人はみんな能力を取り上げられる、我々は全て管理され閉じ込められ、飼い慣らされ、規格化されるのです。そして、精神の貧困の増大と生活の質の低下に苦しむのです。
社会の構造は私たちが今、必要としていることを物申すことができないようなので、普通の人々が、他の人々といっしょになって、平和的に、マイナスの、生活を破壊するようなパターンを止めることで、思いやりのある世界をつくり、活力のある代わりのものを創り上げるように責任を取り始めたのです。人々は自分たちの共同社会が破壊されたり、国民の名においてとてつもなく悪いことが行われたりするのを目にしたので、直接行動に訴え、必要な変化を要求し創り上げるのです。非暴力の直接行動は、変化への触媒であり、地球的な規模で起こりつつあります。森林伐採業者を平和的にブロックしたり、ダム工事を中止させるために断食をしたり、川の汚染を防止するために金鉱の採掘の機械を止めたり、石油公害予防のための不買をしたり、そして、ひとびとによる実践的な軍縮をしたり、しています。
直接行動は、人間の自然な自己防衛のメカニズムです。さらに重要なことは、地球のある一個所での戦いは、他の場所での戦いと結ばれているのです。それは、国際的な精神において、そして全ての人々というだけではなく、この壊れやすい惑星上のあらゆる種族と物質的精神的なことがらの織り成す全ての、地球全体のために行動しなければならないのです。こうして、私のような、自らを地球市民と呼ぶ人々が増えているのです。
私のプラウシェアー軍縮行動は、こうした今日のグローバルな流れの中で実践されました。トライデントプラウシェアーは、地球規模の安全保障を広げるために、小さな市民グループが行動した例なのです。それは、従来の構造の内にある人々は、グローバルに責任ある態度で行動する気もなければ、できもしないからなのです。
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(2ページ終わりの"Nuclear Weapons"の見出しから3ページ中程まで 未訳)
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(3ページ中程から6ページ2行目まで.君島東彦さん担当)
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トライデント・プラウシェア
トライデント・プラウシェアは、世界から核兵器を廃絶しようとする長期にわたる名誉ある市民の運動の歴史の中で、最近の動きの1つです。英国の平和運動が低調ななかで、わたしたちの活力を再活性化し、最終的に核兵器を廃絶する可能性に焦点を当てようとするのが、トライデント・プラウシェアです。冷戦の終結とワルシャワ条約機構の解体によって開かれた窓──核兵器廃絶の可能性の窓──は永久に開かれているわけではありません。実際にわたしたちはこの窓がいま急速に閉まりつつあるのを見ています。わたしたちがめざしているのは、政府が核兵器廃絶へ向かうよう説得するために、それについておしゃべりすることではなくて、市民の行動によって政府に圧力をかけることです。
いまから54年前に広島と長崎で核兵器が初めて使用されて以来、大多数の国は核兵器を禁止しようとしてきましたが、核兵器保有国の権力濫用のため、ほとんど成功しませんでした。国連が採択した最初の決議は核兵器を違法化するものでした。にもかかわらず、米国は核兵器の研究、実験、配備を続け、核兵器競争が終わることはありませんでした。
わたしたちの地球は核の連鎖──採掘、生産、実験から配備、使用の恐れ、そして老朽化したシステムの解体に至るまで──がもたらす健康上および環境上の影響にさらされていて、わたしたちは依然として核の事故による大惨事が起きる危険のもとにいるのです。ロザリー・バーテル博士の計算によれば、これまでに少なくとも1300万の人々がこの核の連鎖の結果、死亡または傷害を負っています。
冷戦がまだ険しかった80年代は、核の恐怖ゆえに世界中の何百万ものの人々が抗議行動を起こしましたが、いまや多くの人々は核兵器が依然としてもたらしている危険を忘れてしまっています。人々は、核の事故がいまだに発生しており、わたしたちの海や陸地を汚染していることを忘れています。人々は、依然として核兵器に反対し続ける必要があることを忘れています。そしてもっと重要なのは、もし政治家が何もやらないのならば、わたしたち民衆自身が核軍縮を始める権限を持っているということを認識していないことです。
原子炉と数百発の核ミサイルを搭載した英国の潜水艦少なくとも5隻が、世界中の海底に侵入して、安全なレベルにまで減衰するには何千年もかかる核分裂物質をゆっくり撒き散らしています。しかしこのことを知っている英国人はあまりいません。わたしはこのことに驚きました。
マーシャル諸島の人々は虚弱児を生み続け、彼らの土地はこれから何千年も汚染されたままで人が住めません。この悲劇を覚えている人はほとんどいません。
退役した古い錆びついた原子力潜水艦が英国だけでも少なくとも11隻あり、安全に処理する方法がわからない放射性廃棄物とともに放置されています。このことについて考える人もほとんどいません。
それから、おそらく宇宙に配備されることになる次世代の核兵器の研究がいま行なわれていることに、わたしの国では多くの人が気づいていません。日本ではどうでしょうか。これは、宇宙条約および対弾道ミサイル制限条約に違反し、国際平和を促進しようとする人類の努力をさらに掘り崩すものです。
いまや毎日のように人権について議論されているのに、核兵器使用の威嚇は、国際法秩序の全体を脅かし、子どもの権利、土地の権利、環境保護、持続可能な生活などようやく獲得したものを無意味にする、と指摘する人もほとんどいません。
トライデント・プラウシェアは、これらの問題を最重要課題として再認識させ、地球大の核軍縮への最後のひと押しをするための、市民の軍縮の努力なのです。
ある程度まで、わたしたちは成功しています。
それではここで、わたしが最近かかわったトライデント・プラウシェア軍縮行動について少しお話ししたいとおもいます。わたしたちは、ウラ、エレン、アンジーというそれぞれデンマーク、イングランド、スコットランド出身の3人の女性からなる国際的なグループでした。
[OHT─M1を見せる]
これはわたしたちがいっしょによじ登って作業をする練習をしているところです。
[OHT─M2を見せる]
広報用写真のために、わたしたち3人は道具を持って歩いています。
わたしたちは、行動計画を立て、発言を用意し、ボートのエンジンのかけかたを覚えたあと、浸水しそうな中古のゴムボートで──わたしたちはこれ以上のものを手に入れる余裕がありませんでした──、ある夏の夜にゴイル湖を渡りました。
[OHT─M3を見せる]
これは、わたしたちの行動の夜に岸辺から広報班がとったものです。わたしたちのボートが潜水艦の調査船に近づいているのが見えます。
わたしたちは無事、調査船に到着しました。この調査船は、トライデント潜水艦が音響・レーダー・ソナー探知器に探知されずに航行する方法を調査するためのものです。わたしたちは窓から船に入り込み、そこにあった調査装置をすべて取り去り、それらを湖水深くに投げ捨てました。わたしたちは研究室をからっぽにしました。そこにあったコンピュータ、ファックス、電話、本、ディスク、道具など動かせるものすべてを船外に投げ捨てました。それから、わたしたちは模型の潜水艦を保護していたかごを切り、シミュレーション・テストに使われる模型の潜水艦の複雑な配線とスイッチを切断しました。この損失額は、当初数十万ポンドと見積もられました。
わたしたちはスコットランドの刑務所に4ヵ月間留置されたのち、裁判所で1ヵ月の裁判を受けました。ウラとエレンは2人の弁護士をつけ、わたしは自分自身で弁護しました。これはスコットランドおよびイングランド法のもとで市民が持っている権利です。
わたしたちはかなりの損害を与えたので、シェリフ陪審裁判所で裁判を受けました。より低いレベルの地区裁判所または治安判事裁判所では、裁判はひとりの治安判事によってなされます。治安判事はしばしば法律家ではなくあまり法の知識を持っていませんから、裁判所書記が大きな権限を持つことになります。司法制度のこのレベルでは、確立した公式見解以外のものが入り込む余地はほとんどありません。とても保守的です。ですから、もしわたしたちが治安判事裁判所で裁判を受けたとすると、核抑止政策が長年にわたって体制によって支持されたきた公式の政策であるという事実からみて、わたしたちの行動は政治的な宣伝効果をねらってなされた悪意の犯罪とみなされたでしょう。
司法制度を上にいくほど、より公正な裁判を受ける可能性が高まります。もっとも、「政治的」な事件においては(わたしたちの事件は多くの人からそう見られました)、これは依然としてまれですが。5千ポンドを超える損害がかかわる事件においては、陪審による裁判が保障されています。スコットランドでは無作為に選ばれた15人の市民からなる陪審が多数決で判断を下します。陪審の役割は事件の事実の真偽を判断することです。裁判官(スコットランドではシェリフ)は適用すべき法を決定します。
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(6ページ3行目から8ページ4行目まで 大庭里美さん担当)
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私たちは、他のトライデント・プラウシェア2000の誓約者と同様に、私たちの行動は犯罪ではなく、良く知られている国際法の原則にしたがって、現在進行している犯罪的行為を止めることを目的とした非武器化の行為である、と主張しました。私たちの女性裁判官は、公平な精神の持ち主で、専門家が証人として出席するのを許可してくれました。私たちの証人の一人は、ウルフ・パンツァーというドイツ人の判事で、80年代にドイツで、ドイツへの核兵器の違法な配備に抗議して、20名の裁判官と検察官がブロケードに参加した様子を説明し、裁判官の精神的独立を励ますことができました。私はこのことが彼女に、公式な政策がかならずしも合法ではないということを認めるのに必要な、力と連帯感を与えたのだと確信します。私たちはまた、アメリカからフランシス・ボイル教授という有名な国際的弁護士を証人として招請し、かれはイギリスのトライデント配備の犯罪性について説得力のある証言をしました。また、ポール・ロジャース教授は、トライデント・システムの配置と100キロトンの核弾頭の効果、および事故の可能性について、専門家としての証言を行いました。ジャック・ボーグ教授は、放射線学者ですが、核惨事の危険性が切迫したものだという認識について有用な情報を提供しました。そしてレベッカ・ジョンソンは、アクロニム研究所代表として、軍縮会議を監視し、どのように核不拡散条約(NPT)が破られ、他の国々がどのようにイギリスのトライデントを脅威として見ているかを、つぶさに伝えることができました。
ここで、トライデント潜水艦をごらんいただき、どんな核兵器をイギリスが実際に保有しているか理解していただくことにします。
OHP No.T1-3
1枚はイギリスの核兵器貯蔵庫、他の2枚はトライデント潜水艦とファスレーン基地。
私たち3人も、もちろん証言しました。私は証言席から、国際法の遵守、その他の情報について、3日にわたって延々と述べました。私たちの証言の根拠は、トライ・デンティング・ハンドブックというマニュアルに書かれています。それはこのキャンペーンを開始するにあたって、私が自分で書いたものです。すべての誓約者が、裁判で使用できるための、これまでの経過も、やはり私が書きました。コピーもありますが、ウェブ・サイトでも見ることが出来ます。そこにもっと詳しいことと、私たちの行動の背景が書かれています。
私たち3人はまた、浮体実験室メイタイム非武器化の目的を説明する、特別共同声明を書いており、その中でなぜ私たちが、犯罪的なトライデント・システム全体の中で、それを決定的な部分と考えたのかをまえもって説明していました。その書類は、全部読むには、長すぎますが、興味をおもちの方にはコピーを差し上げます。その中で私たちが、非常に明確にしたことは、「私たちの行為は、英トライデント核兵器システムが、なによりも無辜の市民と、何も知らされていない将来生まれてくる子どもたちへの、大量殺人を準備するものであるという、法的、および倫理的前提に基づいたものであり、トライデント・システムは、国際法に違反しているだけでなく、倫理的にも正当化しえないものである」ということです。
私たちが拘束されている間、ずっと支援してくれた何百人の人々が、喜んでくれたことに、私たちは釈放されました。
10月22日のスコットランドの新聞から、見出しをいくつか読んでみましょう。
『一裁判長が裁判の歴史を創り、政府の核兵器配備が国際法に違反するという判決は政治的な嵐を巻き起こした。一国の裁判所が核による国防システムを違法と宣言したのは、初めてのことであり、他の核兵器保有国はギムブレット裁判長の決定による政治的フォールアウト*を被ることだろう。』[ヘラルド‐99年10月22日]
(*訳注:核爆発後の放射性降下物をフォールアウトというが,これに引っかけている.)
『砲弾、要塞英国に一撃….裁判長、爆弾を禁じる―反核女性たち法を擁護』[スコッティッシュ・ミラー―99年10月22日]
『裁判長のひと声、核兵器を違法とする』[ザ・スコットマン‐99年10月22日]
『4中年女性は英国防政策を撃沈』[デイリー・レコード‐99年10月22日]
1週間たっても、この話はスコットランドの新聞をにぎわし、29日には、次のような記事が載った。『トライデント裁判は、スコットランド議会(ホーリーロード― スコットランド宮廷のこと)を試すものとなる』、そして『クライドにあるトライデント核ミサイルの合法的管轄権が、スコットランドとイングランド(ウェストミンスター)のいずれの議会にあるかという問題をめぐって、スコットランド民族党(SNP)の「憲法上の破城槌」として、その裁判が使用されようとしている』
ヘラルドは次のように続ける。『SNPは、司法権を持つのは、スコットランドの法であり、つまりイングランド議会ではなくスコットランド議会に権限があることが判明したと考える…….こうした動きは,大西洋をはさんだ軍事・政治体制を揺るがしたマーガレット・ギムブレット裁判長の判決の持つ影響の大きさを示すものの一つである。』[サンデー・ヘラルド 99年10月29日]
熱狂は続き、スコットランド議会、ウェールズ議会、そしてウェストミンスター(イングランド議会)で、私たちの無罪判決を支持する、決議や通告が発せられました。あらゆる観点から、政府はやむなく、検事総長紹介と呼ばれる、スコットランドでは非常にまれな法的手続きにふみきりました。これは、私たちの無罪判決が、上告に値するどのような明確な根拠もなかったことによるものです。その手続きというのは、法律を明確にするために、検事総長が高等裁判所に一定の質問をし、それを高裁裁判官が、私たち、および私たちの弁護団と討議するという司法プロセスです。スコットランドにおける国際犯罪を防止するための市民の行動と、国際法の内容が、厳密に審査されることになるのです。もし、平和運動がこの成功を築きつづけるならば、スコットランドから、そしてそれゆえにイギリス全土から、核兵器が取り除かれる可能性があると信じています。
以上が私たちの行動に関するすべてです。そして、これには日本の市民とグループもかかわっています。私たちのキャンペーンは、意識的に国際的な性格をもっており、みなさまもごぞんじのように、1998年5月、広島を含む、世界各地数ヶ所の都市で開始されました。このことは単にイギリスだけの問題ではなく、地球全体に影響を及ぼすということです。イギリスは、核兵器非武器化の可能性が、おそらく、もっとも高い国です。外国の市民が、非武器化の行動に参加し、法廷に立って、なぜイギリスの核兵器を脅威と感じているか説明するということは、裁判所と政府にとって、かなり厄介なことです。彼らはそれを、イギリスの国内問題とみせかけたいのですが、外国人が法廷に立って、イギリスの核兵器が脅威だから、平和的に非武器化する必要があると説明するとき、砂の中に頭を隠すことは、そう簡単ではありません。
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(8ページ5行目から12ページ中程まで 金星さん担当)
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グリーノックにおけるトライデントプラウシェア活動家の無罪判決(acquittal)がイギリス内でそのような論議を呼んだ訳を一つあげますと、それは、伝統的に法が国家を規制するものではなく市民(people)を規制するものだったからです。しかし今日、市民(people)〔トライデントプラウシェア宣誓者たち〕は、これをくつがえし、軍隊の法的根拠や正当性に公然と挑戦しています。これは、トライデントプラウシェアキャンペーンの目的の一つです。
もちろん、このような挑戦は、過去55年にわたる長年の反核キャンペーンにおいて行われてきました。しかし、それは決して現在ほど強力で徹底したものではありませんでした。トライデントプラウシェアは、そのキャンペーンの根拠を国際法に求め、そして核兵器の正当性を否定し自らの活動を正当化するために国際法を用いています。そしてこういった行動が無視されないようにするため、徹底した公開性と対決性をもって行動しています。またトライデントプラウシェアは、法と道徳のつながりを強調することにより、道徳的な論拠も準備しています。今日、裁判所は自己の独立性を主張し始め、法の公平な把握を確かなものとし(ensure)始めています。言い換えれば、裁判所は、公式の(official)な政府の政策は法の射程外にあると想定するのではなく、政府の公式の防衛政策に反対に異を唱える主張にも進んで耳を傾け始めています。ハーグの国際司法裁判所による1996年の歴史的意見は、私たち全員に大変な勇気をあたえました。そしてトライデントプラウシェアはICJの勧告的意見を強力な法的論拠として用いています。
私たちの主張は極めて明快(straightforward)です。核兵器は大量破壊兵器であり、したがって、これを精密に用いたり、不正を正とみせかけて用いたりすることはできません。 法は道徳に基づくものであり、法は人間の共通の道徳と両立する限りにおいてのみ尊重されます。政府、兵隊、そして軍隊は、法によって正当性と力を与えられるので、それらに対する法の重要性は、多大です。一般の殺人者と兵隊を区別するものは、兵隊は社会の代理としてある種の殺人を行う法的許可を与えられているという点だけです。法で認められた兵隊の殺人行為は、法によって慎重に制御されています。そしてその法のうち最も重要なものは、国際人道法です。グリーノックでの私たちの無罪判決は、私たちが犯罪意図を有していないことを認め、そして同時に、イギリス核兵力の犯罪的意図をはっきりと示したのです。
ここで、ギンブレット判事による判決のまとめを少し読ませていただきます。
「証拠を反駁する専門家がいないので、被告人が次のように考えた点について正当であると結論せざるを得ない。(訳注:この部分、なお検討中)
核兵器の恐ろしい性質ゆえにトライデントが違法である以上、脅威と認められる状況下においては、いかにわずかであれ核兵器の配置と使用を中止させるべく行動すべき国際法上の義務があるものと三人は考えたのである」。
判事は私たちを無罪とするよう陪審に指示しました。「私は、被告人が犯罪の意図を持って行動したと考えねばならない根拠が無いと思う」。
この発言は、私たちのキャンペーン全体の正当性を証明しました。そして、ついに見つけることができました。それは、私たちが公然と認めている財産損害(the damage to property)以外にも目を向け、私たちの行動には人道的(humane)で正当な理由があることを認め、財産よりも生命を重視し、道徳があらゆる正当で公平な法体系の中に存しているべき法廷に、正しく(fairly and squarely)道徳を復活させる判事――このような判事を、私たちはついに見つけることができたのです。
トライデントプラウシェアが1998年8月にスタートして以来、逮捕数は400を越え、それは主に、スコットランドのクールポートやファスレーンで3ヶ月毎に開かれるdisarmament campにおけるものです。これまでに50以上の裁判が終結し、警察のcustodyを除き、受刑期間は730日にのぼります。現在まで、13ヶ国から159人の「世界市民」が核犯罪除去(Prevent Nuclear Crime)の宣誓を行い、非暴力についての2日間のワークショップに参加しました。宣誓の基礎となっているのは、国際法上の権利、すなわち非暴力で安全で責任のある(accountable)活動によってイギリスのトライデント核兵器システムを廃絶(disarm)する権利です。
ここでは宣誓書を読み上げはしませんが、それはハンドブックに書かれています。私たちは必ず、計画、動機、組織構造の一切を、公衆、政府、軍に公表します。3ヶ月ごとにアップデートした全宣誓者リストを政府に送り、同時に、対話と交渉の要請を引き続き行います。そして次のように提案さえします。すなわち、もしわれわれが犯罪を共謀していると思うならわれわれ全員を逮捕するがよい。しかしわれわれの見解によれば、国際人権法の重大な違反故に逮捕されるべきは、政府と軍のほうである、というものです。
私たちがこのように行動するわけは、トライデントに反対するための私たちの手段を、トライデントの代わりとなってほしいものについての私たちのビジョンと調和させたいからです。私たちは非暴力的でかつ公然と責任を認めることに注意を払っているため、私たちは一般の警察(civil police)と極めてよい関係を築いて来ました。civil policeは、私たちが軍の重点的な 警備地帯に毎回進入したり、市民による戦争犯罪調査(citizens war crime inspections)を行うべく軍警察(Military police)のボートに近づいたり、警備が行き届いていると考えられている原潜に泳ぎ着いたりする際に軍警察が経験する当惑に注目して(note)います。
宣誓者は皆、小グループ(affinity group)に属し、安全と非暴力という基本ルールに従わねばなりません。ただし、その後は、自律的に行動できます。宣誓者は、自分が行う核廃絶(disarmament)行動の種類を決めます。これは、封鎖をしたり、フェンスを切ったり、原潜へ泳ぎ着いて装備を壊したり、研究施設を破壊(dismantle)したり、軍の施設(equipment)に戦争犯罪の警告をペイントしたり、基地の職員にパンフを配って「戦争犯罪の拒絶」を促したりと様々です。私たちは、安全で平穏なもの(peaceful)である限り、できるだけ多様で活発な核廃絶(disarmament)活動が行われるよう奨励しています。
[OHT NO. A1-18を提示]
ファスレーン基地へ泳いで進入を試みる前のスイマーとバナー。核廃絶(disarmament)キャンプの光景、多様な行動についての多くのシーン。
与えた損害が大きいほど、有罪とされた場合の処罰の可能性は明らかに高まります。そしてほとんどの人は、下級裁判所にて有罪とされています。核廃絶(disarmament)活動の大半が与える損害は最小のものですが、裁判所での事件数は最大限にまで膨れ上がっています。過去18ヶ月間に、核廃絶としての実質的な損害(substantial disarmament damage)を与える試みは6回行われ、行動を完遂した2つのグループは何千ポンド分もの損害を与え、トライデント関係の装備の作戦を遅らせました。このようなダメージを、私たちは核廃絶(disarmament)および犯罪防止と読んでいます。
イギリス各地に計37のトライデント関連施設があり、今現在、そのうち約8の施設でトライデントプラウシェア活動が行われています。私たちがこれまで力を注いできたところは、原潜基地のあるハスレーン、原潜が建造されるバロー、そして弾頭がつくられメンテナンスされているアルダマストンという主要地です。
[OHT No.B1を提示]
原潜「ヴェンジェアンス」に泳ぎ着いた若い二人の女性と、除去された、司令塔にある極めて重要なテスト用装備。バローにて。
イングランドとスコットランドの司法制度が私たちの国際法実施活動を取り扱う際に用いる方法には、大きな違いがあります。一般的に、スコットランドの裁判所は初犯者の起訴を却下しようとし、4〜5回逮捕されてようやく静穏妨害たは器物損壊という軽い犯罪について起訴される人もいます。他方、イングランドにおいては、核廃絶(disarmament)活動を完遂せず途中で捕らえられた3つのグループが、損害(criminal damage)を加えるという犯罪の共謀をしたとして起訴されました。こういった起訴ゆえに、彼らは私たちの主張を陪審の前で述べることができます。しかし、判事たちは鑑定証人を認めていません。そのため、イングランドの制度をもつ裁判所においては、公平な裁判を求める戦いさえもが存在しています。
ヨーロッパ人権会議が敬意を受けてくるに連れて、じきに専門家が十分な証言(full say)を許されるようになりそうです。しかしそれまでの間(meanwhile)は、陪審が聞くことができるのは、前もって準備した(pre-prepared)陳述(statement)や宣誓の中で活動家が述べたことや、活動家が証人席で述べたことにとどまります。最初の「Bred not Bombsプラウシェア」裁判は、評決不成立となり、2回目もあと少しで評決不成立となるところでした。イングランドでは、陪審は無作為に選ばれた12人からなり、評決には10人の賛成が必要であり、さもなくば評決不成立とされて新たな陪審の下で事実審理がやり直されます。このプロセスが2度繰り返されると、当該事件の判決は回避(drop)されます。核廃絶(disarmament)は当局(authorities)だけができるものと考えている判事たちと比べると、陪審のほうが真実全体を見ることができ、また、陪審のほうが、世界市民が実践的な核廃絶(disarmament)と核犯罪防止に従事する必要性を理解することができます。
私たちの核廃絶(disarmament)活動は継続します。私たちはもっと強力な国際ネットワークの構築を希望します。そして皆さんのうち私たちの活動に参加したい思う方すべてを歓迎します。また、私たちのsupporting petitionに署名してくださる個人と組織を必要としています。私はpetitionのコピーを持って参りました。
トライデントプラウシェアが実行される世界的な文脈の思想、キャンペーンの背景、そして私たちが従事する活動の種類についてご理解いただきましたので、ここで抗弁(defense)の基礎となる法的論拠(legal arguments)につき、および、なぜ私が今こそイギリスと他の核保有国〔NWS〕が次のような法に反し国際的な法秩序を侵害していることについて責任を有していると考えるかにつき、アウトラインを示したいと思います。イギリスによるトライデント核兵器システムの配置に焦点を当ててお話しますが、議論のほとんどが核保有国すべてに適用可能である点にご留意下さい。
[OHT No. L2を提示]
国際法違反のサマリー
国際法と核兵器
一般的に、核兵器が以下の国際法のすべてに反することは明白です。
・ セントペテルスブルグ宣言(1868)
不必要な苦痛を与えるから。また、付随的に文民の生命が失われる可能性を排除または最小化するものではないから。
・ ハーグ規則(1907)
不必要な苦痛を与えるから。また、中立国不可侵を保証できないから。
・ 世界人権宣言(1948)
長期間に及ぶ放射能汚染が、無実の人々の生命および健康の権利を侵害するから。
・ ジュネーブ諸条約(1949)
傷病者、虚弱者、妊産婦、文民病院、衛生要員(health worker)の保護が確保されないから。
・ ジュネーブ諸条約に対する追加議定書(1977)
付随的に多くの文民の生命が行われるから。また、長期間にわたり広範囲に重大な環境破壊をもたらすから。
これらの条約や宣言の重大な違反は、1946年のニュルンベルグ原則の下で犯罪的行為とされています。第6原則は、平和に対する罪、戦争犯罪、および人道に対する罪を定めています。特に、ニュルンベルグ原則IV(a)は、平和に対する罪を「国際条約、協定または制約に違反する戦争の計画、準備、開始または遂行、…これらの行為のいずれかを達成するための共通の計画または共同謀議への参加」と定義し、ニュルンベルグ原則VI(b)は、戦争犯罪を「戦争の法規または慣例の違反」と定義し、ニュルンベルグ原則VI(c)は人道に対する罪を「あらゆる一般住民に対する殺人、殲滅…その他の非人道的行為…で、いずれかの平和に対する罪もしくはいずれかの戦争犯罪の遂行として、またはこれに関して行われるもの…」と定義しています。
さらに、イギリスは、即座の完全な核廃絶(disarmament)の実施を試みていないので、1968年核拡散防止条約[NPT]に違反しています。
[OHT No.L3を提示]
基本原則
基本原則(Cardinal Principles)
国際法の重要な原則が二つ存在します。「第一は、文民(civilian population)と民用物の保護に向けられたものであり、戦闘員と非戦闘員の区別をもうけている。国家は文民(civilians)を決して攻撃対象としてはならず、それ故、民用物と軍事目標を区別できない武器を決して使用してはならない。第二の原理によれば、戦闘員に不必要な苦痛を与えることが禁止される。したがって、戦闘員にそのような傷を与えたり戦闘員の苦痛を無用に増大させたりすることは禁止される。この第二の原理に従えば、国家は、使用する武器につき、無制限な手段選択の自由を有しているわけではない。」
このような宣言、会議、および条約はすべて、現代の国際慣習法の中核的要素を形成し、イギリスを拘束しています。イギリスはこれらに拘束されることにつき、継続的に意義を唱えてはいないからです。実際イギリスは、これらの慣習的地位が確認された国際法廷の判決を一貫して支持してきました。
たとえば、イギリスは、ニュルンベルグ国際軍事裁判所や、前ユーゴスラビアやルワンダに関する国際刑事裁判所においては、これらを慣習法として承認しているのです。
言い換えれば、核兵器の合法性を評価する際に用いられる国際的な人道原則は、国際的な法秩序の中で確立しているのです。
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(12ページ中程から最後まで 大庭さん担当)
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結論
これまで頻繁に問われてきたにもかかわらず、イギリス政府は、国際司法裁判所(ICJ)に対しても、イギリス国民に対しても、どのようにして核兵器を合法的に使用する可能性があるのか、一度も説明していません。おおまかな仮想例さえも示していないのです。政府は、実際非常に注意深く、そのような状況を詳しく予想することはできないと語り、それゆえにそのときになってみなければ、核兵器の合法性について決定することはできないと言うのです。これまで、イギリス政府は、自分自身で、合法性に関する独自の審査をすることもできず、また進んでそれをしようということもありませんでした。
政府がいつも口にするのは、こういうことです。すなわち、「核兵器の合法性、または特定の使用は….そのような使用が考えられるような、あらゆる状況に照らしてのみ、決定されうる。起こりうるかもしれない、どのような確実な状況を考えても、予想を先取りすることは不可能であり、特定の事態をみこして、やまを張ることは、どんな目的にも役立たないだろう。」
そのような考えはおろかなことです。もし、事前に合法性審査と演習が行われないのなら、イギリスの存亡がかかっているような防衛戦争の真っ只中で、どうやって核兵器の実際の使用に関する合法審査がなされうるでしょうか。ICJによれば、核兵器の使用が合法とみなされるのは、そのような状況においてのみなのです。イギリス政府が、独立した合法性審査のために、大衆に示すことができるような仮想例を、ただ一つも示すことができないという事実は、結局合法性はないということなのです。
核兵器を宇宙に打ち上げるという新しい、そしてより危険な研究が続けられています。核不拡散体制は、急速に崩壊しつつあります。世界は、恐るべき社会的、環境的危機に直面しており、それらに対して非暴力の闘いを協力して行うことが求められています。国際法を、他国には求めるが、自らには適用しないという核保有国の欺瞞によって、世界は不安定になり、国際法の秩序は大きく揺らいでいます。法の秩序を求める多数の国々は、今こそイギリスを国際司法裁判所に引き出し、トライデント核兵器を裁判にかけ、ICJ勧告的意見を実行に移す第一歩を踏み出さねばなりません。勧告的意見より、むしろ私たちに今必要なのは、法廷の判決なのです。
しかし一方、地球市民としての私たちは、政府が私たちや地球社会の利益のために何もしてくれないと、すわって手をこまねいて、不満をこぼしている必要はありません。いかなる場合でも、権力者の利益のために、法はしばしば踏みにじられるということを、私たちは知っています。私たちには、自分自身が核の犯罪に加担するのを防ぐための予防的行動をする責任と権利があります。私は、トライデント・プラウシェア2000を通して、他のたくさんの人々とともに、そのことを実行しており、みなさんも私たちと一緒に仲間に加わっていただき、民衆による軍縮の過程で、それぞれ独自の役割を果たしていただきたいと呼びかけます。
ありがとうございました。