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***** 掲載日:1999年10月23日 朝刊 ページ:031 面名:1社

■核兵器は違法 核搭載原子力潜水艦破壊の3人に放免判決 イギリス

 【ロンドン22日=百瀬和元】「核兵器は国際法上、違法である。これを無くそうという行動は犯罪を防ぐためのものだ」――こんな論理が通って、英国・スコットランドで二十一日、海軍基地に侵入して核搭載原子力潜水艦トライデントの施設の一部を破壊した女性三人に対し、免罪を言い渡す法廷の決定があった。

 三人は、一九八〇年代に盛んだった「核軍縮運動」(CND)に共鳴する反核運動家で、四十五−六十三歳。今年六月、グラスゴー西方にある海軍基地ファスレーンに忍び込み、トライデントの付属施設である「はしけ」の実験設備の一部を破壊して逮捕され、拘束されていた。

 二十一日、スコットランドから報じられたところでは、地元のグリーノック治安判事裁判所で、弁護側は(1)一九九六年の国際司法裁判所(ICJ)の判断(勧告的意見)で、すべての核兵器は違法とされている(2)女性たちは基本的に罪を犯したが、それはこれを上回る犯罪を防ぐためだった(3)したがって、スコットランドの法で「免罪」されるべきだ――と主張した。

 これに対して、ギムブレット判事(六〇)は弁護側の言い分を認めて放免を決定。「決定はこうした行動を繰り返していいという意味ではない」と諭しながらも、「この事件がきわめて特別な状況下にあった」と語って、トライデントの存在を「違法」と判断したことを強く示唆した。

 同判事は「英国のトライデントが他国に脅威を与えていて、国際法を犯すと解釈することもできる」と語り、女性らの行動が「正当化」されるという判断を示した。

 英国は「抑止力」として核兵器保有を正当化している。BBC放送などによると、地元の保守党議員らから、早速、怒りの声があがっている。上級審に持ち込まれた場合、この決定が支持を得られるかどうかは疑問だが、核兵器の合法性について国際社会に改めて一石を投じ、世界の反核運動を勇気づける「小さな町の法廷の大きな判断」になるかも知れない。