アンジー・ゼルター 日本講演ツァー「3月のメイタイム」から

EXTRA FOR LEGAL PRESENTATION

法学者・法律家を対象に開催された講演会の資料
(2000年3月3日 早稲田大学比較法研究所にて開催)

             訳   麻 生 多 聞

一般的な違法性

ICJ勧告的意見の全文およびその趣旨から、論議の対象となるのは、「極限状態において」さえ、いかなる核兵器による威嚇またはその使用も違法となる可能性があるのか、また違法性の推定を生じさせるのか、ということである。

合法な核兵器使用の可能性?

ICJ勧告的意見により残された、唯一の可能な抜け道は、パラグラフ105 2Eに存在した。

「現状の国際法全体からみて…そして利用可能な事実の要素にてらして、国際司法裁判所は、国家の存続それ自体がかかっているような自衛の極端な状況において、核兵器の威嚇または使用が合法であるか違法であるかについては、確定的に結論することはできない」

英国の核兵器の違法性

ICJは一般的な問題につき考察を求められたが、この問題をヨリ具体的ならしめる「利用可能な事実の要素」を有してはいなかった。しかし国際法の諸原則が、1998年戦略的防衛報告および、NATO戦略概念文書において略述されたような、近年の英国の抑止政策に沿って、現在配備中の英国トライデント・システムに対して適用され、そしてトライデントの弾頭が有する破壊力およびその標的という文脈の中に位置づけられるのであれば、英国のトライデントが違法であることは、きわめて明白である。トライデント核弾頭は、各100〜120キロトンであり、モスクワ内および周辺の軍事目標に対して配備されてきた。トライデントという核兵器をかように使用することは、民間人と軍事目標の区別もできなければ、区別しようともしていない。核兵器がこのようにして配備されることの理由は、大量破壊をすると威嚇することによって、戦争を抑止せんとするためである。このロジックにおける致命的な欠陥は、もし核抑止が失敗して英国が開き直ったならば、大量破壊が必ずもたらされることである。このことからすると、トライデントの目的は、恐怖で圧倒し、「予測不能で容認できない」危険を生み出すこと、ということとなる。実際、「核抑止」のポイントは、それがいかに粉飾されようと、大量破壊を脅迫することなのである。

したがって、英国トライデント・システムは、全世界の生命に対する、直接的で継続的な危険であり、国際平和に対する脅威であり、ICJの表現をかりれば違法なのである。

自衛

ICJは、勧告的意見パラグラフ42において、次のように判じた。「自衛に関する法の下で、均衡である武力の行使が合法たるためには、とりわけ人道法の原則、ルールを構成するところの、武力紛争において適用可能な法による要求を満たさなければならない」と。英国に対する主な障害は、1995年11月15日の、サー・ニコラス・リエルによるICJに対する口頭陳述の検討によって見出されうる。これは、核抑止を支持する思考に慣れすぎて、国際人道法とは何であるかを忘却してしまった、国家の考え方を明らかにするものである。「戦争に関する慣習法があらゆる種類の兵器の一定の使用を禁ずるように、核兵器の一定の使用も禁じていることは明白である」ことを認めた後、彼はこのことの土台を、国家が圧倒的な外敵の武力に直面する事態につき詳述することによって、掘り崩すのである:「もし、使用可能な他のすべての手段が不十分であるならば、核兵器の使用が不均衡であるとどうしていえようか?防衛手段が与えるであろう損害の程度ゆえに、攻撃による犠牲が、自衛のためにもはや許されない局面に至ったことが示されないかぎり、そうはいえないのではないか」。

しかしこれが国際人道法のポイントなのである。意図されていることは、戦争による恐ろしい影響を制限し、紛争終結後も世界が存続することを確実にすることである。このことが意味するのは、正当な自衛においてさえ、自己抑制が求められているということなのである。

ベジャウィ裁判長によれば、「自衛というものは−たとえ国家の存続そのものが脅威にさらされている極限状況においてなされるとしても−、国家が己を国際人道法による“intransgressible"な規範の遵守から解放する状況を生ぜしめるものではない…したがって、国家の存続を他のあらゆる事柄に、とりわけ人類そのものの存続に優位させることは、極めて無謀であろう」

まさにクリストファー・グリーンウッドが英国を代表して主張したように、「自衛の必要性を人道法による諸原則に優位せしめることは、過去数百年をこえてなされてきた人道法における進展の全てを危険にさらすこととなろう」

多数の市民や団体は、英国がそのトライデント核兵器の使用が合法であると考える例につき明らかにするよう求めてきたが、彼らは明確な回答をえてはいない。彼らは、トライデント核兵器が「敵」をおびえさせ、威嚇するために、そして大量破壊を脅迫するために用いられていることを確信している。彼らは、これは違法であると主張する。おそらく、海洋の真ん中の軍事基地に対してターゲッティングされた1キロトンの核弾頭の使用や、砂漠の真ん中にある戦車に対する使用もあるかもしれないが(この核兵器の使用は合法とみなされるかもしれない)が、通常兵器で核のエスカレーションという不合理な危険を伴うことなく、事は足りるのである。

さらに、以上のことがトライデントの設計目的であるわけではない。もし、英国のトライデント潜水艦に現在配備されている弾頭を目にしたなら、英国はその弾頭の全てを1キロトン、あるいはそれ以下にまで縮小してきてはおらず、また全てではないにせよ、国防省によりもくろまれた大抵の目標は、町周辺および民間住民の住む都市であることが明らかとなる。トライデントに現在配備されている弾頭による、これらの地域のいかなるターゲッティングも、大量の民間人の死亡につながりうるものであり、ゆえに違法である。

さらに、現在の英国の政策声明は、英国がその核による脅威の使用を「自衛の極限状況」に限定していないことを示す。英国政府は、英国が「英国のまさに存続」が脅威にさらされてはいないことを、明確に認識してきているのである。

政府による戦略防衛報告は次のように述べる。「冷戦の終結は、我々の安全保障の環境を変化させてきた。世界は世界大戦の勃発をおそれることはなくなった。西欧、あるいは英国に対しては、我々が知るかぎり直接的な脅威はもはや存在しないし、また海外のいかなる英国領も、重大な軍事的脅威に直面することはない。

英国の存続が現在問題ではないことを所与とすれば、たとえ英国政府が1キロトン以下の一発の核弾頭のみが配備されていると請け負ったしても、現在のトライデント核潜水艦の配備は違法であり、ましてや、配備可能なそれぞれ120キロトンにおよぶ144発の核弾頭が違法であることは多言を要しない。

死活的利益の防衛

英国の核兵器配備、そして核政策は、単に自衛に、あるいは他の核兵器国からの核攻撃に対する報復のみを問題としているわけではなく、リフキンド・ドクトリンにおいて明らかにされているように、「英国の死活的利益を最大限防衛すること」をも問題としている。

戦略防衛報告は、とくに軍事力を「政治目的達成のための強制手段」としてとらえており、この「政治目的」につき、報告の他箇所は明確に、経済的なもの、石油関連のものとして確認している。政府は報告において、トライデントは「準−戦略的役割」を果たさなければならないことを述べ、また世界中のいたる場所での英国の死活的利益に対する攻撃への報復として、核を保有しない「ならずもの」国家に対し、「低度の」核弾頭を用いるプランを有することを述べているが、これは違法である。

核兵器配備は、とりわけ危機の時代においては、現実的な威嚇として認識される。この見解は、大量破壊兵器の世界的な拡散に関する米上院聴聞における、シュベーベル判事による報告により確証される。その報告は、イラクのエケウス大使による、イラクが1990年に、核兵器の己に対する使用の脅威が存在したことを認識していたことを示す証言についてのものであった。

1998年2月のイラク危機においても、イラクに対する核兵器使用の可能性がささやかれていた。かようないかなる使用も、英国も米国もイラクによる自国の存亡の脅威の下になかったがゆえに、違法であったろう。ここで想起されるべきは、ICJにより未決定に残された、合法性についての唯一の可能な抜け道は、「自国の存続が危険にさらされる自衛の極限状態」であったことである。

しかし、1998年2月17日の下院での議論において、英国外務長官ロビン・クックは、もしサダム・フセインが英米連合の空軍に対し化学兵器を用いるならば、「それに均衡した報復がなされるだろう」ことを「確信しておくべきである」と述べた。2月18日のBBCラジオのインタビューで、英国防長官ジョージ・ロバートソンは、核という選択肢を否定する機会を与えられつつも、それを否定しなかった。これら全てのことは、核兵器の使用が考えられたことを示すシグナルであったし、かようなものとして理解されるよう意図されていたのである。

核抑止を全体としてみれば、その目的は、意図についての不確実性を創出することである。すなわち、これは、英国政府がその「敵」に対して、英国が国際法をすすんで破るかもしれないことを確信させんとしてきたことを示している。例えば、1991年NATO戦略概念文書第38項は、核兵器はそれが「いかなる攻撃についてのリスクも予測不能で容認不能なものにすることにおいて、類のない貢献をする」がゆえに、極めて重要でありまた常置されるのだと主張している。

核兵器による影響が予測不能で容認不能であるならば、それは核兵器が違法であることを帰結する。核兵器はそれが違法な脅威を生み出すために用いられるかぎりにおいてのみ、有用なのである。核抑止は公言された英国の政策たりうるかもしれないが、そのことが核抑止を合法にするものではない。

ICJ勧告的意見パラグラフ105 2Eにおける文言を強調すれば、国家による核兵器の唯一の可能な合法的使用、そして合法な使用による威嚇はもしあるとすれば、「国家の存続そのものが危険にさらされている自衛の極限状況において」存在するかもしれない。

このことは、海外のとるにたらない石油の利権の保持や、外国における自国軍隊の存続の確保を含むものではない。

集団的自衛

「国家の存続そのもの」なる文言において、さらに含意されるものは、国家は存続が危険にさらされている他国を防衛するためにも、核兵器を使用できないという見解である。英国、そしてNATOの政策は、核兵器が集団的自衛においても使用されうるというものであり続けている。それはすなわち、英国が他国の防衛において核兵器を使用する権利を保持することは、イラクがクウェートを侵略したことと同様に、国際法違反である。

戦争犯罪

文明諸国により認識されている、法の一般原則は、人は自分の行為による必然的で予見可能な帰結を意図していると推定される、ということである。

トライデント潜水艦に現在配備中の核兵器の使用を命ずるいかなる個人も、国際刑事裁判所規程第8条(2)(b)「、」により判断されるように、戦争犯罪を犯すことになろう。「戦争犯罪は、国際法の確立された枠組の中で、国際的な武力紛争において適用可能な法、慣習の重大な侵害を意味する、たとえば次のような行為…(「)具体的で直接的な、予測される全体的な軍事上のアドバンテージに関連して明らかに過度であろう、民間人に対する付随的な殺傷、あるいは民間物への損害、広範で長期的な、そして深刻な自然環境に対する損害を自覚しながら行う意図的な攻撃、(」)いかなる方法によろうが、防衛されておらず軍事目標でもない町、村、住居あるいはビルに対する攻撃、爆撃。」トライデントにおける100キロトンの弾頭はそれぞれ、ヒロシマに対して使用された爆弾よりも8倍も強力である。ヒロシマにおける破壊は下田事件において戦争犯罪を構成するものとされた。

ICJ勧告的意見パラグラフ105 2Dによれば、核兵器の威嚇または使用は、「武力紛争に適用可能な国際法の要請をみたすものでなければ」ならない。パラグラフ78において確認されたことは、「国家は民間人を攻撃対象にしてはならず、またその結果として、民間人と軍事目標を区別不能な兵器を用いてはならない…国家は己が用いる兵器の手段選択につき、無制限の自由を有するものではない」ということである。

したがって、核兵器によって民間人を目標にするという威嚇は、先制攻撃としてであれ、報復としてであれ、違法である。1995年11月15日における、英国のICJに対する口頭陳述の中で、サー・ニコラス・リエルは次のことを認めた。「攻撃から予測される具体的で直接的な軍事上の利益に比較して過度に損害をもたらす、民間人の死傷または民間財産への損害をもたらす場合は、軍事目標といえども攻撃されてはならない。」

しかしICJがパラグラフ35で示したように、「その本質において…核兵器は…大量の熱、エネルギーを放出するのみならず、強力で長期的な放射線をも放出する…この特質は核兵器をして潜在的に最悪ならしめる。核兵器の破壊力は、空間的にも時間的にも容認できない。それは地球上の全文明、そして全生態系を破壊してしまうポテンシャルを有している。核兵器についてのこの一般的な言明は、とりわけ具体的に英国の核兵器に対しても、同様のことがいえる。

スコットランドのファスレーンは、英国の4隻の核武装トライデント潜水艦により利用される主要基地である。ここには常時1隻のトライデント潜水艦が24時間体制で警戒体制にある。各トライデント潜水艦は、それぞれ100〜120キロトンの48の弾頭を装備している。一発の100キロトンの弾頭は、あまりに強力で民間人と軍事目標を区別不能であり、またその長期にわたり持続する影響力は、空間的にも時間的にも容認の限度をこえており、ゆえに国際法違反である。

「今日、英国の核能力の規模、そしてそれの配備形態は、それが主にロシアに向けられ続けていることを示している。1隻の潜水艦の弾頭を用いた、モスクワ方面の標的への一回の攻撃は、300万人の死者を出すだろう…そして…都市部への大量の核による放射線の流出につながろう。何千もの人が、この放射線により4〜12週間にわたって死ぬだろう」。他の潜在的な標的はロシア北部艦隊潜水艦基地である。英国では、民間人の居住するグラスゴーに近いファスレーン基地のように、それぞれの重要な潜水艦施設に近い町、村がある。ムルマンスクに近いロシア基地の近くにも民間人が居住している。これらの基地の上でトライデント弾頭が爆発すれば、広範な破壊をもたらし、都市部では何千人の民間人の死傷につながるだろう。核攻撃をうけた地域は、レスキュー部隊、医者スタッフ、そして今後その地域を利用したい民間人に対しても危険となろう。

戦争犯罪の準備

戦争犯罪の準備は、ICC規程25(3)条において極めて明確なように、それ自体で戦争犯罪を構成する。「本規程によって、次のような行いをした者は刑事責任を問われ、国際刑事裁判所の管轄権の範囲内で犯罪に対する処罰をうける:(C)戦争犯罪の幇助の目的で、犯罪のための手段の提供を含めた、戦争犯罪もしくは未遂の戦争犯罪における補助、教唆、その他の支援をした者」

これは、「共通の計画あるいは共謀の形成に参加した扇動者、共犯者」に対するニュルンベルク国際軍事法廷憲章第6条の最終パラグラフのような、様々な先例の頂点に位置する。

英国首相、そして国家の他の高官は、核兵器使用の計画、準備に従事しており、彼等は決して合法的に使用されえないようなサイズの核兵器を積極的に配備している。これは、国際法における個人的な刑事責任を生ぜしめる行動である。現在配備中の英国の核兵器のいかなる使用も、明らかに違法となろうし、ゆえに政策決定者、国家公務員、研究者、技術者は慣習上の人道法に対するはなはだしい違反の計画、準備に携わっているのであって、それ自体、国際法下の犯罪である。

核政策

英国の核兵器の使用が非合法かつ犯罪であるように、トライデント配備および、核抑止への英国政府の依拠の全てであるところの核兵器使用の威嚇も同様である。

ICJはパラグラフ48において、次のように述べる。「核兵器の保有は、核兵器使用が用意されていることの推測を正当なものとしうる。核抑止は実効的たるためには、核兵器を使用する意図が信じられるものであることを要する。これが、国連憲章第2条4項に反する「威嚇」であるか否かは、武力の具体的な使用が、必要性と均衡性の原則を侵しているか否かにより決定される。核という武力の使用、またその使用の威嚇のいかなる状況においても、それは国連憲章という法の下、違法となろう。

米国出身のシュベーベル判事でさえ、次のように説明する、諸国家は以下のようなやり方で、己の核兵器を使用すると威嚇してきた、「核兵器の保有と配備という動かし難い事実と不変の暗示によって:すなわち、1年365日、毎日24時間:軍事計画によって、戦略的、戦術的に配備され、時には自らそれを公然と明らかにすることによって;そして、極めて少数の国際的危機において、核兵器を使用すると威嚇することによって、まさに核抑止の理論と実践に、核兵器の使用がありうるという威嚇が本来備わっているのである」

パラグラフ47において、ICJは、それ自体が違法な威嚇を行うことは違法であることをきわめて明確にしている。つまり、「もし、もくろまれた武力の使用それ自体が違法であるのならば、その使用の準備ができていることを明言することは、国連憲章2条4項において禁じられた威嚇になる」のであり、それ自体が違法な武力によって威嚇することは違法である、ということを。英国は民間人と軍事目標を区別するようには使用されえない規模の核兵器を保有しており、これは使用可能状態で潜水艦に常時配備されており、英国政策文書の中で、それらの使用を条件つきでいとわずに行うことを明らかにしてきた。この、自国の核を「使用する準備があるという意思の表明」は、まさに国連憲章2条において禁じられた威嚇である。

100キロトンの英国の核弾頭は、決して必要性、均衡性の原則を満たして使用されうるものではなく、したがって、必要ならばそれを使用する準備のあることを表明しながら継続的に積極的に核を配備することは、違法な核兵器による威嚇であり、それ自体違法である。

平和に対する罪

ICJはパラグラフ99において、「NPT条約第6条による、核軍縮を誠実に交渉する責務の十分な重要性」を認識した。パラグラフ105Fにおいては、次のことが全員一致で裁定されている。「厳格で実効的な国際的コントロールの下で、あらゆる局面において、核軍縮をもたらす交渉を誠実に行い、終結させる義務が存在する」と。パラグラフ99においては、「この義務の法的意味は…あらゆる局面における軍縮という結果を実現することである」と述べられている。

いかなる核兵器国も、慣習上の、また在来の国際法の双方によるこれらの義務から解放されるものではない。ニュルンベルク原則、(a)において、「国際協定、合意、保証に反して戦争を計画し、開始し、遂行すること…前述のいかなることについての実現のための共同計画、あるいは共謀に参画すること」が平和に対する罪であるとされるように、このことは実際、平和に対する罪である。

英国は、トライデント・システムを除去する即時的な意思を有しないことを明確にしてきた。戦略防衛報告は、中期的にはトライデントを改良し、長期的にはトライデントにかわって新たな新兵器が採用されることを留保する計画を明らかにしている。最近の報道による暴露、そしてアラン・シンプソン庶民議員によるレポートは、1億5千万ポンドのコストのかかるアルダーマストンにおける原子力兵器施設のプログラムの一新の証拠を、そして核弾頭を改良するため、米国の「次世代トライデント」プログラムとの関連の証拠を提供している。また、英米仏間の科学的協力の進展の証拠もあり、またシンプソンによるレポートは次のように結論づける。「英国が現在のトライデント核弾頭に代わるプロトタイプの設計を進行中であることにつき、強力な証拠が存在する」と。

英国は国連の中で、核軍縮決議のために誠実に努力してきてはいない。例えば、昨年英国は、「核のない世界に向けて:新しいアジェンダの必要性」決議に反対票を投じた。英国の国連大使、イアン・スーターは、この決議が「信頼に足る最低限の抑止と一致しない」方策を内容としていると述べた。ここがポイントである。

トライデント軍縮に対する英国の拒絶は、NPT6条をあざけるものである。核兵器の継続的な改良もまた6条違反であり、国際法違反を構成する。

結論

英国政府は、その核兵器をいかに合法的に使用できるか、という問いをしばしばうけながらも、それに対する説明をICJに対しても英国市民に対しても決して行ってきてはいない。仮定的な例をおおまかに示すことさえできずにきた。英国政府は実際、正確な状況を決して予見しうるものではなく、ゆえに核兵器を使用する時がくるまでその合法性につき決定できない、と極めて慎重に述べてきた。明白であることは、英国政府が今日まで独立した法的審査に己を委ねることができずにきたこと、そしてそれに対して不本意であり続けてきたこと、である。

英国政府が用いる常套句は、次のようなものである。「いかなる核兵器の具体的使用についても、それが合法か否かは…かような使用が決定される時のあらゆる状況にてらしてのみ決定されうる。将来生起するかもしれない正確な状況を、確信的に事前に予測することは不可能であり、また特定の仮定上のケースにつき考えをめぐらしても無益である」

もし、かようないかなる法的審査、あるいは法的な実践も事前になされないとすれば、英国の存続そのものが危険にさらされる自衛戦争のまっただ中で、核兵器の現実の使用についての徹底的な法的審査がなされうると考えることは不合理なことである。ICJによれば、これは核兵器が正当に使用されうるかもしれない唯一の状況である。法的審査のために、公的領域に対して英国政府が一つの仮定上のケースも明らかにできない事実は、かようなケースが存在しないことを示している。

新しい、ヨリ強力な核兵器の研究は、それの宇宙空間での配備計画とともに継続されている。核不拡散体制は急速に行き詰まりつつある。世界は極度の社会的、環境的危機に直面しており、これは協力的な非暴力的紛争解決を必要としている。国際法が己に対してではなく、非核兵器国に適用されるべきと期待している、核兵器国の偽善は、数十年間、世界的な共同体を不安定化してきたし、国際法秩序を深く傷つけている。今こそ、法を遵守する多数派諸国にとって、英国を裁判所の前に引っぱりだし、そのトライデント核兵器を裁判にかけることによって、ICJ勧告的意見を実行する第一歩をふむ時なのである。