トライデント・プラウシェア
2000年7月31日 対話と交渉
翻訳ver. 1.0 (Aug. 10, 2000)
トニー・ブレア殿
私たちが3ヶ月毎に行う公然たる軍縮運動に先立って、例によって、現時点でのトライデント・プラウシェア誓約者の名簿を同封してお知らせします。これは、1998年にあなたに差し上げた私たちのハンドブック『トライデンティング イット』記載のように、責任ある公然かつ非暴力的軍縮についての私たちの公約に沿ったものです。私たちの運動の詳細や現時点での誓約者のリスト、或いは支持者のリストをお知りになりたければ、いつでもwww.gn.apc.org/tp2000にある私たちのウェブ・サイトをご覧になってください。
私たちは、最近4月24日から5月20日までニューヨークで開かれた核不拡散条約(以下,NPTと略記)再検討会議において、あなた方政府が建設的な役割を果たされたことを祝いたいと思います。私たちは、イギリスが次の合意に加わったことを知って喜びました。即ち、「核戦力の完全廃絶を達成する核保有国の明確な約束」を含み、この目標に至る実践的段階の計画を伴う合意です。
これは、NPT第6項に取り入れられた核軍縮義務(NPT加盟国による2000年再検討会議の最終文書第6項第7節)の、これまでのところもっともはっきりした承認であり、NPT加盟国が1996年7月8日に出された国際司法裁判所の勧告的意見に留意したことからくるものです。私たちは、あなたが今やこの勧告的意見の重要性を認めたことを嬉しく思うとともに、あなたが今後とも国際法における国際司法裁判所の意見の適用を認めるよう望むものです。
イギリスにとって、核軍縮に関する外交上の表現を発展させる点において建設的役割を果たせば足りるというわけではありません。私たちは、自分たちの政府が実践の範を垂れることを期待します。最近、国連の副事務総長ジャヤンタ・ダーナパラ氏は、地球規模安全保障及び核不拡散に関する全議会政党グループへのスピーチで、核兵器国としてのイギリスに関連する5つの問題を提起しましたが、私たちはこれについてあなたにお答えいただきたいと思います。
1.核兵器について−いくつかの国々が核兵器は我々の安全保障にとって「不可欠」或いは「基本的」であると主張し続けるとすれば、そのような国は如何にして他の国々に同じ権利を否定し得るのでしょうか? のみならず、あらゆる国がこの論理を採用したとすれば、その結果はどうなることでしょうか?また「準戦略的」核兵器について、このような兵器が戦略的効果を持たずに使用され得るなどと考えられるでしょうか?
2.核ドクトリンについて−国々が核の威嚇から免れるために非核兵器地帯を形成するとすれば、核兵器の第一使用或いは非核兵器国に対する使用を認める軍事ドクトリンは、これら地帯を創設ないし維持しようとする国々の意欲や動機にどのように影響するでしょうか? このようなドクトリンも、兵器同様、拡散するのではないでしょうか?
3.運搬手段について−NPT前文は核兵器運搬手段の廃棄を重要な目標と位置付けています−現在、公的な討議が抑止とミサイル防衛の対立という泥沼にはまっていて、ミサイル削減に余り注意が払われないのは何故でしょうか? 1999年4月に国連事務総長は、ミサイル及びミサイル防衛のための「多国間で協議された規範が必要」と力説しましたが、誰がこの課題を真面目に取り上げているのでしょうか?
4.核分裂性物質について−このような物質をどうしても必要とする経済的理由はなく、それらに関する保安上の規制が広く認められているのにもかかわらず、国々は何故、新たな核分裂性物質を生産し続けなければならないのでしょうか? この生産が少数の国だけに永久に認められ続けると考えるのが現実的である、或いは慎重なやりかただと言うのでしょうか? 兵器用核分裂性物質の生産を禁止する努力が、そのような物質の現存の備蓄に関する管理にまで確実に及ぶようにするためには、何が為されているのでしょうか?
5.軍縮の社会的基盤について−地球規模の核軍縮を求めて、いま、どんな方策が国内的及び国際的に採られているのでしょうか、また、それらはこの事業にふさわしいのでしょうか?
イギリス並びに他のNPT加盟国によって同意された、核軍縮の実際的な手順についての計画は、次のことを含んでいます。
*「核兵器国がその軍備を一方的に削減するようにいっそう努力すること」。私たちは、連合王国の核戦力を4隻のトライデント潜水艦の現配備から核弾頭つき200D-5ミサイルにまで引き下げるという一方的削減を為すために、あなたが提案した予定表について話し合いたいと思います。
*「核兵器の能力と第6項に沿った同意の実行に関して、核軍縮のいっそうの進展を支えるための自発的な信頼醸成手段として、核兵器国が透明性を高めること」。防衛戦略見直しとともに、イギリスは透明性においてもっとも進んだ核兵器国ですが、まだ為すべきことがあります。オルダーマストン/バークフィールドの核兵器施設とクールポート間の核弾頭の輸送は、沿道の町や村を危険にさらしています。廃棄するつもりならば核弾頭の輸送と整備を続ける必要もないはずですが、続ける以上、緊急事態に対処するためにルートと時間を事前に知らせておくべきです。もっとも重要なことは、第6項の義務と2000年再検討会議で為された約束を守るために、イギリスが今やらなければならない段階について開かれた公的な討論を行う必要があるということです。
*「一方的なイニシァティヴに基づいて、核兵器削減及び軍縮過程の不可欠の部分として、非戦略核兵器をいっそう削減すること」。NATOによってこの国及び6つの他のヨーロッパの国に配備され、残存しているアメリカの戦術核兵器の撤去を確実にするために、イギリスは何をしましたか?
*「核兵器システムの作戦上の警戒態勢をいっそう低めるため具体的に同意された手段」。他の核兵器国と共同で出された声明には、我々の核兵器は今、どこの国にも向けられていないと述べられています。非核諸国はこれを歓迎しましたが、更に前進することを要求しています。イギリスは発射の可能性を低めはしましたが、防衛戦略見直しは「我々は、必要とあればより高度の警戒態勢にいつでも戻せることを確実にしておく」と約束しています。これは受け入れられません。核戦力を完全に廃棄する約束を果たすために、私たちは、全てのトライデントを警戒態勢から解き、核弾頭をミサイルから外し、それらを作動不能にするよう、あなたに要求します。
*「核兵器が使われかねないリスクを最小限にしてその全面的廃絶の過程を容易にするために、安全保障政策における核兵器の役割を減らすこと」。防衛戦略見直しは「我々自身の戦力は、述べられたいっそうの削減に従って予見し得る未来の安全をもたらすのに必要な最小限のもの、大きな核戦力を持つものに比べればはるかに小さなものである」と述べています。別のところで政府代表は、核兵器をイギリス及びNATOの安全保障に欠かせないものと述べています。これらの叙述はNPTの義務と相容れず、イギリスが個別的に、またNATOの一員として依然として核兵器を自らの安全保障政策の中心に置いていることを示しています。第一使用の威嚇に基づく抑止は冷戦の遺物です。NPTの会議で非核諸国が再三提起した関心事は、イギリス、フランス及びアメリカが、核兵器の第一使用の可能性に基づく戦略ドクトリンと、生物或いは化学兵器の威嚇や使用に対抗するという核兵器の役割の拡大をNATOが保持することに固執しており、この政策がロシアとパキスタンに対して取られているということです。国際司法裁判所の勧告的意見は、核兵器の使用が一般的に人道法に反することになると規定しましたが、国が存亡の危機に瀕するような状況での核兵器使用が許されるか否かについては意見が分かれました。1999年4月、NATO国家首脳のワシントン・サミットは、1998年12月の第一使用に関する討議についてのドイツとカナダからの圧力に応えて、武器管理政策を見直し始めました。NATOドクトリンから核の第一使用を除外することを容易にするために、イギリスはいったい何をしているのでしょうか?
第一使用はしないという誓約は、まずは宣言的なものでしょうが、信頼醸成を強めるでしょうし、警戒態勢を低めるステップが確認されることによって裏打ちされ得ましょう。このような誓約は、兵器用核分裂性物質の生産禁止(カット・オフ条約)及び透明性を含む他の手段に北京を引き入れる方法として、これを核政策および核不拡散の議論の中心的な考え方としている中国との交渉において有用でしょう。そうしなければ、新たにパキスタンも含めて他のいくつかの国々が、他国には核兵器を開発する権利を否定しつつ、紛争において核兵器の使用も辞せずという威嚇がその国の安全保障にとって絶対不可欠であるという主張を続けることになるでしょう。
*「全ての核兵器国を、その核兵器の全面的廃棄へ導く過程に速やかかつ適切に引き入れること」。この節はイギリス、フランス及び中国に向けられたものです。私たちは、イギリスの核兵器を軍縮過程に置くのに相応しい時は今であると考え、このことについて、あなたとの対話に入りたいと思います。
私たちは、この手紙であなたに提出した重要かつ厳粛な問題に対する実質的な回答を期待し、あなたの速やかなお返事を待ち望んでいます。
トライデントが依然として24時間中警戒態勢にある間、私たちは、クールポートとファスレーンで私たちの合法的な市民による廃絶作業を続けるつもりです。私たちは、トライデントの配備を重大な国際法違反と考え、私たちの核廃絶の作業を重要かつ緊急の犯罪防止であると考えます。私たちは、私たちの2週間にわたる公然かつ責任ある軍縮を始める8月1日には、ファスレーン基地をほぼ封鎖していることでしょう。
平和と愛のうちに
カトリン・エイモス、モラグ・バルフア、シルビア・ボイズ、マギー・チャーンレイ、アリソン・クレイン、ヘレン・ハリス、デイヴィッド・マッケンジー、ジョイ・ミッチェル、ブライアン・クウェイル、ジェイン・タレンツ、アンジー・ゼルター