9月22日深夜、 トライデント・プラウシェア2000に参加しているポル・ドゥ・ フエッタ氏から、ファックスが届き、16年間続いているファスレーン潜水艦基地 のそばのピースキャンプが強制撤去を迫られており、 それに対する緊急の支援要 請をしたところ、 広島市長から拒絶の回答があったということです。 以下は平岡 市長(本人は見ていないことがあとでわかった)とのやりとりの仮訳などです。 (大庭里美)
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1998年9月24日 広島市平和推進室に電話。 国際平和連帯担当の若林さんと話す。
◇ 9月13日と18日の、トライデント・プラウシェア2000からのメッセージを見 られましたか。
─ 9月13日のは、見て、回答しましたが、18日のはまだ見ていません。わたし たちとしては、気持ちは理解できるが、やり方には賛同できないということで、 一致しているので、そのように回答しました。
◇ 9月18日付けの市長からの返答メッセージを見て驚きました。非暴力直接行 動ということをよく理解されていないのではないか。force というのはど ういう意味で使われているのですか。
─(もとの日本語をさがして、その部分を読んでくれる。)「実力行使」です。
◇ 7月にプルトニウム・アクション・ヒロシマの3人が提供した資料を、 市長ご 自身でつぶさに読んでいただいたのですか。 ─ それは、よく分かりません。糸山の性格だと、ある程度整理して見せたので はないかと思う。
ケイト・デュースさんからもトライデント・プラウシェア2000について市長に 手紙が来ていたようです。
◇ 9月13日と18日の、 Pol D'Huyvetter氏のメッセージは、 市長ご自身で見られ たのですか。
─ 市長は見ていない。 平和文化センターの大牟田さんまでである。 返事もこち らの判断で書いた。
◇ 市長ご自身で見ていただきたい。資料も市長ご自身でよく読んでいただきた い。
要望
◆ 再度資料をよく読んでいただき、再検討してください。 ことわるにしても、もうすこし、現地で広島長崎の写真を掲げて闘っている人 達のことを思いやったメッセージにしてほしい。さらに、拘置所では女性の衣服 を脱がせて罰するというような不当な行為も行われていると聞いている。トライ デント・プラウシェア2000がどんなことをしているか、またどうなったか、もっ と関心をもって知っていただきたい。
─ もう一度検討して返事します。
☆資料
[9月13日、ファスレーン・ピースキャンプからの支援要請]
世界平和都市連帯市長会議会長、および広島市長平岡敬殿、日本のみなさんへ、 本日、私たちは、スコットランド、ヘレンズバーグの強制撤去を迫られている ファスレーン・ピースキャンプへの支援をお願いいたします。ファスレーン・ピ ースキャンプは、16年間続いており、世界の核兵器に反対する最も古い非暴力の ピースキャンプです(これについては、末尾にもっと詳しい説明を付け加えま す)。それは、イギリスのトライデント核潜水艦基地のそばにあります。トライ デントによる先制攻撃の潜在能力は、広島の1074倍です。
私たちは、貴殿は、世界平和都市連帯市長会議の会長であり、また広島市長と いう立場で、私たちを援助してくださる格好の立場でいらっしゃいます。
同封のモデル・レターを下記にファックスでお送り下されば、私たちへの支援 となりますでしょう。
Argyll & Bute District Council +44-1546-604349
なお、ファックスのコピーを下記にお送り下さい。
For Morther Earth +32-9-233-73-02
Press Association,Atten. Joe Quinn +44-141-221-0283
Helensburg Advertiser,Att.Kristina Kran +44-1436-671-241
ピースキャンプは今緊急の支援を必要としています。州議員たち(? Councillors) はやっと、1998年9月21日にヘレンズバーグのビクトリア・ホール でピースキャンプの代表と会うことに合意しました。 しかし、彼らは自分たちの 選挙区の中央にあるトライデントはそのままにして、ピースキャンプを強制撤去 しようとする試みを続けるでしょう。しかし、もし世界各地からファスレーン・ ピースキャンプの非暴力抵抗運動への支持があれば、彼らの態度も変わってくる と確信しています。
ピースキャンプは、私たちを励ましてくれる内外の支持を必要としています。 どうか、キャンプへの支持を表明してくださるよう、緊急に要請します。
敬具
ヘレン・マーカム ポル・ドゥ・フエッター
ファスレーン・ピースキャンプ フォア・マザー・アース
(スコットランド) 国際事務局 (ベルギー)
電話:+44-1436-820901 電話:+32-9-2338439
E-mail: janejim@gn.apc.org FAX: +32-9-2337302
E-mail:
international@motherearth.org
www:
http://www.motherearth.org/
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ファスレーン・ピースキャンプは、3隻のイギリスの核搭載トライデント原子 力潜水艦の母港に正面から向かい合っており、核兵器廃絶の闘いの極めて明確な 希望のしるしである。
このキャンプは16年間にわたって、海軍基地への非暴力の抗議の拠点であっ た。抗議者たちは、フェンスを切り、レザー・ワイアを乗り越え、ゲール・ロッ ホを泳いでわたって、トライデントは国際法及び人道法に違反しており、違法で 反道徳的だというメッセージを送り続けてきた。(1996年7月8日国際司法裁判所 )
1998年8月の最初の2週間、 このキャンプは、非常に成功したトライデント・プ ラウシェア2000の行動に参加し、イギリスにも世界にも基地との闘いを広く知ら せた。これらの行動によって、7人の非暴力活動家が今もスコットランドの拘置 所に拘留中である。
今ピースキャンプは、アーギル・ビュート地方議会によって強制撤去を迫られ ている。このキャンプは許可を得る予定であり、昨7月までこの土地を借りてい た。ピースキャンプを支持する署名は8000名にのぼる。 しかしながら、議会はこ のキャンプの問題を、キャンパーや、アーギル・ビュート地域の住民と一度も話 しあっていない。また、数百または数千ポンドの撤去費用をどこから捻出するつ もりかという説明もない。
現在、国防省はキャンプに隣接する森を売ろうと企てているが、ピースキャン プは宅地開発に指定されているこの9.5エーカーの土地のすぐ前にあるのであ る。
撤去すべきは、トライデントだ。ピースキャンプではな い!!!
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[9月18日、ファスレーン・ピースキャンプ支持要請に対する市長からの返事 (原文日本語)]
ファスレーン・ピースキャンプ
ヘレン・マーカム様
世界平和連帯都市市長会議
会長 広島市市長
平岡 敬
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、9月13日付けのE-メールでのご依頼についてですが、 核兵器に反対する という目標には、人類最初の被爆地であり、核兵器廃絶と世界の恒久平和の実現 を世界に訴え続けている広島市の市長といて、また、世界平和連帯都市市長会議 の会長として賛同いたします。
しかしながら、目標を達成するためには実力行使もやむなしという考え方に立 脚した活動方法には、賛同することはできません。
したがって、貴殿からのご依頼にたいして協力することはできませんので、ご 理解下さい。
敬具
[市長の回答の英語訳]
September 18, 1998
Dear Mr.Pol D'Huyvetter
I hope this letter finds you well. Thank you for your E-mail of September 13.
As President of the Wrrld Conference of Mayors for Peace through Inter-city Solidarity and Mayor of Hiroshima, the fist city ot suffer atomic bombing nuclear weapons and the achievement of lasting peace. I can therefore sympathize with the aim of your organization.
However, I cann't support your activities since you are based on a policy that accepts the use of force to achieve your objects.
Sincerely yours,
Takashi Hiraoka
President
World Conference of Mayors for Peace through Inter-city Solidarity
[参考] 1998年8月6日 平岡市長の平和宣言 広島の惨劇から53年たったいま、 国家相互の不信感は依然として根強く、世界 は新たな危機に直面するに至った。
インド、そしてパキスタンの相次ぐ核実験強行によって、南西アジアの緊張は 極度に高まり、核拡散防止体制は根底から揺らいだ。核兵器の非人道性を一貫し て世界に訴え、その廃絶を求め続けてきたヒロシマは、両国の核実験に激しい憤 りを覚えるとともに、これが核軍備競争の連鎖反応を誘発することを懸念する。 このような事態を招いた背景には、核保有5カ国が核抑止論に固執し、核拡散 防止条約で義務づけられた核軍縮が遅々として進んでいない現実がある。核保有 国の指導者は、国益のみならず、人類の未来に思いを馳せて、一刻も早く国際社 会に対する責任を果たさなければならない。人類は、今こそ新たな英知と行動を 求められている。世界各国は、先年、国際司法裁判所が示した勧告的意見の精神 に沿って、核兵器廃絶への実効ある行動を起こすよう強く要請する。同時に、わ たしたち国民一人ひとりも、核兵器にたよらぬ安全保障の方策を真剣に考えねば ならないと思う。
地球上には、今日、核実験などによる多くの被害者が存在する。この事実をヒ ロシマと重ね合わせるとき、核時代を生きるわたしたちの課題が見えてくる。ヒ ロシマは、国家を超えて、都市市民の連帯の輪を広げ、そのネットワークによっ て国際政治を動かし、核兵器のない世界を実現させたい。 これまでにもヒロシマは、草の根交流、国の内外でのさまざまな原爆展、世界 平和連帯都市市長会議などを通じて、平和を気づく国際世論の醸成に努めてき た。そして、今春、広島平和研究所を設立し、国際社会の未来を切り開くための 活動を開始した。それらはすべて、「平和首都」を目指すヒロシマの意志の表わ れである。
「何人も、生存、自由、および身体の安全を享有する権利を有する」 ─ 『世界人権宣言』が定められて50年、人類を破滅へと導く核兵器の現状をみると き、私たちは改めて科学技術文明のあり方を問い直すとともに、思いを新たにし て、何よりも人間の生きる権利を優先させる国際社会をつくってゆかねばならな い。
本日、53回目の平和記念日を迎えて、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧 げる。併せて、内外の被爆者に対し、実態に即した、心のかよった援護を求め る。
すべての国家が、自国の安全を核戦力に依存する愚かさから1日も早く脱却す るよう、私たちは、核兵器否定の精神を胸に行動して行く決意を表明する。
平成10年(1998年) 8月6日
広島市長 平岡 敬
[9月18日、TP2000からの返信]
平岡敬様
「世界平和都市連帯市長会議」 の担当者を通じて、ファスレーン・ピースキャン プ支援要請へのご回答にお時間をとっていただき、ありがとうございました。
しかしながら、私たちは貴職が「目的達成のために 'use of force'を許容す る考え方に立脚しているので、私たちの活動を支持できない」 と述べられている のを読み、非常に驚いています。
まず第一に、ファスレーン・ピースキャンプへの支持のお願いは、国際NGO としての私たちの活動とは、切り離されたものです。ファスレーン・ピースキャ ンプの支持の呼びかけは、運動内部の多様性を尊重する国際連帯による発案で す。
第二に、目的においても手段においても非暴力を掲げるNGOとして、私たち は貴職がおっしゃっている'force'の意味に正直のところとまどっています。 「フォア・マザー・アース」の「戦争犯罪を防止するための市民による査察」の 世界的な組織活動、毎年の「核のない世界へのピース・ウォーク」、及び「トラ イデント・プラウシェア2000」へのかかわりのことをさしておられるのではない かと思います。
平岡敬様、私たちは、マハトマ・ガンジーやマルチン・ルーサー・キングや、 またはグリーンピースがたどったと同じ非暴力の道を歩んでいるのです。それは 実際、何もしない非暴力ではなく、積極的な非暴力です。私たちは非暴力という 方法を使って、私たちの世界を引き裂いている現存の利益の衝突を、明らかにし ていますが、核兵器は今も現存している衝突の一部です。そして、私たちの目指 すものはまさに非暴力の社会なのです。
そして、核廃絶のための法的キャンペーンに関して付け加えると、私たちの主 張には核保有国とその同盟国による国際法違反に関して、非常に強力な法的根拠 があります。
それゆえに、私たちは貴職に次のことを要望します。 1.ファスレーン・ピースキャンプへの支持を、もう一度検討していただくこ と。
2.核兵器廃絶のための、私たちの非暴力キャンペーンの活動を励まし、支持し てくださること。どうぞ、私たちの資料を良くお読み下さい。また私たちの団体 についてご質問があれば、遠慮なくお聞き下さい。 お返事をお待ちしております。そして核兵器をこの世界からなくすという重要な 仕事について、ご活躍をお祈りします。
敬具
ポル・ドゥ・フエッター
フォア・マザー・アース事務局
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広島市長へのコンタクト: 082−241−2352 FAX:082−242−7452