サンデーヘラルド紙 1999年10月24日付

トライデント裁判はスコットランド議会(ホリロッド)にとって試練となる

タークル・クリッチトン,トレイバー・ロール

 グリーノック裁判所判事は,3人の反核運動家がファスレイン核基地で意図的に起した破壊行為を無罪とする判決を下した.この論議を呼ぶ判決をスコットランド国民党(SNP)は,クライド地区に配備されているトライデント核ミサイルに対し法的管轄権をもつスコットランド議会(ホリロッド)とイギリス議会(ウエストミンスター)に対して,憲法に警鐘を鳴らすものとして使おうとしている.

 SNP党首アレックス・サーモンドは,国防上の諸問題はイギリス議会にその管轄権があるという憲法判断に挑戦するために,この問題を取り上げた.SNPはこの問題はスコットランド法に従うべきであり,暗に管轄権をもつのはスコットランド議会でありイギリス議会ではないことを証明しようとしている.

 この動きは,大西洋両側の軍事的,政治的権力者達を震撼させることとなったマーガレット・ギンブレット判事による判決の広範な影響のひとつといえよう.先週木曜日に出されたギンブレット判事の判決は,3人の反核運動家には核軍事施設を非武装化する企てのひとつとしてクライド海岸のフォールスレインにある潜水艦基地にあるはしけを破壊する合法的権利があるとするもので,大騒ぎを引き起こした.ギンブレット判事はサンデーヘラルド紙に対して,彼女の画期的な判断は核兵器の脅威と使用を違法であるとする国際司法裁判所の判決に依拠するものである,と語った.

 国防はイギリス議会の管轄事項であるが,SNP党員達は,スコットランドにおける核兵器に関する法的権力がどちらの議会にあるのか,を明確にすることを目指したイギリス政府とスコットランド議会間の協定文書を何とか入手するために今回の判決が使えるという感触をもっている.

 サーモンド党首は“今回の裁判所の判決は,トライデント核ミサイルをスコットランド政治の中心舞台に連れ戻したので,SNPはこの問題を議会で議題とするつもりである.この問題はわれわれが実質的な論争を挑みたい法的,道徳的,かつ憲法上の諸問題を引き起こすであろう.”と語った.

 サーモンド党首は,批判されて当然の振る舞いをするトライデント核ミサイル擁護派の政治家や評論家を非難する一方,ギンブレット判事の判決を強く擁護した.

 ギンブレット判事の判決はスコットランド人評論家達から,国際法を誤解していると攻撃されたが,西側の軍部指導者達からは極めて重大なものと受け取られている.

 ギンブレット判事は,彼女の判決を遺憾に思うメディアによって,役立たずのへまをやる人物である,と強く非難されたが,彼女が下した判決については何の後悔もしていないと,昨日次のように語った.“私は自分が正しいと考えたことを実行したが,これ以上コメントすることは出来ない.” 被告人達を処罰しないという彼女の判決は覆されることはないが,スコットランドの上級法務官吏である法務長官によって高等裁判所へ上告され審理に付されることになるかも知れない.

 サーモンド党首は,法務長官は極めて難しい立場にあるとして次のように語った.“彼は何もしないか,もしくは高等裁判所に出向くであろう.かれが上訴することにより核兵器の非合法性についてはさらに大きな論争を巻き起こすであろうし,あるいは何もしないことによって彼は暗にその解釈を認めることになるであろう.”

 SNP党指導部は論争への支持を得るために広報戦術を採用しているが,この問題は,論争に対する動議が既に受理されているマーゴ・マクドナルドMSEによって,明日取り上げられるであろう.

 マクドナルドの動議は,クライドのトライデント施設に関する法的管理権をイギリス議会からはずすことを英国政府に訴えている.“このことはひとつの国家と二つの法体系を持つことができるかどうかの核心に触れる問題である.スコットランド議会はこの地域においてスコットランド法の擁護者であるべきではないと誰が表明できようか.”とマクドナルドは語った.

SNPは核兵器がスコットランド議会の管轄下になりうるかどうか確立しようとしている.

 政治的,軍事的権力者達はギンブレット判事の判決と,3人の運動家を支援し核兵器の合法性を問う課題に勝利しつつあるプラグシェア2000キャンペーンの成功を深刻に受け止めている.大西洋両側の軍事評論家達は今や,今回の判決が,国際法上核兵器の配備は非合法であることを証明しようとして,他の機密軍事基地を標的にしようとしている運動家達を勇気ずけるかも知れないことを恐れている.トム・マクドナルドは英米安全保障情報委員会の核問題分析家で,影響力のある学術的人物であるが,今回の判決は広範な意味をもつものであるとして,次のように語った.“これらのことはいいかげんな一人の治安判事の大言壮語ではなく,国際法の適用を試みて考え抜かれた判断である.”彼の同僚であるマーティン・ブッチャー(ワシントンのBASIC訪問研究員)は,軍事当局はギンブレット判事の判決を考慮して核兵器の配備戦略を再考せざるをえないだろうという見通しを述べた.“トライデントプラグシェアは非常に効果的なキャンペーンを展開したが,この種の運動はたまにしか使えない.いずれにしても,彼らが政府に対して目覚ましコールを送ったことは確かだ.”