以下は1999年8月3日に7名でスタートしたときのアピール文です.3人はすでに無罪釈放されています.

 イギリスとデンマークの中高年の女性3人 (注1) が去る6月8日,グラスゴーにほど近いゴイル湖にある核ミサイル原子力潜水艦のための研究整備施設(DERA)に侵入し,原潜関連の研究およびソナー設備を,約3時間にわたって「非武器化」するという行動を起こしました.この施設はミサイル原潜の隠密行動に必要な,音響特性,磁気特性を試験したり,改良するための研究開発の主力となっているもので,これなしには原潜は「まる見え」となり武器としての能力を低下させることになります.この事件はようやく6月27日ロンドン発の共同通信によって「英原潜施設に侵入し破壊 女性活動家,国防省に打撃」のタイトルで報道されました.

 メンバーの一人アンジー・ゼルター氏は3年前に,インドネシアに輸出されることになっていた戦闘機をハンマーで壊してこれを阻止したグループの一員として裁判にかけられましたが,輸出先での虐殺防止のための正当な行為であるとして完全無罪とされています.今回の行為についても,本人らの「共同声明」 (注2) によると,イギリスによる核の使用という重大な犯罪を予防し,国際法違反の核ミサイルを廃棄しようとしない政府に代わっての,民間による「補正」の行為であるとしています.また,必要な事前の秘密性以外,公開で,非暴力であり,きちんと説明できる(accountable),責任ある行動である,とも言っています.したがってそのことを「説明する」ためにすぐに警察に行き,そこで拘束されました.現在も拘禁状態にあります.

 彼女らの属する「トライデント・プラウシェアズ2000」(トライデント原潜を『鋤』に変えよ,の意味)のグループは,非暴力と安全の基本原則などの「誓約」に署名し,しかもその署名者の名簿を首相など政府当局に送っています.そして何年もの政府をはじめあらゆる公的機関との話し合いの努力を経た上で,当局が何ら責任ある態度を示さなかったために,みずから行動を起こしたものです.彼女らの行動は,たしかに直接的にはコンピュータなどの器物を壊しているのですが,そのことをもって「暴力的」と言うことはできないでしょう.不要な物を壊して廃棄するのをふつう暴力とは言いませんし,ましてやそれらは大量殺戮の巨大な暴力の道具の一部,国際司法裁判所が違法と判断した核兵器システムの一部なのですから.

 3人は現在スコットランドの刑務所に収監されており,拘留は長期にわたる恐れがあります.どうか関連の文書 (注2) を是非お読みいただき,彼女らの行動が法的にも道徳的にも正当であり,真の犯罪はイギリス政府(だけでなく,すべての核兵器国の政府)による核の配備そのものであることをご理解いただきたいと思います.そのうえで是非とも彼女らへのご支援をお願い申しあげます.

1999年8月3日,8月6日修正


(注1) Angie Zelter (49), Ulla Roder (44), Ellen Moxley (63)の各氏.(カッコ内は年齢)
3人の属する"Trident Ploughshares" のホームページ
(注2) 「共同声明」日本語訳pdf形式
オリジナル JOINT STATEMENT
「市民による核廃絶」,アンジー・ゼルター,1999年5月,訳 大庭里美
original:CITIZEN'S DISARMAMENT by Angie Zelter
「市民社会と地球人の責任」,アンジー・ゼルター,1997年10月,訳 真鍋毅
   (のち岩波「世界」に掲載)
original:CIVIL SOCIETY AND GLOBAL RESPONSIBILITY by Angie Zelter